説明

高圧電気透析装置

【課題】周囲圧力を上回るかもしくは等しい圧力で電気透析を行う装置を提供する。
【解決手段】電気透析膜積層体と筺体とを含む装置で、電気透析膜積層体は、少なくとも1個の電気透析セルと、電気透析積層体の両端に電圧を印加する電極を含み、筺体は、電気透析積層体を受けるセルチャンバを含んでおり、このセルチャンバは電極溶液の一部を電気透析積層体外部のセルチャンバの領域に移送可能とするセルチャンバに連通する少なくとも1個の加圧ポートを含み、積層体圧力にて電気透析積層体を加圧する。周囲圧力を上回る圧力にて電気透析を遂行するシステムは、少なくとも2つの溶液ループと、電極溶液ループと、溶液に作動可能に接続された電気透析装置と、周囲圧力を上回る積層体圧力にて電気透析を遂行する電極溶液ループとを含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
混合ガス流からCOを除去する技術には、通常、捕捉と再生の2段階の工程が含まれる。先ず、ガスは混合ガス流内のCOガスと反応する水性「捕捉前溶液」と接触させ、COを「捕捉後溶液」内に捕捉する。次に、この高濃度CO水性捕捉後溶液から純COガス流を再生する。様々な捕捉前溶液が、存在する。CO濃度が386ppm(百万分率)の雰囲気等の低濃度COを有する混合ガス流では、水酸化カリウム(KOH)や水酸化ナトリウム(NaOH)等の水性の水酸化物捕捉前溶液や、炭酸カリウム(KCO)や炭酸ナトリウム(NaCO)等の水性の炭酸塩捕捉前溶液、あるいは重炭酸カリウム(KHCO)や重炭酸ナトリウム(NaHCO)等の水性の重炭酸塩捕捉前溶液が、同様にCO捕捉前溶液の候補となる。捕捉前溶液へのCOガスの捕捉が、元々の水酸化物/炭酸塩/重炭酸塩捕捉前溶液を水酸化物(KOHやNaOH)、炭酸塩(KCOやNaCO)および/または重炭酸カリウム(KHCO)あるいは重炭酸ナトリウム(NaHCO)捕捉後溶液の混合物からなる酸性がより強い捕捉後溶液へ転化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
COガスがイオンの形をとるCO(2−)および/またはHCOで一旦捕捉され、捕捉後溶液を形成すると、通常溶液から純COガスが再生される。この工程の全体的な効果は、比較的低モル分率のCOガスを有する分離前混合ガス流から分離前の流れよりも高いモル分率のCOガスのを有する分離後ガス流へのCOガスの分離濃縮である。捕捉再生後、続いて分離後ガスは地質学的に分離するか、あるいはコンクリートやプラスチックや液体炭化水素燃料等の有用な製品に取り込む。再生COの可能な多くの用途は、1気圧を上回る圧力へのCOの加圧を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0003】
バイポーラ膜電気透析法(BPMED;bipolar membrane electrodialysis)は、他の化学物質を添加せずに水性食塩溶液を酸とアルカリとに転化させるのに用いることができる。BPMED装置の構成要素は、膜全体への電界の印加時に溶液内のイオン種を分離するよう用いられるイオン交換膜である。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】高圧電気透析装置の一実施形態の分解図である。
【図2】高圧電気透析装置の一実施形態の分解図である。
【図3】補強部材の内面の正面図である。
【図4】補強部材の外面の正面図である。
【図5】第1の軸方向支持部材の外面の正面図である。
【図6】第1の軸方向支持部材の内面の正面図である。
【図7】第2の軸方向支持部材の内面の正面図である。
【図8】電極を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
BPMED膜積層体は、2隔室構成あるいは3隔室構成のいずれかを持たせることができる。2隔室構成では、隣接膜はバイポーラ膜(BPM;bipolar membrane)と陰イオン交換膜(AEM;anion exchange membrane)とを交互配置し、BPMとAEMとBPMとAEM等の形態の膜積層体を形成するか、あるいは隣接膜をBPMと陽イオン交換膜(CEM;cation exchange membrane)とを交互配置し、BPMとCEMとBPMとCEMの膜積層体等を形成することができる。3隔室セルでは、隣接膜はBPMからAEM、さらにCEMと一巡りさせ、BPMとAEMとCEMとBPMとAEMとCEM等の形態の膜積層体を形成することができる。バイポーラ膜を用いない電気透析もまた可能であり、一連の交互配置されたAEMとCEMにより形成される2隔室構成で構成し、AEMとCEMとAEMとCEMとAEM等の形態からなる膜積層体を形成する。
【0006】
一実施形態では、電気透析装置は高圧、すなわち周囲圧力を上回って動作させる。他の工程条件を考慮し、動作圧力は、通常は周囲圧力にて溶液から膜積層体内に放出される筈のガスが溶液内に溶解残留したままの状態になるように十分高く、膜積層体自体の内部でのガス気泡の放出を防止する。溶解ガスを含む溶液の圧力を膜積層体の下流で減圧し、かくして溶解ガスを溶液外に放出し、他の用途向けに回収することができる。溶液の減圧目標となる圧力は、膜積層体の動作圧力を下回る任意の圧力とすることができる。こうして、ガスは周囲圧力を上回る圧力にて放出させ、あるいは周囲圧力を下回る圧力にて放出させることもできる。
【0007】
一実施形態では、電気透析装置は周囲圧力を上回るかもしくは等しい圧力にて動作するよう設計され、周囲圧力は装置を囲繞する環境内に自然発生する圧力として定義される。海面上で、周囲圧力は通常はほぼ1気圧、すなわち101.325kPaとなる。例えば、この装置は最大で20気圧以下の圧力、あるいは20気圧を越える圧力で動作させることができる。ガスは、放出ガスが周囲圧力を上回る圧力となるよう放出させることができる。こうして、入力に応じて、様々な種のガスを生成することができる。一例として、水性炭酸塩あるいは重炭酸溶液を入力したときに、COガスを生成することができる。水性亜硫酸塩あるいは重硫酸塩溶液を入力し、システムの動作を介してより酸性とすると、SOガスを生成することができ、水性アンモニア溶液を入力し、システムの動作を介してよりアルカリ性とすると、NHガスを生成することができる。
【0008】
図1は、高圧電気透析装置の一実施形態の分解図を示す。この装置は、少なくとも1個の電気透析セル102を含む電気透析積層体101を含んでいる。
【0009】
一実施形態では、電気透析セル102は第1の角度へ回動させた第1のセルガスケット103と、第1のイオン交換膜104と、第2の角度へ回動させた第2のセルガスケット105と、第2のイオン交換膜106とを含む。第1と第2のイオン交換膜104,106は、使用する入力溶液と所望の出力溶液とに応じ、BPMかAEMかCEMのいずれかとすることができる。電気透析セル102は、必ずというわけではないが、2個の隔室セルとすることができる。例えば、電気透析セル102は代りに図8に示す3隔室セル等の3隔室セルとすることもできる。
【0010】
2隔室セル102では、第1の角度は点線118で示すアノード端116で装置に流入する第1の溶液を、セルガスケット103に隣接する膜の面に接触させる方位であり、この第1の角度はまた、点線119で示す如く、カソード端117にて第1の溶液を装置から流出させる。第2の角度は、第2の溶液が点線120で示すアノード端116で装置に流入し、セルガスケット105に隣接する膜の面に当接できるようにする方位としてあり、この第2の角度はまた、点線121で示す如く、カソード端117において第2の溶液を装置から流出させる。第1と第2の溶液の流れは、逆転させることができる。こうして、セルガスケット103,105は別個の溶液受容隔室を画成する。
【0011】
一実施形態では、その流れが点線118,119で表わされる第1の溶液はアルカリ溶液(pH>7)であり、これは動作中の電気透析ユニットを通過する際によりアルカリ性とされ、セルガスケット103のセルガスケット開口135が画成する隔室をアルカリ溶液受容隔室とする。その流れが点線120,121で表わされる第2の溶液は酸性溶液(pH<7)であり、これは動作中の電気透析ユニットを通過する際により酸性とされ、セルガスケット105のセルガスケット開口135が画成する隔室を酸性溶液受容隔室とする。溶液を流入させるポートに応じ、第1の溶液は酸性とすることができ、第2の溶液はアルカリ性とすることができる。
【0012】
2隔室セルの一実施形態では、第1と第2のセルガスケット103,105を第1と第2のイオン交換膜104,106と交互配置し、第1のセルガスケット−第1のイオン交換膜−第2のセルガスケット−第2のイオン交換膜の狭持構造体を形成する。
【0013】
別の実施形態では、電気透析セルを3隔室BPMEDセル(図8参照)とし、ここでは各セルが3枚の膜を収容し、その1枚をBPM、もう1枚をAEM、さらにもう1枚をCEMとする。3隔室セルは、第1のセルガスケットと第1のイオン交換膜と第2のセルガスケットと第2のイオン交換膜と第3のセルガスケットと第3のイオン交換膜とを含む。第1のセルガスケットは第1の角度に回動させ、アノード端116の流入ポートを介して装置内に流入した第1の溶液を第1のセルガスケットに隣接する膜の面に接触させ、この第1の溶液をカソード端117の流出ポートを介して装置から流出させる。第2のセルガスケットは第2の角度に回動させ、アノード端116の流入ポートを介して装置内に流入した第2の溶液を第2のセルガスケットに隣接する膜の面に接触させ、この第2の溶液をカソード端117の流出ポートを介して装置から流出させる。第3のセルガスケットは第3の角度に回動させ、アノード端116の流入ポートを介して装置内に流入した第3の溶液を第3のセルガスケットに隣接する膜の面に接触させ、この第3の溶液をカソード端117の流出ポートを介して装置から流出させる。各溶液の流れは、逆転させることができる。
【0014】
1個のセル、すなわち2隔室セルか3隔室セルか非BPMEDセルのいずれかの実施形態では、スペーサ(図示せず)を用い、エンドガスケットとセルガスケットのガスケット開口を実質充填する。スペーサは、例えばポリプロピレン製メッシュとすることができる。このスペーサは、イオン交換膜112,104,106,114が互いに接触しないようにするものである。それらはまた、隣接する膜面全体に溶液流を分散させることで、隣接膜面に対するイオンの大量移送を最適化する。
【0015】
一実施形態では、電気透析積層体101はまたエンドガスケット111,115とエンドイオン交換膜112,114とを含む。エンドイオン交換膜112は、第1の電気透析セル102の第1のセルガスケット103とエンドガスケット111との間に実質介挿される。一実施形態では、電気透析積層体101はまた追加のセルガスケット113を含んでおり、エンドイオン交換膜114が追加のセルガスケット113とエンドガスケット115との間に実質介挿されるようにしてある。エンドガスケット111,115は、装置に流入出する電極溶液を受容するよう画成されたガスケット開口134を含む。一実施形態では、電気透析積層体101はエンドガスケット111,115とエンドイオン交換膜112とを含むが、エンドイオン交換膜114と追加のセルガスケット113は含まない。
【0016】
少なくとも1個の電気透析セル102と、かつ一実施形態においてエンドイオン交換膜112,114とを含めることで、電気透析積層体101は装置を囲繞する周囲圧力もしくはそれを上回る積層体圧力にて溶液に対する電気透析処理を遂行する構成とされる。積層体圧力は装置の内部動作圧力であり、それは周囲圧力に等しいかまたはそれを上回る任意の圧力である。一実施形態では、積層体圧力は処理溶液の圧力、すなわち電極溶液と第1と第2と任意の第3の溶液とにより決まる。例えば、電極溶液と第1および第2の溶液とが装置内に流入する電気透析装置では、第1の溶液と第2の溶液と電極溶液はそれぞれ同一圧力に加圧され、積層体圧力は第1の溶液と第2の溶液と電極溶液が加圧目標とするどのような圧力ともされる。処理溶液の圧力を積層体内と等しくすることで、膜全体に圧力差は皆無となる。別の選択肢として、処理溶液を異なる圧力とすることもできる。積層体圧力は、周囲圧力と20気圧との間、あるいは20気圧以上の圧力とすることができる。
【0017】
例えば、一実施形態では電気透析積層体101はBPMとAEMとを用いて構成した1以上の2隔室電気透析セル102を含む。酸性溶液は、点線120で示す如く、酸入力ポート(図示せず)を介してアノード端116にて装置内に流入する。アルカリ溶液もまた、点線118で示す如く、アルカリ入力ポート(図示せず)を介してアノード端116にて装置内に流入する。1(または複数)の電気透析セル102の1(または複数)のBPMは印加電圧を受けて水を解離し、かくしてOHイオンがBPMを横断してアノード端116へ移送され、HイオンがBPMを横断してカソード端117へ移送される。アルカリ性溶液からのHCOやCO(2−)イオンは、アノード端116に向け1(または複数)のAEMを横断して酸性溶液内へ移送され、かくして十分に低い圧力にて酸性溶液からCOガスが放出される。
【0018】
一実施形態では、積層体圧力は装置内の酸性溶液からガスが放出されず、その代りに水性酸性溶液内に溶解したままでいるよう十分高く保たれる。酸性溶液が装置を流出した後、酸性溶液の圧力は酸性溶液からガスが放出される十分低い圧力へ降圧される。電気透析システムには、周囲圧力を上回るも積層体圧力を下回り、放出ガス自体が周囲圧力を上回る圧力となるようにするタンク圧力にて加圧されるタンクを含めることができる。タンク圧力は、周囲圧力を上回る任意の圧力とすることができるが、積層体圧力未満とする。
【0019】
電気透析装置はまた、装置アノード端116の第1の電極(図示せず)と装置カソード端117の第2の電極122とを含んでおり、電気透析積層体101の両端に電圧が印加できるようにしてある。装置はまた、第1の電極と積層体101と間に介挿した第1の電極格子123と、第2の電極122と積層体101との間に介挿した第2の電極格子(図示せず)とを含んでいる。
【0020】
装置はまた、2個の軸方向支持部材126,127と2個の補強部材124,125とを備える筺体を含んでいる。一実施形態では、第1と第2の軸方向支持部材126,127は作動可能に互いに接続されてセルチャンバを形成する構成としてある。セルチャンバは電気透析積層体101を受け止め、装置が加圧されたときに積層体101周りに「加圧バスケット」を提供する。第1の軸方向支持部材126は少なくとも1個の加圧ポート128を含んでおり、これがセルチャンバに連通し、第1の軸方向支持部材126の電極溶液ポート(図示せず)を介して電極チャンバ内に流入する電極溶液の一部が電気透析積層体101外部のセルチャンバの所定の領域内に移送可能となるようにしてある。
【0021】
一実施形態では、軸方向支持部材126,127は補強部材124,125内の丸みをつけたポート孔を挿通する浮出し加工ポートを有しており、溶液が電気透析装置に流入出できるようにしてある。浮出し加工ポートは補強部材124,125内の丸みをつけたポート孔を介して摺動させ、補強部材124,125が流路の一部を形成しないよう溶液を補強部材124,125に触れずにそこを通過させるようにできる。これにより、軸方向の支持部材126,127と補強部材124,125の形成に異なる材料を用いることができるようになる。
【0022】
一実施形態では、装置にはまたそれぞれを補強部材124,125の一方の外面に取着する2個の応力低減シリンダ130を含んでいる。
【0023】
図2を参照するに、一実施形態による第1の補強部材の内面の実質平面図が図示されている。一実施形態による第2の補強部材の内面は、溶液ポート孔の相対的な配置について以外は実質同一である。それ故、第2の補強部材の内面は別個に説明せず、差異を下記に特記することにする。
【0024】
一実施形態では、第1の補強部材は、この第1の補強部材(図4参照)の浮出し加工電極溶液ポートを第1の補強部材に貫通させる電極溶液ポート孔201,202を含んでいる。電極溶液ポート孔201,202は、第1の軸方向支持部材の電極溶液流入ポートと電極溶液流出ポートとに対応するものである。第1の補強部材はまた、第1の軸補強支持部材(図4参照)の浮出し加工した第1および第2の溶液ポートを第1の補強部材に貫通させる第1の溶液ポート孔203と第2の溶液ポート孔204とを含んでいる。溶液ポート孔203,204を挿通するポートを流れる溶液種(酸性かアルカリ性)は、セルガスケットの向き(図1参照)と電気透析積層体内の電極の相対的極性(図1参照)とに依存する。
【0025】
第1の補強部材はまた、第1の電極のステムが第1の補強部材を挿通できるようにする電極ステム孔205を含んでいる。
【0026】
第1の補強部材はまた、少なくとも1個の補強部材接続造作206を含んでいる。補強部材接続造作206は、例えば第1の補強部材のエッジ近傍に形成されて第1の補強部材を貫通し、接続造作、例えば合釘ピンあるいはボルトがその中を挿通できるようにする孔とすることができる。補強部材接続造作206により、第1と第2の補強部材が互いに隣接して実質整列配置されるよう第1の補強部材を第2の補強部材に結合することができる。第1と第2の補強部材をかく結合すると、軸方向に沿って圧縮力が作用し、さらに図5と図6を参照して説明する如く、第1と第2の軸方向支持部材を嵌合させることができる。
【0027】
補強部材は、電気透析装置に強度をもたらす。例えば、10気圧の積層体圧力を装置に印加すると、装置を軸方向に分離押動するよう機能するほぼ4.4メートルトンの力が存在する。20気圧の積層体圧力において、これはほぼ9メートルトン(最大20,000lbf)まで倍増する。一実施形態では、補強部材はこれらの圧力に耐えるよう、例えば4340番鋼等の大強度材料から形成する。
【0028】
図3は、一実施形態による第1の補強部材の外面の実質平面図を示す。第2の補強部材の外面の平面図は、溶液ポート孔の相対的な配置について以外は実質同一である。それ故、第2の補強部材の外面を別個に説明することはせず、差異を下記に特記することにする。さらに、図3の要素301〜306は、それらが第1の補強部材の内面ではなく外面から視認できる点を除き、図2の要素201〜206と同一である。それ故、差異を下記に特記する以外は、要素301〜306をさらに説明することはしない。
【0029】
1以上の3隔室BPMEDセルを用いる高圧電気透析装置の一実施形態では、第1と第2の補強部材は共に対応する軸方向支持部材の第3の溶液ポートに対応する所定位置に形成した追加の第3の溶液ポート孔(図示せず)を含んでいる。
【0030】
第1の補強部材はまた、少なくとも1個の補強部材接続造作306を含んでいる。一実施形態では、第1の補強部材はまた各ポート孔301〜304を囲繞する複数のフランジアダプタ装着孔307を含んでいる。一実施形態では、フランジアダプタ装着孔307は第1の補強部材の外面にのみ形成され、第1の補強部材に貫通はさせない。フランジアダプタ装着孔307は、フランジアダプタ自体(図示せず)上の装着孔に実質整列配置される個数と構成とをもって形成してある。フランジアダプタは軸方向支持部材(図4参照)のポートボス部を覆って装着してあり、これが軸方向支持部材と補強部材とを互いに結合したときに補強部材のポート孔内に突出する。フランジアダプタ装着孔307により、フランジアダプタ(図示せず)は突出ポートボス部を覆って装着され、第1の補強部材に取着される。
【0031】
一実施形態では、第1の補強部材には例えば溶接により第1の補強部材に取着することのできる応力低減シリンダ308を含む。応力低減シリンダ308は、電気透析装置が周囲圧力を上回る圧力にて動作するときに補強部材に働く応力を低減するよう配設したキャップ付きシリンダである。
【0032】
図4を参照するに、一実施形態による第1の軸方向支持部材の外面の実質平面図が示してある。第2の軸方向支持部材の外面の平面図は、溶液ポートの相対的な配置ならびに特性について以外は実質同一である。それ故、第2の補強部材の外面を別個に説明はせず、差異を下記に特記することにする。
【0033】
一実施形態では、第1の軸方向支持部材は電極溶液ポート401,402を含んでいる。電極溶液ポート401,402により、電極溶液は装置に流入出させられる。電極溶液は、例えば水性水酸化カリウムあるいは水酸化ナトリウムの溶液とすることができる。一実施形態では、電極溶液ポート401,402は浮出し加工してあり、すなわちそれらは第1の軸方向支持部材の外面から突出させてある。これにより、電極溶液ポート401,402を第1の方向部材(図2と図3参照)に貫通させることができる。
【0034】
第1の軸方向支持部材はまた、第1の溶液ポート403と第2の溶液ポート404とを含んでいる。一実施形態では、第1の溶液を酸性溶液とし、第2の溶液をアルカリ性溶液とし、かくして第1の軸方向支持部材の第1の溶液ポート403を酸性溶液が流れ、第2の溶液ポート404をアルカリ性溶液が流れる。別の実施形態では、第1の溶液をアルカリ性溶液とし、第2の溶液を酸性液とし、かくして第1の軸方向支持部材の第1の溶液ポート403をアルカリ性溶液が流れ、第2の溶液ポート404を酸性溶液が流れる。ポート503,504を流れる溶液種(酸性かアルカリ性)は、セルガスケットの向きと膜の配列と電気透析積層体内の電極の相対的な極性(図1参照)とに依存する。
【0035】
第1と第2の溶液ポート403,404と加えて第2の軸方向支持部材の第1と第2の溶液ポートもまた、浮出し加工、すなわち支持部材の外面から突出させることができる。これにより、第1と第2の溶液ポート403,404は補強部材を貫通できるようになる(図2と図3参照)。第1の軸方向支持部材の浮出し加工ポートが溶液流路を作成し、かくして溶液は第1の補強部材に触れることなく第1の補強部材(図3と図4参照)を流れる。これにより、第1の軸方向支持部材と第1の補強部材は異なる材料から形成することができる。
【0036】
1以上の3隔室BPMEDセルを用いる一実施形態の装置では、第1と第2の軸方向支持部材は共に対応する補強部材の第3の溶液ポート孔に対応する所定位置に形成された追加の第3の溶液ポート(図示せず)を含んでいる。第3の溶液は、例えば動作中の電気透析ユニットの通過時に希釈される塩溶液とすることができる。
【0037】
第1の軸方向支持部材はまた、第1の電極のステムが第1の軸方向支持部材を挿通できるようにする電極ステム孔405を含んでいる。
【0038】
一実施形態では、第1の軸方向支持部材はまたシール406を含んでいる。シール406は、第1の軸方向支持部材のポート401〜404に対するフランジアダプタ(図示せず)の接続を支援する。
【0039】
第1の軸方向支持部材はまた、電気透析装置を組み立てたときに第1の補強部材の内面(図2参照)に実質当接するようになる第1の補強部材当接領域407を含んでいる。
【0040】
図5は、一実施形態による第1の軸方向支持部材の内面の実質平面図を示す。第2の軸方向支持部材の内面を、図6について下記に説明することにする。図5の要素501〜505は、それらが第1の軸方向支持部材の外面ではなく内面から視認される要素である点を除き、図4の要素401〜405と同じである。
【0041】
第1の軸方向支持部材は、電極溶液ポート501,502を含んでいる。電極溶液ポート502は、電極溶液ポート501と実質同一の構成をなす。電極溶液ポート501,502により、電極溶液を装置に進入退出させることができる。
【0042】
一実施形態では、電極溶液流入口と流出ポート501,502は第1の軸方向支持部材の肉厚全体を真っすぐに貫通はしていない。むしろ、電極溶液ポート501,502は外側(図4参照)から第1の軸方向支持部材の肉厚の一部だけを実質真っすぐに貫通し、セル凹部506の手前で停止し、各ポートに「有底」孔を形成している。そこから、傾斜楕円形状ポートが各有底孔からセルチャンバに通じ、かくして電極溶液ポート501,502が第1の電極凹部508上に開口する。こうして、電極溶液は電極溶液ポートの一つを介して電極(図示せず)を横断して装置内に流入できるようになる。電極溶液が装置から流出すると、それは他の電極溶液ポートの傾斜部分を通り、続いて溶液ポートの直線部分とを通り、電極全体を流れ、装置を後にする。
【0043】
第1の軸方向支持部材はまた、第1と第2の溶液ポート503,504を含んでいる。第1の溶液ポート503は、酸性溶液を装置内に流入させる酸性溶液流入口か、アルカリ性溶液を装置内に流入させるアルカリ性溶液流入口のいずれかとすることができる。第2の溶液ポート504は、アルカリ性溶液を装置内に流入させるアルカリ性溶液流入口か、酸性溶液を装置内に流入させる酸性溶液流入口のいずれかとすることができる。両実施形態とも、溶液の流れを逆転し、第1と第2の溶液ポート503,504を溶液流出口とし、酸性溶液とアルカリ性溶液とを装置外部に流出させるようできる。
【0044】
1以上の3隔室BPMEDセルを用いる一実施形態では、第1の軸方向支持部材は追加の第3の溶液ポート(図示せず)を含んでいる。第3の溶液ポートは、対応する補強部材の第3の溶液ポート孔に対応する位置に形成してある。
【0045】
第1の軸方向支持部材はまた、第1の電極のステムが第1の軸方向支持部材を挿通できるようにする電極ステム孔505を含んでいる。
【0046】
一実施形態では、第1の軸方向支持部材はまた電気透析積層体を受ける構成のセル凹部506を含んでいる。セル凹部506は、セル凹部506が第1の軸方向支持部材よりも小さな大きさを有するように第1の軸方向支持部材内に形成してある。また、セル凹部506は、セル凹部506が電気透析積層体を上回る大きさを有するよう第1の軸方向支持部材内に形成してある。こうして、セル凹部506の周縁に空隙が形成され、かくして第1の軸方向支持部材と第2の軸方向支持部材を嵌合させてセルチャンバを形成したときに、電気透析積層体がセルチャンバの内側壁に接触しないようにされる。
【0047】
一実施形態では、第1の軸方向支持部材はまたセル凹部506の実質周縁に形成することのできる1以上の加圧ポート507を含んでいる。加圧ポート507により、電気透析積層体と内部セルチャンバ壁との間の空隙、すなわち電気透析積層体外部のセルチャンバの領域内へ電極溶液の一部を分流させることで、電気透析積層体内部とセルチャンバとの間の圧力を等化させることができる。こうして、「加圧バスケット」が電気透析積層体の周りに形成される。電極溶液の分流部分は、電極溶液体積全体のうちの無視可能な部分とすることができる。加圧ポート507は、例えばポート501,502のそれぞれから放出孔を機械加工することで電極溶液ポート501,502に直接接続されるよう形成することができる。
【0048】
一実施形態では、第1の軸方向支持部材はまた第1の電極(図示せず)を受ける構成の第1の電極凹部508を含んでいる。第1の電気凹部508はまた、第1の電気格子を受けるよう構成してある。第1の電極凹部508は第1の軸方向支持部材内に形成し、かくして第1の電極凹部508が実質的にセル凹部506内に位置するようにしてある。第1の電極凹部508は、セル凹部506よりも深い。電極は第1の電極凹部508内に係止し、かくして電極活性面ディスクの面と電気透析セルとの間に空間が形成されるようにしてある。一実施形態では、電極格子はまた第1の電極凹部508内に係止しており、電極活性面ディスクの表面頂部に実質配置する。
【0049】
一実施形態では、第1の電極凹部508は1以上の電極凹部整列配置造作509を含んでいる。第1の電極凹部整列配置造作509は、例えば第1の電極凹部508の周縁に形成する切り込みとすることができる。第1の電極凹部整列配置造作509により、第1の電極格子は第1の電極凹部508に整列配置させることができる。第1の電極格子凹部508内での電極格子の整列配置が、電極溶液ポート501,502との格子溶液ポートの整列配置を容易にする。
【0050】
一実施形態では、第1の軸方向支持部材はまた1以上の支持部材整列配置造作510を含む。支持部材整列配置造作510は、セル凹部506の実質周縁近傍に形成することができる。支持部材整列配置造作510は、第2の軸方向支持部材内の支持部材整列配置造作と加えて電気透析積層体の膜とガスケット内の整列配置造作にも対応する。支持部材整列配置造作510により、第1の軸方向支持部材と第2の軸方向支持部材と電気透析積層体の膜とガスケットとを整列配置することができる。整列配置造作、例えばピンが支持部材整列配置造作510内に配置され、支持部材と電気透析積層体の整列配置を容易にしている。
【0051】
第1の軸方向支持部材はまた、嵌合面511を含んでいる。一実施形態では、嵌合面511はシール512を受容する嵌合面内に形成した溝を有する。シール512により、嵌合面511を第2の軸方向支持部材の嵌合面に選択的に結合させ、セルチャンバを形成することができる。
【0052】
図6は、一実施形態による第2の軸方向支持部材の内面の実質平面図を示す。図6の要素601〜605は、それらが第1の軸方向支持部材の要素ではなく第2の軸方向支持部材の要素である点を除き、図5の要素501〜505と実質同一である。それらはまた、第2の軸方向支持部材の外面ではなく内面から視認される要素である点を除き、図4に示した要素401〜405と実質同一である。
【0053】
第2の軸方向支持部材は、電極溶液ポート601,602を含む。電極溶液ポート601は、電極溶液ポート602と実質同一構成をなす。電極溶液ポート601,602により、電極溶液を装置に進入退出させることができる。
【0054】
一実施形態では、電極溶液ポート601,602は第2の軸方向支持部材の全肉厚を真っすぐ貫通はしていない。むしろ、電極溶液ポート601,602は外側(図4参照)から第2の軸方向支持部材の肉厚の一部だけを実質真っすぐに貫通し、嵌合面609の手前で停止し、各ポートに「有底」孔を形成している。そこから、傾斜する楕円形状ポートが各有底孔からセルチャンバへ通じ、かくして電極溶液ポート601,602が第2の電極凹部606上に開口する。
【0055】
第2の軸方向支持部材はまた、第1と第2の溶液ポート603,604を含む。一実施形態では、第1の溶液ポート603を酸性溶液を装置から流出させる酸性溶液流出口とし、第2の溶液ポート604をアルカリ性溶液を装置から流出させるアルカリ性溶液流出口とする。一実施形態では、第1の溶液ポート603をアルカリ性溶液を装置から流出させるアルカリ性溶液流出口とし、第2の溶液ポート604を酸溶溶液を装置から流出させる酸性溶液流出口とする。両実施形態において、溶液の流れを逆転させ、第1と第2の溶液ポート603,604を溶液流入口とし、酸性溶液とアルカリ性溶液を装置に流入させるようにできる。
【0056】
1以上の3隔室BPMEDセルを用いる一実施形態の装置では、第2の軸方向支持部材は対応する補強部材の第3の溶液ポート孔に対応する所定位置に形成される追加の第3の溶液ポート(図示せず)を含む。
【0057】
第2の軸方向支持部材はまた、第2の電極のステムを第2の軸方向支持部材に挿通させる電極ステム孔605を含んでいる。
【0058】
一実施形態では、第2の軸方向支持部材は、図5について前記した如く、第1の電極凹部と同様の第2の電極(図示せず)を受容する構成の第2の電極凹部606を含んでいる。第2の電極凹部606は、嵌合面609よりも深い。第2の電極凹部606にはまた、図5について前記した如く、1以上の第2の電極凹部整列配置造作607を含めることができる。
【0059】
一実施形態では、第2の軸方向支持部材はまた図5について前記したものと同様の1以上の支持部材整列配置造作608を含んでいる。支持部材整列配置造作608は、嵌合面609の実質内周近傍に形成することができる。
【0060】
第2の軸方向支持部材はまた、嵌合面609を含んでいる。嵌合面609は、第1の軸方向支持部材内に形成した溝内に受容するシールを介して第1の軸方向支持部材の嵌合面に選択的に結合させることができる(図5参照)。
【0061】
図7は、電気透析セルの一実施形態の分解図を示す。電気透析セル705は、第1のセルガスケット701と第1のイオン交換膜702と第2のセルガスケット703と第2のイオン交換膜704とを含む。第1と第2のセルガスケット701,703は軸方向に第1と第2のイオン交換膜702,704と交互配置され、かくして第1のセルガスケット−第1のイオン交換膜−第2のセルガスケット−第2のイオン交換膜の狭持構造体が形成される。
【0062】
イオン交換膜702,704はそれぞれ、複数の膜窓孔706を含んでいる。膜窓孔706はセルガスケット701,703のセルガスケット開口707もしくはガスケット窓孔708のいずれかと整列配置され、第1の溶液ループあるいは第2の溶液ループのいずれかを形成する。各イオン交換膜702,704ごとに、4個の膜窓孔706は、点線714で表わされる第1の溶液流入口と、点線713で表わされる第2の溶液流入口と、点線716で表わされる第1の溶液流出口と、点線715で表わされる第2の溶液流出口用の導管として機能する。各線713〜716の流れは、所望とあらば逆転させることができる。一実施形態では、第1の溶液をアルカリ性溶液とし、第2の溶液を酸性溶液とする。一実施形態では、第1の溶液を酸性溶液とし、第2の溶液をアルカリ性溶液とする。
【0063】
セルガスケット開口707は凸形状とし、セルガスケット開口707が同一溶液について流入窓孔と流出窓孔に対応するイオン交換膜用の2箇所の膜窓孔706に同時に整列配置させるようにできる。例えば、第2のセルガスケット703のセルガスケット開口707は第1のイオン交換膜702と第2のイオン交換膜704の両方の2個の膜窓孔706に同時に整列配置する。こうして、第2のセルガスケット703のセルガスケット開口707は2個のイオン交換膜702,704間に溶液受容隔室を画成する。
【0064】
セルガスケット701,703上のセルガスケット707の向きが、セルガスケット701,703のセルガスケット開口707を通して酸性溶液かアルカリ性溶液のいずれを流すか決定する。一実施形態では、セルガスケット703上のセルガスケット開口707はセルガスケット701上のセルガスケット開口707に整列配置されていない2個の膜窓孔706から溶液を受け入れるよう配向してあり、結果的にセルガスケット701,703のセルガスケット開口707を通って異なる溶液が流れることになる。
【0065】
セルガスケット701,703はまた、複数のガスケット窓孔708を含んでいる。一実施形態では、セルがバイポーラ膜あるいは2隔室BPMEDを用いずにいずれも電気透析を遂行する構成とされている場合、セルガスケット701,703はそれぞれ2個のガスケット窓孔708を有する。各セルガスケット701,703ごとに、ガスケット窓孔708によりその特定のセルガスケットのセルガスケット開口707内を流れない溶液が装置内のその他のガスケットと膜とを流れ続けるようにできる。
【0066】
一実施形態では、凸形状セルガスケットの開口707は実質的にフットボール形状をなす。この修正されたガスケットの「フットボール」様流れ設計パターンが、流れの淀み領域を最小化する。淀み領域は、局所的流速がガスケット表面積全体に平均化された流速をずっと下回る領域として定義される。
【0067】
一実施形態では、イオン交換膜702,704は1以上の膜整列配置造作709を含んでおり、セルガスケット701,703は1以上のガスケット整列配置造作710を含んでいる。膜整列配置造作709とガスケット整列配置造作710は共に相互に対応し、第1と第2の軸方向支持体内の支持部材整列配置造作(図5と図6参照)と、加えて全てのエンドイオン交換膜やエンドガスケットあるいは積層体内に組み込まれた追加のセルガスケット内の整列配置造作にも対応する。膜整列配置造作709とガスケット整列配置造作710により、第1と第2のセルガスケット701,703と第1と第2のイオン交換膜702,704を整列配置して相互に接続し、加えて軸方向支持部材、また、存在する場合はエンドガスケット、エンドイオン交換膜および/または追加のセルガスケットにもそうすることができる。合釘ピン等の整列配置造作を膜とガスケット整列配置造作709,710と、加えて全てのエンドガスケットの整列配置造作とエンドイオン交換膜および/または追加のセルガスケットもまた介して挿入し、続いて軸方向支持部材の整列配置造作に挿入し、整列配置を容易にすることができる。
【0068】
図8は、電気透析セルの一実施形態の分解図を示す。電気透析セル807は、第1のセルガスケット801と第1のイオン交換膜802と第2のセルガスケット803と第2のイオン交換膜804と第3のセルガスケット805と第3のイオン交換膜806とを含んでいる。セルガスケット801,803,805はイオン交換膜802,804,806と軸方向に交互配置され、かくして第1のセルガスケット−第1のイオン交換膜−第2のセルガスケット−第2のイオン交換膜−第3のセルガスケット−第3のイオン交換膜の狭持構造体が形成される。
【0069】
各膜802,804,806は、3個の溶液ループのそれぞれに2個ずつ計6個の膜窓孔808を含む。膜窓孔808は、隣接セルガスケットのセルガスケット開口809あるいはガスケット窓孔810のいずれかに整列配置され、第1の溶液ループか第2の溶液ループか第3の溶液ループのいずれかを形成する。各イオン交換膜802,804,806ごとに、6個の膜窓孔808が、点線815で表わされる第1の溶液流入口と、点線816で表わされる第1の溶液流出口と、点線817で表わされる第2の溶液流入口と、点線818で表わされる第2の溶液流出口と、点線819で表わされる第3の溶液流入口と、点線820で表わされる第3の溶液流出口用の導管として機能する。各線815〜820の流れは、逆転させることができる。一実施形態では、第1の溶液を酸性溶液とし、第2の溶液をアルカリ性溶液とし、第3の溶液を食塩溶液とする。
【0070】
一実施形態では、セルガスケット開口809は図7に示した実施形態について前記した如く、実質凸形状をなす。セルガスケット801,803,805のセルガスケット開口809の向きが、酸性溶液かアルカリ性溶液かあるいは塩溶液が所与のセルガスケット開口を介して流れるかどうか決定する。
【0071】
一実施形態では、セルガスケット801,803,805はそれぞれ複数のガスケット窓孔810を有する。一実施形態では、電気透析積層体1207の各要素801〜806は、図7について前記した如く、少なくとも1個の整列配置造作811,812を有する。
【0072】
本願明細書に記載した実施形態による高圧電気透析装置は、例えばガス放出溶液の2隔室あるいは3隔室高圧BPMEDあるいはガス放出溶液のバイポーラ膜を用いない高圧電気透析を遂行するのに用いることができる。ガス放出溶液の高圧電気透析は、周囲圧力と膜積層体の絶対圧力との間の任意の圧力にてガスを生成することができる。膜積層体内で液体を加圧し、続いてガスをそこから放出させる溶液内へイオン移送を遂行することで、このガス加圧は通常可能であるよりもずっと効率的に達成される。COの場合、このことで分離や燃料反応や他の用途のいずれか必要とされる圧力でのCOガスの直接生成が可能になる。このことは、続く反応工程や他の用途に必要とされる昇圧された圧力で直接生成しうる他のガスに対する利点ともなりうる。
【0073】
20気圧以上の圧力を含む周囲圧力を上回る圧力で動作させることで、前記した実施形態による高圧電気透析装置は電気透析膜積層体内部でのガス気泡の放出を抑制し、それによって膜を損傷する高電流密度の局所的「ホットスポット」生成を排除することができる。前記した実施形態による高圧電気透析装置により、周囲圧力での同一溶液の電気透析に比べ改善された膜寿命をもってより高い名目電流密度でのガス放出溶液の電気透析が可能とされる。また、周囲圧力を上回る圧力にて動作させることで、前記実施形態による高圧電気透析装置は周囲圧力において同一溶液の電気透析に比べ低減された電圧ならびにエネルギー消費を達成することができる。このことは、名目動作電流密度の増大に合わせ益々妥当するものとなる。例えば、CO放出重炭酸塩溶液からなる2隔室BPMEDを電流密度139mA/cmにて行う実施形態では、生成されるCOのモル当り必要エネルギーは1.5気圧での動作に対し10気圧の圧力での動作時に30%低減される。前記実施形態による高圧電気透析装置は、ガス加圧用の標準的な装置を用いるよりも効率のよい効率的電気化学ガス加圧器としても捉えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気透析装置であって、
電気透析積層体と、
前記電気透析積層体をその間に実質介挿した一対の電極格子と、
その間に前記電気透析積層体と前記一対の電極格子とをそれぞれ実質介挿した一対の電極と、
積層体圧力にて前記電気透析積層体を加圧する構成とした筺体で、前記電気透析積層体を受容する構成のセルチャンバを含み、該セルチャンバが電極溶液の一部が前記電気透析積層体外部のセルチャンバの領域に移送可能となるよう前記セルチャンバと連通する少なくとも1個の加圧ポートを含む前記筺体とを備える、電気透析装置。
【請求項2】
前記電気透析積層体は、
それぞれ1個のエンドガスケット開口と少なくとも4個のエンドガスケット窓孔とを備える2個のエンドガスケットと、
前記2個のエンドガスケット間に実質介挿した少なくとも1個の電気透析セルで、
それぞれ1個のセルガスケット開口と少なくとも2個のセルガスケット窓孔とを備える少なくとも2個のセルガスケットと、
それぞれ少なくとも4個の膜窓孔を備え、前記少なくとも2個のセルガスケットと軸方向に交互配置した少なくとも2個のイオン交換膜とを含む
前記電気透析セルとを備える、請求項1に記載の電気透析装置。
【請求項3】
前記2個のエンドガスケットと少なくとも2個のセルガスケットと少なくとも2個のイオン交換膜は全て、それらを相互にかつ前記筺体に整列配置可能かつ接続可能とするよう少なくとも1個の整列配置造作を備える、請求項2に記載の電極透析装置。
【請求項4】
前記セルガスケット開口は凸形状をなす、請求項3に記載の電気透析積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−125762(P2012−125762A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−268394(P2011−268394)
【出願日】平成23年12月7日(2011.12.7)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】