説明

高圧緩衝ガスを有するメタルハライド放電ランプ

【課題】簡単な手段で高電力用に設計された安定器での点弧が可能である金属ハロゲン化物の封入物及びHg並びに希ガスを有する高圧放電ランプを提供する。
【解決手段】この高圧放電ランプは、金属ハロゲン化物の封入物を有し、ハロゲンとしてヨウ素又は臭素が使用される。それに加えて、希ガス及びHgが使用される。希ガスの冷間封入圧は4bar〜8barの範囲にある。この種のランプは、5msまでの持続時間中、電流零位相から保護されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文による高圧放電ランプに関する。この種のランプは、特に、セラミック放電管を有する高圧放電ランプであり、或いは一般照明用の石英ガラス管を有する高圧放電ランプでもある。
【背景技術】
【0002】
金属ハロゲン化物の封入物がセラミック放電管と一緒に使用される高圧放電ランプは公知である(例えば、特許文献1参照)。更に、この封入物は通常250mbarの冷間封入圧を有するHg及び希ガスを含む。
【0003】
立下り位相制御(Phasenabschnittssteuerung)は公知である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際特許出願公開第98/25294号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102005009940号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、より高い電力用に設計された安定器での点灯が簡単な手段にて可能である、金属ハロゲン化物の封入物及びHg並びに希ガスを有する高圧放電ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1の特徴事項によって解決される。
【0007】
特別に有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0008】
この種のランプにおける電力低減は、一般に電力抑制(Leistungsaustastung)により実現される。このための通常の手段は立下り位相制御である。このために時間的に可変の電力供給に、長いまたは短い電流零位相が挿入される。この電流零位相の終端で再びランプに電流が流れなければならない。しかし、この零位相の期間中にプラズマが冷却し、それによりプラズマの電気伝導率が低下し又はかなり失われ、従って、これは永続的な再点弧過程を意味する。これは電圧に関してそれに対応した再点弧ピークにつながる。この再点弧電圧が、(電源系統電圧から導入された)、供給された外部電圧よりも高い場合には、ランプが消える結果となる。
【0009】
電流の回復時における再点弧ピークの原因は、冷却にともなう電気伝導率の低下にある。この低下は非常に顕著である。なぜならば、金属ハロゲン化物の封入物が遊離ハロゲンを含むからである。遊離ハロゲンは、高い電気陰性度のにより、非常に電子吸着性が強く、とりわけこのことはヨウ素及び臭素に当てはまる。
【0010】
これに対して、例えば高圧水銀ランプ又は高圧ナトリウムランプのようなハロゲンなしにすませるランプ形式の場合には、この問題は発生しない。
【0011】
本発明は、ハロゲンを含む封入物の場合にも電力抑制を可能にするために、希ガスを高圧下で緩衝ガスとして使用することを提案する。この場合に圧力は4〜8barの範囲にすべきである。好ましくは冷間封入圧が5〜7barであるとよく、希ガスとしては、とりわけアルゴン、クリプトン、ネオン及びこれらからなる混合物が適している。それらは、キセノンに比べて低い再点弧ピークを可能にする。それらは、さらに明らかに低コストである。
【0012】
Hgの典型的な含有量は、25〜200μmol/cm3、従って5〜40mg/cm3のHgである。
【0013】
希ガスの働きは、ここでは、高圧下のキセノンに関して以前から知られているように瞬間点灯を提供することではなく、プラズマの絶対熱容量を大幅にに高め、しかも同時に熱伝導率を僅かな程度だけ高めることである。
【0014】
この措置により、電流零位相の期間中におけるプラズマの冷却が低減される。従って、電気伝導率の低下が少なくなる。電流零位相の終端での再点弧電圧が低減される。
【0015】
上記対策により、設備の改装として、例えば道路照明において使用されている従来の高圧水銀ランプの代わりに使用されるメタルハライドランプを提供することができる。これらの新式のランプは、高圧水銀ランプ又は高圧ナトリウムランプに比べて明らかに改良された演色を持ち、その上、より高い効率を持つ。
【0016】
好ましくは、放電管が、PCAやYAG、AlN、又はAlYO3のようなアルミニウムを含有するセラミックスから成るとよい。しかし、それは石英ガラスから成っていてもよい。両者は従来技術から公知である。封入物の金属の選択も特別に制限されていない。典型的な金属は希土類金属、Na及びタリウムである。
【0017】
新たに提案した構想は金属ハロゲン化物の封入物を有する放電管を備えた混合光ランプにも適している。この場合には、フィラメントがコイルの代わりに直列インピーダンスとして使用される。
【0018】
電力低減は、95%から55%に至るまでの範囲内において選ばれることが好ましい。電力抑制としては逆位相制御が使用されるが、しかし他の構想も排除されていない。供給される電圧は普通の交流電圧であり、典型的には正弦波及び矩形電圧である。更に、この構想は、発展途上国において発生し得るような電源系統の短時間停電に対する保護に適している。
【0019】
本発明による構想は、とりわけ15〜400Wの範囲内の小電力ランプに適している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は放電管を有する高圧放電ランプを示す概略図である。
【図2】図2は逆位相制御の原理を示す波形図である。
【図3】図3は逆位相制御の持続時間に依存した再点弧ピークを示す波形図である。
【図4】図4は異なるランプ形式(4a)及び(4b)について再点弧電圧を抑制時間(Austastzeit)の関数として示す特性曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下において、本発明を幾つかの実施例に基づいて更に詳細に説明する。
【0022】
図1は概略的にメタルハライドランプ1を示す。これは、セラミックス製の放電管2から成り、この放電管内に2つの電極が挿入されている(見えない)。この放電管は1つの中央部5と2つの端部4とを持つ。これらの端部には2つの封止部6が設けられ、これらの封止部はここでは毛細管として実施されている。放電管及び封止部はPCAのような材料から一体的に作られている。
【0023】
放電管2は外管7によって包囲されている。放電管2は、外管内において、短いリード11aと長いリード11bとを含む支持構造部により支持されている。
【0024】
放電管は、典型的にはHg(15mg/cm3)と5〜30mg/cm3の金属ヨウ化物とを含む封入物を有する。このヨウ化物は、部分的に又は完全に臭化物によって置換可能である。典型的な封入物は、金属としてNa,Dy,Tm,Ce及びタリウムを有する。希ガスとして、冷間で6barの圧力下にあるクリプトンが使用される。
【0025】
図2は、概略的に、50〜100%の立下り位相制御が適用される正弦波交流源(曲線d)を時間t(単位:ms)の関数として示す。曲線cは95%、曲線bは55%、そして曲線aは50%を代表している。電流I(単位:アンペア)の波高値が零電流位相区間の持続時間の増大にともなって増大し、曲線aの場合に最大であるので、光束における落ち込みを受ける必要がない。
【0026】
図3は、図2の関係について、高い希ガス圧のない従来のランプにおけるランプ電圧(単位:ボルト)の再点弧特性への零電流位相の持続時間の影響を例示する。零電流位相のない場合(曲線d)、又は零電流位相の少ない場合(曲線c)には、電圧経過が特異性を示さない。全位相期間の約0〜50%の範囲にある零電流位相が増すにつれて再点弧ピークUmaxが明白に増大する(曲線b及びa)。
【0027】
しかし、約5msまでの零電流位相の絶対時間は、希ガスの高い冷間封入圧によって良好に短絡される。長い零電流位相にもかかわらず再点弧ピークが形成されない(曲線f)。
【0028】
図4は、異なるランプ形式についての抑制時間(単位:ms)の関数としての再点弧電圧(単位:V)の上昇を示す。図4aにおいては、低い希ガス圧(250mbar)を有するメタルハライドランプMH(70W出力)の従来の封入物における特性が示されている(曲線MH)。この場合に、再点弧ピークが2ms足らずの後に、系統電源電圧において再点弧の閾値である330Vの臨界値に達する。
【0029】
更に、図4aは、ハロゲン含有封入物欠如によるために問題がない典型的な高圧ナトリウムランプ(曲線NAH)についての関係を示す。このランプでは、予想どおりに殆ど全く再点弧電圧の上昇が認められない。
【0030】
図4bにおける本発明による封入物(曲線MH35ワット、6barアルゴン)の場合には、2bar希ガス圧を有する封入物(曲線MH35ワット2barアルゴン)と違って、5ms後も、まだこの臨界値に到達しない。
【0031】
この具体的な実施例において、5msの時間枠は、下に向かって最大限55%までの抑制(Austastung)の際に発生し得る零電流位相の最大値である。従って、最大限の抑制にもかかわらず次の位相において確実な再点弧が保証される。
【符号の説明】
【0032】
1 メタルハライドランプ
2 放電管
4 端部
5 中央部
6 封止部
7 外管
11a リード
11b リード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電容積を包囲する放電管を備え、金属ハロゲン化物と、水銀と、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンの群から選ばれた希ガスとを含んだ封入物が放電容積内に収容されている系統電圧で点灯される高圧放電ランプにおいて、
前記封入物がヨウ素及び臭素なるハロゲンのうち少なくとも1つを含んでいて、前記希ガスの冷間封入圧が4〜8barの範囲に選ばれていることによって電圧供給中における零電流位相が短絡されることを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項2】
前記零電流位相が、意図的に、下に向かって電源系統電圧の全位相期間の55%まで達する電力抑制によって調整可能であることを特徴とする請求項1記載の高圧放電ランプ。
【請求項3】
前記電力抑制が、立下り逆位相制御によって得られることを特徴とする請求項2記載の高圧放電ランプ。
【請求項4】
前記希ガスが、アルゴン、クリプトン又はネオンであることを特徴とする請求項1記載の高圧放電ランプ。
【請求項5】
前記希ガスの冷間封入圧が、5〜7barの範囲にあることを特徴とする請求項1記載の高圧放電ランプ。
【請求項6】
Hgの含有量が、5〜40mg/cm3の範囲に選ばれていることを特徴とする請求項1記載の高圧放電ランプ。
【請求項7】
前記放電管が、セラミックスから作られていることを特徴とする請求項1記載の高圧放電ランプ。
【請求項8】
前記ランプが、道路照明用の後から取り付けられるランプであることを特徴とする請求項1記載の高圧放電ランプ。
【請求項9】
前記零電流位相が、5msまでの持続時間に及ぶことを特徴とする請求項1記載の高圧放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−526411(P2011−526411A)
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515279(P2011−515279)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056932
【国際公開番号】WO2010/000562
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(508096703)オスラム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (92)
【Fターム(参考)】