説明

高圧タンクの圧抜き用バルブ

【課題】高圧タンクの圧抜き用バルブにおいて、簡易な構造により、小型化と保守性の向上に対応する。
【解決手段】バルブ10は、チャンバ42を外部に連通する連通孔44が形成されたボディ22と、ボディ22に挿入され、連通孔44を開閉する弁本体40を有する。そして、弁本体40は、オリフィス52を含む側壁50を有し、さらに、流体をチャンバ42からオリフィス52を通って径方向に導く導通路54と、導通路54を流れる流体で作動して、軸方向46における弁本体40の移動を規制する規制部56とを有する。弁本体40が開方向に移動することにより、オリフィス52が外部に連通して流体が外部へ流れるとともに、この流体の流れにより規制部56が作動して弁本体40の移動を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧タンク内に充填された流体を外部に放出し、高圧タンク内を減圧する高圧タンクの圧抜き用バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水素ガス等の燃料を燃料電池に供給し、その電池で発電した電力により走行する車両が知られている。このような車両には、通常、燃料電池に用いられる燃料を高圧状態で収容する高圧タンクが搭載される。この高圧タンクの口金には、通常、ガスが流れる通路と、この通路に配置される各種バルブとを一体化したバルブ装置が取り付けられる。
【0003】
下記特許文献1には、車両に搭載されるガス容器用のバルブ装置が記載されている。このバルブ装置は、ガス容器と外部とを連通する通路として、ガス容器にガスを流入させる第1の通路と、ガス容器からガスを流出させる第2の通路とを有する。このバルブ装置は、さらに、第1の通路と第2の通路を接続する連通路と、連通路に配置された手動弁とを有する。この手動弁は、平常時、閉状態である。しかし、第2の通路であって、この通路と連通路とが接続する接続部よりガス容器側の第2の通路に配置されたバルブが故障等で開かなくなった場合には、緊急事態として手動弁が開弁される。これにより、第1の通路、連通路そして第2の通路の順にガス容器内のガスを流して、ガス容器内のガス圧を抜いて、その容器内を減圧することができる。
【0004】
また、下記特許文献1のバルブ装置は、ガス容器から外部にガスをリリーフするためのリリーフ通路と、リリーフ通路に配置された溶栓弁とを有する。この構成により、高温時に、溶栓弁が開弁してリリーフ通路と外部とを連通させるので、ガス容器内のガス圧を抜いて、その容器内を減圧することができる。
【0005】
下記特許文献2には、流体が流入する第1キャビティとこのキャビティに環状孔を介して連通する第2キャビティとが軸方向に向かって順に形成されたハウジングと、ハウジング内に配置され、環状孔を開閉するポペットと、ポペットを軸方向に移動させる作動手段とを有するバルブが記載されている。ポペットは、閉位置時に環状孔に隙間なく密着する外側シール面とこの面より第1キャビティ側に形成されたオリフィスとを含む側壁と、流体を第1キャビティからオリフィスを通って径方向に導く流体誘導手段とを有する。作動手段によりポペットを閉位置から開位置に移動させたとき、オリフィスが第2キャビティに連通するので、流体誘導手段を介して第1キャビティから第2キャビティへ流体を流すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−242225号公報
【特許文献2】特表平11−501716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の高圧タンクのバルブ装置は、上記特許文献1のバルブ装置のように、高圧タンクからガスを外部に放出させる放出通路(リリーフ通路)に配置され、高温時に高圧タンク内のガスを外部に放出する溶栓弁を有する。さらに、従来の高圧タンクのバルブ装置は、上記特許文献1のバルブ装置のように、高圧タンクにガスを流入させる流入通路(第1の通路)と高圧タンクからガスを流出させる流出通路(第2の通路)とを連通する連通路に配置された手動弁を有する。この手動弁は、例えば、流出通路に配置された主止弁の故障時、具体的には閉弁固着時に、手動による開動作で高圧タンク内のガスを流出させて高圧タンク内のガス圧を抜く手動圧抜き弁として機能する。
【0008】
このように、従来の高圧タンクのバルブ装置には、緊急時に動作するバルブとして、溶栓弁のほかに手動圧抜き弁が設けられている。そして、このバルブ装置には、手動圧抜き弁を設けるために、流入通路と流出通路とを連通する連通路が設けられている。よって、バルブ装置が大型化してしまう傾向にあった。大型化するバルブ装置が取り付けられる高圧タンクが車両に搭載される場合、車両では、もともと高圧タンクの設置スペースが限られているので、バルブ装置の設置スペースについても当然余裕はない。
【0009】
また、従来の高圧タンクのバルブ装置においては、車両搭載時におけるメンテナンススペースも制限される。これを考慮して、溶栓弁は、メンテナンスが容易な位置、すなわち車両搭載時におけるバルブ装置の下側に優先的に配置される。一方、手動圧抜き弁は、機能の優先順位が低いため、操作が困難な位置、例えば車両搭載時におけるバルブ装置の上側に配置されてしまう。このため、手動圧抜き弁の操作には、例えばタンクを車両から取り外さなければならず、その作業に手間がかかってしまうという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、簡易な構造により、小型化と保守性の向上に対応することができる高圧タンクの圧抜き用バルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、高圧タンク内に充填された流体を外部に放出し、高圧タンク内を減圧する高圧タンクの圧抜き用バルブにおいて、高圧タンク内に接続するチャンバと、チャンバを外部に連通する連通孔とが軸方向に向かって順に形成されたボディと、軸方向に対して移動可能にボディに挿入され、連通孔を開閉する弁本体と、を備え、弁本体は、閉位置時に連通孔に隙間なく密着するシール部と、シール部よりチャンバ側に形成されたオリフィスとを含む側壁と、流体をチャンバからオリフィスを通って径方向に導く導通路と、導通路に収容され、導通路を流れる流体で作動して、軸方向における弁本体の移動を規制する規制部と、を有し、弁本体が閉位置から開方向に移動することにより、オリフィスが外部に連通して、流体が導通路を介してチャンバから外部へ流れるとともに、この流体の流れにより規制部が作動して弁本体の移動を規制することを特徴とする。
【0012】
また、規制部は、作動時に導通路から径方向外側に向かって拡張する拡張部を有し、拡張部の一部が連通孔の縁部に引っ掛かることにより、弁本体の移動を規制することができる。
【0013】
また、弁本体には、径方向に導通路から側壁まで貫通する貫通路が形成され、拡張部は、貫通路を通って側壁の外側に突出する突出部と、突出部を径方向外側に向かって押圧する弾性部と、を有し、拡張部が導通路を流れる流体に押されて軸方向に移動して貫通路が形成される部分まで移動することにより、突出部が貫通路を介して径方向外側に突出して、弁本体の移動を規制することができる。
【0014】
また、規制部は、拡張部に接続され、導通路を流れる流体に押されて軸方向に移動する移動部を有し、拡張部は、拡張部の外周と、軸方向に延びる導通路の内周との間に隙間ができるように形成され、移動部は、軸方向に延びる導通路の内周に隙間無く嵌るように形成されることができる。
【0015】
また、移動部が、開方向側の導通路の端部まで移動したとき、規制部が弁本体の移動を規制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の高圧タンクの圧抜き用バルブによれば、簡易な構造により、小型化と保守性の向上に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る高圧タンクの圧抜き用バルブの構成を示す図である。
【図2】図1のA部を示す詳細図である。
【図3】移動部を軸方向から見た図である。
【図4】拡張部を軸方向から見た図である。
【図5】圧抜き用バルブの開状態を示す図である。
【図6】開弁時の拡張部を軸方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る高圧タンクの圧抜き用バルブの実施形態について、図を用いて説明する。一例として、燃料電池が発電した電力で走行する自動車、すなわち燃料電池自動車を挙げ、この自動車に搭載される高圧タンクの圧抜き用バルブについて説明する。なお、本発明は、燃料電池自動車に搭載されるタンクに限らず、気体燃料や空気などの流体を高圧の状態で充填するタンクにも適用可能である。
【0019】
図1は、本実施形態に係る高圧タンクの圧抜き用バルブの構成を示す図である。圧抜き用バルブ(以降、単に「バルブ」と記す)10は、高圧タンク12の端部に取り付けられている。高圧タンク12は、これの内部に収容された流体の圧力が分散されるように円筒状、いわゆるシリンダ状に形成される。高圧タンク12に貯蔵される流体は、例えば水素ガスであり、その圧力は、例えば70MPaである。なお、高圧タンク12に貯蔵される流体とその圧力は一例であり、本発明はこの数値に限定されない。
【0020】
バルブ10は、流体の入口14及び出口16と、入口14から高圧タンク12に流体を流入させる流入通路18と、高圧タンク12から出口16に流体を流出させる流出通路20と、これら14,16,18,20が形成されるボディ22とを有する。
【0021】
流体の入口14は、外部のガス源から高圧タンク12に流体を充填するための入口である。流体の入口14は、これの端部がボディ22の表面から露出して設けられ、その端部に、外部の流体接続口(図示せず)が接続されて、流体が外部の流体源から高圧タンク12に供給される。
【0022】
一方、流体の出口16は、高圧タンク12に貯蔵された流体を燃料電池(図示せず)に供給するための出口である。流体の出口16は、これの端部がボディ22の表面から露出して設けられ、その端部に、流体を燃料電池に導く流体供給路(図示せず)が接続されて、流体が高圧タンク12から燃料電池に供給される。
【0023】
流入通路18には、流体の入口14から高圧タンク12に向けて順に、入口手動弁24と逆止弁26とが配置される。これらの弁24,26は、ボディ22に収容される。
【0024】
入口手動弁24は、手動により操作可能な操作部24aを有し、操作部24aの操作により、入口手動弁24の弁体(図示せず)が開閉(オン・オフ)される。また、入口手動弁24は、操作部24aの操作により、弁体の弁開度を調整することで、流体の流量を調整することができる。入口手動弁24は、通常時、開状態である。
【0025】
逆止弁26は、流体が一方から他方へ流れることを許容するが、流体が他方から一方へ流れることを防止するバルブである。本実施形態の逆止弁26は、流体の入口14から高圧タンク12へ流体が流れることを許容するが、流体が高圧タンク12から流体の入口14へ流れることを防止するように配置される。
【0026】
また、流入通路18であって、逆止弁26と高圧タンク12の間にある流入通路18には、高圧タンク12から流体を外部に放出させる放出通路28が接続されている。放出通路28には、溶栓弁30が配置される。溶栓弁30は、その一部がボディ22の表面から突出するように設けられる。
【0027】
溶栓弁30は、周囲の温度により作動する安全弁である。溶栓弁30は、周囲の温度が所定の温度(例えば110℃)を超えると、弁内部の溶栓部(図示せず)が溶解して開弁する。この動作により、高圧タンク12の流体が外部へと放出され、周囲の火災等によって高圧タンク12が爆発してしまうことを防止する。
【0028】
一方、流出通路20には、高圧タンク12から流体の出口16に向けて順に、主止弁32と出口手動弁34とが配置される。これらの弁32,34は、バルブ装置本体22に収容される。
【0029】
出口手動弁34は、手動により操作可能な操作部34aを有し、操作部34aの操作により、出口手動弁34の弁体(図示せず)が開閉(オン・オフ)される。また、出口手動弁34は、操作部34aの操作により、弁体の弁開度を調整することで、流体の流量を調整することができる。出口手動弁34は、通常時、開状態である。
【0030】
主止弁32は、この主止弁32に接続される配線(図示せず)を介して入力される電気信号により電磁石を駆動して弁を開閉する電磁弁である。主止弁32は、車両の停止時、具体的にはイグニッションスイッチがオフである場合、閉状態となり、車両の運転時、具体的にはイグニッションスイッチがオンである場合、開状態となるように制御される。また、主止弁32は、流体の出口16に接続される流体供給路に配置される圧力センサ(図示せず)が設定値以上の圧力値を検出した場合、そのセンサからの電気信号により弁体を閉じる。
【0031】
ボディ22には、高圧タンク12内の圧力を検出するための圧力検出路36が形成される。圧力検出路36は、この圧力検出路36の一端が高圧タンク12に接続され、他端が外部に接続されるように形成される。圧力検出路36の他端は、溶栓弁30が設けられるボディ22の側面、すなわち、車両搭載時にメンテナンスが容易な位置に形成される。
【0032】
圧力検出路36の他端には、圧力センサ38が圧力検出路36と外部を封止するように取り付けられ、この圧力センサ38により高圧タンク12内の圧力が検出される。そして、本実施形態のバルブ10は、圧力センサ38を移動させることにより、圧力検出路36を介して高圧タンク12と外部が連通するように構成される。
【0033】
このような簡易な構成により、バルブ10は、従来の手動圧抜き弁と同様の機能を有することができる。すなわち、主止弁32の故障、例えば閉弁固着時に、圧力センサ38を移動させることで、圧力検出路36を介して高圧タンク12内の流体を外部に排出して、高圧タンク12内の流体の圧力を抜き減圧する機能を有することができる。そして、本実施形態のバルブ10においては、従来の手動圧抜き弁と、この弁が配置される連通路とを設ける必要がないので、バルブ10の小型化に対応することができる。さらに、本実施形態のバルブ10においては、圧力センサ38が、溶栓弁30と同様に、メンテナンスが容易な位置に配置されるので、従来の手動圧抜き弁に比べて保守性の向上を図ることができる。
【0034】
以下、圧力センサ38の構成について、図を用いて詳述する。図2は、図1のA部を示す詳細図である。なお、圧力センサ38の本体部分は、従来の手動圧抜き弁と同様の機能、すなわち高圧タンク12内を減圧する圧抜き用バルブ本体であり、ここを以降、弁本体40と記す。また、圧力検出路36の他端は、高圧タンク12内を減圧するときに高圧タンク12の流体が流れ込む弁本体40の一次側の室に相当する部分であり、ここを以降、チャンバ42と記す。
【0035】
図2に示されるように、ボディ22には、高圧タンク12内に接続するチャンバ42と、チャンバ42を外部に連通する連通孔44とが軸方向46に向かって順に形成される。そして、弁本体40は、軸方向46に対して移動可能にボディ22に挿入される。
【0036】
弁本体40は、軸方向46に延びて形成される円筒状である。この弁本体40が、軸方向に移動することにより、連通孔44を開閉することができる。ここで、弁本体40を軸方向に移動させる機構は、手動により移動可能な簡易な機構であり、例えばボディ22と弁本体40が螺合するネジ機構(図示せず)である。次に、弁本体40の具体的な構成ついて説明する。
【0037】
弁本体40は、閉位置時に連通孔46に隙間なく密着するシール部48を有する。シール部48は、例えばOリングであり、弁本体40の側壁50の外周面に、これの外側から環状に取り付けられる。シール部48は、弁本体40が連通孔44に嵌り合うとき、弁本体40の外周面と連通孔46の内周面の隙間を封止する。
【0038】
また、弁本体40は、側壁50に形成されたオリフィス52と、流体をチャンバ42からオリフィス52を通って径方向に導く導通路54と有する。オリフィス52は、シール部48よりチャンバ42側(図2の右側)の側壁50に2個形成される。導通路54は、弁本体40と同軸に、弁本体40のチャンバ42側端部からオリフィス52に接続するように形成される。なお、オリフィス52の数は一例であって、本発明はオリフィス52の数2個に限定されない。
【0039】
また、弁本体40は、導通路54に収容され、導通路54を流れる流体で作動して、軸方向46における弁本体40の移動を規制する規制部56を有する。この構成により、開弁時に高圧タンク12内の流体を外部に排出するとき、排出される流体の圧力により弁本体40が吹き飛ばされてしまうことを防止することができる。また、高圧タンク12から排出される流体の圧力により、弁本体40をボディ22に取り付けるネジ機構が損傷してしまうことを防ぐことができる。以下、規制部56の具体的な構成について説明する。
【0040】
規制部56は、導通路54を流れる流体に押されて軸方向46に移動する移動部58と、移動部58に接続され、規制部56の作動時に導通路54から径方向外側に向かって拡張する拡張部60とを有する。移動部58と拡張部60は、軸方向46において間隔をあけて設けられ、棒部62を介して互いに接続される。
【0041】
移動部58の具体的な構成について、図2及び3を用いて説明する。図3は、移動部58を軸方向46から見た図である。移動部58は、略円板状であり、図3に示されるように、軸方向46に延びる導通路54の内周に隙間無く嵌るように形成される。この形状により、開弁時に、流体が、高圧領域であるチャンバ42から導通路54とオリフィス52を通って低圧領域である外部に流れようとする押圧力により、移動部58が押されて軸方向46外部側、すなわち開方向に移動する。そして、移動する移動部58は、後述する図5に示されるように、開方向側の導通路54の端部に当接して停止する。
【0042】
なお、本実施形態においては、移動部58が導通路54の内周に隙間無く嵌るように形成される場合について説明したが、この構成に限定されない。開弁時の流体の流れにより移動可能であれば、移動部58が、導通路54の内周との間に隙間ができるように形成されてもよい。この構成により、移動部58の移動中の摩擦抵抗を低減することができる。
【0043】
次に、拡張部60の具体的な構成について、図2及び4を用いて説明する。図4は、拡張部60を軸方向46から見た図である。拡張部60は、開弁時に流体が流れるようにするため、図4に示されるように、拡張部60の外周と、軸方向46に延びる導通路54の内周との間に隙間ができるように形成される。拡張部60は、側壁50の外側に突出可能な突出部64と、突出部64を側壁50の外側に向かって押圧する弾性部66とを有する。
【0044】
突出部64は、拡張部本体60aの径方向両端にそれぞれ設けられる。弾性部66は、例えばバネ性部材であり、圧縮されて、この弾性部66の両端がそれらの突出部64にそれぞれ接続するように拡張部本体60aに収容される。弁本体40には、導通路54から側壁50まで径方向に貫通する貫通路68が2個形成され、開弁時に、この貫通路68と突出部62の位置が一致すると、突出部62が弾性部66により押され貫通路68を通って側壁50の外側に突出する。径方向外側に突出した突出部64は、チャンバ42より小さく形成された連通孔44の縁部70に引っ掛かるので、開方向に移動しようとする弁本体40の動きを規制することができる。なお、突出部62の数は一例であって、本発明は突出部62の数2個に限定されない。
【0045】
次に、本実施形態のバルブ10の動作について、図2,5及び6を用いて説明する。図5は、バルブ10の開状態を示す図であり、図6は、開弁時の拡張部60を軸方向46から見た図である。
【0046】
図2に示されるように、弁本体40が閉位置にあるとき、シール部48により連通孔44が封止され、バルブ10は閉状態である。このとき、軸方向46において、移動部58は導通路54の端部54aよりチャンバ42側に位置し、拡張部60は貫通路68よりチャンバ42側に位置する。
【0047】
弁本体40を開方向に移動させる、例えばネジ機構を緩める操作を行なうと、図5に示されるように、シール部48とオリフィス52が連通孔44より外部側に移動する。そうすると、流体が導通路54を流れ、規制部56が作動する。
【0048】
具体的には、移動部58がチャンバ42の流体により導通路54の端部54aまで押される。そうすると、流体は、そのまま図5の矢印方向に流れ、オリフィス52を通って外部に流出する。すなわち、バルブ10は開状態になる。これにより、高圧タンク12内に充填された流体を外部に放出し、高圧タンク12内を減圧することができる。
【0049】
そして、移動部58の移動にともない、拡張部56も開方向に移動して、突出部64と貫通路68の位置が一致する。そうすると、図6に示されるように、弾性部66により突出部64が径方向外側に押し出され、側壁50より突出した突出部64が連通孔44の縁部70に引っ掛かる。これにより、弁本体40の外部側への移動が規制される。
【0050】
なお、高圧タンク12内が減圧された場合、ネジ機構を締めこむことにより、弁本体40を閉位置に戻すことができる。
【0051】
本実施形態においては、弁本体40が圧力センサ38である場合について説明したが、この構成に限定されない。ボディ22に形成され、高圧タンク12内と外部とを連通する通路を封止するとともに、移動によりその通路を外部に開放できる締結部材であれば、弁本体40が、例えば主止弁32の配線のコネクタであっても、逆止弁26本体であってもよい。
【0052】
本実施形態においては、規制部56が移動部58と拡張部60とを有する場合について説明したが、この構成に限定されない。開弁時に、拡張部60が流体に押されて開方向に移動することができるのであれば、移動部58を設けなくてもよい。この場合、突出部64と貫通路68の位置が一致した場所で拡張部60の移動が止まるように、当接部54aと同様の機能を新たに設けることが好適である。例えば、貫通路68より開方向の導通路54の内周を小さくして、そこに拡張部60が当接して停止させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 圧抜き用バルブ、12 高圧タンク、22 ボディ、30 溶栓弁、36 圧力検出路、38 圧力センサ、40 弁本体、42 チャンバ、46 軸方向、48 シール部、50 側壁、52 オリフィス、54 導通路、56 規制部、58 移動部、60 拡張部、62 棒部、64 突出部、66 弾性部、68 貫通路、70 縁部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧タンク内に充填された流体を外部に放出し、高圧タンク内を減圧する高圧タンクの圧抜き用バルブにおいて、
高圧タンク内に接続するチャンバと、チャンバを外部に連通する連通孔とが軸方向に向かって順に形成されたボディと、
軸方向に対して移動可能にボディに挿入され、連通孔を開閉する弁本体と、
を備え、
弁本体は、
閉位置時に連通孔に隙間なく密着するシール部と、シール部よりチャンバ側に形成されたオリフィスとを含む側壁と、
流体を、チャンバからオリフィスを通って径方向に導く導通路と、
導通路に収容され、導通路を流れる流体で作動して、軸方向における弁本体の移動を規制する規制部と、
を有し、
弁本体が閉位置から開方向に移動することにより、オリフィスが外部に連通して、流体が導通路を介してチャンバから外部へ流れるとともに、この流体の流れにより規制部が作動して弁本体の移動を規制する、
ことを特徴とする高圧タンクの圧抜き用バルブ。
【請求項2】
請求項1に記載の高圧タンクの圧抜き用バルブにおいて、
規制部は、作動時に導通路から径方向外側に向かって拡張する拡張部を有し、
拡張部の一部が連通孔の縁部に引っ掛かることにより、弁本体の移動を規制する、
ことを特徴とする高圧タンクの圧抜き用バルブ。
【請求項3】
請求項2に記載の高圧タンクの圧抜き用バルブにおいて、
弁本体には、径方向に導通路から側壁まで貫通する貫通路が形成され、
拡張部は、
貫通路を通って側壁の外側に突出する突出部と、
突出部を径方向外側に向かって押圧する弾性部と、
を有し、
拡張部が導通路を流れる流体に押されて軸方向に移動して貫通路が形成される部分まで移動することにより、突出部が貫通路を介して径方向外側に突出して、弁本体の移動を規制する、
ことを特徴とする高圧タンクの圧抜き用バルブ。
【請求項4】
請求項2または3に記載の高圧タンクの圧抜き用バルブにおいて、
規制部は、拡張部に接続され、導通路を流れる流体に押されて軸方向に移動する移動部を有し、
拡張部は、拡張部の外周と、軸方向に延びる導通路の内周との間に隙間ができるように形成され、
移動部は、軸方向に延びる導通路の内周に隙間無く嵌るように形成される、
ことを特徴とする高圧タンクの圧抜き用バルブ。
【請求項5】
請求項4に記載の高圧タンクの圧抜き用バルブにおいて、
移動部が、開方向側の導通路の端部まで移動したとき、規制部が弁本体の移動を規制する、
ことを特徴とする高圧タンクの圧抜き用バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−163522(P2011−163522A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29863(P2010−29863)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】