説明

高圧タンク用バルブ装置

【課題】高圧タンク用バルブ装置において、簡易な構造で、寿命の過ぎた高圧タンクの使用を確実に防止する。
【解決手段】高圧タンク用バルブ装置10は、バルブ装置本体22に設けられた電磁弁32と、電磁弁32を制御する電気回路35と、バルブ装置本体22に収容され、電気回路35を遮断する遮断部42と、高圧タンク12の寿命を検出する検出部40とを有する。検出部40により高圧タンク12の寿命が検出され、かつ電磁弁32が閉弁状態である場合、遮断部42が電気回路35を遮断する。バルブ装置本体22内部で電気回路35が遮断されるので、高圧タンク12の使用を確実に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧タンクに取り付けられるバルブ装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水素ガス等の燃料を燃料電池に供給し、その電池で発電した電力により走行する車両が知られている。このような車両には、燃料電池に用いられる燃料を高圧状態で収容する高圧タンクが搭載される。
【0003】
高圧タンクへの燃料の充填作業が繰り返し行なわれると、通常、高圧タンクは劣化する。そこで、耐用年数(寿命)を過ぎた高圧タンクが使用されるのを防止するため、高圧タンクの寿命を検出する技術が開発されている。
【0004】
下記特許文献1には、ガスが流れる通路と、この通路に配置される各種バルブとを一体化したバルブ装置を口金に取り付けた高圧タンクが記載されている。この特許文献1においては、高圧タンクへの燃料の充填回数をカウントし、そのカウント数が所定数に達した場合、高圧タンクが寿命に到達したことが検出される。そして、高圧タンクの寿命が検出されると、バルブの閉弁動作などでバルブ装置内の通路の通路面積を制限して、燃料の流量を低減することで、高圧タンクの実用性を悪化させて高圧タンクの利用を抑制することが開示されている。
【0005】
下記特許文献2には、複数のバルブを有するバルブアセンブリが取り付けられた水素貯蔵コンテナの安全警告システムが記載されている。この特許文献2においては、コンテナの変形を測定するひずみゲージの検出値に基づいてコンテナの寿命が検出される。そして、コンテナの寿命が検出されると、バルブアセンブリのバルブが閉じた状態で維持されるので、コンテナの利用を防止することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−121510号公報
【特許文献2】特表2009−521655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の高圧タンクに取り付けられるバルブ装置においては、上述したように、高圧タンクの寿命が検出された場合、バルブ装置内に設けられたバルブを閉弁させて、その高圧タンクの使用を防止している。しかしながら、バルブを動作させる電気回路の一部であって、バルブの閉状態を維持させる回路がバルブ装置とは別体に設けられているので、例えば高圧タンクを別の車両に搭載して、その回路から別の電気回路にバルブ装置を接続すると、バルブの閉状態が解除され、寿命の過ぎた高圧タンクを使用することができてしまうという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、簡易な構造で、寿命の過ぎた高圧タンクの使用を確実に防止することができる高圧タンク用バルブ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、高圧タンクに取り付けられるバルブ装置本体と、バルブ装置本体に形成され、高圧タンクに連通する通路と、通路に設けられる電磁弁と、を有する高圧タンク用バルブ装置において、電磁弁を動作させる電気回路と、バルブ装置本体に収容され、電気回路を遮断する遮断部と、高圧タンクの寿命を検出する検出部と、を有し、検出部により高圧タンクの寿命が検出され、かつ電磁弁が閉状態である場合、遮断部が電気回路を遮断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の高圧タンク用バルブ装置によれば、簡易な構造で、寿命の過ぎた高圧タンクの使用を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る高圧タンク用バルブ装置の構成を示す図である。
【図2】高圧タンク用バルブ装置の制御動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る高圧タンク用バルブ装置の実施形態について、図を用いて説明する。一例として、燃料電池が発電した電力で走行する自動車、すなわち燃料電池自動車を挙げ、この自動車に搭載される高圧タンクのバルブ装置について説明する。なお、本発明は、燃料電池自動車に搭載される高圧タンクに限らず、気体燃料や空気などの流体を高圧の状態で充填するタンクのバルブ装置にも適用可能である。
【0013】
図1は、本実施形態の高圧タンク用バルブ装置の構成を示す図である。バルブ装置10は、高圧タンク12の軸方向における高圧タンク12の端部に取り付けられている。高圧タンク12は、これの内部に収容されたガスの圧力が分散されるように円筒状、いわゆるシリンダ状に形成される。高圧タンク12に貯蔵されるガスの圧力は、例えば70MPaである。なお、高圧タンク12に貯蔵されるガスの圧力は一例であり、本発明はこの数値に限定されない。
【0014】
バルブ装置10は、ガスの入口14及び出口16と、入口14から高圧タンク12にガスを流入させる流入通路18と、高圧タンク12から出口16にガスを流出させる流出通路20と、これら14,16,18,20が形成されるバルブ装置本体22とを有する。
【0015】
ガスの入口14は、外部のガス源から高圧タンク12にガスを充填するための入口である。ガスの入口14は、これの端部がバルブ装置本体22の表面から露出して設けられ、その端部に、外部のガス接続口(図示せず)が接続されて、ガスが外部のガス源から高圧タンク12に供給される。
【0016】
一方、ガスの出口16は、高圧タンク12に貯蔵されたガスを燃料電池(図示せず)に供給するための出口である。ガスの出口16は、これの端部がバルブ装置本体22の表面から露出して設けられ、その端部に、ガスを燃料電池に導くガス供給路(図示せず)が接続されて、ガスが高圧タンク12から燃料電池に供給される。
【0017】
流入通路18には、ガスの入口14から高圧タンク12に向けて順に、入口手動弁24と逆止弁26とが配置される。これらの弁24,26は、バルブ装置本体22に収容される。
【0018】
入口手動弁24は、手動により操作可能な操作部24aを有し、操作部24aの操作により、入口手動弁24の弁体(図示せず)が開閉(オン・オフ)される。また、入口手動弁24は、操作部24aの操作により、弁体の弁開度を調整することで、ガスの流量を調整することができる。入口手動弁24は、通常時、開状態である。
【0019】
逆止弁26は、ガスが一方から他方へ流れることを許容するが、ガスが他方から一方へ流れることを防止するバルブである。本実施形態の逆止弁26は、ガスの入口14から高圧タンク12へガスが流れることを許容するが、ガスが高圧タンク12からガスの入口14へ流れることを防止するように配置される。
【0020】
また、逆止弁26と高圧タンク12の間にある流入通路18には、高圧タンク12からガスを外部に放出させる放出通路28が接続されている。放出通路28には、溶栓弁30が配置される。溶栓弁30は、その一部がバルブ装置本体22の表面から突出するように設けられる。
【0021】
溶栓弁30は、周囲の温度により作動する安全弁である。溶栓弁30は、周囲の温度が所定の温度(例えば110℃)を超えると、弁内部の溶栓部(図示せず)が溶解して開弁する。この動作により、高圧タンクのガスが外部へと放出され、周囲の火災等によって高圧タンク12が爆発してしまうことを防止する。
【0022】
一方、流出通路20には、高圧タンク12からガスの出口16に向けて順に、電磁弁32と出口手動弁34とが配置される。これらの弁32,34は、バルブ装置本体22に収容される。
【0023】
出口手動弁34は、手動により操作可能な操作部34aを有し、操作部34aの操作により、出口手動弁34の弁体(図示せず)が開閉(オン・オフ)される。また、出口手動弁34は、操作部34aの操作により、弁体の弁開度を調整することで、ガスの流量を調整することができる。出口手動弁34は、通常時、開状態である。
【0024】
電磁弁32には、この電磁弁32を動作させる電気回路35が接続される。電気回路35は、制御指令(電流)を出力する制御部36と、制御部36と電磁弁32とを接続する配線38とを有する。電磁弁32は、制御部36から配線38を介して入力される制御指令により電磁石を駆動して弁体を開閉する。具体的には、電磁弁32は、制御部36から電流が供給されることで電磁石を駆動して弁体を開き、電流が継続して印加されると開状態を維持する。一方、制御部36からの電流の供給が止まると、電磁弁32が閉弁する。電磁弁32は、車両の停止時、具体的にはイグニッションスイッチがオフである場合、閉状態となり、車両の運転時、具体的にはイグニッションスイッチがオンである場合、開状態となるように制御部36に制御される。
【0025】
また、バルブ装置10は、高圧タンク12の寿命を検出する検出部40を有する。検出部40は、高圧タンク12内へのガスの充填回数をカウントし、そのカウント数が予め設定された所定値に達した場合、高圧タンク12が耐用年数を経過した、すなわち高圧タンク12が寿命であることを検出する。なお、本実施形態においては、検出部40が充填回数により高圧タンク12の寿命を検出する場合について説明したが、この構成に限定されない。従来技術で説明したような高圧タンク12のひずみ、またはバルブ装置10のひずみにより高圧タンク12の寿命を検出することもできる。検出部40は、高圧タンク12の寿命を検出すると、その情報を示す信号を制御部36に出力する。
【0026】
本実施形態のバルブ装置本体22には、電気回路35を遮断する遮断部42が収容される。遮断部42は、配線38の一部として構成されるヒューズである。具体的には、バルブ装置本体22には、電磁弁32の配線38が通る配線通路(図示せず)が形成され、この通路内の配線38に遮断部42が設けられる。
【0027】
制御部36は、高圧タンク12が寿命であり、かつ電磁弁32が閉状態である場合、配線38に定格以上の電流を流す。そうすると、遮断部42が自ら溶融し、電気回路35が遮断される。これにより、電磁弁32の閉状態が維持される。このように、バルブ装置本体22内部の電気回路35が遮断されているので、仮に、高圧タンク12を別の車両に搭載して、その車両の制御部にバルブ装置10を接続したとしても、電磁弁32の閉状態を解除することはできない。よって、寿命の過ぎた高圧タンク12の使用を確実に防止することができる。
【0028】
次に、このバルブ装置10の制御動作の一例について、図2を用いて説明する。なお、一例として、寿命を経過した高圧タンク12の再使用を防止するための制御動作について説明する。
【0029】
まず、ステップS101において、高圧タンク12に対するガスの充填回数が計測される。そして、ステップS102において、計測された充填回数が所定値以上であるか否かが判断される。充填回数が所定値に達した場合、ステップS103に進み、高圧タンク12の寿命が検出される。一方、充填回数が所定値未満である場合、ステップS101に戻り、引き続き、ガスの充填回数が計測される。
【0030】
次に、ステップS104において、電磁弁32が閉状態であるか否かが判断される。すなわち、制御部36が電磁弁32に対して保持電流を供給しているか否かが判断される。電磁弁32が閉状態、すなわち電流の供給がない場合、ステップS105に進む。一方、電磁弁32が閉状態でない、すなわち開状態である場合、ステップS106で電磁弁32を閉じてから、ステップS105に進む。
【0031】
ステップS105において、電気回路35が遮断される。すなわち、制御部36が配線38に定格以上の電流を流すことで遮断部42が溶断し、電気回路35が遮断される。そして、制御動作が終了する。これにより、電磁弁32の閉状態が維持され、寿命の過ぎた高圧タンク12の使用を確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0032】
10 高圧タンク用バルブ装置、12 高圧タンク、20 流出通路、22 バルブ装置本体、32 電磁弁、35 電気回路、36 制御部、38 配線、40 検出部、42 遮断部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧タンクに取り付けられるバルブ装置本体と、
バルブ装置本体に形成され、高圧タンクに連通する通路と、
通路に設けられる電磁弁と、
を有する高圧タンク用バルブ装置において、
電磁弁を動作させる電気回路と、
バルブ装置本体に収容され、電気回路を遮断する遮断部と、
高圧タンクの寿命を検出する検出部と、
を有し、
検出部により高圧タンクの寿命が検出され、かつ電磁弁が閉状態である場合、遮断部が電気回路を遮断する、
ことを特徴とする高圧タンク用バルブ装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−163489(P2011−163489A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28693(P2010−28693)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】