説明

高強度集束超音波療法のための方法および装置

本発明の高強度集束超音波療法のための装置は、超音波トランスデューサ、画像取得デバイス、超音波トランスデューサを駆動する駆動ユニットならびに超音波トランスデューサおよび画像取得デバイスをともに機械的に駆動する機械駆動手段を具備する。この装置は、治療前の目標領域の元の画像を受信および保存し、高強度集束超音波治療中のある時間における目標領域の画像を受信および保存し、治療前後の目標領域の画像にしたがって治療の効果を評価する信号処理ユニット、ならびに信号処理ユニット、駆動ユニットおよび機械駆動手段にそれぞれ接続された制御装置ユニットをさらに具備する。治療の要求が満たされていると信号処理ユニットが判断したとき、制御装置ユニットは駆動ユニットおよび機械駆動手段を制御し、超音波トランスデューサの動作を停止させ、治療の要求が満たされていないと判断したとき、超音波トランスデューサに動作を継続させる。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は高強度集束超音波療法のための方法および装置に関し、特に超音波画像のグレースケール変化にしたがって治療の超音波ビームの放射を切り換えるための方法および装置に関する。
【発明の背景】
【0002】
医学研究者は、がん細胞の熱抵抗が正常細胞より劣っていることを発見した。温度が摂氏42.5度を上回るとき、正常細胞はわずかに損傷し、その損傷は戻せるが、がん細胞は30分以内に消滅する。がん細胞のこの特性にしたがって、高強度集束超音波腫瘍治療システムは、エネルギー源として超音波ならびに超音波の貫通性および集束性を使用し、媒介物により結合されたアプリケータから皮膚を通して人体内の腫瘍組織に放射する、比較的低い平均強度レベルの超音波を送り出す。組織内でのこれらの超音波ビームは、空間の焦点スポットに焦点が合わせられ、1000W/m2を超える平均音波強度レベルを有する(径が3mm×8mmのサイズの)焦点領域が形成される。焦点領域における温度は、即座に(0.1から5秒)急上昇(摂氏70度を超える)する。空洞形成および機械動作とともに、この熱効果(すなわち、高強度超音波は液体中に霧のような泡を生成し、泡の機械的な形成および破裂により非常に高い温度および圧力を生成することができ、これらの温度および圧力により組織構造を著しく破壊することができる)により、焦点領域における組織の破壊を成し遂げることができる。点から線へ、次に線からスライスへ、次にスライスから固体へスキャンする方法を通して、がん細胞を焦点領域にさらすことができ、最後に腫瘍組織全体が焼灼され、治療の目的が実現される。
【0003】
超音波療法の開発により、例えばB−モード超音波のような、イメージングデバイスに関係付けられた超音波療法による腫瘍のチェックおよび治療における大きな改善が成し遂げられた。既存の超音波療法機器において使用されるB−モード超音波イメージング装置は、主として超音波療法の前に腫瘍の位置を突き止めて観察するために使用される。治療後しばらくの間MRIまたはCTチェックを使用することにより、既存の機器は、治療後目標の領域で必要とされる治療の線量が達成されたかを決定し、目標の組織の凝固的な壊死が引き起こされる場合、治療後治療の効果を評価する。このように、治療の効果をすぐに観察することができず、治療の線量は経験によってのみ制御されるため、多くの不利益が存在する。線量が不十分な場合、患部組織を有効に破壊することができず、治療の効果を成し遂げることができない。線量が必要とされる線量を超えている場合、正常組織を破壊するかもしれず、大きな安全上の問題が存在する。それゆえに、治療中における治療の効果に関するリアルタイムの評価が大いに必要になってきている。
【発明の概要】
【0004】
上述の問題を解決するために、本発明の高強度集束超音波療法のための装置は、治療すべき目標領域に対して高強度集束超音波を放射する超音波トランスデューサ、治療すべき目標領域の位置を突き止めて、目標領域の画像を取得する画像取得デバイス、前記超音波トランスデューサに接続され、治療すべき目標領域に対して超音波を放射する前記超音波トランスデューサを駆動する駆動ユニットおよび前記超音波トランスデューサに接続され、治療すべき目標領域をスキャンするために前記超音波トランスデューサおよび画像取得デバイスを機械的に駆動するための機械駆動手段を具備する。高強度集束超音波療法のための前記装置は、画像取得デバイスに接続され、治療前に画像取得デバイスにより取得された目標領域の元の画像を受信および保存し、高強度集束超音波(HIFU)治療の間のある時間に画像取得デバイスにより取得された目標領域の画像を受信および保存し、治療前後の目標領域の画像にしたがって治療の効果を評価する信号処理ユニット、ならびに信号処理ユニット、駆動ユニットおよび機械駆動手段にそれぞれ接続された制御装置ユニットをさらに具備する。治療の要求が満たされていると信号処理ユニットが判断したとき、制御装置ユニットは、駆動ユニットおよび機械駆動手段を制御して超音波トランスデューサの動作を停止させ、治療の要求が満たされていないと信号処理ユニットが判断したとき、制御装置ユニットは駆動ユニットおよび機械駆動手段を制御して超音波トランスデューサに動作を継続させる。
【0005】
さらに、本発明の高強度集束超音波療法のための方法は次のステップを含み、そのステップは、元の画像を取得するステップ、すなわち治療前に治療すべき目標領域の画像を受信および取得するステップと、治療を実行するステップ、すなわち高強度集束超音波を放射し、目標領域に対してその音波を当てるステップと、治療の効果を評価するステップ、すなわちHIFU治療の間のある時間中に目標領域の画像を取得および保存し、治療前後の目標領域の画像にしたがって治療の効果を評価するステップである。治療の要求が満たされていると信号処理ユニットが判断したとき、目標領域上での治療は停止され、治療の要求が満たされていないと信号処理ユニットが判断したとき、目標領域上での治療は継続される。
【0006】
本発明の高強度集束超音波療法のための方法および装置にしたがって、目標領域の治療効果を治療中にリアルタイムで評価することができ、これらの評価にしたがって、目標領域上での治療は継続または停止することが決定される。したがって治療の線量を正確に制御することができ、最善の治療効果を成し遂げることができる。
【好ましい実施形態の詳細な説明】
【0007】
本発明にしたがった装置の構造を、図1にしたがって説明する。図1中に示されるように、本発明の高強度集束超音波療法のための装置は通常、超音波トランスデューサ1、画像取得デバイス2、駆動ユニット6および機械駆動手段7を具備する。加えて、本発明の目的を実現するために、この装置は信号処理ユニット4および制御装置ユニット5をさらに具備する。超音波トランスデューサ1は治療すべき目標領域に対して高強度集束超音波を放射し、画像取得デバイス2は超音波トランスデューサ1にインストールされ、腫瘍の位置を突き止めて目標領域の画像を取得するために使用され、既存の画像ングデバイスを使用することができ、例としてB−モード超音波画像ング装置を本発明で説明する。信号処理ユニット4は画像取得デバイス2に接続され、画像取得デバイス2により取得された目標領域の画像を受信および保存する。画像目標領域の現在の画像のグレースケールを算出し、治療前の元の画像データに基づいて評価することができる。ディスプレイ3が信号処理ユニット4に接続され、信号処理ユニット4から出力された画像を表示する。超音波トランスデューサ1に接続された駆動ユニット6は、制御装置ユニット5の制御の下、超音波トランスデューサ1を駆動して治療すべき目標領域に対して超音波を放射させる。超音波トランスデューサ1に接続された機械駆動手段7は、制御装置ユニット5の制御の下、超音波トランスデューサ1およびB−モード超音波画像ング装置2をともに機械的に動かす。信号処理ユニット4、駆動ユニット6および機械駆動手段7にそれぞれ接続された制御装置ユニット5は、信号処理ユニット4から出力された目標領域の画像のグレースケール変化の計算および評価を受信し、その計算および評価結果にしたがって駆動ユニット6および機械駆動手段7の動作を制御する。
【0008】
本発明の高強度集束超音波療法のための装置の動作フロー図を、図2にしたがって説明する。図2中に示されるように、治療開始後にステップS1に入る。ステップS1において、B−モード超音波画像ング装置2は治療すべき目標領域の元の画像を取得し、信号処理ユニット4に対してその画像を転送する。信号処理ユニット4は、これらの画像の最初のグレースケールを算出し、後の計算および評価のために、これらの最初のグレースケールを保存する。
【0009】
ステップS2において、制御装置ユニット5は駆動ユニット6および機械駆動手段7を制御し、高強度集束超音波を放射する超音波トランスデューサ1を始動させて目標領域をスキャンし、目標領域中の腫瘍細胞を集束超音波にさらす。
【0010】
例えば、少なくとも1回のスキャン後のある時間中に、ステップS3に入り、B−モード超音波画像ング装置2は治療すべき目標領域の画像を再度取得し、信号処理ユニット4に対してその画像を転送する。信号処理ユニット4は治療後のこれらの画像のグレースケールを算出し、次に、保存された最初のグレースケールにしたがって治療後のこれらの画像のグレースケール変化を算出する。
【0011】
次に、ステップS4に入る。このステップにおいて、信号処理ユニット4はグレースケールの変化が規定値を超えているかを決定する。グレースケール変化が規定値を超えている場合、それは目標領域上の音波治療の線量に到達しており、この時点で高強度集束超音波の放射を停止できることを意味する。これに対して、グレースケール変化が規定値を超えていない場合、それは目標領域上の音波治療の線量に到達しておらず、この時点で治療のために高強度集束超音波の放射を継続すべきであることを意味する。動物サンプルにおける多数の実験により、治療前後の目標領域の超音波画像のグレースケール変化は、音波出力および照射時間だけでなく、照射深度、組織構造、組織の機能ステータスおよび治療モードに関係することをこの発明者は発見した。しかし、グレースケール変化が5から10のグレースケールを超える場合にのみ、目標領域中の腫瘍組織の凝固性の壊死が起こる。本発明において、グレースケールの値は [0〜255]の範囲に平均的に分布する。値0は完全な黒を表わし、値255は完全な白を表わす。
【0012】
グレースケールおよびグレースケール変化を計算する方法は、コンピュータを使用して、例えば治療前後の静止画像のような特別な時間中にモニタデバイスのB−モードスキャナから画像を取得する。画像が取得されるとき、コンピュータシステムは、位置、エネルギーおよび機器パラメータを自動的に記録する。差分演算および畳み込み演算のようなコンピュータグラフィックス算術の使用により、指定された場所におけるグレースケール変化を比較することができる。比較領域は、点、線(直線、曲線、治療跡など)、スライス(長方形、手動による図形)などであってもよい。治療前後の画像上の治療跡の位置にしたがって、ある領域におけるグレースケールの特性値が計算され、特性値は、例えば、総グレースケール値、平均グレースケール、グレースケール加重値(総計、平均など)、領域中央のグレースケールなどである。差分演算および畳み込み演算の使用により、治療前後のグレースケールの特性値が比較される。
【0013】
ステップS4において、目標領域の画像のグレースケール変化が規定値を超えている場合、信号処理ユニット4は制御装置ユニット5に対して停止コマンドを送信する。停止コマンドにより、制御装置ユニット5は駆動ユニット6および機械駆動手段7を制御して、高強度集束超音波を放射およびスキャンする超音波トランスデューサ1を停止、すなわち治療を停止させる。
【0014】
ステップS4において、目標領域の画像のグレースケール変化が規定値を超えていない場合、信号処理ユニット4は、制御装置ユニット5に対して継続治療のコマンドを送信し、ステップ2に戻る。ステップS2において、継続治療のコマンドにより、制御装置ユニット5は、駆動ユニット6および機械式駆動ユニット7を制御して、高強度集束超音波を放射およびスキャンすることを超音波トランスデューサに継続、すなわち治療を継続させる。
【0015】
図3および図4は、治療前後の同一肝臓組織に対するB−モード超音波画像である。図3は治療前の画像であり、図4は高強度集束超音波療法後の画像である。図4中に示される画像から、我々は、目標領域中の焦点においてグレースケール変化を見い出すことができ、それが解剖された後に、肝臓組織のこの部分が凝固性の壊死になっていること、および治療の要求が満たされていることを我々は見い出すことができる。これにより、治療の効果を評価するために使用されるこの方法が有効であることが証明される。
【0016】
図5および図6は、治療前後の別の肝臓組織に対するB−モード超音波画像である。図5は治療前の画像であり、図6は高強度集束超音波療法後の画像である。結果および現象は、図3および図4の結果および現象と同一である。ここでは、その結果および現象を繰り返さない。
【0017】
上述したように、目標領域の画像のグレースケール変化を計算することにより、治療中にリアルタイムで治療の効果を評価することができ、評価結果にしたがって、高強度集束超音波の線量を調整することができる。不十分な線量のために腫瘍組織を有効に消滅させないかもしれないこと、または過度の線量のために正常組織を破壊するかもしれないということを回避できる。
【0018】
本発明の精神または本質的な特性から逸脱することなく他の特定の形態で本発明を具体化してもよい。記述した実施形態は、本発明の特定の実施形態である。これらの実施形態は、すべての観点において、例示的なものとして、そして限定的ではないものとして考えるべきである。本発明により開示された精神から逸脱しないあらゆる均等物による変更は、本発明の範囲内に包含すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明にしたがった装置のブロック図である。
【図2】図2は、本発明にしたがった動作フロー図である。
【図3】図3は、治療前の組織のB−モード超音波画像である。
【図4】図4は、治療後の組織のB−モード超音波画像である。
【図5】図5は、治療前の組織のB−モード超音波画像である。
【図6】図6は、治療後の組織のB−モード超音波画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明の高強度集束超音波療法のための装置において、
治療すべき目標領域に対して高強度集束超音波を放射する超音波トランスデューサと、
治療すべき前記目標領域の位置を突き止め、前記目標領域の画像を取得する画像取得デバイスと、
前記超音波トランスデューサに接続され、治療すべき前記目標領域に対して超音波を放射する前記超音波トランスデューサを駆動する駆動ユニットと、
前記超音波トランスデューサに接続され、治療すべき前記目標領域をスキャンするために、前記超音波トランスデューサおよび画像取得デバイスを機械的に駆動する機械駆動手段と、
画像取得デバイスに接続され、治療前に前記画像取得デバイスにより取得された前記目標領域の元の画像を受信および保存し、高強度集束超音波(HIFU)治療の間のある時間中に前記画像取得デバイスにより取得された前記目標領域の画像を受信および保存し、治療前後の前記目標領域の前記画像にしたがって治療の効果を評価する信号処理ユニットと、
前記信号処理ユニット、前記駆動ユニットおよび前記機械駆動手段にそれぞれ接続され、治療の要求が満たされていると前記信号処理ユニットが判断したとき、前記駆動ユニットおよび前記機械駆動手段を制御して超音波トランスデューサの動作を停止させ、前記治療の要求が満たされていないと前記信号処理ユニットが判断したとき、前記駆動ユニットおよび前記機械駆動手段を制御して前記超音波トランスデューサに動作を継続させる制御ユニットとを具備し、
前記信号処理ユニットは治療前の前記目標領域の前記画像のグレースケールおよび治療後の前記目標領域の前記画像のグレースケールをそれぞれ計算し、治療前後の前記目標領域のこれらの画像のグレースケール変化を計算し、前記グレースケールが5から10まで変化する場合、治療の要求が満たされていることを意味する装置。
【請求項2】
削除
【請求項3】
削除
【請求項4】
前記ある時間は、前記超音波トランスデューサが治療すべき前記目標領域を少なくとも1回スキャンした後の時間を意味する請求項1記載の高強度集束超音波療法のための装置。
【請求項5】
高強度集束超音波療法のための方法において、
元の画像を取得するステップ、すなわち、治療前に治療すべき目標領域の元の画像を受信および取得するステップと、
治療を実行するステップ、すなわち、高強度集束超音波を放射し、前記目標領域に対して、その音波を当てるステップと、
治療の効果を評価するステップ、すなわちHIFU治療の間のある時間中に目標領域の画像を取得および保存し、治療前後の前記目標領域の画像にしたがって治療の効果を評価し、前記治療の要求が満たされているとき、前記目標領域上での治療は停止され、前記治療の要求が満たされていないとき、前記目標領域上での治療は継続されるステップを含み、
前記治療の効果を評価するステップは、治療前の前記目標領域の前記画像のグレースケールおよび治療後の前記目標領域の前記画像のグレースケールをそれぞれ計算し、治療前後の前記目標領域のこれらの画像のグレースケール変化を計算し、前記グレースケールが5から10まで変化する場合、治療の要求が満たされていることを意味する方法。
【請求項6】
削除
【請求項7】
削除
【請求項8】
前記ある時間は、前記超音波トランスデューサが治療すべき前記目標領域を少なくとも1回スキャンした後の時間を意味する請求項5記載の高強度集束超音波療法のための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−526326(P2008−526326A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549778(P2007−549778)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【国際出願番号】PCT/CN2005/001175
【国際公開番号】WO2006/072196
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(507232087)チョンチン・ハイフ(エイチアイエフユー)・テクノロジー・カンパニー・リミテッド (11)
【Fターム(参考)】