説明

高圧放電ランプ点灯装置、及び高圧放電ランプの消灯方法

【課題】ランプとプロジェクター側の空冷構造が最適化されていなくても、ランプの片側電極に水銀が偏って付着するのを緩和することによって、ランプの再始動性を向上できるランプ消灯時のランプ電流制御方法を提供する。
【解決手段】高圧放電ランプに交流電力を供給する高圧放電ランプ点灯装置において、交流電力の供給を制御する制御手段、及び高圧放電ランプ点灯装置の外部からの消灯信号を受信する受信手段を備え、受信手段が消灯信号を受信してから所定の期間、制御手段が、高圧放電ランプの一方の電極から他方の電極に向かって流れる電流の実効値を、他方の電極から一方の電極に向って流れる電流の実効値よりも大きくする構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧放電ランプを光源とするプロジェクター等の光源装置に係り、特にランプ消灯時のランプ電流制御の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高圧放電ランプを光源とするプロジェクター等の光源装置(以後総じてプロジェクターと呼ぶ)はランプ点灯時のランプ温度上昇が大きく、プロジェクター内部の光学系装置、及び制御基板等まで高温になってしまうため、通常はランプをDCファン等で空冷しながら使用されている。また、プロジェクターのスイッチをOFFしてランプを消灯させた後も空冷ファンは一定時間回し続け、消灯したランプの冷却が行なわれる。これはランプの温度を下げ、ランプバルブ内の圧力を下げることで、ランプが再始動可能な状態にするためである。しかしながらこのランプ消灯後の空冷が、近年ランプの再始動に悪影響を及ぼしている場合があることが分かり、以下その悪影響に関して説明をする。
【0003】
一般的に高圧放電ランプを点灯させる為には15kVや20kVといった高電圧の始動パルスを印加し、ランプ内を絶縁破壊することによりランプを始動させていた。しかし近年光源装置の小型化や低価格化の要望も強いためランプや点灯装置も小型化され、前記始動パルスも低い仕様へと変わってきている。またランプも小型化に伴い冷却を工夫し、ランプに当たる風の流れを作るプロジェクター内の構造も機種によりさまざまとなっている。その上ランプのタイプも図3のような前面開放型のものであったり、図4のような前面がレンズにより密閉されているものであったり、36、46の後方口金部や32、42のリフレクター(ミラー)の形状にも種々あり、ランプ自身の熱容量が違ったりしている。このプロジェクター内の空冷構造とランプの種類・形状との組み合わせが適切でないと、ランプバルブ31、41の前面先端側と後方口金側において空冷時の温度低下スピードに差がでて温度勾配が生じる。
【0004】
またここで言う高圧放電ランプには水銀、又は水銀を主とする添加物が封入されている。この水銀はランプ点灯中には蒸発しているが、ランプが消灯し、バルブ温度の低下とともに液化する。そしてランプバルブの先端側35、45と後方口金側36、46に温度勾配が生じると、水銀は早く温度が下がった方の電極に偏って付着するという性質がある。
【0005】
例えば、図3のような前面開放型のランプにおいてプロジェクターの冷却構造により、冷却風がランプ全体、又はランプ前面側に多く当たるような構造の場合はランプバルブの先端側35の温度が早く下がり、電極も先端側の方が早く温度が下がるため、ランプ先端側の電極33に水銀が偏って付着することになる。また逆に図4のような前面密閉型のランプにおいて冷却風が後方口金46側に多く当たるような場合はバルブ41の口金側電極44の温度が早く下がり、結果として口金側の電極44に水銀が偏って付着することになる。
【0006】
この片側電極への偏った水銀付着が著しい場合は、片側の電極、もしくは電極芯棒が水銀に包まれたような状態となる。この様な状態となると、従来の15kV〜20kVの高電圧パルスであれば充分始動させることが可能であったが、近年主流となっている8kV程度の低パルスではランプの再始動性が著しく低下してしまい、再始動時にランプが点灯しないいわゆる再始動不良という状態になる。これが先に延べたランプの再始動に及ぼしている悪影響である。
また、電極に水銀が付着することにより発生する電極間の短絡など、他の不具合についても下記特許文献1及び特許文献2の中に記述があり、それぞれ改善策が公開されている。
特に特許文献1に関しては方法こそ違うものの、ランプ消灯時に水銀が電極に集中して付着するのを防ぎ、ランプの再始動性を改善するという点では、本発明と同じ目的のものであると言える。
【0007】
具体的には、特許文献1は、ランプ消灯前のある期間にランプ電力を放電維持可能な範囲で絞り(例えば定格電力270Wのランプを50Wで点灯するなど)、水銀が電極に集中して付着するのを防ぐことを開示している。特許文献2は、ランプ消灯後にランプ再始動を行い、電極に水銀が付着すること起因する不具合を解消することを開示している。
【特許文献1】特開2002−289379号公報
【特許文献2】特開2003−17280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ランプの空冷条件に関しては多数のパラメータが存在する。プロジェクター側においては冷却風の流れ、強さ、空冷箇所、空冷時間などで、ランプ側においてはランプのタイプ(前面開放型か、密閉型か)、形状、大きさ、口金部の熱容量等である。これらパラメータを考慮しながら設計をおこない、完璧な空冷条件を導き出し、電極への偏った水銀付着を防止し、水銀がバルブ内に略均一に付着するような状態にするというのは非常に困難である。
【0009】
すなわち、プロジェクターの空冷構造が最適化されていない場合、ランプ消灯後の空冷によりランプ片側の電極に水銀が偏って付着することとなり、ランプの再始動を阻害する要因となる。本発明の目的は、ランプとプロジェクター側の空冷構造が最適化されていなくても、ランプの片側電極に水銀が偏って付着するのを緩和することによって、ランプの再始動性を向上できるランプ消灯時のランプ電流制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の側面は、高圧放電ランプに交流電流を供給する高圧放電ランプ点灯装置であって、交流電力の供給を制御する制御手段、及び高圧放電ランプ点灯装置の外部からの消灯信号を受信する受信手段を備え、受信手段が消灯信号を受信してから所定の期間、制御手段が、高圧放電ランプの一方の電極から他方の電極に向かって流れる電流の実効値を、他方の電極から一方の電極に向って流れる電流の実効値よりも大きくする構成とした。
1つのやり方として、高圧放電ランプに供給される交流電流を所定の周期で反転される矩形波電流として、受信手段が消灯信号を受信してから所定の期間、制御手段が、高圧放電ランプの一方の電極から他方の電極に向かって電流が流れる期間を、他方の電極から一方の電極に向って電流が流れる期間よりも大きくすることによって、高圧放電ランプの一方の電極から他方の電極に向かって流れる電流の実効値を、他方の電極から一方の電極に向って流れる電流の実効値よりも大きくするようにしてもよい。
また、他の構成として、高圧放電ランプに供給される交流電流を所定の周期で反転される矩形波電流として、受信手段が消灯信号を受信してから所定の期間、制御手段が、高圧放電ランプの一方の電極から他方の電極に向かって流れる電流の振幅を、他方の電極から一方の電極に向って流れる電流の振幅よりも大きくすることによって、高圧放電ランプの一方の電極から他方の電極に向かって流れる電流の実効値を、他方の電極から一方の電極に向って流れる電流の実効値よりも大きくするようにしてもよい。
さらに、高圧放電ランプが消灯後に冷却され、冷却による冷却効果の大きい方を前記の一方の電極に指定するようにした。
【0011】
本発明の第2の側面は、上記第1の側面の高圧放電ランプ点灯装置、高圧放電ランプ、リフレクター、高圧放電ランプの冷却手段、及び少なくとも高圧放電ランプ点灯装置を内蔵する筐体からなる光源装置である。
【0012】
本発明の第3の側面は、高圧放電ランプに交流電流を供給する高圧放電ランプ点灯装置における消灯方法であって、高圧放電ランプの点灯中に、高圧放電ランプ点灯装置外部からの消灯信号を高圧放電ランプ点灯装置において受信するステップ、消灯信号を受信してから所定の期間、高圧放電ランプに供給される交流電流について、一方の電極から他方の電極に向かって流れる電流の実効値を他方の電極から一方の電極に向って流れる電流の実効値よりも大きくするステップ、及び所定の期間の経過後、高圧放電ランプ点灯装置から高圧放電ランプへの電力の供給を停止するステップからなる消灯方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によればプロジェクター等の光源装置において、ランプ消灯前のランプ電流制御方法を改良することにより、プロジェクター等の光源装置内の空冷構造とランプの種類・形状の組み合わせが最適化されていなくても、ランプの片側電極に水銀が偏って付着する現象を緩和することが可能となり、従来のランプ消灯と比較してランプの再始動性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明ではプロジェクターにおいてランプを消灯させる際、一定時間tの間ランプの片側極性方向に流れる電流の値を、逆極性方向に流れる電流の値(実効値)より大きい状態にするような電流制御を実施してからランプを消灯する。この作用について、以下に説明する。
【0015】
ランプの点灯中は、ランプの電極がランプ電流の極性により、陽極になったり陰極になったりを繰り返している。この時、陽極となっている電極には、ランプ電流により電子が衝突していて、この電子の衝突が電極の温度が上昇させている。この時交流のランプ電流において、通常点灯時は両極性方向の電流が同じ値となっているためランプの電極は両方とも同程度の温度となっている。
【0016】
ここで、片側の極性方向に流れる電流の値を、逆極性方向に流れる電流の値より大きい状態にした時を考えると、片側の電極が陽極となっている時に、この陽極に衝突する電子の数が、もう一方の電極が陽極となった時にこの陽極に衝突する電子の数より多くなることを意味し、結果として電子が衝突する数の多い方の陽極となる電極の方が、温度が高い状態となる。
【0017】
一般的にランプは、消灯後に温度が低下していく過程で、ランプの構造やプロジェクターの空冷条件により、片側の電極の方が早く温度が低下していく。バルブ内で蒸発していた水銀もバルブの温度低下に伴い液化し始めるが、この時温度が早く低下した方の電極に偏って付着することになる。これを防ぐため、前記したようにランプを消灯する際に、一定時間tの間だけ片側極性方向に流れる電流の値を、逆極性方向に流れる電流の値より大きい状態にし、またこの時の極性は、早く温度が低下する方の電極を、電子が衝突する数の多い方の陽極となるような極性とする。
【0018】
こうすることにより、ランプ消灯直後は、早く温度が低下する電極の方がもう一方の電極よりも温度が高いので、ランプのバルブ、及び電極の温度が低下していく過程で、ある時点で両電極の温度がほぼ同じ温度となる。このある時点と、バルブ内で蒸発していた水銀がバルブの温度低下により液化し始める時点が合うような条件を満たすことで、水銀が片側の電極に偏って付着する現象を防ぐことができ、結果としてランプの再始動性を改善することができる。
なお、ここでいう条件とは、片側の極性方向に流れるランプ電流の値と、逆極性方向に流れるランプ電流の値の差の大きさと、消灯直前に前述の電流制御を実施する時間tのことである。
【0019】
実施例1.
次に実施例について図を用いて説明する。
図2はプロジェクターにおけるランプ収納部の概略図である。図2において22はプロジェクターの光源として用いられることの多い超高圧水銀ランプであり、ランプボックス25に収納されている。本実施例においてランプ22は前面密閉タイプのものであり、ランプ自身がランプ前面側の通気を遮断している。また21は空冷用ファンでランプ側からプロジェクターの外側に空気を吸い出す方向に風を流して空冷をしている。また、このプロジェクターにおいてランプは、値が2.5Aで周波数が100Hzのランプ電流により点灯されている。
【0020】
ここでランプを消灯した時、プロジェクターの構造によりランプボックス25の前面側より後方側の方が風の流れが良好である場合、図4の45に該当するランプの先端側よりも口金側46の方がより冷却される。そして電極も先端側の電極43よりも口金側の電極44の方が早く温度が下がるため、結果として水銀がランプ口金側の電極44に偏って付着してしまっていた。
【0021】
この問題を解決するため、本発明においてはランプ消灯直前の一定時間tの間、電極44から電極43の方向に流れる電流値を、電極43から電極44の方向に流れる電流値よりも大きくするように電流を制御してからランプを消灯する。ここでは図5のように、一定時間tを10秒に設定した。また、電極44から電極43の方向に流れる電流の振幅を2.5Aとして、その時間幅を6msecとし、逆極性の電極43から電極44の方向に流れる電流の振幅を2.5Aとして、その時間幅を4msecとした。
【0022】
このようにランプ電流を制御し、消灯直後において電極44の温度の方が電極43の温度よりも高い状態にすることで、ランプ、及び電極の温度低下の過程で電極44、電極43の温度を略同一とすることができる。そしてランプバルブ内で蒸発していた水銀が、バルブの温度低下に伴い液化し始める時点と、両電極温度が略同一となる時点が近くなることで、口金側電極44への偏った水銀付着を緩和することができる。
【0023】
ここで、前述した片側電極への偏った水銀付着による再始動不良に対する本発明の効果を確認するべく、本実施例のランプ消灯方法と従来のランプ消灯にて、強制的に再始動不良を発生させる実験を実施した結果を以下に示す。
【0024】
本実験においては、強制的に再始動不良を発生させるべくランプ起動用のパルスを4kVの低パルスに仕様変更した点灯装置を用い、更にプロジェクター内部のランプ冷却機構を、ランプの口金側がより冷える構造とした。また周囲は通常室温の25℃であり、ランプを30分点灯させた後にランプを60分消灯し、プロジェクターを再始動させる時にランプの再始動不良が発生しないか確認した。ランプの点灯/消灯をこの時間配分にした理由は、点灯後のランプ温度上昇を充分安定させることができ、消灯後のランプ温度も本実験結果がランプ温度の影響が殆どない程度にまで低下させることができるからである。
【0025】
またこの60分間消灯放置の間はプロジェクターを動かしたり、プロジェクターに衝撃・振動を与えたりしてはならない。これはランプの電極に付着した水銀がバルブ内に落ちたり、水銀の位置が変わったりして再始動性に影響してくるためである。
実験に用いたランプは前述した図4で表される前面密閉タイプであり、5本のランプをそれぞれの空冷方法で3回ずつ実験を行ない、延べ15回の実験を行なった。
【0026】
実験結果としては、従来のランプ消灯においては15回中5回の再始動不良が発生した。これに対し本発明のランプ消灯方法の実施例において、再始動不良の発生は15回中0回であった。この結果から本発明が電極への水銀付着によるランプ再始動不良に対して充分な効果が得られるということが確認できた。
【0027】
また他の実施例として、ランプ消灯直前の一定時間tの間、電極44から電極43の方向に流れる電流値を、電極43から電極44の方向に流れる電流値よりも大きくするため、図5のように、電極44から電極43の方向に流れる電流の時間幅は5msecのまま振幅を3.0Aとして、逆極性の電極43から電極44の方向に流れる電流の時間幅も5msecのまま振幅を2.0Aとした。また一定時間tも最初の実施例と同じく10秒に設定し、同様の実験を実施したが、最初の実施例と同様に従来のランプ消灯と比較して良好な結果を得ることが出来た。
【0028】
更に、一定時間tを前記実施例より短くしても、電極44から電極43の方向に流れる電流値と、電極43から電極44の方向に流れる電流値の差を大きくすることで、前記実施例と同様に良好な結果を得ることができた。
【0029】
具体的な高圧放電ランプ点灯装置の回路構成の一例を示すブロック図を図7に示す。図7に示すように、点灯装置は、降圧チョッパ回路51、降圧チョッパ回路51からの出力を矩形波電流に変換しランプ54に印加するフルブリッジ回路52、ランプ始動用のパルスを発生するイグナイタ回路53、降圧チョッパ回路51及びフルブリッジ回路52を制御するための制御回路55、並びに点灯装置外部からの消灯信号を受信する受信回路56を備える。なお、必要に応じて、イグナイタ回路53内にランプ54に直列接続されるインダクタとランプ54に並列接続されるコンデンサからなる共振回路を設けるものとする。
【0030】
制御回路55は、受信回路56が消灯信号を受信する前は図1に示すようなランプ電流波形となるように、消灯信号受信後は図5又は図6に示すようなランプ電流波形となるように降圧チョッパ回路51及びフルブリッジ回路52を制御する。具体的には、図5に示す電流波形を生成するには、降圧チョッパ回路51の出力を一定に保ち、フルブリッジ回路の出力極性を6msecと4msecごとに反転させればよい。また、図6に示す電流波形を生成するには、フルブリッジ回路の出力極性反転タイミングを均等に保ち、その反転タイミングごとに降圧チョッパ回路51の出力を増減させればよい。もちろん、図5と図6の制御を組み合わせて、正電流と負電流の期間及び振幅の両方を変化させてもよい。
【0031】
また、実施例においては、最も好適な例としてフルブリッジ回路による矩形波電流のものを用いたが、ランプ仕様を満たす範囲であれば他の波形(正弦波、三角波、その他の合成波)や他の周波数の点灯方式を用いてもよい。従って、そのような電流波形を生成できる回路であれば他の回路方式(プッシュプル型、ハーフブリッジ型等)の採用も可能である。またさらに、本実施例では好適な例として6msecと4msecの組み合わせとしたが、それ以外の期間幅の組み合わせとしてもよいし、一定周期の波形でなくてもよい。即ち、いずれの点灯方式や回路方式を用いてもランプに供給される正電流と負電流の実効値の差を適正に制御できればよい。また、降圧チョッパ回路についても、直流電圧又は電流を適切に制御できれば昇降圧チョッパ等他の直流出力回路であってもよい。
【0032】
なお、上述した各条件の設定について、期間tはプロジェクターの仕様等によって決まり、その制約の下、片側の極性方向に流れるランプ電流の値又は逆極性方向に流れるランプ電流の値の差の大きさはランプの電極へのダメージを与えない範囲で選択される必要がある。
【0033】
実施例2.
実施例1においては、確実な放電開始が可能な高圧放電ランプ点灯装置を示したが、本実施例においてはそれを用いた光源装置(プロジェクター)を示す。
図8は第2の実施例に係るプロジェクターを示す図である。図において、60は上記で説明した高圧放電ランプ点灯装置、62はランプバルブ61が取り付けられるリフレクター、63は、高圧放電ランプ点灯装置60、ランプバルブ61及びリフレクター62を内蔵又は支持する筐体である。なお、図は実施例を模擬的に図示したものであり、寸法、配置などは図面通りではない。また、図示されない映像系の部材等を筐体63内に適宜配置するものとする。
これにより、確実な始動が可能な高圧放電ランプ点灯装置を内蔵したので、信頼性の高いプロジェクターを得ることができる。
【0034】
また、消灯信号は例えば使用者が消灯用オフスイッチを押すこと等によって生成されるが、使用者がオフスイッチを押しても実際にランプが消灯するまで時間t(例えば10秒)を要することになる。そのため、オフスイッチを押せば瞬時に消灯するという先入観を持つ使用者は自身のアクションに疑念を持ち、何度もそのオフスイッチを押してしまうことが想定される。そこで、オフスイッチ周辺の信頼性や使用者の安心感の確保のために、期間tにおいて、プロジェクターが消灯準備中である旨を表示するようにしてもよい。その表示方法は、例えば、本体に取り付けられたLEDランプ等を点灯又は点滅させるようにしてもよいし、映写対象であるスクリーンにそのメッセージを映し出すようにしてもよいし、音声などで通知するようにしてもよい。
【0035】
さらに、上記のような構成のプロジェクターにおいては、点灯装置とランプとの結線(2線)を一対一に決定しておき、組立時にそれ以外の対応関係で結線がされないようにして、使用時に適切な方向にランプ電流が大きくなるようにしなければならない。具体的には、ランプ電極の口金側からの配線Aには点灯装置の出力端子a、先端側からの配線Bには出力端子bといったような予め決められた組み合わせでしか配線できないようにすることが望ましい。その対策の1つとして、各配線及び/又は各端子の形状を、上記のような組み合わせでしか接続できないような形状にすればよい。また、配線の長さと出力端子の位置を工夫して、上記の配線Aは出力端子bには届かないように、及び/又は配線Bは出力端子aには届かないようにしてもよい。もちろん、配線Aと配線Bで被覆の色を変える、又は何らかの表記をマーキングする等視覚的に配線を識別できるようにしてもよい。
【0036】
以上述べたように、本発明によればプロジェクター等の光源装置において、ランプ消灯前のランプ電流制御方法を改良することにより、プロジェクター等の光源装置内の空冷構造とランプの種類・形状の組み合わせが最適化されていなくても、ランプの片側電極に水銀が偏って付着する現象を緩和することが可能となり、従来のランプ消灯と比較してランプの再始動性を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の活用は、主にプロジェクターやプロジェクションTV、映写機などの光源装置に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】定常点灯時のランプ電流波形を示す図
【図2】プロジェクター内における、ランプ収納部の該略図
【図3】前面開放タイプ高圧放電灯外観図(リフレクターのみ断面図)
【図4】前面密閉タイプ高圧放電灯外観図(リフレクターのみ断面図)
【図5】本発明実施例のランプ電流波形の一例を示す図
【図6】本発明実施例のランプ電流波形の他の例を示す図
【図7】本発明実施例の回路構成例を示す図
【図8】本発明実施例のプロジェクターを示す図
【符号の説明】
【0039】
21…空冷ファン
22…ランプ
23…ランプ口金
24、48…前面レンズ
25…ランプボックス
26…ランプケーブル
27…通風用開口部
31、41、61…ランプバルブ
32、42、62…リフレクター(ミラー)
33、43…ランプ先端側電極
34、44…ランプ口金側電極
35、45…ランプ先端側封止部
36、46…ランプ口金
47…ランプ口出し線
48…前面レンズ
51…降圧チョッパ回路
52…フルブリッジ回路
53…イグナイタ回路
54…ランプ
55…制御回路
56…受信回路
60…高圧放電ランプ点灯装置
63…筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧放電ランプに交流電流を供給する高圧放電ランプ点灯装置であって、
該交流電流の供給を制御する制御手段、及び該高圧放電ランプ点灯装置の外部からの消灯信号を受信する受信手段を備え、
該受信手段が該消灯信号を受信してから所定の期間、該制御手段が、該高圧放電ランプの一方の電極から他方の電極に向かって流れる電流の実効値を、該他方の電極から該一方の電極に向って流れる電流の実効値よりも大きくすることを特徴とする高圧放電ランプ点灯装置。
【請求項2】
請求項1記載の高圧放電ランプ点灯装置であって、
該高圧放電ランプに供給される交流電流は所定の周期で反転される矩形波電流であり、
該受信手段が該消灯信号を受信してから所定の期間、該制御手段が、該高圧放電ランプの一方の電極から他方の電極に向かって電流が流れる期間を、該他方の電極から該一方の電極に向って電流が流れる期間よりも大きくすることによって、該高圧放電ランプの一方の電極から他方の電極に向かって流れる電流の実効値を、該他方の電極から該一方の電極に向って流れる電流の実効値よりも大きくすることを特徴とする高圧放電ランプ点灯装置。
【請求項3】
請求項1記載の高圧放電ランプ点灯装置であって、
該高圧放電ランプに供給される交流電流は所定の周期で反転される矩形波電流であり、
該受信手段が該消灯信号を受信してから所定の期間、該制御手段が、該高圧放電ランプの一方の電極から他方の電極に向かって流れる電流の振幅を、該他方の電極から該一方の電極に向って流れる電流の振幅よりも大きくすることによって、該高圧放電ランプの一方の電極から他方の電極に向かって流れる電流の実効値を、該他方の電極から該一方の電極に向って流れる電流の実効値よりも大きくすることを特徴とする高圧放電ランプ点灯装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3いずれか一項に記載の高圧放電ランプ点灯装置であって、さらに、前記高圧放電ランプが消灯後に冷却される場合に、該冷却による冷却効果の大きい方を前記一方の電極に指定したことを特徴とする高圧放電ランプ点灯装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4いずれか一項に記載の高圧放電ランプ点灯装置、高圧放電ランプ、リフレクター、該高圧放電ランプの冷却手段、及び少なくとも該高圧放電ランプ点灯装置を内蔵する筐体からなる光源装置。
【請求項6】
高圧放電ランプに交流電流を供給する高圧放電ランプ点灯装置における消灯方法であって、
該高圧放電ランプの点灯中に、該高圧放電ランプ点灯装置外部からの消灯信号を該高圧放電ランプ点灯装置において受信するステップ、
該消灯信号を受信してから所定の期間、該交流電流について、一方の電極から他方の電極に向かって流れる電流の実効値を、該他方の電極から該一方の電極に向って流れる電流の実効値よりも大きくするステップ、及び
該所定の期間の経過後、該高圧放電ランプ点灯装置から該高圧放電ランプへの電力の供給を停止するステップ
からなることを特徴とする消灯方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−115416(P2007−115416A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302460(P2005−302460)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】