説明

高活性コバルト触媒の調製、触媒、およびそれらの使用

実質的に均質分散された小コバルト結晶子を有する担持コバルト含有触媒を調製する方法が提供される。本方法は、硝酸コバルトを担体上に沈積する工程、および次いで担体を二工程分解プロトコルへ付す工程を含む。第一の工程においては、担体は、酸素含有の、水を実質的に含まない雰囲気中で約160℃へ加熱されて、中間分解生成物が形成される。この中間生成物は、次いで、加水分解および還元されるか、または加水分解、焼成および還元される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には、担持コバルト含有触媒に関する。より詳しくは、本発明は、高分散された小粒子サイズコバルト結晶子のコバルト含有触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
コバルトを、シリカまたはアルミナなどの担体上に含む触媒は、アルデヒドおよびニトリルの水素添加などの水素添加反応で有用であることが知られる。それらはまた、フィッシャー−トロプシュプロセスによる炭化水素合成で用いられる。
【0003】
フィッシャー−トロプシュ炭化水素合成プロセスの場合には、特にスラリーバブルカラム反応器で行われる際には、一つの好ましい触媒は、コバルトをチタニア担体上に担持して含む。一般に、これらの触媒中のチタニアは、そのルチル型である。
【0004】
助触媒金属(レニウム、ジルコニウム、マンガン、および第VIII族貴金属など)は、普通には、コバルト触媒と共に用いられて、触媒性能が種々の観点で向上される。例えば、Reまたは第VIII族金属の存在は、Co結晶子の分散に有利な効果を有する。
【0005】
コバルト含有フィッシャー−トロプシュ触媒の活性は、コバルト粒子サイズ6nm超の表面コバルト部位に比例することが示される(参照:非特許文献1)。また、不十分なナノスケール均質性を有する結晶子は、均質なナノスケール分布を有するものより顕著に凝縮する傾向があることが示されている(参照:非特許文献2)。その称するところでは、フィッシャー−トロプシュ触媒の最適コバルト結晶子サイズは、6nmの範囲である。何故なら、これは、より大きな結晶子より多数の表面コバルト部位を提供するからであり、6nm未満の結晶子は、6nm以上のものより低い部位活性を有するからである。非特許文献3を参照されたい。
【0006】
従って、本発明の一つの目的は、適切なコバルト結晶子サイズおよび良好なナノスケール均質性を有するコバルト含有触媒を調製することである。
【0007】
特許文献1は、シリカ担持硝酸コバルトを、He中にNOおよび5vol%未満Oを含むガス混合物へ硝酸塩分解温度で暴露し、次いで、引続いて還元することは、非常に小さな金属粒子の形成をもたらすことを開示する。
【0008】
本発明の他の目的は、小さなコバルト結晶子サイズを、NOおよびHeを用いることなく(またはNOをいかなる不活性または酸化ガスとも一緒に用いることなく)、良好なナノスケール分布で有するコバルト触媒を形成する方法を提供することである。
【0009】
特許文献2においては、コバルト、レニウム、およびチタニアを含む触媒を用いるフィッシャー−トロプシュ炭化水素合成プロセスが開示される。この触媒は、チタニア担体を、硝酸コバルトおよび過レニウム酸の水溶液で、従来の初期湿潤法によって含浸し、乾燥し、次いで焼成して、硝酸コバルトが酸化物へ分解されることによって作製される。レニウムの存在は、いくつかの重要な機能に資する。一つは、酸化コバルトの分散を促進することであり、他は、触媒が活性化(還元)される際に、酸化コバルトの還元を促進することである。コバルトの高度分散および完全還元は、高活性触媒をもたらす。この結果は、しかし、レニウムが比較的高価な商品であることから、コストをかけずには得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際特許出願公開第WO2007/071899A1号
【特許文献2】米国特許第4,568,663号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Journal of Catalysis,1992,137(1),212−224
【非特許文献2】Stud. Surf Sci.and Catalysis,Vol.162,2006,pg 103−110
【非特許文献3】den Breejen,et al.,“On the Origin of the Cobalt Particle Size Effects in Fischer−Tropsch Catalysis”,Journal of American Chemical Society,(2009),131(20),7197−7203)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、コバルトを、より少ない量のレニウムと共に良好に分散する手段の必要性が存在する。実際には、本発明の目的は、高分散された小粒子サイズコバルトを均質なナノスケールコバルト分散で有する触媒(レニウム0.2wt%以下を含む)を調製する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第一の態様においては、本発明は、担持コバルト触媒、好ましくはチタニアまたはシリカ担持コバルト触媒を調製する方法を含み、その際担持コバルト触媒は、高分散された小粒子サイズコバルトを均質なナノスケールコバルト分布で有する。
【0014】
第二の態様においては、本発明は、金属または金属酸化物で助触された担持コバルト含有触媒を調製する方法を含み、その際担持コバルト含有触媒は、高分散された小粒子サイズコバルトを均質なナノスケールコバルト分布で有する。
【0015】
第三の態様においては、本発明は、実質的に均質分散された小コバルト結晶子、および触媒の全重量を基準としてRe約0.01wt%〜0.2wt%を有する担持コバルト含有触媒を調製する方法を含む。
【0016】
本発明の他の態様は、次の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0017】
本発明の種々の態様のそれぞれにおいては、触媒は、硝酸コバルトを触媒担体上に沈積することによって調製される。任意に、助触媒金属溶液がまた、担体上に沈積されてもよい。用いられる場合には、助触媒金属は、硝酸コバルトと共沈積されるか、または硝酸コバルトの沈積の後で沈積されてもよい。好ましくは、そのように処理された担体は、先ず乾燥され、その後二工程分解プロトコルへ付される。第一の工程においては、乾燥された担体は、酸素含有の、水を実質的に含まない雰囲気中で約160℃へ加熱されて、硝酸コバルトが一部分解され、それにより中間分解生成物が形成される。その後、中間生成物は、加水分解され、次いで還元される。任意に、触媒は、空気中で、これらの加水分解および還元の間で焼成されてもよい。
【0018】
前述の方法によって調製された触媒は、表面容積平均直径(Dsv)約11nm以下の高分散されたコバルトを有する。
【0019】
従って、本発明の他の態様は、フィッシャー−トロプシュ炭化水素合成プロセスにおける触媒の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】空気中1℃/分で室温から400℃へ加熱された硝酸コバルト−過レニウム酸含浸チタニア担体のTG/DTAスペクトルである。
【図2】種々の処理に付された硝酸コバルト−過レニウム酸含浸チタニア担体のDRIFTSスペクトルである。
【図3】図2のスペクトル(b)を、図2のスペクトル(c)から差引くことによって得られた差分DRIFTスペクトルである。
【図4−a】本発明以外の方法によって調製されたチタニア担持コバルト触媒の顕微鏡写真である。
【図4−b】本発明以外の方法によって調製されたチタニア担持コバルト触媒の顕微鏡写真である。
【図4−c】本発明以外の方法によって調製されたチタニア担持コバルト触媒のTEM度数分布図である。
【図5−a】本発明以外の方法によって調製されたチタニア担持コバルト触媒の顕微鏡写真である。
【図5−b】本発明以外の方法によって調製されたチタニア担持コバルト触媒の顕微鏡写真である。
【図5−c】本発明以外の方法によって調製されたチタニア担持コバルト触媒の顕微鏡写真である。
【図5−d】本発明以外の方法によって調製されたチタニア担持コバルト触媒のTEM度数分布図である。
【図6−a】本発明の方法に従って調製されたチタニア担持コバルト触媒の顕微鏡写真である。
【図6−b】本発明の方法に従って調製されたチタニア担持コバルト触媒の顕微鏡写真である。
【図6−c】本発明の方法に従って調製されたチタニア担持コバルト触媒の顕微鏡写真である。
【図6−d】本発明の方法に従って調製されたチタニア担持コバルト触媒のTEM度数分布図である。
【図7−a】本発明の方法に従って調製されたチタニア担持コバルト触媒の顕微鏡写真である。
【図7−b】本発明の方法に従って調製されたチタニア担持コバルト触媒のTEM度数分布図である。
【図8−a】本発明以外の方法によって調製されたチタニア担持コバルト触媒の顕微鏡写真である。
【図8−b】本発明以外の方法によって調製されたチタニア担持コバルト触媒の顕微鏡写真である。
【図8−c】本発明以外の方法によって調製されたチタニア担持コバルト触媒のTEM度数分布図である。
【図9−a】本発明の方法に従って調製されたチタニア担持コバルト触媒の顕微鏡写真である。
【図9−b】本発明の方法に従って調製されたチタニア担持コバルト触媒のTEM度数分布図である。
【図10−a】本発明以外の方法によって調製されたチタニア担持コバルト触媒の顕微鏡写真である。
【図10−b】本発明以外の方法によって調製されたチタニア担持コバルト触媒のTEM度数分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の方法で有用な触媒担体には、チタニア、シリカ、クロミア、アルミナ、マグネシア、シリカ−アルミナ、ジルコニアなどが含まれる。典型的には、担体は、チタニアまたはシリカであろう。フィッシャー−トロプシュ炭化水素合成プロセスにおけるこの触媒の使用については、担体は、主にチタニアを含み、その際チタニアの50wt%超はルチル相であることが好ましい。特に好ましい担体は、U. S. Patent 6,124,367に開示される。これは、その全体が本明細書に引用して含まれる。その担体は、主にチタニア(そのアナターゼ型からそのルチル型へ転化されている)、および少量の結合剤(アルミナおよび/またはシリカを含む)を含む。
【0022】
典型的には、用いられるチタニア担体は、表面積約5m/g〜約40m/g、好ましくは10m/g〜30m/gを有するであろう。細孔容積は、約0.2cc/g〜約0.5cc/g、好ましくは0.3cc/g〜0.4cc/gの範囲であろう。典型的には、用いられるシリカ担体は、表面積約100m/g未満を有するであろう。
【0023】
コバルトは、触媒担体上に、当該技術分野で周知の技術を用いて充填される。噴霧乾燥または初期湿潤技術のいずれかによって硝酸コバルト溶液を用いる担体の含浸などである。典型的には、コバルト溶液の濃度および量は、仕上げ触媒中のコバルト充填量を、触媒の全重量を基準として約6wt%〜約20wt%、好ましくは約8wt%〜約12wt%でもたらすのに十分なものであろう。
【0024】
本発明の別の実施形態においては、担体はまた、第IV、VII、またはVIII族助触媒金属、並びにそれらの混合物で処理される。その際、助触媒金属は、触媒組成物の全重量を基準として助触媒金属または金属の混合物の充填量を、約0.01wt%〜約5wt%でもたらすのに十分な量である。この実施形態においては、担体は、硝酸コバルト溶液で含浸した後に、助触媒金属溶液で含浸されてもよいか、または担体は、硝酸コバルトおよび助触媒金属溶液で共含浸されてもよい。
【0025】
本発明の好ましい実施形態においては、助触媒金属は、レニウムであり、担体は、好ましくは、レニウム充填量を、触媒の全重量を基準として約0.01wt%〜約0.2wt%で触媒上にもたらすのに十分な過レニウム酸で処理される。
【0026】
硝酸コバルト、および任意の助触媒金属溶液を沈積した後、そのように処理された担体は、いかなる好都合な手段によっても乾燥される。担持触媒を、回転焼成炉中、約120℃以下の温度へ、処理された担体を乾燥するのに十分な時間(好都合には、30分〜1または数時間)加熱することによるなどである。
【0027】
重要なことには、乾燥された硝酸コバルト含有担体は、二工程分解プロトコルへ付される。第一の工程においては、乾燥された硝酸コバルト含有担体は、触媒が、硝酸塩分解の第一の吸熱(熱重量/示差熱分析(TG/DTA)により測定される)(しかし、第二の吸熱ではない)を経て、かつ1820〜1877cm−1にピークを有するニトロシル種(赤外線走査によって証明される)を形成するのに十分な温度へ加熱される。典型的には、硝酸コバルト含有担体は、160℃±5℃へ、O含有雰囲気(HOを実質的に含まずかつ添加されたNOを含まない)中で加熱されるであろう。当業者は、硝酸コバルト含有担体が、第一の吸熱を経る時を容易に決定することができる。これは、容易に、図1で理解される。例えば、雰囲気は、好ましくはHO約1%未満、より好ましくはHO約0%を含むであろう。特に好ましい雰囲気は、乾燥空気である。第一の分解の後、硝酸コバルト含有担体は、中間物質と呼ばれる。更に、中間物質を、第一の分解後に形成することの更なる証拠は、1820〜1877cm−1における赤外線ピーク(ニトロシル種の形成の指標である)の出現によって示される。従って、中間物質はニトロシル種であり、これは、赤外線走査における1820〜1877cm−1のピークによって証明される。ニトロシル種は、単に、第一の分解の後で存在し、その前でも焼成の後でもない。
【0028】
二工程プロトコル(第一は、実質的に乾燥雰囲気中で行われる)の重要性は、図1〜3を引用して示される。
【0029】
第一に、図1は、乾燥された硝酸コバルト−過レニウム酸含浸チタニア担体の熱重量/示差熱分析(TG/DTA)スペクトルである。これは、空気中1℃/分で、室温から400℃へ加熱される。硝酸塩の分解は、別々の二工程パターン(二つの吸熱事象がプロセスを特徴付ける)に続くことが明らかに理解される。従って、図1は、水を担体から約121℃未満の温度で喪失させ、引続いてNOおよびHOを約160℃で放出し、引続いてNOのみを約210℃で放出することを示す。
【0030】
図2は、(a)新規Co−Re含浸チタニア担持触媒、(b)10%O/He中121℃で、60分の乾燥後、(c)10%O/He中160℃で、60分の焼成後、(d、e)10%HO/Heへ、160℃で5分および15分の暴露後、および(f)Heによる60分のパージ後について、拡散反射赤外フーリエ変換分光法(DRIFTS)のスペクトルである。このスペクトルは、1820〜1877cm−1で現れるピーク(図中、丸で囲まれる)を示す。これは、ニトロシル種を第一の分解工程後に形成することの指標である。この種は、担体上に容易に分散して現れ、加水分解的に不安定である。従って、この中間種を乾燥雰囲気で形成する必要性がある。
【0031】
図3は、図2のスペクトル(b)を図2のスペクトル(c)から差引くことによって得られるDRIFTSスペクトルである。基本的には、図3は、二工程処理プロトコルにおける第一の分解の乾燥雰囲気が、加水分解的に不安定だが重要なニトロシル種の形成をもたらすことを示す。
【0032】
本発明の方法の処理プロトコルに戻って、加熱された硝酸コバルト含有担体を、第一の吸熱を形成する温度(160℃)±5℃で、中間体が担体上に形成および分散するのに十分な時間保持することが望ましい。加熱時間は、ある程度、用いられる加熱系のタイプによるであろう。例えば、加熱が標準的な箱形炉で行われる場合には、加熱時間は、1時間以上であってもよい。一方、加熱が回転焼成炉で行われる場合には、加熱時間は、かなりより短くてもよい。従って、回転焼成炉の場合には、加熱された硝酸コバルト含有担体は、約160℃で、1分未満であってもよい時間、しかし好ましくは少なくとも1分保持されてもよい。より好ましくは、約2分〜約10分であろう。
【0033】
第一の分解工程の後、形成された中間体は、第二の分解工程に付され、その際中間生成物は、加水分解的に分解される。この第二の分解工程は、次いで、還元によって続けられる。任意には、空気中での焼成は、還元の前に行われてもよい。
【0034】
焼成は、典型的には、酸素含有雰囲気(空気流など)中、硝酸塩の分解(TG/DTAによって測定される)による第二の吸熱を経るのに十分な温度で行われ、酸化コバルトを形成する。これらの焼成のための典型的な温度は、約160℃超(約300℃〜約450℃など)で、約1〜約2時間である。
【0035】
還元は、典型的には、H雰囲気流中約250℃〜約450℃の温度で、約1〜2時間行われるであろう。
【0036】
中間体は、典型的には、中間体を湿った雰囲気(湿った空気など)へ、中間体が分解するのに十分な時間および温度で暴露することによって加水分解的に分解される。例えば、温度は、室温〜約160℃以下の範囲で、時間は、約5分〜12時間の範囲であってもよい。その後、加水分解的な分解の生成物は、上記されるものなどの条件下に還元に付される。
【0037】
好ましい態様においては、本発明のプロセスは、含浸された担体が、Re0wt%〜0.2wt%を得られる触媒中にもたらすのに十分な量の過レニウム酸で処理される場合が、特に好ましい。
【0038】
本発明の方法によって調製される触媒は、担体表面上に均質に分散される小コバルト粒子を有するものとして特徴付けられる。実際に、これらの触媒の表面容積粒子サイズ分布(Dsv)は、典型的には10nm以下、即ち約6nmまでである。
【0039】
本発明に従って調製されたコバルト−レニウム、チタニア担持触媒は、特に、フィッシャー−トロプシュ合成プロセスによる炭化水素合成で用いるのに適切である。何故なら、当該技術的分野で知られるように、コバルトの高分散および完全還元は、より活性な触媒をもたらすからである。重要なことには、本発明の触媒は、コバルトの高分散および完全還元を達成し、およびレニウム含有量を実質的に低減する。
【0040】
従って、本発明の一実施形態は、本明細書に開示および請求されるように調製された触媒を、フィッシャー−トロプシュ合成プロセスで用いることを含む。入手可能な文献に記載されるように、フィッシャー−トロプシュプロセスは、温度約175℃〜約400℃、圧力約1〜100バールで行われる。H/CO比は、0.5/1〜約4/1の範囲である。好ましくは、本発明に従って作製された触媒は、プロセスにおいて、ガス空間速度約1,000〜25,000のスラリーバブルカラム反応器中で用いられる。好ましいスラリーバブルカラムの運転は、米国特許第5,348,982号に記載される。これは、本明細書に引用して含まれる。
【0041】
実験測定
A.Dsv分析
本明細書に記載される触媒のDsv(表面容積平均直径)データを、所望触媒について、Philips CM 12またはPhilips CM 200透過電子顕微鏡(120kVおよび200kVで、それぞれ53,000倍および54,000倍の画面倍率で運転される)による約20〜80個の無作為画像を収集することによって得た。全ての場合に、データを、Gatanのデジタル顕微鏡写真プログラムv.2.5を用いるGatan CCDカメラシステムにより、デジタル画像として収集した。デジタル顕微鏡写真プログラムの線画トールを、各画像化された金属粒子の直径を記録するのに用いた。これから、統計的に決定されたDsvが得られる。Dsvを計算するには、粒子サイズ分布の棒グラフが、TEM(透過電子顕微鏡)測定から得られる。棒グラフから、Dsvが、次式によって得られる。
Dsv={sum(N)}/{sum(N)}
式中、Nは、直径Dの粒子数である。
【0042】
B.TG/DTA/MS分析
TG/DTAデータを、Mettler TA 850熱分析計(これに、Balzer質量分析計が、流出ガスを監視するのに接続される)で収集した。触媒試料は、空気流中、速度1℃/分で加熱された。
【0043】
C.FTIR測定
DRIFTS(拡散反射赤外フーリエ変換分光法)の測定値を、液体窒素冷却されたMCT検知器を装備したNicolet 670 FTIR分光装置で得た。
【実施例】
【0044】
次の実施例および比較例において、多数のコバルト−レニウム触媒を調製した。調製された全ての触媒を、全く同じチタニア担体を用いて作製した。全ての場合に、硝酸コバルトおよび過レニウム酸の溶液を、回転タンブラー中で担体上に噴霧して、良好に混合された易流動性の含浸物が確保された。その後、含浸された担体を、異なる熱処理へ付した。得られた触媒を、透過電子顕微鏡(TEM)特性化およびDsv測定へ付した。
【0045】
1.チタニア担体の調製
(a)チタニア担体
チタニア担体を、次のように噴霧乾燥によって調製した。スラリー原料を、Degussa P−25ヒュームドTiO34.4部(重量)、アルミナクロロヒドロールゾル(Al23.5wt%を含む)8.8部、シリカゾル(Nyacol 2034 DI、SiO35wt%を含む)0.6部、および水56.2部を混合することによって調製した。この混合物を、直径9フィートの噴霧乾燥装置へ、速度約13ポンド/分で、10,000rpmで旋回する9インチのホィール噴霧装置を通して付した。噴霧乾燥室を、噴霧の間、入口空気温度約285℃および出口温度約120℃で運転した。生成物は、平均サイズ約60ミクロン、並びにTiO94wt%、Al5.4wt%、SiO0.6wt%の組成を有する固体球状粒子からなった。
【0046】
噴霧乾燥された担体を、1000℃で焼成して、担体(チタニアの93wt%は、X線回折(ASTM D3720−78)によって決定された際にルチル相であった)が製造された。チタニアの残りは、アナターゼ相であった。担体は、表面積17m/gおよび水孔容積0.33cc/gを有した。
【0047】
(b)コバルトおよびレニウムの沈積
触媒前駆体(乾燥含浸物)を、チタニア担体を硝酸コバルトおよび過レニウム酸の溶液と共に、ベンチスケールの回転タンブラー中で噴霧し、10分間振盪されることによって調製して、十分混合された易流動性の含浸物が確保された。二つのタイプの試料を調製した。即ち、(i)Co6.9%およびRe0.12%を有する乾燥含浸物(以下、「低Re含浸物」という)、および(ii)Co7.0%およびRe0.58%を有する含浸物(以下、「高Re含浸物」という)である。低Re含浸物の場合には、担体は、Co15.8wt%およびRe0.28wt%の溶液で含浸され、引続いて空気中4℃/分で121℃へ加熱されて、含浸物が乾燥された。高Re含浸物の場合には、担体は、Co14.7wt%およびRe1.2wt%の溶液で含浸された。各含浸の後、含浸物は、空気中4℃/分で121℃へ加熱することによって乾燥された。
【0048】
2.比較例1
乾燥された低Re含浸物を、空気中4℃/分で160℃へ加熱し(Co硝酸塩が一部分解される)、その温度で1時間保持し、引続いて4℃/分で300℃へ加熱し、1時間その温度で保持した(酸化コバルトが形成される)。この焼成された物質を、100%H中375℃および雰囲気圧力で90分間還元した。室温へ冷却した後、触媒を、1%O中で不動態化し、次いで空気乾燥して、TEMによる分析が可能にされた。図4aおよび4bは、異なるナノスケール均質性を有するCo結晶子(約13nm)を示す。図4cは、分析された物質のTEM棒グラフである。
【0049】
3.比較例2
乾燥された低Re含浸物を、空気中4℃/分で160℃へ加熱し(Co硝酸塩が一部分解される)、その温度で1時間保持した。そのように加熱された含浸物を、乾燥した不活性雰囲気中で室温へ冷却するままにし、次いで、比較例1に記載されるように、還元および不動態化した。比較例2の結果は、結晶子は不十分に分布されかつ大きい(>16nm)ことを示す。図5a、5b、および5cは、不十分に分散された大きな(>16nm)Co粒子を示す。TEM棒グラフを、図5dに示す。
【0050】
4.実施例1および2
乾燥された低Re含浸物を、空気中4℃/分で160℃へ加熱し(Co硝酸塩が一部分解される)、その温度で1時間保持した。そのように加熱された含浸物を、室温へ冷却し、次いで終夜、それを水の開放ビーカーと一緒に容器中に置くことによって高湿度雰囲気へ暴露し、それにより中間体が加水分解的に分解された。
【0051】
実施例1については、加水分解的に分解された中間体の試料を、100%H中375℃で還元し、不動態化し、TEM分析へ付した。結果を、図6a、b、c、およびdに示す。図から分かるように、この実施例1の触媒のCo結晶子は、良好に分布され、Dsv7.69nmを有する。
【0052】
実施例2については、加水分解的に分解された中間体の他の試料を、空気中4℃/分で121℃へ加熱してその温度で1時間保持し、次に4℃/分で160℃へ加熱してその温度で1時間保持し、最終的に4℃/分で300℃へ加熱してその温度で1時間保持した。この焼成された試料を、次いで実施例1に対して記載されるように、還元し、不動態化し、TEM分析へ付した。結果を、図7aおよび7bに示す。図から分かるように、この実施例2の触媒のCo結晶子は、良好に分布され、Dsv8.15nmを有する。
【0053】
比較例3
乾燥された低Re含浸物を、100%H中375℃で還元し、不動態化し、TEM分析へ付した。結果を、図8a、8b、および8cに示す。図から分かるように、この比較例3の触媒のCo結晶子は、良好に分布されない。即ち、二つのグループの粒子サイズがあり、Dsvは約14nmである。
【0054】
実施例3
乾燥された高Re含浸物を、空気中4℃/分で160℃へ加熱し(Co硝酸塩が一部分解される)、その温度で1時間保持した。そのように加熱された含浸物を、室温へ冷却し、次いで終夜、それを水の開放したビーカーと一緒に容器中に置くことによって高湿度雰囲気へ暴露し、それにより加水分解された中間体が形成された。加水分解された中間体を、次いで、100%H中375℃で還元し、不動態化し、TEM分析へ付した。結果を、図9aおよび9bに示す。図から分かるように、この実施例3の触媒のCo結晶子は、良好に分布され、Dsv7.7nmを有する。
【0055】
比較例4
乾燥された高Re含浸物を、空気中4℃/分で160℃へ加熱し(Co硝酸塩が一部分解される)、その温度で1時間保持した。そのように加熱された含浸物を、次いで100%H中375℃で還元し、不動態化し、TEM分析へ付した。結果を、図10aおよび10bに示す。図から分かるように、この比較例4の触媒のCo結晶子は、良好に分布されず、Dsv約11nmを有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コバルト含有触媒を調製する方法であって、
触媒担体を、硝酸コバルト水溶液で含浸する工程;
コバルトを含浸させた前記担体を乾燥する工程;
前記乾燥担体を、水を実質的に含まずかつ添加されたNOを含まない酸素含雰囲気中で加熱する工程であって、前記加熱は、硝酸塩分解の第一の吸熱が生じる温度で、乾燥された前記担体が第一の吸熱を経るのに十分な時間為され、それにより中間物質が提供される工程;および
前記中間物質を、前記中間物質を加水分解的に分解し、引き続き還元する工程へ付し、それによりコバルト含有触媒が得られる工程
を含む方法。
【請求項2】
前記触媒を、前記中間物質を加水分解的に分解した後、かつ還元の前に、焼成する工程を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記担体は、チタニア担体であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記酸素含有雰囲気は、乾燥空気であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記中間物質は、赤外線走査のピークを1820〜1877cm−1に有するニトロシル種であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ニトロシル種は、前記加熱の後に存在するが、前記焼成の後には存在しないことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記乾燥担体は、160℃へ加熱されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項8】
前記加熱担体は、160℃で、1分未満〜1時間超の時間保持されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記担体は、回転焼成炉中で、160℃へ加熱され、その温度で2〜10分間保持されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記担体を、実質的に第IV、VIIおよびVIII族金属、並びにそれらの混合物からなる群から選択される助触媒金属で含浸し、その後含浸された担体を加熱して、硝酸コバルトを一部分解する工程を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記助触媒金属は、金属または金属の混合物の充填量を、触媒の全重量を基準として0.01wt%〜5wt%とするのに十分な量で用いられることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記助触媒金属は、レニウムであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記レニウムは、触媒のレニウム充填量を、触媒の全重量を基準として0.2wt%以下とするのに十分な量であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
コバルトおよびレニウムを含み、前記レニウムの量は、触媒の全重量を基準として0.2wt%以下であり、前記コバルトは、透過電子顕微鏡によって明示された際に高度に分散され、かつ前記コバルトは、Dsv10nm以下を有することを特徴とするチタニア担持触媒。
【請求項15】
前記レニウムは、触媒の全重量を基準として0.01wt%〜0.2wt%の量で存在することを特徴とする請求項14に記載の触媒。
【請求項16】
前記コバルトは、触媒の全重量を基準として6wt%〜20wt%の量で存在することを特徴とする請求項15に記載の触媒。
【請求項17】
担体中の前記チタニアの50wt%超は、ルチル相であることを特徴とする請求項16に記載の触媒。
【請求項18】
フィッシャー−トロプシュ炭化水素合成プロセスにおける、請求項14〜17のいずれかに記載の触媒の用途。
【請求項19】
触媒担体を、硝酸コバルト水溶液で含浸する工程;
コバルトを含浸させた前記担体を乾燥する工程;および
前記乾燥担体を、水を実質的に含まずかつ添加されたNOを含まない酸素含雰囲気中で加熱する工程であって、前記加熱は、硝酸塩分解の第一の吸熱を通して硝酸コバルトを一部分解するのに十分な温度および時間で為され、それにより組成物が形成される工程
によって形成される組成物。
【請求項20】
前記酸素含有雰囲気は、乾燥空気であり、前記乾燥担体は、160℃±5℃へ加熱されることを特徴とする請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記乾燥担体は、1分未満〜1時間超加熱されることを特徴とする請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記担体を、実質的に第IV、VIIおよびVIII族金属、並びにそれらの混合物からなる群から選択される助触媒金属で含浸する工程であって、含浸された前記担体を加熱して、硝酸コバルトを一部分解する工程を含むことを特徴とする請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記助触媒金属は、レニウムであることを特徴とする請求項22に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−a】
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【図4−b】
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【図4−c】
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【図5−a】
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【図5−b】
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【図5−c】
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【図5−d】
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【図6−a】
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【図6−b】
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【図6−c】
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【図6−d】
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【図7−a】
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【図7−b】
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【図8−a】
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【図8−b】
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【図8−c】
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【図9−a】
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【図9−b】
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【図10−a】
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【図10−b】
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【公表番号】特表2011−528984(P2011−528984A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520042(P2011−520042)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/004293
【国際公開番号】WO2010/011333
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】