高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具
【課題】高周波誘導加熱用固定取り付け金具を提供する。
【解決手段】樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具であって、当該樹脂層の樹脂と同一の樹脂が金属板1の小孔1aの全空間に充填され、一体となっているものであり、更に溶着・固定される面の最外面に厚さ0.05〜1.0mm、開口率25〜90%であり高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体9を配置してなるものであって、当該金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面7と高周波誘導加熱溶着面3との距離がこの取り付け金具の周辺部フランジ下面6aと高周波誘導加熱溶着面3との距離より大きく、両者の距離の差は、コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピンの頭部の高さより大きいことを特徴とする、高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具10を提供する。
【解決手段】樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具であって、当該樹脂層の樹脂と同一の樹脂が金属板1の小孔1aの全空間に充填され、一体となっているものであり、更に溶着・固定される面の最外面に厚さ0.05〜1.0mm、開口率25〜90%であり高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体9を配置してなるものであって、当該金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面7と高周波誘導加熱溶着面3との距離がこの取り付け金具の周辺部フランジ下面6aと高周波誘導加熱溶着面3との距離より大きく、両者の距離の差は、コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピンの頭部の高さより大きいことを特徴とする、高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具10を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木、建築工事における防水・遮水工事及び補修・補強工事において、コンクリート構造物をはじめとする構造物や土構造物等に熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法により取り付けるための取り付け金具に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂系板材又は樹脂系シートを用いて遮水及び防水性を付与するためには、多くの場合において、前記板材又はシートを構造物に展張した後、前記板材又はシートを前記構造物や土構造物に広い面積で押し付ける為のプレート等を前記板材又はシートの上から杭、ピン或いはコンクリートアンカーボルト等で固定し、必要に応じて固定部分をシーリング材、或いは前記板材又はシートと同一の素材を接着或いは溶着することが一般的な施工法であり、前記構造物や土構造物によっては、土嚢、砂袋を置いたり、或いは土砂を前記板材又はシートの上部に層状に敷き詰めて固定する。
【0003】
従来から多くの施工で採用されている前記板材又はシートの上から前記構造物や土構造物に前記板材又はシートを押え付け、さらには前記構造物や土構造物に対する前記板材又はシートの保持力を増加させる固定用プレートを取り付けるために、杭、ピン或いはコンクリートアンカーボルト等を用いて前記構造物や土構造物に打ち込み固定する方法においては、前記打ち込みにより前記板材又はシートに必然的に穴が開き、開けた穴により惹起する前記板材又はシートの穴開き部分の強度低下、防水性、遮水性の喪失を補うため、穴の上部から前記板材又はシートと同一樹脂、或いは同一材料もしくは接着剤、コーキング材を用いて補修する必要が生じる。
【0004】
また、コンクリートで構築された構造物の表面状態は、一般に平滑に仕上っていると謳っていても不陸を有しており、その表面に硬質の樹脂系板材を取り付けるためには、当該板材に穿孔し、孔を通してボルト類等の金具で構造物に固定したり、当該板材の周縁部に嵌合部材を配置し、嵌合部材をボルト類等の金具で構造物に設置し、嵌合部材と構造物間の隙間間隔を調整しながら固定する方法が一般的である。
【0005】
また、構造物の屋根等の防水・遮水及び補修・補強のためには、施工の対象面に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを取り付けるに当り、熱可塑性樹脂を含有する樹脂層と金属板を組み合せた取り付け金具を用い、高周波誘導加熱法を応用する技術が以下の特許文献にも見られるように良く知られている。
【0006】
【特許文献1】第2971149号特許公報
【特許文献2】特公昭58−36705号特許公報
【特許文献3】特開平10−77722号公開特許公報
【特許文献4】特開2003−313995号公開特許公報
【0007】
この種の取り付け金具の多くは金属板の表面にホットメルト樹脂或いは接着剤をコーティングし、高周波誘導加熱法、熱風溶着法、熱鏝溶着法、或いは接着剤等を用いて固定したり、接着テープを貼り付けて、金属板と熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを溶着、固定してなっている。
【0008】
しかし、〔0002〕記載の穿孔方法による固定では、板に孔を開けるため孔の処理、取り付けるボルト類の頭が飛び出し、板材面の平滑性の阻害、遮断性の不具合発生の慢性的な危険性を有することがあり、嵌合部材を用いる場合では要求される板材の固定強度が高い場合には、小面積の板材を数多く取り付けなければならず、作業性が著しく悪くなり、かつ経済的にも多大な費用が必要となる。
【0009】
また、〔0005〕記載の高周波誘導加熱法を用いて熱可塑性樹脂系板材を固定しようとしても、不陸状態を排除することが不可能なコンクリート構造物の面に設置された取り付け金具の溶着面が、不陸の影響で複数の取り付け金具が同一平面上に並ばないことから、特に硬質の熱可塑性樹脂系板材をコンクリート構造物に前記方法で取り付けようとしても、確実な溶着は不可能である。
【0010】
さらに〔0005〕〔0007〕記載の固定法では、金属板とホットメルト樹脂或いは接着剤との結合が化学的結合であるため、コーティングされたホットメルト樹脂或いは接着剤層内を水蒸気分子及び酸素分子等ガス成分が拡散浸透して金属板とホットメルト樹脂或いは接着剤との界面に達し、或いは同時に熱履歴を受け、金属板が酸化又は劣化を起こし、取り付け金具に結合した熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートが剥離を起こす危険性があり、信頼性に欠ける。
【0011】
このような問題点を解決するため、特許文献4には金属製の基材に複数の貫通孔を穿設し、この貫通孔に熱可塑性樹脂を充填するとともに、基材の外表面を熱可塑性樹脂の被覆層で被覆し、表面側と裏面側の被覆層を前記貫通孔に充填した熱可塑性樹脂の連接部で連接した取り付け金具が提案されている。
【0012】
この提案によれば、ホットメルト樹脂或いは接着剤層内を水蒸気分子及び酸素分子等ガス成分が拡散浸透し金属面に達して起こる金属面の酸化、劣化により引き起こされる「取り付け金具に結合した熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートの剥離」という問題点は解消する。
【0013】
前記特許文献2、3、4に記載の高周波誘導加熱法による接合作業においては、取り付け金具の金属板が短時間で発熱、昇温し続け、金属板に接する熱可塑性樹脂が金属板接触界面から昇温し、熱が当該熱可塑性樹脂層内を伝導し、取り付け金具の溶着面とその溶着面に接する熱可塑性樹脂系シートの溶着面が溶着可能になる温度に達したのち、取り付け金具溶着面と熱可塑性樹脂系シートの溶着面が溶融一体化する。
【0014】
しかしながら、比熱が大きく、熱伝導率が低い熱可塑性樹脂を、比熱が小さく熱伝導率の高い金属板に積層した取り付け金具においては、高周波誘導加熱法で磁界をかけると、所謂表皮効果により金属板表面から瞬時に発熱かつ昇温するため、取り付け金具に積層された樹脂層の金属板に接している面の当該樹脂が瞬時に加温され昇温するが、被溶着物である、熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた樹脂系板材又は樹脂系シートの熱可塑性樹脂の溶着界面の樹脂が溶着可能温度まで到達する時間は、熱可塑性樹脂の大きい比熱及び低熱伝導率により、金属板に接している面の熱可塑性樹脂温度上昇時間に比べ長いため、昇温しつづける金属板の熱により、金属板に接している面の熱可塑性樹脂が過度の加熱に晒され変質、劣化する危険性が極めて大きくなる。
【0015】
また、被溶着対象物の厚さが大きい場合、取り付け金具の溶着面に配置される熱可塑性樹脂層の厚みが厚いと、高周波電流通電により、被溶着対象物の溶着面が溶着可能な温度に達するまでには、金具に接する前記樹脂層の界面部は、金具の金属部が瞬時に発熱し、短時間で昇温するために過度の加熱に晒され、容易に変質、劣化する危険性がある。
【0016】
特許文献4に記載されている、取り付け金具の金属板を被覆する合成樹脂の厚さが1−2mmの場合では、高周波誘導加熱法による溶着作業を実施すると、被溶着物の溶着面が溶着可能温度に達するまでに、取り付け金具の金属板に被覆されている合成樹脂の前記金属板との界面が、高周波電流によって金属板に誘導された渦電流で発生する熱で瞬時に昇温するため、界面の合成樹脂の焦げ、変質等の劣化が多発し、安定した溶着作業することが非常に困難である。
【0017】
また、特許文献4に記載の取り付け金具において、特許文献4に記載の防水シートが外部から受ける引張力は、取り付け金具裏面に配置されている、金属製の基材に穿設された複数の貫通孔周縁直上の樹脂断面で受けるため、裏面に用いる樹脂の固有強度と樹脂厚み、及び取り付け金具の溶着面に占める孔の総面積で左右される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
さらに、高周波誘導加熱法に用いるこれまでの取り付け金具は、設置したコンクリート構造物面の不陸に対しての配慮は殆どされていない。実際に建造される或いは既存の構造物の面は平滑でなく不陸状態にあるため、構造物に設置された取り付け金具の溶着面は構造物から一定距離の同一面を形成せず、特に熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた硬質の樹脂系板材を取り付け金具で固定するとき、取り付け金具の溶着面が前記樹脂系板材の面に全面接触しなかったり、構造物面に設置された多数の取り付け金具と前記樹脂系板材間に間隙を生じたりして不具合が生じることがある。
【0019】
また、取り付けられた前記樹脂系板材或いは樹脂系シートに掛かる引張力は、取り付け金具に穿孔された孔に充填されている熱可塑性樹脂を介して、取り付け金具の溶着面の反対面に配置した熱可塑性樹脂層に伝達されるが、保持力は当該熱可塑性樹脂層の樹脂の固有強度と樹脂厚み及び取り付け金具の溶着面に占める孔の総面積によって決まる。このために樹脂厚みを大きくし、取り付け金具の溶着面に占める孔の総面積を多くしないと高い保持力が期待できない。
【0020】
しかしながら、被溶着対象物の厚さが大きい場合、取り付け金具の溶着面に配置される熱可塑性樹脂層の厚さが厚いと、被溶着対象物の溶着面が溶着可能となる温度に達するまで長時間を必要とするため、取り付け金具の金属板に接している熱可塑性樹脂が過剰な熱を受け、容易に焦げ、変質等の劣化を起こす。
【0021】
また、取り付け金具の溶着面に占める孔の総面積を多くするには、取り付け金具に穿孔する孔の開口率を大きくすればよい。開口率を大きくする手段として、孔一つ一つの面積を広げ、かつ孔形状を矩形にするのが最も簡便な方法だが、面積が広がると、高周波電流を通電して取り付け金具を加温しても穴の中心部分の樹脂の昇温に長時間かかり、中心部の樹脂が溶融するまでに金属板に接する熱可塑性樹脂が過剰な過熱を受け、焦げ或いは変質等の劣化を生じる危険性がある。
【0022】
本発明は、このような課題を以下述べるところにより解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、上記課題を解決するためつぎの手段を提供する。
【0024】
本発明は、熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具であって、当該金具は、複数の小孔を有する金属板の少なくとも一面に前記の熱可塑性樹脂と同じ樹脂を含有する樹脂層が配置され、かつ、当該樹脂層の樹脂と同一の樹脂が金属板の小孔の全空間に充填され、当該樹脂層と金属板の小孔に充填されている樹脂とが一体となっているものであり、更に前記樹脂系板材又は樹脂系シートと溶着・固定される面の最外面に高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体を配置してなることを特徴とする高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具を提供する。
【0025】
さらに、本発明は、熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具であって、当該金具は、複数の小孔を有する金属板の少なくとも一面に前記の熱可塑性樹脂と同じ樹脂を含有する樹脂層が配置され、かつ、当該樹脂層の樹脂と同一の樹脂が金属板の小孔の全空間に充填され、当該樹脂層と金属板の小孔に充填されている樹脂とが一体となっているものであり、更に前記樹脂系板材又は樹脂系シートと溶着・固定される面の最外面に厚さ0.05〜1.0mm、開口率25〜90%であり高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体を配置してなるものであって、当該金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面と高周波誘導加熱溶着面との距離がこの取り付け金具の周辺部フランジ下面と高周波誘導加熱溶着面との距離より大きく、両者の距離の差は、コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピンの頭部の高さより大きいことを特徴とする、高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具を提供する。
【0026】
本発明の高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体は、金属細線を織機或いは編み機を用いて作製するか、金属箔を穿孔機或いはプレス機を用いて網状外観を有す孔開き箔状物に形成することが好ましいが、導電性有機物、導電性無機物或いは導電体を被覆した有機物を細線状或いは箔状に成形し、前述加工法を用いて作製しても良い。
【0027】
本発明の取り付け金具に配置された前記メッシュ状導電体は、前記シート状物の溶着面に固着していても良く、前記シート状物と遊離していても良い。
【0028】
本発明の取り付け金具に配置された熱可塑性樹脂を含有する樹脂層には、繊維層が積層されていることが好ましく、繊維層の形態は、織物、編物、積層布、不織布、繊維チップのどれでもよいが特にメッシュ状の織物もしくは積層布が適しており、また熱可塑性樹脂を含有する樹脂層内に配置される繊維層の位置は、樹脂層内のどの位置でも良い。
【0029】
さらに、前記の取り付け金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面にバネ状物或いはゴム状物が配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
請求項1乃至請求項4において、この取り付け金具は、構造物や土構造物に取り付けようとする熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた樹脂系板材又は樹脂系シートに用いられる熱可塑性樹脂と同一の樹脂の層が複数の小孔を有する金属板の一面又は両面に配置され、当該金具の、溶着面である熱可塑性樹脂面に配置された高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体とからなるので、つぎの効果を発揮する。
【0031】
構造物や土構造物に取り付けようとする熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた樹脂系板材又は樹脂系シートと、当該金具の高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体が配置された溶着面を圧接し、前記樹脂系板材又は樹脂系シート高周波誘導加熱機のアプリケーターに高周波電流を流すと、当該金具の溶着面上に配置された前記メッシュ状導電体及び当該金具の金属板が瞬時に発熱を開始する。この結果、当該金具に配置されている樹脂層と被溶着物である前記樹脂系板材又は樹脂系シートの圧着された界面に存在する前記メッシュ状導電体の発熱により、界面の樹脂が溶融し溶着する。前述溶着の過程において当該金具の金属板の発熱は溶着面側の樹脂の昇温速度を高め溶着可能温度までの到達時間を短縮する効果を発揮する。この結果、導電体がないときに発生する、金具に配置される樹脂層の、金属板の急速な昇温による加温で生じる金属板界面に存在する樹脂の焦げ、変質等の劣化を防ぐことが可能となる。
【0032】
金属板に穿孔された小孔は、ホットメルト樹脂或いは接着剤を金属板にコーティングした金具が経時的にコーティングされたホットメルト樹脂層或いは接着剤層内を水蒸気分子及び酸素分子等ガス成分が拡散浸透して金属板とホットメルト樹脂或いは接着剤との界面に達し、或いは同時に熱履歴を受け金属板が酸化又は劣化を起こし、取り付け金具に結合した前記樹脂系板材又は樹脂系シートが剥離を起こす危険性を有すのと異なり、長期に渡り金具と前記樹脂系板材又は樹脂系シートの剥離が起こらない。
【0033】
対象が土構造物の場合は、予め打設された、杭の頂部、取り付け部材の面、仕切り板の天場等の剛体に、本発明の取り付け金具を設置することにより、前記土構造物上に前記樹脂系板材又は樹脂系シートに穴を開けずに敷設することが可能となる。
【0034】
請求項2乃至請求項4において、本発明の金具は、当該金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面と高周波誘導加熱溶着面との距離が、当該金具の周辺部フランジ下面との距離より大きく形成されており、構造物に当該金具を設置したとき、フランジ下面と構造物との間に間隙ができるため、構造物の取り付け個所に不陸があって、当該金具設置時に構造物の面と当該金具とが平行になっていなくとも、当該金具上の前記樹脂系板材又は樹脂系シートのいずこを押圧すると、当該金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面先端部を中心として当該金具が動き、当該金具の溶着面が前記樹脂系板材又は樹脂系シートの被溶着面全面に完全に密着させることができる。
【0035】
また、前記導電性メッシュ状物の厚さ開口率を特定したのでつぎの効果を有する。
【0036】
金具と被溶着物の界面に高周波誘導加熱法で発熱する導電性メッシュ状物を挟み込むため、高周波誘導加熱で金具と被溶着物の樹脂を溶融し、前記導電性メッシュ状物の厚さで生じている空隙を充填し、かつ、前記導電性メッシュ状物の両側から押し出されてくる樹脂同士を圧接する必要がある。また、各種の樹脂の溶融粘度も樹脂固有で大小あり、前記導電性メッシュ状物の厚さを使用樹脂に合せる必要が生じる。前記導電性メッシュ状物の厚さは薄いことが好ましいが、薄すぎると前記導電性メッシュ状物の発熱温度が高くても、熱容量としては少ないため、金具と被溶着物の樹脂を溶融することが困難となる。このため前記導電性メッシュ状の厚みを特定することで規制している。
【0037】
前記金属板に開孔する孔一つ一つの開口面積が大きいと、樹脂が有す一般的性質である高比熱、低熱伝導性の特性により、孔の中心部の樹脂とその位置に相対する被溶着物の面の樹脂の昇温時間が、金属板と抵触している樹脂の昇温時間に比べ長くなるため、金属板に接している樹脂が過剰な熱を受け劣化する危険性が極めて高い。そのため前記メッシュ状導電体を金具の樹脂と被溶着物との界面に配し、高周波誘導加熱機に高周波電流を流すことにより、前記導電体を発熱させ界面の樹脂を瞬時に加熱し、昇温を図るが、メッシュ状導電体のメッシュの開口面積が大きいと、前記金属板の孔一つ一つの開口面積が大きい場合の前述の障害が同様に発生する。このため前記導電性メッシュ状物の開口率を特定することで規制している。
【0038】
請求項3及び請求項4において、取り付け金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面にバネ状物又はゴム状物が配置されているため、更につぎのような効果を有する。
【0039】
構造物の不陸により、特にコンクリート構造物に設置した複数の取り付け金具の溶着面が同一面上に並ばない場合には、更に当該金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面にバネ状物或いはゴム状物を配置することにより、取り付け金具上の前記樹脂系板材又は樹脂系シートのいずこかを押圧することにより、取り付け金具の溶着面を同一平面上に整列させることができるため、全ての取り付け金具の溶着面が、高周波誘導加熱すると、当該金具の前記メッシュ状導電体及び金属板に発生する渦電流による発熱で、金具の溶着面と、前記樹脂系板材又は樹脂系シートの被溶着面が溶着する。この溶着作業を設置した全ての取り付け金具に実施することにより前記樹脂系板材又は樹脂系シートは全ての取り付け金具と一体化させることが可能となる。
【0040】
請求項3及び請求項4において、熱可塑性樹脂を含有する樹脂層に繊維層を積層したので、つぎの効果を有する。
【0041】
本発明では、金属板と熱可塑性樹脂を含有する樹脂層とは、積極的に接着させていない。
【0042】
これは、接着されている取り付け金具が、〔0010〕に記載した変質、劣化を経時的に受け、初期性能と長期供用後の性能が変わってしまう危険性を有するので、これを回避するためと、接着してあると外部から金属板にかかる引張力がかかった金属部分のみで受けなければならないのに対し、接着していないので、引張力がかかった部分だけでなく樹脂層の広い範囲に分散でき、かつ樹脂層が繊維層で補強されることにより、さらに力を広範囲に分散させ、単位面積当りの受ける力をより少なくすることができる。
【0043】
また、取り付け金具の金属板の穴の直径を増やすと、取り付けられた前記樹脂系板材又は樹脂系シートにより引張力を受けた場合、金属板を介して連接されている貫通孔周縁直上の樹脂断面で受けるため、樹脂層は大きな厚みを必要とするが、連接されている樹脂層が繊維層で補強されていると、繊維層を介して引張力が広く分散されるため、圧倒的な強度の保持を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を以下図面に基き説明する。
【実施例1】
【0045】
図1は、本発明に係る熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための平面円形の取り付け金具を示す平面図、図2は、図1のA−A断面図である。
【0046】
図2に示す取り付け金具10は、複数の小孔1aが表裏を貫通して穿孔された金属板1と熱可塑性樹脂を含有する樹脂層2aとからなり、金属板1と樹脂層2aとは熱加圧プレスにより、金属板1に穿孔されている小孔1aの全空間に樹脂層2aの一部2cが充填され、さらに小孔1aの上部に樹脂が盛り上がる状態になる様に一体に形成されており、更にその上面に高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体9が配置されている。
【0047】
この取り付け金具10は、上面を前記樹脂系板材又は樹脂系シートを溶着する溶着面3とし、中央長手方向に幾つかのコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4、長手方向両側をフランジ6とする。5はコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用穴である。コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4の下面7と溶着面3との距離は、フランジ下面6aとの距離より大きくしてある。
【実施例2】
【0048】
図4は、本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面円形の取り付け金具を示す図3のB−B断面図である。
【0049】
図4において、取り付け金具10は、複数の小孔が表裏を貫通して穿孔された金属板1と熱可塑性樹脂を含有する樹脂層2a、樹脂層2bとからなり、金属板1と樹脂層2aと樹脂層2bとは同一樹脂で構成され、樹脂層2aと樹脂層2bとは、それぞれ1次熱加圧プレス、2次熱加圧プレスにより、金属板1に穿孔されている小孔1aの全空間に樹脂層2aの一部2cが充填されて一体に成形され、樹脂層2bの上面に高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体9が配置されている。
【0050】
この取り付け金具11は、上面を前記樹脂系板材又は樹脂系シートを溶着する溶着面3とし、中央長手方向に幾つかのコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4、長手方向両側をフランジ6とする。5はコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用穴である。コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4の下面7と溶着面3との距離は、フランジ下面6aとの距離より大きくしてある。
【実施例3】
【0051】
図5は、本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための図1と同じ上面外観を有す、別の平面円形の取り付け金具の図1のA−A断面図である。
【0052】
図5に示す取り付け金具10は、複数の小孔1aが表裏を貫通して穿孔された金属板1と熱可塑性樹脂を含有し繊維層8aが積層された樹脂層2aとからなり、金属板1と樹脂層2aとは熱加圧プレスにより、金属板1に穿孔されている小孔1aの全空間に樹脂層2aの一部2cが充填され、繊維層8aは取り付け金具の溶着面と反対の面に配置される樹脂層2aの層中に補強層として積層されており、さらに小孔1aの上部に樹脂が盛り上がる状態になる様に一体に形成されており、更にその上面に高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体9が配置されている。
【実施例4】
【0053】
図6は、本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための図3と同じ上面外観を有す、別の平面円形の取り付け金具のB−B断面図である。
【0054】
図6において、取り付け金具10は、複数の小孔が表裏を貫通して穿孔された金属板1と熱可塑性樹脂を含有し繊維層8aが積層された樹脂層2aと、繊維層を有しない樹脂層2bとからなり、樹脂層2aと樹脂層2bとは、それぞれ1次熱加圧プレス、2次熱加圧プレスにより、金属板1に穿孔されている小孔1aの全空間に樹脂層2aの一部2cが充填されて一体に成形され、繊維層8aは取り付け金具の溶着面と反対の面に配置される樹脂層2aの層中に補強層として積層されて一体となっており、樹脂層2bの上面に高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体9が配置されている。
【0055】
この取り付け金具10は、上面を前記樹脂系板材又は樹脂系シートを溶着する溶着面3とし、中央長手方向に幾つかのコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4、長手方向両側をフランジ6とする。5はコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用穴である。コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4の下面7と溶着面3との距離は、フランジ下面6aとの距離より大きくしてある。
【実施例5】
【0056】
図7は、本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための図3と同じ上面外観を有す、別の平面円形の取り付け金具のB−B断面図である。
【0057】
図7において、取り付け金具10は、複数の小孔が表裏を貫通して穿孔された金属板1と熱可塑性樹脂を含有し繊維層8aが積層された樹脂層2aと、繊維層8bが積層された樹脂層2bとからなり、樹脂層2aと樹脂層2bとは、それぞれ1次熱加圧プレス、2次熱加圧プレスにより、金属板1に穿孔されている小孔1aの全空間に樹脂層2aの一部2cが充填されて一体に成形され、繊維層8aは取り付け金具の溶着面と反対の面に配置される樹脂層2aの層中に、繊維層8bは取り付け金具の溶着面に配置される樹脂層2bの層中に、補強層として積層されて一体となっており、樹脂層2bの上面に高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体9が配置されている。
【0058】
この取り付け金具11は、上面を前記樹脂系板材又は樹脂系シートを溶着する溶着面3とし、中央長手方向に幾つかのコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4、長手方向両側をフランジ6とする。5はコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用穴である。コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4の下面7と溶着面3との距離は、フランジ下面6aとの距離より大きくしてある。
【実施例6】
【0059】
つぎに、さらに別の実施例を説明する。
【0060】
図9は、本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面矩形の取り付け金具の図8のC−C断面図である。
【0061】
C−C断面図において、金属板、樹脂層、繊維層、高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体の表示は、図2、4、5、6、7と同様であり、省略してある。
【0062】
この取り付け金具11は、形状が矩形であり、上面を前記樹脂系板材又は樹脂系シートを溶着する溶着面3とし、中央長手方向に幾つかのコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4、長手方向両側をフランジ6とする。5はコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用穴である。コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4の下面7と溶着面3との距離は、フランジ下面6aとの距離より大きくしてある。
【0063】
本発明に係る取り付け金具の平面形状及び断面形状は、上記に限定されるものではなく、図13乃至図15に示す平面形状その他の平面形状、図16乃至図21に示す断面形状その他の断面形状またはこれらの平面形状、断面形状の組み合せてあってよいことはもちろんである。
【0064】
これらの金属板、樹脂層、繊維層、メッシュ状導電体の表示は、図2、図3、図4、図5、図6、図7と同様であり、省略してある。
【実施例7】
【0065】
図10は、本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面円形又は平面矩形の取り付け金具を示す図1、図3又は図8の断面図である。図において、金属板、樹脂層、繊維層の表示は省略してある。
【0066】
前述の全ての取り付け金具は、取り付け金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面にバネ状物14を配置固定してある。バネ状物14を配置してあることにより、取り付け金具の構造物の取り付け個所に不陸があっても弾性を利用して構造物の表面と取り付け金具を容易に同一平面上に位置させることができる。
【実施例8】
【0067】
図11は、本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面円形又は平面矩形の取り付け金具を示す図1、図3又は図8の断面図である。図において、金属板、樹脂層、繊維層、高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体の表示は省略してある。
【0068】
前述の全ての取り付け金具は、取り付け金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面にゴム状物15を配置固定してある。ゴム状物15を配置してあることにより、取り付け金具の構造物の取り付け個所に不陸があっても弾性を利用して構造物の表面と取り付け金具を容易に同一平面上に位置させることができる。
【0069】
実施例7、8に示したバネ状物14、ゴム状物15は実施例1、2、3、4、5、6の金具のどれにでも付加することが出来る。また、〔0063〕に記載の平面形状、断面形状、これらの組合せに係る金具にも付加することのできることは当然である。
【0070】
なお、上述の実施例において熱加圧プレスの条件は、対象となる素材によっても異なるが、概略50℃〜250℃、1分〜3分、50kg/cm2〜100kg/cm2である。高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体の表面への配置は、たとえば当該メッシュ状導電体に両面接着テープを取り付けることによって行ってもよく、また熱加圧プレスによって行ってもよい。
【0071】
このようにして、全体として構造物に前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具を構成する。
【0072】
つぎに、土構造物に設置する形態をさらに例示し、説明する。
【実施例9】
【0073】
図22は、土構造物17に杭18を打設した後、杭の頂部に取り付け金具を配置した断面図である。
【実施例10】
【0074】
図23は、土構造物17へ法面安定用プレート19をグランドアンカー20で固定した後、前記プレートに取り付け金具を配置した断面図である。
【実施例11】
【0075】
図24は、土構造物17に杭18を打設した後、杭の頂部に矩形金具22を取り付け、配置したもので、取り付け金具を配置した法面の方向を見た正面図である。
【実施例12】
【0076】
図25は、土構造物17に杭18を打設、或いは法面安定用プレートを取り付けた後、杭18の頂部或いは前記プレートに十字金具23を取り付け、配置したもので、取り付け金具を配置した法面の方向を見た正面図である。
【実施例13】
【0077】
図26は、土構造物の面に矩形金具22を格子状に取り付け、配置したもので、取り付け金具を配置した法面の方向を見た正面図である。
【0078】
図21、図22、図23、図24、図25に例示した取り付け金具の配置方法は、コンクリート等硬質の構造物に適用しても良い。
【0079】
本発明に用いられる金属板は、導電性を有するものであればよく、たとえば、鉄、ステンレススチール、アルミニウム、銅、その他合金類等であるが、特にステンレススチールのSUS430が好ましい。
【0080】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂は、たとえば、ポリエチレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ナイロン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、エチレン−酢酸ビニル重合体樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂/エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素三重共重合体樹脂混合物、アイオノマー樹脂或いはエチレン−プロピレンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等の樹脂素材或いはゴム素材等からの一種又は以上である。特に超長期の耐候性を必要とする用途ではフッ素樹脂、無毒、衛生性が要求される用途ではポリエチレン樹脂が好ましい。
【0081】
本発明に用いられる高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体は、鉄、アルミニウム、銅、ステンレス、タングステン、導電性フェライト、導電性有機物、及び真鍮を代表とする各種合金製の薄板、箔、細線、或いは金属被覆した合成樹脂、金属被覆した有機繊維等である。
【0082】
本発明に用いられる繊維は、例えば、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等合成繊維類、ガラス繊維等鉱物繊維、ステンレス繊維等金属繊維等である。
【0083】
本発明に係る構造物や土構造物に、前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具は、上述のようにしてなるのでつぎのようにして利用される。
【0084】
図12は、取り付け金具をコンクリート構造物の壁面に取り付けた状態を示す断面図である。図において、金属板、樹脂層、繊維層、導電体の各層の表示は省略してある。
【0085】
まず、取り付け金具10をコンクリート構造物12の表面にコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン13を用いて構造物12の表面に平行になるように取り付ける。取り付け金具10を構造物12の表面に取り付けた後は、取り付け金具10の溶着面に前記樹脂系板材16又は樹脂系シートを沿わせて高周波誘導加熱を行う。
【0086】
前記樹脂系板材又は樹脂系シートは、片面に熱可塑性樹脂層が設けられた熱硬化性樹脂、両面が熱可塑性樹脂或いは全体が熱可塑性樹脂である材料が適宜選ばれて用いられる。
【0087】
構造物12の表面に取り付け金具10又は11が取り付けられ、取り付け金具10又は11の溶着面に前記樹脂系板材16を添えた後、電流を流すと誘導電流コイルより磁力線が発生する。磁力線が前記樹脂系板材16又は樹脂系シートを透過して高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体9及び取り付け金具10又は11の金属板まで達する。高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体9及び取り付け金具10又は11内部で渦電流が発生し、発熱する。当該メッシュ状導電体9と接する前記樹脂系板材又は樹脂系シート及び取り付け金具の溶着面が同時に昇温し、溶着可能温度に達した後、両者が溶着一体化する。前述溶着一体化の過程において当該金具の金属板の発熱は溶着面側の樹脂の昇温速度を高め溶着可能温度までの到達時間を短縮する効果を発揮する。一体化した後、通電を停止し、冷却するので加圧すると溶着完了する。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための平面円形の取り付け金具であり、金具上面に樹脂層がなく、更に上面に高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体が配置されている金具の平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面円形の取り付け金具であり、金具上面に樹脂層を有し、更に上面に高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体が配置されている金具の平面図である。
【図4】図3のB−B断面図である。
【図5】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面円形の取り付け金具であり、金具上面に樹脂層がなく、更に上面に高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体が配置されており、金属板を介した反対面に繊維層が積層された樹脂層を有す金具の断面図である。
【図6】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面円形の取り付け金具であり、金具上面に樹脂層を有し、更に上面に高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体が配置されており、金属板を介した反対面に繊維層が積層された樹脂層を有す金具の断面図である。
【図7】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面円形の取り付け金具であり、金具上面、下面に繊維層が積層された樹脂層を有し、上面樹脂層の更に上面に高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体が配置されている金具の断面図である。
【図8】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための平面矩形の取り付け金具の平面図である。
【図9】図8のC−C断面図である。
【図10】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための、底面にバネ状物を取り付けた別の平面円形の取り付け金具を示す断面図である。
【図11】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための、底面にゴム状物を取り付けた別の平面円形の取り付け金具を示す断面図である。
【図12】取り付け金具をコンクリート構造物の壁面に取り付けた状態を示す断面図である。
【図13】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具の別の実施例を示す平面図である。
【図14】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための長方形の形状を示す矩形の取り付け金具の平面図とそのE−E断面図である。
【図15】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具の別の実施例を示す平面図である。
【図16】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具の断面図である。
【図17】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具の断面図である。
【図18】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具の断面図である。
【図19】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具の断面図である。
【図20】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具の断面図である。
【図21】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具の断面図である。
【図22】土構造物17への、打設した杭18頂部を利用した金具の取り付け例図である。。
【図23】土構造物17への、グランドアンカー20により設置した土構造物の法面安定用プレート19を利用した金具の取り付け例図である。
【図24】土構造物17に杭18を打設した後、杭18の頂部に矩形金具22を取り付け、配置したもので、取り付け金具を配置した法面の方向を見た正面図である。
【図25】土構造物17に杭18を打設、或いは法面安定用プレート19を取り付けた後、杭18の頂部或いは前記プレートに十字金具23を取り付け、配置したもので、取り付け金具を配置した法面の方向を見た正面図である。
【図26】土構造物の面に矩形金具22を格子状に取り付け、配置したもので、取り付け金具を配置した法面の方向を見た正面図である。
【符号の説明】
【0089】
1 金属板
1a 小孔
2a 熱可塑性樹脂を含有する樹脂層
2b 熱可塑性樹脂を含有する樹脂層
2c 樹脂層の一部
3 溶着面
4 コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部
5 コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用穴
6 フランジ
6a フランジ下面
7 コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面
8a 繊維層
8b 繊維層
9 高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体
10 平面円形取り付け金具
11 平面矩形取り付け金具
12 コンクリート構造物
13 コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン
14 バネ状物
15 ゴム状物
16 樹脂系板材
17 土構造物
18 杭
19 法面安定用プレート
20 グランドアンカー
21 平面矩形取り付け金具
22 長方形を有す平面矩形取り付け金具
23 十字形取り付け金具
24 長さの異なる十字形取り付け金具
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木、建築工事における防水・遮水工事及び補修・補強工事において、コンクリート構造物をはじめとする構造物や土構造物等に熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法により取り付けるための取り付け金具に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂系板材又は樹脂系シートを用いて遮水及び防水性を付与するためには、多くの場合において、前記板材又はシートを構造物に展張した後、前記板材又はシートを前記構造物や土構造物に広い面積で押し付ける為のプレート等を前記板材又はシートの上から杭、ピン或いはコンクリートアンカーボルト等で固定し、必要に応じて固定部分をシーリング材、或いは前記板材又はシートと同一の素材を接着或いは溶着することが一般的な施工法であり、前記構造物や土構造物によっては、土嚢、砂袋を置いたり、或いは土砂を前記板材又はシートの上部に層状に敷き詰めて固定する。
【0003】
従来から多くの施工で採用されている前記板材又はシートの上から前記構造物や土構造物に前記板材又はシートを押え付け、さらには前記構造物や土構造物に対する前記板材又はシートの保持力を増加させる固定用プレートを取り付けるために、杭、ピン或いはコンクリートアンカーボルト等を用いて前記構造物や土構造物に打ち込み固定する方法においては、前記打ち込みにより前記板材又はシートに必然的に穴が開き、開けた穴により惹起する前記板材又はシートの穴開き部分の強度低下、防水性、遮水性の喪失を補うため、穴の上部から前記板材又はシートと同一樹脂、或いは同一材料もしくは接着剤、コーキング材を用いて補修する必要が生じる。
【0004】
また、コンクリートで構築された構造物の表面状態は、一般に平滑に仕上っていると謳っていても不陸を有しており、その表面に硬質の樹脂系板材を取り付けるためには、当該板材に穿孔し、孔を通してボルト類等の金具で構造物に固定したり、当該板材の周縁部に嵌合部材を配置し、嵌合部材をボルト類等の金具で構造物に設置し、嵌合部材と構造物間の隙間間隔を調整しながら固定する方法が一般的である。
【0005】
また、構造物の屋根等の防水・遮水及び補修・補強のためには、施工の対象面に熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを取り付けるに当り、熱可塑性樹脂を含有する樹脂層と金属板を組み合せた取り付け金具を用い、高周波誘導加熱法を応用する技術が以下の特許文献にも見られるように良く知られている。
【0006】
【特許文献1】第2971149号特許公報
【特許文献2】特公昭58−36705号特許公報
【特許文献3】特開平10−77722号公開特許公報
【特許文献4】特開2003−313995号公開特許公報
【0007】
この種の取り付け金具の多くは金属板の表面にホットメルト樹脂或いは接着剤をコーティングし、高周波誘導加熱法、熱風溶着法、熱鏝溶着法、或いは接着剤等を用いて固定したり、接着テープを貼り付けて、金属板と熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートを溶着、固定してなっている。
【0008】
しかし、〔0002〕記載の穿孔方法による固定では、板に孔を開けるため孔の処理、取り付けるボルト類の頭が飛び出し、板材面の平滑性の阻害、遮断性の不具合発生の慢性的な危険性を有することがあり、嵌合部材を用いる場合では要求される板材の固定強度が高い場合には、小面積の板材を数多く取り付けなければならず、作業性が著しく悪くなり、かつ経済的にも多大な費用が必要となる。
【0009】
また、〔0005〕記載の高周波誘導加熱法を用いて熱可塑性樹脂系板材を固定しようとしても、不陸状態を排除することが不可能なコンクリート構造物の面に設置された取り付け金具の溶着面が、不陸の影響で複数の取り付け金具が同一平面上に並ばないことから、特に硬質の熱可塑性樹脂系板材をコンクリート構造物に前記方法で取り付けようとしても、確実な溶着は不可能である。
【0010】
さらに〔0005〕〔0007〕記載の固定法では、金属板とホットメルト樹脂或いは接着剤との結合が化学的結合であるため、コーティングされたホットメルト樹脂或いは接着剤層内を水蒸気分子及び酸素分子等ガス成分が拡散浸透して金属板とホットメルト樹脂或いは接着剤との界面に達し、或いは同時に熱履歴を受け、金属板が酸化又は劣化を起こし、取り付け金具に結合した熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートが剥離を起こす危険性があり、信頼性に欠ける。
【0011】
このような問題点を解決するため、特許文献4には金属製の基材に複数の貫通孔を穿設し、この貫通孔に熱可塑性樹脂を充填するとともに、基材の外表面を熱可塑性樹脂の被覆層で被覆し、表面側と裏面側の被覆層を前記貫通孔に充填した熱可塑性樹脂の連接部で連接した取り付け金具が提案されている。
【0012】
この提案によれば、ホットメルト樹脂或いは接着剤層内を水蒸気分子及び酸素分子等ガス成分が拡散浸透し金属面に達して起こる金属面の酸化、劣化により引き起こされる「取り付け金具に結合した熱可塑性樹脂系板材又は熱可塑性樹脂系シートの剥離」という問題点は解消する。
【0013】
前記特許文献2、3、4に記載の高周波誘導加熱法による接合作業においては、取り付け金具の金属板が短時間で発熱、昇温し続け、金属板に接する熱可塑性樹脂が金属板接触界面から昇温し、熱が当該熱可塑性樹脂層内を伝導し、取り付け金具の溶着面とその溶着面に接する熱可塑性樹脂系シートの溶着面が溶着可能になる温度に達したのち、取り付け金具溶着面と熱可塑性樹脂系シートの溶着面が溶融一体化する。
【0014】
しかしながら、比熱が大きく、熱伝導率が低い熱可塑性樹脂を、比熱が小さく熱伝導率の高い金属板に積層した取り付け金具においては、高周波誘導加熱法で磁界をかけると、所謂表皮効果により金属板表面から瞬時に発熱かつ昇温するため、取り付け金具に積層された樹脂層の金属板に接している面の当該樹脂が瞬時に加温され昇温するが、被溶着物である、熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた樹脂系板材又は樹脂系シートの熱可塑性樹脂の溶着界面の樹脂が溶着可能温度まで到達する時間は、熱可塑性樹脂の大きい比熱及び低熱伝導率により、金属板に接している面の熱可塑性樹脂温度上昇時間に比べ長いため、昇温しつづける金属板の熱により、金属板に接している面の熱可塑性樹脂が過度の加熱に晒され変質、劣化する危険性が極めて大きくなる。
【0015】
また、被溶着対象物の厚さが大きい場合、取り付け金具の溶着面に配置される熱可塑性樹脂層の厚みが厚いと、高周波電流通電により、被溶着対象物の溶着面が溶着可能な温度に達するまでには、金具に接する前記樹脂層の界面部は、金具の金属部が瞬時に発熱し、短時間で昇温するために過度の加熱に晒され、容易に変質、劣化する危険性がある。
【0016】
特許文献4に記載されている、取り付け金具の金属板を被覆する合成樹脂の厚さが1−2mmの場合では、高周波誘導加熱法による溶着作業を実施すると、被溶着物の溶着面が溶着可能温度に達するまでに、取り付け金具の金属板に被覆されている合成樹脂の前記金属板との界面が、高周波電流によって金属板に誘導された渦電流で発生する熱で瞬時に昇温するため、界面の合成樹脂の焦げ、変質等の劣化が多発し、安定した溶着作業することが非常に困難である。
【0017】
また、特許文献4に記載の取り付け金具において、特許文献4に記載の防水シートが外部から受ける引張力は、取り付け金具裏面に配置されている、金属製の基材に穿設された複数の貫通孔周縁直上の樹脂断面で受けるため、裏面に用いる樹脂の固有強度と樹脂厚み、及び取り付け金具の溶着面に占める孔の総面積で左右される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
さらに、高周波誘導加熱法に用いるこれまでの取り付け金具は、設置したコンクリート構造物面の不陸に対しての配慮は殆どされていない。実際に建造される或いは既存の構造物の面は平滑でなく不陸状態にあるため、構造物に設置された取り付け金具の溶着面は構造物から一定距離の同一面を形成せず、特に熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた硬質の樹脂系板材を取り付け金具で固定するとき、取り付け金具の溶着面が前記樹脂系板材の面に全面接触しなかったり、構造物面に設置された多数の取り付け金具と前記樹脂系板材間に間隙を生じたりして不具合が生じることがある。
【0019】
また、取り付けられた前記樹脂系板材或いは樹脂系シートに掛かる引張力は、取り付け金具に穿孔された孔に充填されている熱可塑性樹脂を介して、取り付け金具の溶着面の反対面に配置した熱可塑性樹脂層に伝達されるが、保持力は当該熱可塑性樹脂層の樹脂の固有強度と樹脂厚み及び取り付け金具の溶着面に占める孔の総面積によって決まる。このために樹脂厚みを大きくし、取り付け金具の溶着面に占める孔の総面積を多くしないと高い保持力が期待できない。
【0020】
しかしながら、被溶着対象物の厚さが大きい場合、取り付け金具の溶着面に配置される熱可塑性樹脂層の厚さが厚いと、被溶着対象物の溶着面が溶着可能となる温度に達するまで長時間を必要とするため、取り付け金具の金属板に接している熱可塑性樹脂が過剰な熱を受け、容易に焦げ、変質等の劣化を起こす。
【0021】
また、取り付け金具の溶着面に占める孔の総面積を多くするには、取り付け金具に穿孔する孔の開口率を大きくすればよい。開口率を大きくする手段として、孔一つ一つの面積を広げ、かつ孔形状を矩形にするのが最も簡便な方法だが、面積が広がると、高周波電流を通電して取り付け金具を加温しても穴の中心部分の樹脂の昇温に長時間かかり、中心部の樹脂が溶融するまでに金属板に接する熱可塑性樹脂が過剰な過熱を受け、焦げ或いは変質等の劣化を生じる危険性がある。
【0022】
本発明は、このような課題を以下述べるところにより解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、上記課題を解決するためつぎの手段を提供する。
【0024】
本発明は、熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具であって、当該金具は、複数の小孔を有する金属板の少なくとも一面に前記の熱可塑性樹脂と同じ樹脂を含有する樹脂層が配置され、かつ、当該樹脂層の樹脂と同一の樹脂が金属板の小孔の全空間に充填され、当該樹脂層と金属板の小孔に充填されている樹脂とが一体となっているものであり、更に前記樹脂系板材又は樹脂系シートと溶着・固定される面の最外面に高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体を配置してなることを特徴とする高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具を提供する。
【0025】
さらに、本発明は、熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具であって、当該金具は、複数の小孔を有する金属板の少なくとも一面に前記の熱可塑性樹脂と同じ樹脂を含有する樹脂層が配置され、かつ、当該樹脂層の樹脂と同一の樹脂が金属板の小孔の全空間に充填され、当該樹脂層と金属板の小孔に充填されている樹脂とが一体となっているものであり、更に前記樹脂系板材又は樹脂系シートと溶着・固定される面の最外面に厚さ0.05〜1.0mm、開口率25〜90%であり高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体を配置してなるものであって、当該金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面と高周波誘導加熱溶着面との距離がこの取り付け金具の周辺部フランジ下面と高周波誘導加熱溶着面との距離より大きく、両者の距離の差は、コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピンの頭部の高さより大きいことを特徴とする、高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具を提供する。
【0026】
本発明の高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体は、金属細線を織機或いは編み機を用いて作製するか、金属箔を穿孔機或いはプレス機を用いて網状外観を有す孔開き箔状物に形成することが好ましいが、導電性有機物、導電性無機物或いは導電体を被覆した有機物を細線状或いは箔状に成形し、前述加工法を用いて作製しても良い。
【0027】
本発明の取り付け金具に配置された前記メッシュ状導電体は、前記シート状物の溶着面に固着していても良く、前記シート状物と遊離していても良い。
【0028】
本発明の取り付け金具に配置された熱可塑性樹脂を含有する樹脂層には、繊維層が積層されていることが好ましく、繊維層の形態は、織物、編物、積層布、不織布、繊維チップのどれでもよいが特にメッシュ状の織物もしくは積層布が適しており、また熱可塑性樹脂を含有する樹脂層内に配置される繊維層の位置は、樹脂層内のどの位置でも良い。
【0029】
さらに、前記の取り付け金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面にバネ状物或いはゴム状物が配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
請求項1乃至請求項4において、この取り付け金具は、構造物や土構造物に取り付けようとする熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた樹脂系板材又は樹脂系シートに用いられる熱可塑性樹脂と同一の樹脂の層が複数の小孔を有する金属板の一面又は両面に配置され、当該金具の、溶着面である熱可塑性樹脂面に配置された高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体とからなるので、つぎの効果を発揮する。
【0031】
構造物や土構造物に取り付けようとする熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた樹脂系板材又は樹脂系シートと、当該金具の高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体が配置された溶着面を圧接し、前記樹脂系板材又は樹脂系シート高周波誘導加熱機のアプリケーターに高周波電流を流すと、当該金具の溶着面上に配置された前記メッシュ状導電体及び当該金具の金属板が瞬時に発熱を開始する。この結果、当該金具に配置されている樹脂層と被溶着物である前記樹脂系板材又は樹脂系シートの圧着された界面に存在する前記メッシュ状導電体の発熱により、界面の樹脂が溶融し溶着する。前述溶着の過程において当該金具の金属板の発熱は溶着面側の樹脂の昇温速度を高め溶着可能温度までの到達時間を短縮する効果を発揮する。この結果、導電体がないときに発生する、金具に配置される樹脂層の、金属板の急速な昇温による加温で生じる金属板界面に存在する樹脂の焦げ、変質等の劣化を防ぐことが可能となる。
【0032】
金属板に穿孔された小孔は、ホットメルト樹脂或いは接着剤を金属板にコーティングした金具が経時的にコーティングされたホットメルト樹脂層或いは接着剤層内を水蒸気分子及び酸素分子等ガス成分が拡散浸透して金属板とホットメルト樹脂或いは接着剤との界面に達し、或いは同時に熱履歴を受け金属板が酸化又は劣化を起こし、取り付け金具に結合した前記樹脂系板材又は樹脂系シートが剥離を起こす危険性を有すのと異なり、長期に渡り金具と前記樹脂系板材又は樹脂系シートの剥離が起こらない。
【0033】
対象が土構造物の場合は、予め打設された、杭の頂部、取り付け部材の面、仕切り板の天場等の剛体に、本発明の取り付け金具を設置することにより、前記土構造物上に前記樹脂系板材又は樹脂系シートに穴を開けずに敷設することが可能となる。
【0034】
請求項2乃至請求項4において、本発明の金具は、当該金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面と高周波誘導加熱溶着面との距離が、当該金具の周辺部フランジ下面との距離より大きく形成されており、構造物に当該金具を設置したとき、フランジ下面と構造物との間に間隙ができるため、構造物の取り付け個所に不陸があって、当該金具設置時に構造物の面と当該金具とが平行になっていなくとも、当該金具上の前記樹脂系板材又は樹脂系シートのいずこを押圧すると、当該金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面先端部を中心として当該金具が動き、当該金具の溶着面が前記樹脂系板材又は樹脂系シートの被溶着面全面に完全に密着させることができる。
【0035】
また、前記導電性メッシュ状物の厚さ開口率を特定したのでつぎの効果を有する。
【0036】
金具と被溶着物の界面に高周波誘導加熱法で発熱する導電性メッシュ状物を挟み込むため、高周波誘導加熱で金具と被溶着物の樹脂を溶融し、前記導電性メッシュ状物の厚さで生じている空隙を充填し、かつ、前記導電性メッシュ状物の両側から押し出されてくる樹脂同士を圧接する必要がある。また、各種の樹脂の溶融粘度も樹脂固有で大小あり、前記導電性メッシュ状物の厚さを使用樹脂に合せる必要が生じる。前記導電性メッシュ状物の厚さは薄いことが好ましいが、薄すぎると前記導電性メッシュ状物の発熱温度が高くても、熱容量としては少ないため、金具と被溶着物の樹脂を溶融することが困難となる。このため前記導電性メッシュ状の厚みを特定することで規制している。
【0037】
前記金属板に開孔する孔一つ一つの開口面積が大きいと、樹脂が有す一般的性質である高比熱、低熱伝導性の特性により、孔の中心部の樹脂とその位置に相対する被溶着物の面の樹脂の昇温時間が、金属板と抵触している樹脂の昇温時間に比べ長くなるため、金属板に接している樹脂が過剰な熱を受け劣化する危険性が極めて高い。そのため前記メッシュ状導電体を金具の樹脂と被溶着物との界面に配し、高周波誘導加熱機に高周波電流を流すことにより、前記導電体を発熱させ界面の樹脂を瞬時に加熱し、昇温を図るが、メッシュ状導電体のメッシュの開口面積が大きいと、前記金属板の孔一つ一つの開口面積が大きい場合の前述の障害が同様に発生する。このため前記導電性メッシュ状物の開口率を特定することで規制している。
【0038】
請求項3及び請求項4において、取り付け金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面にバネ状物又はゴム状物が配置されているため、更につぎのような効果を有する。
【0039】
構造物の不陸により、特にコンクリート構造物に設置した複数の取り付け金具の溶着面が同一面上に並ばない場合には、更に当該金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面にバネ状物或いはゴム状物を配置することにより、取り付け金具上の前記樹脂系板材又は樹脂系シートのいずこかを押圧することにより、取り付け金具の溶着面を同一平面上に整列させることができるため、全ての取り付け金具の溶着面が、高周波誘導加熱すると、当該金具の前記メッシュ状導電体及び金属板に発生する渦電流による発熱で、金具の溶着面と、前記樹脂系板材又は樹脂系シートの被溶着面が溶着する。この溶着作業を設置した全ての取り付け金具に実施することにより前記樹脂系板材又は樹脂系シートは全ての取り付け金具と一体化させることが可能となる。
【0040】
請求項3及び請求項4において、熱可塑性樹脂を含有する樹脂層に繊維層を積層したので、つぎの効果を有する。
【0041】
本発明では、金属板と熱可塑性樹脂を含有する樹脂層とは、積極的に接着させていない。
【0042】
これは、接着されている取り付け金具が、〔0010〕に記載した変質、劣化を経時的に受け、初期性能と長期供用後の性能が変わってしまう危険性を有するので、これを回避するためと、接着してあると外部から金属板にかかる引張力がかかった金属部分のみで受けなければならないのに対し、接着していないので、引張力がかかった部分だけでなく樹脂層の広い範囲に分散でき、かつ樹脂層が繊維層で補強されることにより、さらに力を広範囲に分散させ、単位面積当りの受ける力をより少なくすることができる。
【0043】
また、取り付け金具の金属板の穴の直径を増やすと、取り付けられた前記樹脂系板材又は樹脂系シートにより引張力を受けた場合、金属板を介して連接されている貫通孔周縁直上の樹脂断面で受けるため、樹脂層は大きな厚みを必要とするが、連接されている樹脂層が繊維層で補強されていると、繊維層を介して引張力が広く分散されるため、圧倒的な強度の保持を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を以下図面に基き説明する。
【実施例1】
【0045】
図1は、本発明に係る熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための平面円形の取り付け金具を示す平面図、図2は、図1のA−A断面図である。
【0046】
図2に示す取り付け金具10は、複数の小孔1aが表裏を貫通して穿孔された金属板1と熱可塑性樹脂を含有する樹脂層2aとからなり、金属板1と樹脂層2aとは熱加圧プレスにより、金属板1に穿孔されている小孔1aの全空間に樹脂層2aの一部2cが充填され、さらに小孔1aの上部に樹脂が盛り上がる状態になる様に一体に形成されており、更にその上面に高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体9が配置されている。
【0047】
この取り付け金具10は、上面を前記樹脂系板材又は樹脂系シートを溶着する溶着面3とし、中央長手方向に幾つかのコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4、長手方向両側をフランジ6とする。5はコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用穴である。コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4の下面7と溶着面3との距離は、フランジ下面6aとの距離より大きくしてある。
【実施例2】
【0048】
図4は、本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面円形の取り付け金具を示す図3のB−B断面図である。
【0049】
図4において、取り付け金具10は、複数の小孔が表裏を貫通して穿孔された金属板1と熱可塑性樹脂を含有する樹脂層2a、樹脂層2bとからなり、金属板1と樹脂層2aと樹脂層2bとは同一樹脂で構成され、樹脂層2aと樹脂層2bとは、それぞれ1次熱加圧プレス、2次熱加圧プレスにより、金属板1に穿孔されている小孔1aの全空間に樹脂層2aの一部2cが充填されて一体に成形され、樹脂層2bの上面に高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体9が配置されている。
【0050】
この取り付け金具11は、上面を前記樹脂系板材又は樹脂系シートを溶着する溶着面3とし、中央長手方向に幾つかのコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4、長手方向両側をフランジ6とする。5はコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用穴である。コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4の下面7と溶着面3との距離は、フランジ下面6aとの距離より大きくしてある。
【実施例3】
【0051】
図5は、本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための図1と同じ上面外観を有す、別の平面円形の取り付け金具の図1のA−A断面図である。
【0052】
図5に示す取り付け金具10は、複数の小孔1aが表裏を貫通して穿孔された金属板1と熱可塑性樹脂を含有し繊維層8aが積層された樹脂層2aとからなり、金属板1と樹脂層2aとは熱加圧プレスにより、金属板1に穿孔されている小孔1aの全空間に樹脂層2aの一部2cが充填され、繊維層8aは取り付け金具の溶着面と反対の面に配置される樹脂層2aの層中に補強層として積層されており、さらに小孔1aの上部に樹脂が盛り上がる状態になる様に一体に形成されており、更にその上面に高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体9が配置されている。
【実施例4】
【0053】
図6は、本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための図3と同じ上面外観を有す、別の平面円形の取り付け金具のB−B断面図である。
【0054】
図6において、取り付け金具10は、複数の小孔が表裏を貫通して穿孔された金属板1と熱可塑性樹脂を含有し繊維層8aが積層された樹脂層2aと、繊維層を有しない樹脂層2bとからなり、樹脂層2aと樹脂層2bとは、それぞれ1次熱加圧プレス、2次熱加圧プレスにより、金属板1に穿孔されている小孔1aの全空間に樹脂層2aの一部2cが充填されて一体に成形され、繊維層8aは取り付け金具の溶着面と反対の面に配置される樹脂層2aの層中に補強層として積層されて一体となっており、樹脂層2bの上面に高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体9が配置されている。
【0055】
この取り付け金具10は、上面を前記樹脂系板材又は樹脂系シートを溶着する溶着面3とし、中央長手方向に幾つかのコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4、長手方向両側をフランジ6とする。5はコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用穴である。コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4の下面7と溶着面3との距離は、フランジ下面6aとの距離より大きくしてある。
【実施例5】
【0056】
図7は、本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための図3と同じ上面外観を有す、別の平面円形の取り付け金具のB−B断面図である。
【0057】
図7において、取り付け金具10は、複数の小孔が表裏を貫通して穿孔された金属板1と熱可塑性樹脂を含有し繊維層8aが積層された樹脂層2aと、繊維層8bが積層された樹脂層2bとからなり、樹脂層2aと樹脂層2bとは、それぞれ1次熱加圧プレス、2次熱加圧プレスにより、金属板1に穿孔されている小孔1aの全空間に樹脂層2aの一部2cが充填されて一体に成形され、繊維層8aは取り付け金具の溶着面と反対の面に配置される樹脂層2aの層中に、繊維層8bは取り付け金具の溶着面に配置される樹脂層2bの層中に、補強層として積層されて一体となっており、樹脂層2bの上面に高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体9が配置されている。
【0058】
この取り付け金具11は、上面を前記樹脂系板材又は樹脂系シートを溶着する溶着面3とし、中央長手方向に幾つかのコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4、長手方向両側をフランジ6とする。5はコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用穴である。コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4の下面7と溶着面3との距離は、フランジ下面6aとの距離より大きくしてある。
【実施例6】
【0059】
つぎに、さらに別の実施例を説明する。
【0060】
図9は、本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面矩形の取り付け金具の図8のC−C断面図である。
【0061】
C−C断面図において、金属板、樹脂層、繊維層、高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体の表示は、図2、4、5、6、7と同様であり、省略してある。
【0062】
この取り付け金具11は、形状が矩形であり、上面を前記樹脂系板材又は樹脂系シートを溶着する溶着面3とし、中央長手方向に幾つかのコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4、長手方向両側をフランジ6とする。5はコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用穴である。コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部4の下面7と溶着面3との距離は、フランジ下面6aとの距離より大きくしてある。
【0063】
本発明に係る取り付け金具の平面形状及び断面形状は、上記に限定されるものではなく、図13乃至図15に示す平面形状その他の平面形状、図16乃至図21に示す断面形状その他の断面形状またはこれらの平面形状、断面形状の組み合せてあってよいことはもちろんである。
【0064】
これらの金属板、樹脂層、繊維層、メッシュ状導電体の表示は、図2、図3、図4、図5、図6、図7と同様であり、省略してある。
【実施例7】
【0065】
図10は、本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面円形又は平面矩形の取り付け金具を示す図1、図3又は図8の断面図である。図において、金属板、樹脂層、繊維層の表示は省略してある。
【0066】
前述の全ての取り付け金具は、取り付け金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面にバネ状物14を配置固定してある。バネ状物14を配置してあることにより、取り付け金具の構造物の取り付け個所に不陸があっても弾性を利用して構造物の表面と取り付け金具を容易に同一平面上に位置させることができる。
【実施例8】
【0067】
図11は、本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面円形又は平面矩形の取り付け金具を示す図1、図3又は図8の断面図である。図において、金属板、樹脂層、繊維層、高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体の表示は省略してある。
【0068】
前述の全ての取り付け金具は、取り付け金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面にゴム状物15を配置固定してある。ゴム状物15を配置してあることにより、取り付け金具の構造物の取り付け個所に不陸があっても弾性を利用して構造物の表面と取り付け金具を容易に同一平面上に位置させることができる。
【0069】
実施例7、8に示したバネ状物14、ゴム状物15は実施例1、2、3、4、5、6の金具のどれにでも付加することが出来る。また、〔0063〕に記載の平面形状、断面形状、これらの組合せに係る金具にも付加することのできることは当然である。
【0070】
なお、上述の実施例において熱加圧プレスの条件は、対象となる素材によっても異なるが、概略50℃〜250℃、1分〜3分、50kg/cm2〜100kg/cm2である。高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体の表面への配置は、たとえば当該メッシュ状導電体に両面接着テープを取り付けることによって行ってもよく、また熱加圧プレスによって行ってもよい。
【0071】
このようにして、全体として構造物に前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具を構成する。
【0072】
つぎに、土構造物に設置する形態をさらに例示し、説明する。
【実施例9】
【0073】
図22は、土構造物17に杭18を打設した後、杭の頂部に取り付け金具を配置した断面図である。
【実施例10】
【0074】
図23は、土構造物17へ法面安定用プレート19をグランドアンカー20で固定した後、前記プレートに取り付け金具を配置した断面図である。
【実施例11】
【0075】
図24は、土構造物17に杭18を打設した後、杭の頂部に矩形金具22を取り付け、配置したもので、取り付け金具を配置した法面の方向を見た正面図である。
【実施例12】
【0076】
図25は、土構造物17に杭18を打設、或いは法面安定用プレートを取り付けた後、杭18の頂部或いは前記プレートに十字金具23を取り付け、配置したもので、取り付け金具を配置した法面の方向を見た正面図である。
【実施例13】
【0077】
図26は、土構造物の面に矩形金具22を格子状に取り付け、配置したもので、取り付け金具を配置した法面の方向を見た正面図である。
【0078】
図21、図22、図23、図24、図25に例示した取り付け金具の配置方法は、コンクリート等硬質の構造物に適用しても良い。
【0079】
本発明に用いられる金属板は、導電性を有するものであればよく、たとえば、鉄、ステンレススチール、アルミニウム、銅、その他合金類等であるが、特にステンレススチールのSUS430が好ましい。
【0080】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂は、たとえば、ポリエチレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ナイロン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、エチレン−酢酸ビニル重合体樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂/エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素三重共重合体樹脂混合物、アイオノマー樹脂或いはエチレン−プロピレンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等の樹脂素材或いはゴム素材等からの一種又は以上である。特に超長期の耐候性を必要とする用途ではフッ素樹脂、無毒、衛生性が要求される用途ではポリエチレン樹脂が好ましい。
【0081】
本発明に用いられる高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体は、鉄、アルミニウム、銅、ステンレス、タングステン、導電性フェライト、導電性有機物、及び真鍮を代表とする各種合金製の薄板、箔、細線、或いは金属被覆した合成樹脂、金属被覆した有機繊維等である。
【0082】
本発明に用いられる繊維は、例えば、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等合成繊維類、ガラス繊維等鉱物繊維、ステンレス繊維等金属繊維等である。
【0083】
本発明に係る構造物や土構造物に、前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具は、上述のようにしてなるのでつぎのようにして利用される。
【0084】
図12は、取り付け金具をコンクリート構造物の壁面に取り付けた状態を示す断面図である。図において、金属板、樹脂層、繊維層、導電体の各層の表示は省略してある。
【0085】
まず、取り付け金具10をコンクリート構造物12の表面にコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン13を用いて構造物12の表面に平行になるように取り付ける。取り付け金具10を構造物12の表面に取り付けた後は、取り付け金具10の溶着面に前記樹脂系板材16又は樹脂系シートを沿わせて高周波誘導加熱を行う。
【0086】
前記樹脂系板材又は樹脂系シートは、片面に熱可塑性樹脂層が設けられた熱硬化性樹脂、両面が熱可塑性樹脂或いは全体が熱可塑性樹脂である材料が適宜選ばれて用いられる。
【0087】
構造物12の表面に取り付け金具10又は11が取り付けられ、取り付け金具10又は11の溶着面に前記樹脂系板材16を添えた後、電流を流すと誘導電流コイルより磁力線が発生する。磁力線が前記樹脂系板材16又は樹脂系シートを透過して高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体9及び取り付け金具10又は11の金属板まで達する。高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体9及び取り付け金具10又は11内部で渦電流が発生し、発熱する。当該メッシュ状導電体9と接する前記樹脂系板材又は樹脂系シート及び取り付け金具の溶着面が同時に昇温し、溶着可能温度に達した後、両者が溶着一体化する。前述溶着一体化の過程において当該金具の金属板の発熱は溶着面側の樹脂の昇温速度を高め溶着可能温度までの到達時間を短縮する効果を発揮する。一体化した後、通電を停止し、冷却するので加圧すると溶着完了する。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための平面円形の取り付け金具であり、金具上面に樹脂層がなく、更に上面に高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体が配置されている金具の平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面円形の取り付け金具であり、金具上面に樹脂層を有し、更に上面に高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体が配置されている金具の平面図である。
【図4】図3のB−B断面図である。
【図5】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面円形の取り付け金具であり、金具上面に樹脂層がなく、更に上面に高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体が配置されており、金属板を介した反対面に繊維層が積層された樹脂層を有す金具の断面図である。
【図6】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面円形の取り付け金具であり、金具上面に樹脂層を有し、更に上面に高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体が配置されており、金属板を介した反対面に繊維層が積層された樹脂層を有す金具の断面図である。
【図7】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための別の平面円形の取り付け金具であり、金具上面、下面に繊維層が積層された樹脂層を有し、上面樹脂層の更に上面に高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体が配置されている金具の断面図である。
【図8】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための平面矩形の取り付け金具の平面図である。
【図9】図8のC−C断面図である。
【図10】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための、底面にバネ状物を取り付けた別の平面円形の取り付け金具を示す断面図である。
【図11】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための、底面にゴム状物を取り付けた別の平面円形の取り付け金具を示す断面図である。
【図12】取り付け金具をコンクリート構造物の壁面に取り付けた状態を示す断面図である。
【図13】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具の別の実施例を示す平面図である。
【図14】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための長方形の形状を示す矩形の取り付け金具の平面図とそのE−E断面図である。
【図15】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具の別の実施例を示す平面図である。
【図16】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具の断面図である。
【図17】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具の断面図である。
【図18】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具の断面図である。
【図19】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具の断面図である。
【図20】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具の断面図である。
【図21】本発明に係る前記樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具の断面図である。
【図22】土構造物17への、打設した杭18頂部を利用した金具の取り付け例図である。。
【図23】土構造物17への、グランドアンカー20により設置した土構造物の法面安定用プレート19を利用した金具の取り付け例図である。
【図24】土構造物17に杭18を打設した後、杭18の頂部に矩形金具22を取り付け、配置したもので、取り付け金具を配置した法面の方向を見た正面図である。
【図25】土構造物17に杭18を打設、或いは法面安定用プレート19を取り付けた後、杭18の頂部或いは前記プレートに十字金具23を取り付け、配置したもので、取り付け金具を配置した法面の方向を見た正面図である。
【図26】土構造物の面に矩形金具22を格子状に取り付け、配置したもので、取り付け金具を配置した法面の方向を見た正面図である。
【符号の説明】
【0089】
1 金属板
1a 小孔
2a 熱可塑性樹脂を含有する樹脂層
2b 熱可塑性樹脂を含有する樹脂層
2c 樹脂層の一部
3 溶着面
4 コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部
5 コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用穴
6 フランジ
6a フランジ下面
7 コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面
8a 繊維層
8b 繊維層
9 高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体
10 平面円形取り付け金具
11 平面矩形取り付け金具
12 コンクリート構造物
13 コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン
14 バネ状物
15 ゴム状物
16 樹脂系板材
17 土構造物
18 杭
19 法面安定用プレート
20 グランドアンカー
21 平面矩形取り付け金具
22 長方形を有す平面矩形取り付け金具
23 十字形取り付け金具
24 長さの異なる十字形取り付け金具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具であって、当該金具は、複数の小孔を有する金属板の少なくとも一面に前記の熱可塑性樹脂と同じ樹脂を含有する樹脂層が配置され、かつ、当該樹脂層の樹脂と同一の樹脂が金属板の小孔の全空間に充填され、当該樹脂層と金属板の小孔に充填されている樹脂とが一体となっているものであり、更に前記樹脂系板材又は樹脂系シートと溶着・固定される面の最外面に高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体を配置してなることを特徴とする高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具。
【請求項2】
熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具であって、当該金具は、複数の小孔を有する金属板の少なくとも一面に前記の熱可塑性樹脂と同じ樹脂を含有する樹脂層が配置され、かつ、当該樹脂層の樹脂と同一の樹脂が金属板の小孔の全空間に充填され、当該樹脂層と金属板の小孔に充填されている樹脂とが一体となっているものであり、更に前記樹脂系板材又は樹脂系シートと溶着・固定される面の最外面に厚さ0.05〜1.0mm、開口率25〜90%であり高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体を配置してなるものであって、当該金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面と高周波誘導加熱溶着面との距離がこの取り付け金具の周辺部フランジ下面と高周波誘導加熱溶着面との距離より大きく、両者の距離の差は、コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピンの頭部の高さより大きいことを特徴とする、高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の取り付け金具に配置された熱可塑性樹脂を含有する樹脂層に繊維層が積層されていることを特徴とする、高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具。
【請求項4】
請求項1、請求項2又は請求項3に記載の取り付け金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面にバネ状物或いはゴム状物質が配置されていることを特徴とする、高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具。
【請求項1】
熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具であって、当該金具は、複数の小孔を有する金属板の少なくとも一面に前記の熱可塑性樹脂と同じ樹脂を含有する樹脂層が配置され、かつ、当該樹脂層の樹脂と同一の樹脂が金属板の小孔の全空間に充填され、当該樹脂層と金属板の小孔に充填されている樹脂とが一体となっているものであり、更に前記樹脂系板材又は樹脂系シートと溶着・固定される面の最外面に高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体を配置してなることを特徴とする高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具。
【請求項2】
熱可塑性樹脂を少なくとも一面に用いた樹脂系板材又は樹脂系シートを高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具であって、当該金具は、複数の小孔を有する金属板の少なくとも一面に前記の熱可塑性樹脂と同じ樹脂を含有する樹脂層が配置され、かつ、当該樹脂層の樹脂と同一の樹脂が金属板の小孔の全空間に充填され、当該樹脂層と金属板の小孔に充填されている樹脂とが一体となっているものであり、更に前記樹脂系板材又は樹脂系シートと溶着・固定される面の最外面に厚さ0.05〜1.0mm、開口率25〜90%であり高周波誘導加熱法で発熱するメッシュ状導電体を配置してなるものであって、当該金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面と高周波誘導加熱溶着面との距離がこの取り付け金具の周辺部フランジ下面と高周波誘導加熱溶着面との距離より大きく、両者の距離の差は、コンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピンの頭部の高さより大きいことを特徴とする、高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の取り付け金具に配置された熱可塑性樹脂を含有する樹脂層に繊維層が積層されていることを特徴とする、高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具。
【請求項4】
請求項1、請求項2又は請求項3に記載の取り付け金具に形成されたコンクリートアンカーボルト又はコンクリートアンカーピン用凹部下面にバネ状物或いはゴム状物質が配置されていることを特徴とする、高周波誘導加熱法で溶着、固定するための取り付け金具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2006−168291(P2006−168291A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−367098(P2004−367098)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000107044)ショーボンド建設株式会社 (71)
【出願人】(000239862)平岡織染株式会社 (81)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000107044)ショーボンド建設株式会社 (71)
【出願人】(000239862)平岡織染株式会社 (81)
【Fターム(参考)】
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