説明

高強靭性マグネシウム基合金およびそれを用いた駆動系部品並びに高強靭性マグネシウム基合金素材の製造方法

【課題】 常温での引張強度、破断伸びおよび疲労強度に優れ、同時に200℃付近での高耐熱強度特性を有する高強靭性マグネシウム基合金を提供する。
【解決手段】 高強靭性マグネシウム基合金は、重量基準で1〜8%の希土類元素および1〜6%のカルシウムを含み、素地を構成するマグネシウムの最大結晶粒径が30μm以下である。希土類元素およびカルシウムの少なくともいずれか一方の金属間化合物6は、その最大粒子径が20μm以下であり、素地を構成するマグネシウムの結晶粒界5および結晶粒4の内部に分散している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強靭性マグネシウム基合金に関し、特に常温および200℃程度までの高温下において、優れた静的引張特性、疲労強度、クリープ性能等の強度特性を発揮するとともに、破断伸びといった靭性にも優れている高強靭性マグネシウム基合金に関するものである。このような高強靭性マグネシウム基合金は、自動車用部品、特に高温下で使用されるエンジン部品やミッション部品などに有利に用いられる。
【背景技術】
【0002】
低比重で軽量化効果を期待できるマグネシウム合金は、携帯電話や携帯音響機器の筐体をはじめ、自動車用部品や機械部品、構造用材料等に広く活用されている。特に、自動車用部品において軽量化効果を活かすには運動系・稼動系部品での利用が有効であり、具体的にはピストンを始めとするエンジン系部品や駆動系部品などへの適用が望まれている。
【0003】
ただし、これらの部品・部材には、常温での強度・靭性に加えて、200℃前後での耐熱強度特性も要求される。従来のマグネシウム合金、例えばJIS規格に記載されているAZ91D合金などのMg−Al−Zn−Mn系合金やAM60B合金といったMg−Al−Mn系合金などでは、120℃を超える温度域において強度が低下するため、上記の部品への適用は困難であった。
【0004】
上記の軽量化ニーズに対応すべく、マグネシウム合金の耐熱特性を改善するための合金開発が、積極的に行われている。例えば、マグネシウム国際会議(2003年1月26日〜30日:大阪国際会議場)の講演概要集「Magnesium Alloys 2003」において、Y.Guangyinらは鋳造法によりMg−Al−Zn−Si−Sb−RE系合金を開発し、その合金は150℃において178MPaの引張強さと14%の破断伸びを有することを明らかにした(非特許文献1:Materials Science Forum Vols.419-422(2003)pp.425-432))。しかしながら、本合金は素地を構成するマグネシウムの平均結晶粒径が70μmと比較的大きいために、常温での引張強さは235MPaで、破断伸びは9%となり、上記の部品への適用は困難である。
【0005】
特開2002−129272号公報(特許文献1)においても、150℃程度の耐高温クリープ性に優れたMg−Al−Zn−Ca−RE−Mn系ダイカスト用マグネシウム合金が提案されている。この公報に記載されたマグネシウム合金も、上記のY.Guangyinらの発表と同様に、鋳造法によって製造するので、次のような問題点を指摘できる。
【0006】
(1)マグネシウムの結晶粒が60〜150μmと大きいこと。
【0007】
(2)素地に析出・分散するAl11RE、AlCa、Mg17Al12等の化合物が長さ20〜40μm以上の針状化合物として粗大・成長すること。
【0008】
(3)上記の針状化合物がマグネシウムの結晶粒界に存在し、その生成量が多い場合には粒界に沿ってネットワーク状に存在すること。
【0009】
上記の結果、常温での強度や靭性に劣るといった問題が生じる。さらに、高温での引張特性を改善するために各元素を多量に添加すると、鋳造時の流動性(湯流れ性)や熱間割れ性(高熱割れ)などの問題を生じるために、添加元素の含有量が制約され、更なる耐熱強度特性の向上は見込まれない。例えば、特開2002−129272号公報に記載のダイカスト法によるマグネシウム合金では、重量基準でRE成分は1〜3%、Ca成分は1〜3%、Al成分は0.5〜8%などの範囲で適正含有量が規定されている。
【0010】
特開平8−41576号公報(特許文献2)に開示された高強度マグネシウム合金及びマグネシウム合金鋳物の熱処理方法においては、重量基準でAl成分が1〜4%、RE成分が1〜8%、Ca成分が0.3〜1.3%、Mnが0.1〜2%で、残部がMgである鋳造合金が、優れたクリープ特性を有することが記載されている。さらに必要に応じて本Mg合金に対して、溶体化処理や時効処理といった熱処理を施すことにより、AlやCaの固溶強化およびMg−Ca系化合物による析出強化によって特性向上を図っている。
【0011】
しかしながら、特開平8−41576号公報に開示されたマグネシウム合金は鋳造法によって製造されるので、凝固過程でのMg結晶粒の粗大成長は回避できない。その結果、常温での引張強さは200〜280MPa程度となり、自動車用部品や機械部品、構造用材料への適用は困難である。
【特許文献1】特開2002−129272号公報
【特許文献2】特開平8−41576号公報
【非特許文献1】2003年1月26日〜30日に大阪国際会議場で開催されたマグネシウム国際会議(Magnesium Alloy 2003)の講演概要集中のY.Guangyinらによる発表論文(Materials Science Form Vols.419-422(2002)pp.425-432)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本件発明者は、常温から200℃付近までの温度域におけるマグネシウム合金の強度と靭性(伸び)の両立を図るには、次のことが必要であることを見出した。
【0013】
(1)素地を構成するマグネシウム合金の結晶粒径を小さくすること。
【0014】
(2)耐熱性に優れた化合物を針状ではなく、微細な粒子として均一に析出・分散すること。
【0015】
(3)上記の化合物粒子を、可能な限り、マグネシウムの結晶粒内に分散させること。
【0016】
(4)耐熱性に優れた微細な化合物を多量に析出・分散させるためには、従来の鋳造法あるいはダイカスト法ではなく、粉末やチップなどを出発原料とする塑性加工法を利用した固相(非溶解)製法が有効であること。
【0017】
本発明はこれらの知見に基いてなされたものであり、その目的は、常温での引張強度、破断伸びおよび疲労強度に優れ、同時に200℃付近での高耐熱強度特性を有する高強靭性マグネシウム基合金を提供することである。
【0018】
本発明の他の目的は、上記の優れた特性を有する高強靭性マグネシウム基合金素材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に従った高強靭性マグネシウム基合金は、重量基準で1〜8%の希土類元素および1〜6%のカルシウムを含み、素地を構成するマグネシウムの最大結晶粒径が30μm以下であることを特徴とする。
【0020】
好ましくは、マグネシウム基合金は、希土類元素およびカルシウムの少なくともいずれか一方の金属間化合物を含み、この金属間化合物の最大粒子径が20μm以下である。金属間化合物の一例は、アルミニウムと希土類元素との化合物である。金属間化合物の他の例は、アルミニウムとカルシウムとの化合物である。
【0021】
金属間化合物の最大粒子径をD、最小粒子径をdとすると、好ましくは、D/d≦5である。さらに好ましくは、金属間化合物は、素地を構成するマグネシウムの結晶粒界および結晶粒の内部に分散している。ここで、最大粒子径とは化合物粒子の最大長さを意味し、最小粒子径とは化合物粒子の最小長さを意味する。
【0022】
好ましくは、素地を構成するマグネシウムの最大結晶粒径は、20μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。
【0023】
一つの実施形態として、高強靭性マグネシウム基合金は、重量基準で0.5〜6%の亜鉛、2〜15%のアルミニウム、0.5〜4%のマンガン、1〜8%のシリコン、0.5〜2%の銀からなる元素群から選ばれた少なくとも1種類の元素を含む。
【0024】
本発明に従った高強靭性マグネシウム基合金の機械的特性に注目すると、好ましくは、引張強さ(σ)が350MPa以上で、破断伸び(ε)が5%以上である。また、別の観点から見ると、好ましくは、引張強さ(σ)と破断伸び(ε)との積が、σ×ε≧4000MPa・%である。
希土類元素は、好ましくは、セリウム(Ce)、ランタン(La)、イットリウム(Y)、イッテリビウム(Yb)、ガドリニウム(Gd)、テリビウム(Tb)、スカンジウム(Sc)、サマリウム(Sm)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)からなる群から選ばれた少なくとも1種類の元素を含む。
【0025】
また、一つの実施形態として、高強靭性マグネシウム基合金は、重量基準で1.5〜4%のマンガン、2〜15%のアルミニウムおよび10ppm以下の鉄を含み、Al−Mn化合物の最大粒子径が20μm以下である。ここで、「10ppm以下の鉄」とは、鉄を含まないことをも包含するものとして理解すべきである。
【0026】
上記のような構成を備えた高強靭性マグネシウム基合金によれば、素地は微細な結晶粒径を有するマグネシウムから構成され、その結晶粒内部には微細な粒子状の金属間化合物が均一に析出・分散するといった組識構造を有するので、自動車や自動二輪車のエンジン系もしくは駆動系部品に有利に適用されるものとなる。
【0027】
本発明に従った高強靭性マグネシウム基合金素材の製造方法は、次の工程を備える。
【0028】
(1)重量基準で1〜8%の希土類元素および1〜6%のカルシウムを含むマグネシウム基合金粉体に対して塑性加工を行なうことによって、素地を構成するマグネシウム結晶粒の微細化および素地中に分散する化合物粒子の微細化を行なう工程。
【0029】
(2)微細化処理を行なったマグネシウム基合金粉体を圧縮成形して粉末固化体を作製する工程。
【0030】
(3)粉末固化体を加熱し、直ちに温間押出し加工を行なって合金素材を得る工程。
【0031】
上記に記載した本発明の作用効果等については、以下の「発明を実施するための最良の形態」および「実施例」の項の中で説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
[各添加元素の効果]
(1)希土類元素(RE:Rare Earth)
希土類元素(RE)成分は、素地であるマグネシウムとMg−RE化合物を形成すると共に、添加成分の一例であるアルミニウム(Al)との間でAl−RE化合物を形成する。AlREやAl11REといった化合物は、MgAlやMg17Al12といったMg−Al系化合物に比べて熱安定性に優れているので、これらの微細粒子が素地中に均一に分散することによりマグネシウム合金の耐熱強度特性を向上させることができる。
【0033】
希土類元素(RE)含有量の適正範囲は、重量基準で1〜8%である。希土類元素含有量が1%未満の場合には、耐熱強度特性の向上効果が十分ではない。一方、希土類元素を8%を超えて添加しても、その効果は増加せず、逆に析出する化合物が多くなりすぎて後加工で問題を生じるようになる。すなわち、得られたマグネシウム合金に対してさらに温間鍛造や圧延加工、引抜き加工などの2次加工を施す際に、靭性不足による割れ・亀裂などが発生する。高強度・高靭性と上記の2次加工性を両立させるためのより好ましい希土類元素含有量は、3〜5%である。
【0034】
これらのMg−RE系化合物およびAl−RE系化合物は、通常の鋳造法やダイカスト法によれば、図1に示すように、マグネシウムの結晶粒界(α結晶粒界)に沿って析出し、針状化合物あるいはそれらが連結したネットワーク状化合物として存在する。
【0035】
図1は、鋳造法によって製造したマグネシウム基合金の結晶組織を図解的に示した図である。素地を構成する個々のマグネシウム結晶粒1は粗大であり、結晶粒界2に沿って針状の金属間化合物3が存在している。このように針状金属間化合物3が素地の結晶粒界2に沿って存在すると、マグネシウム基合金の機械的特性の低下を招く。
【0036】
マグネシウム基合金の強度・靭性向上の観点からは、これらの金属間化合物は微細な粒子状化合物として結晶粒内に分散することが望ましい。図2は、後述する本発明の方法、すなわち塑性加工法を利用した固相製法によって製造したマグネシウム基合金の結晶組織を図解的に示した図である。素地を構成する個々のマグネシウム結晶粒4は微細であり、微細な粒子状金属間化合物6は、結晶粒界5および結晶粒4の内部に分散している。このような組織構造をもつマグネシウム基合金は、強度および靭性において優れた特性を発揮する。
【0037】
上記の金属間化合物の大きさに関しては、高強度と高靭性を両立するという観点から、最大粒子径が20μm以下であることが望ましく、より好ましくは10μm以下である。金属間化合物の最大粒子径が20μmを超えると、マグネシウム合金の常温での靭性(例えば、破断伸びや衝撃値)が低下し、特に30μmを超えると靭性低下に伴って強度低下を招く。
【0038】
上記の金属間化合物の形状に関しては、針状よりもむしろ粒子状であることが望ましい。具体的には、化合物粒子の最大粒子径をD、最小粒子径をdとした場合、アスペクト比D/dを5以下とすることにより、高強度と高靭性とを両立することができる。疲労強度の向上の観点からは、D/dを3以下にすることがより好ましい。一方、D/dが5を超えると、マグネシウム合金中の欠陥となり、その部分での応力集中が生じるために靭性の低下を招く。
【0039】
鋳造法やダイカスト法によってα結晶粒界に析出する針状化合物のD/dは5〜20程度であるため、高強度・高靭性が困難であり、また高い疲労強度を得ることも困難である。
【0040】
なお、希土類元素としてセリウム(Ce),ランタン(La),イットリウム(Y),イッテルビウム(Yb),ガドリニウム(Gd),テルビウム(Tb),スカンジウム(Sc),サマリウム(Sm),プラセオジウム(Pr),ネオジウム(Nd)などを用いることができる。また、これらの希土類元素を含むミッシュメタルを用いてもよい。
【0041】
(2)カルシウム(Ca)
カルシウム(Ca)は、添加成分の一例であるアルミニウム(Al)との間でAlCaといったAl−Ca系化合物を形成する。この金属間化合物は、上記のAl−RE系化合物と同様、MgAlやMg17Al12といったMg−Al系化合物に比べて熱安定性に優れているので、これらの微細化合物粒子が素地中に均一に分散することでマグネシウム合金の耐熱強度特性を向上させることができる。また、Znを含有する場合には、Mg−Zn−Ca系化合物を形成し、これもAlCaと同様に、耐熱強度特性の向上に寄与する。
【0042】
適正なカルシウム含有量は、重量基準で、1〜6%である。カルシウム含有量が1%未満では耐熱強度特性の向上効果は十分ではない。カルシウムを6%を超えて添加しても、その効果は増加せず、逆に析出する化合物が多くなりすぎて後加工で問題を生じるようになる。すなわち、得られたマグネシウム合金に対してさらに温間鍛造や圧延加工、引抜き加工などの2次加工を施す際に、靭性不足による割れ・亀裂などが発生する。高強度・高靭性と上記の2次加工性を両立させるためのより好ましいカルシウム含有量は、2〜5%である。
【0043】
Al−Ca系化合物およびMg−Zn−Ca系化合物も、通常の鋳造法やダイカスト法によれば、マグネシウムの結晶粒界(α結晶粒界)に沿って析出し、針状化合物あるいはそれらが連結したネットワーク状化合物として存在する。その結果、マグネシウム基合金の機械的特性の低下を招く。そこで本発明では、上述の通り、粉末化あるいは塊状化した出発原料を塑性加工によって固化する際に強加工歪を付与することにより、針状あるいはネットワーク状のAl−Ca系化合物およびMg−Zn−Ca系化合物を微細に粉砕し、図2に示すようにマグネシウムの結晶粒界および結晶粒の内部に均一に分散させる。
【0044】
上記の金属間化合物の大きさに関しては、高強度と高靭性を両立するという観点から最大粒子径が20μm以下であることが望ましく、より好ましくは10μm以下である。金属間化合物の最大粒子径が20μmを超えると、マグネシウム合金の常温での靭性(例えば、破断伸びや衝撃値)が低下し、特に30μmを超えると靭性低下に伴って強度低下を招く。
【0045】
上記の金属間化合物の形状に関しては、針状よりもむしろ粒子状であることが望ましい。具体的には化合物粒子の最大粒子径をD、最小粒子径をdとした場合、アスペクト比D/dを5以下とすることにより、高強度と高靭性とを両立させることができる。疲労強度の向上の観点からは、D/dを3以下にすることがより好ましい。逆に、D/dが5を超えると、マグネシウム合金中の欠陥となり、その部分での応力集中が生じるために靭性の低下を招く。鋳造法やダイカスト法によってα結晶粒界に析出する針状化合物のD/dは5〜20程度であるため、高強度・高靭性が困難であり、また高い疲労強度を得ることも困難である。
【0046】
(3)アルミニウム(Al)
アルミニウム(Al)は、素地のマグネシウムとMg−Al系化合物を生成すると共に、Mg−Zn−Al系化合物を生成する。後者は耐熱性に優れることから、素地中に微細に析出・分散することにより、マグネシウム合金の耐熱強度特性の向上に寄与する。このような効果を発現するためには、重量基準でAl添加量は2%以上必要である。他方、15%を超えて添加すると、インゴットを作製する過程でインゴットに割れや亀裂が生じて生産性および歩留りの低下を招く。ゆえに、本発明のマグネシウム合金におけるAl成分の適正な含有量は、2〜15%であり、高強度・高靭性と前述の2次加工性との両立の観点から、より好ましい範囲は6〜12%である。
【0047】
(4)亜鉛(Zn)
亜鉛(Zn)は素地のマグネシウムとMg−Zn化合物を生成するが、この2元系化合物は熱安定性に劣るため、かえってマグネシウム合金の耐熱強度特性を低下させる。しかしながら、前述の通り、Alを添加することで耐熱性に優れたMg−Zn−Al系化合物あるいはMg−Zn−Ca系化合物を生成し、さらには後述する素地への固溶強化などによってマグネシウム合金の耐熱強度特性および常温での機械的特性の向上に寄与する。本発明のマグネシウム合金におけるZn成分の適正な含有量は、重量基準で0.5〜6%であり、0.5%未満では上記の効果は十分ではなく、一方、含有量が6%を越えるとマグネシウム合金の靭性低下を招く。
【0048】
(5)マンガン(Mn)
マンガン(Mn)は、素地のマグネシウムに固溶し、その固溶強化によって機械的特性、特に耐力の向上に寄与する。本発明のマグネシウム合金におけるMn成分の適正な含有量は重量基準で0.5〜4%である。0.5%未満では上記の効果は十分ではなく、一方、4%を超えるとマグネシウム合金の靭性低下を招く。
【0049】
Mn含有量が1.5〜4%の場合において、好ましくは、マグネシウム基合金中のFe含有量が10ppm以下、より好ましくは3ppm以下であり、同時にAl−Mn化合物の最大粒子径が20μm以下、より好ましくは10μm以下である。
【0050】
Mnの多量添加により鋳造マグネシウムインゴットにおいて、耐食性を低下させるFeの含有量が減少し、マグネシウム合金の耐腐食性が向上する。しかしながら、多量のMn添加(例えば1%以上)では、Al−Mn化合物が粗大化(例えば、20〜80μm程度)し、マグネシウム合金の機械的特性や加工性が低下する。
【0051】
ところが、後述する本発明の機械的な粉砕・微細化プロセスを用いることにより、前述した組織、すなわちAl−Mn化合物の最大粒子径が20μm以下、より好ましくは10μm以下となった組織を実現でき、耐腐食性と機械的特性のバランスが取れたマグネシウム基合金を得ることが可能になる。
【0052】
(6)銀(Ag)
銀(Ag)は素地のマグネシウムに固溶し、その固溶強化によって機械的特性、特に耐力の向上に寄与する。本発明のマグネシウム合金におけるAg成分の適正な含有量は、重量基準で0.5〜2%である。0.5%未満では上記の効果は十分ではなく、一方、2%を超えると、マグネシウム合金の靭性低下を招く。
【0053】
(7)シリコン(Si)
シリコン(Si)は、素地のマグネシウムと反応してマグネシウムシリサイド(MgSi)を生成する。このマグネシウムシリサイドは、高剛性・高硬度・高耐腐食性を有することから、素地中に分散することでマグネシウム合金においてもこれらの特性を向上させる効果がある。重量基準でSi含有量が1%未満の場合、これらの効果が十分ではなく、他方、8%を越えるとマグネシウム合金の靭性、例えば引張特性における伸びなどが著しく低下すると同時に、切削加工における工具摩耗およびそれに伴う素材表面粗度の低下が生じる。
[素地のマグネシウムの最大結晶粒径]
本発明のマグネシウム合金では、素地を構成するマグネシウム結晶粒の微細化により、強度のみならず、靭性も向上できる。具体的にはマグネシウムの最大結晶粒径が30μm以下であれば、常温において350MPa以上の引張強さと、5%以上の破断伸びとを有するような高強靭性マグネシウム合金となることを見出した。特に、最大結晶粒径が20μm以下の場合には、400MPaを超える高強度を発現することを明らかとした。さらに、マグネシウムの最大結晶粒径が10μmを下回る場合には、Mg原料粉体が塑性加工される過程でその集合組識の無秩序化も進行することで、Mg合金が高靭性を発現すると同時に、低温での曲げ・プレス加工性が向上することを明らかにした。
【0054】
[高強靭性マグネシウム基合金素材の製造方法]
図3は、本発明に従った高強靭性マグネシウム基合金素材の製造工程を示している。この図を参照しながら、本発明の方法をより具体的に説明する。
【0055】
(1)原料粉体の準備
所定の成分組成を有するマグネシウム合金インゴットを鋳造法で作製する。所定の成分組成とは、少なくとも、重量基準で1〜8%の希土類元素および1〜6%のカルシウムを含むものであり、必要に応じて、0.5〜6%の亜鉛、2〜15%のアルミニウム、0.5〜4%のマンガン、1〜8%のシリコン、0.5〜2%の銀からなる元素群から選ばれた少なくとも1種類の元素を含むようにする。
【0056】
鋳造法で作製したマグネシウム合金インゴットから切削加工または粉砕加工等の機械的加工法により、粉末、塊状粒子、チップ等を取り出し、出発原料粉体として用いる。
【0057】
(2)結晶粒の微細化および化合物粒子の微細化
粉末固化体を作製するのに先立ち、出発原料粉体に対して圧縮成形、押出し加工、鍛造加工、圧延加工などの塑性加工を行なうことによって、素地を構成するマグネシウム結晶粒の微細化および素地中に分散する化合物粒子の微細化を行ない、図2に示したような結晶組織を得る。
【0058】
出発原料に対して強加工歪を付与することにより、針状あるいはネットワーク状の金属間化合物(例えば、Mg−RE系化合物やAl−RE系化合物)を微細に粉砕し、素地を構成するマグネシウム結晶粒の内部に均一に分散するようにする。
【0059】
マグネシウム合金原料粉体に対して強加工歪を付与する方法としては、金型等に粉末を充填した状態で圧縮や押出し、あるいはせん断加工、曲げ加工、回転せん断加工等を付与する方法や、粉末を圧延する方法、またボールミル等によって粉砕加工を行う方法などが有効である。上記の金属間化合物およびマグネシウム結晶粒を効率的に微細粒化するため、これらの塑性加工方法を100〜300℃程度の温間領域で実施することが好ましい。
【0060】
図4は、出発原料粉体10に対して塑性加工を繰返し行い、最終的に粉末固化体20を得るまでの工程の一例を示している。この図を参照して、強加工歪を付与する方法の一例を説明する。
【0061】
まず、図4(a)に示すように、金型臼11と下パンチ12とで形成された器に出発原料粉体10を充填する。次に、図4(b)に示すように、圧縮用上パンチ13を金型臼11内に下降させて、原料粉体10を圧縮する。次に。図4(c)および(d)に示すように、圧縮用上パンチ13を退避させた後、押込用上パンチ14を圧縮された原料粉体10中に押込む。この押込用上パンチ14の押込みにより、圧縮された原料粉体10が後方(図中、矢印Bで示す方向)に押出され、強加工歪が付与される。
【0062】
次に、図4(e)および(f)に示すように、押込用上パンチ14を退避させた後、再度圧縮用上パンチ13により断面U字形状となった圧縮原料粉体10を圧縮する。この圧縮加工により、金型臼11の内壁面に沿って存在する原料粉体10が金型臼1の内側(図中、矢印Cで示す方向)に回り込む。
【0063】
図4(b)〜(f)で示すような一連の加工を繰り返して行なうことにより、原料粉体は機械的に粉砕され、かつ素地を構成するマグネシウム結晶粒は微細化する。同時に、金属間化合物も微細に粉砕され、マグネシウム結晶粒の内部に分散するようになる。
【0064】
(3)粉末固化体の作製
図4(g)に示すように、マグネシウム基合金原料粉体10に対して必要な塑性加工を施して微細化処理を行なった後に、圧縮成形して粉末固化体20を作製する。
【0065】
(4)加熱および温間押出し
上記のようにして得られた粉末固化体を例えば300〜520℃の温度で30秒間保持して加熱した後、直ちに例えば押出比37、型温度400℃の条件で温間押出し加工を行い、棒状素材を得る。このような温間押出し加工により、マグネシウム結晶粒および化合物粒子の微細化がより促進される。具体的には、押出しによる塑性加工によって化合物粒子が機械的に分断され、より微細粒化するとともに、加工および熱処理によりマグネシウム結晶粒が動的再結晶し、より微細になる。
【0066】
[マグネシウム基合金の機械的特性]
本発明のマグネシウム基合金は、常温から200℃程度までの温度域において優れた強度と靭性を有することから、自動車や自動二輪車などのエンジン系部品あるいはトランスミッション系部品として利用可能である。上記のような本発明が規定する適正な成分元素を含み、かつ素地のマグネシウムが適正範囲を満足する結晶粒径を有する場合、常温での引張強さ(σ)が350MPa以上で、破断伸び(ε)が5%以上を発現する。より好ましくは、400MPa以上の引張強さを有する。また、引張強さ(σ)と破断伸び(ε)との積が、σ×ε≧4000MPa・%の高強靭性を発現するマグネシウム合金が得られる。
【0067】
他方、常温での引張強さ(σ)が350MPa以上で、破断伸び(ε)が5%以上であることを満足し、および/またはσ×ε≧4000MPa・%を満足するマグネシウム基合金であれば、ピストンやシリンダーライナー、コンロッドなどの自動車あるいは自動二輪者に用いる駆動系部品として利用可能なものとなる。
【実施例1】
【0068】
表1に記載の合金組成を有するマグネシウム基合金粉体(粒子径:0.5〜2mm)を準備し、各粉末を金型に充填した後、圧縮成形によって粉末固化体を作製した。この各固化体を不活性ガス雰囲気中で400〜480℃の温度域で5分間、加熱保持した後、直ちに温間押出加工を施すことで押出素材(直径7.2mmφ)を作製した。
【0069】
上記のように作製した各素材について、研磨・化学エッチングの後に押出方向の組識観察を行い、画像解析によって素地のマグネシウムの最大結晶粒径を測定した。また各押出素材から丸棒引張試験片(直径3mmφ、平行部15mm)を採取し、常温および150℃で引張試験を行った。引張速度は0.3mm/minで一定とし、また150℃での引張試験においては事前に試験片を150℃で100時間加熱保持した後に試験に供した。
【0070】
これらの特性評価結果を表1に示している。素地の結晶粒微細化に関しては、マグネシウム基合金粉体を100〜300℃の温度に加熱保持した状態でプレス成形やロール圧延などにより塑性加工(圧縮・押出・剪断加工など)を付与することで、異なる結晶粒径を有するマグネシウム基合金粉体を作製した。また比較例19に関しては、押出材に対して不活性ガス雰囲気中で400℃×20hの熱処理を施すことで結晶粒の粗大化を行った。
【0071】
実施例1〜11おいては、本発明が規定する適正な合金組成およびMg最大結晶粒径を有する押出材であり、常温での優れた機械的特性を有している。特に、実施例10および11に示すようにMgの最大結晶粒径が10μmを下回ると、強度向上のみならず、伸び(靭性)も改善される。
【0072】
他方、比較例12〜18においては、本発明が規定する合金組成を有さないので、押出材は十分な強度を有していない。特に、比較例14および15においては、REまたはCaの含有量が適正範囲を超えているために、靭性低下を誘発し、その結果、引張強度も低下している。比較例19においては、Mg最大結晶粒径が66.8μmと大きいために、十分な強度特性が得られていない。
【0073】
【表1】

【実施例2】
【0074】
表1に示した実施例9、実施例11および比較例16の組織写真を図5に示す。これらの組織写真を比較観察すれば、実施例9および実施例11の押出材のマグネシウム結晶粒が微細化されていることが明瞭にわかる。
【実施例3】
【0075】
鋳造法により重量基準でRE;3.5%、Ca;1.5%、Zn;0.8%、Al;7%、Mn;0.5%、Mg;残部からなるインゴットを作製し、この素材から切削加工によりマグネシウム基合金粉体(粒子径;0.5〜1.5mm)を採取した。このMg合金粉体を150℃に加熱した状態でロール圧延を行うことにより、粉体におけるMg結晶粒の微細化および素地中に分散する化合物の微細粒化を行った。このような温間塑性加工を施したMg合金粉体を金型成形により固化した後、不活性ガス雰囲気中で420℃×5min.の加熱処理を行い、直ちに温間押出加工(押出比20)を行った。
【0076】
他方、比較例として上記のロール圧延加工を施すことなく、切削加工によって得られたMg合金粉体を直接、金型成形し、同一条件で加熱・温間押出加工を行って押出素材を作製した。実施例の押出材の常温における引張強さは397MPa、破断伸びは11.4%であった。他方、比較例の押出材においては、引張強さが316MPa、破断伸びが6.5%であった。
【0077】
それぞれの押出材の組織を図6に示す。図6の(a)の実施例においては、素地中に分散する化合物(ここではAlCaおよびMg17Al12)は球状あるいはそれに近い形状を呈しており、Mg結晶粒の粒界および粒内に均一に分散している。画像解析の結果、これらの化合物における最大粒子径Dと最小粒子径dの比(D/d)は1.2〜2.4であり、また最大粒子径は3.8μmであった。
【0078】
他方、図6の(b)の比較例においては、Mg結晶粒界に沿って連結したネットワーク状の化合物(AlCaおよびMg17Al12)が存在しており、同様に画像解析を行った結果、D/d値が10を超える高い値を有し、しかも長径が30μmを超える粗大な金属間化合物であることを確認した。
【実施例4】
【0079】
表2に記載の試料No.1〜4および8の合金組成を有するマグネシウム基合金粉体(粒子径;0.5〜2mm)を準備し、各粉末を150℃付近に加熱した状態でせん断・圧縮加工を施して粉体素地中のMg結晶粒および析出・分散化合物を微細化した後、金型に充填して圧縮成形によって粉末固化体を作製した。各固化体を不活性ガス雰囲気中にて400℃で5分間、加熱保持した後、直ちに温間押出加工を施すことにより押出素材(直径7.2mmφ)を作製した。
【0080】
試料No.5〜7のマグネシウム基合金は、鋳造法によって作製したインゴット素材である。
【0081】
各素材について研磨・化学エッチングの後に押出方向の組識観察を行い、画像解析によってMg素地の最大結晶粒径およびAl−Mn系化合物の最大粒子径を測定した。
【0082】
また各押出素材から丸棒引張試験片(直径3mmφ、平行部15mm)を採取し、常温および150℃で引張試験を行った。引張速度は0.3mm/minで一定とした。
【0083】
さらに、各試料の耐腐食性を評価すべく、押出材から直径6.8mmφ、長さ80mmの円柱試料を採取し、これをpH10の濃度5%NaCl水溶液中(溶液温度;35℃)に72時間浸漬した後の試験前後での重量減少量から腐食速度(mg/cm)を算出した。これらの特性評価結果を表2に示す。
【0084】
実施例1〜4においては、本発明が規定する適正な合金組成およびMg最大結晶粒径を有する押出材であり、常温での優れた機械的特性と耐腐食性を有している。特に、Mn含有量が1.5%以上の範囲でその含有量が増加するにつれてMg合金中のFe含有量も減少し、その結果、耐腐食性が向上(腐食速度が低下)している。また引張強度もMn含有量の増加につれて増大しており、これは10μm以下に微細化されたAl−Mn系化合物の分散強化によるものである。
【0085】
他方、比較例5〜7においては、鋳造法により作製した素材であり、本発明が規定するMg結晶粒径を有さないために十分な機械的特性を有さない。同時に、Al−Mn系化合物もその粒子径が30μmを超えて粗大化しているためにMg合金の強度および靭性の低下を招く原因の一つとなっている。
一方、比較例8においては、20μm以下のMg結晶粒径を有することで優れた機械的特性を有するが、Mnを含まないためにFe含有量が135ppmと増大し、その結果、Mg合金の耐腐食性が著しく低下する。
【0086】
【表2】

【0087】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0088】
この発明は、常温および200℃程度までの高温下において優れた強度特性および優れた靭性を発揮するマグネシウム基合金として利用されるものである。特に、本発明に従った高強靭性マグネシウム基合金は、微細な結晶粒径を有するマグネシウム素地を備え、かつその結晶粒内部に微細な粒子状の金属間化合物を均一に析出・分散した組識構造を有しているので、自動車や自動二輪車のエンジン系もしくは駆動系部品に有利に適用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】鋳造法によって製造したマグネシウム基合金の結晶組織を図解的に示した図である。
【図2】塑性加工法を利用した固相製法によって製造したマグネシウム基合金の結晶組織を図解的に示した図である。
【図3】本発明に従った高強靭性マグネシウム基合金素材の製造工程を示す図である。
【図4】出発原料粉体に対して塑性加工を繰返し行い、最終的に粉末固化体を得るまでの工程の一例を示す図である。
【図5】表1に示した実施例9、実施例11および比較例16の組織写真である。
【図6】押出材の組織写真である。
【符号の説明】
【0090】
1 マグネシウム結晶粒、2 結晶粒界、3 金属間化合物、4 マグネシウム結晶粒、5 結晶粒界、6 金属間化合物、10 出発原料粉体、11 金型臼、12 下パンチ、13 圧縮用上パンチ、14 押込用上パンチ、20 粉末固化体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量基準で1〜8%の希土類元素および1〜6%のカルシウムを含み、素地を構成するマグネシウムの最大結晶粒径が30μm以下であることを特徴とする、高強靭性マグネシウム基合金。
【請求項2】
前記希土類元素および前記カルシウムの少なくともいずれか一方の金属間化合物を含み、この金属間化合物の最大粒子径が20μm以下である、請求項1に記載の高強靭性マグネシウム基合金。
【請求項3】
前記金属間化合物は、アルミニウムと希土類元素との化合物である、請求項2に記載の高強靭性マグネシウム基合金。
【請求項4】
前記金属間化合物は、アルミニウムとカルシウムとの化合物である、請求項2に記載の高強靭性マグネシウム基合金。
【請求項5】
前記金属間化合物の最大粒子径をD、最小粒子径をdとすると、D/d≦5である、請求項2〜4のいずれかに記載の高強靭性マグネシウム基合金。
【請求項6】
前記金属間化合物は、前記素地を構成するマグネシウムの結晶粒界および結晶粒の内部に分散している、請求項2〜5のいずれかに記載の高強靭性マグネシウム基合金。
【請求項7】
前記素地を構成するマグネシウムの最大結晶粒径が20μm以下である、請求項1〜6のいずれかに記載の高強靭性マグネシウム基合金。
【請求項8】
前記素地を構成するマグネシウムの最大結晶粒径が10μm以下である、請求項1〜6のいずれかに記載の高強靭性マグネシウム基合金。
【請求項9】
重量基準で0.5〜6%の亜鉛、2〜15%のアルミニウム、0.5〜4%のマンガン、1〜8%のシリコン、0.5〜2%の銀からなる元素群から選ばれた少なくとも1種類の元素を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の高強靭性マグネシウム基合金。
【請求項10】
引張強さ(σ)が350MPa以上で、破断伸び(ε)が5%以上である、請求項1〜9のいずれかに記載の高強靭性マグネシウム基合金。
【請求項11】
引張強さ(σ)と破断伸び(ε)との積が、σ×ε≧4000MPa・%である、請求項1〜10のいずれかに記載の高強靭性マグネシウム基合金。
【請求項12】
前記希土類元素は、セリウム(Ce)、ランタン(La)、イットリウム(Y)、イッテリビウム(Yb)、ガドリニウム(Gd)、テリビウム(Tb)、スカンジウム(Sc)、サマリウム(Sm)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)からなる群から選ばれた少なくとも1種類の元素を含む、請求項1〜10のいずれかに記載の高強靭性マグネシウム基合金。
【請求項13】
重量基準で1.5〜4%のマンガン、2〜15%のアルミニウムおよび10ppm以下の鉄を含み、Al−Mn化合物の最大粒子径が20μm以下である、請求項1〜12に記載の高強靭性マグネシウム基合金。
【請求項14】
請求項1〜13に記載の高強靭性マグネシウム基合金を用いた自動車または自動二輪車用駆動系部品。
【請求項15】
重量基準で1〜8%の希土類元素および1〜6%のカルシウムを含むマグネシウム基合金粉体に対して塑性加工を行なうことによって、素地を構成するマグネシウム結晶粒の微細化および素地中に分散する化合物粒子の微細化を行なう工程と、
前記微細化処理を行なったマグネシウム基合金粉体を圧縮成形して粉末固化体を作製する工程と、
前記粉末固化体を加熱し、直ちに温間押出し加工を行なって合金素材を得る工程とを備えた、高強靭性マグネシウム基合金素材の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−2184(P2006−2184A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177413(P2004−177413)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年(平成16年)5月30日 社団法人軽金属学会発行の「軽金属学会第106回春期大会講演概要集(2004)」に発表
【出願人】(899000024)株式会社東京大学TLO (50)
【Fターム(参考)】