説明

高機能印鑑とそのシステム

【課題】読取った識別情報が予め印鑑に登録した押印許可を示す識別番号と一致する場合に押印できる状態にすることにより誤承認する確率を少なくし、さらに押印した決済を自動的に記憶させる機能を付加することにより承認と決済を管理する高機能印鑑とそのシステムを提供する。
【解決手段】RF−IDチップ13を埋め込んだ文書11に押印する高機能印鑑21において、高機能印鑑21がRF−IDチップ13より、当該識別情報を読み取り、読取った識別情報が予め高機能印鑑21に登録した押印許可するための印鑑識別情報と一致する場合、押印できる高機能印鑑21とそのシステムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RF−ID(Radio Frequency Identification)チップを埋め込んだ紙などに押印し、押印記録、押印者認証を行なう高機能印鑑とそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、組織内で承認が必要となる書類には押印欄が設けられ、この押印欄に承認者が押印を行うことにより、その書類に記載された内容が承認されたことになる仕組みが一般的に用いられている。
【0003】
今日ではRF−IDチップを用いて、押印記録、押印者認証を行なう提案がされている。例えば、図11に示すようなシステムが提案されている。図11はRF−IDチップを埋め込んだ紙111により決済を行うシステムの構成を示した図である。従来のシステム110は、RF−IDチップ113を埋め込んだ紙である文書111、RF−IDリーダ114、データ処理装置115(確認表示機能を有する)などから構成されている。
【0004】
紙111には押印欄112があり、RF−IDチップ113などを備えた構成である。本システム110は紙111に埋め込まれたRF−IDチップ113の識別番号をRF−IDリーダ114が読み出してデータ処理装置115に送る。その後データ処理装置115で判定され、押印許可通知の表示、または表示された識別番号から責任者が判断してRF−IDチップ113を埋め込んだ紙111に押印を行う構成となっている。
【0005】
ところが、上記のような承認方法では押印可否の判断を責任者が単独でチェックして押印するため、誤った書類に押印してしまうという問題がある。
また、上記構成により押印した書類の記録をするためには責任者が別に記録用紙を用意し記述しなければならないという問題がある。
【0006】
また、上記高機能印鑑は、基本的に印字される印鑑の押印パターンを見て、認証を行なうものであるため、判定は真偽の2つの判定であり、日付管理、本人認証等の管理はできないという問題がある。
【0007】
また、特許文献1によれば、固有のID番号情報を記憶する記憶手段と、記憶されたID番号情報を含む電波を送信する短距離無線通信手段とを具備する電子印鑑と、ID番号情報を含む電波を受信する手段と、受信した電波からID番号情報を抽出する手段と、抽出されたID番号情報を通信ネットワークを介して伝送する手段とを具備する情報端末装置と、固有のID番号情報を保管しかつ情報端末装置から伝送されたID番号情報に対し認証処理を実行する認証サーバが提案されている。
【0008】
特許文献2によれば、印鑑によって捺印される文書に、文書を識別可能なチップIDが書き込まれて非接触状態にて情報の読み出しが可能なRF−IDチップ1を漉き込んでおき、印鑑にて、文書への捺印時に、RF−IDチップからチップIDを読み取り、RF−IDチップから読み取ったチップIDと、印鑑を識別可能な印鑑IDとを管理サーバに送信し、管理サーバにてチップIDと印鑑IDとを対応づけて管理する提案がされている。
【0009】
しかしながら、上記特許文献1、2では管理サーバなどに印鑑の識別番号、文書の識別番号を送信し、管理サーバにより承認の確認をしていたためシステムの規模が増大するとともに、管理サーバなどを介さずにローカルで認証ができないという問題がある。
【特許文献1】特開2002−324216号公報
【特許文献2】特開2006−139568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記のような実情に鑑みてなされたものであり、読取った識別情報が予め印鑑に登録した押印許可を示す識別番号と一致する場合に押印できる状態にすることにより誤承認する確率を少なくし、さらに押印した決済を自動的に記憶させる機能を付加することにより承認と決済を管理する高機能印鑑とそのシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の態様のひとつであるRF−IDチップを埋め込んだ文書に押印する高機能印鑑において、押印許可を識別するための承認者識別番号と前記文書の種類を示す書類固有番号から構成される識別情報を前記RF−IDチップから交信信号として交信用アンテナを介し受信し、前記交信信号から識別情報を抽出する印鑑内蔵型リーダ部と、前記印鑑内蔵型リーダ部から転送される前記識別情報と予め前記高機能印鑑に記録した押印許可をするための印鑑識別情報が一致しているかを判定し、一致しているときに押印許可信号を出力する制御部と、前記押印許可信号を受信して利用者に押印許可を表示する押印許可表示部と、を具備する構成である。
【0012】
上記構成により、押印者に押印時に通知が可能になるとともに、押印をチェックまたは印字を抑止することが可能となる。このため、二重チェックによる精度を上げながら、さらに大量の決済の押印などを正確に短時間で実現することが可能となる。
【0013】
また、応用例として、物流に関する大量決済書類の半自動処理化が可能になる。
また、役所等における決済、承認など厳密な書類審査と正確な決済処理が可能となる。
特にタイムスタンプ機能は印鑑とRF−IDチップを埋め込んだ紙の2つだけに絶対時刻が書かれることから、セキュリティー機能を強化することができる。
【0014】
好ましくは、前記制御部は、前記印鑑識別情報を記録するメモリと、前記識別情報と前記印鑑識別情報が一致していることを判定する判定部と、を具備してもよい。
好ましくは、前記高機能印鑑は、前記制御部の前記メモリに記録された前記書類固有番号をメモリ内容転送信号としてメモリ内容転送用アンテナを介して外部装置に送信するメモリ内容送信部を備える構成としてもよい。
【0015】
好ましくは、押印すると前記RF−IDチップから読み取った書類固有番号を前記メモリに記録する構成としてもよい。
好ましくは、前記高機能印鑑内に時計機能を備えた時計回路を内蔵し、前記文書に押印をしたときに前記押印許可信号に基づいて前記時計回路から押印時刻を取得して前記メモリまたは前記文書のRF−IDチップのメモリに記録する構成としてもよい。
【0016】
好ましくは、前記高機能印鑑に複数の印字面を備え、前記メモリに予め記録した印字パターン識別番号により印字面を選択することができる構成であってもよい。
好ましくは、前記高機能印鑑に可変パターン印字面と、前記メモリに予め記録した印字パターン識別番号により印字パターンを選択する可変パターン制御部と、を具備する構成である。
【0017】
好ましくは、前記可変パターン制御部は印刷部を備え、インクジェット方式により構成される前記印刷部の印刷を制御する構成である。
好ましくは、前記高機能印鑑に押印する際に前記高機能印鑑に対して上下運動するリングを前記印字面の前面に配設し、前記高機能印鑑に内蔵した発電機に接続される前記リン
グと繋がるアームにより運動エネルギーを前記発電機へ伝達して発電し当該高機能印鑑の電源とする構成でもよい。
【0018】
好ましくは、前記高機能印鑑の印字面が前記文書への押印時に接触しないようにするロック部を備えたストッパ部を配設し、前記押印許可信号を前記ストッパ駆動部が受信すると前記ロック部のロックを解除して押印可能にする構成としてもよい。
【0019】
好ましくは、前記識別情報に前記文書の有効期限を示す期限情報を有するときは前記期限情報も前記メモリに記録してもよい。
好ましくは、前記メモリ内容転送信号に前記期限情報を含めてメモリ内容転送用アンテナを介して外部装置に送信するメモリ内容送信部を備えてもよい。
【0020】
本発明の他の態様のひとつである少なくとも承認者識別番号と書類固有番号から構成される識別情報を記録したRF−IDチップが埋め込まれている文書と、
前記識別情報を交信信号として前記RF−IDチップから送信し、前記交信信号を交信用アンテナを介して受信して識別情報を抽出する印鑑内蔵型リーダ部と、前記印鑑内蔵型リーダ部から転送される前記識別情報と予め前記高機能印鑑に記録した押印許可をするための印鑑識別情報が一致しているかを判定し、一致しているときに押印許可信号を出力するとともに前記書類固有番号をメモリに記録する制御部と、前記押印許可信号を受信して利用者に押印許可が出たことを通知する押印許可表示部と、前記制御部の前記メモリに記録された前記書類固有番号をメモリ内容転送信号としてメモリ内容転送用アンテナを介して外部に送信するメモリ内容送信部を備える前記高機能印鑑と、
前記メモリに記録した少なくとも前記書類固有番号を有する情報を、メモリ内容送信部から読み出すために記録内容要求信号を送信し、その後前記情報を読み込むリーダ装置と、
前記リーダ装置に接続され、前記情報を記録するデータ処理装置と、を具備する構成である。
【0021】
上記構成にすることで、外部に高機能印鑑のメモリ内容が転送できるため押印時に記録したログを管理することができる。
好ましくは、前記押印をしたときに前記押印許可信号に基づいて時計回路から押印時刻を取得し前記高機能印鑑に記録するとともに、前記印鑑内蔵型リーダ部から前記交信用アンテナを介して押印時刻を送信して前記文書に埋め込まれたメモリ付きRF−IDチップのメモリに記録する構成である。
【0022】
好ましくは、前記高機能印鑑は複数の印字面を備え、前記メモリに予め記録した印字パターン識別番号と予め前記文書に埋め込まれた前記RF−IDチップに記録した文書印字パターン識別番号の組み合わせにより印字面を選択してもよい。
【0023】
好ましくは、前記高機能印鑑に可変パターン印字面を備え、前記メモリに予め記録した印字パターン識別番号と予め前記文書に埋め込まれた前記RF−IDチップに記録した文書印字パターン識別番号の組み合わせにより印字パターンを選択する可変パターン制御部と、を具備する構成であってもよい。
【0024】
上記システム構成により、押印者に押印時に通知が可能になるとともに、押印をチェックまたは印字を抑止することが可能となる。このため、二重チェックによる精度を上げながら、さらに大量の決済の押印などを正確に短時間で実現することが可能となる。
【0025】
また、応用例として、物流に関する大量決済書類の半自動処理化が可能になる。
また、役所等における決済、承認など厳密な書類審査と正確な決済処理が可能となる。
特にタイムスタンプ機能は印鑑とRF−IDチップを埋め込んだ紙の2つだけに絶対時刻が書かれることから、セキュリティー機能を強化することができる。
【0026】
好ましくは、前記可変パターン制御部は印刷部を備え、インクジェット方式により印刷をする前記印刷部の制御する構成でもよい。
好ましくは、前記高機能印鑑と前記RF−IDチップは、高電力でキャリアを発する非接点電力伝送装置を備えるスタンプ台から電力供給を受ける構成でもよい。
【0027】
好ましくは、前記RF−IDチップを埋め込んだ前記文書は、前記RF−IDチップを構成する回路の一部である線材を前記文書に埋め込む構成であってもよい。
好ましくは、前記RF−IDチップを前記文書から取り出すと前記RF−IDチップ内部の状態が変化したことを、前記高機能印鑑が判定してもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、読取った識別情報が予め印鑑に登録した押印許可を示す識別情報と一致する場合に押印できる状態にすることにより誤承認する確率を少なくすることができる。
【0029】
さらに、押印した決済を自動的に記憶させる機能を付加することにより承認と決済を管理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態について詳細を説明する。
(実施例1)
図1は実施例1の高機能印鑑とそのシステム10の構成を示すブロック図である。システム10は、文書11、高機能印鑑21、リーダ装置29、データ処理装置210(確認表示機能を有する)などから構成される。
【0031】
RF−IDチップ13を埋め込んだ文書11は押印欄12を有している。ここで、文書11は紙などでもよいが特に限定するものではなく合成樹脂、天然樹脂、複合材料を用いてもよい。
【0032】
文書11にはRF−IDチップ13が設けられ、この文書11に押印を行う高機能印鑑21が近づくと(押印時)、RF−IDチップ13に書き込まれた識別情報が高機能印鑑21で読み取ることができる。
【0033】
押印欄12は押印する場所を特定するものであり、押印をする者が複数いるときは複数の押印欄を設ける。
RF−IDチップ13には、固有の識別情報が書き込まれた記憶部や制御部からなる回路から構成されている。この記憶部に記憶された識別情報を非接触状態で読み取ることができるとともに、記憶部に情報を非接触状態で書き込むことができる。また、アンテナが内蔵されており、高機能印鑑21の情報読取/書込用のアンテナが近接することにより、上記記憶部に書き込まれた識別情報を読み取ることができる。ここで、識別情報とは押印欄ごとに設けられた識別番号であり、押印が許可される押印者を識別するための情報である。また、RF−IDチップ13は押印欄12に対応するように設けられ、押印欄12に対してひとつのRF−IDチップ13を設けてもよいし、何人かまとめて1つのRF−IDチップ13に識別情報を記録してもよい。
【0034】
図2はRF−IDチップ13に記録する識別情報の例を示したものである。RF−IDチップ13には、「承認者権限」「書類固有番号」「期限」などを示すコードが書き込ま
れている。「承認者権限」には押印欄に押印できる押印者の承認者識別番号が記録されている。「期限」には文書11が有効である期間が期限情報として記録されている。図2の例では「20070101:20070331」は2007年1月1日〜2007年3月31日を示している。「書類固有番号」には文書11がどのような書類であるかを識別するためのコードが記録されている。例えば、承認図(仕様書)に対応する文書が「bunnsho1」であれば図2のように押印者識別番号に対応付けて記録されている。
【0035】
図1に示す高機能印鑑21は、印鑑内蔵型リーダ部22、交信用アンテナ23、制御部24、印字面25、押印許可ランプ26、メモリ内容送信部27、メモリ内容転送用アンテナ28などから構成されている。ここで、高機能印鑑21には電力源として電池が内蔵されている。
【0036】
高機能印鑑21は、文書11に埋め込んであるRF−IDチップ13と交信し識別情報を検出する。また、高機能印鑑21にRF−IDチップ13から取得した識別情報を、データ処理装置210(PC、サーバ)と接続されたリーダ装置29に送信することができる。
【0037】
印鑑内蔵型リーダ部22は文書11に埋め込まれたRF−IDチップ13から交信用アンテナ23を介して識別情報の読み取りを行い制御部24に設けられたメモリに書き込みを行う。
【0038】
制御部24は、メモリと判定部を備えている。メモリは印鑑識別情報、識別情報(RF−IDチップ13から取得したデータ)などを格納する記憶素子である。例えば、RAMやROMなどである。印鑑識別情報は高機能印鑑の所有者の識別番号である。また、判定部は押印許可の判定を行う回路でCPUまたは論理演算処理(ディジタル回路)などにより構成することができる。なお、判定部はメモリ内容送信部27などに設けてもよい。
【0039】
印字面25には承認を行う押印者の氏名が刻まれている。または用途に合わせた押印ができるように印刷機能を備えている。
メモリ内容送信部27には制御部24のメモリに記録したデータを上記リーダ装置29にメモリ内容転送用アンテナ28を介して送信する。
【0040】
押印許可表示部26は、文書11のRF−IDチップ13に記録されている識別情報の押印者識別番号と印鑑識別情報に基づいて押印が許可されたときに点灯する。例えば、表示部はLEDなどを用いて制御部24から制御することで点滅制御する構成である。
【0041】
次に、図3にフロー図を示し高機能印鑑21の動作について説明する。
ステップS31では文書11に設けられたRF−IDチップ13から通信認証処理をする。ここで、通信認証処理はRF−IDチップ13と高機能印鑑21間で通信を開始するために行う手続きをする処理である。RF−IDチップ13に高機能印鑑21が近づくと、高機能印鑑21の印鑑内蔵型リーダ部22から交信用アンテナ23を介してRF−IDチップ13に信号(例えば、暗号化信号)が送信される。受信したRF−IDチップ13から返信があるとその通信内容に基づいて認証が行われる。
【0042】
ステップS32では通信認証が判定される。ステップS31により認証が取れた場合にはステップS33に移行する。認証されない場合は再度認証をとるためステップS31の処理を行う。
【0043】
ステップS33では文書11に設けられたRF−IDチップ13から送信される交信信号により識別情報を取得する。高機能印鑑21はRF−IDチップ13から識別情報を取
得し承認者識別番号を抽出する。
【0044】
ステップS34では制御部24の判定部で印鑑識別番号と承認者識別番号を比較する。高機能印鑑21のメモリに記録されている印鑑識別番号と承認者識別番号が一致していればステップS35に移行する。一致しない場合はステップS31に移行するか、再度比較を行う。数回比較しても一致しない場合にはステップS31に移行する。
【0045】
ステップS35では押印許可信号が押印許可表示部26に入力されランプ(LEDなど)を点灯させる。
ステップS36では高機能印鑑21のメモリに取得した識別情報を記録する。ステップS36では少なくとも「書類固有番号」を記録する。図4に示すメモリ構造では「書類固有番号」と「押印日付」も示している。ここで、メモリにはn個(n:整数)の書類固有番号に関連するデータが記録することができる。
【0046】
上記のように高機能印鑑21がRF−IDチップ13から識別情報を取得して印鑑識別番号と承認者識別番号が一致することで押印許可を利用者に通知することができる。また、メモリに押印した文書を記録することもできる。
【0047】
次に、高機能印鑑21からデータ処理装置210に接続されたリーダ装置29を介してメモリに記録したデータを送信する動作について説明する。
ステップS37ではリーダ装置29と高機能印鑑21間で通信認証処理をする。高機能印鑑21をリーダ装置29を近づけると、リーダ装置29から送信される信号をメモリ内容転送用アンテナ28を介してメモリ内容送信部27は受信して、認証処理を行う。
【0048】
ステップS38では通信認証が判定される。ステップS37により認証が取れた場合にはステップS39に移行する。認証されない場合は処理を中止するか再度認証をとるためステップS37の処理を行う。
【0049】
ステップS39では高機能印鑑21のメモリ内容をリーダ装置29にメモリ内容転送信号(複数の文書ごとに取得した情報)により転送する。制御部24のメモリに記録した押印した文書の書類固有番号と関連する情報を、リーダ装置29から記録内容要求信号が送信されると速やかに、メモリ内容送信部27から送出する。このときメモリにデータが複数あれば全てのデータを送信する。
【0050】
ステップS310ではリーダ装置29がステップS39で受信したメモリ内容転送信号によりメモリ内容がデータ処理装置210に記録される。例えば、データ処理装置210のデータベースに記録する。
【0051】
上記構成により、例えば決済書類が適合する識別情報である場合、押印許可表示部26にランプが点灯する。このように、高機能印鑑21が押印許可チェックを行うので、高機能印鑑を利用する利用者が押印間違いをする確率を少なくすることができる。
【0052】
また、このようにすることにより、押印した決済等を自動的に記憶させ、外部に通知することが可能となる。
(実施例2)
図5は実施例2における押印防止機構を備えた高機能印鑑31の構成を示す図である。高機能印鑑31は、実施例1で説明した高機能印鑑21にストッパ機能を付加した高機能印鑑である。高機能印鑑31は、ストッパ部32、ストッパ駆動部33を備えている。
【0053】
ストッパ部32は印字面25の手前に配置され、制御部24の判定部で押印許可されな
い場合に押印できないようにする機構である。
ストッパ駆動部33は制御部24の判定部から押印許可の通知を受信するとストッパ部32のロック部34を解除して押印できるようにする。また、ストッパ駆動部33は機械的に上方向に引き上げる機構であってもよいし、ロック部34が両矢印A方向に稼動できるようにしてストッパ部32を貫通する高機能印鑑31の上下方向の移動を止めてもよい。
【0054】
なお、ロック部34の解除とともに押印許可がされると押印許可表示部26のランプも点灯する。
上記構成により押印しようとしても、承認されない場合は押印されないため、誤って押印することがなくなる。
【0055】
(実施例3)
図6は実施例1または2にタイムスタンプ機能を付加した高機能印鑑41の構成を示した図である。図6では高機能印鑑41は実施例1の高機能印鑑に時計回路42が組み込まれている。また、文書11に埋め込まれるRF−IDチップ43にはメモリが追加されている。
【0056】
高機能印鑑41は時計回路42が組み込まれ、常に絶対時刻が刻まれている。ここで、時計回路42は時計ICや電波時計を用いる。電波時計を使用する場合には交信用アンテナ23、メモリ内容転送用アンテナ28とは別に時計用アンテナを設ける必要がある。また、時計回路42は押印時間を測定してその押印時間を制御部24に設けられたメモリに記録する。
【0057】
次に、高機能印鑑41の動作について説明する。
まず、高機能印鑑41とメモリ付きRF−IDチップ43の間で認証通信をする。RF−IDチップ43を埋め込んだ文書11の通信認証の確認を行った後、押印許可がされ押印許可表示部26が点灯する。押印すると、識別情報と押印時間が高機能印鑑41のメモリに記憶させる。
【0058】
同時に、メモリ付きRF−IDチップ43は押印されたことを記録してもよい。また、高機能印鑑41から押印された絶対時刻をRF−IDチップ43に同時に通知して絶対時刻を記憶してもよい。
【0059】
上記構成により、高機能印鑑41内のメモリまたはメモリ付きRF−IDチップ43に絶対時刻が記憶され、決済した時刻が高機能印鑑41内に記憶されることになる。また、RF−IDチップ43を埋め込んだ文書11にも絶対時刻が記憶され、押印による印字以外に時刻が電子的に記憶することができる。
【0060】
(実施例4)
図7はRF−IDチップ13を埋め込んだ文書11の識別情報に基づいて、印字パターンを変化させる高機能印鑑51の構成例を示した図である。
【0061】
高機能印鑑51は、実施例1の高機能印鑑に可変パターン印字面52、可変パターン制御部53を追加した構成である。ここで、印字パターンを可変させる機能は実施例2、3に搭載してもかまわない。
【0062】
パターンの可変方法は、例えば機械的に行う場合は、可変パターン印字面52として2種類のパターンを予め印字面(板状)の表面と裏面に用意し、必要に応じて表面と裏面のパターンを回転させて選択する。なお、図7に示すA面とB面の両方に上記印字面を設け
ることで4種類のパターンを選択することができる。
【0063】
また、電子的にパターンを可変する場合にはインクジェット方式、バブルジェット(登録商標)方式などの印刷方式により印字パターンを複数可変することができる。
次に、パターンの選択をする場合について説明する。
【0064】
図7に示す印字パターン(ID:11〜1C)は可変パターン制御部53に設けられたメモリに記録されている。また、可変パターン制御部53には印字パターンを識別するための印字パターン識別番号が記録されており、印字パターン識別番号は「11」〜「1C」であれば上位「1」が格納されている。
【0065】
文書11に埋め込まれたメモリ付きRF−IDチップ55にも文書用の印字パターン識別番号である文書印字パターン識別番号がメモリに記録され、例えば、「11」〜「1C」であれば下位「1」〜「C」が格納されている。
【0066】
高機能印鑑21が近づくと、高機能印鑑51の印鑑内蔵型リーダ部22から交信用アンテナ23を介してRF−IDチップ55に信号(例えば、暗号化信号)が送信される。受信したRF−IDチップ13から返信があるとその通信内容に基づいて認証が行われる。その後、文書11に設けられたRF−IDチップ55から送信される交信信号により識別情報とともに文書印字パターン識別番号を取得する。そして、可変パターン制御部53のメモリに記録された複数のパターンの中から上記印字パターン識別番号と文書印字パターン識別番号により一意的に選択されるパターンを抽出して電子的に印字を開始する。
【0067】
ここで、印字は例えば可変パターン制御部53に印刷部を設けて印刷を行う。
同様に機械的な場合にも同じ選択方法によりどの印字面を選択するかを決める。
(実施例5)
図8は発電部を追加した高機能印鑑61の構成を示した図である。高機能印鑑61は、印字面25の手前にあって、発電の際に発電機のアーム64を機械的に回転させて動力を生み出すリング62と、発電機63を追加した構成である。押印するとき、印字面の前面にあるリング62を押し上げるエネルギーを発電機63に接続されるアーム64を利用して伝達して発電をする。この発電された電力は印鑑内蔵型リーダ部22、交信用アンテナ23、制御部24、印字面25、押印許可表示部26、メモリ内容送信部27、メモリ内容転送用アンテナ28などの回路に供給される。また、電力供給は全ての回路にしなくてもよく必要な回路にだけ供給してもよい。
【0068】
上記構成により、電池を印鑑内に置くことなく通信、判定、印字抑止を行うことが可能とる。
(実施例6)
上記実施例1〜4で説明した高機能印鑑は電池を内蔵し、実施例5の高機能印鑑は発電部を備えている。図9に示す実施例6ではスタンプ台72に非接点電力伝送装置73を備えることにより、押印時スタンプ台72に高機能印鑑71を近づけると高機能印鑑71に電力供給がされる。
【0069】
また、充電できる充電式電池を備えて近づけたときに充電を行うことが可能である。
(実施例7)
図10に示すRF−IDチップ101とRF−IDチップ101の回路の一部である線材102をともに埋め込んだ文書100(印字できればよく、例えば紙、合成材料、天然材料、複合材料)の構成を示している。
【0070】
本発明の特徴は、RF−IDチップ101を取り外すとRF−IDチップ101が使用
できなくなるように構成されていることである。
つまり、紙を破いたりしてRF−IDチップ101を取り除こうとすると線材102が切断されRF−IDチップ101を構成する回路の一部が破壊される構成である。ここで、線材102は導電性の材料(例えば銅線など)を用いる。
【0071】
また、埋め込まれたRF−IDチップを文書101から取り出すとRF−ID内部の記録内容が変化する構成にしてもよい。その変化した状態(メモリに記録されている内容)を高機能印鑑が検出して押印許可の可否を押印者に通知する。このとき上記変化状態は、例えば制御部の判定部で判定してもよい。
【0072】
上記構成により、押印を機械的にチェックまたは印字を抑止することが可能となっている。このため、二重チェックによる精度を上げながら、さらに大量の決済の押印などを正確に短時間で実現することが可能となる。
【0073】
また、応用例として、物流に関する大量決済書類の半自動処理化が可能になる。
また、役所等における決済、承認など厳密な書類審査と正確な決済処理が可能となる。特にタイムスタンプ機能は印鑑とRF−IDチップを埋め込んだ紙の2つだけに絶対時刻が書かれることから、セキュリティー機能を強化することができる。
【0074】
また、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】実施例1の高機能印鑑とそのシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】RF−IDチップに記録されている識別情報の構造を示す図である。
【図3】実施例1の高機能印鑑の動作を示すフロー図である。
【図4】高機能印鑑の制御部に設けられたメモリのデータ構造を示す図である。
【図5】実施例2の押印防止機構を備えた高機能印鑑の構成を示す図である。
【図6】実施例3のタイムスタンプ機能を付加した高機能印鑑の構成を示す図である。
【図7】実施例4のRF−IDチップを埋め込んだ文書の識別情報に基づいて、印字パターンを変化させる高機能印鑑の構成を示す図である。
【図8】実施例5の発電部追加した高機能印鑑の構成を示す図である。
【図9】実施例6のスタンプ台に設けた非接点電力伝送装置から電力を供給する高機能印鑑とそのシステムの構成を示す図である。
【図10】実施例7のRF−IDチップの回路の一部である線材を埋め込んだ文書の構成を示す図である。
【図11】従来の印鑑システムの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
10 システム
11 文書
12 押印欄
13 RF−IDチップ
21 高機能印鑑
22 印鑑内蔵型リーダ部
23 交信用アンテナ
24 制御部
25 印字面
26 押印許可表示部
27 メモリ内容送信部
28 メモリ内容転送用アンテナ
29 リーダ装置
210 データ処理装置
31 高機能印鑑
32 ストッパ部
33 ストッパ駆動部
34 ロック部
41 高機能印鑑
42 時計回路
43 メモリ付きRF−IDチップ
51 高機能印鑑
52 可変パターン印字面
53 可変パターン制御部
55 メモリ付きRF−IDチップ
61 高機能印鑑
62 リング
63 発電機
64 アーム
71 高機能印鑑
72 スタンプ台
73 非接点電力伝送装置
101 RF−IDチップ
102 線材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RF−IDチップを埋め込んだ文書に押印する高機能印鑑において、
押印許可を識別するための承認者識別番号と前記文書の種類を示す書類固有番号から構成される識別情報を前記RF−IDチップから交信信号として交信用アンテナを介し受信し、前記交信信号から識別情報を抽出する印鑑内蔵型リーダ部と、
前記印鑑内蔵型リーダ部から転送される前記識別情報と予め前記高機能印鑑に記録した押印許可をするための印鑑識別情報が一致しているかを判定し、一致しているときに押印許可信号を出力する制御部と、
前記押印許可信号を受信して利用者に押印許可を表示する押印許可表示部と、
を具備することを特徴とする高機能印鑑。
【請求項2】
前記制御部は、
前記印鑑識別情報を記録するメモリと、
前記識別情報と前記印鑑識別情報が一致していることを判定する判定部と、
を具備することを特徴とする請求項1に記載の高機能印鑑。
【請求項3】
押印すると前記RF−IDチップから読み取った書類固有番号を前記メモリに記録することを特徴とする請求項2に記載の高機能印鑑。
【請求項4】
前記高機能印鑑は、
前記制御部の前記メモリに記録された前記書類固有番号をメモリ内容転送信号としてメモリ内容転送用アンテナを介して外部装置に送信するメモリ内容送信部を備えることを特徴とする請求項2または3に記載の高機能印鑑。
【請求項5】
前記高機能印鑑内に時計機能を備えた時計回路を内蔵し、前記文書に押印をしたときに前記押印許可信号に基づいて前記時計回路から押印時刻を取得して前記メモリまたは前記文書のRF−IDチップのメモリに記録することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高機能印鑑。
【請求項6】
前記高機能印鑑に複数の印字面を備え、
前記メモリに予め記録した印字パターン識別番号により印字面を選択することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の高機能印鑑。
【請求項7】
前記高機能印鑑に可変パターン印字面と、
前記メモリに予め記録した印字パターン識別番号により印字パターンを選択する可変パターン制御部と、
を具備することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の高機能印鑑。
【請求項8】
前記可変パターン制御部は印刷部を備え、インクジェット方式により構成される前記印刷部の印刷を制御することを特徴とする請求項7に記載の高機能印鑑。
【請求項9】
前記文書に押印する際に前記高機能印鑑に対して上下運動するリングを前記印字面の前面に配設し、前記高機能印鑑に内蔵された発電機に接続される前記リングと繋がるアームにより運動エネルギーを前記発電機へ伝達して発電し当該高機能印鑑の電源とすることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の高機能印鑑。
【請求項10】
前記高機能印鑑の印字面が前記文書への押印時に接触しないようにするロック部を備えたストッパ部を配設し、前記押印許可信号を前記ストッパ駆動部が受信すると前記ロック
部のロックを解除して押印可能にすることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の高機能印鑑。
【請求項11】
前記識別情報に前記文書の有効期限を示す期限情報を有するときは前記期限情報も前記メモリに記録することを特徴する請求項1に記載の高機能印鑑。
【請求項12】
前記メモリ内容転送信号に前記期限情報を含めてメモリ内容転送用アンテナを介して外部装置に送信するメモリ内容送信部を備えることを特徴とする請求項11に記載の高機能印鑑。
【請求項13】
少なくとも承認者識別番号と書類固有番号から構成される識別情報を記録したRF−IDチップが埋め込まれている文書と、
前記識別情報を交信信号として前記RF−IDチップから送信し、前記交信信号を交信用アンテナを介して受信して識別情報を抽出する印鑑内蔵型リーダ部と、前記印鑑内蔵型リーダ部から転送される前記識別情報と予め前記高機能印鑑に記録した押印許可をするための印鑑識別情報が一致しているかを判定し、一致しているときに押印許可信号を出力するとともに前記書類固有番号をメモリに記録する制御部と、前記押印許可信号を受信して利用者に押印許可が出たことを通知する押印許可表示部と、前記制御部の前記メモリに記録された前記書類固有番号をメモリ内容転送信号としてメモリ内容転送用アンテナを介して外部に送信するメモリ内容送信部を備える前記高機能印鑑と、
前記メモリに記録した少なくとも前記書類固有番号を有する情報を、メモリ内容送信部から読み出すために記録内容要求信号を送信し、その後前記情報を読み込むリーダ装置と、
前記リーダ装置に接続され、前記情報を記録するデータ処理装置と、
を具備することを特徴とする高機能印鑑のシステム。
【請求項14】
前記押印をしたときに前記押印許可信号に基づいて時計回路から押印時刻を取得し前記高機能印鑑に記録するとともに、前記印鑑内蔵型リーダ部から前記交信用アンテナを介して押印時刻を送信して前記文書に埋め込まれたメモリ付きRF−IDチップのメモリに記録することを特徴とする請求項13に記載の高機能印鑑のシステム。
【請求項15】
前記高機能印鑑は複数の印字面を備え、
前記メモリに予め記録した印字パターン識別番号と予め前記文書に埋め込まれた前記RF−IDチップに記録した文書印字パターン識別番号の組み合わせにより印字面を選択することを特徴とする請求項13または14に記載の高機能印鑑のシステム。
【請求項16】
前記高機能印鑑に可変パターン印字面を備え、
前記メモリに予め記録した印字パターン識別番号と予め前記文書に埋め込まれた前記RF−IDチップに記録した文書印字パターン識別番号の組み合わせにより印字パターンを選択する可変パターン制御部と、
を具備することを特徴とする請求項13または14に記載の高機能印鑑のシステム。
【請求項17】
前記可変パターン制御部は印刷部を備え、インクジェット方式により印刷をする前記印刷部を制御することを特徴とする請求項16に記載の高機能印鑑のシステム。
【請求項18】
前記高機能印鑑と前記RF−IDチップは、高電力でキャリアを発する非接点電力伝送装置を備えるスタンプ台から電力供給を受けることを特徴とする請求項13〜17のいずれか1項に記載の高機能印鑑のシステム。
【請求項19】
前記RF−IDチップを埋め込んだ前記文書は、前記RF−IDチップを構成する回路の一部である線材を前記文書に埋め込む構成であることを特徴とする請求項13〜18のいずれか1項に記載の高機能印鑑のシステム。
【請求項20】
前記RF−IDチップを前記文書から取り出すと前記RF−IDチップ内部の状態が変化したことを、前記高機能印鑑が判定することを特徴とする請求項19に記載の高機能印鑑のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−250692(P2008−250692A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91458(P2007−91458)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】