説明

高温シール材料、高温シール体、及び高温シール体を含む酸素透過モジュール

【課題】比較的高い熱膨張係数の部材のシールや接着に好適な高温シール材料を提供する。
【解決手段】高温シール材料は、A(1−x)CoFe(1−y)(Aは、Ba又はLaで、Bは、AがBaのときSrで、AがLaのときCa又はBaであり、0<x,y<1である)で表されるペロブスカイト型酸化セラミックス粉と、溶剤と、分散剤とを含む。ペロブスカイト型酸化セラミックス粉は、粒径が10〜45μmの粗粒1と、粒径が2μm以下の細粒2と、を有し、細粒2と粗粒1との重量比が1:2〜3.5である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温下で使用される部材をシールする高温シール体、その材料、高温シール体を含む酸素透過モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
高温下で使用される部材をシールする高温シール体に関しては、例えば、以下の特許文献1に開示されている。
【0003】
具体的に、この特許文献1には、例えば、固体酸化物燃料電池におけるイットリア安定化ジルコニア製発電膜と、ランタンクロマイト製インターコネクターとの接着や、これのシールの目的で、ジルコニア粉とアルミナ粉とが所定の比率で混合された高温シール体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−153369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されている高温シール体は、熱膨張係数が10.0×10−6/℃であり、熱膨張係数が同じく10.0×10−6℃程度のイットリア安定化ジルコニア製の部材をシールするには適している。しかしながら、この高温シール体で、熱膨張係数が20.0×10−6/℃前後の部材をシールする場合には、部材との間の熱膨張差が大きく、シール効果を期待できないという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は、比較的高い熱膨張係数の部材のシールや接着に好適な高温シール体、その材料、高温シール体を含む酸素透過モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するための発明に係る高温シール材料は、
(1−x)CoFe(1−y)(Aは、Ba又はLaで、Bは、AがBaのときSrで、AがLaのときCa又はBaであり、0<x,y<1である)で表されるペロブスカイト型酸化セラミックス粉と、溶剤と、分散剤とを含み、前記ペロブスカイト型酸化セラミックス粉は、粒径が10〜45μmの粗粒と、粒径が2μm以下の細粒と、を有し、該細粒と該粗粒との重量比が1:2〜3.5である、ことを特徴とする。
【0008】
当該高温シール材料では、この高温シール材料を乾燥して、高温シール体を得る過程で、溶剤が蒸発しても、粗粒が高温シール体の骨格を形成しているため、高温シール体の体積縮小や高温シール体の変形を抑えることができる。さらに、当該高温シール材料では、細粒が複数の粗粒間に入り込んで、粗粒間の隙間を埋めることができるため、高温シール体自体を通過する流体の量を減らすことができる。このため、当該高温シール材料を用いたシールでは、高いシール性能を確保することができる。
【0009】
また、当該高温シール材料は、A(1−x)CoFe(1−y)(Aは、Ba又はLaで、Bは、AがBaのときSrで、AがLaのときCa又はBaであり、0<x,y<1である)で表されるペロブスカイト型酸化セラミックス粉で形成され、このセラミックス粉は、熱膨張係数が20.0〜22.0×10−6/℃であるため、熱膨張係数が20.0×10−6/℃前後の部材をシール又は接着する場合でも、温度変化に伴う部材と高温シール体との間の熱膨張量差を小さく抑えることができる。このため、当該高温シール材料を用いたシール又は接着では、温度変化があっても、対象部材から高温シール体が剥離等するのを回避することができる。
【0010】
よって、当該高温シール材料によれば、比較的高い熱膨張係数の部材を高温下で使用する場合に、この部材を確実にシール又は接着することができる。
【0011】
ここで、前記高温シール材料において、前記ペロブスカイト型酸化セラミックス粉は、粒径が2〜10μmの中粒を有し、前記粗粒と前記中粒と前記細粒との重量比が1:1〜2.5:2〜3.5であってもよい。
【0012】
当該高温シール材料では、中粒が、隣り合う粗粒相互のクサビとして機能し、高温シール材料の乾燥過程で、隣り合う粗粒がズレるのを防ぐことができ、結果として、高温シール体の変形等をより防ぐことができる。
【0013】
また、前記高温シール材料において、前記ペロブスカイト型酸化セラミックス粉に対して、0.5〜1.5wt%の流動性促進材としてのセルロース又はその誘導体を含んでいてもよい。
【0014】
当該高温シール材料では、高温シール材料の流動性が高まり、例えば、シリンジに充填した高温シール材料を押出し易くすることができる上に、部材に付いた高温シール材料を延ばし易くすることができる。
【0015】
また、高温シール材料において、前記分散剤は、ポリカルボン酸又はポリアクリル酸であってもよい。
【0016】
上記問題点を解決するための発明に係る高温シール体は、
(1−x)CoFe(1−y)(Aは、Ba又はLaで、Bは、AがBaのときSrで、AがLaのときCa又はBaであり、0<x,y<1である)で表されるペロブスカイト型酸化セラミックス粉を含み、前記ペロブスカイト型酸化セラミックス粉は、粒径が10〜45μmの粗粒と、粒径が2μm以下の細粒と、を有し、該細粒と該粗粒との重量比が1:2〜3.5である、ことを特徴とする。
【0017】
当該高温シール体は、A(1−x)CoFe(1−y)(Aは、Ba又はLaで、Bは、AがBaのときSrで、AがLaのときCa又はBaであり、0<x,y<1である)で表されるペロブスカイト型酸化セラミックス粉で形成され、このセラミックス粉は、熱膨張係数が20.0〜22.0×10−6/℃であるため、熱膨張係数が20.0×10−6/℃前後の部材をシール又は接着する場合でも、温度変化に伴う部材と高温シール体との間の熱膨張量差を小さく抑えることができる。このため、当該高温シール体によるシール又は接着では、温度変化があっても、対象部材から高温シール体が剥離等するのを回避することができる。
【0018】
よって、当該高温シール体によれば、比較的高い熱膨張係数の部材を高温下で使用する場合に、この部材を確実にシール又は接着することができる。
【0019】
ここで、前記高温シール体において、前記ペロブスカイト型酸化セラミックス粉は、粒径が2〜10μmの中粒を有し、前記粗粒と前記中粒と前記細粒との重量比が1:1〜2.5:2〜3.5であってもよい。
【0020】
また、前記問題点を解決するための酸素透過モジュールは、
BaSr(1−x)CoFe(1−y)(0.3<x<0.7、0.7<y<0.95)で表されるペロブスカイト型酸化セラミックスで形成された酸素透過体と、A(1−x)CoFe(1−y)(Aは、Ba又はLaで、Bは、AがBaのときSrで、AがLaのときCa又はBaであり、0<x,y<1である)で表されるペロブスカイト型酸化セラミックスで形成され、前記酸化透過体の外枠を成す枠と、前記酸素透過体と前記枠との間をシールする前記高温シール体と、を備えていることを特徴とする。
【0021】
当該酸素透過モジュールでは、酸素透過体、枠、高温シール体のいずれもが、A(1−x)CoFe(1−y)(Aは、Ba又はLaで、Bは、AがBaのときSrで、AがLaのときCa又はBaであり、0<x,y<1である)で表されるペロブスカイト型酸化セラミックスで形成されているため、酸素透過体、枠、高温シール体の各熱膨張係数が20.0〜22.0×10−6/℃になり、温度変化に伴うモジュールの構成部材相互間の熱膨張量差を小さく抑えることができる。
【0022】
よって、当該酸素透過モジュールによれば、酸素透過体を確実にシール又は接着することができる。
【0023】
また、前記問題点を解決するための他の酸素透過モジュールは、
BaSr(1−x)CoFe(1−y)(0.3<x<0.7、0.7<y<0.95)で表されるペロブスカイト型酸化セラミックスで形成された複数の酸素透過体と、前記複数の酸素透過体の相互間をシールする前記高温シール体と、を備えていることを特徴とする。
【0024】
当該酸素透過モジュールでは、酸素透過体、高温シール体の双方が、A(1−x)CoFe(1−y)(Aは、Ba又はLaで、Bは、AがBaのときSrで、AがLaのときCa又はBaであり、0<x,y<1である)で表されるペロブスカイト型酸化セラミックスで形成されているため、酸素透過体、高温シール体の各熱膨張係数が20.0〜22.0×10−6/℃になり、温度変化に伴うモジュールの構成部材相互間の熱膨張量差を小さく抑えることができる。
【0025】
よって、当該酸素透過モジュールによれば、酸素透過体を確実にシール又は接着することができる。
【0026】
ここで、前記酸素透過モジュールにおいて、前記高温シール体は、BaSr(1−x)CoFe(1−y)(0<x,y<1)で表されるペロブスカイト型酸化セラミックスで形成されていてもよい。
【0027】
当該酸素透過モジュールでは、高温シール体も高い酸素透過性を有するので、酸素透過性能を高めることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、比較的高い熱膨張係数の部材をシールする場合や接着する場合に、高いシール性能及び接着性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る一実施形態における高温シール材料及び高温シール体の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明に係る一実施形態における高温シール材料及び高温シール体を形成する粒を示す説明図である。
【図3】本発明に係る一実施形態における酸素透過モジュールの断面図である。
【図4】本発明に係る他の実施形態における酸素透過モジュールの側面図である。
【図5】本発明に係る一実施形態における酸素透過体の断面図である。
【図6】本発明に係る一実施形態における酸素透過体の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る高温シール体、その材料、高温シール体を含む酸素透過モジュールの実施形態について説明する。
【0031】
「高温シール体及びその材料1」
本発明に係る高温シール体及びその材料の第一実施形態について、図1及び図2を用いて説明する。
【0032】
本実施形態における高温シール体及びその材料の製造手順について、図1に示すフローチャートに従って説明する。
【0033】
まず、焼結により、混合伝導性酸化物の一種であるペロブスカイト型のBSCFを成す混合粉体のスラリーを生成する(S1)。なお、BSCFは、BaSr(1−x)CoFe(1−y)で表されるペロブスカイト型酸化セラミックスである。このスラリーの生成では、BaCO粉、SrCO粉、CoO粉、Fe粉を準備する。この粉の平均粒径は、例えば、1.0μmである。そして、これらの粉を、例えば、以下のモル比で混ぜ合わせる。BaCO:SrCO:CoO:Fe=0.6:0.4:0.9:0.05 次に、この混合粉に対して、溶剤としてのエタノール(適量)、分散剤としてのポリエチレンイミン(例えば、1wt%)を混入して、スラリーを生成する。
【0034】
次に、ステップ1で得られたスラリーの固まりを乾燥させた後、焼結する(S2)。この焼結では、乾燥させたスラリーの固まりを焼結炉内に入れ、例えば、0.5℃/minの遅い昇温速度で600℃まで炉内を昇温し、その後、例えば、2℃/minで1150℃まで炉内を昇温する。そして、この1150℃を3時間保持する。この焼結における昇温過程で、分散剤は、炭化した後、焼失する。
【0035】
この焼結処理により、BSCFが形成される。このBSCFは、前述したように、モル比がBaCO:SrCO:CoO:Fe=0.6:0.4:0.9:0.05の混合粉を材料として形成されているため、Ba0.6Sr0.4 Co0.9Fe0.1である。このBSCFは、熱膨張係数が20.0×10−6℃で、1000℃程度まで耐え得る高い耐熱性がある。
【0036】
次に、BSCFの固まりを粉砕した後、分級して、粒径が10〜45μmのBSCF粗粒と、粒径が2μm以下のBSCF細粒とを得る(S3)。BSCFの固まりの粉砕には、例えば、ボールミルを用いる。また、分級は、例えば、篩い分けで行う。具体的に、ここでは、比較的微粒子の篩い分けを行うため、篩の上部に旋回気流を発生させる旋回気流式篩い分け法や、超音波により篩を振動させる超音波振動式篩い分け法等を採用する。
【0037】
次に、BSCF細粒とBSCF粗粒を含むペーストを生成する(S4)。このペースト生成では、まず、BSCF細粒に対して、溶剤としての水(適量)、分散剤としてのポリカルボン酸(例えば、1wt%)を混入して、BSCF細粒をペースト化した後、このペーストにBSCF粗粒を混入する。このペースト化では、例えば、ボールミルを用いる。また、BSCF細粒とBSCF粗粒との重量比は、ここでは、BSCF細粒:BSCF粗粒=1:3である。
【0038】
ところで、前述の篩い分け法を含む各分級法において、分級後の全ての粒の粒径を目的の範囲内に収めることは不可能である。実際に、本実施形態においても、BSCF粗粒の中には、粒径が10〜45μmでないものも含まれ、BSCF細粒の中にも2μm以下でないものも含まれている。しかしながら、本実施形態では、ペースト中に、BSCF細粒に対して、約3倍重量のBSCF粗粒が含まれていれば、粒径が10〜45μmでも、2μm以下でもないBSCF粉が多少含まれていてもよいので、粉砕・分級処理(S3)における分級精度はあまり高くなくてもよし、必ずしも篩い分け法で分級する必要もない。但し、粒径が45μmを超える粉は、シール性の低下の原因になるため、できる限り少ないことが好ましく、具体的には、ペースト中のBSCF粉の全重量に対して、1wt%以下であることが好ましい。また、ペースト中に、BSCF細粒に対して、約3倍重量のBSCF粗粒が含まれているか否かに関しては、篩い分け等で得られたBSCF細粒及びBSCF粗粒のそれぞれサンプリングし、サンプリングで得られたBSCF細粒及びBSCF粗粒に関して粒度分布を調べ、これらの粒度分布からペースト中に、BSCF細粒とBSCF粗粒とが目的の重量比率で含まれているかいなかを検証するとよい。なお、サンプリングで得られたBSCF細粒及びBSCF粗粒の粒度分布は、例えば、レーザ回折・散乱法等で得るとよい。
【0039】
以上、ステップ1〜ステップ4の処理で、ペースト状の高温シール材料が完成する。すなわち、ステップ1〜ステップ4の処理が高温シール材料の製造工程Pである。
【0040】
次に、以上で製造した高温シール材料を、シールすべき部材に塗布する(S5)。この塗布では、例えば、シリンジにシール材料を充填して、このシリンジからシールすべき部材の目的の位置に高温シール材料を押出す。
【0041】
次に、部材に塗布された高温シール材料を乾燥させる(S6)。この乾燥では、例えば、シール材料に所定の流速の空気等の気体を送ることで、このシール材料を乾燥させてもよいし、シール材料をある程度加熱することで、このシール材料を乾燥させてもよい。この乾燥処理で、シール材料中に含まれている溶剤が気化して、シール材料は固化した高温シール体となる。
【0042】
シールすべき部材及び高温シール体は、基本的に、例えば、800〜900℃程度の高温で使用される。そこで、使用環境化での部材性能や高温シール体のシール性能を確認するため、以上の乾燥処理(S6)後に、シールすべき部材及び高温シール体を使用環境温度まで加熱してもよい。この加熱処理で、シール材料中に含まれていた分散材は、炭化した後、焼失する。
【0043】
以上のように、本実施形態の高温シール体は、図2に示すように、BSCF粗粒1により、高温シール体の骨格が形成されるため、乾燥処理(S6)や加熱処理(S7)により、溶剤が蒸発することによる高温シール体の体積縮小や高温シール体の変形を抑えることができ、高温シール体と部材との間に隙間が形成されることを防ぐことができる。また、本実施形態では、BSCF細粒2が複数のBSCF粗粒1間に入り込んで、BSCF粗粒1間の隙間を埋めることができるため、高温シール体自体を通過する流体の量を減らすことができる。すなわち、本実施形態の高温シール体は、高いシール性能を確保することができる。
【0044】
また、本実施形態の高温シール体は、前述したように、高い耐熱性がある上に、熱膨張係数が20.0×10−6/℃のBCSFで形成されているため、熱膨張係数が16.0〜24.0×10−6/℃の程度で、700〜900℃程度の高温下で使用される部材をシールすることができる。
【0045】
ここで、BSCF細粒とBSCF粗粒との重量比と、シール性能との関係について試験を行ったので、以下で説明する。
【0046】
ここでは、BSCF細粒とBSCF粗粒との重量比が、BSCF細粒:BSCF粗粒=1:1、1:2、1:3、1:3.5、1:4、1:5のそれぞれについて、試験を行った。
【0047】
BSCF細粒:BSCF粗粒=1:1の場合、乾燥処理過程におけるシール体の体積収縮、及びシール体の変形が認められた。BSCF細粒:BSCF粗粒=1:2の場合、乾燥処理過程におけるシール体の体積収縮、及びシール体の変形の改善が認められ、体積収縮及び変形が極めて小さくなった。BSCF細粒:BSCF粗粒=1:3、1:3.5、1:4、1:5では、乾燥処理過程におけるシール体の体積収縮、及びル体の変形が事実上認められなかった。
【0048】
よって、シール体の体積縮小やシール体の変形を抑え、シール体と部材との間に隙間が形成されることを防ぐ、という観点からは、BSCF細粒に対して、BSCF粗粒が2倍重量以上であることが好ましいと言える。
【0049】
また、BSCF細粒:BSCF粗粒=1:1の場合の単位時間あたりのガス透過量を1としたとき、BSCF細粒:BSCF粗粒=1:2の場合ではガス透過量が2、BSCF細粒:BSCF粗粒=1:3の場合ではガス透過量が5、BSCF細粒:BSCF粗粒=1:3.5の場合ではガス透過量が6.5、BSCF細粒:BSCF粗粒=1:4の場合ではガス透過量が10、BSCF細粒:BSCF粗粒=1:5の場合ではガス透過量は20となった。なお、ここでは、この試験における重量比毎のシール体は、同体積で同形状である。
【0050】
以上のように、BSCF細粒に対して、BSCF粗粒が4倍重量以上になると、シール体のガス透過量が急激に大きくなる。よって、シール体自体を透過するガス量を減らす、という観点からは、BSCF細粒に対して、BSCF粗粒が3.5倍重量以下であることが好ましいと言える。
【0051】
以上の試験により、高いシール性能を得るためには、BSCF細粒とBSCF粗粒との重量比を、BSCF細粒:BSCF粗粒=1:2〜3.5にすることが好ましいことが認められた。よって、本実施形態では、BSCF細粒とBSCF粗粒との重量比を、BSCF細粒:BSCF粗粒=1:3にしている。
【0052】
「高温シール体及びその材料2」
次に、本発明に係る高温シール体及びその材料の第二実施形態について説明する。
【0053】
本実施形態における高温シール体及びその材料の製造手順は、第一実施形態と同じである。但し、本実施形態は、高温シール体及びその材料の形成素材が第一実施形態と異なっている。
【0054】
すなわち、本実施形態のスラリー生成処理(S1)では、焼結により、混合伝導性酸化物の一種であるペロブスカイト型のLCCFを成す混合粉体のスラリーを生成する。なお、LCCFは、LaCa(1−x)CoFe(1−y)で表されるペロブスカイト型酸化セラミックスである。このスラリーの生成では、LaCO粉、CaCO粉、CoO粉、Fe粉を準備する。これらの粉の平均粒径も、例えば、1.0μmである。そして、これらの粉を、例えば、以下のモル比で混ぜ合わせる。LaCO:CaCO:CoO:Fe=0.7:0.3:0.8:0.1 次に、この混合粉に対して、第一実施形態と同様に、溶剤としてのエタノール(適量)、分散剤としてのポリエチレンイミン(例えば、1wt%)を混入して、スラリーを生成する。
【0055】
このため、ステップ1で得られたスラリーの固まりを乾燥させた後、焼結すると(S2)、LCCFが形成される。このLCCFは、前述したように、モル比がLaCO:CaCO:CoO:Fe=0.7:0.3:0.8:0.1の混合粉を材料として形成されているため、La0.7Ca0.3 Co0.8Fe0.2である。このLCCFは、熱膨張係数が21.0×10−6℃で、1000℃程度まで耐え得る高い耐熱性がある。
【0056】
以下、同様に、ステップ3,4を実行して、本実施形態の高温シール材料を得る。さらに、第一実施形態と同様に、ステップ5,6,(7)を実行して、本実施形態の高温シール体を得る。
【0057】
以上、本実施形態の高温シール体は、前述したように、高い耐熱性がある上に、熱膨張係数が21.0×10−6℃のLCCSFで形成されているため、熱膨張係数が17.0〜25.0×10−6℃程度で、700〜900℃程度の高温下で使用される部材をシールすることができる。さらに、本実施形態のシール体は、第一実施形態と同様、LCCF細粒に対して、LCCF粗粒が3.5倍重量以下であるため、高いシール性能を得ることができる。
【0058】
「高温シール体及びその材料3」
次に、本発明に係る高温シール体及びその材料の第三実施形態について説明する。
【0059】
本実施形態における高温シール体及びその材料の製造手順も、第一実施形態と同じである。但し、本実施形態でも、高温シール体及びその材料の形成素材が第一実施形態と異なっている。
【0060】
すなわち、本実施形態のスラリー生成処理(S1)では、焼結により、混合伝導性酸化物の一種であるペロブスカイト型のLBCFを成す混合粉体のスラリーを生成する。なお、LBCFは、LaBa(1−x)CoFe(1−y)で表されるペロブスカイト型酸化セラミックスである。このスラリーの生成では、LaCO粉、BaCO粉、CoO粉、Fe粉を準備する。これらの粉の平均粒径も、例えば、1.0μmである。そして、これらの粉を、例えば、以下のモル比で混ぜ合わせる。LaCO:BaCO:CoO:Fe=0.5:0.5:0.8:0.1 次に、この混合粉に対して、第一実施形態と同様に、溶剤としてのエタノール(適量)、分散剤としてのポリエチレンイミン(例えば、1wt%)を混入して、スラリーを生成する。
【0061】
このため、ステップ1で得られたスラリーの固まりを乾燥させた後、焼結すると(S2)、LBCFが形成される。このLBCFは、前述したように、モル比がLaCO:BaCO:CoO:Fe=0.5:0.5:0.8:0.1の混合粉を材料として形成されているため、La0.5Ba0.5 Co0.8Fe0.2である。このLBCFは、熱膨張係数が22.0×10−6℃で、1000℃程度まで耐え得る高い耐熱性がある。
【0062】
以下、同様に、ステップ3,4を実行して、本実施形態の高温シール材料を得る。さらに、第一実施形態と同様に、ステップ5,6,(7)を実行して、本実施形態の高温シール体を得る。
【0063】
以上、本実施形態の高温シール体は、前述したように、高い耐熱性がある上に、熱膨張係数が22.0×10−6℃のLBCFで形成されているため、熱膨張係数が18.0〜26.0×10−6℃程度で、700〜900℃程度の高温下で使用される部材をシールすることができる。さらに、本実施形態の高温シール体は、第一実施形態と同様、LBCF細粒に対して、LBCF粗粒が3.5倍重量以下であるため、高いシール性能を得ることができる。
「高温シール体及びその材料の変形例」
以上の実施形態の高温シール体は、いずれも、以下のように表されるペロブスカイト型酸化セラミックスであるが、x、yの値は、上記実施形態の値に限定されるものではなく、0<x,y<1であればよい。
【0064】
(1−x)CoFe(1−y)
第一実施形態:AはBa、BはSr
第二実施形態:AはLa、BはCa
第三実施形態:AはLa、BはBa
【0065】
また、以上の実施形態では、ペロブスカイト型酸化セラミックス粉をペースト化して高温シール材料を生成する際(S4)、このセラミックス粉に混入する分散剤としてポリカルボン酸を用いているが、この替わりに、例えば、ポリアクリル酸等を用いてもよい。
【0066】
さらに、以上の実施形態では、ペロブスカイト型酸化セラミックス粉をペースト化して高温シール材料を生成する際(S4)、このセラミックス粉に、溶剤及び分散剤を混入しているが、さらに、高温シール材料の流動性を高めるため、言い換えると、シリンジに充填して高温シール材料を押出し易くする、さらには、部材に付いた高温シール材料を延ばし易くするために、セルロース又はその誘導体を混入してもよい。
【0067】
上記セルロースの誘導体としては、例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシエチルメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースがある。
【0068】
この流動性を高める添加剤は、ペロブスカイト型酸化セラミックス粉に対して、0.5〜1.5wt%を混入することが好ましい。この添加剤は、基本的に、さらに多くの量を混入することで、ペースト状の高温シール材料の流動性を高めることができる。しかしながら、この添加剤も、分散剤と同様、高温シール材料を乾燥した後、使用環境温度まで温度上昇させる過程で、炭化後、焼失してしまい、高温シール体に空隙を形成する因子となる。このため、シール性の観点から、この添加剤の混入量は、ペロブスカイト型酸化セラミックス粉に対して、1.5wt%以下であることが好ましい。
【0069】
また、以上の実施形態では、いずれも、10〜45μmのペロブスカイト型酸化セラミックス粗粒と2μm以下のペロブスカイト型酸化セラミックス細粒とで、高温シール体を形成しているが、さらに、2〜10μmのペロブスカイト型酸化セラミックス中粒を加えて、高温シール体を形成してもよい。この場合、ペロブスカイト型酸化セラミックス粗粒とペロブスカイト型酸化セラミックス中粒とペロブスカイト型酸化セラミックス細粒との重量比は、ペロブスカイト型酸化セラミックス粗粒:Bペロブスカイト型酸化セラミックス中粒:ペロブスカイト型酸化セラミックス細粒=1:1〜2.5:2.0〜3.5であることが好ましい。
【0070】
ペロブスカイト型酸化セラミックス中粒は、隣り合う粗粒相互のクサビとして機能し、シール材料の乾燥処理過程で、隣り合う粗粒がズレるのを防ぐ役目を担う。このため、この中粒の混入効果を得るためには、中粒は、細粒に対して、約1倍重量以上含まれていることが好ましい。一方、中粒の量が多くなりすぎると、粗粒相互の接触が妨げられるため、中粒は、細粒に対して、粗粒の混入比よりも若干少なめで、約2.5倍重量以下であることが好ましい。
【0071】
なお、以上の各実施形態における高温シール材料は、部材に密着することから、接着剤としての機能があることは言うまでもない。
【0072】
「酸素透過モジュール1」
次に、以上で説明した高温シール体を用いた酸素透過モジュールの実施形態について説明する。
【0073】
この酸素透過モジュール10は、図3に示すように、酸素イオンを選択的に透過する酸素透過体11と、この酸素透過体11の支持枠15と、支持枠15と酸素透過体11との間をシールする高温シール体16とを有している。
【0074】
酸素透過体11は、図5に示すように、酸素を透過する混合伝導性酸化物の一種であるペロブスカイト型のBSCFで形成されている平板状の酸素透過層12と、同じくBSCFで形成され、酸素透過層を支持する平板状の支持層13と、を有している。
【0075】
酸素透過体11を形成するBSCFは、第一実施形態の高温シール体16を形成するBaSr(1−x)CoFe(1−y)で表されるペロブスカイト型酸化セラミックスと基本的に同じものである。但し、ここで用いるBSCFは、高い酸素透過性能を得るため、x、yは、それぞれ、0.3<x<0.7、0.7<y<0.95の範囲である。
【0076】
平板状の酸素透過層12は、0.005〜0.1mmの厚さで、酸素イオンを選択的に透過する。このように、本実施形態では、酸素透過層12の厚さを極めて薄くし、酸素イオンの透過抵抗を小さくして、酸素透過速度の向上を図っている。しなしながら、酸素透過層12は、その厚さが極めて薄いため、極めて脆い。そこで、本実施形態では、酸素透過層12を支持する支持層13を設けている。平板状の支持層13は、多孔質体で、0.5〜5mmの厚さである。この支持層13は、剛性を確保するために、酸素透過層の厚さよりも厚いものの、透過抵抗を小さくするために、多数の空孔14が形成されている。
【0077】
次に、酸素透過体11の製造方法について、図6に示すフローチャートに従って説明する。
【0078】
まず、支持層用のスラリーを生成する(S11)。このスラリー生成では、BaCO粉、SrCO粉、CoO粉、Fe粉を準備する。この粉の平均粒径は、例えば、1.0μmである。そして、これらの粉を、例えば、以下のモル比で混ぜ合わせる。BaCO:SrCO:CoO:Fe=0.5:0.5:0.9:0.05 そして、この混合粉に対して、溶剤としてのエタノール(適量)、バインダーとしてのポリビニルブチラール(例えば、20wt%)、可塑剤としてのジブチルフタレート(例えば、10wt%)、分散剤としてのポリエチレンイミン(例えば、1wt%)、平均粒径20μmの有機ビーズ(例えば、5〜20wt%)を混入し、支持層用のビーズ入りスラリーを生成する。この際、例えば、湿式ボールミル等で上記材料を混ぜ合わせる。なお、混合粉に対する有機ビーズの混入体積率(vol%)は、混合粉と有機ビーズとの比重比が6:1であることから、30〜120vol%である。
【0079】
このスラリー生成では、スラリー粘土が15000cpになるように、溶剤としてのエタノールの添加量を調整する。なお、スラリー粘土は、12000cp〜17000cpであることが好ましい。
【0080】
次に、ドクターブレード法により、支持層用のビーズ入りスラリーでスラリー層を成形し(S12)、このスラリー層を乾燥させて未焼結支持層を形成する(S3)。
【0081】
スラリー層中の溶剤は、乾燥工程で蒸発する。一方、バインダー、可塑剤、有機ビーズは、未焼結支持層中に残る。バインダーは、乾燥したスラリー層、つまり未焼結支持層中の粒子相互間を結合する役目の他に、未焼結支持層の可塑性を高める、つまり変形容易性を高める役目を担っている。また、可塑剤は、未焼結支持層の可塑性を高める役目を担っている。
【0082】
このように、本実施形態において、未焼結支持層の可塑性を高めるバインダーや可塑剤を用いるのは、未焼結支持層を形成した後、この未焼結支持層に対して、未焼結支持層の変形を伴う処理、及び/又は未焼結支持層の変形の恐れがある処理を行うからである。
【0083】
以上、支持層用のスラリーの生成(S11)から、未焼結支持層の形成(S13)までの処理で、未焼結支持層形成工程Aが終了する。
【0084】
次に、透過層用のスラリーを生成する(S14)。このスラリーの生成でも、支持層用のスラリーの生成と同様に、BaCO粉、SrCO粉、CoO粉、Fe粉の混合粉に対して、溶剤としてのエタノール(適量)、バインダーとしてのポリビニルブチラール(例えば、20wt%)、可塑剤としてのジブチルフタレート(例えば、10wt%)、分散剤としてのポリエチレンイミン(例えば、1wt%)を混入する。すなわち、透過層用のスラリーは、有機ビーズが入っていないことを除いて、支持層用のスラリーと同成分で、且つ同成分比である。
【0085】
なお、以上のように、本実施形態では、支持層用のスラリーと透過層用のスラリーとは、有機ビーズの有無を除いて、その成分及び成分比が同じであるため、有機ビーズの入っていないスラリーを生成し、このスラリーの一部に有機ビーズを入れて、これを支持層用のスラリーとし、残りのスラリーをそのまま透過層用のスラリーとしてもよい。よって、透過層用のスラリーの生成(S14)は、支持層用のスラリーの生成(S11)の前に行ってもよい。
【0086】
次に、前述のドクターブレード法により、未焼結支持層上に、透過層用のスラリーでスラリー層を成形し(S15)、このスラリー層を乾燥させて、これを未焼結透過層とし、未焼結支持層及び未焼結透過層を有する未焼結支持体を形成する(S16)。
【0087】
以上、透過層用のスラリーの生成(S14)から、未焼結透過体の形成(S16)までの処理で、未焼結透過体形成工程Bが終了する。
【0088】
最後に、ステップ16で得られた未焼結透過体を焼結して、図5を用いて説明した酸素透過体11を得る(S17)。
【0089】
この焼結処理では、未焼結透過体を焼結炉内に入れ、例えば、0.5℃/minの遅い昇温速度で600℃まで炉内を昇温し、その後、例えば、2℃/minで1150℃まで炉内を昇温する。そして、この1150℃を3時間保持する。この焼結における昇温過程で、未焼結支持層内の有機ビーズは、焼失し、有機ビーズが存在していた部分が空孔となる。また、未焼結支持層内のバインダー及び可塑剤は、炭化した後、焼失する。
【0090】
以上の焼結処理により、未焼結支持層は、多孔質の支持層13となり、未焼結透過層は、酸素透過層12となって、酸素透過体11が得られる。透過層12及び支持層13は、いずれも、前述したように、モル比がBaCO:SrCO:CoO:Fe=0.5:0.5:0.9:0.05の比率の混合粉を材料として形成されているため、Ba0.5Sr0.5 Co0.9Fe0.1で表されるペロブスカイト型酸化セラミックスである。
【0091】
なお、以上では、未焼結支持層上に、未焼結透過層を形成するにあたり、未焼結支持層上に、ドクターブレード法により、透過層用のスラリーによるスラリー層を形成しているが、未焼結支持層上に、透過層用のスラリーを噴霧して、透過層用のスラリー層を形成してもよい。この場合、透過層用のスラリーには、支持層用のスラリーに、さらに、多くの溶剤を混入して、噴霧性を高める必要がある。
【0092】
また、未焼結支持層上に、透過層用のスラリーによるスラリー層を形成せず、別途、透過層用のスラリーによるスラリー層をドクターブレード法で形成し、このスラリー層を乾燥させて未焼結透過層を形成した後、この未焼結透過層を未焼結支持層上に置いてもよい。この際、平板プレート等で未燒結透過層を未焼結支持層に押付けることで、未焼結支持層と未焼結透過層との接合性を高める。
【0093】
また、以上は、平板状の酸素透過体11の製造例であるが、酸素透過体は、平板状である必要はなく、例えば、円筒状であってもよい。この場合、まず、リング状の貫通孔が形成されている押出型に、支持層用のスラリーを供給して、円筒形状の支持層用のスラリー層を形成する。次に、この円筒状のスラリー層を乾燥、焼結して、支持層を生成する。そして、この円筒状の支持層の外周に、透過層用のスラリーを塗布する等で、透過用のスラリー層を形成して、このスラリー層を乾燥した後、支持層と共にこのスラリー層を焼結して、円筒状の酸素透過体を得る。
【0094】
なお、この場合の支持層用のスラリーは、押出し成形後にその形状を維持しておく必要性から、セラミックス混合紛には、可塑性を高めるためのバインダーや可塑剤を混入せず、替わりに、バインダーとして、例えば、メチルセルロース等を混入する。
【0095】
酸素透過モジュールの支持枠15も、第一実施形態の高温シール体や以上で説明した酸素透過体と同様、混合伝導性酸化物の一種であるペロブスカイト型のBSCFで形成されている。すなわち、この支持枠15も、BaSr(1−x)CoFe(1−y)で表されるペロブスカイト型酸化セラミックスで形成されている。
【0096】
まず、BSCFを得るためのスラリーを生成する。次に、このスラリーを用いて、押出し成形、射出成形等により、支持枠15の形に対応したスラリー層を形成する。このスラリー生成では、BSCFを得るための混合粉に、溶剤の他、スラリー層の成形に合ったバインダー等を混入する。次に、このスラリー層を乾燥した後、これを焼結して支持枠15を得る。なお、必要があれば、焼結物に機械加工等を施して支持枠15を得る。
【0097】
酸素透過体11及び支持枠15が製造されると、これらと、第一実施形態の高温シール材料とを用いて、前述した酸素透過モジュールを製造する。すなち、以上のように製造された酸素透過体11と支持枠15との間に、第一実施形態の高温シール材料を塗布し(図1中のS5)、この高温シール材料を乾燥させ(S6)、必要に応じて加熱して(S7)、図3に示す酸素透過モジュール10を製造する。なお、高温シール材料は乾燥過程において高温シール体16となる。
【0098】
以上、本実施形態の酸素透過モジュール10は、これを構成する酸素透過体11、支持枠15、及び高温シール体16が、いずれも、ペロブスカイト型のBSCFで形成され、いずれの熱膨張率も、ほぼ20.0×10−6/℃であるため、温度変化による互いの熱膨張差が生じることはない。このため、本実施形態では、酸素透過体11と支持枠15との間のシールに関して、高温シール体16により高いシール性を確保することができる。
【0099】
また、本実施形態では、酸素透過体11のみならず、高温シール体16も、酸素イオンを透過するBSCFで形成されているため、より多くの酸素イオンを透過することができる。
【0100】
なお、本実施形態では、酸素透過体11をBSCFで形成すると共に、支持枠15及び高温シール体16もBSCFで形成しているが、支持枠15及び高温シール体16は、第二実施形態のように、LCCFで形成してもよいし、第三実施形態のように、LBCFで形成してもよい。すわわち、高温シール体16のみならず、支持体15も、A(1−x)CoFe(1−y)(Aは、Ba又はLaで、Bは、AがBaのときSrで、AがLaのときCa又はBaであり、0<x,y<1である)で表されるペロブスカイト型酸化セラミックスで形成してもよい。但し、酸素透過体11をBCSFで形成する場合には、酸素透過体11と支持枠15及び高温シール体16との熱膨張差をできるかぎり小さくするという観点から、本実施形態のように、支持枠15及び高温シール体16もBSCFで形成することが好ましい。
【0101】
また、本実施形態は、平板状の酸素透過体11が支持枠15に固定されている酸素透過モジュール10であるが、前述した円筒状の酸素透過体が支持枠に固定されている酸素透過モジュールであってもよい。つまり、円筒状の酸素透過体と支持枠との間を、先に例示したいずれかの高温シール体でシールしてもよい。
【0102】
また、図4に示すように、平板状の複数の酸素透過体11を積層して、酸素透過モジュール10aを構成する場合に、隣り合う酸素透過体11相互のシール及び接着に、先に例示したいずれかの高温シール体17を用いてもよい。
【符号の説明】
【0103】
1:BSCF粗粒、2:BSCF細粒、10,10a:酸素透過モジュール、11:酸素透過体、12:酸素透過層、13:支持層、14:空孔、15:支持枠、16,17:高温シール体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1−x)CoFe(1−y)(Aは、Ba又はLaで、Bは、AがBaのときSrで、AがLaのときCa又はBaであり、0<x,y<1である)で表されるペロブスカイト型酸化セラミックス粉と、溶剤と、分散剤とを含み、
前記ペロブスカイト型酸化セラミックス粉は、粒径が10〜45μmの粗粒と、粒径が2μm以下の細粒と、を有し、該細粒と該粗粒との重量比が1:2〜3.5である、
ことを特徴とする高温シール材料。
【請求項2】
請求項1に記載の高温シール材料において、
前記ペロブスカイト型酸化セラミックス粉は、粒径が2〜10μmの中粒を有し、前記粗粒と前記中粒と前記細粒との重量比が1:1〜2.5:2〜3.5である、
ことを特徴とする高温シール材料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の高温シール材料において、
前記ペロブスカイト型酸化セラミックス粉に対して、0.5〜1.5wt%の流動性促進材としてのセルロース又はその誘導体を含む、
ことを特徴とする高温シール材料。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の高温シール材料において、
前記分散剤は、ポリカルボン酸又はポリアクリル酸であり、
ことを特徴とする高温シール材料。
【請求項5】
(1−x)CoFe(1−y)(Aは、Ba又はLaで、Bは、AがBaのときSrで、AがLaのときCa又はBaであり、0<x,y<1である)で表されるペロブスカイト型酸化セラミックス粉を含み、
前記ペロブスカイト型酸化セラミックス粉は、粒径が10〜45μmの粗粒と、粒径が2μm以下の細粒と、を有し、該細粒と該粗粒との重量比が1:2〜3.5である、
ことを特徴とする高温シール体。
【請求項6】
請求項5に記載の高温シール体において、
前記ペロブスカイト型酸化セラミックス粉は、粒径が2〜10μmの中粒を有し、前記粗粒と前記中粒と前記細粒との重量比が1:1〜2.5:2〜3.5である、
ことを特徴とする高温シール体。
【請求項7】
BaSr(1−x)CoFe(1−y)(0.3<x<0.7、0.7<y<0.95)で表されるペロブスカイト型酸化セラミックスで形成された酸素透過体と、
(1−x)CoFe(1−y)(Aは、Ba又はLaで、Bは、AがBaのときSrで、AがLaのときCa又はBaであり、0<x,y<1である)で表されるペロブスカイト型酸化セラミックスで形成され、前記酸化透過体の外枠を成す枠と、
前記酸素透過体と前記枠との間をシールする請求項5又は6に記載の高温シール体と、
を備えていることを特徴とする酸素透過モジュール。
【請求項8】
BaSr(1−x)CoFe(1−y)(0.3<x<0.7、0.7<y<0.95)で表されるペロブスカイト型酸化セラミックスで形成された複数の酸素透過体と、
前記複数の酸素透過体の相互間をシールする請求項5又は6に記載の高温シール体と、
を備えていることを特徴とする酸素透過モジュール。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の酸素透過モジュールにおいて、
前記高温シール体は、BaSr(1−x)CoFe(1−y)(0<x,y<1)で表されるペロブスカイト型酸化セラミックスで形成されている、
ことを特徴とする酸素透過モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−91984(P2012−91984A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242356(P2010−242356)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】