説明

高圧ガス容器の安全弁装置

【課題】火災発生時等において、逆火を十分に防止しながら迅速に高圧ガス容器内のガスを放出することが可能な高圧ガス容器の安全弁装置を提供することである。
【解決手段】溶栓式安全弁装置10は、水素ガスの放出流路12と、放出流路12を閉じる溶栓13と、を備え、水素ガス貯蔵容器30の温度が高温になったときに、溶栓13が溶融して放出流路12が開放される安全弁装置において、さらに、水素ガスを噴出するノズル14と、ノズル14の周囲に形成された吸引室15と、ノズル14から噴出された水素ガスを車外に排出する排出流路16と、吸引室15に吸引される消火剤を貯蔵する消火剤貯蔵容器17と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧ガス容器の安全弁装置に関し、特に、火災等により高圧ガス容器が高温状態となったときに作動する溶栓式の安全弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧ガス容器としては、例えば、燃料電池車両(燃料電池を動力源とする車両)に搭載される水素ガス貯蔵容器や天然ガス車両(天然ガスを動力源とする車両)に搭載される天然ガス貯蔵容器などが挙げられる。例えば、燃料電池車両に搭載される水素ガス貯蔵容器には、可燃性ガスである水素ガスが高圧で充填されている。したがって、車両火災等により容器が高温に曝されると内部の水素ガスが膨張して容器を破損させるおそれがあるため、容器の破損を防止すべく、水素ガス貯蔵容器には溶栓式の安全弁装置(溶栓弁)が設置されている。
【0003】
また、上記水素ガス貯蔵容器には、溶栓弁の他にも安全弁装置として、例えば、水素ガス供給ステーションの故障等により水素ガスが過充填された場合に作動する圧力リリーフ弁が設置されている。なお、圧力リリーフ弁には、例えば、主止電磁弁が故障した場合に水素ガス貯蔵容器内の水素ガスを手動操作により排出するための操作レバー等が設置されていることが多い。
【0004】
本発明に関連する技術として、火災等により高圧ガス容器が高温に曝された場合を想定して、火災等による被害を抑制するための装置等が幾つか開示されている。例えば、特許文献1には、車両に搭載した高圧ガス貯蔵容器に溶栓弁を接続し、溶栓弁が開弁作動したときに放出する高圧ガス貯蔵容器内のガスの放出方向を車両の姿勢によって制御する高圧ガス貯蔵装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、高圧ガス容器におけるアクシデントなどによる火災に対して,帯状にボンベを包む液体消火液の入ったケースを設置して、コンテナの外部が炎にさらされたときに、液体消火液の包みが熔けてコンテナ内に泡状になった消火液が充満することにより容器表面温度の上昇を防止するコンテナが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004‐136828号公報
【特許文献2】特開2008‐169993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に開示された技術によれば、火災等により高圧ガス容器が高温状態となった場合に、容器内のガスをより安全に放出でき、また、上記特許文献2に開示された技術によれば、容器表面温度の上昇を抑制できることが想定される。しかしながら、安全弁装置が作動して高圧ガス容器内のガスが放出されたときにおいて、ガスの放出口付近に着火源が存在すると、放出中のガスに引火する可能性がないとは言えず、万が一引火した場合には、その火炎が高圧ガス容器内へ伝達する、いわゆる「逆火」を引き起こすことがあり得る。即ち、上記各特許文献に開示された技術は、「逆火」の防止について未だ改良の余地がある。
【0008】
なお、逆火を防止するために、例えば、安全弁装置の放出口から長い排出管を伸ばして、当該排出管内のガス濃度が極めて低濃度となるように放出制御する方法も考えられるが、設備コストや放出速度低下等の観点から好ましくはない。
【0009】
本発明の目的は、火災発生時等において、逆火を十分に防止しながら迅速に高圧ガス容器内のガスを放出することが可能な高圧ガス容器の安全弁装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る高圧ガス容器の安全弁装置は、高圧ガスの放出部と、放出部を閉じる弁体と、を備え、高圧ガス容器の圧力又は温度が所定値を超えたときに、又は弁体が手動操作されたときに、放出部が開放される高圧ガス容器の安全弁装置において、放出部から放出されるガスに対して消火剤を供給する消火剤供給部を備えることを特徴とする。さらに、放出部に連結され放出部から放出されたガスを外部に排出する排出流路を備え、消火剤供給部は、排出流路を流通するガスに対して消火剤を供給する構成がより好ましい。
【0011】
ここで、高圧ガス容器の圧力とは、容器に充填されたガスの圧力を意味し、高圧ガス容器の温度とは、容器に充填されたガスの温度の他に、当該ガスの温度を示唆する温度、例えば、容器自体(又は容器表面)の温度や容器の周辺温度を意味する。また、所定値とは、高圧ガス容器の破損を防止するための閾値(圧力又は温度)であって、例えば、溶栓式であれば溶栓を構成する材料の溶融温度が所定値である。また、外部とは、高圧ガス容器が設置される設備の外部であって、例えば、燃料電池車両であれば車外を意味する。
【0012】
上記構成によれば、ガスの放出口付近に着火源が存在した場合であっても、ガスと共に放出(排出)される消火剤によって逆火を確実に防止することができる。例えば、火災が激しくて放出されたガスの一部に引火したとしても、消火剤によって直ちに鎮火することが可能である。
【0013】
さらに、本発明に係る高圧ガス容器の安全弁装置は、上記構成に加えて、放出部の出口に形成された高圧ガスを噴出するノズルと、ノズルの周囲に形成された空間であって高圧ガスが噴出される吸引室と、を備えることが好ましい。なお、当該構成において、消火剤供給部は、吸引室に連結され、高圧ガスの噴出により発生する負圧を利用して吸引室に消火剤を供給する。
【0014】
上記構成は、エジェクタと同様の機構(以下、エジェクタ機構とする)を利用して消火剤を供給するものである。即ち、ノズルから高速でガスが噴出されると吸引室が負圧となり、この負圧を利用して消火剤供給部から消火剤が吸引室に吸引される仕組みである。そして、吸引室に吸引(供給)された消火剤は、特に、排出流路において、高圧ガスとよく混合されてから外部に排出される。
【0015】
なお、消火剤供給部から供給される消火剤としては、窒素や二酸化炭素等の不活性ガス、水等の液体消火剤、燐酸二水素アンモニウム等の粉末消化剤などを用いることができる。また、燃料電池車両に搭載される高圧ガス容器において、消火剤供給部が燃料電池スタックの空気排出流路に接続され、不活性ガスとして、燃料電池スタックから排出されるオフガス、即ち、燃料電池で電池反応に使用され酸素濃度が低下した窒素リッチの空気を使用することもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る高圧ガス容器の安全弁装置によれば、火災発生時等において、逆火を十分に防止しながら迅速に高圧ガス容器内のガスを放出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る実施の形態における溶栓式安全弁装置が高圧ガス容器に設置される態様を示す模式図である。
【図2】本発明に係る実施の形態における溶栓式安全弁装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を用いて、本発明に係る高圧ガス容器の安全弁装置の実施形態につき、以下詳細に説明する。なお、以下では、安全弁装置として、主に、溶栓式の安全弁装置10(以下、溶栓式安全弁装置10とする)を例に挙げて説明するが、本発明の構成は、圧力リリース弁についても適用することができる。
【0019】
また、溶栓式安全弁装置10が設置される高圧ガス容器として、燃料電池車両に搭載される水素ガス貯蔵容器30を例に挙げて説明するが、本発明の安全弁装置が適用可能な高圧ガス容器は、水素ガス貯蔵容器に限定されるものではない。
【0020】
図1に、溶栓式安全弁装置10の設置態様を模式的に示す。図1に示すように、溶栓式安全弁装置10は、高圧の水素ガスが充填された水素ガス貯蔵容器30に、高圧バルブ31を介して設置されている。溶栓式安全弁装置10が接続される高圧バルブ31には、水素ガス貯蔵容器30から水素ガスを取り出すための水素ガス供給流路32が形成されている。
【0021】
水素ガス供給流路32は、図示しない燃料電池スタックにつながっており、水素ガス貯蔵容器30から燃料電池スタックに水素ガスを供給するための流路である。水素ガス供給流路32には、当該流路を開閉する主止電磁弁33が設けられており、この主止電磁弁33を開放することで燃焼電池スタックに水素ガスが供給される。
【0022】
なお、高圧バルブ31には、水素ガス供給流路32から分岐する分岐流路34を設けることができる。そして、この分岐流路34に溶栓式安全弁装置10の放出流路12を接続することができる。また、分岐流路34又は水素ガス供給流路32には、圧力リリース弁を設置することができる。圧力リリース弁は、例えば、水素ガス供給ステーションの故障等により水素ガスが過充填された場合や主止電磁弁33の故障等が発生した場合に、水素ガス貯蔵容器30内の水素ガスを放出するために利用される。
【0023】
溶栓式安全弁装置10は、車両火災等によって水素ガス貯蔵容器30の温度が高温となったときに作動して水素ガスを放出する機能を有する。例えば、水素ガス貯蔵容器30が火炎に曝され容器の温度が上昇すると、その熱が溶栓式安全弁装置10に伝達されて、可溶性の合金から構成される溶栓13が溶融する。故に、溶栓13により閉塞されていた放出流路12が開放されて、高圧の水素ガスが外部に(大気中に)放出される。以下、図2を用いて、溶栓式安全弁装置10の構成及び作用につき、詳細に説明する。
【0024】
図2に、溶栓式安全弁装置10の詳細を示す。図2に示すように、溶栓式安全弁装置10は、弁本体11と、弁本体11に形成された水素ガスの放出部である放出流路12と、放出流路12を閉じる溶栓13と、を備え、水素ガス貯蔵容器30が高温状態となったとき、即ち、容器に充填された水素ガスの温度が上昇して膨張し容器を破損させるおそれがあるときに、溶栓13が溶融して放出流路12を開放する溶栓式の安全弁装置である。
【0025】
弁本体11は、放出流路12と、弁体である溶栓13とを含み、後述の排出流路16や消火剤貯蔵容器17が連結される安全弁装置の基幹部であって、高圧バルブ31に締結されている。
【0026】
放出流路12は、高圧ガスを放出するための流路(放出部)であって、水素ガス供給流路32から分岐した分岐流路34にその一端(入口)が接続されている。溶栓式安全弁装置10が作動したときには、水素ガス貯蔵容器30内の水素ガスが分岐流路34及び放出流路12を通り、放出流路12の他端(出口)から外部に向かって放出される。
【0027】
溶栓13は、例えば、可溶性の合金から構成され、放出流路12を閉塞する部材である。可溶性の合金としては、水素ガス貯蔵容器30の温度が上昇して所定の高温状態となったときに、溶融するものであれば特に限定されず、例えば、銅と亜鉛やニッケルとの合金などを用いることができる。溶栓13は、例えば、後述のノズル14につめられて放出流路12の出口を閉じているが、例えば、水素ガス貯蔵容器30が火炎に曝されると溶栓13にその熱が伝播して溶融するので、放出流路12が開放されることになる。
【0028】
なお、図2では、溶栓13がノズル14につめられた形態を示したが、溶栓13としては、バネ式の弁体やネジ式の弁体を用いることもできる。例えば、ネジ式の弁体を用いる場合は、軸方向に沿って貫通孔が形成された弁体であって、当該貫通孔に可溶性の合金が充填されたネジ式の弁体を、放出流路12の出口(ノズル14)に形成したネジ溝にねじ込み放出流路12を閉じる構成とすることができる。
【0029】
溶栓式安全弁装置10は、放出される水素ガスに対して、消火剤を供給し、逆火を防止することを特徴とする。したがって、溶栓式安全弁装置10は、上記構成要素に加えて、放出流路12の出口に設けられ放出流路12が開放されたときに水素ガスを噴出するノズル14と、ノズル14の周囲に形成された空間であって水素ガスが噴出される吸引室15と、吸引室15から水素ガスを外部に排出すると共に、水素ガスと後述の消火剤とを混合する排出流路16と、吸引室15に消火剤を供給する消火剤貯蔵容器17と、を備える。
【0030】
ここで、ノズル14、吸引室15、及び排出流路16は、エジェクタ機構を構成する要素である。即ち、溶栓式安全弁装置10は、エジェクタ機構を利用して、放出される水素ガスに対して、消火剤貯蔵容器17から消火剤を供給する装置である。
【0031】
ノズル14は、溶栓13が溶融して放出流路12が開放されたときに水素ガスを噴出する部材である。ノズル14は、放出流路12の出口に形成され、出口先端に向かって流路径が縮径する縮径ノズル(コンバージェットノズル)である。即ち、放出流路12を通過してきた高圧の水素ガスは、ノズル14によって加速されて、吸引室15に高速で噴出される。
【0032】
吸引室15は、弁本体11のノズル14の周囲に形成された部屋(空間)である。吸引室15には、上記のように、高速で水素ガスが噴出されるので、噴射より負圧が発生する。そして、吸引室15には、消火剤貯蔵容器17が連結されているので、発生した負圧によって消火剤が吸引される。即ち、溶栓式安全弁装置10におけるエジェクタ機構は、高圧の水素ガスをノズル14から高速で噴射し、その運動エネルギーを利用してノズル14の周囲(即ち、吸引室15)に負圧の空間を発生させ、負圧空間の周囲の流体(即ち、吸引室15に連結された消火剤貯蔵容器17内の消火剤)を吸引する仕組みである。
【0033】
排出流路16は、吸引室15と、燃料電池車両の外部とを接続する流路であって、ノズル14の先端から放出流路12に沿った方向に伸びている。排出流路16は、例えば、その出口が路面の方向(鉛直下方)を向くように構成され、当該流路16を通って吸引室15に噴出された水素ガスが外部に排出される。また、排出流路16は、上流部分(入口側)の流路径が小さく、出口側に向かって流路径が広がった形状とすることができる。吸引室15に噴出された水素ガスと、吸引室15に吸引された消火剤とは、特に、排出流路16の上流部分で良好に混合される。即ち、排出流路16は、いわゆるディフューザとしての機能を有している。
【0034】
消火剤貯蔵容器17は、消火剤を貯蔵する容器である。上記のように、消火剤貯蔵容器17は、吸引室15に連結されており、当該容器17内の消火剤は、吸引室15の負圧によって吸引室15に吸引される。具体的には、水素ガスが流れる方向に対して直交(略直交)する方向から消火剤が供給されるように、ノズル14の噴出口よりもやや上流側にあたる位置に消火剤貯蔵容器17の連結口が設けられている。なお、消火剤貯蔵容器17は、水素ガス貯蔵容器30の近傍に搭載してもよいが、車両のデッドスペースに搭載することが好ましい。
【0035】
消火剤貯蔵容器17に貯蔵される消火剤としては、水素ガスと混合することができ、逆火を防止できるものであれば種々の消火剤を適用することが可能である。例えば、窒素ガスや二酸化炭素、ハロゲン化アルキル等の不活性ガス、水や炭酸カリウム、界面活性剤などを添加した水溶液等の液体消火剤(泡消火剤)、燐酸二水素アンモニウムや炭酸水素ナトリウム等の粉末消火剤を用いることができる。これら各種消火剤のうち特に好ましい消化剤は、不活性ガスである。
【0036】
不活性ガスとしては、大気圧〜高圧のガスを用いることができる。例えば、水素ガス貯蔵容器30が満充填されたときの圧力よりも高くすることもできるが、消火剤貯蔵容器17からはエジェクタ機構により不活性ガスが吸引されるので、不活性ガスの圧力は、大気圧に近い圧力であってもよい。なお、消火剤貯蔵容器17に貯蔵される活性ガス等の消火剤の容量は、消火剤の消化能力等によっても異なるが、例えば、水素ガス貯蔵容器30に満充填された水素ガス量の1/2〜同等の量とすることができる。
【0037】
また、不活性ガスとしては、燃料電池スタックから排出されるオフガスを用いることもできる。オフガスは、燃料電池スタックで電池反応に使用されて酸素濃度が低下した窒素リッチの空気であるから消火剤として十分に利用することができる。なお、オフガスを消火剤として利用するために、燃料電池スタックの空気排出流路と消火剤貯蔵容器17とを接続する接続流路を備え、例えば、燃料電池の定常運転時におけるオフガスの一部を消火剤貯蔵容器17に予め供給して貯めておくことができる。
【0038】
消火剤貯蔵容器17と吸引室15との接続部には、消火剤貯蔵容器開閉弁18を設置することが好ましい。特に、消火剤として不活性ガスを用いる場合には、消火剤貯蔵容器開閉弁18により不活性ガスの大気拡散を防止することができる。消火剤貯蔵容器開閉弁18としては、吸引室15に発生する負圧によって開放される弁、例えば、圧力リリース弁と同様のバネ式の弁、或いはノズル14からの水素ガス放出と同じタイミングで開放制御される電磁弁を用いることができる。また、消火剤の圧力が低い場合には、消火剤貯蔵容器開閉弁18の代わりに、消火剤の拡散を防止すると共に、吸引室15に発生する負圧によって破れる膜やフィルム等を設置することもできる。
【0039】
ここで、上記構成を備える溶栓式安全弁装置10の作用について、より詳細に説明する。なお、以下では、燃料電池車両に火災が発生した場合を例示して説明する。
【0040】
まず初めに、例えば、水素ガス貯蔵容器30が火炎に曝されて容器が高温状態になると、その熱が放出流路12(ノズル14)を閉塞している溶栓13に伝達される。そして、伝達された熱で溶栓13が溶融することによって、放出流路12が開放される。放出流路12が開放されると、水素ガス貯蔵容器30に充填された高圧の水素ガスは、放出流路12を通ってノズル14から吸引室15に高速で噴出されることになる。
【0041】
水素ガス貯蔵容器30に充填された高圧の水素ガスが、ノズル14から高速で吸引室15に噴出されると、吸引室15には負圧が発生する。吸引室15が負圧になると、消火剤貯蔵容器開閉弁18が開放されて、消火剤貯蔵容器17から不活性ガス等の消火剤が吸引室15に吸引(供給)される。吸引室15に供給された不活性ガスは、ノズル14から噴出された水素ガスと混合される。特に、不活性ガスと水素ガスとの混合は、ディフューザとして機能する排出流路16の上流部分で良好に行なわれて、混合ガスが排出流路16を通って車外に排出される。
【0042】
以上のように、溶栓式安全弁装置10は、水素ガスの放出部である放出流路12と、放出流路12を閉じる弁体である溶栓13と、を備え、水素ガス貯蔵容器30の温度が高温になったときに、溶栓13が溶融して放出流路12が開放される安全弁装置において、さらに、ノズル14と、吸引室15と、排出流路16と、消火剤貯蔵容器17と、を備える。したがって、溶栓式安全弁装置10により放出される水素ガスは、消火剤と混合されてから車外に放出されるので、放出した水素ガスの一部に引火したとしても、消火剤によって直ちに鎮火することが可能であるから、逆火を確実に防止することができる。
【0043】
なお、上記では、本発明に係る安全弁装置の実施形態について、溶栓式安全弁装置10を中心に説明したが、バネ式やネジ式の圧力リリース弁についても同様の構成を適用することができる。
【0044】
また、エジェクタ機構を利用せず、放出流路12を延長するように排出流路16が設けられて、排出流路16の途中に消火剤供給部が接続された構成とすることもできる。当該構成では、放出される水素ガスの圧力よりも高圧の不活性ガスを供給する消火剤供給部、例えば、高圧の不活性ガスが充填された高圧容器、或いは圧縮機等を設置して不活性ガスの圧力を高める構成等を備える。
【符号の説明】
【0045】
10 溶栓式の安全弁装置、11 弁本体、12 放出流路、13 溶栓、14 ノズル、15 吸引室、16 排出流路、17 消火剤貯蔵容器、18 消火剤貯蔵容器開閉弁、30 水素ガス貯蔵容器、31 高圧バルブ、32 水素ガス供給流路、33 主止電磁弁、34 分岐流路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧ガスの放出部と、
放出部を閉じる弁体と、
を備え、高圧ガス容器の圧力又は温度が所定値を超えたときに、又は弁体が手動操作されたときに、放出部が開放される高圧ガス容器の安全弁装置において、
放出部に連結され、放出部から放出された高圧ガスを外部に排出する排出流路と、
排出流路を流通する高圧ガスに対して、消火剤を供給する消火剤供給部と、
を備えることを特徴とする高圧ガス容器の安全弁装置。
【請求項2】
請求項1に記載の高圧ガス容器の安全弁装置において、
放出部の出口に形成された高圧ガスを噴出するノズルと、
ノズルの周囲に形成された空間であって、高圧ガスが噴出される吸引室と、
を備え、
消火剤供給部は、吸引室に連結され、高圧ガスの噴出により発生する負圧を利用して、吸引室に消火剤を供給することを特徴とする高圧ガス容器の安全弁装置。

【図1】
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【図2】
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