説明

高強度紙の調製方法

本発明は、ゲル状のポリシリケート及び鉱物を含む水性組成物を、少なくとも5000rpmで少なくとも30秒間せん断に付すことを含む、ポリシリケートでコーティングした鉱物粒子を含む水性組成物の調製方法を提供する。本発明はまた、この方法によって得られるポリシリケートでコーティングした鉱物粒子及びこれらの粒子が充填された紙を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙の充填材として好適なポリシリケートでコーティングした鉱物粒子、これらの粒子を含む水性組成物、この水性組成物の調製方法、これらの粒子を充填した紙及び充填紙の調製方法に関する。
【0002】
一般に充填材(通常、鉱物性物質である)は、繊維の量を削減し、それによりコストを削減するために、紙に含有される。しかし、通常、充填材の量が増すにつれて、紙の強度は減少する。
【0003】
このため、高い充填材含有量と同時に好ましい紙の強度を有する紙が現在求められている。
【0004】
米国特許第6、623、555号は、例えば、製紙用充填材として又はコーティング顔料として使用する、沈降炭酸カルシウムとシリコン化合物との複合顔料の製造方法を記載している。その方法は、可溶性シリケート化合物を炭酸カルシウムの沈殿物を含有する水性媒体に導入する工程と、反応混合物の炭酸化により不溶性シリコン化合物を沈降炭酸カルシウム上に沈殿させる工程とを含んでいる。シリコン化合物が沈降炭酸カルシウム上に析出する間の反応混合物の温度は、少なくとも50℃である。形成された複合顔料を含有する得られた水性組成物は、低粘度である。米国特許第6、623、555号の複合顔料の不都合な点は、それが充填材として使用された場合、低強度の充填紙(filled paper)を生じることである。
【0005】
W000/26305は、紙の充填材として適切な、部分的にシリカコーティングした炭酸カルシウム粒子を含有する水性組成物の調製方法を記載している。この方法は、炭酸カルシウムを、炭酸カルシウムの重量に基づき約3.5重量%の可溶性シリケートと混合する工程と、シリケートをpHの調整をすることなく徐々に室温で反応させることにより、不溶性シリカコーティングを形成する工程とを含んでいる。この方法の不都合な点は、反応時間が、例えば50時間と非常に長いため、工業的見地からは技術的に実行不可能な方法となる点である。さらに、シリカコーティングした充填材中のシリカの量が非常に少量であり、シリカコーティングした充填材は、標準の炭酸カルシウムを充填した紙と同程度の強度の紙を生ずる。
【0006】
WO95/03251は、紙用充填材として有用な、炭酸カルシウムとシリカとの混合顔料を調製する方法を記載している。この方法は、石灰乳と水性ケイ酸ナトリウム溶液を混合する工程、混合物の温度を55〜170℃に上昇させる工程、その後混合物のpHが7以下になるまで二酸化炭素を混合物に供給し、それにより、炭酸カルシウム及びシリカを含む混合顔料を沈殿させる工程を含んでいる。シリカ/CaOの比は、3.6/1である。したがって、得られた混合顔料中のシリカ/CaCOの比は、2/1(又は66/33)であり、非常に高い。
【0007】
EP356406A1は、耐酸性コーティングを有する炭酸カルシウム粒子の調製方法を記載しているが、この方法では、炭酸カルシウム粒子のスラリーが、温度70〜95℃、pH8〜11で亜鉛化合物の溶液及びシリカ含有物質の溶液に同時に混合されている。
【0008】
米国特許第5164006号は、耐酸性炭酸カルシウム顔料の調製方法を記載しているが、この方法は、ケイ酸ナトリウム溶液を炭酸カルシウムのスラリーと75〜80℃で混合する工程、二酸化炭素を加えることによりpHを10.2〜10.7に調整する工程、反応混合物を冷却する工程、及び塩化亜鉛を添加する工程を含んでいる。
【0009】
EP356406A1及び米国特許第5164006号の方法の不都合な点は、これらの方法が、亜鉛化合物を添加する追加的な工程を含むことである。
【0010】
本発明の目的は、充填材の量に対し、改良された乾燥強度、特に改良された引張強さ及び内部結合強さを有する充填紙又は充填板紙を提供することにある。
【0011】
この目的は、請求項1の方法、請求項9の組成物、請求項15のポリシリケートでコーティングした鉱物粒子、請求項16の紙及び請求項17の方法により解決される。
【0012】
本発明の一部は、ポリシリケートでコーティングした鉱物粒子を含む水性組成物の調製方法であり、この方法は、ゲル状ポリシリケート及び鉱物を含む水性組成物を、少なくとも5000rpmで少なくとも30秒間せん断に付す工程を含む。
【0013】
ゲル状ポリシリケート及び鉱物を含む水性組成物を、好ましくは、少なくとも8,000rpmのせん断、より好ましくは10,000〜30,000rpmの範囲のせん断に付す。好ましくは、せん断は、少なくとも1分間施す。せん断は、どのような時間で適用してもよい。しかし、実用的な理由から、せん断は通常、最大1時間、好ましくは最大30分間、より好ましくは最大15分間施される。
【0014】
ポリシリケートでコーティングした鉱物粒子を含む水性組成物は、好ましくは、少なくとも500mPasの粘度(スピンドル4のブルックフィールド粘度計を用いて、25℃、100rpmで、組成物の重量に基づき12乾燥重量%の濃度のポリシリケートでコーティングした鉱物粒子で測定した場合であり、結果は、試験開始後30秒後に測定したもの)により特徴づけられる。
【0015】
ゲル状ポリシリケート及び鉱物を含む水性組成物は、好ましくは、鉱物の存在下、シリケートの重合により得ることができる。
【0016】
通常、シリケートは、水溶性である。好ましくは、シリケートは、ケイ酸マグネシウムのようなアルカリ土類金属ケイ酸塩又はケイ酸リチウム、ケイ酸カリウムもしくはケイ酸ナトリウムのようなアルカリ金属ケイ酸塩である。より好ましくは、アルカリ金属ケイ酸塩;最も好ましくは、ケイ酸ナトリウムである。好ましいケイ酸ナトリウムは、NaO対SiOの重量比が、2:1〜1:4の範囲、より好ましくは1:2〜1:4の範囲、最も好ましくは1:2.5〜1:3.5の範囲である。好ましくは、シリケートは、水溶液の形態で使用される。
【0017】
鉱物の例は、二酸化チタン、三水和アルミナ、タルク、マイカ、ゼオライト、クレイ、例えば、カオリン及び焼成クレイ、沈降ケイ酸塩のようなケイ酸金属塩、並びに重質炭酸カルシウム(GCC)及び沈降炭酸カルシウム(PCC)のような炭酸カルシウムである。好ましい鉱物は、炭酸カルシウムである。鉱物は、通常、重合化条件においては、実質的に水溶性ではない。鉱物は、固体形態で又は水性スラリーとして使用することができる。
【0018】
鉱物は、シリケートの重合の開始時点ですでに存在していることができ、または、シリケートの重合の間に加えることができる。
【0019】
シリケートの重合の間、ゲル化が起きる。好ましくは、シリケートの重合は、撹拌下に実施される。重合とそれによるゲル化とが実質的に完了したら、好ましくは撹拌強度を上げて、相対的に低粘度、例えば、300mPas未満(スピンドル4のブルックフィールド粘度計を用いて、25℃、100rpmで、組成物の重量に基づき12乾燥重量%の濃度のポリシリケートでコーティングした鉱物粒子で測定した場合であり、結果は、試験開始後30秒後に測定したもの)のゲル状ポリシリケート及び鉱物を含む水性組成物を得る。
【0020】
シリケートの重合は、酸を加えることによりpHを10未満に調整することにより開始することができる。酸の例には、二酸化炭素、塩酸又は硫酸のような鉱酸、酢酸のような有機酸及びアルカリ金属のホウ酸塩、アルミン酸塩又はスズ酸塩である。好ましくは、二酸化炭素又は鉱酸を酸として使用する。
【0021】
鉱物が重合化の開始時点ですでに存在している、本方法の第1の実施態様においては、シリケートの重合は、好ましくは二酸化炭素を用いて開始され、pHは、好ましくはpH5〜9の範囲、より好ましくは約7に調整される。
【0022】
鉱物がシリケートの重合の間に加えられる、本方法の第2の実施態様においては、シリケートの重合は、好ましくは鉱酸を用いて開始され、pHは、好ましくはpH2〜10.5の範囲、より好ましくは7〜9に調整される。本方法の第2の実施態様において、鉱物を使用する場合、酸性pHで溶解することができる鉱物、例えば炭酸カルシウムであり、好ましくは、pHは、pH8.5〜10の範囲に調整される。
【0023】
好ましくは、両実施態様において、シリケートの重合は、50℃未満の温度で実施される。より好ましくは、15〜35℃の範囲の温度で実施される。最も好ましくは、20〜30℃の範囲の温度で実施される。
【0024】
通常、シリケートの重合は、重合開始後12時間以内に、実質的に完了する。好ましくは、5時間以内、より好ましくは2時間以内、そして最も好ましくは1時間以内に完了する。
【0025】
鉱物の量は、ゲル状ポリシリケート及び鉱物を含む水性組成物の重量に基づき、好ましくは5〜20重量%の範囲、より好ましくは8〜12重量%である。
【0026】
シリケートの量は、ゲル状ポリシリケート及び鉱物を含む水性組成物の重量に基づき、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.5〜4重量%、より好ましくは1〜3重量%の範囲である。
【0027】
好ましくは、ゲル状ポリシリケート及び鉱物の量は、ゲル状ポリシリケート及び鉱物を含む水性組成物の重量に基づき、1〜30乾燥重量%、より好ましくは5〜15乾燥重量%、最も好ましくは10〜14乾燥重量%の範囲である。
【0028】
さらに本発明の一部であるのは、ポリシリケートでコーティングした鉱物粒子を含む水性組成物であり、これは、本発明の方法により得ることができる。
【0029】
好ましくは、ポリシリケートでコーティングした鉱物粒子を含む水性組成物は、少なくとも500mPas(スピンドル4のブルックフィールド粘度計を用いて、25℃、100rpm、組成物の重量に基づき12乾燥重量%の濃度のポリシリケートでコーティングした鉱物粒子で測定した場合であり、結果は、試験開始後30秒後に測定したもの)の粘度を特徴とする。
【0030】
好ましくは、ポリシリケートでコーティングした鉱物粒子は、ポリシリケートで完全にコーティングされていない。例えば、ポリシリケートでコーティングした炭酸カルシウムは、pH6未満で溶解する。
【0031】
鉱物の量は、ポリシリケートでコーティングした鉱物粒子の重量に基づき、40〜99重量%であることができる。好ましくは、60〜95重量%、より好ましくは、80〜90重量%、最も好ましくは、78〜88重量%である。
【0032】
ポリシリケートの量は、鉱物の重量に基づき、1〜60重量%であることができる;好ましくは、5〜40重量%、より好ましくは、15〜25重量%である。
【0033】
ポリシリケートでコーティングした鉱物粒子の粒径は、1〜1000μm、好ましくは8〜30μm、より好ましくは、10〜27μmである。
【0034】
好ましくは、ポリシリケートでコーティングした鉱物粒子の量は、ポリシリケートでコーティングした鉱物粒子を含む水性組成物の重量に基づき、1〜30重量%である。より好ましくは、10〜15重量%である。
【0035】
さらに本発明の一部であるのは、本発明の水性組成物から水を除去することによって得られるポリシリケートでコーティングした鉱物粒子である。水の除去は、ろ過、デカンテーションもしくは蒸留のような、任意の好適な方法又は任意の好適な方法の組み合わせによって行うことができる。
【0036】
本発明のもう1つの部分は、本発明のポリシリケートでコーティングした鉱物粒子を充填した紙又は板紙である。
【0037】
好ましくは、充填紙又は充填板紙中の繊維/ポリシリケートでコーティングした鉱物粒子の重量比は、90/10〜30/70の範囲、好ましくは80/20〜60/40の範囲、より好ましくは75/25〜65/35の範囲である。
【0038】
本発明のもう1つの部分は、本発明の充填紙又は充填板紙の調製方法であり、その方法は、セルロース懸濁液を網が形成されたワイヤー(すき網)上に濾水し、その後網を乾燥させる工程に先立ち、ポリシリケートでコーティングした鉱物粒子又はポリシリケートでコーティングした鉱物粒子を含む水性組成物をセルロース懸濁液に加える工程を含む。
【0039】
好ましくは、充填紙を調製する。
【0040】
本発明のポリシリケートでコーティングした鉱物粒子は、カチオン性凝固剤、乾燥強化剤、保持剤、サイズ剤及び蛍光増白剤のような標準のウェットエンド添加剤と併せて使用することができる。また、特に好ましくはないものの、炭酸カルシウムのような他の充填材と一緒に使用することも可能である。
【0041】
ポリシリケートでコーティングした鉱物粒子は、濃紙料、薄紙料又は白水に加えることもできる。
【0042】
さらに本発明の一部であるのは、充填紙又は充填板紙の基本重量に対し、充填紙又は充填板紙の引張強さ及び内部結合強さを向上させる方法である。この方法は、セルロース懸濁液を網が形成されたワイヤー上に濾水し、その後網を乾燥させる工程に先立ち、ポリシリケートでコーティングした鉱物粒子又はポリシリケートでコーティングした鉱物粒子を含む水性組成物をセルロース懸濁液に加える工程を含む。
【0043】
本発明のポリシリケートでコーティングした鉱物粒子は、紙用充填材として使用された場合、充填紙の引張強さ(裂断長)と内部結合強さ(スコットボンド強度)/灰分の比が改善されるという利点を有する。換言すれば、ポリシリケートでコーティングした鉱物を充填材として使用すると、一定の灰分に対し引張強さ及び内部結合強さが向上した充填紙、又は一定の引張強さ又は内部結合強さに対し、灰分の少ない充填紙のいずれかを得ることができる。同時に、その紙は、優れた地合い及び優れた不透明度を示す。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、Calopake(登録商標)Fを含有する手すき紙(handsheet)、Calopake(登録商標)F及びポリシリケートを含有する手すき紙、並びにポリシリケートでコーティングしたCalopake(登録商標)Fを含有する手すき紙の裂断長と手すき紙灰分との相関関係を示す。
【0045】
【図2】図2は、Albacar(登録商標)HO、Albacar(登録商標)LO、Syncarb F0474及びMiconapaque HBをそれぞれ含有する手すき紙、並びにポリシリケートでコーティングしたそれぞれの炭酸カルシウムを含有する手すき紙の裂断長と手すき紙の灰分との相関関係を示す。
【0046】
【図3】図3は、Calopake(登録商標)Fを含有する手すき紙、Calopake(登録商標)F及びポリシリケートを含有する手すき紙、並びにポリシリケートでコーティングしたCalopake(登録商標)Fを含有する手すき紙のスコットボンド強度と手すき紙の灰分との相関関係を示す。
【0047】
【図4】図4は、Albacar(登録商標)HO、Albacar(登録商標)LO、Syncarb F0474及びMiconapaque HBをそれぞれ含有する手すき紙、並びにポリシリケートでコーティングしたそれぞれの炭酸カルシウムを含有する手すき紙のスコットボンド強度と手すき紙の灰分との相関関係を示す。
【0048】
実施例1〜5
二酸化炭素を酸として使用する、ポリシリケートでコーティングした炭酸カルシウム粒子を含む水性組成物の調製
【0049】
炭酸カルシウム100gオーブン乾燥重量(表1参照)を取り、脱イオン水を用いて930gに希釈した。これに、ケイ酸ナトリウム(28.5%(w/v)SiO、8.9%(w/v)NaO)70gを加えた。したがって、炭酸カルシウムの量は、反応混合物の体積に基づき10乾燥重量%であり、ケイ酸ナトリウムの量は、反応混合物の体積に基づき2乾燥重量%であった。2種の水性材料を、磁気攪拌器を用いて室温で十分に混合し、二酸化炭素をガス拡散管を用いて加え、室温でpH7.0とした。場合によっては、ポリシリケートをゲル化するまではpHが7にならなかった。反応混合物を室温でゲル化させた。ゲル化がほぼ完了した20分後、ゲルを磁気攪拌器の作用で破壊し、可視粒子(>2mm)を含有するスラリーを得た。このスラリーを次にultra thurraxホモジナイザーを用いて13500rpmで1分間せん断した。得られた水性組成物は、組成物の量に基づきポリシリケート12乾燥重量%でコーティングした炭酸カルシウムを含有していた。
【0050】
使用した炭酸カルシウムを、その粒径及び得られたポリシリケートでコーティングした炭酸カルシウムの粒子と一緒に表1に記載した。粒径は、Malvern MasterSizer 2000 粒径分析器で分析した。
【0051】
【表1】

【0052】
Calopake(登録商標)Fは、乾燥沈降炭酸カルシウム、Albacar(登録商標)HO、Albacar(登録商標)LO及びSyncarb F0474-GOは、拡散沈降炭酸カルシウム、Miconapaque HBは、拡散粉砕炭酸カルシウムである。Calopake(登録商標)F、Albacar(登録商標)HO及びAlbacar(登録商標)LOは、Mineral Technologiesにより、Miconapaque HBは、Columbia River Carbonatesから販売されている。
【0053】
実施例1、4及び5のポリシリケートでコーティングした炭酸カルシウムを含む水性組成物を、ブルックフィールドDVII-Pro粘度計を用いて測定し、試験開始30秒後にその結果を得た。
【0054】
【表2】

【0055】
実施例1〜5のポリシリケートでコーティングした炭酸カルシウムを含む水性組成物を、塩酸を用いてpH約1.5に酸性化しようとした場合、炭酸カルシウムは、pHが6になる前に急速に溶解し、シリカ表面が酸に対するバリヤーとなる完璧なコーティングではないことを示した。
【0056】
比較例1 ポリシリケートを含む水性組成物の調製
【0057】
炭酸カルシウムを含まず、ポリシリケートだけを含む水性組成物を、炭酸カルシウムを加えない以外は実施例1〜5と同様に調製した。ケイ酸ナトリウムの量は、反応混合物の体積に基づき、ここでも2重量%とした。得られた水性組成物は、組成物の量に基づき2乾燥重量%のポリシリケートを含有していた。
【0058】
実施例6〜10
ポリシリケートでコーティングした炭酸カルシウムを含有する手すき紙の調製
【0059】
シリカコーティングした炭酸カルシウムを含有する手すき紙を、次のように調製した:紙料重量に基づき0.5乾燥重量%の繊維(漂白した樺の繊維70%及び漂白したバイン繊維30%)を含有する標準の実験用のファインペーパー用紙料を、47°SRまで叩解した。紙料を1000rpmで5秒間撹拌した。0.5%(w/v)のRaisamy(登録商標)50021(カチオン性ジャガイモデンプン)を含有する水溶液を加え、仕上がり紙の乾燥重量に基づき5kg/t濃度のRaisamy(登録商標)50021を得て、1000rpmでの撹拌を30秒間続けた。実施例1〜5のポリシリケートでコーティングした炭酸カルシウム粒子を含む水性組成物の必要量(表2参照)を加え、1000rpmでの撹拌をさらに30秒間続けた。0.1%(w/v)のPercol 175(カチオン性ポリアクリルアミド)を含有する水溶液を加えて、仕上がり紙の乾燥重量に基づき、500g/t濃度のPercol 175を得て、さらに1000rpmで30秒間撹拌を続けた。0.1%(w/v)Hydrocol 2D6(水膨潤性モンモリロナイトクレイ)を含有する水溶液を加え、仕上がり紙の乾燥重量に基づき、2000g/t濃度のHydrocol 2D5を得て、500rpmで15秒間撹拌を続けた。処理した紙料を半自動手すき機を用いて手すき紙に形成し、プレスし、95℃で乾燥させた。
【0060】
実施例6〜10の手すき紙の調製のための添加順序を以下の線図1にまとめた:
【0061】
【表3】

【0062】
比較例2〜8
炭酸カルシウムを含有するが、ポリシリケートでコーティングした炭酸カルシウムを含有しない手すき紙の調製
【0063】
比較例の手すき紙を実施例6〜10の手すき紙に関する記載のとおり調製したが、ポリシリケートでコーティングした炭酸カルシウムは加えなかった。その代わりに、それぞれの炭酸カルシウムを加えてから、デンプンを加えた。比較例2〜8の手すき紙の調製のための添加順序を、以下の線図2にまとめた:
【表4】

【0064】
比較例9
炭酸カルシウム及びポリシリケートを含有するが、ポリシリケートでコーティングした炭酸カルシウムを含有しない手すき紙の調製
【0065】
比較例9の手すき紙をポリシリケートでコーティングした炭酸カルシウムの代わりに比較例2のポリシリケートを使用した以外、実施例6〜10の手すき紙に関する記載のとおり調製した。さらに、それぞれの炭酸カルシウムを、デンプンを加える前に加えた。比較例9の手すき紙の調製のための添加順序を、以下の線図3にまとめた:
【表5】

【0066】
実施例6〜10及び比較例2〜9の手すき紙に使用された繊維、シリカコーティングした炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、ポリシリケートそれぞれの重量比を表2にまとめた:
【表6】

【0067】
実施例6〜10及び比較例2〜9の手すき紙の評価
実施例6〜10及び比較例3〜9の手すき紙サンプルをTappi試験方法T402に従い、少なくとも24時間、相対湿度50%及び23℃の条件に置いた。
【0068】
基本重量は、重量と手すき紙面積の関数であり、手すき紙重量から計算した。灰分は、525℃の温度のCEMマイクロウェーブ炉を用いて測定した。各手すき紙から2×15mmの細片を取り、引張強さ(裂断長)をTappi T494に従い、EJA単一カラム引張試験機を用いてテストした。内部結合強さ(スコットボンド強度)をTappi 試験方法 T569に従い、スコットボンド測定器で測定した。
【0069】
【表7】

【0070】
比較例2〜4の手すき紙の結果は、繊維含有量が多く、炭酸カルシウム含有量が少ないほど、裂断長及びスコットボンド強度は高くなることを示している。炭酸カルシウムの量を維持しながら、繊維の一部をポリシリケートで置き換えると、裂断長(比較例4及び9の手すき紙の結果を参照)が高くなった。
【0071】
実施例6並びに比較例2〜4及び9の手すき紙の裂断長と灰分との相関関係を図1に示す。
【0072】
実施例6及び比較例9の手すき紙の裂断長と灰分との相関関係は、比較例2〜4の手すき紙の裂断長と灰分とに関して示された相関関係と同様に振る舞うと考えられる。これは、実施例6の点から比較例9の点に仮想の線を引くことができることを意味する。この線は、比較例2〜4の点で形成される線に平行である。このようにすることによって、一定の灰分において、ポリシリケートでコーティングしたCalopake(登録商標)Fを含有する手すき紙(実施例6)が、Calopake(登録商標)Fだけを含有する手すき紙(比較例2〜4)さらにCalopake(登録商標)Fとポリシリケートとの混合物を含有する手すき紙(比較例9)と比較して、高い裂断長を達成することができることが明らかになる。換言すれば、ポリシリケートでコーティングしたCalopake(登録商標)Fを含有する手すき紙では、Calopake(登録商標)Fだけを含有する手すき紙及びCalopake(登録商標)Fとポリシリケートとの混合物を含有する手すき紙と比較して、より少ない灰分で同じ裂断長を達成することができる。
【0073】
実施例7〜10及び比較例5〜8の手すき紙に関する裂断長と灰分との相関関係を図2に示す。
【0074】
図2は、一定の灰分において、ポリケイ酸塩でコーティングした、Albacar(登録商標)HO(実施例7)、Albacar(登録商標)LO(実施例8)、Syncarb F0474(実施例9)、Miconapaque HB(実施例10)を、それぞれ含有する手すき紙が、ポリシリケートをコーティングしていない、それぞれの炭酸カルシウムを含有する手すき紙(比較例5〜8)に比べ、より高い裂断長を達成することができることを示す。換言すれば、ポリシリケートでコーティングした、Albacar(登録商標)HO、Albacar(登録商標)LO、Syncarb F0474、Miconapaque HBを、それぞれ含有する手すき紙は、ポリケイ酸塩をコーティングしていないそれぞれの炭酸カルシウムを含有する手すき紙と比較して、より少ない灰分で同じ裂断長を達成することができる。
【0075】
実施例6及び比較例2〜4及び9の手すき紙に関するスコットボンド強度と灰分との相関関係を図3に、実施例7〜10及び比較例5〜8の手すき紙に関するスコットボンド強度と灰分との相関関係を図4に示す。ここで、実施例6〜10及び比較例5〜9の手すき紙のスコットボンド強度と灰分との相関関係もまた、比較例2〜4の手すき紙に関して示されたスコットボンド強度と灰分との相関関係と同様に振る舞うと仮定することができる。これもまた、それぞれの例の点を通る仮想の線を引くことができることを意味し、その線は、比較例2〜4の点で形成された線に平行である。その平行な線を比較すると、スコットボンド強度と灰分との相関関係は、Calopake(登録商標)Fだけを含有する手すき紙(比較例2〜4)及びCalopake(登録商標)Fとポリシリケートとの混合物を含有する手すき紙(比較例9)についてはほぼ同一であることがわかるが、一定の灰分においては、ポリシリケートでコーティングした、Calopake(登録商標)F(実施例6)、Albacar(登録商標)HO(実施例7)、Albacar(登録商標)LO(実施例8)、Syncarb F0474(実施例9)、Miconapaque HB(実施例10)を、それぞれ含有する手すき紙が、ポリシリケートをコーティングしていない、それぞれの炭酸カルシウムを含有する手すき紙(比較例5〜8)と比較して、より高いスコットボンド強度が得られることがわかる。換言すれば、ポリシリケートでコーティングした炭酸カルシウムを含有する手すき紙に関しては、炭酸カルシウムだけ又は炭酸カルシウムとポリシリケートとの混合物を含有する手すき紙と比較して、より少ない灰分で同じスコットボンド強度を達成することができる。
【0076】
まとめると、ポリシリケートでコーティングした炭酸カルシウムを使用すると、同じ灰分において裂断長及びスコットボンド強度が増加した紙、又は、同じ裂断長又はスコットボンド強度で、灰分のより少ない紙、すなわち、繊維及び/又は炭酸カルシウム量の削減された紙が得られる。したがって、充填紙の裂断長/灰分の比及び充填紙のスコットボンド強度/灰分の比が改善される。
【0077】
実施例11
硫酸を酸として使用する、水性ポリシリケートでコーティングした炭酸カルシウムを含む組成物の調製
【0078】
水(標準の水道水)200Lに、ケイ酸ナトリウム21L(PQ社販売N(登録商標)ケイ酸ナトリウム、28.7%(w/v)のSiO、8.9%(w/v)のNaO、68°Fでの濃度:1.38g/cm)を加えた。撹拌により均質な混合物を得た後、十分量の濃硫酸を加え、ケイ酸ナトリウムのpHを室温で11.3〜9.5に下げた。ケイ酸ナトリウムを3分間反応させた後、拡散させた重質炭酸カルシウム(GCC)のスラリー(Omya社販売Hyrocarl(登録商標)90、60重量%GCC)50Lを加えた。炭酸カルシウムをスラリーによく混合し、さらに水29Lを加えると、ケイ酸塩は、固体三次元マトリックスを形成し始めた。固体ゲルを攪拌器の作用で破壊し、混合物をさらに2時間撹拌した。この後、0.5〜2mmの範囲の可視粒子を有する粒状のスラリーを得た。本材料サンプル10Lを取り、Polytron Emulsifierを使って、14,000rpmで10分間せん断し、均一な粘性を有する水性ポリシリケートでコーティングした炭酸カルシウムを得た。ポリシリケートでコーティングした炭酸カルシウムは、これで使用可能な状態となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル状のポリシリケート及び鉱物を含む水性組成物を、少なくとも5000rpmで少なくとも30秒間せん断に付すことを含む、ポリシリケートでコーティングした鉱物粒子を含む水性組成物の調製方法。
【請求項2】
ゲル状のポリシリケート及び鉱物を含む水性組成物が、鉱物の存在下、シリケートの重合により得られる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
シリケートの重合が、酸を加えることにより、pHをpH10未満に調整することにより開始される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
シリケートの重合が50℃未満の温度で実施される、請求項2〜3のいずれか記載の方法。
【請求項5】
シリケートの重合が実質的に12時間以内に完了する、請求項2〜4のいずれか記載の方法。
【請求項6】
鉱物の量が、ゲル状のポリシリケート及び鉱物を含む水性組成物の重量に基づき、5〜20重量%の範囲である、請求項2〜5のいずれか記載の方法。
【請求項7】
ケイ酸塩の量が、ゲル状のポリシリケート及び鉱物を含む水性組成物の重量に基づき、0.01〜10重量%の範囲である、請求項2〜6のいずれか記載の方法。
【請求項8】
ゲル状のポリシリケート及び鉱物の量が、ゲル状のポリシリケート及び鉱物を含む水性組成物の重量に基づき、1〜30乾燥重量%の範囲である、請求項2〜7のいずれか記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか記載の方法により得られる、ポリシリケートでコーティングした鉱物粒子を含む水性組成物。
【請求項10】
少なくとも500mPas(スピンドル4のブルックフィールド粘度計を用いて、25℃、100rpmで、組成物の重量に基づき12乾燥重量%の濃度のポリシリケートでコーティングした鉱物粒子で測定した場合であり、結果は、試験開始後30秒後に測定したもの)の粘度を特徴とする、請求項9記載の水性組成物。
【請求項11】
鉱物の量が、ポリシリケートでコーティングした鉱物粒子の重量に基づき、40〜99重量%である、請求項9又は10記載の水性組成物。
【請求項12】
ポリシリケートの量が、鉱物の重量に基づき、1〜60重量%である、請求項9〜11のいずれか記載の水性組成物。
【請求項13】
ポリシリケートでコーティングした鉱物粒子の粒径が、1〜1000μmである、請求項9〜12のいずれか記載の水性組成物。
【請求項14】
ポリシリケートでコーティングした鉱物粒子の量が、水性組成物の重量に基づき、1〜30重量%である、請求項9〜13のいずれか記載の水性組成物。
【請求項15】
請求項9〜14のいずれか記載の水性組成物から、水を除去することにより得られる、ポリシリケートでコーティングした鉱物粒子。
【請求項16】
請求項15記載のポリシリケートでコーティングした鉱物粒子が充填された紙又は板紙。
【請求項17】
セルロース懸濁液を、網が形成されたワイヤー上に濾水し、その後網を乾燥させる工程に先立ち、請求項15記載のポリシリケートでコーティングした鉱物粒子又は請求項9〜14のいずれか記載のポリシリケートでコーティングした鉱物粒子を含む水性組成物をセルロース懸濁液に加える工程を含む、請求項16の紙又は板紙の調製方法。
【請求項18】
セルロース懸濁液を網が形成されたワイヤー上に濾水し、その後網を乾燥させる工程に先立ち、請求項15記載のポリシリケートでコーティングした鉱物粒子又は請求項9〜14のいずれか記載のポリシリケートでコーティングした鉱物粒子を含む水性組成物をセルロース懸濁液に加える工程を含む、充填紙又は充填板紙の基本重量に対し、充填紙又は充填板紙の引張強さ及び内部結合強さを向上させる方法。
【請求項19】
請求項15記載のポリシリケートでコーティングした鉱物粒子の紙又は板紙用充填材としての使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−507553(P2010−507553A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533789(P2009−533789)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【国際出願番号】PCT/EP2007/060949
【国際公開番号】WO2008/049750
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(508120547)チバ ホールディング インコーポレーテッド (81)
【氏名又は名称原語表記】CIBA HOLDING INC.
【Fターム(参考)】