説明

高周波装置及び高周波モジュール

【課題】高周波信号の挿入損失が小さく、信頼性の高い高周波装置及び高周波モジュールを提供する。
【解決手段】高周波装置10は、半導体素子36が第一面に搭載されるモジュール基板32と、アンテナ素子38を備えるアンテナ基板34と、から構成される高周波モジュール30と、電源・制御回路基板20と、を備える。モジュール基板32は、半導体素子36に繋がる導波路321,351を第一面近傍に有する。アンテナ基板34は、モジュール基板32の第一面に接合され、導波路321,351とアンテナ素子38とに接続される導波管340,370を有する。電源・制御回路基板20は、モジュール基板32における一面の反対側の第二面に接合される。このような構成により、高周波信号が流れる部位と電源・制御信号が流れる部位とを離間させることで、相互に生じるノイズを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波信号を送受信する高周波装置及び高周波モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信技術の発達に伴い、回路基板上にアンテナ素子を備えるアンテナ一体型の高周波モジュールが各方面で利用されている。アンテナ一体型の高周波モジュールとして、基板の一方の表面あるいは内部にアンテナ素子が設けられ、他方の表面にアンテナ素子と接続された半導体素子を搭載してなるアンテナ基板と、表面又は内部に導体パターンが被着形成されたモジュール基板とを具備し、モジュール基板の表面にアンテナ基板を実装してなるアンテナモジュールが特許文献1に開示されている。
【0003】
また、モジュールをマザーボード(電源・制御回路基板)に実装して機器を組み立てる際の工程短縮あるいはコスト削減の観点から、リードレス化された高周波モジュールをマザーボードにBGA(Ball Grid array)接続する技術が特許文献2に開示されている。
【0004】
特許文献2に開示された高周波モジュールにおいて、高周波パッケージ(あるいは高周波モジュール)の高周波信号は、BGAの半田間の空間、及びマザーボードに形成された導波管を介して、半導体素子とアンテナとの間で入出力される。また、その他の信号、接地及び電源端子はBGAを介してマザーボードに接続されている。この構造によって、リード接続に比べて接続工程のスループットを高くしている。更に、半田のセルフアライメントによって、導波管の位置合わせを容易にし、組立コストを削減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−42006号公報
【特許文献2】特開2008−252207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、高周波信号と電源・制御信号とがモジュール基板の同じ面側に集中しているため、高周波信号が電源・制御信号へノイズとして混入する問題があり、機能信頼性の高いものではなかった。
【0007】
また、特許文献2に開示された技術は、高周波信号が、高周波モジュールとマザーボードとの接続部である半田ボール間の空間を通過することとなるため、高周波信号の挿入損失が大きくなってしまう問題があった。
【0008】
また、導波管モードに変換され、モジュール基板の厚みに依存する高周波信号の損失を抑えるために、モジュール基板の厚みを薄くするという対応も考えられる。しかし、モジュール基板の厚みを薄くすると、全体として高周波モジュールの剛性が低くなる。このため、一定水準の品質のための所定の剛性基準を満たすことが難しくなり、高周波モジュールそのものの歩留まりが低くなってしまう。また、モジュール基板の厚みを薄くするとモジュール基板の反りが大きくなり、これによって、電源・制御回路基板への搭載歩留まりが低くなってしまう問題があった。
【0009】
以上説明したように、BGAの半田ボール間の空間を介して、アンテナ構造体と電源・制御回路基板とが高周波信号を入出力する高周波モジュールでは、BGAの半田ボール間の空間を通過する分、高周波信号の挿入損失が大きくなってしまう問題があった。また、基板厚みに比例して高周波信号の挿入損失が大きくなってしまう問題があった。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高周波信号の挿入損失が小さく、信頼性の高い高周波装置及び高周波モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の観点に係る高周波装置は、
高周波信号を送受信する半導体素子が第一面に搭載され、前記半導体素子に繋がる導波路が前記第一面近傍に形成されたモジュール基板と、
前記モジュール基板の前記第一面に接合され、前記半導体素子から前記高周波信号を受信、及び/又は前記半導体素子に前記高周波信号を発信するアンテナを備え、前記導波路と前記アンテナとに接続される導波管が形成されたアンテナ基板と、
から構成される高周波モジュールと、
前記モジュール基板における前記一面の反対側の第二面に接合され、前記高周波モジュールを制御する電源・制御回路基板と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の第2の観点に係る高周波モジュールは、
高周波信号を送受信する半導体素子が第一面に搭載され、前記半導体素子に繋がる導波路が前記第一面近傍に形成され、電源・制御回路基板が前記一面の反対側の第二面に接合されるモジュール基板と、
前記モジュール基板の前記第一面に接合され、前記半導体素子から前記高周波信号を受信、及び/又は前記半導体素子に前記高周波信号を発信するアンテナを備え、前記導波路と前記アンテナとに接続される導波管が形成されたアンテナ基板と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高周波信号の挿入損失が小さく、信頼性の高い高周波装置及び高周波モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態に係る高周波装置を示す断面図である。
【図2】アンテナが一体化された高周波モジュールを示す拡大断面図である。
【図3】モジュール基板における導波路を示す拡大断面図である。
【図4】モジュール基板における導波路を示す拡大断面図である。
【図5】モジュール基板におけるアンテナ基板接続面を示す上面図である。
【図6】アンテナ基板のキャップ構成部を示す断面図である。
【図7】第1変形例に係るモジュール基板におけるアンテナ基板接続面を示す上面図である。
【図8】第2変形例に係る高周波モジュールを示す拡大断面図である。
【図9】第3変形例に係る高周波モジュールを示す拡大断面図である。
【図10】第4変形例に係るアンテナ基板のキャップ構成部を示す断面図である。
【図11】第2実施形態に係る高周波モジュールを示す断面図である。
【図12】アンテナ基板とモジュール基板とから成るキャップ構成部を示す断面図である。
【図13】第5変形例に係るアンテナ基板とモジュール基板とから成るキャップ構成部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る高周波装置及び高周波モジュールの実施形態について添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
<第1実施形態>
図1に、本発明の実施形態に係る高周波装置10の断面図を示す。高周波装置10は、電源・制御回路を有する電源・制御回路基板(マザーボード)20と、電源・制御回路に使用される電子部品22と、高周波信号を送受信する高周波モジュール30とを備える。
【0017】
電源・制御回路基板20は、外部の給電回路(不図示)から給電された電荷を蓄え、この電荷を電源電力として、高周波装置10に設けられた電子部品22に供給するものである。また、電源・制御回路基板20は、高周波信号の送信動作及び受信動作の切替信号等の制御信号を高周波モジュール30に供給するものである。
【0018】
電源・制御回路基板20の下面には、複数の電子部品22がフリップチップ接続によって搭載されている。フリップチップ接続は、電子部品22がミリ波帯の信号を送受信する場合に、接続部の伝送損失を小さくできるために好適である。電子部品22をフリップチップ接続する際のバンプの材料は限定されないが、金(Au)スタッドバンプ又は半田バンプ等が好適に用いられる。また、電源・制御回路基板20の上面の一部に、導電性接合材320によって、高周波モジュール30がBGA接続されている。なお、電子部品22には、例えば、電源回路用部品や信号処理用ICや受動素子部品等が用いられるが、これに限定されない。また、電子部品22は、図1に示すように電源・制御回路基板20における上面(高周波モジュール30との接続面)に搭載してもよい。その接合部材・方法も限定されないが、半田等を用いるのが好適である。
また、電源・制御回路基板20の周縁には、高周波装置10を他の装置などにネジによって固定するための、厚さ方向に貫通する複数の固定用孔24が形成されている。なお、高周波装置10の固定方法は、この固定方法に限定されるものではない。
【0019】
高周波モジュール30は、図2に拡大して断面が示されているように、主にモジュール基板32、アンテナ基板34、半導体素子36及びアンテナ素子38を備える。
【0020】
モジュール基板32は、周波数変換するための信号を発振する発振器(図示せず)等を備える。
モジュール基板32の下面(第二面)には、電源・制御回路基板20に接合するための導電性接合材320が形成されている。モジュール基板32の上面(第一面)には、半導体素子搭載部326が形成されている。半導体素子36は、導電性接合材360によって半導体素子搭載部326に接合・搭載されている。さらに、モジュール基板32の上面に誘電体から成るアンテナ基板34が一体的に接合されている。更に、モジュール基板32は、半導体素子36の搭載面近傍の内層に、導体配線(銅線等)から成り、送信高周波信号が通る1本の導波路321、及び受信高周波信号が通る5本の導波路351を備える。導波路321の一方の端部は、後述の導波管ポート324に対向し、他方の端部は、ビア325及び半導体素子搭載部326を介して半導体素子36に繋げられている。5本の導波路351の一方の端部は、後述の5つの導波管ポート354の夫々に対向し、他方の端部は、ビア355及び半導体素子搭載部326を介して半導体素子36に繋げられている。
【0021】
また、図3に拡大して示すように、導波路321,351の夫々は、ビア325,355の夫々によって垂直方向に一体的に半導体素子搭載部326と接続される。なお、これに限らず、図4に示すように、ビア325,355を介してモジュール基板32の表面に一部が露出され、半導体素子搭載部326aと水平方向に一体的に接続されている導波路321a,351aであってもよい。
【0022】
また、モジュール基板32の導波路321,351には、高周波信号伝搬性及び放熱性の点からコプレーナ線路が好適であるが、これに限定されない。
更に、詳細については後述するが、導波路321,351の一方の端部のそれぞれに、導波管340,370に適応するモード又は導波路321,351に適応するモードに変換するモード変換部323,353が設けられている。
【0023】
図5は、モジュール基板32のアンテナ基板34との接合面におけるパターンの例を示すものである。図5に示されるように、接地電位のベタパターン329には、導波管ポート324,354の抜きパターン、半導体素子搭載部326の抜きパターン、及び半導体素子36の接続パッド328が設けられている。
【0024】
半導体素子36は、高周波信号の増幅、変復調、フィルタリングや周波数変換等を行うものである。本実施形態に係る高周波モジュール30は、1個の半導体素子36のみを備えるものとして説明するが、複数であってもよい。
【0025】
アンテナ基板34の下面には、1つの送信用導波管ポート324及び5つの受信用導波管ポート354が設けられている。送信用導波管ポート324を開放端とし、導体で覆われた中空の管から成る1本の導波管340がアンテナ基板34に形成されている。また、受信用導波管ポート354を開放端とし、導体で覆われた中空の管から成る5本の導波管370がアンテナ基板34に形成されている。アンテナ基板34の上面には、6個のアンテナ素子38が、導波管340,370のそれぞれの他方の開放端に繋がるように一体的に搭載されている。アンテナ素子38は、誘電体をベースとし、誘電体に設けた孔の内部に金属膜を形成した導波管とスロットアレイとからなる平面アンテナである。
また、アンテナ基板34における半導体素子36に対向する部位には、キャップ構成部(凹部)342が形成されている。また、アンテナ基板34のキャップ構成部342は、モジュール基板32に搭載された半導体素子36を覆い(収容し)、電磁シールドとして機能する。
【0026】
次に、アンテナ基板34のキャップ構成部342の断面図を図6に示す。キャップ構成部342は、アンテナ基板34の下面から上方に凹状に窪み、半導体素子36を覆うように形成されている。キャップ構成部342は、その表面に、導体344が形成されていることを特徴としている。このように、キャップ構成部342に導体344が形成されていることにより、半導体素子36とその外部にある電子部品22との電磁遮蔽の効果を高めることができる。
【0027】
次に、上記のように構成された高周波モジュール30の動作について説明する。半導体素子36からアンテナ素子38へ出力される高周波信号は、半導体素子36の搭載面上あるいはビア325を介して搭載面近傍の内層の導波路321を伝搬し、モード変換部323によってモードを変換される。変換された高周波信号は、送信用導波管ポート324、及びアンテナ基板34に形成された導波管340を介して、アンテナ素子38に伝搬される。
【0028】
逆に、アンテナ素子38から半導体素子36へ出力される高周波信号は、アンテナ基板34に形成された導波管370及び受信用導波管ポート354を介して、モジュール基板32内に伝搬し、モード変換部353によってモードを変換される。変換された高周波信号は、導波路351及びビア355を介して半導体素子36に入力される。
【0029】
半導体素子36に入出力される高周波信号は、モジュール基板32に設けられた導波路321,351内のモード変換部323,353により、導波管340,370に適応するモード又は導波路321,351に適応するモードに変換される。このため、高周波装置10の高周波信号は、従来のものと異なり、電源・制御回路基板20の厚みへの依存度が低く、BGA(導電性接合材320)間の空間を経ることがない。つまり、高周波信号は、アンテナ素子38と半導体素子36との間で、導波管340,370及び導波路321,351によって、短距離で入出力される。このため、高周波信号の挿入損失が抑制される。
【0030】
このように、高周波信号が入出力されるのは、高周波モジュール30内のみであり、電源・制御回路基板20には入出力されない。よって、高周波モジュール30は、高周波信号と電源・制御信号とが相互に関わり合うことがなく(ノイズが生じず)、EMI耐性に優れたものとなる。
【0031】
また、モジュール基板32及びアンテナ基板34は、高周波信号での誘電損失が小さい材料であるポリフェニレンエーテル(PPE)を主成分としたプリント基板、液晶ポリマー(LCP)基板、又は低温同時焼成セラミック(LTCC)基板等で形成されるものが望ましい。特にPPEを主成分としたプリント基板は、プリント基板からなるマザーボードへの2次実装接続信頼性及びコストの点から好適である。なお、これに限定されず、モジュール基板32及びアンテナ基板34は、有機基板やセラミック基板等で形成されるものであってもよい。このように、有機基板やセラミック基板等の低損失誘電体から形成されたモジュール基板32及びアンテナ基板34を用いることにより、高周波信号の損失を小さくすることができる。したがって、高周波信号の損失を抑えることのみ考慮すると有機基板やセラミック基板が好適である。なお、コスト面を含めて考慮に入れると、PPEを主成分としたプリント基板が適している。
また、アンテナ基板34とモジュール基板32との接続方法は、導電性接着剤や半田等で接続されるようにしてもよく、これに限定されない。
【0032】
上記のように構成された高周波モジュール30が電源・制御回路基板20にBGA接続されることで、高周波装置10が低コストで製造される。
【0033】
また、高周波モジュール30は、アンテナ素子38を一体的に備えている。このため、高周波装置10においては、図1に示すように、電源・制御回路基板20における高周波モジュール30の搭載面の反対面であり、従来、アンテナが接合されていた面に、電子部品22を搭載することが可能となり装置の小型化が可能となっている。
【0034】
また、アンテナ素子38とモジュール基板32とのインターフェイスに導波管340,370が形成されている。このようにすることで、高周波モジュール30の製造過程において、アンテナ基板34に接合する前に、アンテナ素子38を導波管340,370に接触させることにより、その動作確認を容易に行うことができる。そのため、検査済みのアンテナを接続することにより、アンテナ素子38が一体的に形成された高周波モジュール30を高歩留まりで製造することができる。
【0035】
<第1変形例>
第1変形例に係るモジュール基板33におけるアンテナ基板34との接合面のパターンは、図7に示すように、図5に示されたベタパターン329の代わりに、ドットパターン330が形成されているものである。パターンには、少なくとも導波管ポート324,354及び接続パッド328が形成されていればよく、図5に示された例及び図7に示された第1変形例によるものに限定されない。なお、図5及び図7に示すように送信用導波管ポート324が1つ(送信1チャンネル)、受信用導波管ポート354が5つ(受信5チャンネル)であるものとして説明したが、本発明の構成は、それぞれのチャンネル数を限定するものではない。
【0036】
<第2変形例>
第2の変形例に係る高周波モジュール40は、図8に示すように、フィルム基板から成るモジュール基板400を備えるものである。モジュール基板400は、アンテナ基板34と一体的に接合されていることにより剛性が十分に保たれているため、フィルム基板とすることができる。第2の変形例に係る高周波モジュール40が、フィルム基板であるモジュール基板400を備えることで、高周波モジュール40及びこれを備える高周波装置10をコンパクトにすることができる。
【0037】
なお、モジュール基板400の材質は、上記モジュール基板32及びアンテナ基板34の材質と同様のものでもよく、これに限定されない。例えば、モジュール基板400の材質は、ポリイミドが好適に用いられる。
【0038】
<第3変形例>
また、上記のアンテナ素子38は、誘電体をベースとし、誘電体に設けた孔の内部に金属膜を形成した導波管とスロットアレイとからなる平面アンテナであるとして説明したが、これに限定されない。例えば、本発明に係る高周波モジュールは、図9に示すように、ホーンアンテナ428を備える高周波モジュール42であってもよい。また、アンテナ基板34の導波管340,370に、金属から成るアンテナを接続した構造でもよい。
【0039】
<第4変形例>
また、キャップ構成部342は、その表面が導体344に覆われているものであるとして説明したが、これに限定されない。例えば、図10に示すように、キャップ構成部342の表面が電波吸収体346に覆われているものであってもよい。電波吸収体346は、例えば、板金、金属メッシュ又は合成ゴム等から成るものであるが、電磁遮蔽の効果を奏するものであればこれに限定されない。電波吸収体346が形成されていることにより、導体344が形成されている例と同様に、キャップ構造部342の電磁遮蔽の効果が高められる。このように、キャップ構成部342の表面を所望の材質(上記の導体344又は電波吸収体346等)で覆うことで、半導体素子36の電磁的な周辺環境を、アンテナ基板34の材質に依らずに調整することができる。
【0040】
<第2実施形態>
図11は、本発明の他の実施形態に係る高周波装置10の高周波モジュール50を示す断面図である。本実施形態に係る高周波モジュール50は、第1実施形態に係る高周波モジュール30と異なり、モジュール基板52の上面側(アンテナ基板54に接合される面側)にキャビティ(キャップ構成部)522が形成され、このキャビティ522内に半導体素子36が収容・搭載されている。更に、モジュール基板52は、半導体素子搭載部326よりも下層に、半導体装置36の搭載面に対し略平行に配設された導波路520,550を備える。導波路520,550の一方の端部は、導波管ポート324,354の夫々に対向し、その近傍にモード変換部323,353が設けられ、他方の端部は、ビア325,355の夫々及び半導体素子搭載部326を介して半導体素子36に繋げられている。
【0041】
更に、モジュール基板52は、導波路520,550の一方の端部と導波管ポート324,354との間に、6本のスロット525を有し、スロット525以外で高周波信号の伝搬を制限(遮蔽)する導体板(伝搬制限部)524を備える。6本のスロット525は、1つの送信用導波管ポート324及び5つの受信用導波管ポート354に対向する位置に対応する数(本実施形態においては6つ)だけ導体板524に形成されている。なお、このスロット525と導波管ポート324,354とは、対応する位置に対応する数だけ形成されていればよく、その数は任意である。
また、誘電体から成るアンテナ基板54には、図6及び図10を参照して説明したキャップを構成するための凹部342は形成されていない。その他の高周波モジュール50の主な構成は、第1実施形態に係る高周波モジュール30の構成と同様である。
【0042】
本実施形態に係る高周波モジュール50は、モジュール基板52側に、半導体素子36が収容・搭載されていることで、半導体素子36に下側に形成される導波路520,550が、アンテナ基板54に形成された導波管340,370の導波管ポート324,354と離間することなる。このような場合であっても、高周波信号は、スロット525を介して、モード変換部323から送信用導波管ポート324に略直線的に伝搬することとなる。同様に、高周波信号は、スロット525を介して、受信用導波管ポート354からモード変換部353に略直線的に伝搬することとなる。このように、スロット525を有する導体板524を備えることで、送受信に好適な高周波信号のみが導波管340,370と導波路520,550との間を通ることとなり、ノイズの発生を抑制することができる。
【0043】
なお、本実施形態に示すように、導体板524を、モジュール基板52に半導体素子36を収容するキャビティ522が形成される高周波モジュール50が備えるようにすることが好適であるが、本発明はこれに限定されず、実施形態1のようなモジュール基板52に半導体素子36を収容するキャビティ522が形成されるものが備えるようにしてもよい。このような場合でも、導波路520,550と導波管340,370が離れているような構成であれば、導体板524は、ノイズの発生の抑制に特に効果的に機能する。
【0044】
また、本実施形態に係る高周波モジュール50は、低損失であり、低コストで製造可能であるという、第1実施形態に係る高周波モジュール30と同様の効果を奏し得る。更に、本実施形態に係る高周波モジュール50は、アンテナ基板54の構造が単純となるため、低コストで製造される。
【0045】
なお、モジュール基板32は、キャビティ522を形成することを要するため、キャビティ522の有無によるコスト差が比較的小さいセラミック基板が適しているが、これに限定されるものではない。また、高周波モジュール50は、上方に位置するアンテナ基板54の下面で半導体素子36がキャップされることになるため、第1実施形態に係る高周波モジュール30と同様にEMI耐性も優れている。
【0046】
次に、本実施形態に係る高周波モジュール50のキャップ構成部は、図12に示すように、モジュール基板52のキャビティ522とアンテナ基板54とから構成される。アンテナ基板54における半導体素子36に対向する下面には、キャビティ522の開放端を覆うように、導体544が形成されている。このように、キャップ構成部に導体544が形成されていることにより、半導体素子36に対する電磁遮蔽の効果が高められる。
【0047】
<第5変形例>
また、アンテナ基板54における半導体素子36に対向する下面は、導体544に覆われているものであるとして説明したが、これに限定されない。例えば、図13に示すように、アンテナ基板54における半導体素子36に対向する下面に、キャビティ522の開放端を覆うように、電波吸収体546が形成されているものであってもよい。電波吸収体546は、例えば、板金、金属メッシュ又は合成ゴム等から成るものであるが、電磁遮蔽の効果を奏するものであれば、これに限定されない。電波吸収体546が形成されていることにより、キャップとしての電磁遮蔽の効果を高めることができる。このように、アンテナ基板54における半導体素子36に対向する下面を所望の材質(上記の導体544又は電波吸収体546等)で覆うことで、半導体素子36の電磁的な周辺環境を、アンテナ基板54の材質に依らずに調整することができる。
【0048】
上記実施形態において、本発明の範囲及び広い趣旨から逸れなければ、多様な変形を加えるようにしてもよい。つまり、上記実施形態は、本発明を説明することを意図するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0049】
例えば、図1、図2、図8、図9及び図11に、導電性接合材320から成るBGA接続用のバンプを図示したが、バンプは無くてもよく、その場合はモジュール基板32,400,52が接続される電源・制御回路基板20側に半田を供給するようにしてもよい。また、モジュール基板32,400,52は、ソルダーレジストが積層された構成を備えるようにしてもよい。
【0050】
また、電子部品22及び半導体素子36の接続方法においては、上記実施形態のように、フリップチップ接続に限定せず、ワイヤボンディング接続等を用いるようにしてもよい。また、電子部品22及び半導体素子36の種類、サイズや数、半田バンプのサイズやピッチは限定されない。
【0051】
また、半導体素子36や電子部品22の封止に、所望の材質のアンダーフィル樹脂を用いるようにしてもよい。もしアンダーフィル樹脂を用いるのであれば、半導体素子36や電子部品22との熱膨張差が小さいものを用いるのが好ましい。また、半導体素子36や電子部品22の入出力端子ピッチが、例えば150μm以下に微細化されたものであり、バンプ間の空間が小さい場合でも、アンダーフィル樹脂は、ボイド(気孔)等の発生がなく十分に充填される必要がある。また、アンダーフィル樹脂を構成する無機フィラーが、半導体素子36や電子部品22に損傷を与えない必要がある。これらの観点から、無機フィラーと有機樹脂の複合体からなる材料がアンダーフィル樹脂に好適である。特に、アンダーフィル樹脂は、最大粒径5μm以下の無機フィラー40〜60wt%と有機樹脂からなる複合体が適している。
【0052】
また、モジュール基板32,400,52の電極材料も限定されないが、有機基板の場合は銅(Cu)が好適であり、低温同時焼成セラミック(LTCC)基板の場合は銀−パラジウム(Ag−Pd)合金が好適である。また、電極の表面処理も限定はされないが、下地にニッケル(Ni)めっきバリアが用いられた金(Au)めっき処理であるのが、電子部品22の接続に好適である。
【0053】
以上、説明したように、本発明に係る高周波モジュールにおいては、アンテナを備えるアンテナ基板と、半導体素子を備えるモジュール基板とが接合されている。このため、本発明に係る高周波モジュールにおいては、従来のようなアンテナと半導体素子との間に余分な基板(例えば従来技術における電源・制御回路基板)がなく、高周波信号がBGA間の空間を通ることがない。したがって、アンテナと半導体素子との間で送受される高周波信号の挿入損失を抑制でき、その高周波信号の信頼性を高めることができる。また、従来のように、アンテナと半導体素子との間に余分な基板がないため、この基板に導波管を形成する必要が無く、製造コストを削減することができる。
【0054】
また、本発明に係る高周波装置においては、モジュール基板の第一面側に、半導体素子が搭載され、及びアンテナ基板が接合され、第二面側に電源・制御回路基板が接合されている。このため、電源・制御回路基板とモジュール基板との間で送受信される電気信号と、アンテナと半導体素子との間で導波管及び導波路を介して送受信される高周波信号との干渉を抑制できる。また、本発明に係る高周波装置は、従来と異なり、電源・制御回路基板におけるモジュール基板搭載面の反対面にアンテナ基板が接合されておらず、小型化に好適な構成である。
【0055】
また、半導体素子がアンテナ基板とモジュール基板とに囲繞されることで、高周波信号と外部に流れる電気信号との相互のノイズの発生が抑制される。
【0056】
また、半導体素子を収容する凹部がアンテナ基板に形成されていることで、モジュール基板にキャビティを形成する必要が無くなる。このようにすることで、モジュール基板の構造を単純にすることができ、高周波モジュールを低コストで製造可能となる。
【0057】
また、半導体素子を収容するキャビティがモジュール基板に形成されていることで、アンテナ基板に凹部を形成する必要が無くなる。このようにすることで、アンテナ基板の構造を単純にすることができ、高周波モジュールを低コストで製造可能となる。
【0058】
また、アンテナ基板及びモジュール基板における半導体素子を囲繞する部位の少なくとも一部が導体で覆われているようにすることで、半導体素子とその外部にある電子部品との電磁遮蔽の効果を高めることができる。
【0059】
また、アンテナ基板及びモジュール基板における半導体素子を囲繞する部位の少なくとも一部は電波吸収体で覆われているようにすることで、半導体素子とその外部にある電子部品との電磁遮蔽の効果を高めることができる。
【0060】
モジュール基板とアンテナ基板とが接合され、全体として高い剛性を有することで、モジュール基板をフィルム基板とすることができ、高周波モジュール及びこれを備える高周波装置をコンパクトにすることができる。
【0061】
アンテナ基板及び/又はモジュール基板を有機基板で形成することで、高周波モジュール基板を低コストで製造することができる。
【0062】
また、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0063】
(付記1)
高周波信号を送受信する半導体素子が第一面に搭載され、前記半導体素子に繋がる導波路が前記第一面近傍に形成されたモジュール基板と、
前記モジュール基板の前記第一面に接合され、前記半導体素子から前記高周波信号を受信、及び/又は前記半導体素子に前記高周波信号を発信するアンテナを備え、前記導波路と前記アンテナとに接続される導波管が形成されたアンテナ基板と、
から構成される高周波モジュールと、
前記モジュール基板における前記一面の反対側の第二面に接合され、前記高周波モジュールを制御する電源・制御回路基板と、
を備える、
ことを特徴とする高周波装置。
【0064】
(付記2)
前記半導体素子は、前記アンテナ基板と前記モジュール基板とに囲繞される、ことを特徴とする付記1に記載の高周波装置。
【0065】
(付記3)
前記アンテナ基板には、前記半導体素子を収容する凹部が形成されている、ことを特徴とする付記2に記載の高周波装置。
【0066】
(付記4)
前記モジュール基板には、前記半導体素子を収容するキャビティが形成されている、ことを特徴とする付記2に記載の高周波装置。
【0067】
(付記5)
前記モジュール基板は、前記導波管のポートに対向する位置に前記高周波信号を通すスロットを有し該スロット以外で前記高周波信号の伝搬を制限する伝搬制限部を備える、ことを特徴とする付記1乃至4のいずれかに記載の高周波装置。
【0068】
(付記6)
前記アンテナ基板及び前記モジュール基板における前記半導体素子を囲繞する部位の少なくとも一部は導体で覆われている、ことを特徴とする付記2乃至5のいずれかに記載の高周波装置。
【0069】
(付記7)
前記アンテナ基板及び前記モジュール基板における前記半導体素子を囲繞する部位の少なくとも一部は電波吸収体で覆われている、ことを特徴とする付記2乃至5のいずれかに記載の高周波装置。
【0070】
(付記8)
前記モジュール基板はフィルム基板である、ことを特徴とする付記1乃至7のいずれかに記載の高周波装置。
【0071】
(付記9)
前記アンテナ基板及び/又は前記モジュール基板は有機基板から形成される、ことを特徴とする付記1乃至8のいずれかに記載の高周波装置。
【0072】
(付記10)
高周波信号を送受信する半導体素子が第一面に搭載され、前記半導体素子に繋がる導波路が前記第一面近傍に形成され、電源・制御回路基板が前記一面の反対側の第二面に接合されるモジュール基板と、
前記モジュール基板の前記第一面に接合され、前記半導体素子から前記高周波信号を受信、及び/又は前記半導体素子に前記高周波信号を発信するアンテナを備え、前記導波路と前記アンテナとに接続される導波管が形成されたアンテナ基板と、
を備える、
ことを特徴とする高周波モジュール。
【符号の説明】
【0073】
10 高周波装置
20 電源・制御回路基板(マザーボード)
22 電子部品
30,40,42,50 高周波モジュール
32,400,52 モジュール基板
321,321a,351,351a,520,550 導波路
324 送信用導波管ポート
325,355 ビア
34,54 アンテナ基板
340,370 導波管
342 キャップ構成部(凹部)
344,544 導体
346,546 電磁吸収体
354 受信用導波管ポート
36 半導体素子
38 アンテナ素子
428 ホーンアンテナ
522 キャップ構成部(キャビティ)
524 導体板(伝搬制限部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号を送受信する半導体素子が第一面に搭載され、前記半導体素子に繋がる導波路が前記第一面近傍に形成されたモジュール基板と、
前記モジュール基板の前記第一面に接合され、前記半導体素子から前記高周波信号を受信、及び/又は前記半導体素子に前記高周波信号を発信するアンテナを備え、前記導波路と前記アンテナとに接続される導波管が形成されたアンテナ基板と、
から構成される高周波モジュールと、
前記モジュール基板における前記一面の反対側の第二面に接合され、前記高周波モジュールを制御する電源・制御回路基板と、
を備える、
ことを特徴とする高周波装置。
【請求項2】
前記半導体素子は、前記アンテナ基板と前記モジュール基板とに囲繞される、ことを特徴とする請求項1に記載の高周波装置。
【請求項3】
前記アンテナ基板には、前記半導体素子を収容する凹部が形成されている、ことを特徴とする請求項2に記載の高周波装置。
【請求項4】
前記モジュール基板には、前記半導体素子を収容するキャビティが形成されている、ことを特徴とする請求項2に記載の高周波装置。
【請求項5】
前記モジュール基板は、前記導波管のポートに対向する位置に前記高周波信号を通すスロットを有し該スロット以外で前記高周波信号の伝搬を制限する伝搬制限部を備える、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の高周波装置。
【請求項6】
前記アンテナ基板及び前記モジュール基板における前記半導体素子を囲繞する部位の少なくとも一部は導体で覆われている、ことを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の高周波装置。
【請求項7】
前記アンテナ基板及び前記モジュール基板における前記半導体素子を囲繞する部位の少なくとも一部は電波吸収体で覆われている、ことを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の高周波装置。
【請求項8】
前記モジュール基板はフィルム基板である、ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の高周波装置。
【請求項9】
前記アンテナ基板及び/又は前記モジュール基板は有機基板から形成される、ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の高周波装置。
【請求項10】
高周波信号を送受信する半導体素子が第一面に搭載され、前記半導体素子に繋がる導波路が前記第一面近傍に形成され、電源・制御回路基板が前記一面の反対側の第二面に接合されるモジュール基板と、
前記モジュール基板の前記第一面に接合され、前記半導体素子から前記高周波信号を受信、及び/又は前記半導体素子に前記高周波信号を発信するアンテナを備え、前記導波路と前記アンテナとに接続される導波管が形成されたアンテナ基板と、
を備える、
ことを特徴とする高周波モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−182682(P2012−182682A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44478(P2011−44478)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】