説明

高強度熱延鋼板およびその製造方法

【課題】 高い強度と良好な加工性とを併せもつ新しい低合金・高強度の鋼板およびその製法を提供する。
【解決手段】 残留オーステナイト粒の大きさが1μm以下でその比率が5%以上20%以下で、マルテンサイト組織の比率が5%以下で、残部がフェライト組織とベイナイト組織からなることを特長とする。含有する各成分元素の質量%が(1)式を満足すれば、複雑な制御冷却を行わない圧延条件下でも、上記組織を容易に得ることが可能であり、高い強度と良好な可能性を併せもつ鋼板を得ることが出来る。また複雑な冷却制御を行わないので歩留りも良好である。
0.40≦0.3−0.06Nieq+0.13Creq≦0.85 ・・・(1)
ただし、 Nieq=Ni+30C+0.5Mn
Creq=Cr+Mo+1.5Si

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
請求項に係る発明は、高い引張り強度をもちながらも優れた加工性を有する高強度熱延鋼板と、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加工性の優れた高強度鋼板に対する最近の要請を、自動車の場合を例にして述べる。地球環境保全の観点から、自動車分野においてもCO2等の排ガス量を低減していくことが是非とも必要である。そのためには、自動車車体の一層の軽量化が不可欠になる。車体の軽量化を達成するためには、自動車に使用される鋼板の強度を高めて、板厚を薄くしていかなければならない。同時に、自動車においては、搭乗者の安全性を確保していかなければならない。このためにも、鋼板の強度を一層高めていくことが必要になる。
【0003】
鋼板の強度が高くなると加工性が悪くなるのと同時に、プレス成形後のスプリングバック等により寸法精度も悪くなる。通常のプレス成形等の冷間加工法では高強度鋼板の適用が困難である。
ホットプレス法は、熱間でプレス加工をするのでスプリングバックの発生量は極めて少なく、形状凍結性が良い。そして、プレスの際の焼入れ効果で、非常に高い強度をもった部品を高精度で提供することができる。しかしながら、プレス加工前には鋼板を加熱することが必要であり、また、プレス後にはスケールを落とす作業が必要である。従って、作業効率が非常に悪い方法である。さらに、金型が加熱した鋼板と接するため金型の寿命が短いことも欠点であり、これが製造コストを増加させることにもなる。
ホットプレス後の鋼板は伸び値が小さく、部材が変形を受けた際に僅かな変形でも破断することがあるので、衝撃吸収能力が小さいと評価されている。従って、ホットプレス部品を、自動車等の重要保安部品として使用することは非常に難しい。
【0004】
冷間プレス加工で成形品の寸法精度を向上させる方法の1つとして、成形品にビードを設けることによってスプリングバックの発生を抑制する方法がある。しかしこの加工方法では、鋼板に高い加工性が要求される。
【0005】
強度を高めるための方法としては、固溶強化、析出強化、結晶粒微細化、低温変態組織利用による強化などが基本的な方法である。固溶強化や析出強化といった多量の合金添加を必要とする強化機構の適用だけでは、極めて高い強度を必要とする鋼板の製造は不可能である。また結晶粒微細化による強化機構を適用するにしても、強度の上昇はある程度図れても限界がある。低温変態組織利用による強化は980MPa超の鋼鈑を製造するには極めて有効な方法であるが、強度上昇に見合う延性の向上は期待できない。
【0006】
一般的に、鋼板の強度を高めると、延性は小さくなり加工性は低くなる。
高強度鋼板の延性を高める従来技術として、フェライトとマルテンサイト組織からなる複合組織(Dual Phase)鋼板、フェライト、ベイナイトと残留オーステナイト組織からなるTRIP(Transformation Induced Plasticity)鋼板とよばれているものがある。
複合組織鋼板は、フェライト中に硬質なマルテンサイトを微細に分散させるが、この硬質なマルテンサイトにより、変形時に大きな加工硬化を引き起こし、高い延性を鋼板にもたらすのである。
TRIP鋼板については特許文献1、2にその例が示されている。残留オーステナイトを含有するこの種の鋼板は、その量と変形に対する安定度に応じて、加工誘起変態に起因する極めて良好な延性と成形性を有するのである。
【0007】
さらに、鋼板の強度を980MPa以上に高めると、遅れ破壊の問題が発生する。遅れ破壊とは、部材の加工、組み立ての際には割れや破壊が発生せず、使用中に突如として割れが発生する現象のことである。
特許文献3に示す高強度鋼板は、ベイナイトや焼戻しマルテンサイトなどの硬質な低温変態相に対し、フェライトのような軟質相を極力低減し、かつ残留オーステナイトを4%以下に制限することで、良好な耐遅れ破壊特性を確立したものである。
【特許文献1】特開昭60−43425号公報
【特許文献2】特開平9−104947号公報
【特許文献3】特許第3247908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
高い強度を有しながら冷間加工での伸び特性を向上させる従来技術として、前記複合組織鋼板とTRIP鋼板が挙げられる。
【0009】
複合組織鋼板では比較的低い合金添加量でも高い強度が得られ、同時に、加工硬化により良い均一伸び特性が得られる。
TRIP鋼板はさらに高い延性を示し、高深絞り性を有するものである。そのため複雑な形状で高い加工性を必要とし、高い強度が要求される部材への適用が指向されている。
特許文献1のTRIP鋼板は、圧延終了後の冷却工程で、450〜650℃の温度範囲で4〜20秒保持し、オーステナイト中にフェライトを生成させた後、350℃以下まで冷却し、巻取る工程で製造する。
特許文献2では圧延終了後の冷却過程で、オーステナイト中にフェライトの生成を促進するため、Ar3〜Ar1での緩冷却を行うか、もしくは圧延完了温度をAr3点近傍とし、その後350〜500℃の範囲まで冷却し、巻取ることで製造する。
これらTRIP鋼板はフェライト母相中にマルテンサイトもしくは残留オーステナイト、ベイナイトが分散した組織を有し、優れた強度と伸び特性を有する。
しかし、スポット溶接性が確保可能なC≦0.20%では、引張強度で800MPa程度しか得られず、加工性が渇望される、さらに高い強度範囲の鋼板の製造が困難である。
またA1点付近で冷却を一時停止した後、マルテンサイトや残留オーステナイト組織の安定化のため500℃以下まで冷却し、巻取る工程を必要とする。鋼板の冷却下において伝熱特性上、350〜500℃の温度範囲は極めて冷却が不均一になる領域であり、それにより鋼板平面上で温度ムラが生じ、材質特性のバラツキや、板形状の乱れが発生し、歩留りが極めて悪化する。さらに、A1点付近で冷却を一時停止するため、圧延終了後の冷却設備長を長くとる必要があり、設備コストが増大する。
圧延終了後、途中に緩冷却を行わず、連続的に500℃以下まで冷却する方法においても、圧延終了温度をAr3点近傍とすれば、微細なフェライトの生成促進が可能となるが、Ar3点近傍で圧延をした熱延鋼板の材質特性は、異方性が大きい問題がある。
【0010】
さらに、特許文献1に記載の熱延鋼板は、圧延加工度が低く、またA1点付近で冷却を一時停止するため、粗大なフェライト粒と残留オーステナイト粒が隣接した結晶構造を示す。
遅れ破壊の原因である鋼板中に溶質した水素は、結晶構造に起因し、残留オーステナイト中に優先的にトラップされる。特に加工の影響を受け、加工誘起変態したマルテンサイトとフェライトの界面が最も危険なトラップサイトとされる。
残留オーステナイト粒が粗大であればあるほど、残留オーステナイト粒の体積に比べ、加工誘起変態したマルテンサイトとフェライトの界面の面積比が減少し、トラップされる水素濃度が高濃度化し、遅れ破壊の危険性が高まる。さらにマルテンサイトと残留オーステナイトが隣接した状態(MA)で共存していれば、破壊の伝播が促進され、さらに危険性が高まるとされる。
特許文献3に記載した高強度鋼板は、この残留オーステナイト量を制約することにより、耐遅れ破壊性を向上させたものである。しかし、高い強度を有しつつ、優れた加工性を得るためには、残留オーステナイトの活用は有効であり、その制約を設けずとも、遅れ破壊に対して無害化することが望ましい。
【0011】
そこで本願の発明者らは、金属組織は旧オーステナイト粒を小さく整粒にし、複雑な冷却制御を行わず、フェライト、ベイナイト、1μm以下の残留オーステナイト(5%以上20%以下)を微細分散させた複合組織を得ることで、高い強度と良好な加工性及び耐遅れ破壊特性を併せもつ新しい低合金・高強度の鋼板およびその製法を開発したものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
鋭意研究を行った結果、発明者らは、適正な圧延条件及び成分組成の採用で、好ましい高強度鋼板が得られることを見出した。すなわち、適正な成分範囲を有するスラブを、熱間圧延の仕上げ圧延において、後段高ひずみ圧延を高温で終了し、数秒後冷却を開始し、適正な温度で巻取ることで、低合金組成で高い強度と優れた延性及び耐遅れ破壊特性を鋼板に同時に付与することが出来きるのである。その詳細を以下に示す。
【0013】
請求項に記載した高強度熱延鋼板は、残留オーステナイト組織の大きさが1μm以下であり、残留オーステナイト組織の比率(体積比率)が5%以上20%以下で、マルテンサイト組織の比率(体積比率)が5%以下で、残部がフェライト組織とベイナイト組織からなることを特徴とする高強度鋼板である。
こうした組織性状を得ることにより、高強度で加工性が良く、且つ耐遅れ破壊特性にも優れた鋼板を得ることが出来るのである。
ベイナイト組織で高い強度を得て、残留オーステナイトにより高い延性をもたせ、さらにフェライト組織が存在することで適度な加工性が得られる。マルテンサイト組織の比率を少なくすることと、残留オーステナイトの大きさを1μm以下で、効果的に微細に分散しているため、耐遅れ破壊性を得ることが出来るのである。
この時、これらの前組織である旧オーステナイト粒径が10μm以下で、その平均アスペクト比が2.0以下であれば、さらに望ましい特性を得ることが出来る。その場合、圧延方向及び圧延直角方向に引張った材質の異方性が低減出来、さらなる加工性の向上が図れるのである。
【0014】
請求項に記載した高強度熱延鋼板の成分範囲は、C:0.10〜0.25%、Si:0.5〜3.0%、Mn:0.2〜1.0%、Cr: 1.0〜2.5%、Ni:0.02〜0.50%を含み、残部は鉄および不可避的不純物の組成である。
とくに、下記の(1)式を満足し、さらに、Mo: 0.1〜1.0%、Ti: 0.02〜0.20%、Nb: 0.02〜0.10%の3種のうちいずれか1種、2種または3種を含有したものであるのが好ましい。
0.40≦0.3−0.06Nieq+0.13Creq≦0.85 ・・・(1)
ただし、 Nieq=Ni+30C+0.5Mn
Creq=Cr+Mo+1.5Si
こうした適切な種類と量の化学成分を含むこととすれば、上記の組織を有していて望ましい機械的性質を発揮する高強度鋼板とすることが容易である。
合金元素は熱間圧延後の冷却過程で、複雑な冷却制御を行わずとも本発明の望ましい鋼板組織を得ることを目的として、フェライト変態やベイナイト変態に大きく影響するクロムやシリコンを主要元素とした。これらの元素量を調節することで、フェライト相の形成量を制御しつつ、フェライトとベイナイトの比率を調整することで、目的とする強度に制御することが可能なのである。
(1)式で用いた“0.3−0.06Nieq+0.13Creq”は、種々成分組成の鋼板の組織観察で得られるフェライト体積比率を、オーステナイトの安定度指数とされるNieq(Ni当量)と、フェライトの安定度の指数とされるCreq(Cr当量)で整理した実験式である。
(1)式で0.85以上とするとオーステナイトの安定度が低いため、フェライト変態が進み、残留オーステナイトが得られ難くなり、強度と伸びのバランスは低下する。
(1)式が0.40未満となるとフェライト相が得られ難くなる。フェライトは炭素の固溶度が極めて低く、冷却過程でのフェライトの形成により、未変態オーステナイトへの炭素の濃化が生じる。このオーステナイト中の炭素濃度が十分にあると、未変態オーステナイトは、冷却完了後も残留オーステナイトとして存在することが出来る。しかしフェライトの形成量が不十分であると、未変態オーステナイトは十分な炭素量を含有することが出来ず、その後の冷却過程でベイナイト、もしくはマルテンサイトへ変態する。従って、(1)式が0.40未満となると、マルテンサイトが多いベイナイト主相となり、十分な残留オーステナイト量が得られず、強度と伸びのバランスは低下する。
(1)式が0.40〜0.85の間であれば、良好な強度と伸びのバランスを得るための十分な残留オーステナイト量を有し、フェライトとベイナイトを主とした本発明の組織構造を得ることが出来るのである。
なお、各成分の作用については後述する。
【0015】
上記高強度熱延鋼板として、上記した組織を有するとともに、板厚が1.0mmから3.0mm、引張り強さTS(MPa)が980MPa以上で、TSと伸び値EL(%)との積TS×ELが20000(MPa・%)以上であるものも好ましい。
そのような鋼板は、上述の組織を有していて高い強度と良い伸び特性とを兼ね備えるものだからである。
【0016】
請求項に係る高強度熱延鋼板の製造方法は、
1) C:0.10〜0.25%、Si:0.5〜3.0%、Mn:0.2〜1.0%、Cr: 1.0〜2.5%、Ni:0.02〜0.50%を含み、残部は鉄および不可避的不純物の組成で、前記の(1)式を満足し、さらに、Mo: 0.1〜1.0%、Ti: 0.02〜0.20%、Nb: 0.02〜0.10%のうち1種、2種または3種を含有する鋼材を
2) 加熱炉で1200℃以上に加熱し、粗圧延後に、複数スタンドを有する熱間圧延機によって、累積歪が0.4以上になるか、または使用する最終スタンドにおける圧下率が15%以上になり、圧延終了温度が940℃以上になるように熱間圧延し、
3) 圧延完了後1秒以上、5秒以内放冷後、10℃/sec以上の冷却速度で冷却を開始し、450℃以上、650℃以下で巻き取ることを特徴とする。
この製造方法によれば、冷却制御が単純であり、その温度管理が容易である。発明者らの製造試験によると、後述のように、こうした条件によって上述の高強度鋼板を得ることができた。
【発明の効果】
【0017】
請求項に記載の高強度鋼板は、フェライト及びベイナイトに、残留オーステナイトが多量に微細に分散した状態で混在するため、互いに相反する特性である強度と加工特性を兼備した鋼板であり、耐遅れ破壊特性にも優れた鋼板である。
請求項に記載した製造方法によれば、上記した高強度鋼板を円滑に製造することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、980MPa以上の引張り強度をもちながらも、優れた加工性と耐遅れ破壊特性が必要とされる加工部品に使用される薄鋼板とその製造方法について、実施の形態を示す。
鋼板の成分系として、C:0.10〜0.25%、Si:0.5〜3.0%、Mn:0.2〜1.0%、Cr: 1.0〜2.5%、Ni:0.02〜0.50%を含み、残部は鉄および不可避的不純物の組成で、(1)式を満足し、さらに、Mo: 0.1〜1.0%、Ti: 0.02〜0.20%、Nb: 0.02〜0.10%のうち1種、2種または3種を含有するものである。
0.40≦Vα=0.3−0.06Nieq+0.13Creq≦0.85 ・・・(1)
ただし、 Nieq=Ni+30C+0.5Mn
Creq=Cr+Mo+1.5Si
なお、ここで述べる薄鋼板とは、板厚が1.0から3.0mmの鋼板のことである。製造する鋼板は、主として自動車、家電製品、電子機器製品、等の高い加工性と強度が必要な部品に使用することが出来る。その他、鋼管用の素材として適用が可能である。
【0019】
まず、鋼板の成分について述べる。
炭素(C)としては、0.10〜0.25%の範囲の量が必要である。
炭素は残留オーステナイトを安定化させるために最も重要な元素で、0.10%未満では十分安定度が得られないので、0.10%以上の炭素量が必要である。一方、炭素量が0.25%以上になると、溶接部が硬化しすぎて溶接部から破断しやすくなる。これは、薄鋼板にとっては使用上の制約になるので、炭素量に上限を設けた。そして、0.10〜0.25%の炭素量であれば、本発明の主旨にそった複合組織が得られることを見出したものである。
【0020】
シリコン(Si)量は、0.5〜3.0%の範囲とする。シリコンも残留オーステナイトの安定化のために活用する。シリコンは固溶強化による強度の向上効果も有する。シリコン量は、0.5%以上であれば、本発明の複合組織と材質特性が得られる。シリコン量は多いほど、残留オーステナイト量を増やすことができると同時に、その安定性を促す。しかし、3.0%以上のシリコン量になると、強度延性バランスの特性が飽和するので、コスト低減の観点からシリコン量の上限を3.0%とする。
【0021】
クロム(Cr)量は、(1)式に影響する。1.0〜2.5%の範囲とする。
クロム量が1.0%未満になると、(1)式を満足することが出来ず、本製造方法で得られる残留オーステナイトの量が低下する。1.0%以上であれば適度な残留オーステナイト量が得られ、本発明の複合組織と材質特性が得られる。
クロム量が2.5%を超えると、鋼板強度が極めて高くなるため、コスト低減の観点からその上限を2.5%とした。
【0022】
マンガン(Mn)量も、(1)式に影響する。0.2〜1.0%の範囲とする。
マンガン量が0.2%未満になると、製鋼上での製造が困難になるので0.2%以上とする。
高い強度を得るためにはマンガンを多量に添加することが好まれるが、余り高くし過ぎるとマルテンサイトが生成しやすくなり、本発明の目的とする組織が得られない。そこでマンガン量の上限を1.0%とする。
【0023】
ニッケル(Ni)も(1)式に影響する。ニッケルは固溶強化により鋼の強度を向上させることが出来るが、余り高くし過ぎるとマルテンサイトが生成しやすくなる。さらに故意に添加を行えばコストの上昇を招くため、その下限を0.02%とし、上限を0.5%とした。
【0024】
モリブデン(Mo)は、Cr同様にベイナイト組織を形成し、鋼の強度を向上させることが出来るが、故意に添加を行えばコストの上昇を招くため、その上限を1.0%とした。
【0025】
チタン(Ti)は、熱延工程における結晶粒の微細化効果を有している。
フェライト粒や残留オーステナイト粒を微細に分散させるためにチタンは有効な元素である。チタン量は0.02%未満になると、再結晶や結晶粒成長を抑制する効果がなくなるので、添加する場合には0.02%以上とする。さらに0.20%よりも増えても作用効果はあまり増加しないのに加え、製鋼上での製造が困難になるので、その上限の量を0.20%とする。
【0026】
ニオブ(Nb)にも、チタンと同様に、再結晶や結晶粒成長を抑制する効果がある。
フェライト粒や残留オーステナイト粒を微細に分散させるためにニオブは有効な元素である。ニオブ量は0.02%未満になると、再結晶や結晶粒成長を抑制する効果がなくなるので、添加する場合には0.02%以上とする。また、ニオブ量が0.10%よりも増えてもその作用効果はあまり増加しないので、その上限を0.10%とした。
【0027】
上記の基準成分に調整したスラブ(被圧延鋼材)は、再加熱してから熱間圧延をおこなうか、もしくは鋳造後直ちに熱間圧延をおこなうものとする。
熱間圧延を施すにあたっては、複数スタンドを有する熱間圧延機によって、累積歪みが0.4以上になるか、または使用する最終スタンドにおける圧下率が15%以上になるように熱間圧延を行う。
そのような高圧下率の圧延を行うためには、ワークロールの直径が600mm以下の小径ロールミル、またはワークロールの平均直径が600mm以下である異径ロールミルを少なくとも後段の複数スタンドに使用することが好ましい。また、加工発熱による鋼板の温度上昇を利用して高温仕上げ圧延を行う。
圧延完了温度が低温になると旧オーステナイト結晶粒が扁平になり、平均アスペクト比が上昇する。旧オーステナイト粒のアスペクト比が上昇すると材質の異方性が生じるので、熱間圧延を完了する温度は940℃以上とする。
ここで「歪み」とは、各スタンド(各段)の入側での鋼板の厚さh0と出側での厚さh1の差を両者の平均厚さで除した
ε=(h0−h1)/{(h0+h1)/2}
をいい、「累積歪み」とは、後段3スタンドの各段での歪みを金属組織に対する影響の強さを考慮して加重積算したもので、最終段とその前段・前々段での歪みをそれぞれεn、εn-1、εn-2とするとき、
εC=εn+εn-1/2+εn-2/4
で表されるεCをいうものとする。
【0028】
940℃以上で熱間圧延を完了し、圧延完了後1秒以上、5秒以内放冷後、10℃/sec以上の冷却速度で冷却を開始し、450℃以上、650℃以下で巻取ることが必要である。
累積歪みが0.4以上になるか、または使用する最終スタンドにおける圧下率が15%以上になるように熱間圧延することによりオーステナイト粒の微細化を行い、高温仕上げと、その後の1秒以上、5秒以内の放冷(空冷)過程で結晶粒中の転位密度を減少させることが必要である。この圧延方式により、転位密度の少ない等軸で微細な旧オーステナイト粒が得られ、その後の冷却(水冷)過程で得られる組織を、方向性が少ない均一、微細な組織とすることが出来るのである。圧延終了後の放冷は、長すぎるとパーライトが生成し、本発明の適正な組織が得られないため5秒以内とした。
巻き取り温度は450〜650℃の温度範囲にすることにより、フェライトとベイナイトの混在する組織になり、オーステナイトも残留する。この残留オーステナイトは変態前の粒径が10μm以下であるなら、1μm以下と極めて微細に分散させることが出来る。
ここで巻き取り温度を450℃以上、650℃以下としたが、400℃以下の温度範囲ではマルテンサイト組織が多く生成し、遅れ破壊がおこりやすい。また650℃以上の温度ではフェライトとパーライト組織が生成し、高い強度が得られない。
巻き取り温度に関しては、前述した通り、温度範囲により冷却温度ムラに起因した、材質特性のバラツキと板形状の乱れが生じる。従って、材質特性の均一化と板形状の確保の観点から、巻取り温度の下限は450℃以上(さらには500℃以上)がより好ましい。
【0029】
図1は、この発明の実施形態の製造プロセスにおける熱間圧延での温度履歴の概念を示すもので、横軸は時間経過、縦軸は温度である。図の左方から、aの範囲は粗圧延工程、bは仕上圧延工程、cは巻取り工程をそれぞれ行っていることを示す。
【0030】
図2は、(1)式より導出する指数(横軸)と図1の製造プロセスにより製造した熱延鋼板材質特性(TS×EL)および残留オーステナイトの体積率Vγとの関係を示したものである。
図2において(1)式より導出する指数が0.40未満では、強度延性バランス(TS×EL)及び残留オーステナイト量(Vγ)も低位であり、0.40〜0.85の間では両特性共に向上し、0.85以上では強度延性バランスは再び低下する。
ただし、(1)式が0.40〜0.85の間でも、炭素量(C)が少ないと十分な残留オーステナイトが得られないため、炭素量が0.10未満のものは本発明の範囲から除外した。
【0031】
(1)式で用いた“Vα=0.3−0.06Nieq+0.13Creq”は、組織観察で得られるフェライトの体積比率をNieq(Ni当量)と、Creq(Cr当量)で整理することで得た実験式である。
(1)式のNieq(Ni当量)はオーステナイト安定化の指数として用いられ、一方Creq(Cr当量)はフェライト安定化の指数として用いられる。従って鋼材の成分を(1)式に導入して得られる指数が低位であればオーステナイトが安定し易い組成であり、高位であればフェライトが安定し易い組成であることが言える。
図3(a)・(b)・(c)にフェライト体積比率の異なる3種類の高強度鋼板の断面組織を示す。
図3の断面組織から観察されるフェライト体積比率は(a)<(b)<(c)であり、(1)式から得られるVα指数が(a)Vα=0.21、(b)Vα=0.6、(c)Vα=0.92であることと整合する。
【0032】
発明者らは商業生産を行う熱間圧延プロセスで、容易に製造が可能で、歩留りの悪化を伴うこともなく、且つ高強度で高延性な鋼材の開発に鋭意研究を行ってきた。そこで鋼材成分組成を上記(1)式に導入し、得られた指数が0.40〜0.85の間であれば強度延性バランスが向上することを見出したのである。つまり熱延過程での複雑な冷却制御を行わなくても、オーステナイトの安定度とフェライトの安定度を適切な範囲に調節することで、十分な残留オーステナイト量を有し、フェライトとベイナイトを主とした本発明の組織構造鋼板を有する高強度で良加工性な鋼板を得ることが可能であることを見出したのである。
本発明の製造プロセスでは複雑な冷却制御を必要としないため、製造が容易で、長い冷却設備長も不要であることに加え、冷却が不均一になり始める温度域以上で巻取るため板形状も良好で歩留りも良い。
【0033】
図4では、EBSP法を用いて、体心立方構造のフェライトもしくはベイナイト相と面心立方構造のオーステナイト相を色分けした本発明鋼の組織断面を示した。白色(薄い色)で示した残留オーステナイト組織は1.0μm以下に微細かつ均一に分散していることが観察出来る。
【0034】
図5は、SEM組織観察による本発明鋼の旧オーステナイト粒の観察結果である。旧オーステナイト粒の平均粒径は9.3μmで均一な整粒組織を呈していて、その長軸/短軸の平均アスペクト比は1.7である。
本発明は、以上の知見に基づき開発されたものである。
【実施例】
【0035】
以下に発明の第1の実施例を説明する。
表1に示す化学成分を有する溶鋼を、連続鋳造法もしくは鍛造法によりスラブ(圧延素材)とした。続いてこれらのスラブを再加熱し、熱間圧延を行い、熱延鋼板とした。表2に熱間圧延条件とその材料特性を示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表1に示す鋼種A、B、C、D、F、G、Hは比較例で、E、I、J、K、Lが本発明の範囲(化学成分についての条件をすべて満たす最適範囲)の例である。
【0038】
比較例の鋼種A、B、C、Dは主にマンガン(Mn)による強度向上を図り、ニッケル当量が高位で、クロム当量が低位であるため、(1)式の点で本発明の範囲から外れたものである。
鋼種Fは炭素量が本発明範囲から低く外れたもので、(1)式が本発明の範囲内であっても、5%以上の十分な残留オーステナイト量が得られないものである。
鋼種Gは、クロム量は高位であるものの、シリコン量が低位であるため、十分なクロム当量が得られず、且つニッケル量が高いため、(1)式の範囲を外れたものである。
鋼種Hはクロム当量に影響するクロム、シリコン量は十分に得られているのであるが、炭素量が低位であることに加え、クロム当量が高位であることで、(1)式の上限の範囲を超えた比較例である。
鋼種E、I、J、K、Lは上記の比較例のような問題はなく、(1)式を満足した本発明の事例である。
【0039】
【表2】

【0040】
表2のNo.1〜4、8〜10は本発明の成分範囲を外れた比較例の鋼種を用いて、熱間圧延をおこなったものである。
No.1〜4の鋼種A、B、C、Dは(1)式の下限を外れ、オーステナイトが安定化しやすい成分範囲になる。これらの鋼種を熱間圧延後550℃付近で巻取った鋼板の断面組織を観察すると、主相は上部ベイナイトとなり、観測される残留オーステナイト量も少ない。主相が上部ベイナイトであるのに加え、残留オーステナイト量も少ないので引張伸び(EL)特性が低く、強度・延性バランスも低位である。
No.8は(1)式は本発明範囲内で、炭素量が少ない鋼種Fを用いて製造したもの。得られる残留オーステナイト量が十分でなく、強度・延性バランスはそれほど高い数値が得られない。
No.9は鋼種Gを用いて製造したもので、上記同様(1)式の下限を外れ、オーステナイトが安定化しやすい。ただし、上記鋼種A〜Dと異なり、鋼種Gはクロム、ニッケル量ともに高位で、焼入れ性が高いため、得られる組織性状はマルテンサイトが多量に存在する。残留オーステナイト量はNo.1〜4と同様に低く、そのため強度・延性バランスも悪い。
No.10は(1)式の上限を外れた鋼種Hを用いたものである。鋼種Hはフェライトの安定性が高く、得られる組織はフェライト相が主を占めるが、残留オーステナイトを安定化させる元素の量が少ないため、その量も低位である。結果的に強度・延性バランスも低い。
【0041】
No.5〜7は(1)式を満足する鋼種Eを用いて圧延を行った事例である。
No.5は本発明の適正な(上述の条件をすべて満たす最適の)条件で圧延を行ったもので、良好な強度・延性バランスが得られる。一方、No.6は仕上温度をAr3点近傍として熱間圧延を行ったものであるが、旧オーステナイトのアスペクト比が高く、その結果、圧延長手(L)方向と圧延直角(C)方向の引張伸び特性に格差が認められる。Ar3点近傍で圧延を終了すると、圧延長手方向に伸展した粒が形成され、これにより引張特性に異方性が発生するのである。
No.7は熱延巻取り温度を450℃以下としたもので、若干板形状が悪化した。450℃以下では均一な冷却が難しく、温度のバラツキにより生じたものと思われる。
【0042】
No.12〜15は(1)式を満足する鋼種Jを用いて圧延を行った事例である。
No.12、13は適正な熱間圧延条件のもとで製造を行ったもので、良好な特性が得られたものである。一方No.14はNo.13とほぼ同様の圧延条件であるが、仕上圧延での圧下量がやや少ない条件で製造を行ったものである。No.14の圧延条件で得られた組織は旧オーステナイト粒径が粗く、残留オーステナイト粒径も3μm程度と粗い。両条件ともほぼ同様の引張特性が得られているが、No.14では遅れ破壊が発生する。これは仕上圧延での圧下不足に起因し、残留オーステナイト組織の微細分散化が図れなかったことで、遅れ破壊の原因とされる拡散性水素の偏析量が増したためと思われる。
No.15は熱間圧延後の巻取り温度を450℃以下としたもので、5%以上のマルテンサイト相が認められ、残留オーステナイトとマルテンサイトが混在した組織性状を示す。当該鋼板では遅れ破壊が発生しており、強度が高すぎることも要因とは考えられるが、このような組織性状を呈したことも原因の1つと考えられる。またNo.7と同様に板形状の乱れが生じた事例でもある。
【0043】
No.17〜19は(1)式を満足する鋼種Lを用いて圧延を行った事例である。
No.17は適正条件で熱間圧延をして良好な特性が得られたもので、一方No.18はNo.6と同様にAr3近傍で圧延を完了したものである。やはり、旧オーステナイト粒のアスペクト比が高く、圧延長手(L)方向と圧延垂直(C)方向の引張伸び特性に格差が認められる。
No.19は熱間圧延後の巻取り温度を400℃以下としたもので、マルテンサイトが主相となり、残留オーステナイト量が少なくなるとともに、その共存組織に起因すると思われる遅れ破壊が発生する。またNo.7、15と同様に板形状の乱れが生じた事例である。
【0044】
その他、No.11、16は(1)式を満足する鋼種I、Kをそれぞれ用いたもので、本発明の範囲の条件で圧延を行い、引張、板形状等良好な特性が認められた事例である。
【0045】
フェライト粒の体積率は、鋼板の圧延方向断面を研磨後、ナイタル腐食後、光学顕微鏡により観察し、市販の画像解析装置も用いて測定した。
マルテンサイトの体積率(%)は、鋼板の圧延方向断面を研磨後、4%ピクリン酸アルコールと2%ピロ硫酸ナトリウムを1対1に混合した液でエッチングし、板厚方向1/4の位置を光学顕微鏡により観察し、画像解析処理により白色にエッチングされたマルテンサイトを測定して求めた。
残留オーステナイトの測定はCuのKα線を用いてX線回折法により求めた。板厚1/2t部位で表面電解研磨仕上げ後、オーステナイト相の(200)(220)(311)面とフェライト相の(200)(211)面の積分強度を測定し、それぞれの組合わせから算出される残留オーステナイト体積率の平均値を用いた。
残留オーステナイトの粒径は、板厚方向1/4の位置をEBSPにて観察し、画像解析処理により測定した。
旧オーステナイト粒は、板厚方向1/4の位置をSEM観察し、ピクリン酸腐食後、目視判別により旧オーステナイト粒を識別し、粒径及びアスペクト比を測定した。
引張り特性(引張り強さTS、伸び値EL)はJIS5号試験片形状にて引張り試験し測定した。
遅れ破壊性は、800MPa相当の歪を負荷したサンプルを0.5mol/L の硫酸中に浸漬後、4.0mA/cm2定電流密度の陰極チャージを行い、2時間以内で割れが生じたものを耐遅れ破壊性が「×悪い」、生じなかったものを「○良い」と評価した。
【0046】
つぎに発明の第2の実施例を示す。
この実施例では、先に表1・表2に示した化学成分および熱間圧延条件をそれぞれ表3・表4に示すものに変更し、他の製造条件は同一にして熱延鋼板を製造した。表4には、得られた鋼板について、上記第1の実施例におけるのと同じ方法で測定した組織観察結果と材料特性をも示している。
【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
表3に示す鋼種M、Nの化学成分は、表1に示す各鋼種よりもSi量を増加させたものであるが、ともに、発明が特定する成分範囲を全て満足する。
表4に示す鋼板No.20、21は、上記の鋼種M、Nを用い、かつ、発明の範囲で圧延を行ったものであり、いずれの特性に関しても良好な結果を確認している。
(1)式を満足する範囲であればSi量を3.0%程度まで増加させても、Crなどとのバランスを配慮すれば所期の特性が充分に得られることがわかる。
図6は、こうして得た圧延材の組織写真を示したもので、図3の(b)と同様な複相組織であることが確認される。
【0050】
以上のように低合金組成において高強度で高延性な特性を示す実施例の高強度鋼板は、自動車構造用部材等として使用するのに好適である。
例えば自動車のセンターピラーのように、ドアの支持とともに衝突時の変形防止等に必要な引張り強度が求められる他、プレス成形等のため曲げ、絞り加工性、関連機器の取付け穴を形成するための穴拡げ加工性、さらには他の車体部品と接合するための溶接性などに高いレベルが要求される部材として、極めて好ましい鋼板といえる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】この発明の実施形態の製造プロセスにおける熱間圧延及び焼鈍での温度履歴の概念を示す線図。
【図2】(1)式指数と強度・延性バランス及び残留オーステナイト量の関係。
【図3】(1)式の下限外れ・範囲内・上限外れ該当材の代表的な断面組織写真。
【図4】成分及び圧延条件が本発明の範囲において製造した鋼板のEBSP法による断面組織写真。写真白色(薄い色)の部分が残留オーステナイト。
【図5】本発明の製造方法に基づき製造した鋼板断面のSEM観察及び旧オーステナイト粒の同定結果
【図6】本発明に基づき製造した鋼板断面の代表的な断面組織写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
C:0.10〜0.25%、Si:0.5〜3.0%、Mn:0.2〜1.0%、Cr: 1.0〜2.5%、Ni:0.02〜0.50%を含み、残部は鉄および不可避的不純物の組成になり、残留オーステナイト粒の大きさが1μm以下であり、残留オーステナイト組織の比率が5%以上20%以下で、マルテンサイト組織の比率が5%以下で、残部がフェライト組織とベイナイト組織からなることを特徴とする高強度熱延鋼板。
【請求項2】
成分範囲として(1)式を満足する請求項1に記載した高強度熱延鋼板。
0.40≦0.3−0.06Nieq+0.13Creq≦0.85 ・・・(1)
ただし、 Nieq=Ni+30C+0.5Mn
Creq=Cr+Mo+1.5Si
【請求項3】
Mo: 0.1〜1.0%、Ti: 0.02〜0.20%、Nb: 0.02〜0.10%のうち1種、2種または3種をさらに含有した請求項1または2に記載した高強度熱延鋼板。
【請求項4】
旧オーステナイト粒径が10μm以下で、その平均アスペクト比が2.0以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載した高強度熱延鋼板。
【請求項5】
板厚が1.0mmから3.0mmで、引張強度が980MPa以上で、引張強度と伸びとの積が20000(MPa・%)以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載した高強度熱延鋼板。
【請求項6】
C:0.10〜0.25%、Si:0.5〜3.0%、Mn:0.2〜1.0%、Cr: 1.0〜2.5%、Ni:0.02〜0.50%を含み、残部は鉄および不可避的不純物の組成で、(1)式を満足し、さらに、Mo: 0.1〜1.0%、Ti: 0.02〜0.20%、Nb: 0.02〜0.10%のうち1種、2種または3種を含有する成分範囲の鋼材を、加熱炉で1200℃以上に加熱し、粗圧延後に、複数スタンドを有する熱間圧延機によって、累積歪が0.4以上になるか、または使用する最終スタンドにおける圧下率が15%以上になり、圧延終了温度が940℃以上になるように熱間圧延し、圧延完了後1秒以上、5秒以内放冷後、10℃/sec以上の冷却速度で冷却を開始し、450℃以上、650℃以下で巻き取ることを特徴とする高強度熱延鋼板の製造方法。
0.40≦0.3−0.06Nieq+0.13Creq≦0.85 ・・・(1)
ただし、 Nieq=Ni+30C+0.5Mn
Creq=Cr+Mo+1.5Si

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−285748(P2008−285748A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100847(P2008−100847)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000150280)株式会社中山製鋼所 (26)
【Fターム(参考)】