説明

高圧容器用扉装置、高圧空間形成装置

【課題】高圧容器の出入の利便性を高めながら、同高圧容器の密閉性を簡便な構成で高めるようにする。
【解決手段】人体を高気圧環境に曝すための高圧容器2に出入用の開口2Aを形成し、この開口2Aの内側に、該開口2Aよりも大きい寸法を有する扉40を開閉自在に配置する。更に、扉40の周囲には、気体によって自身が膨らむことで開口2Aと扉40の隙間を埋めるチューブ46を設置するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素等の気体を人体に効率的に補給するための高圧空間形成装置、及びこの装置に用いられる高圧容器用扉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高気圧環境下で酸素等の気体を体内に取り込んで、疲労や怪我を早期に回復する手法が実践されている。この場合、高気圧環境に人体を曝す必要があるため、高圧空間形成装置が用いられる。高圧空間形成装置の一種に、機密性の高い繊維で構成された袋状のチャンバーに圧縮空気を供給して内圧を高めるものがある。この袋状のチャンバーには、チャックが配置されており、このチャックを開閉することで人が出入り可能となっている。チャンバー内では、仰向けに寝そべることで休息を取りながら、例えば高濃度の酸素を吸引する。
【0003】
他の種類の高圧空間形成装置として、カプセル形状の高圧容器を用いたものがある。この高圧容器は、上側筐体と下側筐体に2分されており、上側筐体が蓋のように開放できるようになっている。上側筐体を開放した状態で、下側筐体内に人体を寝かせ、第三者が上側筐体を閉じて、ロックするようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
袋状のチャンバーを用いた高圧空間形成装置は、チャックの開閉に手間がかかると共に、大気圧状態ではチャンバーが潰れているために、出入りが極めて面倒であるという問題があった。
【0005】
また、従来のカプセル形状の高圧容器の場合、第三者による上側筐体の開閉作業が必要になるため、同様に出入り作業が面倒であり、且つ利用者による単独での使用が困難であるという問題があった。
【0006】
更に、これらの従来の高圧空間形成装置では、内部空間で何らかのトラブルが生じた際に、チャックの開閉に手間がかかったり、第三者の作業を必要としたりするため、利用者に不安感を生じさせるという問題があった。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、高圧容器への出入りを極めて簡潔にすると共に、内部空間の気圧制御を簡便に行うことが可能な高圧容器用扉装置、及び高圧空間形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、以下に示される手段によって達成される。
【0009】
(1)人体を高気圧環境に曝すための高圧容器に形成される出入用の開口と、前記開口の内側に開閉自在に配置され、且つ該開口よりも大きい寸法を有する扉と、を備えることを特徴とする、高圧容器用扉装置。
【0010】
(2)前記扉は、自身が伸縮して前記開口と前記扉の隙間を変動させるスライド機構を備えることを特徴とする、上記1記載の高圧容器用扉装置。
【0011】
(3)前記扉は、自身が揺動して前記開口と前記扉の隙間を変動させる揺動機構を備えることを特徴とする、上記1又は2記載の高圧容器用扉装置。
【0012】
(4)自身が伸縮して前記開口と前記扉の隙間を変動させるスライド機構が、前記扉の一端側に配置され、自身が揺動して前記開口と前記扉の隙間を変動させる揺動機構が、前記扉の他端側に配置されることを特徴とする、上記1、2又は3のいずれか記載の高圧容器用扉装置。
【0013】
(5)前記扉を前記高圧容器の内壁に沿ういずれか一方向に移動自在に保持する案内機構が、前記内壁に配置されることを特徴とする、上記1ないし4のいずれか記載の高圧容器用扉装置。
【0014】
(6)前記扉の近傍に配置され、作動媒体によって自身が変形することで前記扉を前記開口に向けて押圧し、前記開口と前記扉の隙間を埋めるアクチュエータをさらに備えることを特徴とする、上記1ないし5のいずれか記載の高圧容器用扉装置。
【0015】
(7)前記アクチュエータは、前記扉の内壁側に配置されることを特徴とする、上記6記載の高圧容器用扉装置。
【0016】
(8)前記アクチュエータを制御する制御装置をさらに備え、前記制御装置は、前記高圧容器内の内圧が高まった後に前記アクチュエータによる前記扉の押圧力を減じるように制御することを特徴とする、上記6又は7記載の高圧容器用扉装置。
【0017】
(9)前記高圧容器内に導入される気体を、前記作動媒体とすることを特徴とする、上記6、7又は8のいずれか記載の高圧容器用扉装置。
【0018】
(10)上記1ないし9のいずれか記載の高圧容器用扉装置を備えることを特徴とする、高圧空間形成装置。
【0019】
(11)上記9記載の高圧容器用扉装置と、前記高圧容器内の内圧および前記作動媒体の圧力を共に制御する圧力制御装置と、を備えることを特徴とする、高圧空間形成装置。
【0020】
また、上記目的は、以下に示される手段によって達成される。
【0021】
(12)人体を高気圧環境に曝すための高圧容器に形成される出入用の開口と、前記開口の内側に開閉自在に配置され、且つ該開口よりも大きい寸法を有する扉と、前記扉の近傍に配置され、気体によって自身が膨らむことで、前記開口と前記扉の隙間を埋めるチューブと、を備えることを特徴とする高圧容器用扉装置。
【0022】
(13)前記扉の内壁側にチューブ受け部材が配置されており、前記チューブは、前記扉と前記チューブ受け部材の間に挿入されており、前記チューブが膨らむことで前記扉が前記開口に押し付けられて、前記隙間が埋まる構造となっていることを特徴とする、上記12記載の高圧容器用扉装置。
【0023】
(14)前記高圧容器は水平方向に延在するカプセル形状となっており、前記開口及び前記扉は、前記高圧容器の上面側に傾斜配置されていることを特徴とする、上記12又は13記載の高圧容器用扉装置。
【0024】
(15)前記高圧容器は水平方向に延在するカプセル形状となっており、前記高圧容器の内壁に、前記扉を水平方向に移動自在に保持する水平案内機構が配置されていることを特徴とする、上記12、13又は14記載の高圧容器用扉装置。
【0025】
(16)前記高圧容器は水平方向に延在するカプセル形状となっており、前記高圧容器の内壁に、前記扉を周方向に移動自在に保持する周方向案内機構が配置されていることを特徴とする、上記12ないし15のいずれか記載の高圧容器用扉装置。
【0026】
(17)前記案内機構には、前記気体によって自身が伸縮して前記扉を移動させる案内用チューブが配置されることを特徴とする、上記15又は16記載の高圧容器用扉装置。
【0027】
(18)自身の一端が扉側支軸を介して前記扉に揺動自在に連結され、自身の他端が容器側支軸を介して前記高圧容器側に連結されるアーム部材を備えることを特徴とする、上記12ないし17のいずれか記載の高圧容器用扉装置。
【0028】
(19)前記アーム部材による前記扉と前記高圧容器の保持間距離を変動させるスライド機構を備えることを特徴とする、上記18記載の高圧容器用扉装置。
【0029】
(20)前記スライド機構が、前記扉側支軸又は前記容器側支軸を保持する長孔によって構成されることを特徴とする、上記19記載の高圧容器用扉装置。
【0030】
(21)前記扉の一端縁に前記アーム部材が配置され、前記扉の他端縁に、前記高圧容器に保持される揺動軸が配置されることを特徴とする、上記18、19又は20記載の高圧容器用扉装置。
【0031】
(22)前記アーム部材に前記チューブ受け部材が設置されていることを特徴とする、上記18ないし21のいずれか記載の高圧容器用扉装置。
【0032】
(23)前記容器側支軸は、水平方向に配置される棒状の水平案内部材であり、前記アーム部材及び前記扉が、前記容器側支軸によって水平方向に移動自在となっていることを特徴とする、上記18ないし22のいずれか記載の高圧容器用扉装置。
【0033】
(24)前記高圧容器は水平方向に延在するカプセル形状となっており、前記高圧容器の内壁に、前記扉及び前記アーム部材を周方向に移動自在に保持する周方向案内機構が配置される事を特徴とする、上記18ないし23のいずれか記載の高圧容器用扉装置。
【0034】
(25)前記高圧容器は水平方向に延在するカプセル形状となっており、前記開口及び前記扉は、前記高圧容器の上面側に傾斜配置され、前記扉の上側端縁に前記アーム部材が配置されることを特徴とする、上記18ないし24のいずれか記載の高圧容器用扉装置。
【0035】
(26)前記チューブの内圧及び前記高圧容器の内圧を制御する圧力制御装置を備え、前記圧力制御装置は、運転開始時に前記チューブの内圧を高めると共に前記高圧容器の内圧を高めていくように制御すると共に、前記高圧容器の内圧が高まった後、前記チューブの内圧を減じるように制御することを特徴とする上記12ないし25のいずれか記載の高圧容器用扉装置。
【0036】
(27)上記12ないし26のいずれか記載の高圧容器用扉装置を備えることを特徴とする高圧空間形成装置。
【0037】
(28)前記高圧容器に、内部から操作可能なリリーフ機構が設置されていることを特徴とする、上記27記載の高圧空間形成装置。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、扉の開閉の利便性を兼ね備えながらも、高圧容器の機密性を簡便な構成で高めることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態の例について詳細に説明する。
【0040】
図1に示されるように、本発明の実施の形態に係る高圧空間形成装置1は、高気圧カプセル2、高圧容器用扉装置4、コンプレッサー6、基台8を備える。高気圧カプセル2は、アルミやステンレス等の金属部材で構成される円筒状の胴部20と、この胴部20の両端に設置され、透明樹脂製で構成される半球状の突出部22、22と、この突出部22、22の一方の突端に設置されるリリーフ機構24と、内部空間に高圧空気・高濃度酸素・アロマ用の芳香空気・テレビ用のアンテナ配線等を供給する為の複数の連通管26を備える。この高気圧カプセル2は、長手方向が水平となるように基台8上に延在され、内部にはベッド28が配置される。この結果、利用者は高気圧カプセル2の内部で寝ることが可能となっている。
【0041】
高気圧カプセル2の上面側には、周方向に約90度の角度範囲且つ長手方向に約1メートルの大きさとなる方形の開口2Aが形成されている。詳細に、この開口2Aは、周方向に約40度の角度を有するように傾斜配置されている。従って、利用者は、高気圧カプセル2の横側から、この開口2Aを介して円滑に出入することが可能となっている。
【0042】
リリーフ機構24には、高気圧カプセル2の内外の双方に取手24A、24Aが形成されており、この取手24Aを利用して、開放弁部24Bをスライドさせて内外空間が連通するようになっている。この結果、高気圧カプセル2の内部の高圧空気が開放弁部24Bを介して外部に放出されて、大気圧まで早急に減圧できるようになっている。利用者が、高気圧カプセル2の内部からこのリリーフ機構24を操作すれば、緊急時において、内部空間を大気圧環境に減圧することができると共に、後述するように扉を開放できるようになる。また、外側の取手24を操作することで、外側の第三者が強制的に内部空間を減圧できるようにもなっている。なお、コンプレッサー6は、外部の空気を圧縮して圧縮空気を生成する。この圧縮空気は、高圧容器用扉装置4の圧力制御装置80及び連通管26を介して高気圧カプセル2の内部に供給される。
【0043】
次に、高圧容器用扉装置4について詳細に説明する。
【0044】
図2に拡大して示されるように、この高圧容器用扉装置4は、扉40、一対の補強部材42、一対のアーム部材44、チューブ46、チューブ受け部材48、把持部材50、下側スライド軸52、上側スライド軸54、一対の下側スライド軸保持部材56、圧力制御装置80(図1参照)などを備える。
【0045】
扉40は、開口2Aの内側に配置される透明樹脂製の板部材である。この扉40は、高気圧カプセル2の胴部20と略同じ曲率でかまぼこ状に湾曲しており、開口2Aよりも多少大きいサイズとなっている。また、高気圧カプセル2の内部が大気圧の場合、扉40と開口2Aの間には隙間Sが形成されるようになっている。隙間Sを埋めるようにして、開口2Aの内側の周縁にこの扉40を密着させると、この扉40が高気圧カプセル2の一部となって、高気圧カプセル2の内部に高気圧環境が形成される。なお把持部材50が扉40に設置されており、使用者がこの把持部材50によって扉40をスライドさせるようにしている。
【0046】
扉40の長手方向(軸方向)両端には、円弧形状の補強部材42が設置されており、扉40の剛性を高めるようになっている。下側スライド軸52は棒状部材であり、開口2Aの下側縁近傍において、高気圧カプセル2の胴部20の内壁に長手方向に固定されている。上側スライド54も同様に棒状部材であり、開口2Aの上側縁近傍において、高気圧カプセル2の胴部20の内壁に長手方向に固定されている。従って、この下側スライド軸52と上側スライド軸54は平行することで、両者が水平方向の案内機構として機能し、この案内機構によって扉40が水平方向にスライド自在に保持される。
【0047】
補強部材42の下側端には下側スライド軸保持部材56が固定されており、この下側スライド軸保持部材56の挿入孔56Aに、下側スライド軸52が挿入されている。この結果、下側スライド軸保持部材56は、下側スライド軸52に対して軸方向に摺動自在であると共に、この下側スライド軸52を基点にして揺動自在となっている。従って、下側スライド軸52は、水平方向の案内機構に加えて、扉40の揺動軸としても機能する。
【0048】
補強部材42の上側端には、扉側支軸42Aが設置されている。アーム部材44の一端近傍には、扉側支軸42Aがアーム長手方向に移動自在に挿入される長孔44Aが形成されており、他端近傍には、上側スライド軸54が挿入される挿入孔44Bが形成されている。なお、一対のアーム部材44の両挿入孔44Bの間には、円筒状のスライド管44Cが固定されており、このスライド管44C内に上側スライド軸54が挿入されるようになっている。従って、このアーム部材44は、一端側が扉側支軸42Aを介して扉40に揺動自在に連結され、かつ、他端側が高気圧カプセル2の上側スライド軸54に揺動自在に連結される。
【0049】
長孔44A内と扉側支軸42Aは、周方向(アーム部材44の長手方向)のスライド機構となり、アーム部材44による扉40と高気圧カプセル2の保持間距離Lを変動させる。通常は、扉40の自重によって、扉側支軸42Aが長孔44Aの内側端44AX側に位置し、上記保持間距離Lは最短となり、かつ隙間Sは最大となる。一方、扉側支軸42Aを長孔44Aの外側端44AY側にスライドさせれば、下側スライド軸52を基点に扉40全体を開口2A側に揺動させることができる。この結果、扉40が開口2Aに静かに密着する。
【0050】
チューブ受け部材48は棒状部材であり、スライド管44Cと平行するようにして、一対のアーム部材44によって両端が固定されている。チューブ46は、内部に圧縮空気を導入可能な帯状の袋部材であり、チューブ46内に圧縮空気を導入すると、全体が膨らんで棒状になる。この帯状のチューブ46の一方の側縁46Aは、チューブ受け部材48とスライド管44Cに挟まれるようにして固定される。また、チューブ46の他方の側縁46Bは、扉40の上側縁40Aに沿って固定設置される断面L字状の固定部材40Bに固定される。なお、この固定部材40Bは、上記スライド管44Cと当接することで、ストッパとしても機能する。
【0051】
従って、図2に示されるように、チューブ46に圧縮空気を導入していない状態では、チューブ46は、扉40の上側端縁と上側スライド軸54(スライド管44C)の間で押しつぶされている。また、図3に示されるように、チューブ46の内部に圧縮空気を導入すると、チューブ受け部材48と扉40の上側端縁間でチューブ46が膨らんで、扉40の上側端縁が押し上げられて、扉40が開口2Aに密着する。
【0052】
図4に示されるように、上側スライド軸54及び下側スライド軸52(図4では図示省略)には、それぞれ、帯状の案内用チューブ60が2個ずつ配置されている。この案内用チューブ60は、図5に示されるように、複数の袋部60Aが列状に連結されて構成されると共に、この袋部60Aを回避する場所に、案内用開口60Bが複数形成されている。案内用開口60Bは、案内用チューブ60の長手方向に一定の間隔で形成されているので、この案内用チューブ60を九十九折にすることで、全ての案内用開口60Bに上側スライド軸54又は下側スライド軸52を挿入できるようになっている。九十九折された案内用チューブ60の袋部60Aに圧縮空気を導入すると、袋部60Aが膨らむことで、この案内用チューブ60が軸方向に伸びる。
【0053】
案内用チューブ60は、上側スライド軸54及び下側スライド軸52のそれぞれにおいて、扉40の軸方向両外側にそれぞれ配置されている。従って、上側スライド軸54及び下側スライド軸52のそれぞれにおいて、一方側の案内用チューブ60に圧縮空気を導入するとともに、他方側の案内用チューブ60を大気開放すると、一方側の案内用チューブ60が伸びて扉40がスライドして、扉40が閉まる。この際、他方側の案内用チューブ60は扉40に押しつぶされるようにして九十九折状態になる。また、他方側の案内用チューブ60に圧縮空気を導入するとともに、一方側の案内用チューブ60を大気開放すると、今度は他方側の案内用チューブ60が伸びて扉40がスライドして、扉40が開く。この際、一方側の案内用チューブ60は扉40に押しつぶされるようにして九十九折状態になる。このようにして、一対の案内用チューブ60を上側スライド軸54又は下側スライド軸52に設置することで、高気圧カプセル2の内圧を高める為に利用する圧縮空気を利用して、扉40を自動開閉できるようになる。
【0054】
圧力制御装置80は、複数の導入弁、弁を動作させるソレノイド、マイコン等の電子的な制御機構などを備える。圧力制御装置80は、運転開始時に、チューブ46に圧縮空気を導入してその内圧を高めると共に、高気圧カプセル2にも圧縮空気を導入して、内圧を高めるようにする。更にこの圧力制御装置80は、高気圧カプセル2の内圧が一定のレベルまで高まった後、チューブ46を大気側に開放して内圧を減じるように制御する。その後、更に高気圧カプセル2の内圧を目標値まで上昇させて、使用状態となる。使用後は、高気圧カプセル2の内圧を次第に減少させて、最後に大気と一致させる。なお、この圧力制御装置80は、上記の4本の案内用チューブ60に対する圧縮空気の導入制御も行っている。
【0055】
次に、この高圧空間形成装置1の使用手順について説明する。
【0056】
図6に示されるように、使用開始時には、圧力制御装置80が案内用チューブ60の伸縮を制御して、扉40を、上側スライド軸54及び下側スライド軸52軸に沿って軸方向にスライドさせて開く。なお、この開放は把持部材50を利用して手動で行うことも可能である。その後、利用者は、開口2Aを介して高気圧カプセル2内に入って、ベッド28の上に寝る。その後、高気圧カプセル2の内部の操作パネルを利用して、再び案内用チューブ60の伸縮を制御し、扉40を自動的に閉める。図1に示したように扉40が閉まったら、圧力制御装置80の制御によって、高圧容器用扉装置4のチューブ46を膨らませて、扉40と開口2Aの間の隙間Sをなくす。その後、圧力制御装置80によって高気圧カプセル2内に圧縮空気を送り込むと、内圧が高まっていく。高気圧カプセル2の内圧が高くなると、その内圧自体によって、扉40が開口2Aの内周面に押し付けられるので、密閉性が自ずと高まっていき、チューブ46による付勢が不要になる。その頃合いを見計らって、圧力制御装置80はチューブ46の内部を大気側に開放する。この結果、チューブ46の内部の圧縮空気は、高気圧カプセル2の内圧によって自動的に外部に排出され、袋が完全に潰れた状態となる。
【0057】
以上の結果、高気圧カプセル2内が高気圧状態となり、例えば高濃度酸素等を内部に供給して体内への効率的な吸収を促し、健康の増進を図る。
【0058】
終了時は、圧力制御装置80によって高気圧カプセル2の内圧を次第に減少させる。既に説明したように、チューブ46が完全に潰れた状態になっているので、扉40の自重によって開口2Aと扉40の間に隙間Sが形成され、高気圧カプセル2が大気圧になると共に、扉40がスライド可能な状態になる。従って、操作パネルを利用して案内用チューブ60の伸縮を制御し、扉40を自動的に開放する。利用者は体を起こして、開口2Aから外部に出ることで、本装置1の利用が終了する。
【0059】
本実施形態の高圧空間形成装置1は、チューブ46を膨らませることで、高気圧カプセル2の開口2Aと扉40の間の隙間を埋めるようになっている。従って、高気圧カプセル2の内圧を高めるためのコンプレッサー6を共有して、このチューブ46を操作することが可能になり、密閉空間を効率的に作り出すことが可能になる。また、このチューブ46は密閉空間を作るきっかけに過ぎず、その後は、高気圧カプセル2の内圧自体で、扉40を開口2Aに付勢することができるので、チューブ46の負担も軽減できる。この結果、従来のように出入り口用の扉を、内圧に耐えるために冶具で強固に固定する必要が無くなり、出入の利便性と、使用時の快適性を両立させることが可能となっている。
【0060】
更に本実施形態では、チューブ46が扉40の内側に配置されて、チューブ46の膨張によって扉40を開口2Aに付勢する構造になっている。従って、開口2Aと扉40の間にチューブ46が介在しないため、両者の密閉状態を安定させることができる。例えば、開口2Aの内周面に、シリコンゴムやブチルゴム等の弾性部材を配設することで、この弾性部材によって扉40と開口2Aの密閉性を更に高めることも可能となっている。また、図4に示したように、扉40の内壁側において、チューブ受け部材48とチューブ46を扉40と共にスライドさせることができるので、チューブ46が高気圧カプセル2と接触して磨耗することを回避できる。この結果、メンテナンスの手間を軽減し、長期間に亘って安定した動作を維持することが可能になる。特にここでは、アーム部材44にチューブ受け部材48を設置し、このチューブ受け部材48によってチューブ46を保持する構造であるので、簡便な構成でチューブ46を扉40と一体的に移動させることができる。
【0061】
また、本実施形態では、高気圧カプセル2の胴部20の上面側に、開口2A及び扉40が傾斜配置されているので、高気圧カプセル2に対する利用者の出入を容易にすることができる。高気圧カプセル2の耐圧性能を高めるためには、開口2Aをあまり大きくすることは難しく、例えば開口2Aが胴部20に占める周方向角度範囲は、120度程度が上限になると考えられる。従って、胴部20の真上に開口2Aを配置した場合、利用者は、開口2Aの縁を跨ぐ様にして出入しなければならない。そこで、本実施形態のように、開口2A及び扉40を胴部20に対して周方向に傾斜させて配置することで、開口2Aの下側縁が低い位置に配置されるので、容易に出入することが可能となっている。
【0062】
更に、この高圧空間形成装置1では、下側及び上側スライド軸52、54、一対の下側スライド軸保持部材56、及び一対のアーム部材44が、扉40の水平案内機構として機能するので、高気圧カプセル2内を軸方向に円滑にスライドさせて、容易に開閉することが可能となっている。
【0063】
また、この水平方向案内機構に、気体で伸縮する案内用チューブ60が設置されているので、扉40を自動的に開閉することができる。また、案内用チューブ60の動力源は、高気圧カプセル2の高圧生成用のコンプレッサー6を共用できるので、装置構成を簡便にすることができる。
【0064】
本実施形態では、扉40と高気圧カプセル2(上側スライド軸54)の間がアーム部材44によって連結されている。詳細に、アーム部材44は、扉側支軸42Aと上側スライド軸54の二点を揺動用支軸としているので、高い自由度で扉40を滑らかに揺動させることが可能となる。
【0065】
特に、本実施形態では、扉40と高気圧カプセル2間の保持間距離Lを自在に変化させることができるので、扉40と開口2A間の隙間Sを大きく確保することが可能となり、扉40の開閉作業をスムースにすることができる。特にここでは、アーム部材44に形成される長孔44Aによって、扉側支軸42Aの支点をスライドさせているので、簡便な構成で上記保持間距離を変動させることができる。なお、この保持間距離の変化は、揺動軸の支点を長孔でスライドさせる以外にも、アーム部材44自体を伸縮構造にすることも可能である。
【0066】
更に、本実施形態では、扉40に固定された下側スライド軸保持部材56が下側スライド軸52を保持する。従って、下側スライド軸保持部材56側は、扉40と高気圧カプセル2の保持間距離を変動不能にしているので、扉40全体はこの下側スライド軸52を基点に揺動する。この結果、扉40の揺動動作が安定するので、扉40と開口2Aの密閉性を常に安定させることが可能となっている。
【0067】
とりわけ、本実施形態では、扉40を傾斜配置しており、下側スライド軸52を扉40の揺動の基点(固定端)とし、扉40の上方縁側を移動端として揺動させるようにしている。この結果、扉40を開口2Aから開放する際、扉40の自重を有効活用して、扉40の上側を落下させるように揺動させることができる。従って、高気圧カプセル2の内圧を下げるだけで、より確実に扉40を開口2Aから離すことができるようになる。
【0068】
以上の実施形態では、扉40が高気圧カプセル2の内部を軸方向(水平方向)にスライドする場合に限って示したが、本発明はそれに限定されない。例えば図7に示されるように、周方向にガイドレール90が配設されており、このガイドレール90に沿って扉40が周方向にスライドするようにしてもよい。この場合、ガイドレール90に沿って、案内用チューブ60を配設しておき、自動的に扉40を開閉することも勿論可能である。
【0069】
また、本実施形態では、チューブ46によって扉40を動かして、扉40と開口2Aの間の隙間を生める場合に限って示したが、本発明はそれに限定されず、扉40と開口2Aの隙間側にチューブ46を挿入して膨らませ、このチューブ46自体が隙間Sを埋める役割を担うようにしてもよい。この場合も、高気圧カプセル2の内圧を高めると共に、チューブ46の内圧を減圧させていくことで、チューブ46は押しつぶされて、結局、扉40が開口2Aに直接付勢された状態にすることができる。
【0070】
尚、本発明の高圧容器用扉装置および高圧空間形成装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、高圧空間を形成する各種分野で幅広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施形態に係る高圧空間形成装置の全体構成を示す斜視図
【図2】同高圧空間形成装置の扉装置を拡大して示す部分断面図
【図3】同高圧空間形成装置の扉装置を拡大して示す部分断面図
【図4】同扉装置の全体構成を示す正面図
【図5】同扉装置に用いられる案内用チューブを示す平面図
【図6】同高圧空間形成装置の扉が途中まで開いた状態を示す斜視図
【図7】同扉装置の他の構成例を示す部分断面図
【符号の説明】
【0073】
1・・・ 高圧空間形成装置
2・・・ 高気圧カプセル
2A・・・開口
4・・・ 高圧容器用扉装置
40・・・扉
44・・・アーム部材
46・・・チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体を高気圧環境に曝すための高圧容器に形成される出入用の開口と、
前記開口の内側に開閉自在に配置され、且つ該開口よりも大きい寸法を有する扉と、を備えることを特徴とする、
高圧容器用扉装置。
【請求項2】
前記扉は、自身が伸縮して前記開口と前記扉の隙間を変動させるスライド機構を備えることを特徴とする、
請求項1記載の高圧容器用扉装置。
【請求項3】
前記扉は、自身が揺動して前記開口と前記扉の隙間を変動させる揺動機構を備えることを特徴とする、
請求項1又は2記載の高圧容器用扉装置。
【請求項4】
自身が伸縮して前記開口と前記扉の隙間を変動させるスライド機構が、前記扉の一端側に配置され、
自身が揺動して前記開口と前記扉の隙間を変動させる揺動機構が、前記扉の他端側に配置されることを特徴とする、
請求項1、2又は3のいずれか記載の高圧容器用扉装置。
【請求項5】
前記扉を前記高圧容器の内壁に沿ういずれか一方向に移動自在に保持する案内機構が、前記内壁に配置されることを特徴とする、
請求項1ないし4のいずれか記載の高圧容器用扉装置。
【請求項6】
前記扉の近傍に配置され、作動媒体によって自身が変形することで前記扉を前記開口に向けて押圧し、前記開口と前記扉の隙間を埋めるアクチュエータをさらに備えることを特徴とする、
請求項1ないし5のいずれか記載の高圧容器用扉装置。
【請求項7】
前記アクチュエータは、前記扉の内壁側に配置されることを特徴とする、
請求項6記載の高圧容器用扉装置。
【請求項8】
前記アクチュエータを制御する制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記高圧容器内の内圧が高まった後に前記アクチュエータによる前記扉の押圧力を減じるように制御することを特徴とする、
請求項6又は7記載の高圧容器用扉装置。
【請求項9】
前記高圧容器内に導入される気体を、前記作動媒体とすることを特徴とする、
請求項6、7又は8のいずれか記載の高圧容器用扉装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか記載の高圧容器用扉装置を備えることを特徴とする、
高圧空間形成装置。
【請求項11】
請求項9記載の高圧容器用扉装置と、
前記高圧容器内の内圧および前記作動媒体の圧力を共に制御する圧力制御装置と、を備えることを特徴とする、
高圧空間形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−101176(P2009−101176A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329270(P2008−329270)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【分割の表示】特願2007−116733(P2007−116733)の分割
【原出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(506308541)株式会社エア・テクノロジーズ (2)
【Fターム(参考)】