説明

高屈折率透明酸化チタン/樹脂組成物とそのような組成物を製造するためのコーティング組成物の製造方法

【課題】平均粒子径100nm以下のルチル型酸化チタンを樹脂溶液に分散させたコーティング組成物を製造する方法と、同組成物を用いて、高屈折率透明酸化チタン/樹脂組成物を製造する方法を提供する。
【解決手段】60〜150℃の沸点を有する第1の有機溶剤に樹脂を溶解させた溶液を調製し、150℃以上で上記第1の有機溶剤よりも30℃以上高い沸点を有する第2の有機溶剤に平均粒子径100nm以下のルチル型酸化チタンを分散させた液を上記樹脂溶液に混合し、得られた混合物から上記第1の有機溶剤を揮散させコーティング組成物を得る。同コーティング組成物を基材上に塗布し、第2の有機溶剤を揮散させて、波長532nmと波長633nmの光に対する屈折率がいずれも1.680以上であると共に、波長500nmの光に対する全光線透過率が80%以上である高屈折率透明酸化チタン/樹脂組成物を、例えば、フィルムとして容易に得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズやディスプレイ用フィルムとして好適に用いられる高屈折率透明酸化チタン/樹脂組成物の製造方法と、そのような組成物を製造するためのコーティング組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム等の高屈折率を有する金属酸化物の分散液と透明な樹脂溶液とを混合して、金属酸化物の樹脂溶液への分散液を調製し、この分散液を適宜の基材上に塗布し、乾燥させることによって、高屈折率透明樹脂組成物からなるフィルムを得る方法が知られている(特許文献1参照)。しかし、この方法によれば、微粒子の凝集が起こりやすく、そのために光散乱を生じて、透明性が十分でいという問題がある。
【0003】
そこで、例えば、酸化チタン分散液と反応性官能基を有する重合性単量体を混合し、これを適宜の基材上に塗布した後、上記重合性単量体を重合させることによって、高屈折率透明樹脂組成物からなるフィルムを得る方法も知られている(特許文献2参照)。しかし、このような方法によれば、用いる樹脂が自ずから限られると共に、重合性単量体の重合の間に酸化チタンの粒度分布が大きくなる傾向があり、その結果、透明なフィルムが得難い問題がある。
【0004】
他方、無機微粒子の表面を有機物で処理して反応性官能基を導入し、これを反応性官能基を有する基材ポリマー中に分散させて高屈折率透明樹脂組成物を得る方法が提案されている(特許文献3参照)。この方法によれば、微粒子の凝集をある程度は抑えることができるが、それでも、尚、十分ではない。
【特許文献1】特開2001−183501号公報
【特許文献2】特開2004−123766号公報
【特許文献3】特開2002−047425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、無機微粒子を樹脂中に分散させてなる高屈折率高透明樹脂組成物の製造における上述した問題を解決するためになされたものであって、従来、知られている方法とは全く相違する観点に立って、平均粒子径100nm以下のルチル型酸化チタンを樹脂に分散させた高屈折率透明酸化チタン/樹脂組成物を製造する方法を提供することを目的とする。
【0006】
更に、本発明は、上記高屈折率透明酸化チタン/樹脂組成物を得るためのコーティング組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、60〜150℃の範囲の沸点を有する第1の有機溶剤に樹脂を溶解させた樹脂溶液を調製し、150℃以上の沸点を有すると共に上記第1の有機溶剤よりも30℃以上高い沸点を有する第2の有機溶剤に平均粒子径100nm以下のルチル型酸化チタンを分散させた酸化チタン分散液を上記樹脂溶液に混合し、得られた混合物から上記第1の有機溶剤を揮散させることを特徴とする、高屈折率透明酸化チタン/樹脂組成物を製造するためのコーティング組成物の製造方法が提供される。
【0008】
更に、本発明によれば、60〜150℃の範囲の沸点を有する第1の有機溶剤に樹脂を溶解させた樹脂溶液を調製し、150℃以上の沸点を有すると共に上記第1の有機溶剤よりも30℃以上高い沸点を有する第2の有機溶剤に平均粒子径100nm以下のルチル型酸化チタンを分散させた酸化チタン分散液を上記樹脂溶液に混合し、得られた混合物から上記第1の有機溶剤を揮散させて、高屈折率透明酸化チタン/樹脂組成物を製造するためのコーティング組成物を得、次いで、このコーティング組成物を基材上に塗布し、このコーティング組成物から上記第2の有機溶剤を揮散させることを特徴とする、波長532nmと波長633nmの光に対する屈折率がいずれも1.680以上であると共に、波長500nmの光に対する全光線透過率が80%以上である高屈折率透明酸化チタン/樹脂組成物の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、有機溶剤中に平均粒子径100nm以下のルチル型酸化チタンが樹脂に対して5〜50容量%の範囲にて安定に分散されたコーティング組成物を容易に得ることができ、このコーティング組成物を基材上に塗布し、上記有機溶剤を揮散させることによって、波長532nmと波長633nmの光に対する屈折率がいずれも1.680以上であると共に、波長500nmの光に対する全光線透過率が80%以上である高屈折率透明酸化チタン/樹脂組成物を、例えば、フィルムとして容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明によれば、60〜150℃の範囲の沸点を有する第1の有機溶剤に樹脂を溶解させた樹脂溶液を調製し、150℃以上の沸点を有すると共に上記第1の有機溶剤よりも30℃以上高い沸点を有する第2の有機溶剤に平均粒子径100nm以下のルチル型酸化チタンを分散させた酸化チタン分散液を上記樹脂溶液に混合し、得られた混合物から上記第1の有機溶剤を揮散させることによって、高屈折率透明酸化チタン/樹脂組成物を製造するためのコーティング組成物を得ることができる。
【0011】
上記樹脂として、特に、それ自体が高屈折率と高透明性を有するポリイミド樹脂が好ましく用いられる。一般に、ポリイミド樹脂は、ジカルボン酸(又は酸無水物)とジアミンとを適宜の溶剤中にて重縮合させてポリアミド酸とし、これを熱的に、又は化学的にイミド化させることによって得ることができる。本発明においては、ポリイミド樹脂の製造において、ジアミンとして、これまで、ポリイミド樹脂の製造に用いられているジアミンのいずれでも用いることができるが、しかし、なかでも、フルオレン骨格を有するもの、例えば、9,9−ビスアニリンフルオレンや、また、次式(I)
【0012】
【化1】

【0013】
で表される2,7−ジブロモ−9,9−ビスアニリンフルオレンが特に好ましく用いられる。
【0014】
本発明によれば、第1の有機溶剤として、60〜150℃の範囲の比較的低い沸点を有し、揮発性が高いと共に、用いる樹脂、特に、ポリイミド樹脂をよく溶解するものが用いられる。このような第1の有機溶剤の具体例としては、例えば、テトラヒドロフランやジオキサンのような5又は6員環の脂肪族環状エーテルや、メチルエチルケトンやジエチルケトンのような炭素原子数4又は5の脂肪族鎖状ケトンが好ましく用いられる。
【0015】
他方、第2の有機溶剤は、最終的に高屈折率透明酸化チタン/樹脂組成物における樹脂のための溶媒であり、且つ、酸化チタンのための分散媒である溶剤であって、150℃以上の沸点を有すると共に、上記第1の有機溶剤よりも30℃以上、好ましくは、60℃以上高い沸点を有する溶剤が用いられる。そのような第2の有機溶剤として、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の鎖状又は環状アミドが好ましく用いられる。一例として、第1の有機溶剤として、例えば、テトラヒドロフラン(沸点65℃)を用いるとき、第2の有機溶剤として、例えば、ジメチルアセトアミド(沸点166℃)が好ましく用いられる。
【0016】
第1の有機溶剤に樹脂を溶解させるに際して、その濃度は、特に限定されるものではないが、通常、10〜40重量%の範囲である。他方、第2の有機溶剤に酸化チタンを分散させて分散液を調製するに際して、その含有率は、通常、10〜40重量%の範囲が適当である。
【0017】
本発明においては、比較的少量の使用にて高屈折率透明酸化チタン/樹脂組成物を得ることができるように、用いる酸化チタンは、平均粒子径100nm以下のルチル型酸化チタンであり、好ましくは、平均粒子径1〜100nmの範囲にあるものであり、特に好ましくは、平均粒子径5〜50nmの範囲にあるものである。酸化チタンの平均粒子径が余りに小さいときは、高屈折率透明酸化チタン/樹脂組成物を得ることができず、他方、酸化チタンの平均粒子径が余りに大きいときは、得られる酸化チタン/樹脂組成物が透明性に劣ることとなる。
【0018】
本発明によれば、第1の有機溶剤にこのような酸化チタンを分散させるに際しては、分散剤を用いることが好ましい。分散剤としては、従来から、酸化チタンのような無機微粒子を有機溶剤に分散させるために用いられるものであれば、特に限定されるものではないが、次の一般式(II)
【0019】
【化2】

【0020】
(式中、Rはモノヒドロキシポリエーテルポリエステル残基を示し、nは1又は2である。)
で表されるリン酸モノエステル又はリン酸ジエステル又はそれらの混合物からなるものが特に好ましく用いられる。
【0021】
特に限定されるものではないが、一般式(III)
【0022】
【化3】

【0023】
(式中、Rは前記と同じである。)
で表されるモノヒドロキシポリエーテルポリエステルは、特許第2633075号公報に記載されているように、例えば、カプロラクトンのようなラクトンを出発物質とし、これを、例えば、デカノールのような1価脂肪族アルコールをエトキシ化して得られるエトキシ化脂肪族アルコールや、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のポリアルキレングリコールモノエーテルのようなモノヒドロキシポリエーテルにて触媒の存在下にラクトン重合させることによって得ることができる。上記触媒としては、例えば、p−トルエンスルホン酸やジブチルスズラウレート等が用いられる。
【0024】
また、同じく、特許第2633075号公報に記載されているように、モノヒドロキシポリエーテルポリエステルは、上述したモノヒドロキシポリエーテルの存在下にポリアルキレングリコールと二塩基酸を重縮合させることによっても得ることができる。例えば、カプロラクトンをデカノールのような1価脂肪族アルコールにてラクトン重合させて得られるカプロラクトンポリエステルの存在下にジプロピレングリコールをアジピン酸やデカンジカルボン酸と重縮合させることによっても得ることができる。
【0025】
このようなモノヒドロキシポリエーテルポリエステルを用いて、リン酸ジエステルやモノエステルを得る方法は、例えば、特許第2633075号公報のほか、ヨーロッパ特許公開公報第0193019号にも記載されている。例えば、オキシ塩化リンのようなリン酸エステル形成性化合物1モル部にこのようなモノヒドロキシポリエーテルポリエステル3モル部を反応させることによって、トリエステルを得ることができ、リン酸エステル形成性化合物1モル部にこのようなモノヒドロキシポリエーテルポリエステル2モル部又は1モル部を反応させることによって、ジエステル又はモノエステルを得ることができる。
【0026】
このようなリン酸モノエステルやジエステルは、数平均分子量が500〜10000の範囲にあることが好ましい。また、酸価は50〜200の範囲にあることが好ましい。
【0027】
前述したようなモノヒドロキシポリエーテルポリエステルとオキシ塩化リンやポリホスホン酸のようなリン酸エステル形成性化合物との反応によって得られるリン酸モノエステルやジエステルやこれらの混合物からなる分散剤として、ビックケミー・ジャパン(株)からディスパービック(DISPERBYK)110や111として市販品を入手することができ、本発明においては、そのような市販品を好適に用いることができる。
【0028】
本発明において、第1の有機溶剤に酸化チタンを分散させて分散液を調製するに際して、このような分散剤は、得られる分散液において、通常、1〜15重量%の範囲、好ましくは、5〜10重量%の範囲で用いられる。
【0029】
本発明によれば、上述したようにして、第1の有機溶剤に樹脂、好ましくは、ポリイミド樹脂を溶解させて樹脂溶液を調製し、別に、第2の有機溶剤に平均粒子径100nm以下のルチル型酸化チタンを分散させ、次いで、得られる樹脂組成物において、酸化チタンが樹脂に対して所要の体積濃度を有するように、樹脂溶液と酸化チタン分散液を混合して混合物を調製する。また、この際、得られる樹脂組成物が所要の体積濃度にて酸化チタンを含有するように、必要に応じて、第2の有機溶剤を更に追加的に加えてもよい。
【0030】
樹脂に対する酸化チタンの体積濃度は、通常、5〜50容量%の範囲であり、好ましくは、10〜30容量%の範囲である。樹脂に対する酸化チタンの体積濃度が余りに小さいときは、目的とする高屈折率の樹脂組成物を得ることができない。しかし、酸化チタンを上記よりも過多に用いても、有機溶剤に安定に分散させることが困難である。
【0031】
次いで、上記混合物から第1の有機溶剤を揮散させることによって、第2の有機溶剤に樹脂が溶解してなる樹脂溶液に酸化チタンが安定に分散されているコーティング組成物を得ることができる。ここに、好ましくは、減圧下、必要に応じて、加熱して、上記混合物から第1の有機溶剤を揮散させる。かくして、本発明によれば、樹脂に対して、酸化チタンが所要の範囲で安定に分散されているコーティング組成物を容易に得ることができる。
【0032】
本発明によれば、このコーティング組成物を適宜の基材上に塗布し、加熱して、第2の有機溶剤を揮散させることによって、基材上に高屈折率透明酸化チタン/樹脂組成物を、例えば、フィルムとして得ることができる。
【実施例】
【0033】
以下にポリイミド樹脂の製造例と共に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、得られたフィルムの屈折率と全光線透過率を表1に示す。但し、フィルムの屈折率は、波長532nmと633nmの光に対する屈折率をプリズムカプラーにて測定した値であり、全光線透過率は、波長500nmの光に対する透過率を紫外−可視吸収スペクトルにて測定した値である。
【0034】
製造例1
2,7−ジブロモ−9,9−ビスアニリンフルオレン(DBAF)7.59g(15ミリモル)をジメチルアセトアミド27gに溶解させ、これを攪拌機、還流冷却器及び窒素導入管を備えた容器に仕込んだ後、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BSAA)8.14g(15ミリモル)を加え、穏やかな攪拌下に反応させた。5時間攪拌した後、ピリジン2.37g(30ミリモル)と無水酢酸3.06g(30ミリモル)とジメチルアセトアミド10gを加え、更に3時間攪拌した。反応終了後、反応混合物をメタノール1L中に激しく攪拌しながら加えて、ポリイミドを析出させ、これを濾過、洗浄した後、60℃で乾燥して、ポリイミド樹脂を得た。
【0035】
製造例2
製造例1において、DBAFに代えて、9,9−ビスアニリンフルオレン5.23g(15ミリモル)を用いた以外は、同様にして、ポリイミド樹脂を得た。
【0036】
製造例3
製造例1において、BSAAに代えて、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物(ODPA)4.66g(15ミリモル)を用いた以外は、同様にして、ポリイミド樹脂を得た。
【0037】
製造例4
製造例1において、DBAFに代えて、m−フェニレンジアミン1.62g(15ミリモル)を用いた以外は、同様にして、ポリイミド樹脂を得た。
【0038】
製造例5
製造例1において、DBAFに代えて、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン4.38g(15ミリモル)を用いた以外は、同様にして、ポリイミド樹脂を得た。
【0039】
実施例1
予め、直径0.1mmのジルコニアビーズ300gを仕込んだ250mL容量のプラスチック瓶にルチル型酸化チタン26.4g(石原産業(株)製)と分散剤(ディスパービック111)6.4gとジメチルアセトアミド67.2gを入れ、ペイントシェーカーで6時間分散処理して、平均粒子径29nmの酸化チタン分散液を得た。別に、製造例1で得たポリイミド樹脂2gをテトラヒドロフラン(THF)8gに溶解させて、ポリイミド樹脂のTHF溶液を得た。
【0040】
このポリイミド樹脂のTHF溶液2.5gに前記酸化チタン分散液0.4gとジメチルアセトアミド1.2gを加えた。このようにして得た混合物から減圧下にTHFを留去して、ポリイミド樹脂に対して、5容量%の酸化チタンを含有するコーティング組成物(ポリイミド樹脂含有量25重量%)を得た。このコーティング組成物をガラス板上に塗布し、80℃で1時間、次いで、150℃で10分間加熱乾燥して、膜厚約15μmの透明なフィルムを得た。
【0041】
実施例2
実施例1で得たポリイミド樹脂のTHF溶液2.5gに実施例1で得た酸化チタン分散液0.83gとジメチルアセトアミド0.89gを加えた以外は、実施例1と同様にして、10容量%の酸化チタンを含有するコーティング組成物を得た。このコーティング組成物を用いて、実施例1と同様にして、膜厚約14μmの透明なフィルムを得た。
【0042】
実施例3
実施例1で得たポリイミド樹脂のTHF溶液2.5gに実施例1で得た酸化チタン分散液1.32gとジメチルアセトアミド0.53gを加えた以外は、実施例1と同様にして、15容量%の酸化チタンを含有するコーティング組成物を得た。このコーティング組成物を用いて、実施例1と同様にして、膜厚約15μmの透明なフィルムを得た。
【0043】
実施例4
実施例1で得たポリイミド樹脂のTHF溶液2.5gに実施例1で得た酸化チタン分散液1.87gとジメチルアセトアミド0.13gを加えた以外は、実施例1と同様にして、20容量%の酸化チタンを含有するコーティング組成物を得た。このコーティング組成物を用いて、実施例1と同様にして、膜厚約15μmの透明なフィルムを得た。
【0044】
実施例5
製造例2で得たポリイミド樹脂2gをTHF8gに溶解させて、ポリイミド樹脂のTHF溶液を得た。このポリイミド樹脂のTHF溶液2.5gに実施例1で得た酸化チタン分散液0.83gとジメチルアセトアミド0.89gを加えた以外は、実施例1と同様にして、10容量%の酸化チタンを含有するコーティング組成物を得た。このコーティング組成物を用いて、実施例1と同様にして、膜厚約10μmの透明なフィルムを得た。
【0045】
実施例6
製造例3で得たポリイミド樹脂2gをTHF8gに溶解させて、ポリイミド樹脂のTHF溶液を得た。このポリイミド樹脂のTHF溶液2.5gに実施例1で得た酸化チタン分散液0.83gとジメチルアセトアミド0.89gを加えた以外は、実施例1と同様にして、10容量%の酸化チタンを含有するコーティング組成物を得た。このコーティング組成物を用いて、実施例1と同様にして、膜厚約10μmの透明なフィルムを得た。
【0046】
比較例1
実施例6において、酸化チタン分散液として、ゾル−ゲル法で調製したアナターゼ型酸化チタンの分散液(触媒化成工業(株)製、平均粒子径15nm)を用いた以外は、同様にして、10容量%の酸化チタンを含有するコーティング組成物を得た。このコーティング組成物を用いて、実施例1と同様にして、膜厚約10μmのフィルムを得た。このフィルムは白濁していた。
【0047】
比較例2
実施例1で得た酸化チタン分散液0.83gにジメチルアセトアミド0.89gを加え、攪拌しながら、これに製造例1で得たポリイミド0.5gを少しずつ加えた。このようにして得た混合物を室温で一晩攪拌したが、ポリイミド樹脂は完全には溶解しなかった。そこで、混合物を60℃に昇温して、更に5時間攪拌することによって、ポリイミドを完全に溶解させることができたが、他方、酸化チタンの凝集が少しみられた。但し、このようにして得られたコーティング組成物の組成は、実施例2で調製したものと同じである。
【0048】
このコーティング組成物をガラス板上に塗布し、80℃で1時問、150℃で10分間乾燥して、膜厚約10μmのフィルムを得た。このフィルムは、目視において少し白濁していた。このフィルムの屈折率は、実施例2で得たフィルムに比べて、低い値を有するものであった。更に、酸化チタンの分散性がよくなく、透明性と屈折率の低下がみられた。
【0049】
比較例3
実施例1において得た酸化チタン分散液8.51gとジメチルアセトアミド8.16gの混合物にDBAF2.53g(5ミリモル)を溶解させた。これに、攪拌しながら、BSAA2.53g(5ミリモル)を加えて、室温で5時間重合させた。得られたポリアミド酸溶液をガラス板上に塗布し、80℃で1時問、150℃で10分間、250℃で1時間加熱して、ポリアミド酸を熱イミド化させて、酸化チタン/ポリイミド樹脂組成物からなる膜厚約15μmのフィルムを得た。このフィルムは目視において透明であったが、やや茶色がかった色に変色していた。このフィルムの組成は、実施例2で得た樹脂組成物と同様である。
【0050】
比較例4
比較例1で用いたアナターゼ型酸化チタン分散液を用いた以外は、比較例3と同様にして、ポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液をガラス板上に塗布し、80℃で1時間、150℃で10分間、250℃で1時間加熱して、ポリアミド酸を熱イミド化させて、膜厚約15μmのフィルムを得た。このフィルムは、目視において透明であったが、このフィルムの屈折率は、実施例2で得たフィルムに比べて低いものであった。
【0051】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
60〜150℃の範囲の沸点を有する第1の有機溶剤に樹脂を溶解させた樹脂溶液を調製し、150℃以上の沸点を有すると共に上記第1の有機溶剤よりも30℃以上高い沸点を有する第2の有機溶剤に平均粒子径100nm以下のルチル型酸化チタンを分散させた酸化チタン分散液を上記樹脂溶液に混合し、得られた混合物から上記第1の有機溶剤を揮散させることを特徴とする、高屈折率透明酸化チタン/樹脂組成物を製造するためのコーティング組成物の製造方法。
【請求項2】
樹脂がポリイミドである請求項1に記載のコーティング組成物の製造方法。
【請求項3】
60〜150℃の範囲の沸点を有する第1の有機溶剤に樹脂を溶解させた樹脂溶液を調製し、150℃以上の沸点を有すると共に上記第1の有機溶剤よりも30℃以上高い沸点を有する第2の有機溶剤に平均粒子径100nm以下のルチル型酸化チタンを分散させた酸化チタン分散液を上記樹脂溶液に混合し、得られた混合物から上記第1の有機溶剤を揮散させて、高屈折率透明酸化チタン/樹脂組成物を製造するためのコーティング組成物を得、次いで、このコーティング組成物を基材上に塗布し、このコーティング組成物から上記第2の有機溶剤を揮散させることを特徴とする、波長532nmと波長633nmの光に対する屈折率がいずれも1.680以上であると共に、波長500nmの光に対する全光線透過率が80%以上である高屈折率透明酸化チタン/樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
酸化チタンが樹脂に対して5〜50容量%の範囲にて含有されている請求項3に記載の酸化チタン/樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
樹脂がポリイミドである請求項3又は4に記載の酸化チタン/樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
酸化チタン/樹脂組成物がフィルムである請求項3から5のいずれかに記載の酸化チタン/樹脂組成物の製造方法。


【公開番号】特開2008−169318(P2008−169318A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−4438(P2007−4438)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】