説明

高温アンモニアSCR触媒とその使用方法

アンモニアにより窒素酸化物(「NO」)を選択的に還元するための触媒と方法とを提示する。この触媒はZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−18、ZSM−23、MCM ゼオライト、モルデナイト、ファージャサイト、フェリエライト、ゼオライトベータおよび前記各物質の各混合物からなる群から選択されたゼオライトまたはゼオライト混合物を含む第一成分と、セリウム、鉄、銅、ガリウム、マンガン、クロム、コバルト、モリブデン、スズ、レニウム、タンタル、オスミウム、バリウム、ホウ素、カルシウム、ストロンチウム、カリウム、バナジウム、ニッケル、タングステン、アクチニド、アクチニド混合物、ランタニド、ランタニド混合物および前記各物質の各混合物からなる群から選択された少なくとも一つの物質を含む第二成分と、任意に酸素貯蔵物質と、任意に無機酸化物とを含有する。この触媒は高温でアンモニアにより選択的に窒素酸化物を窒素に還元する。この触媒は水熱安定性が高い。この触媒は排気流中の低レベル窒素酸化物を変換する活性が高い。この触媒とその使用方法は、過剰な酸素を含み、かつ温度が高い様々なガス流への幅広い用途を有しているが、ガスタービンやガスエンジンによる排ガス中の窒素酸化物を選択的に還元する特別な用途を有する可能性がある。ガスタービンやガスエンジンからの排ガスの温度は高い。高温と低レベルの吸引NOとはどちらも選択的接触還元(SCR)触媒作用にとっての課題となっている。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
この発明は高温でアンモニアにより低レベルの窒素酸化物から超低レベルの窒素酸化物への選択的接触還元を行うための触媒と方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
窒素酸化物は発電所、産業プロセス、単純/複合サイクルガスタービン、ガスエンジン、ディーゼルエンジンなどの固定汚染源からの排ガス中に含まれている。これらの汚染源からの排出は米国と欧州の両方で規制の対象となっている。排気基準を規制する法律は近年厳しくなっており、将来も引き続き厳しさを増すことになるだろう。多くの国でNOの90%除去を求めている。現代のガスタービンは一般的に約25ppmのNOを排出するので、政府規制に適合するためにはNOレベルを約2.5ppmに低減する必要がある。
【0003】
ディーゼルエンジンは通常、化学量論的な数値を超える空気燃料混合比で動作する。ディーゼル燃料車両からの窒素酸化物や粒子状物質の排出は有意な量になる可能性がある。ディーゼル車両からの排出も米国と欧州の両方で規制の対象となっている。
【0004】
排ガス中のNOの除去方法として、高温で触媒の存在下においてアンモニアなどの還元剤に排気流を接触させる方法がある。NOと還元剤との触媒反応は選択的接触還元(SCR)と呼ばれている。尿素、水酸化アンモニウム、蟻酸アンモニウムおよびその他の窒素含有化学物質もアンモニアの供給源として使用することができる。
【0005】
排ガスの温度は使用可能な触媒の種類を決定する上で非常に重要である。なぜなら特定の触媒は特定の温度範囲において作用(または最大限作用)するからである。ディーゼルエンジンからの排ガスは通常、やや低く約200℃であるが、ガスタービンとガスエンジンからの排ガスは通常、約300℃〜約700℃の範囲内にある。従って、ディーゼル用途で使用する触媒はそれをガスタービンまたはガスエンジンで使用した場合には効果的作用は期待できず、その逆も同様である。
【0006】
従来のアンモニアSCR触媒はバナジア/チタニアをベースにしている。たとえば、Imanariら(米国特許4,833,113)はチタニウムの酸化物、タングステンの酸化物、バナジウムの酸化物からなるSCR触媒について記述している。バナジア/チタニアをベースとしたアンモニアSCR触媒は、通常、約250〜370℃の温度で作用する。軽量ディーゼル車両からの排ガスは、通常、約200℃以下の温度である。バナジア/チタニアSCR触媒は200℃のような低い温度、あるいは高温では有意な活性を有しない。
【0007】
Byrne(米国特許4,961,917、Engelhard Corporationに承継)はアンモニア、窒素酸化物および酸素を鉄または銅促進ゼオライト触媒に通して、窒素酸化物の還元を選択的に触媒する方法を開示している。新鮮な銅促進触媒は活性が優れている。しかし、銅触媒はエージング時に著しく非活性化する。鉄触媒は銅触媒に比べてはるかに安定しているが、多くのディーゼル排気流中に生じる200℃より有意に高い約350〜500℃で活性が最大となる。さらに、銅触媒と鉄触媒はガスエンジンやガスタービンで生じることが多い500℃より高い温度では活性が低くなり、NOを還元する上であまり効率的ではない。
【0008】
Itoら(米国特許番号5,900,222)は、ゼオライト触媒と還元剤を含有するセリウムを用いて300〜560℃の温度でNO含有ガスを処理するプロセスについて記述している。Itoの特許で説明されている触媒は、主にディーゼル排ガスで使用するようになっていた。ディーゼルエンジンは一般的にガスタービンやガスエンジンよりもはるかに高いレベルのNOを排出する。NO変換の速度は還元されるNOの存在量との関数であるため、多量のNOを還元するのに効果的な触媒は少量のNOを還元するためには有効でないことがあり、その逆もまた同様である。
【0009】
Ichikiら(米国特許出願公開番号2005/0159304)は高温で使用される脱硝触媒について教示している。複数の触媒について記述されているが、その一つは酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化ホウ素のうちの少なくとも一つと酸化チタンとから構成される複合酸化物を含有する。別の触媒は酸化ジルコニウムとSOまたはSO2−とを含有する。記述されている最後の触媒は酸化ジルコニウムとSOまたはSO2−とを含む担体上に支持された酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化ホウ素のうちの少なくとも一つを含有する。長期的なデータは提供されていない。説明されている一部の触媒に見られる欠点として、触媒を調製する上で硫酸を用いていることやそのような触媒が長期的には活性でなくなる可能性が挙げられる。
【0010】
エージングに対しても安定しており、かつ高温で活性があり、低レベルの吸引NOをさらに還元する上で有効なアンモニアSCR触媒が必要とされている。
【発明の開示】
【0011】
この発明は触媒の存在下でガス流をアンモニアと接触させることにより、ガス流中の窒素酸化物をアンモニアで選択的に還元させる触媒およびその方法である。この触媒は、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−18、ZSM−23、MCM ゼオライト、モルデナイト、ファージャサイト、フェリエライト、ゼオライトベータおよび前記各物質の各混合物からなる群から選択されたゼオライトまたはゼオライト混合物を含む第一成分と、セリウム、鉄、銅、ガリウム、マンガン、クロム、コバルト、モリブデン、スズ、レニウム、タンタル、オスミウム、バリウム、ホウ素、カルシウム、ストロンチウム、カリウム、バナジウム、ニッケル、タングステン、アクチニド、アクチニド混合物、ランタニド、ランタニド混合物および前記各物質の各混合物からなる群から選択された少なくとも一つの物質を含む第二成分と、任意に酸素貯蔵物質(「OSM」)と、任意に無機酸化物とを含有する。この発明の触媒は約300℃〜約700℃の高温排ガスに対して使用するために特別の実用性を有する。排ガスの温度とは、エンジンから排出された時点での温度を意味することに注意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1は、セリウム混合ウォッシュコート触媒に対するセリウム負荷が19g/Lとなっているセリウム混合ウォッシュコート触媒を用いた場合の摂氏温度に対するパーセントNO変換を示す図である。この図は、さまざまな吸引NO条件での5つの釣鐘曲線を示している。
【0013】
図2は、さまざまなセリウム混合ウォッシュコートおよびセリウムを含有しない混合ウォッシュコート触媒を用いた場合の摂氏温度に対するパーセントNO変換を示す図である。
【0014】
図3は、さまざまな量のセリウムを含有する触媒を使用した場合のNH/NO比率に対するパーセントNO変換およびNHスリップを示す図である。
【0015】
図4は、さまざまな混合ウォッシュコート負荷をもつ触媒を使用した場合のNH/NO比率に対するパーセントNO変換およびNHスリップを示す図である。
【0016】
図5は、セリウム混合ウォッシュコート触媒を使用した場合の時間単位の動作時間に対する500℃におけるNO変換を示す図である。
【0017】
自動車ならびにガスタービンなどのエンジンからの排ガスには窒素酸化物が含まれる。排ガス中の窒素酸化物は、選択的接触還元(SCR)触媒の存在下で排ガスをアンモニアなどの還元剤に接触させることで除去できる。アンモニアやその他の還元剤は窒素酸化物と反応して窒素と水を形成する。
【0018】
排ガス中の水蒸気はSCR触媒を非活性化し、NO変換を低下させることがある。従って、SCR触媒の水熱安定性は重要である。
【0019】
軽量ディーゼルエンジンからの排ガスは約200℃の低温である。それゆえ、SCR触媒の低温活性はディーゼルエンジン用途にとって重要である。ガスタービンやガスエンジンからの排ガスは約300℃〜約700℃の高温である。それゆえ、SCR触媒の高温活性はガスエンジンおよびガスタービン用途にとって重要である。この発明の実施態様によるSCR触媒は高温においてNO変換活性が優れている。
【0020】
Alcorn(米国特許4,912,726)によれば、NOの還元は酸素の存在が必要であるが、NOの還元には酸素が不要だと考えられている。AlcornはさらにNOよりNOのほうが還元しやすいと主張している。
【0021】
アンモニア−SCRプロセスは2段階のプロセスであり、以下のように反応が並行して起こることが証拠に裏付けてられているように思われるとAlcornは述べている。
NO+1/2O→NO
6NO+8NH→7N+12H
【0022】
以下の各実施例に示すように、この発明の実施態様によるSCR触媒は低レベルの吸引NOに対して高温で活性が高い。この発明のSCR触媒は長期間にわたって高温での活性を維持する。
【0023】
この発明の触媒は、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−18、ZSM−23、MCM ゼオライト、モルデナイト、ファージャサイト、フェリエライト、ゼオライトベータおよび前記各物質の各混合物からなる群から選択されたゼオライトまたはゼオライトの混合物を含む第一成分と、セリウム、鉄、銅、ガリウム、マンガン、クロム、コバルト、モリブデン、スズ、レニウム、タンタル、オスミウム、バリウム、ホウ素、カルシウム、ストロンチウム、カリウム、バナジウム、ニッケル、タングステン、アクチニド、アクチニド混合物、ランタニド、ランタニド混合物および前記各物質の各混合物からなる群から選択された少なくとも一つの物質を含む第二成分と、酸素貯蔵物質と、任意に無機酸化物とを含有する。ランタニドはY、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、HoまたはYbを意味するものと定義されている。アクチニドはTh、Pa、U、Np、Pu、Am、Cm、Bk、Cf、Es、Fm、Md、NoおよびLrを意味するものと定義されている。酸素貯蔵物質は以下で詳細に説明するように、一般的には酸化セリウムベースの物質である。無機酸化物は以下で詳細に説明するように、一般的にはアルミナ、シリカまたはチタニアである。
【0024】
この発明の触媒は先行技術に勝る便益を提供する。米国特許番号5,900,222など一部の先行技術特許はセリウム含有ゼオライトの触媒を対象としている。先行技術における全ての触媒はゼオライトから構成されているが、これは高価となる場合がある。一方、この発明の触媒はゼオライトまたはその混合物を含む第一成分と、セリウム、鉄、銅、ガリウム、マンガン、クロム、コバルト、モリブデン、スズ、レニウム、タンタル、オスミウム、バリウム、ホウ素、カルシウム、ストロンチウム、カリウム、バナジウム、ニッケル、タングステン、アクチニド、アクチニド混合物、ランタニド、ランタニド混合物および前記各物質の各混合物からなる群から選択された一つの物質を含む第二成分と、任意に酸素貯蔵物質と、任意に無機酸化物とを含有する。これらの追加成分が存在するおかげでゼオライトを100%用いる必要性がなくなり、高変換率を達成して、より経済的な触媒を生み出している。理論に拘束されることは望ましくないが、これらの追加成分によって触媒が低レベルの吸引NOをさらに還元できるようになると考えられる。
【0025】
さらに、この発明の触媒は高温でよく作用する。長期間にわたって高温での大幅な非活性化を招くことなく、低レベルの吸引NOを超低レベルに効果的に還元する有用な高温SCR触媒は現在までなかった。現行方式では、利用可能な触媒が活性となる温度まで排ガスを冷却することになっている。この冷却プロセスは費用や時間がかかり、大きな装置や広いスペースを必要とする。この発明の触媒によりこの問題を解決することができる。この触媒は高い排気温度で作用するので、大がかりな冷却プロセスを必要性としない。
【0026】
第一成分
この発明の実施態様による触媒は少なくとも一つのゼオライトを含む。このゼオライトはZSM−5、ゼオライトベータ、ZSM型ゼオライト、MCM 型ゼオライト、モルデナイト、ファージャサイト、フェリエライトおよび前記各物質の各混合物からなる群から選択してもよい。一実施態様では、このゼオライトはZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−18、ZSM−23、MCM ゼオライト、ゼオライトベータおよび前記各物質の各混合物からなる群から選択してもよい。一実施態様では、第一成分は二つ以上のゼオライトを含んでよいが、ZSM−5とゼオライトベータの混合物が望ましい。さらに一実施態様では、ゼオライトベータ対ZSM−5の比率は約1:約1である。別の実施態様では、第一成分はモルデナイトとZSM−5の混合物を含んでよいが、その比率は約1:約1であることが望ましい。さらに一実施態様では、第一成分はファージャサイトとZSM−5の混合物を含んでよいが、その比率は約1:約1であることが望ましい。ゼオライトはさまざまな比率で組み合わせてもよい。
【0027】
ゼオライトまたはゼオライト混合物は、H型、Na型、アンモニウム型またはそれらの混合物としてもよい。ゼオライトのH型はゼオライトまたはゼオライト混合物の好ましい型とすることができる。
【0028】
「交換」という用語はゼオライト上のプロトン部位が第二成分に置き換わることを意味するが、過剰な第二成分は洗い流される。「処理」および「交換」という用語は当分野の技術者には知られている。「処理」は「交換」、すなわち、ゼオライトが第二成分と混合され、ゼオライト上のプロトン部位が第二成分、たとえば、セリウムに置き換わること、さらにゼオライトが第二成分にドープされることを意味するが、これには限定されない。また、ゼオライトは第二成分で処理してもよい。ゼオライトのSiO/Al比率は約1〜約500までの範囲内であればよいが、約10〜約150のほうが望ましく、最も望ましいのは約30〜約70の範囲である。理論に拘束されることは望ましくないが、約10より大きなSiO/Al比率をもつゼオライトは、触媒の水熱安定性を高める上で有益な場合があると考えられている。約40というSiO/Al比率は好ましい比率である。
【0029】
触媒はゼオライトを約20〜約100重量パーセント含んでよいが、約40〜約80重量パーセントのほうが望ましく、最も望ましいのは約50重量パーセントである。
【0030】
第二成分
この発明の実施態様による触媒の第二成分は、セリウム、鉄、銅、ガリウム、マンガン、クロム、コバルト、モリブデン、スズ、レニウム、タンタル、オスミウム、バリウム、ホウ素、カルシウム、ストロンチウム、カリウム、バナジウム、ニッケル、タングステン、アクチニド、アクチニド混合物、ランタニド、ランタニド混合物および前記各物質の各混合物、好ましくは、セリウムの各混合物からなる群から選択された少なくとも一つの成分を含んでもよい。
【0031】
この発明の触媒は第二成分を約1重量パーセント〜約30重量パーセント含んでよいが、約5重量パーセント〜約20重量パーセントのほうが望ましい。ここで第二成分の重量パーセントは、その総金属含有量の、ゼオライト、酸素貯蔵物質および無機酸化物(存在する場合としない場合がある)の合計重量に対する割合に基づいて計算したものである。
この発明の実施態様による触媒は、セリウム、鉄、銅、ガリウム、マンガン、クロム、コバルト、モリブデン、スズ、レニウム、タンタル、オスミウム、バリウム、ホウ素、カルシウム、ストロンチウム、カリウム、バナジウム、ニッケル、タングステン、アクチニド、アクチニド混合物、ランタニド、ランタニド混合物および前記各物質の各混合物からなる群から選択された第二成分に加えて、あるいは、その第二成分の一部の代替として、ストロンチウム第二成分を含んでもかまわない。理論に拘束されることは望ましくないが、ストロンチウム成分は触媒のレオロジーおよび粘性を向上させる可能性があると考えられている。
【0032】
この発明の実施態様による触媒がストロンチウム第二成分を含む場合、ストロンチウム第二成分の重量パーセントをストロンチウム金属に基づいて計算すると、当該触媒はストロンチウム第二成分を約2重量パーセント〜約35重量パーセント含んでよいが、約5重量パーセント〜約25重量パーセントのほうが望ましく、最も望ましいのは約8重量パーセント〜約15重量パーセントである。
【0033】
酸素貯蔵物質
酸素貯蔵物質は、この発明の触媒の追加成分である。酸素貯蔵物質は一般的に酸化セリウムベースの物質を含んでもよい。酸素貯蔵物質は酸素が豊富な供給流から酸素を吸収し、酸素が不足している供給流に放出することができる。また、酸素貯蔵物質は第二成分の担体であってもよい。
【0034】
この発明のいくつかの実施態様では、酸素貯蔵物質は不要である。それらの実施態様では、触媒はZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−18、ZSM−23、MCM ゼオライト、モルデナイト、ファージャサイト、フェリエライト、ゼオライトベータおよび前記各物質の各混合物からなる群から選択されたゼオライトまたはゼオライト混合物を含む第一成分と、セリウム、鉄、銅、ガリウム、マンガン、クロム、コバルト、モリブデン、スズ、レニウム、タンタル、オスミウム、バリウム、ホウ素、カルシウム、ストロンチウム、カリウム、バナジウム、ニッケル、タングステン、アクチニド、アクチニド混合物、ランタニド、ランタニド混合物および前記各物質の各混合物からなる群から選択された第二成分と、任意で無機酸化物とを含んでもよい。触媒は約50ppm以下という低レベルの吸引NOをさらに還元するために使用することができる。この発明のいくつかの実施態様では、触媒はこれより高いレベル、すなわち、約50ppm超のNOをそれより低いレベルに還元するために使用してもよい。
【0035】
酸化セリウムベースの物質が800℃以上の温度に加熱されると、酸化セリウムベースの物質の総表面積は一般的に低下することがある。一つ以上の金属酸化物は酸化セリウムベースの物質に添加して、高温下の酸化セリウムベースの物質の焼結度を低下させることができる。酸化セリウムベースの物質に添加できる金属酸化物で望ましいのは、たとえば、一つ以上のZrO、Al、Laまたはその他の希土類金属酸化物としてもよい。希土類金属はスカンジウムおよびイットリウム、ならびに、原子番号57〜71の元素と定義されている。この発明の一実施態様では、酸素貯蔵物質は化学式がCe1−aZrまたはCe1−c−dZrLanの組成をもつ酸化セリウムベースの物質としてもよく、この場合LanはY、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Ho、Ybまたは前記各物質の各混合物の少なくとも一つであり、「a」は約0〜約1、「c」は約0〜約1、そして「d」は約0〜約1の値としてもよいが、「c+d」は約0に等しくはならない。
【0036】
別の実施態様では、この発明による触媒中の酸素貯蔵物質は化学式がCe0.24Zr0.66La0.040.06(CZLY)、Ce0.24Zr0.67Ln0.09(CZL)、Ce0.68Zr0.32(CZO)、Ce0.24Zr0.67Nd0.09(CZN)のいずれかであればよい。この発明の好ましい一実施態様では、酸素貯蔵物質はCe0.24Zr0.66La0.040.06(CZLY)である。別の好ましい実施態様では、酸素貯蔵物質はCe0.68Zr0.32(CZO)である。その他の酸素貯蔵物質も適している場合がある。
【0037】
この発明の実施態様による触媒が少なくとも一つの酸素貯蔵物質を含む場合、当該触媒は酸素貯蔵物質を約10重量パーセント〜約90重量パーセント含んでよいが、約20重量パーセント〜約70重量パーセント、さらに約30重量パーセント〜約60重量パーセントのほうが望ましく、最も望ましいのは約40重量パーセントである。酸素貯蔵物質の重量パーセントは酸化物を基礎にしている。
【0038】
理論に拘束されることは望ましくないが、酸素貯蔵物質はNOをNOに酸化する触媒の能力を向上させることにより、この発明の実施態様による触媒の性能を高める可能性があると考えられている。NOはNOより急速にアンモニアまたはその他の還元剤と反応することがある。従って、NOをNOに酸化する触媒の能力を向上させることで、NOの選択的還元をアンモニアで触媒する触媒の活性を向上させることができる。酸素貯蔵物質は同物質を含む任意のウォッシュコート(以下に説明)に対する水性スラリーのレオロジーも向上させる可能性がある。
【0039】
無機酸化物
この発明による触媒はAl、SiO、TiO、ZrO、SnO、および前記各物質の溶液、化合物および混合物からなる群から選ばれた少なくとも一つの無機酸化物を含んでもよい。これに限定されるものではないが、アルミナはこの発明の実施態様による触媒で使用する無機酸化物である。無機酸化物の一つの作用は第一成分と第二成分を分散することと、基材との結合を促進することである。無機酸化物は、たとえば、以下に説明するようにウォッシュコートの一部として使用してもよい。無機酸化物は酸素貯蔵物質の全部または一部の代用とすることもできる。一実施態様では、酸素貯蔵物質の量と無機酸化物の量との合計は酸素貯蔵物質のみに対してあらかじめ与えた量としてもよい。その他の無機酸化物は全部または一部を酸素貯蔵物質の代用にしてよいが、この無機酸化物は酸素貯蔵物質とは異なる作用を有することがある。触媒をモノリス上に塗布すれば、無機酸化物は任意のウォッシュコートに対する水性スラリーのレオロジーを向上させ、基材へのウォッシュコートの付着を強化する可能性がある。
【0040】
成形触媒
一実施態様では、この発明の触媒はハニカム、ペレット、またはビーズなどの適切な形状に成形してもよい。別の実施態様では、この触媒は押し出し成形品に押し出してもよい。
【0041】
一実施態様では、この発明の実施態様による触媒は、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−18、ZSM−23、MCM ゼオライト、モルデナイト、ファージャサイト、フェリエライト、ゼオライトベータおよび前記各物質の各混合物からなる群から選択されたゼオライトまたはゼオライト混合物を含む第一成分と、ペーストを形成するためのセリウム、鉄、銅、ガリウム、マンガン、クロム、コバルト、モリブデン、スズ、レニウム、タンタル、オスミウム、バリウム、ホウ素、カルシウム、ストロンチウム、カリウム、バナジウム、ニッケル、タングステン、アクチニド、アクチニド混合物、ランタニド、ランタニド混合物および前記各物質の各混合物からなる群から選択された少なくとも一つの物質を含む第二成分とのうち少なくとも一つを粉砕または混練することにより形成してもよい。酸素貯蔵物質もその他の成分のいずれか、またはすべてといっしょに粉砕または混練してよい。触媒の残りの成分は当該技術で周知の方法で添加してもよい。
【0042】
ペーストは金型を通して押し出して、押し出し成形品を形成してもよい。押し出し成形

適切な場合がある。
【0043】
触媒組成
有利なことに、この発明の実施態様による触媒は基材と組み合わせて、触媒組成を形成してもよい。従って、この発明の別の側面から以下を含む触媒組成が得られる。
(a)基材
(b)以下を含む触媒
ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−18、ZSM−23、MCM ゼオライト、モルデナイト、ファージャサイト、フェリエライト、ゼオライトベータおよび前記各物質の各混合物からなる群から選択されたゼオライトまたはゼオライト混合物を含む第一成分、
セリウム、鉄、銅、ガリウム、マンガン、クロム、コバルト、モリブデン、スズ、レニウム、タンタル、オスミウム、バリウム、ホウ素、カルシウム、ストロンチウム、カリウム、バナジウム、ニッケル、タングステン、アクチニド、アクチニド混合物、ランタニド、ランタニド混合物および前記各物質の各混合物からなる群から選択された少なくとも一つの物質を含む第二成分、
酸素貯蔵物質(任意)、
無機酸化物(任意)。
【0044】
無機酸化物はウォッシュコートの一部としてもよく、あるいは、ウォッシュコートから分離していてもよい。別の実施態様では、無機酸化物はウォッシュコートの一部であってもよい。
【0045】
基材
ここで使用する基材は触媒を支持するための技術的に知られた任意の支持構造体であればよい。基材は、複数の流路と必要な多孔性を有する耐熱材、セラミック基材、ハニカム構造体、磁器基材、金属基材、セラミック発泡体、網状発泡体またはこれらの適切な組合せとすることができる。多孔性は基材に依存する。さらに、流路の数は使用基材によって変わることがある。モノリス基材に存在する流路については以下に詳細に説明する。適切な基材の種別および形状は当分野の技術者には明らかであろう。この発明の一実施態様では、基材はビーズまたはペレットの形状としてもよい。ビーズまたはペレットはアルミナ、シリカ・アルミナ、シリカ、チタニア、前記各物質の各混合物または任意の適切な物質から形成してもよい。この発明の実施態様では、基材はハニカム担体としてもよい。ハニカム担体はセラミックハニカム担体または金属ハニカム担体としてもよい。セラミックハニカム担体は、たとえば、シリマナイト、ジルコニア、葉長石、スポジュミン、ケイ酸マグネシウム、ムライト、アルミナ、コージライト(MgAlSi18)、その他のアルミノケイ酸塩物質、炭化ケイ素または前記各物質の各組合せから形成してもよい。その他のセラミック担体も適切な場合がある、
【0046】
担体が金属ハニカム担体の場合、金属は耐熱合金、特に鉄が実質的成分または主要成分である合金としてもよい。金属担体の表面は約1000℃を超える高温で酸化させ、合金の表面に酸化被膜を形成することにより、合金の耐食性を向上させてもよい。合金の表面の酸化被膜はモノリス担体の表面へのウォッシュコートの付着を強化することもある。金属製かセラミック製かを問わず、すべての基材担体は立体的な支持構造を有するものが好ましい。
【0047】
この発明の一実施態様では、基材はモノリスを通してのびている複数の細かい平行な流路を有するモノリス担体としてもよい。流路は任意の適切な断面形状およびサイズのものであればよい。流路は、たとえば、台形、長方形、正方形、正弦曲線、六角形、楕円または円形としてもよいが、その他の形状も適切である。モノリスは1平方インチの断面あたり約9個〜約1200個以上のガス吸引孔または流路を具備してよいが、これより少ない流路を使用してもかまわない。
【0048】
また基材は粒子状物質のための任意の適切なフィルターとすることもできる。基材の適切な形状の一部には、織布フィルター、特に織布セラミックファイバーフィルター、金網、ディスクフィルター、セラミックハニカムモノリス、セラミックまたは金属の発泡体、壁流フィルターおよび他の適切なフィルターを含めてもよい。壁流フィルターは自動車排ガス触媒用のハニカム基材に類似している。壁流フィルターが通常の自動車排ガス触媒を形成するために使用することがあるハニカム基材と異なる点は、排ガスが壁流フィルターの入口から出口へ移動する間に壁流フィルターの多孔性壁を通って強制的に流れるように、壁流フィルターの流路の入口と出口に交互に栓がされているという点である。
【0049】
ウォッシュコート
一部の実施態様では、この発明の触媒の少なくとも一部分をウォッシュコートの形態で基材上に配置してもよい。ここで使用する「ウォッシュコート」という用語は、基材支持構造体上または固体支持構造体上の酸化物固体のコーティングのことを指す。ウォッシュコート中の酸化物固体は一つ以上の担体物質酸化物、一つ以上の触媒酸化物、または担体物質酸化物と触媒酸化物との混合物でもよい。担体物質酸化物は多孔性の固体酸化物であって、これは分散相のために大きな表面積を備えるために使用されることがある。担体物質は通常、高温および還元・酸化条件の範囲で安定している。ゼオライトと酸素貯蔵物質は酸化物固体でもよく、それぞれがウォッシュコートの一部または全部であってもかまわない。無機酸化物も酸化物固体でよく、ウォッシュコートの一部または全部であってもかまわない。
【0050】
一実施態様では、担体物質を水中につるして水性スラリーを形成し、さらにその水性スラリーをウォッシュコートとして基材上に配置することにより(配置には、沈着、付着、硬化、コーティングおよび被膜を基材上にコーティングするための既知のコーティングプロセスが含まれるが、これらに限定されない)、ウォッシュコートを基材上に形成してもよい。スラリー中の担体物質はゼオライトもしくはゼオライトの混合物、または、ゼオライト(一つ以上))および酸素貯蔵物質を含んでもよい。一実施態様では、ウォッシュコートを含む酸化物固体は任意にゼオライト(複数の場合もある)および/または酸素貯蔵物質を含んでもよい。別の実施態様では、ウォッシュコートはアルミナ、シリカ、チタニア、シリカ・アルミナならびに前記各物質の各固溶液、各化合物および各混合物からなる群から選択された少なくとも一つの無機酸化物をさらに含んでもよい。
【0051】
第二成分の塩などその他の成分を水性スラリーに任意に添加してもよい。酸性溶液や塩基溶液、さまざまな塩または有機化合物などその他の成分を水性スラリーに添加して、水性スラリーのレオロジーを調節してもよい。レオロジーを調節するために使用できる化合物のいくつかの例には、水酸化アンモニウム、水酸化アルミニウム、酢酸、クエン酸、水酸化テトラエチルアンモニウム、その他のテトラアルキルアンモニウム塩、酢酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、グリセロール、ポリエチレングリコールなどの市販ポリマーおよびその他の適切なポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
一実施態様では、第二成分を酸化物やその他の化合物、たとえば、硝酸塩、酢酸塩、その他の塩および/または前記各物質の各混合物として水性スラリーに添加してもよい。このスラリーを任意の適切な方法で基材上に配置してもよい。たとえば、基材をスラリーに浸漬してもよいし、あるいは、スラリーを基材に噴霧してもよい。当分野の技術者には周知の基材にスラリーを沈着させるその他の方法を別の実施態様で使用してもよい。基材が平行な流路を有するモノリス担体であれば、ウォッシュコートをそれらの流路の壁面上に形成してもよい。流路を流れるガスは流路の壁面上のウォッシュコートだけでなく、ウォッシュコート上に支持されている物質にも接触する可能性がある。
【0053】
酸素貯蔵物質はウォッシュコートスラリーのレオロジーを向上させる可能性があると考えられている。そのような向上は触媒のプロセス制御および/または製造において見られることがある。酸素貯蔵物質の存在に起因するウォッシュコートスラリーのレオロジー強化によって、ウォッシュコートスラリーの基材に対する付着力が強化されることがある。
【0054】
この発明の実施態様では、ゼオライトおよび任意に酸素貯蔵物質を基材に沈着させるスラリーによりウォッシュコートを形成してもよい。またウォッシュコートはアルミナ、シリカ、チタニア、シリカ・アルミナおよび前記物質の固溶体、各化合物および各混合物からなる群から選択された少なくとも一つの無機酸化物を含んでもよい。ウォッシュコートを基材上に配置した後、第二成分の水溶性前駆体塩類を含む溶液をウォッシュコートに含浸および/または交換してもよい。別の実施態様では、第二成分の塩をウォッシュコート用の水性スラリーに添加してもよい。さらに別の実施態様では、第二成分をウォッシュコート用の水性スラリーに酸化物として添加してもよい。
【0055】
基材、ウォッシュコートおよび含浸または交換された溶液(第二成分の水溶性前駆体塩

して、触媒組成を形成してもよい。一実施態様では、ウォッシュコートおよび含浸または

【0056】
NO除去方法
排ガス中に含まれるNOを還元するのに十分なアンモニアの存在下で、この発明の実施態様による触媒に排ガスを接触させてもよい。排ガスをこの発明の実施態様による触媒と接触させる前に、通常はアンモニアを排ガス中に導入してもよい。排ガスおよび還元剤としてのアンモニアを触媒と接触させ、それによって排ガス中の窒素酸化物を還元してもよい。
【0057】
アンモニア供給源としては、尿素、水酸化アンモニウム、蟻酸アンモニウム、アンモニアガスまたはその他の任意の適切なアンモニア供給源を使用してもよい。
【0058】
アンモニア/NOモル比は約0.5〜約4までの範囲内としてよいが、約0.6〜約2のほうが望ましく、最も望ましいのは約0.8〜約1.5の範囲である。排ガス中の過剰なアンモニアを最小限にするためには、低アンモニア/NO比が一般的には望ましい。排ガス中の過剰なアンモニアは健康上または臭気上の問題で望ましくない場合がある。
【0059】
触媒を通過する排ガスとアンモニアの空間速度は約1,000hr−1〜約150,000hr−1の範囲内としてよいが、約5,000hr−1〜約100,000hr−1のほうが望ましく、最も望ましいのは約10,000hr−1〜約60,000hr−1の範囲である。
【0060】
排ガスとアンモニアは約300℃〜約700℃の温度で触媒と接触させてもよいが、約350℃〜600℃のほうが望ましく、最も望ましいのは約450℃〜約600℃である。
【0061】
過剰なアンモニアが排ガス中に存在する場合は、その過剰なアンモニアの少なくとも一部をこの発明の実施態様による触媒によって酸化させて窒素にしてもよい。
【0062】
次の各実施例はこの発明の適用範囲を例証することを意図しているのであって、この適用範囲を限定することを意図しているのではない。代わりに、当分野の技術者に周知のその他の手順を使用してもよいと考えられる。
【実施例】
【0063】
実施例1:セリウム混合ウォッシュコート触媒の調製
セリウム混合ウォッシュコート触媒(触媒1)を次のように調製した。混合ウォッシュコートの水性スラリーを形成した。混合ウォッシュコートはアルミナ約10%、混合ゼオライト50%およびCe0.24Zr0.66La0.040.0640%を含有していた。混合ゼオライトはH−ZSM−50およびHベータを重量比で50:50の割合で含んでいた。すべてのパーセントは特に明記されていない限り重量によるものである。
【0064】
スラリーは約4〜5μの粒子サイズにボールミル粉砕を行った。スラリーを1平方インチあたり400セルのモノリス基材上に配置して、そのモノリスの壁面流路を約160g/Lの負荷によるウォッシュコートでコーティングした。コーティングされたモノリスを光の下に置いて、どの流路も混合ウォッシュコートスラリーで塞がれていないことを確認した。塞がったり詰まったりした流路があれば、それらの流路はエアナイフを用いてエアブローにより開通させた。ウォッシュコート処理済み基材は約10時間から15時間、空いた流路に室温でエアブローを通すことにより乾燥させた。乾燥したウォッシュコート処理済み基材は

【0065】

した。混合ウォッシュコート触媒を含有するセリウムを19g/Lの触媒のセリウム金属負荷で形成するのに十分な硝酸セリウム溶液を、ウォッシュコート処理済み基材の水分吸収に等しい量の蒸留水に溶解させた。この硝酸セリウム溶液をウォッシュコート処理済み基材に均一に含浸させた。硝酸セリウム溶液が含浸したモノリスを光の下に置いて、硝酸セリウム含浸溶液がどの流路も塞いでいないことを確認した。塞がったり、詰まったり、あるいは不正な状態になったりした流路があれば、それらの流路はエアナイフを用いてエアブローにより開通させた。基材は約10時間〜15時間、流路に室温でエアブローを通すことに

【0066】
同様の手順を用いて、5g/L、10g/L、22g/L、30g/Lおよび40g/Lのセリウム負荷をもつセリウム混合ウォッシュコート触媒を得た。
【0067】
19g/Lのセリウム負荷と約160g/Lの混合ウォッシュコート負荷によるセリウム触媒を、NH/NO比を1、空間速度を15,000hr−1としたさまざまな吸引NO条件で、300℃から700℃の温度で試験した。結果を図1に示す。
【0068】
結果によれば、セリウム含有触媒の性能は試験条件、具体的には高温時には、除去する必要があるNO存在量に特に依存している。たとえば、550℃の温度では、5ppmNOを含有する供給ガスを試験したとき、NO除去効率は約60%であったのに対して、550℃の温度で50ppmNOを含有する供給ガスに対して同じ触媒を用いた場合は、観察されたNO除去効率は約90%であった。
【0069】
実施例2:セリウム混合ウォッシュコート触媒の調製
セリウム混合ウォッシュコート触媒(触媒2)を次のように調製した。セリウムを含有する混合ウォッシュコートの水性スラリーを形成した。アルミナ10%、混合ゼオライト50%およびCe0.24Zr0.66La0.040.0640%の粉体を硝酸セリウムおよび水を含有する溶液と混合した。混合ゼオライトはH−ZSM−5およびHベータを重量比で50:50の割合で含んでいた。最終的な触媒でセリウムが22g/Lになるように、十分な硝酸セリウムを用いた。
【0070】
スラリーをボールミル粉砕して約4〜5μの粒子サイズ(d50)にした。スラリーを1平方インチあたり400セルのモノリス基材上に配置し、そのモノリスの壁面流路を約160g/Lの負荷によるセリウム含有混合ウォッシュコートでコーティングした。コーティングされたモノリスを光の下に置いて、いずれの流路も混合ウォッシュコートスラリーで塞がれていないことを確認した。塞がったり詰まったりした流路があれば、それらの流路はエアナイフを用いてエアブローにより開通させた。セリウム含有混合ウォッシュコート基材は約10時間から15時間、空いた流路に室温でエアブローを通すことにより乾燥させた。乾燥した

媒2)を得た。
【0071】
実施例3:セリウムを含有しない混合ウォッシュコート触媒の調製
セリウムを含有しない触媒を、硝酸セリウム溶液を粉体混合物に添加しない点を除けば、実施例2に記載の手順に従って調製した。実施例2に記載の粉体を水と混合して、スラリーを形成した。最終的な触媒に対する混合ウォッシュコート負荷は約160g/Lであった。
【0072】
実施例4:ゼオライトを含有しない混合ウォッシュコート触媒の調製
AlおよびCe0.24Zr0.66La0.040.06の粉体を50:50の比率で組み合わせた。この混合物を水および硝酸セリウム溶液と混ぜ合わせてスラリーを調製した。最終的な触媒でセリウムが22g/Lとなるように、十分な硝酸セリウム溶液を使用した。このスラリーを1平方インチあたり400セルの基材にコーティングし、実施例2に記載の手順に従って最終的な触媒を得た、最終的な触媒に対する混合ウォッシュコート負荷は約160g/Lで、セリウム負荷は22g/Lであった(触媒3)。
【0073】
実施例5:さまざまな混合ウォッシュコート触媒の性能
実施例1、2および4に従って調製したセリウム含有の混合ウォッシュコート触媒と、実施例3に従って調製したセリウムを含有しない混合ウォッシュコート触媒のNO還元活性について、50ppm吸引NOと50ppm NHとを使用して、300℃〜700℃の温度で試験した。25,000h−1の空間速度で比較試験を実施した。結果を図2に示した。
【0074】
結果によれば、セリウムが混合ウォッシュコートにどのように導入されるかにかかわらず、特に高温でのNO変換のレベルは同じであった。300℃〜500℃の温度において良好な性能を発揮するには、混合ウォッシュコート中にセリウムが必要であるということも図2は示している。実施例4に記載の触媒を用いて試験を実施したとき、マイナスのNO変換が観察された。これはなぜかというと、この触媒はNHによるNOからNへの変換について不活性であっただけでなく、NHからNOへの酸化も行ったため、触媒前の供給組成と比較したとき、触媒後のガス組成の総NO含有量が増加したのである。
【0075】
実施例6:混合ウォッシュコートに対してさまざまなセリウム負荷をかけた実施例の性能
実施例1に記載されているようにさまざまなセリウム負荷で触媒標本を調製し、さまざまなNH/NO比でNO変換活性について試験した。図3は、X軸上のさまざまなNH/NO比に対する第1のY軸上のNO変換および第2のY軸上のNHスリップを示したものである。NH/NO比は0.8〜1.2まで変化させた。さまざまなセリウム負荷を有するすべての触媒標本は、試験条件下で非常に高いNO変換を示した。さまざまなセリウム負荷を有する混合ウォッシュコート触媒は、また、非常に小さなNHスリップを示した。
【0076】
実施例7:さまざまな混合ウォッシュコート負荷を有する実施例の性能
また実施例2に記載の手順に従い、すでにセリウムを含有する混合ウォッシュコートを使用して、さまざまなウォッシュコート負荷を有する触媒標本を調製した。各標本は75.1g/L、90.2g/L、127.8g/L、142.5g/Lおよび164g/Lの混合ウォッシュコート負荷を有していた。さまざまなNH/NO比でNO変換活性について各触媒標本を試験した。図4はX軸上のNH/NO比に対する第1のY軸上のNO変換および第2のY軸上のNHスリップを示したものである。NH/NO比は0.8〜1.2まで変化させた。良好なNO変換と低NOスリップをさまざまな試験条件下で達成するためには、160g/Lのウォッシュコート負荷が最適であることを結果は示唆している。
【0077】
実施例8:長期的活性試験
実施例1に記載の触媒標本を用いて、50ppm NO、50ppm NH、15%O、10%HO、5%COおよび残りをNとして含有する供給ガスにより500℃で試験を実施した。試験は100時間中断なく実施し、15分ごとにデータを収集した。図5は時間単位の作用時間に対するNO変換を示したものである。500℃では触媒の有意な非活性化は観察されないことを結果は示している。
【0078】
この発明の実施態様による触媒は高温において高いNO変換活性を有しており、低レベルの吸引NOをさらに還元することができる。さらに、この発明の実施態様による触媒は高い水熱安定性も有している。
【0079】
この発明の実施態様による触媒は、過剰な酸素を有し、温度範囲が約300℃〜約700℃であるガス流に対して用途がある。用途例の一部には、ガスタービン、ガスエンジン、発電所、化学工場などからの排ガスおよびその他の適切な用途が含まれることもあるが、これらに限定されない。
【0080】
この発明はその本質的な特性から逸脱することなくその他の特定形態で具現化してもよい。記載されている実施態様は、あらゆる点において、例証的なものとしてのみ考えるべきであり、制限的なものとして考えるべきではない。したがって、この発明の適用範囲は前記記載によってでなく、付属の請求項によって示される。諸請求項の意味および等価性の範囲内で行われるあらゆる変更は、それらの適用範囲内とみなされるべきである。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
約300℃超の排気温度でアンモニアにより窒素酸化物の選択的接触還元を行うための触媒であって、
ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−18、ZSM−23、MCM ゼオライト、モルデナイト、ファージャサイト、フェリエライト、ゼオライトベータおよび前記各物質の各混合物からなる群から選択されたゼオライトを含む第一成分と、
セリウム、鉄、銅、ガリウム、マンガン、クロム、コバルト、モリブデン、スズ、レニウム、タンタル、オスミウム、バリウム、ホウ素、カルシウム、ストロンチウム、カリウム、バナジウム、ニッケル、タングステン、アクチニド、アクチニド混合物、ランタニド、ランタニド混合物および前記各物質の各混合物からなる群から選択された少なくとも一つの物質を含む第二成分と、
酸素貯蔵物質を含む触媒。
【請求項2】
さらに無機酸化物を含む請求項1の触媒。
【請求項3】
窒素酸化物が約1ppm〜約10,000ppmの吸引量で存在する、請求項1の触媒。
【請求項4】
窒素酸化物が約1ppm〜約50ppmの吸引量で存在する、請求項3の触媒。
【請求項5】
排気温度が約560℃より高い、請求項1の触媒。
【請求項6】
請求項1の触媒であって、第一成分、第二成分、酸素貯蔵物質を重量ベースで50:10:30の比率で含み、かつ第二成分の重量が金属重量ベースである触媒。
【請求項7】
酸素貯蔵物質がCe1−aZrおよびCe1−c−dZrLanからなる群から選択されている請求項1の触媒であって、LanがY、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Ho、Ybおよび前記各物質の各混合物からなる群から選択されている触媒。
【請求項8】
請求項1の触媒であって、粉体である触媒。
【請求項9】
約20重量パーセント〜約100重量パーセントのゼオライトが粉体中に存在する、請求項8の触媒。
【請求項10】
約50%のゼオライトが粉体中に存在する、請求項9の触媒。
【請求項11】
請求項1の触媒であって、ゼオライトがプロトン型、アンモニア型、ナトリウム型およびそれらの各混合型からなる群から選択された型となっている触媒。
【請求項12】
ゼオライトがZSM−5を含む、請求項1の触媒。
【請求項13】
ゼオライトがゼオライトベータを含む、請求項1の触媒。
【請求項14】
ゼオライトがゼオライトベータとZSM−5とを含む、請求項1の触媒。
【請求項15】
ゼオライトベータとZSM−5が1:1の比率で存在する、請求項14の触媒。
【請求項16】
第二成分がセリウムである、請求項1の触媒。
【請求項17】
第二成分が鉄である、請求項1の触媒。
【請求項18】
請求項1の触媒であって、ゼオライトと酸素貯蔵物質との合計重量に対し、第二成分が総金属含有量に基づいて約1重量パーセントから約30重量パーセントの範囲で存在する触媒。
【請求項19】
請求項1の触媒であって、押し出しによってひとつの形状の型になる触媒。
【請求項20】
請求項1の触媒であって、基材上にコーティングされる触媒。
【請求項21】
請求項20の触媒であって、基材が耐熱材、セラミック基材、ハニカム構造体、磁器基材、金属基材、セラミック発泡体、網状発泡体またはそれらの混合体からなる群から選択され、その基材上に沈着される触媒で、基材が複数の流路および多孔性を有する触媒。
【請求項22】
請求項1の触媒であって、第二成分が第一成分で処理され、酸素貯蔵物質と混合されて最終的な触媒が得られる触媒。
【請求項23】
請求項2の触媒であって、約50重量パーセントの第一成分、約10重量パーセントの第二成分、約30重量パーセントの酸素貯蔵物質、および約10重量パーセントの無機酸化物を含み、第二成分の重量パーセントが金属重量ベースとなっている触媒。
【請求項24】
請求項2の触媒であって、無機酸化物がAl、SiO、TiO、ZrO、SnOならびにそれらの化合物および混合物からなる群から選択されている触媒。
【請求項25】
請求項2の触媒であって、第一成分がゼオライトベータおよびZSM−5を含み、第二成分がセリウムを含み、酸素貯蔵物質がCe0.24Zr0.66La0.040.06を含み、無機酸化物がアルミナを含む触媒。
【請求項26】
約1,000hr−1〜約150,000hr−1の間の空間速度のガス流の中で吸引窒素酸化物の選択的還元を行う方法であって、そのガス流には窒素酸化物を含み、
ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−18、ZSM−23、MCM ゼオライト、モルデナイト、ファージャサイト、フェリエライト、ゼオライトベータおよび前記各物質の各混合物からなる群から選択されたゼオライトを含む第一成分と、
セリウム、鉄、銅、ガリウム、マンガン、クロム、コバルト、モリブデン、スズ、レニウム、タンタル、オスミウム、バリウム、ホウ素、カルシウム、ストロンチウム、カリウム、バナジウム、ニッケル、タングステン、アクチニド、アクチニド混合物、ランタニド、ランタニド混合物および前記各物質の各混合物からなる群から選択された少なくとも一つの物質を含む第二成分と、
酸素貯蔵物質、
を含む触媒の存在下でアンモニアにガス流を接触させることを含む方法。
【請求項27】
触媒がさらに無機酸化物を含む、請求項26の方法。
【請求項28】
アンモニアおよび吸引窒素酸化物が約0.5〜約4のモル比で存在する、請求項26の方法。
【請求項29】
ガス流を約300℃〜約700℃の排気温度でアンモニアと接触させる、請求項26の方法。
【請求項30】
約1ppm〜約10,000ppmの量の吸引窒素酸化物が存在する、請求項26の方法。
【請求項31】
約1ppm〜約50ppmの量の吸引窒素酸化物が存在する、請求項30の方法。
【請求項32】
基材と、
アンモニアによる窒素酸化物の選択的接触還元のための触媒、
を含む触媒組成であって、その触媒が、
ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−18、ZSM−23、MCM ゼオライト、モルデナイト、ファージャサイト、フェリエライト、ゼオライトベータおよび前記各物質の各混合物からなる群から選択されたゼオライトを含む第一成分と、
セリウム、鉄、銅、ガリウム、マンガン、クロム、コバルト、モリブデン、スズ、レニウム、タンタル、オスミウム、バリウム、ホウ素、カルシウム、ストロンチウム、カリウム、バナジウム、ニッケル、タングステン、アクチニド、アクチニド混合物、ランタニド、ランタニド混合物および前記各物質の各混合物からなる群から選択された少なくとも一つの物質を含む第二成分と、
触媒が基材上に配置される酸素貯蔵物質を含む触媒組成。
【請求項33】
触媒がさらに無機酸化物を含む、請求項32の触媒組成。
【請求項34】
ゼオライトおよび酸素貯蔵物質のうち少なくとも一つがウォッシュコートの形態で基材上に配置される、請求項32の触媒組成。
【請求項35】
約300℃より高い排気温度でアンモニアにより窒素酸化物の選択的接触還元を行うための触媒であって、
ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−18、ZSM−23、MCM ゼオライト、モルデナイト、ファージャサイト、フェリエライト、ゼオライトベータおよび前記各物質の各混合物からなる群から選択されたゼオライトを含む第一成分と、
セリウム、鉄、銅、ガリウム、マンガン、クロム、コバルト、モリブデン、スズ、レニウム、タンタル、オスミウム、バリウム、ホウ素、カルシウム、ストロンチウム、カリウム、バナジウム、ニッケル、タングステン、アクチニド、アクチニド混合物、ランタニド、ランタニド混合物および前記各物質の各混合物からなる群から選択された少なくとも一つの物質を含む第二成分とを含み、
約1ppm〜約50ppmの量の窒素酸化物が存在する触媒。
【請求項36】
約1,000hr−1〜約150,000hr−1の間の空間速度のガス流の中で低レベルの窒素酸化物の選択的接触還元を行うための方法であって、そのガス流には低レベルの窒素酸化物を含み、
ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−18、ZSM−23、MCM ゼオライト、モルデナイト、ファージャサイト、フェリエライト、ゼオライトベータおよび前記各物質の各混合物からなる群から選択されたゼオライトを含む第一成分と、
セリウム、鉄、銅、ガリウム、マンガン、クロム、コバルト、モリブデン、スズ、レニウム、タンタル、オスミウム、バリウム、ホウ素、カルシウム、ストロンチウム、カリウム、バナジウム、ニッケル、タングステン、アクチニド、アクチニド混合物、ランタニド、ランタニド混合物および前記各物質の各混合物からなる群から選択された少なくとも一つの物質を含む第二成分、
を含む触媒の存在下でガス流をアンモニアに接触させることを含む方法であって、
窒素酸化物が約1ppm〜約50ppmの量で存在する方法。
【請求項37】
約300℃より高い排気温度でアンモニアにより窒素酸化物の選択的接触還元を行うための触媒であって、
ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−18、ZSM−23、MCM ゼオライト、モルデナイト、ファージャサイト、フェリエライト、ゼオライトベータおよび前記各物質の各混合物からなる群から選択されたゼオライトを含む第一成分と、
鉄、銅、ガリウム、マンガン、クロム、コバルト、モリブデン、スズ、レニウム、タンタル、オスミウム、バリウム、ホウ素、カルシウム、ストロンチウム、カリウム、バナジウム、ニッケル、タングステン、アクチニド、アクチニド混合物、ランタニド、ランタニド混合物および前記各物質の各混合物からなる群から選択された少なくとも一つの物質を含む第二成分とを含む触媒。
【請求項38】
約1,000hr−1〜約150,000hr−1の間の空間速度のガス流の中で窒素酸化物の選択的接触還元を行うための方法であって、そのガス流には窒素酸化物を含み、
ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−18、ZSM−23、MCM ゼオライト、モルデナイト、ファージャサイト、フェリエライト、ゼオライトベータおよび前記各物質の各混合物からなる群から選択されたゼオライトを含む第一成分と、
鉄、銅、ガリウム、マンガン、クロム、コバルト、モリブデン、スズ、レニウム、タンタル、オスミウム、バリウム、ホウ素、カルシウム、ストロンチウム、カリウム、バナジウム、ニッケル、タングステン、アクチニド、アクチニド混合物、ランタニド、ランタニド混合物および前記各物質の各混合物からなる群から選択された少なくとも一つの物質を含む第二成分、
を含む触媒の存在下でガス流をアンモニアに接触させることを含む方法。

【公表番号】特表2009−538736(P2009−538736A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516602(P2009−516602)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/025566
【国際公開番号】WO2008/085280
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000217228)田中貴金属工業株式会社 (146)
【Fターム(参考)】