説明

高周波用半導体装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、トリプレ−ト構造の高周波用パッケ−ジに関するものである。
【0002】
【従来の技術】図4(a)〜(c)は従来のトリプレ−ト構造の高周波用パッケ−ジの一例を示す構成図である。図4において、1は上部接地導体、2は外部回路接続用コネクタ(以下、接続コネクタと略称する)、3はフィ−ルドスル−線路、4は下部接地導体、5は半導体素子、6は絶縁体である。
【0003】次に、動作について説明する。従来のトリプレ−ト構造の高周波用パッケ−ジは、図4(a)に示すように、下部接地導体4上へ上面にフィ−ルドスル−線路3を形成した絶縁体6を形成し、その上面へ絶縁体6を形成し、さらにその絶縁体6の上面へ上部接地導体1を形成した3層構造を持つ。図4(b)は、図4(a)をA−A面にて切断した断面図であり、半導体素子5は中央部を突出させた下部接地導体4の突出部上に固定され、半導体素子5とフィ−ルドスル−線路3,接続コネクタ2とフィ−ルドスル−線路3はワイヤ等で接続される。図4(c)はフィ−ルドスル−線路3の3層構造を明示するために図4(a)をB−B面にて切断した断面図である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来のトリプレ−ト構造の高周波用パッケ−ジは、フィ−ルドスル−線路3部分がマイクロストリップ線路の形態を持つため、フィ−ルドスル−線路3のインピ−ダンスを設定するにあたり、フィ−ルドスル−線路幅と絶縁体6の厚さが材料の加工精度および材質によって制限され、所望のインピ−ダンスをもつパッケ−ジを設計しにくいという問題点があった。
【0005】また、同一パッケ−ジ面に複数のフィ−ルドスル−線路3を持つパッケ−ジを設計する場合には、フィ−ルドスル−線路間の絶縁特性を高めるためにフィ−ルドスル−線路間隔を開ける必要があり、パッケ−ジサイズが大きくなるという欠点があった。また、接続コネクタ2との接続部にて変換ロスが生じる等の問題点があった。
【0006】本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、コプレ−ナ線路構造または同軸線路構造をフィ−ルドスル−部に採用することにより、フィールドスルー線路に所望のインピーダンスを保たせることができ、絶縁特性を高めることができる、小形で高効率の高周波用半導体装置を得ることを目的とする。
【0007】また、コプレ−ナ線路構造または同軸線路構造をフィ−ルドスル−部に採用するとともに接地線路を介して隣接する複数のフィールドスルー線路を備えることにより、隣接するフィールドスルー線路間の絶縁特性を高め、複数のフィールドスルー線路を有する小形で高効率の高周波用半導体装置を得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明に係る高周波用半導体装置は、高周波用パッケージの下側本体を成す下部接地導体と、この下部接地導体上に配設された半導体素子と、この半導体素子に隣接し下部接地導体上に配設された第1の絶縁体と、この第1の絶縁体の表面上に配設され、半導体素子と外部回路接続用コネクタとを接続するフィールドスルー線路と、このフィールドスルー線路の両側に、このフィールドスルー線路と間を隔てて沿いつつ延在し、第1の絶縁体の表面上に配設された接地線路と、この接地線路とフィールドスルー線路とを介して、第1の絶縁体の表面上に配設された第2の絶縁体と、この第2の絶縁体上に配設された高周波用パッケージの上側本体を成す上部接地導体と、第1、第2の絶縁体の少なくとも一方に配設されたスルーホールと、このスルーホールを介して配設され、上部、下部接地導体の少なくとも一方と上記接地線路とを接続する接続導体と、を備えたものである。
【0009】また、接地線路を介して隣接する複数のフィールドスルー線路を備えたものである。
【0010】
【作用】この発明に係る高周波用半導体装置においては、フィールドスルー線路のインピーダンスが主としてフィールドスルー線路とこの線路の両側に置かれた接地線路との距離によって決定され、トリプレート構造としての絶縁体の厚み寸法のばらつきがあったとしても、フィールドスルー線路のインピーダンスのばらつきを少なくすることができる。さらに、接地線路をフィールドスルー線路の両側に設けることにより、フィールドスルー線路での絶縁特性を高めることができる。
【0011】また、フィールドスルー線路の両側に置かれた接地線路により、隣接するフィールドスルー線路間の絶縁特性を高めることができる。
【0012】
【実施例】以下、本発明の実施例を図によって説明する。図1(a)〜(c)は本発明に係る高周波用パッケ−ジの一実施例を示す構成図である。この図において、図4と同一符号は同一もしくは相当部分を示し、7は前記フィ−ルドスル−線路3とコプレ−ナ化して形成された接地線路、8はこの接地線路7と接続されるスル−ホ−ルを示す。
【0013】図2(a),(b)は本発明に係る高周波用パッケ−ジの他の一実施例を示す構成図である。この図において、図1と同一符号は同一もしくは相当部分を示す。この実施例はフィ−ルドスル−線路3の両側に上部接地導体1および下部接地導体4とスル−ホ−ル8を介して接続した接地線路7を備えたものである。
【0014】次に、図1の実施例による高周波用パッケ−ジについて説明する。まず、図1(a),(b)に示すように、下部接地導体4上に、上面にフィ−ルドスル−線路3とその両側へ接地線路7を形成した第1の絶縁体としての絶縁体6を形成し、その上面へ接地線路7上に開孔するように配置され接地線路7と上部接地導体1を電気的に接続するために内部へ接続導体としての導体を挿入したスル−ホ−ル8を持つ第2の絶縁体としての絶縁体6を形成し、さらにその絶縁体6の上面へ上部接地導体1を形成した3層構造を持ち、フィ−ルドスル−線路3部分は設計自由度の大きいコプレ−ナ線路とみなすことができる。図1(b)は、図1(a)をA−A面にて切断した断面図であり、半導体素子5は中央部に突状に露出させた下部接地導体4上に固定され、半導体素子5とフィ−ルドスル−線路3,接続コネクタ2とフィ−ルドスル−線路3はそれぞれワイヤ等で接続される。図1(c)はフィ−ルドスル−線路3と接地線路7部分の3層構造を明示するために、図1(a)をB−B面にて切断した断面図である。
【0015】次に、図2に示した実施例による高周波用パッケ−ジについて説明する。なお、図2の実施例による高周波用パッケ−ジの上面図は、図1(a)に示した実施例と同一に表示されるため省略してある。まず、図2R>2(a)に示すように、下部接地導体4上に、上面にフィ−ルドスル−線路3とその両側へ接地線路7を形成し、接地線路7上に開孔するよう配置され、接地線路7と下部接地導体4を電気的に接続するために内部へ導体を挿入したスル−ホ−ル8を持つ絶縁体6を形成し、その上面に接地線路7上に開孔するよう配置され、接地線路7と上部接地導体1を電気的に接続するために内部へ導体を挿入したスル−ホ−ル8を持つ絶縁体6を形成し、さらにその絶縁体6の上面へ上部接地導体1を形成した3層構造を持ち、フィ−ルドスル−線路3部分は、設計自由度の大きいコプレ−ナ線路あるいは同軸線路とみなすことができる。図2(b)は、フィ−ルドスル−線路3と接地線路7の部分の3層構造を明示するために、図1(a)のB−B面にて切断したのと同様な断面図であり、半導体素子5は図1(a)のように、中央部に突状に露出させた下部接地導体4上に固定され、半導体素子5とフィ−ルドスル−線路3,接続コネクタ2とフィ−ルドスル−線路3はそれぞれワイヤ等で接続される。
【0016】また、図3(a),(b)は本発明の特徴を生かして、同一面内に複数のフィ−ルドスル−線路3を持つ高周波用パッケ−ジの実施例を示す構造図である。図3(b)は、フィ−ルドスル−線路3と接地線路7部分の3層構造を明示するために、図1(a)をB−B面にて切断したのと同様な断面図である。
【0017】なお、図1〜図3において、フィ−ルドスル−線路3部以外のパッケ−ジ内部形状は、どのような形態でもかまわない。また、外部との接続に接続コネクタ2以外の部品を使用しても同様の効果がある。また、同一面内におけるフィ−ルドスル−線路3の個数は何本でもよい。さらに、接地線路7と上部接地導体1,下部接地導体4を接続するスル−ホ−ル8の個数は1個以上何個でもよい。
【0018】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、フィールドスルー線路の両側に、このフィールドスルー線路と間を隔てて沿いつつ延在し、第1の絶縁体の表面上に配設された接地線路と、この接地線路とフィールドスルー線路とを介して、第1の絶縁体の表面上に配設された第2の絶縁体と、第1、第2の絶縁体の少なくとも一方に配設されたスルーホールと、このスルーホールを介して配設され、上部、下部接地導体の少なくとも一方と接地線路とを接続する接続導体と、を備えることにより、フィールドスルー線路が所望のインピーダンスを保ち絶縁特性が高く、接続コネクタとの接続部で変換ロスが少ない高周波パッケージとすることができるので、小形で高効率の高周波用半導体装置を構成することができる。
【0019】また、接地線路を介して隣接する複数のフィールドスルー線路を備えたので、隣接するフィールドスルー線路間の絶縁特性を高めることができ、フィールドスルー線路が複数必要な場合でも、小形で高効率な高周波用半導体装置を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を示す構成図である。
【図2】本発明の第2の実施例を示す構成図である。
【図3】本発明の他の実施例を示す構成図である。
【図4】従来の半導体装置の構成図である。
【符号の説明】
1 上部接地導体
2 接続コネクタ
3 フィ−ルドスル−線路
4 下部接地導体
5 半導体素子
6 絶縁体
7 接地線路
8 スル−ホ−ル

【特許請求の範囲】
【請求項1】 高周波用パッケージの下側本体を成す下部接地導体と、この下部接地導体上に配設された半導体素子と、この半導体素子に隣接し上記下部接地導体上に配設された第1の絶縁体と、この第1の絶縁体の表面上に配設され、上記半導体素子と外部回路接続用コネクタとを接続するフィールドスルー線路と、このフィールドスルー線路の両側に、前記フィールドスルー線路と間を隔てて沿いつつ延在し、上記第1の絶縁体の表面上に配設された接地線路と、この接地線路と上記フィールドスルー線路とを介して、上記第1の絶縁体の表面上に配設された第2の絶縁体と、この第2の絶縁体上に配設された高周波用パッケージの上側本体を成す上部接地導体と、上記第1、第2の絶縁体の少なくとも一方に配設されたスルーホールと、このスルーホールを介して配設され、上記上部、下部接地導体の少なくとも一方と上記接地線路とを接続する接続導体と、を備えた高周波用半導体装置。
【請求項2】 接地線路を介して隣接する複数のフィールドスルー線路を備えたことを特徴とする請求項1記載の高周波用半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】第2794971号
【登録日】平成10年(1998)6月26日
【発行日】平成10年(1998)9月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−60221
【出願日】平成3年(1991)3月25日
【公開番号】特開平4−312960
【公開日】平成4年(1992)11月4日
【審査請求日】平成7年(1995)7月19日
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【参考文献】
【文献】特開 昭62−179134(JP,A)