説明

高流動性ポリアミド

本発明は、多官能性化合物によって変性されたポリアミド、並びに該ポリアミドの製造方法及びこのポリアミドを含む組成物に関する。より詳細には、本発明は、線状マクロ分子鎖及び星形マクロ分子鎖を有するポリアミドの製造方法に関する。得られるポリアミドは、一方で成形型充填速度及び品質を改善するため、他方でフィラーを高い含有率で含む成形可能な組成物を製造するための、最適な機械的特性及び流動学的特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多官能性化合物によって変性されたポリアミド、並びに該ポリアミドの製造方法及びこのポリアミドを含む組成物に関する。より詳細には、本発明は、線状マクロ分子鎖及び星形マクロ分子鎖を有するポリアミドの製造方法に関する。こうして得られるポリアミドは、一方で成形型充填速度及び品質を改善するため、他方でフィラーを高い含有率で含む成形可能な組成物を調製するための、最適な機械的特性及び流動学的特性を示す。
【背景技術】
【0002】
近年、高い溶融流動性(メルトフロー)を示す分岐鎖構造、特に星形構造を有するポリアミドの開発をよく見かける。これらのポリアミドは、様々な物品、例えばフィルム、ヤーン、ファイバー又は成形物品(フィラーを含むもの又は含まないもの)の製造に用いることができる。特に、P. J. Flory(JACS, 70, 2709-18, 1948)によって報告された星形ポリアミド並びに国際公開WO97/24388号及び同WO99/64496号に挙げられたものを挙げることができる。
【0003】
ABタイプのポリアミド、例えばPA6の流動学的特性及び機械的特性を高めるために多官能性化合物を用いることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO97/24388号
【特許文献2】国際公開WO99/64496号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】P. J. Flory, JACS, 70, 2709-18, 1948
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このタイプのポリアミドであって補強用又は増量用フィラーの存在下又は不在下で流動学的特性と機械的特性との間のもっと良好な折衷点を示し、重合の際に星形鎖の成長及び濃度が非常に良好に制御されながら容易に調製されるものを得ることについて、要望が存在していた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的で、本発明は、線状マクロ分子鎖及び星形構造のマクロ分子鎖を含み、少なくとも次の(a)〜(c):
(a)次の一般式(I):
【化1】

のモノマー;
(b)次の一般式(IIa)及び/又は(IIb):
【化2】

のモノマー;
(c)次の一般式(III):
【化3】

のモノマー
{ここで、
1は少なくとも2個の炭素原子を有する直鎖状又は環状の芳香族又は脂肪族炭化水素基(これはヘテロ原子を含んでいることができる)であり、
Aは共有結合又は1〜6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基であり、
Zは第1アミン基又はカルボキシル基を表し、
2及びR3は同一であっても異なっていてもよく、2〜20個の炭素原子を有する置換又は非置換の脂肪族、脂環式又は芳香族炭化水素基(これはヘテロ原子を含んでいることができる)を表し、
Xはカルボキシル基又は第1アミン基を表し、
Yは、Xがカルボキシル基を表す場合には第1アミン基であり、Xが第1アミン基を表す場合にはカルボキシル基であり、そして
mは3〜8の範囲の整数である}
を含むモノマー混合物の重縮合によって得ることができる変性ポリアミドを提供するものである。
【0008】
モノマー混合物中の式(I)のモノマーのモル濃度は、100%への残りの部分が一般式(IIa)及び(IIb)のモノマーに相当するものとして、0.01〜1%の範囲、好ましくは0.03〜0.5%の範囲である。
【0009】
式(I)のモノマー対式(III)のモノマーのモル比は、0.01〜0.4の範囲である。
【0010】
式(III)のモノマーの濃度は、100%への残りの部分が一般式(IIa)及び(IIb)のモノマーに相当するものとして、好ましくは0.1〜2%の範囲、より一層好ましくは0.2〜1%の範囲である。
【0011】
重合反応は、随意に重縮合開始剤の存在下で、最大重合度が得られるまで実施するのが有利である。
【発明の効果】
【0012】
これらの条件下で、本発明の方法は、信頼できる工業的態様において、所望の機械的特性及び流動学的特性にとって最適な所定濃度の星形鎖を含むポリマーを得ることを可能にする。例えば、この星形ポリアミド鎖の数を基準とする濃度は、ポリアミド鎖の総数に対して有利には0.5〜35%の範囲、好ましくは1〜30%の範囲である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
前記重縮合は、式(I)の多官能性化合物なしでのアミノ酸又はラクタムの重縮合について通常用いられるプロセス条件に従って、実施される。この重縮合は、連続式で実施することもでき、バッチ式で実施することもでき、半連続式で実施することもできる。
【0014】
ポリアミド重縮合プロセスは一般的に、
・式(I)〜式(III)のモノマーの混合物を、撹拌しながら加圧下で重縮合開始剤(一般的に水)と共に、加熱し;
・この混合物をこの温度に所定時間保ち、次いで圧力を下げ、生成した水を除去することによって重縮合を続けるために、不活性ガス(例えば窒素)流下においてこの混合物の融点より高い温度に所定時間保つ:
ことを含む。
【0015】
線状鎖又は星形鎖のモル濃度は、式(III)の二官能性化合物対式(I)の多官能性化合物の比に応じて決まるものである。重合は特に、熱力学的平衡に達するまで、実施される。
【0016】
もちろん、星形鎖のモル濃度は、モノマー混合物中の式(I)の多官能性モノマーのモル濃度に応じて決まるものでもある。
【0017】
さらに、ポリマーの分子量は、式(I)の多官能性モノマーのモル濃度及び式(IIa)又は(IIb)の二官能性モノマーのモル濃度に応じて決まってくる。
【0018】
用いる星形鎖の濃度を計算するためのモデルは、国際公開WO99/64496号に記載されたFarinaのモデルである。このモデルは、最終ポリマー中に存在するすべての線状鎖及びすべての星形鎖のみを専ら考慮に入れる静的モデルである。
【0019】
重合プロセスは動的プロセスであり、ポリマーの完全な転化を達成する前の反応媒体は、多官能性モノマーの1、2又は3個の官能基との反応に相当するもののように、様々なタイプの分子鎖の混合物を含む。例えば、テトラカルボキシルモノマーの場合、反応媒体は、1、2又は3個のカルボキシル官能基が反応していない鎖を含む。
【0020】
Yuanにより提唱されて国際公開WO99/64496号に記載されているモデルは、これらの様々な分子鎖の存在及びその動的変化を考慮に入れるものである。従って、このモデルでは、任意の転化度についてポリマー中の線状鎖の真の量を計算することが可能である。
【0021】
従って、本発明の方法は、反応の熱力学的平衡に達するまで実施された重合について、モノマー混合物中の式(I)の多官能性モノマー及び式(III)の二官能性モノマーのモル濃度を決めることによって決まる分子量を有し且つこれらの2つのタイプのモノマーの間のモル比によって制御される星形鎖/線状鎖の比(数を基準)を有するポリアミドを得ることを可能にする。
【0022】
従って、この星形鎖及び線状鎖の混合物を含むポリアミドの製造方法は、容易に実施することができる上に、所望の最適な流動学的特性及び機械的特性を示すポリアミドを再現性よく且つ工業的に製造することを可能にする。
【0023】
さらに、本発明に従うポリアミドは、同様の分子量及び機械的特性について、既知の線状ポリアミドより高いメルトフローインデックスを示すので、フィラー含有組成物をより一層容易に、即ちより一層高い速度で、成形型中に注入/射出することができる。この組成物はまた、特に成形型が複雑な形状を有する場合に、より一層均質且つ完全な成形型の充填を達成することをも可能にする。
【0024】
本発明に従えば、一般式(I)のモノマーは、基R1を含み、これは有利にはフェニル又はシクロヘキサニルタイプの三価基(これらは置換されていても置換されていなくてもよい)、多数(有利には2〜12個)のメチレン基を有する四価ジアミノポリメチレン基、例えばEDTA(エチレンジアミン四酢酸)から誘導される基、八価シクロヘキサノニル又はシクロヘキサジノニル基、グリセロール、ソルビトール、マンニトール若しくはペンタエリトリトール等のポリオールとアクリロニトリルとの反応から得られる化合物から誘導される基であることができる。本発明の好ましい基R1は、四価シクロヘキサノニル基のような脂環式基である。
【0025】
基Aは、メチレン又はポリメチレン基、例えばエチレン、プロピレン又はブチレン基であるのが好ましい。
【0026】
本発明の好ましい実施形態に従えば、mは3超の整数を表し、4、5又は6であるのが有利である。
【0027】
本発明の別の特徴に従えば、一般式(III)の基R3は、2〜36個の炭素原子を有することができるポリメチレン基又は脂環式若しくは芳香族基を表す。
【0028】
式(III)の化合物としては、例えばコハク酸、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸又はジ−(β−カルボキシエチル)シクロヘキサノンを挙げることができる。また、ヘキサメチレンジアミン、5−メチルペンタメチレンジアミン、m−キシリレンジアミン、イソホロンジアミン又は1,4−ジアミノシクロヘキサンのようなジアミン化合物を挙げることもできる。
【0029】
式(II)のモノマーは、ラクタム又はアミノ酸、例えばε−カプロラクタム、ラウリルラクタム及びそれらのω−アミノ酸であるのが有利である。
【0030】
本発明に従えば、重縮合は、ラクタム又はアミノ酸の重縮合によるポリアミドの合成、例えばポリカプロアミドの合成において慣用的に用いられる重縮合開始剤の存在下で、実施される。例として、水及び無機酸を挙げることができる。この開始剤は、モノマー混合物中において0.01〜5重量%の範囲の重量濃度で加えるのが有利である。
【0031】
重縮合から得られるポリマーは、随意に造形プロセス用の供給物中の原料として用いるための他の成分と混合した後に、粒体(顆粒、グラニュール)の形にすることができる。例えば、ポリマーを水で冷却して棒状体の形に押出するのが有利である。これらの棒状体を次いで細断して、粒体を作る。
【0032】
未縮合モノマーを(特に式(IIb)のモノマーがカプロラクタムである場合に)除去するために、前記粒体を水で洗浄し、次いで真空下で乾燥させる。
【0033】
本発明はまた、少なくとも本発明のポリアミドを含む組成物にも関する。
【0034】
本発明に従う組成物は、本発明に従うポリアミドを組成物の総重量に対して20〜95重量%、好ましくは30〜80重量%含む。
【0035】
この組成物はまた、所望の最終特性に応じて、ポリアミドと1種以上の他のポリマー(例えば別のポリアミド、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリ乳酸樹脂、ポリスルホン樹脂、エラストマー樹脂又はこれらのブレンド)とのブレンドを含むこともできる。他のポリアミドとしては、半結晶質又は非晶質ポリアミド、例えば脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、及びより一般的には芳香族若しくは脂肪族飽和二酸と芳香族若しくは脂肪族飽和第1ジアミンとの間、又はラクタム、アミノ酸若しくはこれら各種モノマーの混合物の間の重縮合によって得られる線状ポリアミド等を挙げることができる。例として、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)、テレフタル酸及び/若しくはイソフタル酸から得られるポリフタルアミド(例えばAmodelの商品名で販売されているポリアミド)、又はアジピン酸、ヘキサメチレンジアミン及びカプロラクタムから得られるコポリアミドを挙げることができる。
【0036】
前記組成物は、補強用又は増量用フィラーを含むことができ、これは例えば繊維質フィラー及び/又は非繊維質フィラーであることができる。
【0037】
繊維質フィラーとしては、ガラス繊維、炭素繊維、天然繊維、アラミド繊維及びナノチューブ、特にカーボンナノチューブを挙げることができる。天然繊維としては、麻及び亜麻を挙げることができる。非繊維質フィラーの中では、すべての粒状フィラー、層状フィラー及び/又は剥離性若しくは非剥離性ナノフィラー、例えばアルミナ、カーボンブラック、アルミノケイ酸塩クレー、モンモリロナイト、リン酸ジルコニウム、カオリン、炭酸カルシウム、ケイ藻土、グラファイト、マイカ、シリカ、二酸化チタン、ゼオライト、タルク、ウォラストナイト、ポリマー系フィラー、例えばジメタクリレート粒子、ガラスビーズ又はガラス粉末等を特に挙げることができる。
【0038】
本発明に従えば、前記組成物が数種のタイプの補強用フィラーを含むことも完全に可能である。好ましくは、最も広く用いられているフィラーはガラス繊維、例えば「チョップド」タイプのもの、特に7〜14μmの直径を有するものであることができる。これらのフィラーは、繊維とポリアミドマトリックスとの間の機械的付着を保証する表面寸法を示すものであることができる。
【0039】
補強用又は増量用フィラーの重量濃度は、組成物の総重量に対して有利には1〜80重量%の範囲、好ましくは15〜60重量%の範囲である。
【0040】
本発明の組成物は、ポリアミド組成物の製造において慣用的に用いられている添加剤を追加的に含むことができる。例えば、潤滑剤、難燃剤、可塑剤、成核剤、耐衝撃性改良剤、触媒、光及び/若しくは熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、艶消し剤、成形助剤又はその他の慣用の添加剤を挙げることができる。
【0041】
特に、耐衝撃性改良剤をポリアミド組成物に加えることができる。これは一般的にこの目的のために用いることができるエラストマー系(弾性)ポリマーであって、ポリアミドマトリックス中の微細分散をも可能にするものである。典型的には、分散エラストマーの球形領域は1μm未満の平均直径を有する。好適なエラストマーの例には、エチレン/アクリル酸エステル/無水マレイン酸エラストマー、エチレン/プロピレン/無水マレイン酸エラストマー又はEPDM(エチレン/プロピレン/ジエンモノマー)エラストマー(随意に無水マレイン酸がグラフトされたもの)がある。エラストマーの重量濃度は、組成物の総重量に対して0.1〜30%の範囲であるのが有利である。
【0042】
特に、ポリアミドと反応する官能基を含む耐衝撃性改良剤が好ましい。例えば、エチレン、アクリル酸エステル又はグリシジルメタクリレートターポリマー、エチレン及びアクリル酸ブチルエステルコポリマー、エチレン、アクリル酸n−ブチル及びメタクリル酸グリシジルコポリマー、エチレン及び無水マレイン酸コポリマー、エチレン/(メタ)アクリル酸イオノマー、無水マレイン酸がグラフトされたスチレン/マレイミドコポリマー、無水マレイン酸で変性されたスチレン/エチレン/ブチレン/スチレンコポリマー、無水マレイン酸がグラフトされたスチレン/アクリロニトリルコポリマー、無水マレイン酸がグラフトされたアクリロニトリル/ブタジエン/スチレンコポリマー、並びにそれらの水素化誘導体を挙げることができる。組成物全体中のこれらの剤の重量割合は、特に0.1〜40%の範囲である。
【0043】
これらのフィラー及び添加剤は、各フィラー又は添加剤に適した通常の手段により、例えば重合の際又は溶融ブレンドするに当たって、変性ポリアミドに加えることができる。
【0044】
本発明はまた、本発明に従う組成物を造形することによって得られる物品にも関する。これらの組成物は、工業用プラスチックの分野において、例えば射出成形、射出/吹込成形、押出又は押出/吹込成形によって得られる物品の製造用の出発原料として、用いることができる。通常の実施形態に従えば、変性ポリアミドは例えば二軸スクリュー押出装置において棒状体の形で押出され、これが次いで細断されて粒体となる。次いで、製造された粒体を溶融させ、溶融状態の組成物を射出成形装置中に供給することによって、成形部品が製造される。
【0045】
かかる組成物は、物品の製造、特に、自動車産業、コネクタ産業、電気部品又は各種アクティビティ(例えばスポーツアクティビティやレジャーアクティビティ)用の付属品等用の成形物品の製造に、用いることができる。
【0046】
発明の原理の理解を容易にするために本明細書中では特定言語を用いているが、この特定原語の使用によって発明の範囲が限定されることは企図しないことを理解されたい。この分野の当業者であれば自身の一般的知識に基づいて特に変更及び改良を検討することができる。
【0047】
用語「及び/又は」等には、「及び」等の意味、「又は」等の意味及びこの用語に関連した要素のすべての他の可能な組合せの意味が包含される。
【0048】
本発明の他の詳細又は利点は、もっぱら指標として以下に与えた実施例からより一層明らかになるだろう。
【実施例】
【0049】
実験の部
【0050】
例1 ポリアミドの合成
【0051】
撹拌手段を含む加熱されたオートクレーブ中で重合を実施する。このオートクレーブに、カプロラクタム及び2,2,6,6−テトラ(β−カルボキシエチル)シクロヘキサノン(T4と称される)を、蒸留水及びアジピン酸(T2と称される)と共に、加える。
【0052】
前記シクロヘキサノン化合物及びその合成方法は、Herman Alexander Buison及びThomas W. Rienerによる論文「The Chemistry of Acrylonitrile II - Reactions with Ketones」, JACS, 64, 2850 (1942)に記載されている。撹拌された混合物を6バール下で265℃の温度に加熱する。この温度及び圧力に2時間保つ。
【0053】
ポリアミドC1は国際公開WO97/24388号のポリアミドに相当し、ポリアミドC2は国際公開WO99/64496号のポリアミドに相当し、そしてポリアミドC3は高められた流動性を有する慣用の不平衡ポリアミドである。
【0054】
得られた結果及びポリアミドの特性を下記の表1にまとめる。
【0055】
【表1】

【0056】
機械的特性を表2にまとめる。
【0057】
【表2】

【0058】
例2 フィラー含有ポリアミド組成物
【0059】
L/D比=36の9本のバレルを含むWerner and Pfleiderer ZSK 40タイプの二軸スクリュー押出機を用いて溶融ブレンドすることにより、ポリアミドマトリックスを含む組成物にガラス繊維を充填する。こうして、上に挙げたポリアミドと共にガラス繊維を30重量%又は50重量%含む組成物を製造する。押出温度は230〜260℃の範囲とし、スクリューの回転速度を270にする。押出処理量は40kg/時間とする。ガラス繊維を溶融ポリマー中にゾーン4において導入することによって供給する。
【0060】
これらの組成物の特性を下記の表3及び4にまとめる。
【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
螺旋試験は、180トンのBattenfeldプレス下で270℃の温度、80℃の成形型温度及び80kg/cm2の射出圧力で、成形型中に組成物を厚さ1mm、幅40mmの螺旋の形で射出することから成る。射出時間は1.5秒間とする。試験の結果は、的確に組成物で満たされた成形型長さによって決定される。
【0064】
本発明に従うポリアミドは、先行技術のポリアミドと比較して、調製するのが簡単でありながら、補強用又は増量用フィラーの不在下でも存在下でも、機械的特性と流動学的特性との間のはるかに良好な折衷点を示すことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも次のモノマー:
(a)次の一般式(I):
【化1】

のモノマー;
(b)次の一般式(IIa)及び/又は(IIb):

のモノマー;
(c)次の一般式(III):
【化3】

のモノマー:
{ここで、
1は少なくとも2個の炭素原子を有する直鎖状又は環状の芳香族又は脂肪族炭化水素基(これはヘテロ原子を含んでいることができる)であり、
Aは共有結合又は1〜6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基であり、
Zは第1アミン基又はカルボキシル基を表し、
2及びR3は同一であっても異なっていてもよく、2〜20個の炭素原子を有する置換又は非置換の脂肪族、脂環式又は芳香族炭化水素基(これはヘテロ原子を含んでいることができる)を表し、
Xはカルボキシル基又は第1アミン基を表し、
Yは、Xがカルボキシル基を表す場合には第1アミン基であり、Xが第1アミン基を表す場合にはカルボキシル基であり、そして
mは3〜8の範囲の整数である}
を含むモノマー混合物の重縮合によって得られるポリアミドであって、
モノマー混合物中の式(I)のモノマーのモル濃度が、100%への残りの部分が一般式(IIa)及び(IIb)のモノマーに相当するものとして、0.01〜1%の範囲であり、そして
式(I)のモノマー対式(III)のモノマーのモル比が0.01〜0.4の範囲である、前記ポリアミド。
【請求項2】
式(III)のモノマーのモル濃度が、100%への残りの部分が一般式(IIa)及び(IIb)のモノマーから成るものとして、0.1〜2%の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド。
【請求項3】
星形ポリアミド鎖の濃度がポリアミド鎖の総数に対して0.5〜35%(数を基準)の範囲であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリアミド。
【請求項4】
基R1がシクロヘキサノイル基であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド。
【請求項5】
3が2〜36個の炭素原子を有するポリメチレン基であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド。
【請求項6】
式(III)の化合物がコハク酸、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、ジ−(β−カルボキシエチル)シクロヘキサノン、ヘキサメチレンジアミン、5−メチルペンタメチレンジアミン、m−キシリレンジアミン、イソホロンジアミン及び1,4−ジアミノシクロヘキサンより成る群から選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミド。
【請求項7】
式(IIb)のモノマーがε−カプロラクタムであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のポリアミド。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の少なくとも1種のポリアミドを含む組成物。
【請求項9】
組成物の総重量に対して請求項1〜7のいずれかに記載のポリアミドを20〜95重量%含む組成物。
【請求項10】
補強用フィラー又は増量用フィラーを含むことを特徴とする、請求項8又は9に記載の組成物。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれかに記載の組成物を造形することによって得られる物品。

【公表番号】特表2013−506725(P2013−506725A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531359(P2012−531359)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064355
【国際公開番号】WO2011/039183
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(508076598)ロディア オペレーションズ (98)
【氏名又は名称原語表記】RHODIA OPERATIONS
【住所又は居所原語表記】40 rue de la Haie Coq F−93306 Aubervilliers FRANCE
【Fターム(参考)】