説明

高周波発振回路

【課題】高価なFETを用いることなく、例えば10GHz以上の高周波数波帯で用いる場合にも使用可能で、広帯域化を図った高周波発振回路を構成する。
【解決手段】発振回路用FET Q1のゲートを直列帰還素子である線路SL1を介して接地し、発振回路用FET Q1のソースをインダクタL3を介して直流的に接地し、バッファアンプ用FET Q2のドレインをインダクタL1を介して電源端子Vdに接続し、バッファアンプ用FET Q2のソースをキャパシタC2を介して高周波的に接地し、且つバッファアンプ用FET Q2のソースを直流電流経路用インダクタL2を介して発振回路用FET Q1のドレインに接続する。また、バッファアンプ用FET Q2のゲートと発振回路用FET Q1のドレインとの間を直流カットキャパシタC1および線路SL2を介して接続し、この電気長を発振周波数の1/2波長未満とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、共振回路とともに発振回路用FETおよびバッファアンプ用FETを備えた高周波発振回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発振回路部およびバッファアンプ部にそれぞれトランジスタを備えた高周波発振回路が特許文献1に開示されている。
【0003】
図1は特許文献1に示されている高周波発振回路の回路図である。
この発振回路は、コルピッツ型の発振回路部と、この発振回路部による発振出力を増幅する増幅回路部とから構成されている。
【0004】
発振回路部は、高周波的にベース接地された発振用トランジスタQ12を中心にコルピッツ発振回路が構成されていて、発振用トランジスタQ12、コンデンサC14、C15、C16、C17、C19、抵抗R11、R12、R13、R17等の回路素子および発振周波数で誘導性になる共振回路RES11から構成されている。
【0005】
発振用トランジスタQ12、コンデンサC15、C16、および共振回路RES11は主に発振に寄与する。発振用トランジスタQ12のベースは、バイパスコンデンサであるコンデンサC17により高周波的にグランドに接続されている。さらに結合コンデンサであるコンデンサC14、C19により、直流成分をカットし交流成分だけを通過するように構成されている。発振用トランジスタQ12の動作電圧等は、抵抗R11、R12、R13、R17によって設定され、駆動電圧は直流駆動電圧源Vccから供給される。
【特許文献1】特開2001−119240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示されている高周波発振回路は、ベース接地されたトランジスタQ12からなる発振回路と、エミッタ接地されたトランジスタQ11からなる増幅回路があり、トランジスタQ12のコレクタ電流経路とトランジスタQ11のコレクタ電流経路が直流的に直列接続されているので、両トランジスタに流れるコレクタ電流の合計を減少させることができる。しかし、10GHz以上の高周波数波帯では素子サイズが小さくなるに伴い、並列帰還型ではレイアウト設計が困難になるという問題があった。
【0007】
さらに、10GHz帯を超える周波数帯で発振・増幅させるためには、従来は特殊な製造プロセスによる微細配線構造のFETが用いられているが、この構造のFETは高価であり、全体にコスト高な回路になってしまう。
【0008】
そこで、この発明の目的は、汎用なプロセスを用いた安価な、例えば5GHz帯で使用されているFETを用いて10GHz以上の高周波帯にも使用可能で、広帯域化を図った高周波発振回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解消するために、この発明の高周波発振回路は次のように構成する。
(1)発振回路用FETを有する発振回路、バッファアンプ用FETを有するバッファアンプ、および共振回路を備えた高周波発振回路であって、
前記発振回路用FETのゲートを、直列帰還素子を介して接地し、前記発振回路用FETのソースを直流的に接地し、前記発振回路用FETのソースに前記共振回路を接続し、前記バッファアンプ用FETのドレインを電源に接続し、前記バッファアンプ用FETにキャパシタを介して発振信号の出力端子を接続し、前記バッファアンプ用FETのソースを高周波的に接地し、且つ、当該バッファアンプ用FETのソースを、直流電流経路用インダクタを介して前記発振回路用FETのドレインに接続し、前記バッファアンプ用FETのゲートと前記発振回路用FETのドレインとを直流カットキャパシタおよび線路を介して接続するとともに、前記バッファアンプ用FETのゲートと前記発振回路用FETのドレインの間の電気長を発振周波数の1/2波長未満とする。
【0010】
この構成により、バッファアンプ用FETのゲートと発振回路用FETのドレインの間の電気長に応じて利得が生じる周波数が発振周波数より低い周波数帯域内で存在しなくなるので、発振周波数より低い周波数帯域内で不要利得の出現が無く、使用できる周波数帯域が広くなる。
【0011】
また、発振回路用FETのゲートに直列帰還素子を設ける構成であるので、回路を複雑化させることなく、高周波での反射利得が容易に得られ、安価なプロセスを用いて高周波発振回路を実現できる。また、高周波帯における負性抵抗(反射利得)の設計が容易となる。
【0012】
さらに、駆動電圧の印加経路が一経路であるので一定の電源電圧印加時に全体に低消費電流化できる。また、バッファアンプを発振回路の後段に配置しているので、負荷変動を回避できる。
【0013】
(2)前記直流電流経路用インダクタは、発振周波数でインピーダンスがほぼ最大となるものとする。
【0014】
これにより、ドレイン端から前記直流電流経路用インダクタを見込むインピーダンスが高くなり、FET間の高周波伝送部に影響を及ぼさない。
【0015】
(3)前記直流電流経路用インダクタに代えて、前記バッファアンプ用FETのソースを、発振周波数に対する1/4波長線路を介して前記発振回路用FETのドレインに接続してもよい。
【0016】
この構成により、高周波帯域では集中定数のインダクタを使用できない場合であっても、高周波に対応した回路パターンの形成が容易になる。
【0017】
(4)必要に応じて前記バッファアンプ用FETのゲート電圧を制御してバッファアンプ用FETをオン/オフする制御端子を設ける。
【0018】
これにより、バッファアンプ用FETをオン/オフすることができ、高周波発振回路を間欠駆動することができ、そのことにより低消費電流化できる。
【0019】
(5)発振周波数は例えば10GHz以上とし、発振回路用FETおよびバッファアンプ用FETによる発振回路の増幅回路部分は集積回路で構成してもよい。
【0020】
高周波帯域(10GHz以上)において、例えば回路をディスクリートFETで構成したとすると、FET間の実装部(ワイヤ、バンブなど)により接続のための電気長が1/2波長以上になってしまうが、これを集積回路とすることにより、電気長1/2波長の条件を実現しやすくなる。
【0021】
また、実装部・引き回しに起因する寄生成分の影響を小さくすることができ、広帯域化が図れる。さらに、実装部のばらつきの影響を受けないため、特性ばらつきを低減できるとともに、小型にレイアウトすることができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、使用可能な周波数帯域が広帯域化でき、且つ、例えば10GHz以上の高周波数波帯で用いる場合にも高価なFETを用いることなく安価に高周波発振回路を構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
《第1の実施形態》
第1の実施形態に係る高周波発振回路について図2〜図4を参照して説明する。
図2は第1の実施形態に係る高周波発振回路の回路図である。この高周波発振回路101は、共振回路10と、増幅回路11と、増幅回路11に対して電源電圧およびバイアス電圧を供給する外部回路とで構成している。
【0024】
増幅回路11は、発振回路用FET Q1およびバッファアンプ用FET Q2を備えている。発振回路用FET Q1のソースには共振回路10を接続している。発振回路用FET Q1のゲートと接地との間には、直列帰還素子である線路SL1を接続している。また、Q1のソースはインダクタL3を介して直流的に接地している。バッファアンプ用FET Q2のドレインはインダクタL1を介して電源端子Vdに接続している。この電源端子VdはバイパスキャパシタC4を介して高周波的に接地している。
【0025】
バッファアンプ用FET Q2のソースはキャパシタC2を介して高周波的に接地している。さらに、Q2のソースは、直流電流経路用インダクタL2を介して発振回路用FET Q1のドレインに接続している。
【0026】
バッファアンプ用FET Q2のゲートと発振回路用FET Q1のドレインとは直流カットキャパシタC1および線路SL2を介して接続している。このQ2のゲートとQ1のドレインとの間の電気長は発振周波数の1/2波長未満としている。
【0027】
直流カットキャパシタC1と線路SL2との接続点とゲートバイアス端子Vgとの間には抵抗R1を設けている。このゲートバイアス端子Vgには抵抗R4,R5からなるバイアス回路を接続している。
【0028】
上記2つのFET Q1,Q2はデプレッション型のFETであり、電源端子Vdには正の電源電圧Vddが印加される。また、ゲートバイアス端子Vgには、電源電圧Vddが抵抗R4,R5からなるバイアス回路で分圧された正のゲートバイアス電圧が印加される。
【0029】
この高周波発振回路101の出力信号はバッファアンプ用FET Q2のドレインからキャパシタC3を介して取り出すように構成している。図中、抵抗の記号で示す負荷回路12は発振信号の供給を受ける回路である。
発振回路用FET Q1の高周波信号はQ1のドレインからバッファアンプ用FET Q2のゲートに供給される。
【0030】
図2において、電源端子Vdからの直流電流の経路(直流電圧印加の経路)は、図中矢印で示すように、Vd→L1→Q2→L2→Q1→L3の経路である。ここで発振回路用FET Q1およびバッファアンプ用FET Q2はいずれもデプレッション型のFETであり、ゲートバイアス電圧が0Vでも導通する。このように、電源端子からの直流電流は2つのFET Q1,Q2を直列に通過するので、すなわち駆動電圧の印加経路が一経路であるので、全体に低消費電流化できる。また、バッファアンプを発振回路の後段に設置しているので、負荷変動を抑えることができる。
【0031】
発振回路用FET Q1のゲートには直列帰還素子である線路SL1を接続して、Q1のゲートから見込むインピーダンスを誘導性にしている。このことにより増幅回路部を見込む反射利得を得ている。
【0032】
バッファアンプ用FET Q2のゲートにはゲートバイアス端子Vgの電圧が印加される。
【0033】
バッファアンプ用FET Q2のゲートバイアス電圧は、図2に示した抵抗R1,R4,R5によって定まり、Q2の動作点が決まる。
【0034】
Q1とQ2との間の直流カットキャパシタC1、線路(接続線路)SL2および直流電流経路用インダクタL2は、発振回路用FET Q1の出力整合素子としての設計パラメータとして用いることができる。すなわち、Q1のドレインからQ2側を見たインピーダンスを、例えば出力パワーが最大またはCN比が最大となるように最適化する。
【0035】
ここで、バッファアンプ用FET Q2のゲートと発振回路用FET Q1のドレインとの間の電気長が1/2波長未満であるので、その範囲内で発振回路用FET Q1のドレインからバッファアンプ用FET Q2側を見た反射位相を任意の位相角に設定でき、設計自由度が高くなる。そのため、出力パワーが最大またはCN比が最大となるように最適化できる。
【0036】
また、インダクタL2については、発振周波数でそのインピーダンスが最大となるようなものとする。すなわち、インダクタL2は分布定数回路として見た場合にインダクタンス成分とキャパシタンス成分を備えているが、その自己共振周波数が発振周波数または略発振周波数となるようにインダクタL2を設定する。
【0037】
なお、キャパシタC2は、発振周波数においてインピーダンスが最低となるよう定める。すなわち、キャパシタC2は分布定数回路として見た場合にインダクタンス成分とキャパシタンス成分を備えているが、その自己共振周波数が発振周波数または略発振周波数となるようにキャパシタC2を設定する。
【0038】
このようにして、ゲートに直列帰還素子を設けた発振回路用FET Q1と、ソースを接地したバッファアンプ用FET Q2と、を備えて増幅回路11を構成する。この構成によれば、発振回路用FETのゲートに直列帰還素子を設ける構成であるので、回路を複雑化させることなく、高周波での反射利得が容易に得られ、安価なプロセスを用いて高周波発振回路を実現できる。また、ゲート部に直列帰還素子を設けた構成であるので高周波帯における負性抵抗(反射利得)の設計が容易となる。
【0039】
上記増幅回路11はGaAsのMMIC(MonolithicMicrowave Integrated Circuits)で構成する。このMMICの受動素子は、スパイラルインダクタ、ミアンダインダクタ、MIMキャパシタ等として構成する。
【0040】
このMMICの回路基板への接続には半田バンプを用いることが望ましい。セルフアライメントにより、位置精度の高い実装ができることと、接続のための線路が低インダクタンスであるため、実装部・引き回しに起因する寄生成分の影響を小さくすることができ、広帯域化が図れるからである。また、実装部のばらつきの影響を受けないため、特性ばらつきを低減できるとともに小型にレイアウトすることができる。また、10GHz以上において、増幅回路11のQ1,Q2をディスクリートFETで構成したとすると、FET間の実装(ワイヤ、バンプなど)による接続のための電気長が1/2波長以上になってしまうが、これをMMICで構成することにより電気長を1/2波長未満に構成できる。
【0041】
図3は図2に示した共振回路10の回路図である。この例では、線路SL3の所定点と接地との間に共振器REを設け、線路SL3の先端を抵抗Rtで終端している。
【0042】
このように線路の所定位置に共振器を結合させた線路SL3を、図2に示した増幅回路11の発振回路用FET Q1のソースに接続することによって、共振回路10から発振回路用FET Q1のソースを見た時の抵抗が負性抵抗素子として作用し、共振回路10と発振回路用FET Q1による回路とが帯域反射型(反作用型)発振器として作用する。この共振回路10内の共振器REの具体的な構成については、別の実施形態で示す。
【0043】
図4は、上記共振回路10から増幅回路11側を見た反射利得(負性抵抗)の周波数特性を示す図である。
【0044】
この高周波発振回路101の発振周波数は共振回路10の共振周波数で定まるが、共振回路10から増幅回路11側を見た反射利得の周波数特性が重要である。図4(A)はバッファアンプ用FET Q2のゲートと発振回路用FET Q1のドレインとの間の電気長を発振周波数で1/18波長、すなわち1/2波長未満(電気角180°未満)とした場合、図4(B)はそれを(1/2+1/18)波長、すなわち1/2波長以上(電気角180°以上)にした場合の例である。
【0045】
図4(B)に示すように、Q2のゲートとQ1のドレインとの間の電気長を発振周波数の1/2波長以上とした場合に、発振周波数(この例では24GHz)より低域側に不要な利得SGが出現する。これは、使用周波数帯域内においてバッファアンプ用FET Q2のゲートと発振回路用FET Q1のドレインとの間の線路長(電気長)に応じて位相が回転し、それに応じて共振する周波数が現れるためである。
【0046】
このような不要利得SGが出現すると、それに隣接して利得が大きく落ち込む帯域が生じて、例えば24GHzを中心とする使用可能な周波数帯域が狭くなる。
【0047】
これに対して、上記電気長を1/2波長未満とすれば、図4(A)のように、この例では24GHzを中心として広い周波数帯域で使用可能な高周波発振回路が得られる。
【0048】
このように、不要利得が出現すると、発振周波数を中心とする所定帯域で所望の高利得が得られる周波数帯域幅が狭くなる。
【0049】
バッファアンプ用FET Q2のゲートと発振回路用FET Q1のドレインとの間の電気長を発振周波数で1/2波長未満とした場合、少なくとも発振周波数より低域側に不要利得が生じることはないので、増幅回路11は発振周波数を中心として広い周波数帯域で高利得特性が得られる。そのため、発振余裕度が大きくなり、素子のばらつきに対して余裕を持つことができる。
【0050】
《第2の実施形態》
図5は第2の実施形態に係る高周波発振回路の回路図である。図2に示した高周波発振回路101では、バッファアンプ用FET Q2のソースと発振回路用FET Q1のドレインとの間をインダクタL2で接続したが、図5に示す高周波発振回路102では、Q2のソースとQ1のドレインとの間を発振周波数の波長で略1/4波長の線路SL4で接続している。その他の構成は図2に示したものと同様である。
【0051】
このように略1/4波長の線路で接続することによって、この線路SL4のキャパシタC2側は高周波的に短絡であるので、Q1のドレインに接続されている他端は等価的に開放と見なせる。そのため、発振回路用FET Q1の動作に影響を与えることなく直流電流経路として作用させることができる。
【0052】
また、このような線路SL4を用いれば、集中定数のインダクタが形成できないような高周波帯で用いる場合でもパターン形成が容易になる。
【0053】
《第3の実施形態》
図6は第3の実施形態に係る高周波発振回路の回路である。この高周波発振回路103は、バッファアンプ用FET Q2のゲートバイアス端子Vgに対して制御電圧Vggを印加するように構成している。すなわち、第1・第2の実施形態ではバッファアンプ用FET Q2に対して、その動作時に必要なゲートバイアス電圧をゲートバイアス端子Vgに印加するように外部にバイアス回路を構成したが、図6に示す例では制御電圧VggによってQ2のON/OFFを制御可能としている。その他の構成は図2に示したものと同様である。
【0054】
バッファアンプ用FET Q2はデプレッション型のNチャンネルFETであるので、制御電圧Vggが所定の正電圧である時、Q2は動作領域で動作し、制御電圧Vggを所定の負電圧とすることによりQ2を遮断状態に保つことができ、これによって発振信号の出力を任意に制御できる。例えばVdd=3.0Vで、Vgg=1.5VのときQ2がオン状態になるとき、Vgg=−1.0Vとすることにより、Q2をオフすることができる。
【0055】
またQ2のオフにより、図中の矢印で示す直流電流経路が遮断されて、発振回路FET Q1の動作が停止し、全体の消費電流が極めて小さくなる。そのため、間欠的に用いる発振回路である場合に全体の電力消費を抑えることができる。
【0056】
また、仮に電源電圧の供給/遮断によって発振動作をスイッチすると、電源端子等に接続されているバイパスキャパシタの影響により、高周波発振回路の間欠駆動に応答遅れが生じるが、この実施形態の構成によれば、上記バイパスキャパシタの影響を受けないので、応答遅れなく高速で間欠駆動することができる。
【0057】
《第4の実施形態》
図7は第4の実施形態に係る高周波発振回路の回路図である。この高周波発振回路104の発振回路用FET Q1のソースはインダクタL3および抵抗R3の直列回路を介して接地している。また、バッファアンプ用FET Q2のソースとQ1のドレインとの間にはインダクタL2および抵抗R2の直列回路を接続している。
【0058】
またQ1のドレインとQ2のゲートとの間は直流カットキャパシタを介することなく線路SL2で接続している。このような構成により、電源端子Vdからの直流電流はL1→Q2→R2→L2→Q1→L3→R3の経路で流れる。
【0059】
それと同時に、Q1のドレイン電圧がQ2のゲートバイアス電圧として印加され、外部からゲートバイアス電圧を印加することなくバッファアンプ用FET Q2を動作させることができる。
【0060】
このように、バッファアンプ用FET Q2のソースと発振回路用FET Q1のドレインとの間に抵抗R2を挿入し、発振回路用FET Q1のソースと接地電極との間に抵抗R3を入れることにより、発振回路用FET Q1およびバッファアンプ用FET Q2の動作点を決定することができる。これにより、ゲート部配線、分圧抵抗、およびDCカットキャパシタを省略することができ、回路構成を簡略化できる。
【0061】
《第5の実施形態》
第5の実施形態では図8を参照して各種共振回路の具体的な構成例を示す。図3にすでに共振回路の例を示したが、それを具体的に表したものである。
図8(A)の例では、線路SL3の一端(図に示す右端)を各実施形態で示した増幅回路11に接続し、他端を抵抗Rtで終端している。そして、この線路SL3の所定位置に円柱形状の誘電体共振器RE1を配置して両者を結合させている。この共振器RE1の結合点で、線路SL3を伝搬する信号のうち共振周波数付近の周波数をもつ信号のみ選択的に反射する。
【0062】
図8(B)の例では、線路SL3の一端(図に示す右端)を各実施形態で示した増幅回路11に接続し、他端を抵抗Rtで終端するとともに、所定位置に1/4波長のオープンスタブST1を形成している。これにより、オープンスタブST1の付け根部分が等価的に短絡点となり、線路SL3を伝搬する信号が反射する。
【0063】
図8(C)の例では、線路SL3の一端(図に示す右端)を各実施形態で示した増幅回路11に接続し、他端を抵抗Rtで終端するとともに、線路SL3の所定位置に略1/2波長の長さの線路SL4を介してマイクロストリップライン共振器RE2を接続している。この共振器RE2の接続は、共振器の中央からオフセットさせて接続させる。この共振器RE2は両端開放の1/2波長共振器として作用する。この線路SL4の結合点で、線路SL3を伝搬する信号が反射する。
【0064】
また図8(D)の例では、図8(A)と異なり、線路SL3の端部を抵抗Rtを介して直流的に接地するのではなく、端部にオープンスタブST2を設けている。このスタブST2は1/4波長のオープンスタブであり、抵抗Rtとの接続点は等価的に短絡となる。この構成によれば、増幅回路11の電源からの直流電流が線路SL3に流れないので、増幅回路11の直流電流経路とは独立して共振回路10を設計できる。
【0065】
図8(E)の例では、線路SL3の一端(図に示す右端)を各実施形態で示した増幅回路11に接続し、他端を抵抗Rtで終端するとともに、線路SL3の所定位置に略1/2波長線路の共振器RE3を磁界(誘導)結合させている。この共振器RE3の結合点で、線路SL3を伝搬する信号のうち共振周波数付近の周波数をもつ信号のみ選択的に反射する。
【0066】
図8(F)の例では、線路SL3の一端(図に示す右端)を各実施形態で示した増幅回路11に接続し、他端を抵抗Rtで終端するとともに、線路SL3の所定位置に略1/2波長線路の共振器RE3を電界(容量)結合させている。この共振器RE3の結合点で、線路SL3を伝搬する信号のうち共振周波数付近の周波数をもつ信号のみ選択的に反射する。
【0067】
なお、図8(A)(D)(E)(F)では各共振器を線路SLと同一平面に配置した例を示したが、共振器と線路SL3とは別の層に配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】特許文献1に示されている高周波発振回路の回路図である。
【図2】第1の実施形態に係る高周波発振回路の回路図である。
【図3】同高周波発振回路の共振回路の構成を示す図である。
【図4】同高周波発振回路のバッファアンプ用FET Q2のゲートと発振回路用FET Q1のドレインと間の電気長による特性変化の例を示す図である。
【図5】第2の実施形態に係る高周波発振回路の回路図である。
【図6】第3の実施形態に係る高周波発振回路の回路図である。
【図7】第4の実施形態に係る高周波発振回路の回路図である。
【図8】第5の実施形態に係る高周波発振回路で用いる共振回路の具体的な構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0069】
10−共振回路
11−増幅回路
12−負荷回路
101〜104−高周波発振回路
Q1−発振回路用FET
Q2−バッファアンプ用FET
SL1−線路(直列帰還素子)
SL2−線路
RE−共振器
L1,L3−インダクタ
L2−直流電流経路用インダクタ
C1−直流カットキャパシタ
C2,C3−キャパシタ
Vg−ゲートバイアス端子
Vd−電源端子
Vgg−制御電圧
Vdd−電源電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振回路用FETを有する発振回路、バッファアンプ用FETを有するバッファアンプ、および共振回路を備えた高周波発振回路であって、
前記発振回路用FETのゲートを、直列帰還素子を介して接地し、前記発振回路用FETのソースを直流的に接地し、前記発振回路用FETのソースに前記共振回路を接続し、前記バッファアンプ用FETのドレインを電源に接続し、前記バッファアンプ用FETにキャパシタを介して発振信号の出力端子を接続し、前記バッファアンプ用FETのソースを高周波的に接地し、且つ、当該バッファアンプ用FETのソースを、直流電流経路用インダクタを介して前記発振回路用FETのドレインに接続し、前記バッファアンプ用FETのゲートと前記発振回路用FETのドレインとを直流カットキャパシタおよび線路を介して接続するとともに、前記バッファアンプ用FETのゲートと前記発振回路用FETのドレインとの間の電気長を発振周波数の1/2波長未満とした高周波発振回路。
【請求項2】
前記直流電流経路用インダクタは、発振周波数でインピーダンスがほぼ最大となるものである請求項1に記載の高周波発振回路。
【請求項3】
前記直流電流経路用インダクタに代えて、前記バッファアンプ用FETのソースを発振周波数に対する1/4波長線路を介して前記発振回路用FETのドレインに接続した、請求項1に記載の高周波発振回路。
【請求項4】
前記バッファアンプ用FETのゲート電圧を制御して前記バッファアンプ用FETをオン/オフする制御端子を設けた請求項1〜3のいずれかに記載の高周波発振回路。
【請求項5】
発振周波数は10GHz以上であり、前記発振回路用FETおよび前記バッファアンプ用FETによる増幅回路部分を集積回路で構成した請求項1〜4のいずれかに記載の高周波発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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