説明

高所作業車の安全装置

【課題】本発明は、作業台6が規制領域Sに位置した時に作業台6の移動を停止させるようにした高所作業車の安全装置であって、伸縮ブーム3の状態によって作業台6の位置が異なっ状態から規制領域Sに位置させて作業台6を停止させても規制領域Sに対する停止位置が同じ位置で停止し、作業台6が規制領域Sに位置しないで規制領域Sに近接して移動する場合には不必要に減速させない、高所作業車の安全装置を提供する。
【解決手段】平面視における作業台6から規制領域Sまでの最短距離Lと、平面視における作業台6の移動速度ベクトルのうち規制領域Sにかかる規制境界線に直交する方向のベクトル成分Kを算出し、前記距離Lと前記ベクトル成分Kに基づく関数に応じて、作業台6の移動速度を減速させるようにしたもの。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高所作業車の安全装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の高所作業車は、図4に図示するように車両1上に旋回可能に旋回台2を配置し、旋回台2に起伏可能に伸縮ブーム3を配置している。車両1と旋回台2間には適宜の旋回駆動手段を配置し、車両1に対して旋回台2を旋回駆動可能にしてある。伸縮ブーム3は、基ブーム3aに中間ブーム3bを、中間ブーム3bに先ブーム3cを順次伸縮自在に嵌挿させ、各ブーム間には伸縮用油圧シリンダ等の適宜伸縮駆動手段を配置し、適宜伸縮ブーム3を伸縮駆動させるようにしている。基ブーム3aと旋回台2の適所間には伸縮ブーム3を起伏駆動させる起伏駆動手段(起伏用油圧シリンダ4)を配置している。伸縮ブーム3の先端部には、垂直維持装置により伸縮ブーム3の起伏動に関係なく常に鉛直姿勢を維持するよう垂直維持部材5を配置している。垂直維持部材5に首振り可能に作業台6を配置し、垂直維持部材5と作業台6間には適宜の首振り駆動手段を配置している。作業台6上には各駆動手段を駆動操作する各操作レバー7,7,…を配置してある。車両1の前後左右にそれぞれジャッキ8,8…を配置し、当該ジャッキ8,8…は、作業時に車幅より側方に張出して車両を安定支持させ、車両の走行時に車幅内に格納するようにしている。
【0003】
このような高所作業車は、適宜各操作レバー7,7,…を操作することで各駆動手段を駆動して作業台6を目的の高所に位置させ、作業台6に搭乗した作業者により高所作業をするものである。
【0004】
ところで、このような高所作業車は、一般道路上の路側に寄せて設置して行う作業現場が多い。したがって、図5および図6に図示するように、車側縁に沿った規制領域Sを設け、この規制領域Sから作業台6がはみ出さないようにして、設置した高所作業車の側方を走行する車に接触しないようにした高所作業車の安全装置が公知である。(例えば特開2001−180900公報)
【0005】
【特許文献1】
特開2001−180900公報
【0006】
【発明が解決しょうとする課題】
ところで、上記高所作業車の安全装置は、次のような課題を有している。例えば、図5に図示するように、伸縮ブーム3を旋回駆動させて作業台6を規制領域S方向に移動させる場合に、平面視における作業台6の位置が規制領域Sに位置した時に停止させるのであるが、伸縮ブーム3により作業半径を大きくしている場合と、小さくしている場合とでは、作業台6の停止位置が規制領域Sの規制境界線Nに対して同じ位置で停止しない。すなわち、作業半径が大のときには作業台6の側縁が規制境界線Nから離間した規制領域S内の位置で停止し、作業半径が小のときには作業台6の側縁が規制境界線Nに略近接して停止する。これは、図5に図示するように、同じ旋回速度で同じ停止時間をかけて停止させた場合、作業半径の相違により規制領域S方向への旋回速度ベクトル成分K1,K2の大きさが異なることに起因して、上記のように作業台6の停止位置が相違するのである。
【0007】
このことは、伸縮ブーム3を旋回駆動させる場合だけでなく、同様に他の油圧アクチュエーチを駆動する場合も同じである。例えば、伸縮ブーム3を伸縮駆動させる場合には、図6R>6に図示するように、伸縮ブーム3を伸長させて作業台6を同じ伸縮速度で同じ停止時間をかけて停止させた場合に、平面視における規制領域S方向への伸縮ブームの伸長速度ベクトル成分Kが大きいか、小さいか、によって作業台6の停止位置が規制領域Sの規制境界線Nに対して同じ位置で停止しない。すなわち、図6に図示する場合では、伸縮ブーム3の作業半径が小さい場合の方が大きい場合に比較して作業台6の側縁が規制領域S内の規制境界線Nから離間した規制領域S内の位置で停止する。
【0008】
そこで、規制領域Sの手前に減速線Lを設け、減速線Lから規制領域Sまでに減速領域Mを備え、作業台6が減速領域Mに位置している時には、作業台6が規制領域Sに近づくにつれて作業台6の移動速度を減速させるようにした高所作業車の安全装置が考えられている。すなわち、作業台6が減速線Lに位置すると、作業台6の移動速度を減速させるようにしているものだから、作業台6が規制領域Sに位置すると作業台6の移動を即停止させることができ、作業台6の側縁が規制領域Sの規制境界線Nに略位置して停止し、上記作業台6の停止位置の相違をなくするよう対応させたものである。
【0009】
ところが、この場合次のような課題を有している。例えば図7に図示するように、伸縮ブーム3を旋回操作して途中作業台6が減速領域Mに位置するが、伸縮ブーム3をこのまま旋回し続けても規制領域S内に作業台6が位置しない場合であっても、伸縮ブーム3の旋回速度は減速領域M内で減速させてしまうことになり、不必要に作業台6の移動速度を遅くしてしまうこととなり、場合によっては操作性を悪くするものである。
【0010】
本発明は、伸縮ブーム3の状態によって作業台6の位置が異なっ状態から規制領域Sに位置して作業台6を停止させても規制領域Sに対する停止位置が同じ位置で停止し、作業台6が規制領域Sに位置しないで規制領域Sに近接して移動する場合には不必要に減速させない、高所作業車の安全装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の請求項1記載の高所作業車の安全装置は、車両上に旋回および起伏可能に伸縮ブームを配置し、伸縮ブームの先端部に首振り可能に作業台を備えた高所作業車に、作業台を移動させる際に操作する各操作手段と、各操作手段からの操作信号に基づいて作業台を移動させる制御信号を出力する制御出力手段と、制御出力手段からの信号に基づいて作業台を移動させる各駆動手段と、車体に対する作業台の位置を検出する作業台位置検出手段と、車体に対する所定の規制領域を設定記憶した規制領域記憶手段と、作業台位置検出手段と規制領域記憶手段からの信号を受けて作業台が所定の規制領域に位置しているか否かを判別する判別手段と、判別手段により作業台が所定の規制領域に位置していると判別されたときに警報する警報手段または作業台の移動を規制する規制手段とを備えた高所作業車の安全装置であって、
前記作業台位置検出手段と前記規制領域記憶手段からの信号を受け平面視における作業台から規制領域までの最短距離を算出する距離算出手段と、前記作業台位置検出手段と前記規制領域記憶手段および各操作手段からの信号を受け平面視における作業台の移動速度ベクトルのうち規制領域にかかる規制境界線に直交する方向のベクトル成分を算出するベクトル成分算出手段と、両算出手段からの信号を受け前記距離と前記ベクトル成分に基づく関数に応じて、前記制御出力手段から各駆動手段に出力される信号を規制して作業台の移動速度を減速させる減速制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項2の高所作業車の安全装置は、請求項1において、前記減速制御手段の関数は、距離が所定距離以内に達した時に距離と前記ベクトル成分に基づき前記制御出力手段から各駆動手段に出力される信号を規制して作業台の移動速度を減速させるように構成していることを特徴とするものである。
【0013】
請求項3の高所作業車の安全装置は、請求項2において、前記減速制御手段の関数は、距離が小さいほど、前記ベクトル成分の大きさが大きいほど作業台の移動速度の減速を大きくするよう前記制御出力手段から各駆動手段に出力される信号を規制するよう構成してあることを特徴とするものである。
【0014】
請求項4の高所作業車の安全装置は、請求項1乃至請求項3において、前記作業台位置検出手段は、伸縮ブームの旋回角、起伏角、ブーム長さ、作業台の首振り角を検出する各検出器と、各検出器からの信号で作業台位置を算出する作業台位置演算手段とで検出するよう構成したことを特徴とするものである。
【0015】
請求項5の高所作業車の安全装置は、請求項1乃至請求項4において、前記規制領域記憶手段は、車側縁または車両前後縁に沿って規制領域を予め設定記憶させて構成したことを特徴とするものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下本発明に係る高所作業車の安全装置の実施形態について、図1および図2に図示し以下に説明する。なお、本発明の高所作業車の安全装置の実施形態を説明するにあたって、従来の技術で説明した高所作業車に本発明の高所作業車の安全装置を備えた場合を以下に説明するので、従来の技術で使用し説明した符号1〜符号8、符号3a〜符号3cは、同じものとして同符号を使用し詳細な説明は省略する。
【0017】
図1において、20は、伸縮操作手段であって、操作レバー7を有し、当該操作レバー7を操作することで伸縮ブーム3を伸縮させる操作手段である。21は、起伏操作手段であって、操作レバー7を有し、当該操作レバー7を操作することで伸縮ブーム3を起伏させる操作手段である。22は、旋回操作手段であって、操作レバー7を有し、当該操作レバー7を操作することで旋回台2を旋回させる操作手段である。23は、首振り操作手段であって、操作レバー7を有し、当該操作レバー7を操作することで作業台6を首振りさせる操作手段である。24は、水平操作手段であって、操作レバー7を有し、当該操作レバー7を操作することで作業台6を操作方向に水平移動操作させる操作手段である。25は、垂直操作手段であって、操作レバー7を有し、当該操作レバー7を操作することで作業台6を操作方向に垂直移動操作させる操作手段である。
【0018】
26は、制御出力手段であって、各操作手段からの信号を受け、各操作手段からの操作信号に基づいて次に説明する各駆動手段に操作信号を出力する。27は、伸縮駆動手段であって、制御出力手段26からの伸縮操作に基づく操作信号により、伸縮ブーム3を伸縮させる伸縮用油圧シリンダ等(図示しない)を駆動制御する駆動手段である。28は、起伏駆動手段であって、制御出力手段26からの起伏操作に基づく操作信号により、伸縮ブーム3を起伏させる起伏用油圧シリンダ4を駆動制御する駆動手段である。29は、旋回駆動手段であって、制御出力手段26からの旋回操作に基づく操作信号により、旋回台2を旋回させる旋回駆動装置(図示しない)を駆動制御する駆動手段である。30は、首振り駆動手段であって、制御出力手段26からの首振り操作に基づく操作信号により、作業台6を首振りさせる首振り駆動装置(図示しない)を駆動制御する駆動手段である。
【0019】
なお、制御出力手段26は、各操作手段に対応した操作信号を各駆動手段に出力するものであるが、水平操作手段24と垂直操作手段25からの信号に基づいては操作方向に基づく操作方向と操作量より、作業台6を操作方向に操作量に基づく速度で移動させるように適宜複数の各駆動手段27〜30に制御信号を出力させるようになっている。
【0020】
31は、作業台位置検出手段であって、作業台6の位置を検出する手段であって、次の各検出器と演算手段で構成している。32は、旋回角検出器であって、車両1に対する旋回台2の旋回角を検出する検出器である。33は、起伏角検出器であって、伸縮ブーム3の起伏角を検出する検出器である。34は、ブーム長さ検出器であって、伸縮ブーム3のブーム長さを検出する検出器である。35は、首振り角検出器であって、伸縮ブーム3の先端部に配置した垂直維持部材5に首振り可能に取付けられた作業台6の首振り角を検出する検出器である。
【0021】
なお、上記各検出器は、高所作業車の他の安全装置の検出器として備えたものと兼用したものでよい。
【0022】
36は、作業台位置演算手段であって、前記各検出器からの信号を受け、作業台6の位置を演算して算出する手段である。特に、作業台位置演算手段36は、作業台6の一部が次に説明する規制領域Sに位置しているか否かを判別させるために使用するものであるから、規制領域方向での作業台6の最外縁位置を演算算出するようにしている。
【0023】
37は、規制領域記憶手段であって、車体1に対する所定の規制領域Sを記憶しており、例えば図5に図示するように、車側縁に沿った規制領域Sを記憶している。この場合は平面視における車側より張出したジャッキ8を結ぶ直線近傍を規制領域Sの境界線Nとし、境界線Nによる垂直面から離間する空間領域を規制領域Sとして予め記憶させているものである。この規制領域Sは、作業台6の許容移動領域が狭くなるが、車両1の車側縁に沿った直線を境界線N’として境界線N’による垂直面から離間する空間領域を規制領域S’として予め記憶させてもよい。
【0024】
38は、判別手段であって、前記作業台位置検出手段31の作業台位置演算手段36からの信号と、前記規制領域記憶手段37からの信号を受けて、作業台6が規制領域Sに位置しているか否かの判別する手段である。そして判別手段38は、作業台6が所定の規制領域Sに位置していると判別すると、次に説明する規制手段39に規制信号を出力する手段である。
【0025】
39は、規制手段であって、前記制御手段26から各駆動手段27〜30へ出力される回路の途中に介装され、常時は回路を連通させているが判別手段38からの規制信号を受けると回路を遮断し、前記制御手段26からの出力される各駆動手段27〜30への出力信号の伝達を阻止する手段である。
【0026】
40は、距離算出手段であって、前記作業台位置検出手段31の作業台位置演算手段36からの信号と、前記規制領域記憶手段37からの信号を受けて、平面視における作業台6から規制領域Sまでの最短距離を算出する手段である。
【0027】
41は、ベクトル成分算出手段であって、前記作業台位置検出手段31と前記規制領域記憶手段37および各操作手段20〜25からの信号を受け平面視における作業台6の移動速度ベクトルのうち規制領域Sにかかる規制境界線Nに直交する方向のベクトル成分Kを算出する手段である。
【0028】
なお、ベクトル成分算出手段41で算出される上記ベクトル成分Kは、図5および図6に図示するように簡易的に伸縮ブーム3の先端部におけるベクトル成分Kを求めているが、特に図5の伸縮ブーム3を旋回させる場合では、旋回作業半径が最大になる作業台6の側縁部における正確なベクトル成分Kを求めるようにした方がよい。
【0029】
42は、減速制御手段であって、前記両算出手段40、41からの信号を受け前記距離と前記ベクトル成分に基づく関数に応じて、前記制御出力手段26から各駆動手段27〜30に出力される信号を規制して作業台6の移動速度を減速させる手段である。減速制御手段42の関数は、図2に図示する関係によって、前記距離算出手段40で算出される距離Lとベクトル成分算出手段41で算出されるベクトル成分Kの大きさに基づいて減速信号Vが出力される。
【0030】
具体的には、図2に図示するように、距離Lと速度Vの関係をベクトル成分の大きさによってグラフを使い分ける関係で減速信号を決定するようにしてある。すなわち、ベクトル成分が大きいK1の時にはK1で表示される関数関係のグラフが使用され、ベクトル成分が小さいK2の時にはK2で表示される関数関係のグラフが使用され、ベクトル成分の大きさによってK1〜K2の間の関数関係のグラフ(図2にはグラフの記載を省略している。)が使用される。
【0031】
例えば、ベクトル成分がK1の時には、距離LがL1になると速度VをV1から次第に減速させる信号を出力し、距離LがL3になると速度VをV3まで減速させる信号を出力する。そして、K1〜K2のグラフは、距離Lが小さいほど、ベクトル成分の大きさが大きいほど(K1>K2)速度Vを減速させるような関数関係に設定している。
【0032】
なお、図1に図示する実施形態では、減速制御手段42を制御出力手段26と規制手段39間に配置したが、各操作手段20〜25と制御出力手段26間に介装させるようにしてもよい。
【0033】
43は、解除操作手段であって、作業台6が規制領域Sに位置し、規制手段39により各駆動手段27〜30の駆動が規制され、各操作手段20〜25の操作をしても作業台6の移動ができなくなった時に、この解除操作手段43を操作することにより前記規制を解除して各操作手段20〜25による操作で作業台6を安全側へ復帰させる操作手段である。
【0034】
44は、解除手段であって、判別手段38から規制手段39に規制信号を出力する回路途中に介装され、常時は連通させているが、解除操作手段43からの操作信号を受けると回路を遮断し判別手段38から規制手段39に出力される規制信号の伝達を阻止する手段である。
【0035】
すなわち、解除操作手段43と解除手段44は、作業台6が規制領域Sに位置し、規制手段39により各駆動手段27〜30の駆動が規制されている時に、解除操作手段43を操作することで規制手段39による規制を解除して、各操作手段20〜25による操作で作業台6を安全側へ復帰させるようにしたものである。
【0036】
Aは、コントローラであって、前記各検出器と各操作手段からの信号を受け、前記制御手段26、前記作業台位置演算手段36、規制領域記憶手段37、判別手段38、規制手段39、距離算出手段40、ベクトル成分算出手段41、減速制御手段42、解除手段44の各機能を備え、各駆動手段27〜30に信号を出力するものである。
【0037】
このように構成した本発明に係る高所作業車の安全装置は、次のように作用する。先ず作業台6が規制領域Sから所定距離以上離間(L>L1)した位置に位置しているとする。そしてこの位置から、旋回操作手段22を操作して作業台6を規制領域Sの方向に操作する。
【0038】
この時、前記ベクトル成分算出手段41は、旋回操作手段22と規制領域記憶手段37および作業台位置演算手段36からの信号を受けて、旋回操作に伴う作業台6の平面視における旋回移動速度ベクトルのうち規制領域Sにかかる規制境界線Nに直交する方向のベクトル成分の大きさKを求める。また、距離算出手段40は、作業台位置演算手段36と規制領域記憶手段37の信号を受けて、平面視における作業台から規制領域Sまでの最短距離Lを算出する。そして両算出手段40,41で算出したベクトル成分の大きさと最短距離は、減速制御手段42に入力される。
【0039】
作業台6は、規制領域Sから所定距離以上離間(L>L1)した位置に位置しているから、図2に図示するように減速制御手段42は、制御出力手段26から出力される旋回操作手段22に基づく出力信号を減速させずに旋回駆動手段29に出力する。よって作業台6は伸縮ブーム3の旋回駆動に伴って移動する。
【0040】
いま前記ベクトル成分算出手段41で算出されたベクトル成分の大きさKが、図2に図示するK2であるとする。そしてこのまま伸縮ブーム3を旋回駆動し続けると、距離算出手段40で算出した最短距離LがL2になった時点から減速制御手段42は、図2に図示するように作業台6が規制領域Sに近づくにつれて減速する減速信号Vで以って制御出力手段26からの信号を減速して旋回駆動手段28に出力し、作業台6の移動速度は減速される。
【0041】
そして、作業台6の移動速度は、距離算出手段40で算出した最短距離LがL3になる時点までに、ベクトル成分の大きさがK2において規制手段39により制御出力信号が遮断して旋回駆動を停止させても即停止できる作業台6の移動速度まで減速させる。よって最短距離LがL3からは作業台6が規制領域Sに位置しても(規制境界線Nに位置し最短距離Lが0になる時)作業台6を即停止できる移動速度にまで減速させた状態にある。
【0042】
作業台6が規制領域Sの規制境界線Nに位置すると、判別手段38が作業台位置演算手段36と規制領域記憶手段37からの信号を受け、作業台6が規制領域Sに位置していると判別して、規制手段39に信号を出力する。規制手段39は、減速制御手段42を経過して出力する制御出力手段26からの信号を遮断して、旋回駆動手段29への信号出力を阻止し、作業台6の旋回移動を停止させる。この時に既に作業台6を即停止できる移動速度にまで減速させた状態にあることから、作業台6の移動を即停止することができ、作業台6が規制領域S内に入り込んで停止することはない。
【0043】
また、前記ベクトル成分算出手段41で算出されたベクトル成分の大きさKが、図2に図示するK1であるとする。そしてこのまま伸縮ブーム3を旋回駆動し続けると、距離算出手段40で算出した最短距離LがL1になった時点から減速制御手段42は、図2に図示するように作業台6が規制領域Sに近づくにつれて減速する減速信号Vで以って制御出力手段26からの信号を減速して旋回駆動手段28に出力し、作業台6の移動速度は減速される。
【0044】
そして、作業台6の移動速度は、距離算出手段40で算出した最短距離LがL3になる時点までに、ベクトル成分の大きさがK1において規制手段39により制御出力信号が遮断して旋回駆動を停止させるようにしても即停止できる作業台6の移動速度まで減速させる。よって最短距離LがL3からは作業台6が規制領域Sに位置しても(規制境界線Nに位置し最短距離Lが0になる時)作業台6を即停止できる移動速度にまで減速させた状態にある。
【0045】
作業台6が規制領域Sの規制境界線Nに位置すると、判別手段38が作業台位置演算手段36と規制領域記憶手段37からの信号を受け、作業台6が規制領域Sに位置していると判別して、規制手段39に信号を出力する。規制手段39は、減速制御手段42を経過して出力する制御出力手段26からの信号を遮断して、旋回駆動手段29への信号出力を阻止し、作業台6の移動を停止させる。この時に既に作業台6を即停止できる移動速度にまで減速させた状態にあることから、作業台6の移動を即停止することができ、作業台6が規制領域S内に入り込んで停止することはない。
【0046】
ここで、前記ベクトル成分算出手段41で算出されたベクトル成分の大きさKが、図2に図示するK1とK2の間の大きさである場合には、図2に図示するK1とK2の間の特性で同様に減速させる。
【0047】
このように、最短距離Lとベクトル成分の大きさKに基づく関数に応じて制御出力手段26から旋回駆動手段29に出力される信号を減速制御手段42で規制して減速させるようにしたものであるから、伸縮ブーム3の状態が相違することによる作業台6の位置が違っても、同じ旋回速度で同じ停止時間をかけて停止させた場合に、規制領域S方向への旋回速度ベクトル成分の大きさKが異なることに起因して作業台6の停止位置が相違することの防止がはかれる。
【0048】
また、規制領域Sに所定距離近接した場合には、規制領域Sに近づくにつれて減速を大きくするようにしているが、規制領域S方向への旋回速度ベクトル成分の大きさKによっても減速度を変更するようにしているものであるから、作業台6が規制領域Sに近接していても旋回速度ベクトル成分の大きさKが小さい場合には不必要に減速をしないようにしてある。
【0049】
例えば図2に図示するように、最短距離LがL1〜L2間では、規制領域S方向への旋回速度ベクトル成分の大きさKがK2の時には減速しないが、規制領域S方向への旋回速度ベクトル成分の大きさKがK1の時には減速するようにしてあり、不必要に減速させることを可及的に阻止するようにしてある。
【0050】
なお、上記説明では旋回操作時のみについて説明したが、同様に伸縮操作、起伏操作、首振り操作、水平操作ででも、実施できること勿論である。更に、各操作の複合操作時においても、ベクトル成分算出手段41は、複合操作による平面視における作業台6の移動速度ベクトルのうち規制領域Sにかかる規制境界線Nに直交する方向のベクトル成分をベクトル成分算出手段41で算出できるようにしているものであるから、同様に実施できること勿論である。
【0051】
また、上記実施形態では、作業台6を規制領域Sに位置させた状態では作業台6の作動を規制するようにしたが、規制させずに警報だけするようにした高所作業車の安全装置にも適用できる。この場合の実施形態について図3に図示し以下に説明する。図3に図示する実施形態では、判別手段38が作業台位置演算手段36と規制領域記憶手段37からの信号を受け、作業台6が規制領域Sに位置していると判別した時に、警報手段46(警音器あるいは音声警報装置などにより警報する手段)を作動させるようにしており、各駆動手段27〜30には直接減速手段42から信号を出力するようにしている点で図1図示する実施形態と相違している。よってコントローラBは、コントローラAと解除手段44と規制手段39を備えていない点で相違している。
【0052】
この場合は、警報手段46が作動した時に、手動により各操作手段20〜25を停止操作させて作業台6の移動を停止させるもので、図1で説明した上記実施形態のものと、自動で停止させるか、手動で停止させるかの違いがあるものの、同様に最短距離Lとベクトル成分の大きさKに基づく関数に応じて制御出力手段26から旋回駆動手段29に出力される信号を減速制御手段42で規制して減速させるようにしたものであるから、伸縮ブーム3の状態が相違することによる作業台6の位置が違っても、規制領域S方向への旋回速度ベクトル成分の大きさKが異なることに起因して作業台6の停止位置が相違することの防止がはかれる。
【0053】
また、規制領域Sに所定距離近接した場合には、規制領域Sに近づくにつれて減速を大きくするようにしているが、規制領域S方向への旋回速度ベクトル成分Kの大きさによっても減速度を変更するようにしているものであるから、作業台6が規制領域Sに近接していても旋回速度ベクトル成分Kの大きさが小さい場合には減速を大きくしないようにしてあり、不必要に減速させることを可及的に阻止することができる。
【0054】
次に、上記実施形態では、規制領域記憶手段37には車側縁に沿った規制領域Sとして、車側より張出したジャッキ8を結ぶ直線近傍を規制領域Sの規制境界線Nとし、規制境界線Nによる垂直面から離間する空間領域を規制領域Sとして予め記憶させたものであるが、この他に複数の規制領域を記憶しておき、規制領域選択手段45を配置し、当該規制領域を図1および図2に図示するように規制領域選択手段45で選択させるようにしてもよい。
【0055】
具体的には、上記境界線Nから離間する空間領域を規制領域Sとした他に、車両1の車側縁直線を規制境界線N’として規制境界線N’による垂直面から離間する空間領域を規制領域S’として記憶させた場合や、規制領域S、規制領域S’を左右別にそれぞれ記憶させた4種類の規制領域を記憶させ、これらの規制領域から目的の規制領域を規制領域選択手段45で選択させるようにしてもよい。また、車側縁に沿った規制境界線をジャッキ8を結ぶ直線近傍より更に離間させて記憶させるようにした場合であってもよい。(図7参照)更に、車両の前後縁にそれぞれ沿った規制領域を記憶させておき、複数種類の規制領域を記憶させ、これらの規制領域から目的の規制領域を規制領域選択手段45で選択させるようにしてもよい。
【0056】
なお、上記実施形態では、規制領域選択手段45を手動で切換えるようにしたが、例えば車側に沿って複数の規制領域を記憶させておき、複数の規制領域からの選択を、ジャッキ8の張出し幅を検出して、ジャッキ8の張出し幅に応じて規制領域を自動的に選択させるようにしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、作業台位置検出手段31として、各検出器と作業台位置演算手段36で構成したが、GPSなどにより車体1の位置を記憶させ車体1に対する作業台6の位置を計測するようにしたものであってもよい。
【0058】
【発明の効果】
請求項1乃至請求項3に係る本発明の高所作業車の安全装置は、以上のように構成し作用するものであるから、伸縮ブームの状態が相違することによる作業台の位置が違っても、平面視における作業台の移動速度ベクトルのうち規制領域にかかる規制境界線に直交する方向へのベクトル成分の大きさが異なることに起因して作業台の停止位置が相違することの防止がはかれる。
【0059】
また、規制領域に所定距離近接した場合には、規制領域に近づくにつれて減速を大きくするようにしても、規制領域方向への前記ベクトル成分の大きさによっても減速度を変更するようにしているものであるから、作業台が規制領域に近接していても前記ベクトル成分の大きさが小さい場合には減速しないようにしてあり、不必要に減速させることを可及的に阻止することができる。
【0060】
請求項2に係る本発明の高所作業車の安全装置は、作業台の位置検出を各検出器と各検出器からの信号で作業台位置を算出するようにしたもので、高所作業車に他の安全装置用として用いた検出器を利用して作業台の位置検出をすることができる。
【0061】
請求項3に係る本発明の高所作業車の安全装置は、車側縁または車両前後縁に沿って規制領域を予め設定記憶させているものであるから、作業現場で設置した車両より危険側へ作業台が飛出すのを規制して安全な作業を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る高所作業車の安全装置を説明するブロック図である。
【図2】距離とベクトル成分に基づく関数よる減速制御を説明するグラフである。
【図3】本発明に係る高所作業車の安全装置を説明する他の実施形態のブロック図である。
【図4】高所作業車を説明する説明図である。
【図5】高所作業車の作業台を旋回駆動により規制領域に位置させた状態を説明する説明図である。
【図6】高所作業車の作業台を伸縮駆動により規制領域に位置させた状態を説明する説明図である。
【図7】高所作業車の作業台を旋回駆動により規制領域に近接させて移動させる状態を説明する説明図である。
【符号の説明】
1 車両
3 伸縮ブーム
6 作業台
20 伸縮操作手段
21 起伏操作手段
22 旋回操作手段
23 首振り操作手段
24 水平操作手段
25 垂直操作手段
26 制御出力手段
27 伸縮駆動手段
28 起伏駆動手段
29 旋回駆動手段
30 首振り駆動手段
31 作業台位置検出手段
32 旋回角検出器
33 起伏角検出器
34 ブーム長さ検出器
35 首振り角検出器
36 作業台位置演算手段
37 規制領域記憶手段
38 判別手段
39 規制手段
40 距離算出手段
41 ベクトル成分算出手段
42 減速制御手段
46 警報手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両上に旋回および起伏可能に伸縮ブームを配置し、伸縮ブームの先端部に首振り可能に作業台を備えた高所作業車に、作業台を移動させる際に操作する各操作手段と、各操作手段からの信号に基づいて作業台を移動させる制御信号を出力する制御出力手段と、制御出力手段からの信号に基づいて作業台を移動させる各駆動手段と、車体に対する作業台の位置を検出する作業台位置検出手段と、車体に対する所定の規制領域を設定記憶した規制領域記憶手段と、作業台位置検出手段と規制領域記憶手段からの信号を受けて作業台が所定の規制領域に位置しているか否かを判別する判別手段と、判別手段により作業台が所定の規制領域に位置していると判別されたときに警報する警報手段または作業台の移動を規制する規制手段とを備えた高所作業車の安全装置であって、
前記作業台位置検出手段と前記規制領域記憶手段からの信号を受け平面視における作業台から規制領域までの最短距離を算出する距離算出手段と、前記作業台位置検出手段と前記規制領域記憶手段および各操作手段からの操作信号を受け平面視における作業台の移動速度ベクトルのうち規制領域にかかる規制境界線に直交する方向のベクトル成分を算出するベクトル成分算出手段と、両算出手段からの信号を受け前記距離と前記ベクトル成分に基づく関数に応じて、前記制御出力手段から各駆動手段に出力される信号を規制して作業台の移動速度を減速させる減速制御手段とを備えたことを特徴とする高所作業車の安全装置。
【請求項2】
前記減速制御手段の関数は、距離が所定距離以内に達した時に距離と前記ベクトル成分に基づき前記制御出力手段から各駆動手段に出力される信号を規制して作業台の移動速度を減速させるように構成していることを特徴とする請求項1記載の高所作業車の安全装置。
【請求項3】
前記減速制御手段の関数は、距離が小さいほど、前記ベクトル成分の大きさが大きいほど作業台の移動速度の減速を大きくするよう前記制御出力手段から各駆動手段に出力される信号を規制するよう構成してあることを特徴とする請求項2記載の高所作業車の安全装置。
【請求項4】
前記作業台位置検出手段は、伸縮ブームの旋回角、起伏角、ブーム長さ、作業台の首振り角を検出する各検出器と、各検出器からの信号で作業台位置を算出する作業台位置演算手段とで検出するよう構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の高所作業車の安全装置。
【請求項5】
前記規制領域記憶手段は、車側縁または車両前後縁に沿って規制領域を予め設定記憶させて構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項4記載の高所作業車の安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2004−155520(P2004−155520A)
【公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−320321(P2002−320321)
【出願日】平成14年11月1日(2002.11.1)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】