説明

高固体及び低粘度を有する感圧性接着剤分散物並びにその製造方法

水系感圧性接着剤分散物を提供する。分散物は、モノマー溶液と水相との反応生成物である。モノマー溶液は、約40〜70部の、アルキルアクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される非水溶性モノマーと、約0.01〜0.2部のモノマー可溶性フリーラジカル反応開始剤と、を含有する。水相は、約1〜20部のラテックス結合剤と、約0.1〜2部の界面活性剤と、約0.02〜1部の高分子懸濁安定剤と、残部としての水と、を含む。全ての部は、分散物100部あたりの重量部として与えられる。分散物は、少なくとも60重量%の固相、約23℃で測定した約0.3Pa・s(300センチポアズ)未満の粘度、及び二峰性粒径分布を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、約60%を超える高固体含量及び約23℃で測定した、約0.3Pa・s(300センチポアズ)未満の低粘度を有する水系感圧性接着剤分散物に関する。本発明はまた、分散物の製造方法及び構成成分として分散物を含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
水系感圧性接着剤(PSA)の望ましい特性は、効率よくコーティングできるように、高固体含量(典型的には約50%固体分を超える)及び低粘度である。このようなPSA組成物は、製造コストが比較的低くなる場合が多い。高固体含量では存在する水が少ないため、PSAコーティングを乾燥させるとき、水を蒸発させるのに用いられるエネルギーが少ない。結果、乾燥速度がより速く、PSA組成物をコーティングするためのライン速度がより速くなる。しかしながら、高固体含量組成物は、高粘度組成物になることがある。PSA組成物の粘度が高すぎる場合、PSA組成物のコーティング適合性及び加工が困難になる。
【0003】
高固体含量及び比較的低粘度であるラテックスPSAを利用可能にするために、乳化重合で種々の技術が用いられている。例えば、特許文献1(ルー(Lu)ら)には、耐湿性でもある高固体含量(約40〜70重量%固相)を有する、乳化重合を介して製造される、ラテックスPSAが記載されている。ラテックスPSAは、モノマー相に比較的少量(約2〜5%)の低分子量疎水性ポリマー及び、凝集強度を向上させ、耐湿性を付与するために用いられた共重合性界面活性剤を使用する。特許文献2(リーマー(Rehmer)ら)には、65%を超える固体含量を有するPSAの、容易に濾過及び防臭可能な水性分散物を製造するプロセスが記載されている。分散物は、乳化フィード技術を用いて調製される。特許文献3(リー(Lee))には、二峰性粒径分布を生み出すために、スプリットフィード、遅延モノマー添加技術を用いて調製される、高固体含量(少なくとも68%)及び0.3Pa・s(300cps)〜15Pa・s(15,000センチポアズ)の範囲の粘度を有する、乳化重合したPSAが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,048,611号
【特許文献2】米国特許第6,225,401号
【特許文献3】米国特許第6,706,356号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの態様では、本発明は、(a)約40〜70部の、アルキルアクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される非水溶性モノマー、並びに約0.01〜0.2部のモノマー可溶性フリーラジカル反応開始剤を含む、モノマー溶液と、(b)約1〜20部のラテックス結合剤、約0.1〜2部の界面活性剤、約0.02〜1部の高分子懸濁安定剤、及び残部としての水を含む、水相と、の反応生成物を含む、又はそれから本質的になる感圧性接着剤分散物に関する。
【0006】
別の態様では、本発明は、(a)モノマー溶液と水相とを混合する工程であって、モノマー溶液が、約40〜70部の、アルキルアクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される非水溶性モノマーと、約0.01〜0.2部のモノマー可溶性フリーラジカル反応開始剤と、を含み、又はそれから本質的になり;水相が、約0.1〜2部の界面活性剤と、約0.02〜1部の高分子懸濁安定剤と、約1〜20部のラテックス結合剤と、残部としての水と、を含み;(b)不活性雰囲気下でモノマー溶液−水相混合物を加熱する工程と;を含む、感圧性接着剤分散物を製造する方法に関する。
【0007】
更に別の態様では、1つの用途では、感圧性接着剤分散物は、テープ、ラベル、大判保護フィルム又はグラフィックフィルムのような物品の一部である。物品は、(a)対向する第1及び第2表面を有する基材と;(b)基材の第1面上に配置された感圧性接着剤であって、感圧性接着剤が、(i)約40〜70部の、アルキルアクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される非水溶性モノマー、約0.01〜0.2部のモノマー可溶性フリーラジカル反応開始剤、約10部未満の非水溶性極性モノマー、約4部未満の水溶性極性モノマー、並びに約1部未満の非水溶性架橋モノマーを含む、モノマー溶液と;(ii)約1〜20部のラテックス結合剤、約0.1〜2部の界面活性剤、約0.02〜1部の高分子懸濁安定剤、及び残部としての水を含む、水相と、の反応生成物を含む、又はそれから本質的になる、感圧性接着剤分散物由来の感圧性接着剤と、を含む。
【0008】
更に別の態様では、本発明は、(a)対向する第1及び第2表面を有する基材と、(b)基材の第1面上に配置された感圧性接着剤であって、感圧性接着剤が、(i)約50〜65部の、アクリル酸イソオクチル、約0.01〜0.2部のアゾ化合物、ペルオキシド及びこれらの組み合わせ、約10部未満のオクチルアクリルアミド、約4部未満のアクリル酸、並びに約1部未満の1,6−ヘキサンジオールジアクリレートを含む、モノマー溶液と、(ii)約1〜20部のアクリルラテックス結合剤、約0.1〜2部のラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルプロペニルエーテル、及びこれらの組み合わせ、約0.02〜1部のポリアクリルアミド、約0.002部未満のヒドロキノン、並びに残部としての水を含む、水相と、の反応生成物を含む、又はそれから本質的になる、感圧性接着剤分散物由来の感圧性接着剤と、を含む、テープに関する。
【0009】
本明細書で使用するとき、全ての「部」は、分散物100部あたりの重量部として与えられる。「残部としての水」という成句は、モノマー溶液及び水相で用いられる各構成成分の量に応じて、モノマー溶液及び水相の合計を100部にするための残部を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明は、図面を参照して更に記載される。
【図1】以下に記載する、それぞれ実施例1及び6の二峰性分布を示すホリバ(Horiba)粒径分布のグラフ。
【図2】以下に記載する、それぞれ実施例1及び6の二峰性分布を示すホリバ(Horiba)粒径分布のグラフ。
【図3】以下に記載する、それぞれ比較例1及び2の単峰性分布を示すホリバ(Horiba)粒径分布のグラフ。
【図4】以下に記載する、それぞれ比較例1及び2の単峰性分布を示すホリバ(Horiba)粒径分布のグラフ。
【図5】本発明のPSAがテープ又はラベルの一部として用いられている、本発明の1つの代表的な用途の断面図。
【0011】
これらの図面は、理想化されており、正確な縮尺で描かれておらず、例示することのみを目的とする。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、水系PSA分散物及びその製造方法に関する。方法は、同時マイクロ懸濁(すなわち、マイクロメートルサイズ)重合及びシード乳化重合を含む。ラテックス結合剤は、水相の一部として機能し、また極微粒子(sub-micron particle)の集合を成長させるためのシードを提供する、マイクロ懸濁重合の水相で用いられる。本明細書でより詳細に説明するように、均質化を含んでよい、モノマー溶液と水相との混合後、マイクロメートルサイズのモノマー液滴が、モノマー膨潤シードラテックス粒子とともに形成される。重合を開始させるために加熱するとき、マイクロ懸濁重合は、シード乳化重合とともに進行する。得られる本発明のPSA分散物は、マイクロ懸濁重合由来の、約1〜15ミクロン(マイクロメートル)の範囲の粒子の主集合と、シード乳化重合由来の、約0.1〜0.5マイクロメートルの範囲のより小さな集合と、を含む、二峰性粒径分布を示す。PSA分散物はまた、高固体含量(典型的には、約65%を超える)、及び典型的には、2番のスピンドルで、ブルックフィールド(Brookfield)粘度計を用いて、約23℃で測定したとき、約0.3Pa・s(300センチポアズ(cps))未満の低粘度を有する。モノマー溶液及び水相については、以下でより詳細に論じる。
【0013】
モノマー溶液
モノマー溶液は、(a)約40〜70部の、アルキルアクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される非水溶性モノマーと、(b)約0.1〜2部の、モノマー可溶性フリーラジカル反応開始剤と、を含む。所望により、モノマー溶液は更に、(c)約10部未満の非水溶性極性モノマーと、(d)約4部未満の水溶性極性モノマーと、(e)約1部未満の非水溶性架橋モノマーと、のうちの少なくとも1種を含む。それぞれの構成成分については、以下で更に論じる。
【0014】
構成成分(a)について、好適な非水溶性モノマーとしては、アクリル酸イソオクチル、2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、アクリル酸イソボルニル、メチルメタクリレート、及びイソボルニルメタクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態では、モノマー溶液は、約50〜65部のこの構成成分(a)を含む。構成成分(b)について、好適なモノマー可溶性フリーラジカル反応開始剤は、アゾ化合物、ペルオキシ化合物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。1つの実施形態では、過酸化ベンゾイルのようなペルオキシ化合物は、単独で又はアゾ化合物と組み合わせて用いることができる。代表的なアゾ化合物としては、デュポン社(DuPont Co.)(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington))から市販されている、バゾ(Vazo)52、バゾ64、及びアゾビス−2−メチル−ブチロニトリルであるバゾ67が挙げられるが、これらに限定されない。構成成分(c)について、好適な非水溶性極性モノマーとしては、N−含有モノマーが挙げられる。代表的な非水溶性極性モノマーとしては、オクチルアクリルアミドが挙げられるが、これに限定されない。構成成分(d)について、好適な水溶性極性モノマーとしては、アクリル酸が挙げられるが、これに限定されない。また、構成成分(e)について、非水溶性架橋モノマーとしては、多官能性(すなわち、ジ−、トリ−、又はテトラ−)アクリレート及びメタクリレートが挙げられる。代表的な非水溶性架橋モノマーとしては、ヘキサンジオールジアクリレートが挙げられるが、これに限定されない。
【0015】
水相
水相は、(f)約1〜20部のラテックス結合剤と、(g)約0.1〜2部の界面活性剤と、(h)約0.02〜1部の高分子懸濁安定剤と、(i)残部として、モノマー溶液及び水相の合計を100部にするために、典型的には脱イオン水である水と、を含む。所望により、水相は更に水溶性阻害剤を含む。これらの構成成分のそれぞれについては、以下に詳細に論じる。
【0016】
構成成分(f)については、好適な市販のラテックス結合剤は、感圧性接着剤特性を有する。代表的なラテックス結合剤は、ノベオン社(Noveon)から製品番号カーボタック(Carbotac)26222として市販されている。構成成分(g)については、従来の及び/又は重合性界面活性剤は、単独で又は組み合わせて用いることができる。本発明で用いることができる好適な従来の界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、及び非イオン性の種類が挙げられる。代表的な従来の界面活性剤は、ステパン社(Stepan Co.)(イリノイ州シカゴ(Chicago))製のステパノール(Stepanol)AMVである。従来の界面活性剤は、主に、マイクロ懸濁重合を促進する。単独で又は従来の界面活性剤と組み合わせて用いられる重合性界面活性剤は、本発明のPSA分散物の機械的剪断安定性及び電解質抵抗性を向上させる。代表的な重合性界面活性剤としては、それぞれ、ポリオキシエチレンアルキルフェニルプロペニルエーテル及びポリオキシエチレンアルキルフェニルプロペニルエーテルアンモニウムサルフェートである、ノイゲン(Noigen)RN−20及びハイテノール(Hitenol)BC−10が挙げられる。これらの重合性界面活性剤はともに、DKSインターナショナル社(DKS International, Inc.)(日本)から市販されている。構成成分(h)については、好適な高分子懸濁安定剤としては、マイクロ懸濁重合で用いられる合成水溶性ポリマー及びセルロース誘導体が挙げられる。代表的な高分子懸濁安定剤は、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0017】
製造方法
1つの代表的な方法では、本発明のPSA分散物は、(i)構成成分を混合して、上記モノマー溶液を形成する工程と、(ii)構成成分を混合して上記水相を形成する工程と、(iii)機械的ミキサーを用いてモノマー溶液と水相とを混合する又は混合物を均質化して液滴及び膨潤したラテックス粒子の分散物を形成する工程と、(iv)不活性雰囲気下で分散物を加熱して重合を開始させ、分散物をPSA分散物に変換する工程と、を含む。
【0018】
一般に、混合及び/又は均質化の程度は、得られるPSA分散物の粒径に影響を与えることができる。一般に、一旦PSA分散物が基材上にコーティングされ、乾燥してPSA製品を形成すると、製品の接着性は、PSA分散物の粒径が低下するにつれて上昇する。しかしながら、接着性上昇の量は、製品が積層又は接着される基材に依存する。本発明で、PSA分散物を混合及び/又は均質化するために用いることができる好適な機械装置としては、ピペリンミキサー、コロイドミル、及びジフォード−ウッドホモミキサー(Gifford-Wood homomixer)のような高速ロータ−ステータ型ホモジナイザーが挙げられる。
【0019】
用途
本発明の感圧性接着剤分散物をテープ又はラベルの一部として用いるとき、分散物は、典型的には、基材の第1面(一般的に「裏材」と呼ばれる)上にコーティングされる。好適な基材としては、所望により強化されてよい、又は他の充填剤、安定剤、及び加工助剤を含有してよい紙系及びポリマー系フィルム(一般的に「処理された基材」と呼ばれる)が挙げられる。PSA分散物をコーティングするために、カーテンコーティング、ノッチバーコーティング(notch bar coating)、グラビアコーティング、及びロールツーロール転写コーティングが挙げられるが、これらに限定されない、任意の従来のコーティング方法を用いることができる。分散物は、基材上で乾燥される。所望により、低接着性バックサイズ(backsize)又は剥離コーティングは、より容易に、すなわち、剥離コーティングを用いないときと比べてより容易に、テープを巻きだすことができるように、基材の第2面(第1面に対向する)上に配置される。所望により、下塗りが、本発明のPSA分散物をコーティングする前に、基材の第1面上に配置される。
【0020】
図5は、対向する第1及び第2表面、それぞれ12a及び12bを有する基材12を備える、代表的なテープ10の断面図を示す。基材の第1表面上に配置されているのは、本明細書に記載する感圧性接着剤分散物の反応生成物から作製される又はその反応生成物に由来する感圧性接着剤14である。基材の第2表面上に配置されているのは、剥離コーティング16である。また、接着剤14と第1表面12aとの間に挟まれているのは、下塗り18である。所望により、剥離ライナ20が、接着剤14上に配置される。
【0021】
本発明の感圧性接着剤分散物は、上記したテープ及びラベルに加えて、広範な用途で用いることができる。本発明の分散物は、2、3例を挙げると、のり又は液状接着剤、固体接着剤(スティックのりのような)、及び美容用途(ヘアムース、ゲル等、マスカラのような)等であるが、これらに限定されない、接着特性が必要とされる任意の用途で用いることができる。他の用途としては、消費者にメッセージを伝えるためのしるしを含むグラフィックフィルム又は保護フィルムのような大判で、高分子裏材上への感圧性接着剤分散物の使用が挙げられる。
【0022】
大判製品の構造では、1つの代表的な方法にて、製品は、接着剤が下塗りと接触している状態で、次いで下塗りされた基材に積層される剥離ライナ上に、接着剤をコーティングすることにより、作製することができる。大判フィルム及び大判保護フィルムは、典型的には、幅が30.5cm(12インチ)より広い。
【0023】
本発明の感圧性接着剤分散物は、のり、液状接着剤、及びスティックのりのような用途では、接着特性が望まれる製剤の構成成分である。この件は、美容用途も同様である。
【実施例】
【0024】
比較例を含む以下の実施例では、感圧性接着剤分散物の粘度は、2番のスピンドルを装備したブルックフィールド粘度計を用いて、約23℃の室温で測定した。体積平均粒径は、ホリバLA−910粒径分析器を用いて測定した。
【0025】
(実施例1)
電磁攪拌器を装備した1000mLの容器内で、均質な溶液が得られるまで、表1に列挙した量(グラム)の構成成分を混合することにより、モノマー溶液を作った。
【0026】
2000mLの容器内で、表1に列挙した量の構成成分を混合することにより、水相を作った。モノマー溶液を、水相を含む容器に注ぎ、500rpmで3分間、機械的攪拌器で混合した。次いで、混合物を、2000rpmで10分間、ジフォード−ウッドホモミキサーを用いて均質化した。
【0027】
均質化された分散物を、温度計、機械的攪拌器、及び窒素注入チューブを装備した、2リットルの樹脂フラスコに注いだ。均質化された溶液を、窒素ブランケット(blanket)下で、400〜500rpmにて攪拌し、60℃で2時間加熱し、次いで加温して75℃で4時間維持し、次いで冷却し、チーズクロスで濾過した。ホリバ粒径分析器を用いて、感圧性接着剤分散物は、図1に示されるように、第1ピークの中心が約0.23マイクロメートルであり、第2ピーク(第1ピークに比べて大きいピーク)の中心が約7.0マイクロメートルである、二峰性分布を有していた。
【0028】
(実施例2)
バゾ67を除外し、ルペロックス(Luperox)A75を2倍の0.4グラムにしたことを除き、実施例1と同様に、感圧性接着剤分散物を調製した。各構成成分の量(グラム)を表1に列挙する。ホリバ分析器は、二峰性粒径分布を示した。
【0029】
(実施例3)
HDDAを除外したことを除き、実施例1と同様に、感圧性接着剤分散物を調製した。各構成成分の量(グラム)を表1に列挙する。ホリバ分析器は、二峰性粒径分布を示した。
【0030】
(実施例4)
均質化工程を除外したことを除き、実施例1と同様に、感圧性接着剤分散物を調製した。水相及びモノマー溶液を、窒素下で、600rpmにて30分間、機械的攪拌器を用いて、2Lの樹脂フラスコ内で混合し、次いで60℃に加熱して重合を開始させた。各構成成分の量(グラム)を表1に列挙する。ホリバ分析器は、二峰性粒径分布を示した。
【0031】
(実施例5)
表1の実施例5の部分に列挙した各構成成分の量(グラム)を用いて、実施例1と同様に、モノマー溶液及び水相を調製した。
【0032】
モノマー溶液を、水相を収容しているビーカーに注ぎ、500rpmで3分間、機械的攪拌器で混合し、次いで、2000rpmで10分間、ジフォード−ウッドホモミキサーを用いて均質化した。次いで、均質化された分散物を、温度計、機械的攪拌器、及び窒素注入チューブを装備した、2リットルの樹脂フラスコに注いだ。反応混合物を、窒素ブランケット下で、400〜500rpmにて攪拌し、60℃に加熱した。50分後、バッチは、樹脂フラスコの外側をエアガンで冷却した状態で、78℃に発熱した。反応を75℃で4時間維持し、冷却し、チーズクロスで濾過し、分散物を得た。ホリバ分析器は、第1ピークが約0.36マイクロメートルであり、第2ピーク(第1ピークに比べて大きいピーク)が約8.5マイクロメートルである、二峰性分布を示した。
【0033】
(実施例6)
表1の実施例6の部分に列挙した各構成成分の量(グラム)を用いて、実施例1と同様に、感圧性接着剤分散物を調製した。ホリバ分析器は、図2に示すように、第1ピークが約0.2マイクロメートルであり、第2ピーク(第1ピークに比べて大きいピーク)が約6.3マイクロメートルである、二峰性分布を示した。
【0034】
(実施例7)
283.9L(75ガロン)の反応器内で、表1の実施例7の部分に列挙した量の各構成成分(キログラム)を用いて、実施例1と同様に、モノマー溶液を調製した。
【0035】
モノマー溶液中の全ての構成成分が溶解し、均質な溶液が得られたとき、攪拌器を停止した。表1の実施例7の部分に列挙したような水性成分を、反応器に添加した。この実施例の場合、ノイゲンRN−20の19.7重量%水溶液を用いた。攪拌器を再起動し、120rpmで維持した。
【0036】
反応器中の混合物は、ジフォード−ウッドパイプラインミキサーを通過し、合計2時間で、反応器内に循環して戻ってきた。均質化された溶液を窒素でパージし、0.17MPa(25ポンド/平方インチ)の窒素とともに密封し、56〜60℃に加熱した。2.5時間の導入後、ジャケットを冷却した状態で、バッチは30分で99℃に発熱した。発熱ピーク後、バッチを75℃で4時間維持し、冷却し、40メッシュのスクリーンで濾過し、感圧性接着剤分散物を得た。ホリバ分析器は、第1ピークが約0.23マイクロメートルであり、第2ピーク(第1ピークに比べて大きいピーク)が約2.6マイクロメートルである、二峰性分布を示した。
【0037】
比較例1
この比較例は、上記実施例1〜7に記載したように、反応生成物中の水相の一部としてラテックス結合剤(カーボタック26222)を用いる代わりに、それをブレンドする影響を示す。
【0038】
カーボタック26222を68グラムの脱イオン水に置換したことを除き、実施例1と同様に、感圧性接着剤分散物を調製した。ホリバ分析器は、図3に示されるように、7.8マイクロメートルの体積平均粒径を備える単峰性粒径分布を示した。
【0039】
100グラムの分散物と、7.4グラムのカーボタック26222(実施例1と同じ、ラテックス結合剤と分散物との比で)とのブレンドは、実施例1のような二峰性粒径分布を示さなかった。
【0040】
比較例2
カーボタック26222を77グラムの脱イオン水に置換したことを除き、実施例6と同様に、感圧性接着剤分散物を調製した。ホリバ分析器は、図4に示されるように、4.0マイクロメートルの体積平均粒径を備える単峰性粒径分布を示した。
【0041】
100グラムの分散物と、10.4グラムのカーボタック26222(実施例6と同じ、ラテックス結合剤と分散物との比で)とのブレンドは、実施例6のような二峰性粒径分布を示さなかった。
【0042】
【表1】

オクチルアクリルアミド、ナショナル・スターチ(National Starch)製
アクリル酸、ダウ・ケミカル(Dow Chemical)製
アクリル酸イソオクチル、3M社(3M Company)(ミネソタ州セントポール(St. Paul))製
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、サートマー(Sartomer)製
アゾビス−2−メチル−ブチロニトリル、デュポン(DuPont)製
25重量%の水を含む過酸化ベンゾイル、アトケム(ATOCHEM)製
脱イオン水
ステパノール(Stepanol)AM−V、ラウリル硫酸アンモニウム、28%固溶体、ステパン社(Stepan Company)(イリノイ州シカゴ(Chicago))製
ハイテノール(Hitenol)BC−1025、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、水中の25%固溶体、DKSインターナショナル(DKS International)製
10 19.7%水溶液を用いた実施例7を除き、ノイゲン(Noigen)RN−20、ポリオキシエチレンアルキルフェニルプロペニルエーテル、DKSインターナショナル製の25%水溶液
11 ヒドロキノン、(イーストマン・ケミカル・プロダクツ(Eastman Chemical Products)製
12 サイアネイマー(Cyanamer)N−300、ポリアクリルアミド、サイテック・インダストリーズ(Cytec Industries)の1%水溶液
13 カーボタック26222、アクリルラテックス結合剤、51%固形分、ノベオン(Noveon)製
14 感圧性接着剤分散物の固形分パーセント
15 粘度(センチポアズ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約40〜70部の、アルキルアクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される非水溶性モノマー、並びに約0.01〜0.2部のモノマー可溶性フリーラジカル反応開始剤を含む、モノマー溶液と;
約1〜20部のラテックス結合剤、約0.1〜2部の界面活性剤、約0.02〜1部の高分子懸濁安定剤、及び残部としての水を含む、水相と;
の反応生成物を含み、
全ての部が、分散物100部あたりの重量部として与えられる、水系感圧性接着剤分散物。
【請求項2】
少なくとも60重量%の固相を有する、請求項1に記載の分散物。
【請求項3】
2番のスピンドルを備えるブルックフィールド粘度計を用いて、約23℃で測定したとき、約0.3Pa・s(300センチポアズ)未満の粘度を有する、請求項1に記載の分散物。
【請求項4】
第1平均粒径が約0.1〜0.5マイクロメートルの範囲であり、第2平均粒径が1〜15マイクロメートルの範囲である、二峰性粒径分布を有する、請求項1に記載の分散物。
【請求項5】
前記モノマー溶液が、約10部未満の非水溶性極性モノマーを更に含む、請求項1に記載の分散物。
【請求項6】
前記非水溶性極性モノマーがオクチルアクリルアミドである、請求項5に記載の分散物。
【請求項7】
前記モノマー溶液が、約4部未満の水溶性極性モノマーを更に含む、請求項1に記載の分散物。
【請求項8】
前記水溶性極性モノマーがアクリル酸である、請求項7に記載の分散物。
【請求項9】
前記モノマー溶液が、約1部未満の非水溶性架橋モノマーを更に含む、請求項1に記載の分散物。
【請求項10】
前記非水溶性架橋モノマーが、多官能性アクリレート、多官能性メタクリレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項9に記載の分散物。
【請求項11】
前記非水溶性架橋モノマーがヘキサンジオールジアクリレートである、請求項9に記載の分散物。
【請求項12】
前記水相が、約0.002部未満の水溶性阻害剤を更に含む、請求項1に記載の分散物。
【請求項13】
前記水溶性阻害剤がヒドロキノンである、請求項12に記載の分散物。
【請求項14】
(i)前記アルキルアクリレートが、アクリル酸イソオクチル、2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、アクリル酸イソボルニル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、(ii)前記メタクリレートが、イソボルニルメタクリレート、メチルメタクリレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の分散物。
【請求項15】
前記高分子懸濁安定剤が、水溶性ポリマー及びセルロース誘導体からなる群から選択される、請求項1に記載の分散物。
【請求項16】
前記高分子懸濁安定剤が、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の分散物。
【請求項17】
前記界面活性剤が、(i)アニオン性、カチオン性、非イオン性界面活性剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される従来の界面活性剤と、(ii)ポリオキシエチレンアルキルフェニルプロペニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルプロペニルエーテルアンモニウムサルフェート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される重合性界面活性剤と、からなる群から選択される、請求項1に記載の分散物。
【請求項18】
モノマー溶液と水相とを混合する工程であって、前記モノマー溶液が、約40〜70部の、アルキルアクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される非水溶性モノマーと、約0.01〜0.2部のモノマー可溶性フリーラジカル反応開始剤と、を含み、前記水相が、約0.1〜2部の界面活性剤と、約0.02〜1部の高分子懸濁安定剤と、約1〜20部のラテックス結合剤と、残部としての水と、を含み、全ての部が前記分散物100部あたりの重量部として与えられる工程と;
前記モノマー溶液−水相混合物を不活性雰囲気下で加熱する工程と;を含む、感圧性接着剤分散物の製造方法。
【請求項19】
前記分散物が、少なくとも60重量%の固相を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記分散物が、2番のスピンドルを備えるブルックフィールド粘度計を用いて、約23℃で測定した、約0.3Pa・s(300センチポアズ)未満の粘度を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記分散物が、第1体積平均粒径が約0.1〜0.5マイクロメートルであり、第2体積平均粒径が約1〜15マイクロメートルである、二峰性粒径分布を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記モノマー溶液が、約10部未満の非水溶性極性モノマーを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記非水溶性極性モノマーがオクチルアクリルアミドである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記モノマー溶液が、約4部未満の水溶性極性モノマーを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記水溶性極性モノマーがアクリル酸である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記モノマー溶液が、約1部未満の非水溶性架橋モノマーを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記非水溶性架橋モノマーが、多官能性アクリレート及び多官能性メタクリレートからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記非水溶性架橋モノマーがヘキサンジオールジアクリレートである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記水相が、約0.002部未満の水溶性阻害剤を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項30】
前記水溶性阻害剤がヒドロキノンである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
(i)前記アルキルアクリレートが、アクリル酸イソオクチル、2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、アクリル酸イソボルニル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、(ii)前記メタクリレートが、イソボルニルメタクリレート、メチルメタクリレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項32】
前記高分子懸濁安定剤が、水溶性ポリマー及びセルロース誘導体からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項33】
前記高分子懸濁安定剤が、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項34】
前記界面活性剤が、(i)アニオン性、カチオン性、非イオン性界面活性剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される従来の界面活性剤と、(ii)ポリオキシエチレンアルキルフェニルプロペニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルプロペニルエーテルアンモニウムサルフェート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される重合性界面活性剤と、からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項35】
対向する第1及び第2表面を有する裏材と;
前記裏材の前記第1面上に配置される感圧性接着剤であって、前記感圧性接着剤が、
約40〜70部の、アルキルアクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される非水溶性モノマー、約0.01〜0.2部のモノマー可溶性フリーラジカル反応開始剤、約10部未満の非水溶性極性モノマー、約4部未満の水溶性極性モノマー、及び約1部未満の非水溶性架橋モノマーを含む、モノマー溶液と;
約1〜20部のラテックス結合剤、約0.1〜2部の界面活性剤、約0.02〜1部の高分子懸濁安定剤、及び残部としての水を含む、水相と;
の反応生成物を含む、感圧性接着剤分散物由来である、感圧性接着剤と;
を含み、
全ての部が、前記分散物100部あたりの重量部として与えられる、物品。
【請求項36】
前記感圧性接着剤が、第1体積平均粒径が約0.1〜0.5マイクロメートルであり、第2体積平均粒径が約1〜15マイクロメートルである、二峰性粒径分布を有する、請求項35に記載の物品。
【請求項37】
(i)前記アルキルアクリレートが、アクリル酸イソオクチル、2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、アクリル酸イソボルニル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、(ii)前記メタクリレートが、イソボルニルメタクリレート、メチルメタクリレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項35に記載の物品。
【請求項38】
前記高分子懸濁安定剤が、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項35に記載の物品。
【請求項39】
前記界面活性剤が、(i)アニオン性、カチオン性、非イオン性界面活性剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される従来の界面活性剤と、(ii)ポリオキシエチレンアルキルフェニルプロペニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルプロペニルエーテルアンモニウムサルフェート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される重合性界面活性剤と、からなる群から選択される、請求項35に記載の物品。
【請求項40】
前記裏材の前記第1表面上に配置される少なくとも1つの下塗りと、前記裏材の前記第2表面上に配置される低接着性バックサイズと、前記接着剤上に配置されるライナと、を更に含む、請求項35に記載の物品。
【請求項41】
ライナの第1表面上に前記感圧性接着剤分散物をコーティングする工程と;
前記分散物を乾燥させる工程と;
前記基材の第1表面上に下塗りをコーティングする工程と;
前記下塗りを乾燥させる工程と;
前記下塗りが前記感圧性接着剤に接触するように、前記コーティングされたライナを前記コーティングされた基材に積層する工程と、により作製される大判の、請求項35に記載の物品。
【請求項42】
対向する第1及び第2表面を有する裏材と;
前記裏材の前記第1面上に配置される感圧性接着剤であって、前記感圧性接着剤が、
約50〜65部のイソオクチルアクリレート、約0.01〜0.2部のアゾ化合物ペルオキシド、及びこれらの組み合わせ、約10部未満のオクチルアクリルアミド、約4部未満のアクリル酸、及び約1部未満の1,6−ヘキサンジオールジアクリレートを含むモノマー溶液;並びに
約1〜20部のアクリルラテックス結合剤、約0.1〜2部のラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルプロペニルエーテル、及びこれらの組み合わせ、約0.02〜1部のポリアクリルアミド、約0.002部未満のヒドロキノン、及び残部としての水を含む、水相;
の反応生成物を含む感圧性接着剤分散物由来である、感圧性接着剤と;を含み、
全ての部が前記分散物100部あたりの重量部として与えられる、テープ。
【請求項43】
前記感圧性接着剤が、第1体積平均粒径が約0.1〜0.5マイクロメートルであり、第2体積平均粒径が約1〜15マイクロメートルである、二峰性粒径分布を有する、請求項42に記載のテープ。
【請求項44】
前記裏材の前記第1表面上に配置される少なくとも1つの下塗りと、前記裏材の前記第2表面上に配置される低接着性バックサイズと、前記接着剤上に配置されるライナと、を更に含む、請求項42に記載のテープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−519388(P2010−519388A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550956(P2009−550956)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/052245
【国際公開番号】WO2008/103526
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】