説明

高周波振動放射による廃水処理方法

【課題】 生物化学処理による未処理廃水に高周波振動を放射伝搬させて、簡便で安価且能率的に廃水処理が可能な廃水処理方法を提供する。
【解決手段】 圧電磁器高周波振動放射具若しくは磁歪高周波振動放射具或いはこれらを放射基板の一側面に均等な間隔を以って配設した広面高周波振動放射板体を、生物化学廃水処理における前処理工程、生物化学処理工程、固液分離工程及び滅菌工程における廃水に浸漬若しくは接触するよう設置させ、高周波電源より少なくとも20kHz以上の高周波電力を付加させる高周波振動による廃水処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物化学処理による廃水処理において、高周波振動を廃水に直接放射させ、以って極めて能率的に且高い廃水処理効果を実現できる、高周波振動放射による廃水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生活雑廃水を初め食品加工や農業或いは水産等の生産活動における廃水は、その廃水中の汚濁成分が有機物であることから、これらの廃水処理には生物化学処理所謂活性汚泥法が、処理設備や処理コストのうえから有利なため、広く実用使用されている。
この活性汚泥による廃水処理方法は、概ね前処理工程−生物化学処理工程−固液分離工程−滅菌工程からなるもので、この前処理工程では流入する未処理廃水中に混在する異物や処理不能物の除去及び油脂分や有機物凝集塊の分散化を図り、生物化学処理工程においては廃水中に混濁する有機物を汚泥菌により分解させたうえ、固液分離工程において分解された有機物のフロックを浮上若しくは凝集沈殿させて固液分離をなし、而して分離液を滅菌槽内で滅菌し排水させるものである。
【0003】
ところで、かかる活性汚泥による廃水処理方法においては、生活雑廃水の如く流入する未処理の水質や流入量が比較的安定している場合には、予め設定した廃水処理条件での処理も可能なものの、食品加工廃水や農業、水産等の生産活動に付帯する廃水処理においては、生産量の増減に伴って流入する未処理廃水も大きく変動するばかりか、生産品目によって流入する未処理廃水のpH値や汚濁度合の激しい変動、特には油脂分の多量の混在も発生するものであって、かかる廃水処理では常に流入未処理水の水質を分析のうえ、その前処理工程では多量に混在する油脂分については、凝集剤や気泡発生により浮上分離をなし若しくは油分解菌による分解の促進を図り、或いは高濃度の汚濁水に対しては希釈し若しくはpH値の調整をなしたうえ生物化学処理工程において曝気や固定床若しくは流動床等により生物化学処理に関わる負荷の軽減をなさねばならない。
【0004】
加えて仮令生物化学処理工程において有機物が有効に生物化学的処理が施されたとしても、固液分離工程における化学凝集剤の使用及び滅菌工程における塩素滅菌剤による滅菌がなされたうえ排水がなされてなるものであって、今日の如く環境浄化が強く求められている状況下においての化学薬剤の使用には多くの問題を抱えているものの、未だ有効な解決手段も提案されるに至っていない。
【0005】
発明者はかかる実情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、圧電磁器板材をユニモルフ構造若しくはバイモルフ構造或いはランジュバン構造に形成させた高周波振動放射具、若しくは磁歪フェライト素材により高周波振動放射面及びバイアス磁場と交番磁場とを重合させるための励起コイル装着脚部とを有し、且この励起コイル装着脚部にバイアス磁石を挟着させ而も励起コイル装着脚部に励起コイルが装着された磁歪高周波振動放射具を、前処理工程や生物化学処理工程、固液分離工程及び滅菌工程において未処理廃水に接触させながら、少なくとも20kHz以上の高周波振動を、所要の出力と且間欠的若しくは連続的に放射せしめることにより、未処理廃水中に混在する油脂分の分解や浮上分離並びに凝固有機物の分散解離もなされ、更には生物化学処理工程においては汚泥菌が活性化されて分解性能が著しく高められること並びに固液分離工程ではバルキングの発生防止と沈降性の向上により固液分離も良好になされること、及び滅菌工程においても高周波振動放射によるキャビテーションに伴い発生する−OH基により十分な滅菌作用が発揮されること等を究明し本発明に至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は未処理廃水を前処理工程、生物化学処理工程、固液分離工程及び滅菌工程からなる廃水処理工程内に設置した高周波振動放射具若しくは磁歪高周波振動放射具より未処理廃水に、少なくとも20kHz以上の高周波振動を間欠的若しくは連続的に接触放射伝搬させて、以って高能率で安全且安価に廃水処理のなしえる高周波振動放射による廃水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために本発明が用いた技術的手段は、未処理廃水を前処理工程、生物化学処理工程、固液分離工程及び滅菌工程からなる廃水処理方法において、前処理工程、生物化学処理工程、固液分離工程及び滅菌工程のそれぞれに、未処理廃水と接触するよう圧電磁器高周波振動放射具若しくは磁歪高周波振動放射具を設置し、或いは圧電磁器高周波振動放射具若しくは磁歪高周波振動放射具を放射基板に均等に分散配置させた広面高周波振動放射板体を設置したうえ、その高周波振動が少なくとも20kHz以上で、且所要の放射出力で間欠的若しくは連続的に振動放射伝搬せしめて、未処理廃水にキャビテーション作用や加速度作用、直進流作用、凝集作用、生物化学処理促進作用及び滅菌作用を発揮せしめて、未処理廃水を極めて能率的に且安全で安価に廃水処理をなすことを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の技術的手段では、未処理廃水を生物化学処理する前処理工程、生物化学処理工程、固液分離工程及び滅菌工程のそれぞれの未処理廃水と接触する部位に、圧電磁器高周波振動放射具若しくは磁歪高周波振動放射具或いは広面高周波振動放射板体が設置されたうえ、高周波電力の付加により少なくとも20kH以上の高周波振動放射がなされるため、伝搬インピーダンスの高い未処理廃水全体に高周波振動エネルギーが放射伝搬される。
【0009】
そして高周波振動エネルギーの付加により未処理廃水が溶存気体を含む場合には、付加される負の高周波振動圧の位相で蒸気圧の低い溶存気体が気化して気泡の発生所謂キャビテーション作用が生じ、且正の高周波振動圧の位相ではこの気泡に圧縮力が働き而も高周波電力の付加されている間は該発生気泡は気化速度と溶解速度の差により成長するものであるから、周波数に依存し低周波数ほどキャビテーションが発生し易くなる。
一方溶存気体を含まない場合の気泡では未処理廃水の蒸気のみからなる真空に近い気泡で、高周波振動圧の増大する正の位相では断熱圧縮状態で高温高圧となり且やがて押圧崩壊するもので、気泡が押圧崩壊し消滅する際には気泡周囲の未処理廃水の水分子が気泡中心に向かって突進して相互に衝突し強い衝撃波を未処理廃水中に放射し、而も酸化電位の高い−OH基も多量に発生する。
【0010】
加えて未処理廃水中に高周波振動エネルギーが放射伝搬されると、吸収減衰や拡散減衰を受け伝搬方向に高周波振動エネルギーの密度差が生じ、放射圧の差に起因して未処理廃水中の直流的流れ所謂直進流作用が生じ、これにより未処理廃水の循環がなされ拡散や撹拌作用も発揮される。
更に粒子が懸濁している未処理廃水に高周波振動が放射伝搬されると、振動場内で粒子は相対速度に比例したストークスの粘性力を受けるため、懸濁粒子の振動振幅は粒子が重い程、或いは振動数が高いほど、及び周囲の媒質の粘度が高い程、媒質粒子の振幅に比べて振幅が小さくなる。これがため不均一分散の未処理廃水では、適宜の振動周波数の放射伝搬により大きな粒子が静止し、且小さな粒子は媒質とともに運動して衝突機会が増大し凝集作用が発揮される。
【0011】
而も互に粒子速度が異なる固体−固体界面や固体−液体界面等の媒体の界面では境界面摩擦により発熱作用も発生し、更に高周波振動エネルギーの放射伝搬される未処理廃水中では前記発熱作用や直進流作用による濃度勾配の維持や高分子鎖への直接作用等により化学反応の促進作用も大きく発揮される。
【0012】
これがため前処理工程に流入する未処理廃水中に多量の油脂分や高濃度の汚濁物質が混在してもキャビテーション作用による衝撃力や−OH基による分解若しくは分散解離され、且気泡により容易に浮上分離もなされるとともに生物化学処理工程においては、高周波振動により混在物と水との分散が促進され且直進流作用により十分な循環や撹拌がなされるため、汚泥菌による生物化学処理能力が一段と上昇する。
【0013】
更に固液分離工程においては、前記凝集作用により化学薬剤を使用することなく固液分離が効率良くなされ、而も滅菌工程においても酸化電位が高く且多量に発生する−OH基により安全に滅菌がなされるとともに、本発明は高周波電力の僅かな付加によりなされることから維持コストが極めて安価で而もそれぞれの工程への高周波電力付加の調整のみで簡便に廃水処理がなされるとともに、かかる高周波振動放射は人体にも安全であるばかりか、実用使用に際しても可聴周波を超えた高周波領域であるため音響面での支障もなく使用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
未処理廃水を生物化学処理により廃水処理をなす前処理工程、生物化学処理工程、固液分離工程及び滅菌処理工程で貯留若しくは流動する未処理廃水と接触するよう圧電磁器高周波振動放射具を設置のうえ、少なくとも20kHz以上の高周波振動放射を間欠的若しくは連続的に接触放射伝搬させる廃水処理方法。
【実施例1】
【0015】
以下に本発明実施例を図とともに詳細に説明すれば、図1は生物化学処理における本発明の工程概略図であって、前処理工程1は生活雑廃水を初め食品加工や農業、水産等の生産活動において排出される未処理廃水10を一旦貯留且前処理させる工程で、流入する未処理廃水10の流量調整や未処理廃水10中に多量の油脂分や高濃度の汚濁物や凝固物等が混在する場合には、該油脂分の除去や分解或いは分散解離若しくは希釈或いは浮上分離等の未処理廃水10に前処理を施し、引続く生物化学処理工程2における生物化学処理に係る負荷を軽減させることにある。
【0016】
これがためには該前処理工程1において貯留される未処理廃水10に接触させて、高周波振動放射を直接伝搬せしめキャビテーションによる衝撃波や生成される−OH基による油脂分や高濃度汚濁物の分解や分散解離、及び気泡による浮上分離をなすうえからは前処理工程1における貯留された未処理廃水10の底面10Aより高周波振動放射をなすことが望ましい。
この前処理工程1における高周波振動放射はキャビテーション発生により衝撃波や−OH基の生成と且浮上分離のために大きな気泡を形成させるうえからは、その高周波振動としては低周波のものが好ましく、流入する未処理廃水10の水質によっても異なるがその高周波振動としては略25乃至40kHz程度が好適である。
【0017】
ところで高周波振動の放射伝搬に際して、簡単な構造と安価で且高振動放射出力に優れるものとして、圧電磁器高周波振動放射具20若しくは磁歪高周波振動放射具21が挙げられる。
即ち図2はバイモルフ構造による圧電磁器高周波振動放射具20の断面説明図であって、該圧電磁器高周波振動放射具20は所要の寸法形状に形成されてなる圧電磁器板材20Aの2枚がその中央にステンレスや黄銅等の素材からなる金属板材20Bを挟んで接合され、且それぞれの圧電磁器板材20Aの外側面には、銀や銅若しくはアルミ等の素材からなる金属膜20Cが通電極として一体的に接合されてバイモルフ構造を形成している。
【0018】
そして該圧電磁器高周波振動放射具20は、実質的に未処理廃水10に浸漬した状態で長期に亘って設置使用されるものであり、且その一側面からは所望の高周波振動を効率良く放射伝搬させるうえから、放射振動板材20Dで包被されてなるとともに、他側面には高周波振動を吸収せしめて設置される廃水処理構築物の劣化や脆化を保護するうえから振動吸収板材20Eが介在されたうえ、閉塞板材20Fと放射振動板材20Dとにより密閉された構成のものである。
【0019】
かかる場合における圧電磁器板材20Aの素材としてはチタン酸ジルコン酸鉛が通常使用されるものであるが、更に近年に至っては第3成分としてマグネシウム・ニオブ酸鉛が配合されたものも使用されている。
更に振動放射板材20Dの具体的なものとしては強靭強固で耐水性に優れる合成樹脂素材やセラミックス素材が好適であり、且振動吸収板材20Fとしては柔軟な合成ゴム若しくは合成樹脂素材による独立気泡構造シート材が好都合であり、閉塞板材20Fは耐水性と且振動放射板材20Dとの接着性若しくは融着性を保持するものが望まれる。
無論かかる圧電磁器高周波振動放射具20には所望の高周波振動放射をなさしむるための高周波電源30からの高周波電力31を通電させるため、金属膜20Cと連結された通電線20Gが、該圧電磁器高周波放射具20の適宜部位より延出されている。
【0020】
圧電磁器高周波振動放射具20は、かかるバイモルフ構造の他に圧電磁器板材20Aの一側面に金属板20Bが接合された構造のもの、及び高出力の高周波振動放射をなすうえから圧電磁器板材20Aを挟んで両側面を十分に厚い金属板20Bで接合させ、全体の長さが半波長となる長さに形成させたランジュバン構造のものも使用可能である。
【0021】
他方磁歪高周波振動放射具21は図3に示す如く磁歪フェライト素材を用いて、その一側には所要の形状と面積で高周波振動放射面21Aが形成され、且他側にはバイアス磁場と交番磁場とを重ね合せて高周波振動放射をなすために励起コイル21Bを装着させるため、所要の間隔を以って一対の励起コイル装着脚部21Cが突出形成され、該励起コイル装着脚部21Cの上部位にはそれぞれ励起コイル21Bが装着され、且該励起コイル装着部21Cの下部位にはバイアス磁場を形成させるためバイアス磁石21Dが励起コイル装着脚部21相互間に挟着されている。
かくしてなる励起コイル21Bに高周波電源30からの高周波電力31を付加させて交番磁場とバイアス磁場との重ね合せにより高周波振動放射面21Aより、高周波振動放射をなすものである。
【0022】
無論、該磁歪高周波振動放射具21も未処理廃水10に浸漬され若しくは接触させて使用されるものであるから耐水手段が要請される。これがためには高周波振動放射面21Aの外面の高周波振動を効率良く放射せしむる振動放射板材20Dと、励起コイル装着脚部21Cが包被されるように形成された閉塞板材20Fとを接着若しくは融着させて密閉されている。
かかる場合に振動放射板材20Dは、前記の如く強靭強固で耐水性に優れる合成樹脂素材やセラミックス素材が好適であり、且閉塞板材20Fは耐水性と振動放射板材20Dと接着性や融着性を保持して密閉される素材であれば良い。
【0023】
更に高周波振動放射は、その高周波振放射面21Aからの放射ばかりかその背面にも放射されるものであるから、設置され長期の使用に際して設置されるそれぞれの工程の設置構築物への劣化や脆化の危険を考慮する必要がある。
そこで励起コイル装着脚部21Cの背面及び空隙部分にも振動吸収板材20Eが介在されている。当然に該磁歪高周波振動放射具21には高周波電源30からの高周波電力31が励起コイル21B、21Bに付加されて交番磁場を発生し、バイアス磁場との重ね合わせにより所望の高周波振動が、その高周波振動放射面21Aより振動放射されることとなる。
【0024】
而して、かかる圧電磁器高周波振動放射具20若しくは磁歪高周波振動放射具21に付加される高周波電力31を発生させる高周波電源30は、実質的には20kHz以上の高周波振動を発生させる高周波電力31が出力されるものであれば使用でき、具体的には極めて多種多様な発振回路のものが提案されるが、近年ではトランジェスターやサイリスター等の半導体デバイスの開発に伴って極めて簡単で小型且大出力の発振回路を有する高周波電源30が実用化されている。従って本発明に使用する高周波電源30として、サイリスターを用いた高周波電源30の回路図を図4に示す。即ち図4においてはそのパルス発生器30Aにより所要の高周波パルスを間欠的若しくは連続して発生させたうえ、サイリスタ30Bのゲートにトリガパルスを加えるとサイリスタと整流器30Cを交互に流れる電流によってコンデンサー30Dの充放電が繰返され、その両端に接続された出力トランス30Eより出力させるものである。かかる回路図においては振動放射に係る周波数が10kHzで且出力が500Wの場合のものである。
【0025】
図5は広面高周波振動放射板体22の説明図であって、未処理廃水10を生物化学処理する場合の前処理工程1、生物化学処理工程2、固液分離工程3及び滅菌工程4におけるそれぞれ具体的な処理槽は比較的内容積も大きな規模に及ぶ。他方圧電磁器高周波振動放射具20若しくは磁歪高周波振動放射具21は、生産面や取扱い面からせいぜい直径として略2乃至20cm程度のものであるから、大容積の未処理廃水10に高周波振動放射を拡散させることなく効率的に放射させるためには大多数設置させる事よりも、広面積の高周波振動放射面からの振動放射が極めて有利となる。そこで図5に示す如く合成樹脂やセラミックス若しくは金属素材からなり、少なくとも縦1m以上及び横2m以上の放射基板22Aの一側面には圧電磁器高周波振動放射具20若しくは磁歪高周波振動放射具21を、0.5乃至5m間隔望ましくは略0.5乃至3m間隔程度に略均等に分散配置させて広面高周波振動放射板体22として使用することが好都合である。
【0026】
かくしてなる圧電磁器高周波振動放射具20若しくは磁歪高周波振動放射具21或いは広面高周波振動放射板体22を、前処理工程1、生物化学処理工程2、固液分離工程3若しくは滅菌工程4等の具体的処理槽の内壁面や底面等に未処理廃水10と浸漬若しくは接触する状態で設置し振動放射がなされる。
そこで未処理廃水10の生物化学処理方法においては、その前処理工程1では流入する未処理廃水10中に油脂分や高濃度汚濁物質或いは凝固物等が多量に混在するものであって、これらを分解、分散解離させ若しくは浮上分離させたうえ、生物化学処理工程2において汚泥菌による有機物の確実且能率的分解が要請される。
【0027】
これがためには前処理工程1においてはキャビテーション作用による油脂分や高濃度汚濁物或いは凝固物の分解や分散解離若しくは浮上分離を図るうえから、放射振動に係る高周波としては略20乃至50kHz程度の振動放射が好適である。
他方生物化学処理工程2においては直進流作用や発熱作用による汚泥菌の活性化により生物化学処理を促進させるうえから、振動放射に係る高周波としてはやや周波数の高い略40乃至80kHz程度が好適である。
加えて直進流作用による循環や撹拌と、発熱作用等による生物化学処理を促進させるうえからは、前処理済廃水11内の油脂分や汚濁物等の混濁度合にもよるが、高周波振動放射を間欠的になし、振動放射毎の強い尖頭エネルギーの放射付加により、生物化学処理能力が一段と向上することを考慮すべきである。
【0028】
更に生物化学処理がなされた生物化学処理済廃水12は、固液分離工程3において凝集沈殿若しくは浮上分離による固液分離がなされるものであるから、主として凝集作用が要請される。
即ち凝集沈殿を図るうえからは振動放射に伴う直進流作用と放射伝搬による混在粒子に加速度を付与せしめることが望まれることから、振動放射に係る振動周波数としては略30乃至60kHz程度が望まれるが、反面浮上分離による場合ではキャビテーション作用による気泡による浮上を活用するうえから、その振動周波数としてはやや低周波数により気泡成長をなすうえで略25乃至50kHz程度が望まれる。
【0029】
そして固液分離工程3においてフロックが凝集沈殿若しくは浮上分離除去された固液分離廃水13は、滅菌工程4において滅菌がなされるもので該滅菌には振動放射による多量のキャビテーションにより発生する衝撃力及びキャビテーションにより生成される酸化電位の高い−OH基が多量に要請される。これがためには振動放射に係る周波数をやや低下せしめて気泡成長を図ることが望まれ、従って振動放射に係る周波数としては略20乃至40kHzが望まれる。
【0030】
本発明は、生活雑廃水を初め食品工業や農業、水産等の廃水を生物化学処理する場合の前処理工程1、生物化学処理工程2、固液分離工程3及び滅菌工程4を用いて連続的に廃水処理を行ううえから、それぞれの工程に圧電磁器高周波振動放射具20若しくは磁歪高周波振動放射具21、或いはこれらが配設された広面高周波振動放射板体22を、未処理廃水10に浸漬され若しくは接触されるよう設置されて使用されるが、かかる使用方法に制約されることなく、前処理工程1や生物化学処理工程2、固液分離工程3或いは滅菌工程4で要請される未処理廃水10の処理機能を、それぞれ独立させた処理槽を用いて行うことも可能であるため、極めて広範囲な水処理に利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
既存の生物化学処理方法を用いた廃水処理の前処理工程、生物化学処理工程、固液分離工程及び滅菌工程に未処理廃水に浸漬若しくは接触するよう圧電磁器高周波振動放射具若しくは磁歪高周波振動放射具或いはこれらを均等に分散配置させた広面高周波振動放射板体を設置のうえ、高周波電源より少なくとも20kHz以上の高周波電力を付加させることで、高い処理能力を以って生物化学処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】 本発明の工程概略図である。
【図2】 圧電磁器高周波振動放射具の説明図である。
【図3】 磁歪高周波振動放射具の説明図である。
【図4】 高周波電源の回路図である。
【図5】 広面高周波振動放射板体の説明図である。
【図6】 広面高周波振動放射板体の使用態様図である。
【符号の説明】
【0033】
1 前処理工程
2 生物化学処理工程
3 固液分離工程
4 滅菌工程
10 未処理廃水
10A 廃水等の底面
11 前処理済廃水
12 生物化学処理済廃水
13 固液分離廃水
20 圧電磁器高周波振動放射具
20A 圧電磁器板材
20B 金属板
20C 金属膜
20D 振動放射板材
20E 振動吸収板材
20F 閉塞板材
20G 通電線
21 磁歪高周波振動放射具
21A 高周波振動放射面
21B 励起コイル
21C 励起コイル装着脚部
21D バイアス磁石
22 広面高周波振動放射板体
22A 放射基板
30 高周波電源
30A パルス発生器
30B サイリスタ
30C 整流器
30D コンデンサー
30E 出力トランス
31 高周波電力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未処理廃水を生物化学処理する廃水処理方法において、その前処理工程、生物化学処理工程、固液分離工程及び滅菌工程に、圧電磁器板材をユニモルフ若しくはバイモルフ或いはランジュバン構造となし、且その一側面に振動放射板材と他側面に振動吸収板材が接合されたうえ耐水密閉形成された圧電磁器振動放射具、若しくは磁歪フライト素材からなりその一側面に高周波振動放射面が形成され、且バイアス磁場と交番磁場とが重ね合せられるよう形成され而も全体が耐水密閉形成された磁歪高周波振動放射具を、それぞれの処理工程に貯留され若しくは流動する廃水に浸漬し若しくは接触する位置に設置し、その振動放射が少なくとも20kHz以上で且間欠的若しくは連続して振動放射がなされるよう、高周波電力が付加される構成からなる高周波振動による廃水処理方法。
【請求項2】
圧電磁器高周波振動放射具若しくは磁歪高周波振動放射具が、所要の寸法面積の放射基板の一側面に均等に分散配置された広面高周波振動放射板体からなる、請求項1記載の高周波振動による廃水処理方法。
【請求項3】
前処理、生物化学処理、固液分離処理及び滅菌処理がそれぞれ独立した処理槽でなされ、且これら処理槽に貯留される廃水と浸漬し若しくは接触する位置に、圧電磁器高周波振動放射具若しくは磁歪高周波振動放射具或いは広面高周波振動放射板体が設置されてなる請求項1若しくは請求項2記載の高周波振動による廃水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−279423(P2008−279423A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−152114(P2007−152114)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(506154801)有限会社ダイアテック (13)
【Fターム(参考)】