高温用リチウム電池
【課題】高温環境下でも安定した動作が可能なリチウム電池を提供する。
【解決手段】電解質としてイオン液体を用いると共に、負極4は、リチウム合金中のリチウム含有量が重量比で20〜80%である、Li−Al合金、Li−Mg合金、Li−B合金、Li−B−Mg合金、Li−Si合金から選択され、かつ、イオン液体は、1−アルキル−3−メチル−イミダゾリウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、1−メチル−1−アルキル−ピロリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、1−メチル−1−アルキル−ピペリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、トリエチル−アルキル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、トリエチル−アルキル−アンモニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドから選択される。
【解決手段】電解質としてイオン液体を用いると共に、負極4は、リチウム合金中のリチウム含有量が重量比で20〜80%である、Li−Al合金、Li−Mg合金、Li−B合金、Li−B−Mg合金、Li−Si合金から選択され、かつ、イオン液体は、1−アルキル−3−メチル−イミダゾリウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、1−メチル−1−アルキル−ピロリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、1−メチル−1−アルキル−ピペリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、トリエチル−アルキル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、トリエチル−アルキル−アンモニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドから選択される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてリチウム一次電池に係り、特に、高温環境下で動作可能なリチウム一次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、リチウム一次電池において負極として使用される金属リチウムは、180℃に融点を有するため,それ以上の温度領域ではかかる金属リチウムが溶融する。これにより、正極側へ金属リチウムが析出するため正負極間のセミショートが起こり、電圧の低下及び放電容量の減少を招く。また、リチウム一次電池に使用されている電解質には有機溶媒にリチウム塩を溶解した液体の電解液やゲル電解質などがある。しかしながら、これらの電解質は引火性・可燃性の有機溶媒を使用しているため、発火・爆発等の安全面から80℃以上での使用に問題がある。
【0003】
このような問題に対処するために耐熱性の向上を図ったリチウム電池が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
ここで、特許文献1には、リチウムを含有した負極と、二酸化マンガン又はフッ化黒鉛を主体とする正極とを有するリチウム一次電池において、負極がリチウムとアルミニウムとを主成分とする合金であり、合金中のリチウムの含有量を原子比で60〜75%としたリチウム一次電池が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、リチウムを負極、フッ化黒鉛を正極とし、PFA樹脂製のガスケットと、沸点が170℃以上の有機溶媒中にリチウム塩を溶融させた非水電解液とを用い、セパレータとして平均繊維径2μm以下、目付重量5.0〜9.0g/m2、平均孔径3.0〜7.5μmのガラス繊維を用いた非水電解液電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−134107号公報
【特許文献2】特開平8−138686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年は、負極に金属リチウムを用いたコイン型や円筒型のリチウム一次電池においては、その高いエネルギー密度を有することから様々な分野への用途の拡大が図られており、例えば、ガスや石油採掘のような分野における適用も試みられている。
【0008】
このような分野では、掘削部に取り付けられた種々のセンサ等の素子により地中深さ、方向、位置のみならず、その素子周辺の温度や振動、回転速度、トルク等の測定を行うため、かかる素子用の電源として、使用温度環境が常に200℃程度の高温環境下でも安定して動作することができる電池が求められている。
【0009】
しかしながら、上記特許文献に開示されたリチウム電池では、短時間の耐熱性は確保できるものの高温環境下での使用を想定したものではなく、常に200℃程度の高温環境下で安定した動作を実現することは困難であった。
【0010】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のリチウム合金とイオン液体とを用いることにより、上述した200℃程度の高温環境下においてもリチウム一次電池の安定した動作が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
従って、本発明の目的は、200℃程度の高温環境下でも安定した動作が可能なリチウム一次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る高温用リチウム電池は、正極にフッ化黒鉛を用いると共に、負極にリチウム合金を用いた高温用リチウム電池において、電解質としてイオン液体を用いると共に、前記負極は、リチウム合金中のリチウム含有量が重量比で20〜80%である、Li−Al合金、又は、Li−Mg合金、又は、Li−B合金、又は、Li−B−Mg合金、又は、Li−Si合金からなる群より選択されるリチウム合金であり、かつ、前記イオン液体は、下記一般式(1)で表される1−アルキル−3−メチル−イミダゾリウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、
【化1】
下記一般式(2)で表される1−メチル−1−アルキル−ピロリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、
【化2】
下記一般式(3)で表される1−メチル−1−アルキル−ピペリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、
【化3】
下記一般式(4)で表されるトリエチル−アルキル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、
【化4】
及び、下記一般式(5)で表されるトリエチル−アルキル−アンモニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、
【化5】
からなる群より選択されるイオン液体であることを特徴とするものである。
【0013】
このように構成した場合には、200℃程度の高温環境下にて安定して動作できるリチウム一次電池を提供することができる。
【0014】
また、電解質塩として、リチウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド及びその派生物を用いることができる。
【0015】
このように構成した場合には、リチウムイオン伝導性を高めて、200℃程度の高温環境下にてより安定して動作できるリチウム一次電池を提供することができる。
【0016】
また、前記リチウム合金は、Li−Mg合金であり、かつ、前記イオン液体は、トリエチル−アルキル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)としてもよい。
【0017】
このように構成した場合には、リチウムイオン伝導性が高まった活性化状態を200℃程度の高温環境下でも維持でき、高温領域においてより安定した動作が可能となる。
【0018】
さらに、前記イオン液体は、トリエチル−メトキシメチル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドとすることができる。
【0019】
このように構成した場合には、室温領域から200℃を超える高温領域に至る幅広い温度領域で動作可能であると共に、200℃程度の高温領域において十分な放電容量を得ることができる。
【0020】
また、前記イオン液体は、トリエチル−メトキシエチル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、又は、トリエチル−ペンチル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、又は、1−メチル−1−プロピル−ピペリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、又は、1−メチル−1−プロピル−ピロリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドとしてもよい。
【0021】
このように構成した場合には、200℃を超える高温環境下でも、動作可能なリチウムイオン電池を提供することができる。
【0022】
ここで、前記Li−Mg合金中のマグネシウム含有量は、重量比で25〜32%とすることが好ましい。
【0023】
このように構成した場合には、高温環境下において、金属リチウムの溶融析出を未然に防止すると共に、加工性の良いリチウムイオン電池を提供することができる。
【0024】
また、前記リチウム合金は、Li−Al合金であり、かつ、前記イオン液体は、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドとしてもよいし、1−メチル−1−プロピル−ピぺリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドとしてもよい。
【0025】
このように構成した場合には、200℃を超える高温環境下でも、動作可能なリチウムイオン電池を提供することができる。
【0026】
以上において、絶縁部材としてのガスケットとセパレータをさらに備え、前記ガスケットは、250℃以上に融点を持つフッ素樹脂を用いると共に、前記セパレータは、250℃以上に融点を持つアラミドを用いてもよい。
【0027】
このように構成した場合には、200℃以上の高温環境下での耐熱性、耐薬品性、シール性、イオン伝導性等を安定して確保して高温環境下における電池の動作をより一層安定して確保することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、200℃程度の高温環境下でも安定して動作することができるリチウム一次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るリチウム一次電池の構成を示す模式図である。
【図2】重量比を20:80としたLi−Al合金とイオン液体EMI−TFSIとを用いたリチウム一次電池の放電容量を示す図である。
【図3】重量比を20:80としたLi−Al合金とイオン液体MPPi−TFSIとを用いたリチウム一次電池の放電容量を示す図である。
【図4】重量比を75:25としたLi−Mg合金とイオン液体EMI−TFSIとを用いたリチウム一次電池の放電容量を示す図である。
【図5】重量比を75:25としたLi−Mg合金とイオン液体MPPi−TFSIとを用いたリチウム一次電池の放電容量を示す図である。
【図6】重量比を75:25としたLi−Mg合金とイオン液体MPPy−TFSIとを用いたリチウム一次電池の放電容量を示す図である。
【図7】重量比を75:25としたLi−Mg合金とイオン液体TEPP−TFSIとを用いたリチウム一次電池の放電容量を示す図である。
【図8】重量比を75:25としたLi−Mg合金とイオン液体TEMMP−TFSIとを用いたリチウム一次電池の放電容量を示す図である。
【図9】重量比を75:25としたLi−Mg合金とイオン液体TEMEP−TFSIとを用いたリチウム一次電池の放電容量を示す図である。
【図10】重量比を64:32:4としたLi−B−Mg合金とイオン液体EMI−TFSIとを用いたリチウム一次電池の放電容量を示す図である。
【図11】重量比を64:32:4としたLi−B−Mg合金とイオン液体MPPi−TFSIとを用いたリチウム一次電池の放電容量を示す図である。
【図12】リチウム金属とイオン液体MPPi−TFSIとを用いたリチウム一次電池の放電容量を示す図である。
【図13】重量比を68:32としたLi−Mg合金とイオン液体TEMMP−TFSIとを用いたリチウム一次電池の放電容量を示す図である。
【図14】重量比を68:32としたLi−Mg合金とイオン液体TEPP−TFSIとを用いたリチウム一次電池の放電容量を示す図である。
【図15】重量比を68:32としたLi−Mg合金とイオン液体MPPi−TFSIとを用いたリチウム一次電池の放電容量を示す図である。
【図16】重量比を68:32としたLi−Mg合金とイオン液体MPPy−TFSIとを用いたリチウム一次電池の放電容量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1は、本発明に係るリチウム一次電池の構成を説明するための模式図である。
【0031】
図1において、1はコイン型のリチウム一次電池であり、ステンレス製の負極外装体(負極端子)2及びステンレス製の正極外装体3(正極端子)から構成される電池外装体の内部に、リチウム合金からなる負極4及びフッ化黒鉛を主体とする正極5がセパレータ6を介して電解質7と共に密封状態に収容されている。また、負極端子を兼ねる負極外装体2と正極端子を兼ねる正極外装体3との間には、耐絶縁性及びシール性を確保するためのガスケット8が介装されている。
【0032】
上記セパレータ6としては、負極4及び正極5との密着に対して充分な絶縁性を有すると共にイオン伝導性に優れ、融点が250℃以上である部材であれば適宜選定することができ、例えば、アラミド(全芳香族ポリアミド)を用いることができる。
【0033】
同様に、上記ガスケット8としては、絶縁性、シール性、耐薬品性に優れ、融点が250℃以上である部材であれば適宜選定することができ、例えば、PFA(テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニールエーテル共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂を用いることができる。
【0034】
また、上記正極5としては、フッ化黒鉛CFx(0.2<x≦1)を用いることができる。なお、本実施の形態に係る正極5は、従来公知の導電材、結着剤を含んでもよい。
【0035】
本実施の形態において、上記負極4は、Li−Al合金、Li−Mg合金、Li−Si合金、Li−B合金、及び、Li−B−Mg合金のいずれかを用いることができる。
【0036】
ここで、上記リチウム合金中におけるリチウム含有量としては、重量比で20〜80%の範囲であることが好ましい。リチウム含有量が20%未満では放電容量の低下が著しくなる一方、80%超では金属リチウムが溶融析出する虞が生じるためである。
【0037】
また、本実施の形態において、上記電解質としては、−80〜300℃程度でも安定な液体として存在し,導電率・不揮発性・不燃性・耐熱性に優れた下記に示すイオン液体のいずれかを用いることができる。
【0038】
具体的には、一般式(1)に示すような、アルキル基を有したイオン液体(1−アルキル−3−メチル−イミダゾリウム:R=−CH2CH3,−CH2CH2CH2CH3)/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド(以下、AMI−TFSIと称する)。
【化6】
【0039】
または、一般式(2)に示すような、(1−メチル−1−アルキル−ピロリジニウム:R=−CH2CH2CH3,−CH2CH2CH2CH3)/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド(以下、MAPy−TFSIと称する)。
【化7】
【0040】
または、一般式(3)に示すような、(1−メチル−1−アルキル−ピぺリジニウム:R=−CH2CH2CH3,−CH2CH2CH2CH3)/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド(以下、MAPi−TFSIと称する)。
【化8】
【0041】
または、一般式(4)に示すような、アルキル基(R=n−C5H11,n−C8H17,n−C12H25,CH2OCH3,CH2CH2OCH3)のいずれかを有したトリエチル−アルキル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド(以下、TEAP−TFSIと称する)。
【化9】
【0042】
または、一般式(5)に示すような、アルキル基(R=n−C5H11,n−C8H17,n−C12H25,CH2OCH3,CH2CH2OCH3)のいずれかを有したトリエチル−アルキル−アンモニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド(以下、TEAA−TFSIと称する)。
【化10】
のいずれかを用いることができる。
【0043】
また、電解質塩としては、一般式(6)に示すような、リチウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド及びその派生物を用いることができる。
【化11】
【0044】
次に、上述のような種々のリチウム合金(負極4)及びイオン液体(電解質7)を用いたリチウム一次電池において、使用温度(環境温度)に応じた放電容量を測定した結果を実施例として以下に説明する。なお、以下の実施例においてはいずれも、正極3として、フッ化黒鉛、導電材、結着剤を重量比で74:6:20の割合で混合し、アルミ箔上に塗布したものを用いた。また、結着剤としてはポリイミド系のバインダーを使用した。
【実施例1】
【0045】
負極4として、リチウムとアルミニウムとの重量比を20:80としたLi−Al合金を用いた。また、イオン液体としては、下記(7)式で示されるEMI−TFSI(1−エチル−3−メチル−イミダゾリウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)を用いた。
【化12】
【0046】
上記組み合わせにて、放電レートを0.01Cとすると共に、カットオフ電圧を2.0Vとし、室温(25℃)、150℃、200℃、220℃にて放電特性を測定した結果を図2に示す。
【0047】
図2から理解されるように、本実施例に係るリチウム一次電池は、室温では動作しなかったが、150℃で8.6mAh、200℃で3.4mAh、220℃で2.1mAhの放電容量がそれぞれ得られた。これは、かかる組み合わせにおいて、室温より環境温度が上昇(150℃程度まで)するにつれイオン液体EMI−TFSIが活性化して動作可能となり放電容量が増大したものの、環境温度の上昇(本例では、220℃まで)に伴って、イオン液体EMI−TFSIが過度に活性化して放電容量が逆に低下したためと考えられる。
【実施例2】
【0048】
負極4として、リチウムとアルミニウムとの重量比を20:80としたLi−Al合金を用いた。また、イオン液体としては、下記(8)式で示されるMPPi−TFSI(1−メチル−1−プロピル−ピぺリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)を用いた。
【化13】
【0049】
上記組み合わせにて、放電レートを0.01Cとすると共に、カットオフ電圧を2.0Vとし、室温(25℃)、150℃、200℃、220℃にて放電特性を測定した結果を図3に示す。
【0050】
図3から理解されるように、本実施例に係るリチウム一次電池は、室温では動作しなかったが、150℃で6.6mAh、200℃で4.2mAh、220℃で2.6mAhの放電容量がそれぞれ得られた。これは、かかる組み合わせにおいて、実施例1と同様に、室温より環境温度が上昇(150℃程度まで)するにつれイオン液体MPPi−TFSIが活性化して動作可能となり放電容量が増大したものの、環境温度の上昇(本例では、220℃まで)に伴って、イオン液体MPPi−TFSIが過度に活性化して放電容量が逆に低下したためと考えられる。
【実施例3】
【0051】
負極4として、リチウムとマグネシウムとの重量比を75:25としたLi−Mg合金を用いた。また、イオン液体としては、前述したEMI−TFSI(1−エチル−3−メチル−イミダゾリウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)を用いた。
【0052】
上記組み合わせにて、放電レートを0.01Cとすると共に、カットオフ電圧を2.0Vとし、室温(25℃)、150℃、200℃にて放電特性を測定した結果を図4に示す。
【0053】
図4から理解されるように、本実施例に係るリチウム一次電池は、室温で1.8mAh、150℃で5.5mAh、200℃で5.4mAhの放電容量がそれぞれ得られた。
【0054】
この測定結果から明らかなように、Li−Mg合金(重量比:75:25)とEMI−TFSIとを用いたリチウム一次電池では、室温領域から高温領域に至る幅広い温度領域で動作可能であると共に、室温状態での放電容量よりも高温状態での放電容量の方が増大し、高温状態においてより安定した動作が得られることが分かった。これは、かかる組み合わせにおいて、イオン液体EMI−TFSIが高温領域でより活性化してリチウムイオン伝導性が高まり、かつ、このような活性化状態を200℃程度の高温環境下でも維持できるためであると考えられる。
【実施例4】
【0055】
負極4として、リチウムとマグネシウムとの重量比を75:25としたLi−Mg合金を用いた。また、イオン液体としては、前述したMPPi−TFSI(1−メチル−1−プロピル−ピぺリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)を用いた。
【0056】
上記組み合わせにて、放電レートを0.01Cとすると共に、カットオフ電圧を2.0Vとし、室温(25℃)、150℃、200℃にて放電特性を測定した結果を図5に示す。
【0057】
図5から理解されるように、本実施例に係るリチウム一次電池は、室温では動作しなかったが、150℃で5.2mAh、200℃で5.6mAhの放電容量がそれぞれ得られた。これは、かかる組み合わせにおいて、室温から環境温度が上昇(150℃程度まで)するにつれイオン液体MPPi−TFSIが活性化して動作可能となると共に、実施例3と同様に、リチウムイオン伝導性が高まった活性化状態を200℃程度の高温環境下でも維持できるためであると考えられる。
【実施例5】
【0058】
負極4として、リチウムとマグネシウムとの重量比を75:25としたLi−Mg合金を用いた。また、イオン液体としては、下記(9)式で示されるMPPy−TFSI(1−メチル−1−プロピル−ピロリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)を用いた。
【化14】
【0059】
上記組み合わせにて、放電レートを0.01Cとすると共に、カットオフ電圧を2.0Vとし、室温(25℃)、150℃、200℃にて放電特性を測定した結果を図6に示す。
【0060】
図6から理解されるように、本実施例に係るリチウム一次電池は、室温では動作しなかったが、150℃で6.3mAh、200℃で1.5mAhの放電容量がそれぞれ得られた。これは、かかる組み合わせにおいて、室温から環境温度が上昇(150℃程度まで)するにつれイオン液体MPPy−TFSIが活性化して動作可能となり放電容量が増大したものの、環境温度の上昇(本例では、200℃まで)に伴って、イオン液体MPPy−TFSIが過度に活性化して放電容量が逆に低下したためと考えられる。
【実施例6】
【0061】
負極4として、リチウムとマグネシウムとの重量比を75:25としたLi−Mg合金を用いた。また、イオン液体としては、下記(10)式で示されるTEPP−TFSI(トリエチル−ペンチル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)を用いた。
【化15】
【0062】
上記組み合わせにて、放電レートを0.01Cとすると共に、カットオフ電圧を2.0Vとし、室温(25℃)、150℃、200℃にて放電特性を測定した結果を図7に示す。
【0063】
図7から理解されるように、本実施例に係るリチウム一次電池は、室温では動作しなかったが、150℃で5.4mAh、200℃で4.6mAhの放電容量がそれぞれ得られた。これは、かかる組み合わせにおいて、室温から環境温度が上昇(150℃程度まで)するにつれイオン液体TEPP−TFSIが活性化して動作可能となると共に、リチウムイオン伝導性が高まった活性化状態を200℃程度の高温環境下でも維持できるためであると考えられる。
【実施例7】
【0064】
負極4として、リチウムとマグネシウムとの重量比を75:25としたLi−Mg合金を用いた。また、イオン液体としては、下記(11)式で示されるTEMMP−TFSI(トリエチル−メトキシメチル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)を用いた。
【化16】
【0065】
上記組み合わせにて、放電レートを0.01Cとすると共に、カットオフ電圧を2.0Vとし、室温(25℃)、150℃、200℃にて放電特性を測定した結果を図8に示す。
【0066】
図8から理解されるように、本実施例に係るリチウム一次電池は、室温で0.3mAh、150℃で6.3mAh、200℃で5.8mAhの放電容量がそれぞれ得られた。これは、かかる組み合わせにおいて、イオン液体TEMMP−TFSIが高温領域でより活性化してリチウムイオン伝導性が高まり、かつ、このような活性化状態を、実施例6と同様に200℃程度の高温環境下でも維持できるためであると考えられる。
【実施例8】
【0067】
負極4として、リチウムとマグネシウムとの重量比を75:25としたLi−Mg合金を用いた。また、イオン液体としては、下記(12)式で示されるTEMEP−TFSI(トリエチル−メトキシエチル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)を用いた。
【化17】
【0068】
上記組み合わせにて、放電レートを0.01Cとすると共に、カットオフ電圧を2.0Vとし、室温(25℃)、150℃、200℃にて放電特性を測定した結果を図9に示す。
【0069】
図9から理解されるように、本実施例に係るリチウム一次電池は、室温で0.2mAh、150℃で4.9mAh、200℃で0.5mAhの放電容量がそれぞれ得られた。これは、かかる組み合わせにおいて、室温から環境温度が上昇(150℃程度まで)するにつれイオン液体TEMEP−TFSIが活性化して放電容量が増大したものの、環境温度の上昇(本例では、200℃まで)に伴って、イオン液体TEMEP−TFSIが過度に活性化して放電容量が逆に低下したためと考えられる。
【実施例9】
【0070】
負極4として、リチウムとホウ素とマグネシウムとの重量比を64:32:4としたLi−B−Mg合金を用いた。また、イオン液体としては、EMI−TFSI(1−エチル−3−メチル−イミダゾリウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)を用いた。
【0071】
上記組み合わせにて、放電レートを0.01Cとすると共に、カットオフ電圧を2.0Vとし、室温(25℃)、150℃、200℃にて放電特性を測定した結果を図10に示す。
【0072】
図10から理解されるように、本実施例に係るリチウム一次電池は、室温で2.2mAh、150℃で7.8mAh、200℃で0.5mAhの放電容量がそれぞれ得られた。これは、かかる組み合わせにおいて、室温から環境温度が上昇(150℃程度まで)するにつれイオン液体EMI−TFSIが活性化して放電容量が増大したものの、200℃程度の高温では、イオン液体EMI−TFSIが過度に活性化して放電容量が著しく低下したためと考えられる。
【実施例10】
【0073】
負極4として、リチウムとホウ素とマグネシウムとの重量比を64:32:4としたLi−B−Mg合金を用いた。また、イオン液体としては、MPPi−TFSI(1−メチル−1−プロピル−ピぺリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)を用いた。
【0074】
上記組み合わせにて、放電レートを0.01Cとすると共に、カットオフ電圧を2.0Vとし、室温(25℃)、150℃、200℃にて放電特性を測定した結果を図11に示す。
【0075】
図11から理解されるように、本実施例に係るリチウム一次電池は、室温では動作しなかったが、150℃で5.5mAh、200℃で2.46mAhの放電容量がそれぞれ得られた。これは、かかる組み合わせにおいて、実施例9と同様に、室温から環境温度が上昇(150℃程度まで)するにつれイオン液体MPPi−TFSIが活性化して動作可能となるが、200℃程度の高温では、イオン液体MPPi−TFSIが過度に活性化して放電容量が逆に低下したためと考えられる。
【0076】
[比較例1]
負極4をリチウム金属(リチウム含有量100%)として、イオン液体としては、MPPi−TFSI(1−メチル−1−プロピル−ピぺリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)を用いた。
【0077】
上記組み合わせにて、放電レートを0.01Cとすると共に、カットオフ電圧を2.0Vとし、150℃、200℃にて放電特性を測定した結果を図12に示す。
【0078】
図12から理解されるように、本比較例に係るリチウム一次電池は、150℃で5.4mAhの放電容量が得られたが、室温及び200℃では動作しなかった。
【0079】
この測定結果から明らかなように、リチウム金属とMPPi−TFSIとを用いたリチウム一次電池では、200℃程度の高温領域においては実質的に使用不能であることが分かった。
【0080】
以上の検証結果を表1にまとめて示す。
【表1】
【0081】
表1から理解されるように、比較例1に係るリチウム一次電池では、高温での動作が不能であったのに比し、実施例1〜10に係るリチウム一次電池はいずれも、200℃程度の高温環境下にて動作可能であることが分かる。さらに、かかる高温環境下においてより安定して動作できる(高温領域における放電容量が室温領域における放電容量よりも増大する)リチウム一次電池としては、負極4としてLi−Al合金(実施例1、実施例2)又はLi−Mg合金(実施例3〜実施例8)を用いたものが好ましいことが分かる。特に、200℃程度の高温領域でより安定した放電容量が得られるのは、Li−Mg合金(実施例3、実施例4、実施例6、実施例7)であることが分かる。
【0082】
そこで、Li−Mg合金を負極4として用い、より高温(例えば、220℃)の環境下において、種々のイオン液体と組み合わせた場合の放電容量をさらに検証した(実施例11〜実施例14)。
【0083】
なお、Li−Mg合金においてリチウム含有量を75%超(マグネシウム含有量を25%未満)とすると、DSC(Differential Scanning Calorimetry:示差走査熱量測定)等の熱分析により、200℃を超える環境温度では、金属リチウムが溶融析出することが判明し、一方、マグネシウムの含有量を増大させるとLi−Mg合金の加工性が著しく低下することが分かった。そこで、以下の実施例においては、Li−Mg合金中のマグネシウム含有量を製造上の下限値(製造限界)である32重量%(リチウム含有量の上限値として68重量%)に設定している。
【実施例11】
【0084】
負極4として、リチウムとマグネシウムとの重量比を68:32としたLi−Mg合金を用いた。また、イオン液体としては、前述したTEMMP−TFSI(トリエチル−メトキシメチル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)を用いた。
【0085】
上記組み合わせにて、放電レートを0.01Cとすると共に、カットオフ電圧を2.0Vとし、室温(25℃)、150℃、200℃、220℃にて放電特性を測定した結果を図13に示す。
【0086】
図13から理解されるように、本実施例に係るリチウム一次電池は、室温で0.2mAh、150℃で9.0mAh、200℃で9.0mAh、220℃で4.5mAhの放電容量がそれぞれ得られた。
【0087】
この測定結果から明らかなように、Li−Mg合金(重量比:68:32)とTEMMP−TFSIとを用いたリチウム一次電池では、室温領域から高温領域に至る幅広い温度領域で動作可能であると共に、室温状態での放電容量よりも高温状態での放電容量の方が増大し、かつ、200℃超の高温状態(本例では、220℃)においても動作可能であることが分かった。これは、かかる組み合わせにおいて、イオン液体TEMMP−TFSIが高温領域でより活性化してリチウムイオン伝導性が高まり、かつ、このような活性化状態を200℃を超える高温環境下でも維持できるためであると考えられる。
【実施例12】
【0088】
負極4として、リチウムとマグネシウムとの重量比を68:32としたLi−Mg合金を用いた。また、イオン液体としては、前述したTEPP−TFSI(トリエチル−ペンチル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)を用いた。
【0089】
上記組み合わせにて、放電レートを0.01Cとすると共に、カットオフ電圧を2.0Vとし、室温(25℃)、150℃、200℃、220℃にて放電特性を測定した結果を図14に示す。
【0090】
図14から理解されるように、本実施例に係るリチウム一次電池は、室温では動作しなかったが、150℃で8.6mAh、200℃で4.2mAh、220℃で4.5mAhの放電容量がそれぞれ得られた。
【0091】
この測定結果から明らかなように、Li−Mg合金(重量比:68:32)とTEPP−TFSIとを用いたリチウム一次電池では、室温領域から環境温度が上昇(150℃程度まで)するにつれてイオン液体TEPP−TFSIが活性化して動作可能となると共に、実施例11と同様に、リチウムイオン伝導性が高まった活性化状態を200℃を超える高温環境下でも維持できることが分かった。
【実施例13】
【0092】
負極4をLi−Mg合金として、リチウムとマグネシウムとの重量比を68:32としたLi−Mg合金を用いた。また、イオン液体としては、前述したMPPi−TFSI(1−メチル−1−プロピル−ピペリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)を用いた。
【0093】
上記組み合わせにて、放電レートを0.01Cとすると共に、カットオフ電圧を2.0Vとし、室温(25℃)、150℃、200℃、220℃にて放電特性を測定した結果を図15に示す。
【0094】
図15から理解されるように、本実施例に係るリチウム一次電池は、室温では動作しなかったが、150℃で4.6mAh、200℃で6.2mAh、220℃で3.1mAhの放電容量がそれぞれ得られた。
【0095】
この測定結果から明らかなように、Li−Mg合金(重量比:68:32)とMPPi−TFSIとを用いたリチウム一次電池では、室温領域から環境温度が上昇するにつれてイオン液体MPPi−TFSIが活性化して動作可能となると共に、実施例11、実施例12と同様に、リチウムイオン伝導性が高まった活性化状態を200℃を超える高温環境下でも維持できることが分かった。
【実施例14】
【0096】
負極4をLi−Mg合金として、リチウムとマグネシウムとの重量比を68:32としたLi−Mg合金を用いた。また、イオン液体としては、前述したMPPy−TFSI(1−メチル−1−プロピル−ピロリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)を用いた。
【0097】
上記組み合わせにて、放電レートを0.01Cとすると共に、カットオフ電圧を2.0Vとし、室温(25℃)、150℃、200℃、220℃にて放電特性を測定した結果を図16に示す。
【0098】
図16から理解されるように、本実施例に係るリチウム一次電池は、室温では動作しなかったが、150℃で6.5mAh、200℃で4.5mAh、220℃で2.0mAhの放電容量がそれぞれ得られた。
【0099】
この測定結果から明らかなように、Li−Mg合金(重量比:68:32)とMPPy−TFSIとを用いたリチウム一次電池では、室温領域から環境温度が上昇するにつれてイオン液体MPPi−TFSIが活性化して動作可能となると共に、実施例11〜実施例13と同様に、リチウムイオン伝導性が高まった活性化状態を200℃を超える高温環境下でも維持できることが分かった。
【0100】
以上の検証結果を表2にまとめて示す。
【表2】
【0101】
表2より明らかなように、実施例11〜14に係るリチウム一次電池はいずれも、220℃の高温環境下にて動作可能であることが理解される。特に、室温から200℃を超える高温領域(本例では、220℃)まで広い温度領域で動作可能であると共に、200℃程度で十分な放電容量を有するという観点からは、実施例11(Li−Mg合金(68:32)+TEMMP−TFSI)の組み合わせが最も好ましいことが分かる。
【0102】
なお、前述したように、Li−Mg合金中におけるリチウムの含有量(重量%)が75%以上(マグネシウムの含有量が25%以下)となると、200℃を越える高温環境下では、金属リチウムが溶融析出する虞が生じ、一方、マグネシウムの含有量が32%以上となると加工性が著しく低下し製造が困難となる。
【0103】
従って、200℃を超える高温環境下で動作可能なLi−Mg合金を用いたリチウム一次電池としては、当該合金中のマグネシウム含有量が、20〜32重量%であることが好ましく、25〜32重量%であることがより好ましい。
【0104】
なお、本発明の技術的範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨に逸脱しない範囲において多様な変更もしくは改良を加え得るものである。例えば、本発明に係る高温用リチウム電池は、上述したコイン型のみならず、扁平型、角型、円筒型等種々の形態に適用することができる。また、高温環境下でも使用できるフッ化黒鉛に代わるリチウムイオン用正極材料を用いることができれば、負極をSi等とのリチウム合金として二次電池として使用することも可能である。
【符号の説明】
【0105】
1:リチウム一次電池、2:負極外装体、3:正極外装体、4:負極、5:正極、6:セパレータ、7:電解質、8:ガスケット、EMI−TFSI,MPPy−TFSI,MPPi−TFSI,TEAP−TFSI,TEAA−TFSI:イオン液体
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてリチウム一次電池に係り、特に、高温環境下で動作可能なリチウム一次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、リチウム一次電池において負極として使用される金属リチウムは、180℃に融点を有するため,それ以上の温度領域ではかかる金属リチウムが溶融する。これにより、正極側へ金属リチウムが析出するため正負極間のセミショートが起こり、電圧の低下及び放電容量の減少を招く。また、リチウム一次電池に使用されている電解質には有機溶媒にリチウム塩を溶解した液体の電解液やゲル電解質などがある。しかしながら、これらの電解質は引火性・可燃性の有機溶媒を使用しているため、発火・爆発等の安全面から80℃以上での使用に問題がある。
【0003】
このような問題に対処するために耐熱性の向上を図ったリチウム電池が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
ここで、特許文献1には、リチウムを含有した負極と、二酸化マンガン又はフッ化黒鉛を主体とする正極とを有するリチウム一次電池において、負極がリチウムとアルミニウムとを主成分とする合金であり、合金中のリチウムの含有量を原子比で60〜75%としたリチウム一次電池が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、リチウムを負極、フッ化黒鉛を正極とし、PFA樹脂製のガスケットと、沸点が170℃以上の有機溶媒中にリチウム塩を溶融させた非水電解液とを用い、セパレータとして平均繊維径2μm以下、目付重量5.0〜9.0g/m2、平均孔径3.0〜7.5μmのガラス繊維を用いた非水電解液電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−134107号公報
【特許文献2】特開平8−138686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年は、負極に金属リチウムを用いたコイン型や円筒型のリチウム一次電池においては、その高いエネルギー密度を有することから様々な分野への用途の拡大が図られており、例えば、ガスや石油採掘のような分野における適用も試みられている。
【0008】
このような分野では、掘削部に取り付けられた種々のセンサ等の素子により地中深さ、方向、位置のみならず、その素子周辺の温度や振動、回転速度、トルク等の測定を行うため、かかる素子用の電源として、使用温度環境が常に200℃程度の高温環境下でも安定して動作することができる電池が求められている。
【0009】
しかしながら、上記特許文献に開示されたリチウム電池では、短時間の耐熱性は確保できるものの高温環境下での使用を想定したものではなく、常に200℃程度の高温環境下で安定した動作を実現することは困難であった。
【0010】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のリチウム合金とイオン液体とを用いることにより、上述した200℃程度の高温環境下においてもリチウム一次電池の安定した動作が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
従って、本発明の目的は、200℃程度の高温環境下でも安定した動作が可能なリチウム一次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る高温用リチウム電池は、正極にフッ化黒鉛を用いると共に、負極にリチウム合金を用いた高温用リチウム電池において、電解質としてイオン液体を用いると共に、前記負極は、リチウム合金中のリチウム含有量が重量比で20〜80%である、Li−Al合金、又は、Li−Mg合金、又は、Li−B合金、又は、Li−B−Mg合金、又は、Li−Si合金からなる群より選択されるリチウム合金であり、かつ、前記イオン液体は、下記一般式(1)で表される1−アルキル−3−メチル−イミダゾリウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、
【化1】
下記一般式(2)で表される1−メチル−1−アルキル−ピロリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、
【化2】
下記一般式(3)で表される1−メチル−1−アルキル−ピペリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、
【化3】
下記一般式(4)で表されるトリエチル−アルキル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、
【化4】
及び、下記一般式(5)で表されるトリエチル−アルキル−アンモニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、
【化5】
からなる群より選択されるイオン液体であることを特徴とするものである。
【0013】
このように構成した場合には、200℃程度の高温環境下にて安定して動作できるリチウム一次電池を提供することができる。
【0014】
また、電解質塩として、リチウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド及びその派生物を用いることができる。
【0015】
このように構成した場合には、リチウムイオン伝導性を高めて、200℃程度の高温環境下にてより安定して動作できるリチウム一次電池を提供することができる。
【0016】
また、前記リチウム合金は、Li−Mg合金であり、かつ、前記イオン液体は、トリエチル−アルキル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)としてもよい。
【0017】
このように構成した場合には、リチウムイオン伝導性が高まった活性化状態を200℃程度の高温環境下でも維持でき、高温領域においてより安定した動作が可能となる。
【0018】
さらに、前記イオン液体は、トリエチル−メトキシメチル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドとすることができる。
【0019】
このように構成した場合には、室温領域から200℃を超える高温領域に至る幅広い温度領域で動作可能であると共に、200℃程度の高温領域において十分な放電容量を得ることができる。
【0020】
また、前記イオン液体は、トリエチル−メトキシエチル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、又は、トリエチル−ペンチル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、又は、1−メチル−1−プロピル−ピペリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、又は、1−メチル−1−プロピル−ピロリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドとしてもよい。
【0021】
このように構成した場合には、200℃を超える高温環境下でも、動作可能なリチウムイオン電池を提供することができる。
【0022】
ここで、前記Li−Mg合金中のマグネシウム含有量は、重量比で25〜32%とすることが好ましい。
【0023】
このように構成した場合には、高温環境下において、金属リチウムの溶融析出を未然に防止すると共に、加工性の良いリチウムイオン電池を提供することができる。
【0024】
また、前記リチウム合金は、Li−Al合金であり、かつ、前記イオン液体は、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドとしてもよいし、1−メチル−1−プロピル−ピぺリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドとしてもよい。
【0025】
このように構成した場合には、200℃を超える高温環境下でも、動作可能なリチウムイオン電池を提供することができる。
【0026】
以上において、絶縁部材としてのガスケットとセパレータをさらに備え、前記ガスケットは、250℃以上に融点を持つフッ素樹脂を用いると共に、前記セパレータは、250℃以上に融点を持つアラミドを用いてもよい。
【0027】
このように構成した場合には、200℃以上の高温環境下での耐熱性、耐薬品性、シール性、イオン伝導性等を安定して確保して高温環境下における電池の動作をより一層安定して確保することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、200℃程度の高温環境下でも安定して動作することができるリチウム一次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るリチウム一次電池の構成を示す模式図である。
【図2】重量比を20:80としたLi−Al合金とイオン液体EMI−TFSIとを用いたリチウム一次電池の放電容量を示す図である。
【図3】重量比を20:80としたLi−Al合金とイオン液体MPPi−TFSIとを用いたリチウム一次電池の放電容量を示す図である。
【図4】重量比を75:25としたLi−Mg合金とイオン液体EMI−TFSIとを用いたリチウム一次電池の放電容量を示す図である。
【図5】重量比を75:25としたLi−Mg合金とイオン液体MPPi−TFSIとを用いたリチウム一次電池の放電容量を示す図である。
【図6】重量比を75:25としたLi−Mg合金とイオン液体MPPy−TFSIとを用いたリチウム一次電池の放電容量を示す図である。
【図7】重量比を75:25としたLi−Mg合金とイオン液体TEPP−TFSIとを用いたリチウム一次電池の放電容量を示す図である。
【図8】重量比を75:25としたLi−Mg合金とイオン液体TEMMP−TFSIとを用いたリチウム一次電池の放電容量を示す図である。
【図9】重量比を75:25としたLi−Mg合金とイオン液体TEMEP−TFSIとを用いたリチウム一次電池の放電容量を示す図である。
【図10】重量比を64:32:4としたLi−B−Mg合金とイオン液体EMI−TFSIとを用いたリチウム一次電池の放電容量を示す図である。
【図11】重量比を64:32:4としたLi−B−Mg合金とイオン液体MPPi−TFSIとを用いたリチウム一次電池の放電容量を示す図である。
【図12】リチウム金属とイオン液体MPPi−TFSIとを用いたリチウム一次電池の放電容量を示す図である。
【図13】重量比を68:32としたLi−Mg合金とイオン液体TEMMP−TFSIとを用いたリチウム一次電池の放電容量を示す図である。
【図14】重量比を68:32としたLi−Mg合金とイオン液体TEPP−TFSIとを用いたリチウム一次電池の放電容量を示す図である。
【図15】重量比を68:32としたLi−Mg合金とイオン液体MPPi−TFSIとを用いたリチウム一次電池の放電容量を示す図である。
【図16】重量比を68:32としたLi−Mg合金とイオン液体MPPy−TFSIとを用いたリチウム一次電池の放電容量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1は、本発明に係るリチウム一次電池の構成を説明するための模式図である。
【0031】
図1において、1はコイン型のリチウム一次電池であり、ステンレス製の負極外装体(負極端子)2及びステンレス製の正極外装体3(正極端子)から構成される電池外装体の内部に、リチウム合金からなる負極4及びフッ化黒鉛を主体とする正極5がセパレータ6を介して電解質7と共に密封状態に収容されている。また、負極端子を兼ねる負極外装体2と正極端子を兼ねる正極外装体3との間には、耐絶縁性及びシール性を確保するためのガスケット8が介装されている。
【0032】
上記セパレータ6としては、負極4及び正極5との密着に対して充分な絶縁性を有すると共にイオン伝導性に優れ、融点が250℃以上である部材であれば適宜選定することができ、例えば、アラミド(全芳香族ポリアミド)を用いることができる。
【0033】
同様に、上記ガスケット8としては、絶縁性、シール性、耐薬品性に優れ、融点が250℃以上である部材であれば適宜選定することができ、例えば、PFA(テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニールエーテル共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂を用いることができる。
【0034】
また、上記正極5としては、フッ化黒鉛CFx(0.2<x≦1)を用いることができる。なお、本実施の形態に係る正極5は、従来公知の導電材、結着剤を含んでもよい。
【0035】
本実施の形態において、上記負極4は、Li−Al合金、Li−Mg合金、Li−Si合金、Li−B合金、及び、Li−B−Mg合金のいずれかを用いることができる。
【0036】
ここで、上記リチウム合金中におけるリチウム含有量としては、重量比で20〜80%の範囲であることが好ましい。リチウム含有量が20%未満では放電容量の低下が著しくなる一方、80%超では金属リチウムが溶融析出する虞が生じるためである。
【0037】
また、本実施の形態において、上記電解質としては、−80〜300℃程度でも安定な液体として存在し,導電率・不揮発性・不燃性・耐熱性に優れた下記に示すイオン液体のいずれかを用いることができる。
【0038】
具体的には、一般式(1)に示すような、アルキル基を有したイオン液体(1−アルキル−3−メチル−イミダゾリウム:R=−CH2CH3,−CH2CH2CH2CH3)/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド(以下、AMI−TFSIと称する)。
【化6】
【0039】
または、一般式(2)に示すような、(1−メチル−1−アルキル−ピロリジニウム:R=−CH2CH2CH3,−CH2CH2CH2CH3)/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド(以下、MAPy−TFSIと称する)。
【化7】
【0040】
または、一般式(3)に示すような、(1−メチル−1−アルキル−ピぺリジニウム:R=−CH2CH2CH3,−CH2CH2CH2CH3)/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド(以下、MAPi−TFSIと称する)。
【化8】
【0041】
または、一般式(4)に示すような、アルキル基(R=n−C5H11,n−C8H17,n−C12H25,CH2OCH3,CH2CH2OCH3)のいずれかを有したトリエチル−アルキル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド(以下、TEAP−TFSIと称する)。
【化9】
【0042】
または、一般式(5)に示すような、アルキル基(R=n−C5H11,n−C8H17,n−C12H25,CH2OCH3,CH2CH2OCH3)のいずれかを有したトリエチル−アルキル−アンモニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド(以下、TEAA−TFSIと称する)。
【化10】
のいずれかを用いることができる。
【0043】
また、電解質塩としては、一般式(6)に示すような、リチウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド及びその派生物を用いることができる。
【化11】
【0044】
次に、上述のような種々のリチウム合金(負極4)及びイオン液体(電解質7)を用いたリチウム一次電池において、使用温度(環境温度)に応じた放電容量を測定した結果を実施例として以下に説明する。なお、以下の実施例においてはいずれも、正極3として、フッ化黒鉛、導電材、結着剤を重量比で74:6:20の割合で混合し、アルミ箔上に塗布したものを用いた。また、結着剤としてはポリイミド系のバインダーを使用した。
【実施例1】
【0045】
負極4として、リチウムとアルミニウムとの重量比を20:80としたLi−Al合金を用いた。また、イオン液体としては、下記(7)式で示されるEMI−TFSI(1−エチル−3−メチル−イミダゾリウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)を用いた。
【化12】
【0046】
上記組み合わせにて、放電レートを0.01Cとすると共に、カットオフ電圧を2.0Vとし、室温(25℃)、150℃、200℃、220℃にて放電特性を測定した結果を図2に示す。
【0047】
図2から理解されるように、本実施例に係るリチウム一次電池は、室温では動作しなかったが、150℃で8.6mAh、200℃で3.4mAh、220℃で2.1mAhの放電容量がそれぞれ得られた。これは、かかる組み合わせにおいて、室温より環境温度が上昇(150℃程度まで)するにつれイオン液体EMI−TFSIが活性化して動作可能となり放電容量が増大したものの、環境温度の上昇(本例では、220℃まで)に伴って、イオン液体EMI−TFSIが過度に活性化して放電容量が逆に低下したためと考えられる。
【実施例2】
【0048】
負極4として、リチウムとアルミニウムとの重量比を20:80としたLi−Al合金を用いた。また、イオン液体としては、下記(8)式で示されるMPPi−TFSI(1−メチル−1−プロピル−ピぺリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)を用いた。
【化13】
【0049】
上記組み合わせにて、放電レートを0.01Cとすると共に、カットオフ電圧を2.0Vとし、室温(25℃)、150℃、200℃、220℃にて放電特性を測定した結果を図3に示す。
【0050】
図3から理解されるように、本実施例に係るリチウム一次電池は、室温では動作しなかったが、150℃で6.6mAh、200℃で4.2mAh、220℃で2.6mAhの放電容量がそれぞれ得られた。これは、かかる組み合わせにおいて、実施例1と同様に、室温より環境温度が上昇(150℃程度まで)するにつれイオン液体MPPi−TFSIが活性化して動作可能となり放電容量が増大したものの、環境温度の上昇(本例では、220℃まで)に伴って、イオン液体MPPi−TFSIが過度に活性化して放電容量が逆に低下したためと考えられる。
【実施例3】
【0051】
負極4として、リチウムとマグネシウムとの重量比を75:25としたLi−Mg合金を用いた。また、イオン液体としては、前述したEMI−TFSI(1−エチル−3−メチル−イミダゾリウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)を用いた。
【0052】
上記組み合わせにて、放電レートを0.01Cとすると共に、カットオフ電圧を2.0Vとし、室温(25℃)、150℃、200℃にて放電特性を測定した結果を図4に示す。
【0053】
図4から理解されるように、本実施例に係るリチウム一次電池は、室温で1.8mAh、150℃で5.5mAh、200℃で5.4mAhの放電容量がそれぞれ得られた。
【0054】
この測定結果から明らかなように、Li−Mg合金(重量比:75:25)とEMI−TFSIとを用いたリチウム一次電池では、室温領域から高温領域に至る幅広い温度領域で動作可能であると共に、室温状態での放電容量よりも高温状態での放電容量の方が増大し、高温状態においてより安定した動作が得られることが分かった。これは、かかる組み合わせにおいて、イオン液体EMI−TFSIが高温領域でより活性化してリチウムイオン伝導性が高まり、かつ、このような活性化状態を200℃程度の高温環境下でも維持できるためであると考えられる。
【実施例4】
【0055】
負極4として、リチウムとマグネシウムとの重量比を75:25としたLi−Mg合金を用いた。また、イオン液体としては、前述したMPPi−TFSI(1−メチル−1−プロピル−ピぺリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)を用いた。
【0056】
上記組み合わせにて、放電レートを0.01Cとすると共に、カットオフ電圧を2.0Vとし、室温(25℃)、150℃、200℃にて放電特性を測定した結果を図5に示す。
【0057】
図5から理解されるように、本実施例に係るリチウム一次電池は、室温では動作しなかったが、150℃で5.2mAh、200℃で5.6mAhの放電容量がそれぞれ得られた。これは、かかる組み合わせにおいて、室温から環境温度が上昇(150℃程度まで)するにつれイオン液体MPPi−TFSIが活性化して動作可能となると共に、実施例3と同様に、リチウムイオン伝導性が高まった活性化状態を200℃程度の高温環境下でも維持できるためであると考えられる。
【実施例5】
【0058】
負極4として、リチウムとマグネシウムとの重量比を75:25としたLi−Mg合金を用いた。また、イオン液体としては、下記(9)式で示されるMPPy−TFSI(1−メチル−1−プロピル−ピロリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)を用いた。
【化14】
【0059】
上記組み合わせにて、放電レートを0.01Cとすると共に、カットオフ電圧を2.0Vとし、室温(25℃)、150℃、200℃にて放電特性を測定した結果を図6に示す。
【0060】
図6から理解されるように、本実施例に係るリチウム一次電池は、室温では動作しなかったが、150℃で6.3mAh、200℃で1.5mAhの放電容量がそれぞれ得られた。これは、かかる組み合わせにおいて、室温から環境温度が上昇(150℃程度まで)するにつれイオン液体MPPy−TFSIが活性化して動作可能となり放電容量が増大したものの、環境温度の上昇(本例では、200℃まで)に伴って、イオン液体MPPy−TFSIが過度に活性化して放電容量が逆に低下したためと考えられる。
【実施例6】
【0061】
負極4として、リチウムとマグネシウムとの重量比を75:25としたLi−Mg合金を用いた。また、イオン液体としては、下記(10)式で示されるTEPP−TFSI(トリエチル−ペンチル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)を用いた。
【化15】
【0062】
上記組み合わせにて、放電レートを0.01Cとすると共に、カットオフ電圧を2.0Vとし、室温(25℃)、150℃、200℃にて放電特性を測定した結果を図7に示す。
【0063】
図7から理解されるように、本実施例に係るリチウム一次電池は、室温では動作しなかったが、150℃で5.4mAh、200℃で4.6mAhの放電容量がそれぞれ得られた。これは、かかる組み合わせにおいて、室温から環境温度が上昇(150℃程度まで)するにつれイオン液体TEPP−TFSIが活性化して動作可能となると共に、リチウムイオン伝導性が高まった活性化状態を200℃程度の高温環境下でも維持できるためであると考えられる。
【実施例7】
【0064】
負極4として、リチウムとマグネシウムとの重量比を75:25としたLi−Mg合金を用いた。また、イオン液体としては、下記(11)式で示されるTEMMP−TFSI(トリエチル−メトキシメチル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)を用いた。
【化16】
【0065】
上記組み合わせにて、放電レートを0.01Cとすると共に、カットオフ電圧を2.0Vとし、室温(25℃)、150℃、200℃にて放電特性を測定した結果を図8に示す。
【0066】
図8から理解されるように、本実施例に係るリチウム一次電池は、室温で0.3mAh、150℃で6.3mAh、200℃で5.8mAhの放電容量がそれぞれ得られた。これは、かかる組み合わせにおいて、イオン液体TEMMP−TFSIが高温領域でより活性化してリチウムイオン伝導性が高まり、かつ、このような活性化状態を、実施例6と同様に200℃程度の高温環境下でも維持できるためであると考えられる。
【実施例8】
【0067】
負極4として、リチウムとマグネシウムとの重量比を75:25としたLi−Mg合金を用いた。また、イオン液体としては、下記(12)式で示されるTEMEP−TFSI(トリエチル−メトキシエチル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)を用いた。
【化17】
【0068】
上記組み合わせにて、放電レートを0.01Cとすると共に、カットオフ電圧を2.0Vとし、室温(25℃)、150℃、200℃にて放電特性を測定した結果を図9に示す。
【0069】
図9から理解されるように、本実施例に係るリチウム一次電池は、室温で0.2mAh、150℃で4.9mAh、200℃で0.5mAhの放電容量がそれぞれ得られた。これは、かかる組み合わせにおいて、室温から環境温度が上昇(150℃程度まで)するにつれイオン液体TEMEP−TFSIが活性化して放電容量が増大したものの、環境温度の上昇(本例では、200℃まで)に伴って、イオン液体TEMEP−TFSIが過度に活性化して放電容量が逆に低下したためと考えられる。
【実施例9】
【0070】
負極4として、リチウムとホウ素とマグネシウムとの重量比を64:32:4としたLi−B−Mg合金を用いた。また、イオン液体としては、EMI−TFSI(1−エチル−3−メチル−イミダゾリウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)を用いた。
【0071】
上記組み合わせにて、放電レートを0.01Cとすると共に、カットオフ電圧を2.0Vとし、室温(25℃)、150℃、200℃にて放電特性を測定した結果を図10に示す。
【0072】
図10から理解されるように、本実施例に係るリチウム一次電池は、室温で2.2mAh、150℃で7.8mAh、200℃で0.5mAhの放電容量がそれぞれ得られた。これは、かかる組み合わせにおいて、室温から環境温度が上昇(150℃程度まで)するにつれイオン液体EMI−TFSIが活性化して放電容量が増大したものの、200℃程度の高温では、イオン液体EMI−TFSIが過度に活性化して放電容量が著しく低下したためと考えられる。
【実施例10】
【0073】
負極4として、リチウムとホウ素とマグネシウムとの重量比を64:32:4としたLi−B−Mg合金を用いた。また、イオン液体としては、MPPi−TFSI(1−メチル−1−プロピル−ピぺリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)を用いた。
【0074】
上記組み合わせにて、放電レートを0.01Cとすると共に、カットオフ電圧を2.0Vとし、室温(25℃)、150℃、200℃にて放電特性を測定した結果を図11に示す。
【0075】
図11から理解されるように、本実施例に係るリチウム一次電池は、室温では動作しなかったが、150℃で5.5mAh、200℃で2.46mAhの放電容量がそれぞれ得られた。これは、かかる組み合わせにおいて、実施例9と同様に、室温から環境温度が上昇(150℃程度まで)するにつれイオン液体MPPi−TFSIが活性化して動作可能となるが、200℃程度の高温では、イオン液体MPPi−TFSIが過度に活性化して放電容量が逆に低下したためと考えられる。
【0076】
[比較例1]
負極4をリチウム金属(リチウム含有量100%)として、イオン液体としては、MPPi−TFSI(1−メチル−1−プロピル−ピぺリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)を用いた。
【0077】
上記組み合わせにて、放電レートを0.01Cとすると共に、カットオフ電圧を2.0Vとし、150℃、200℃にて放電特性を測定した結果を図12に示す。
【0078】
図12から理解されるように、本比較例に係るリチウム一次電池は、150℃で5.4mAhの放電容量が得られたが、室温及び200℃では動作しなかった。
【0079】
この測定結果から明らかなように、リチウム金属とMPPi−TFSIとを用いたリチウム一次電池では、200℃程度の高温領域においては実質的に使用不能であることが分かった。
【0080】
以上の検証結果を表1にまとめて示す。
【表1】
【0081】
表1から理解されるように、比較例1に係るリチウム一次電池では、高温での動作が不能であったのに比し、実施例1〜10に係るリチウム一次電池はいずれも、200℃程度の高温環境下にて動作可能であることが分かる。さらに、かかる高温環境下においてより安定して動作できる(高温領域における放電容量が室温領域における放電容量よりも増大する)リチウム一次電池としては、負極4としてLi−Al合金(実施例1、実施例2)又はLi−Mg合金(実施例3〜実施例8)を用いたものが好ましいことが分かる。特に、200℃程度の高温領域でより安定した放電容量が得られるのは、Li−Mg合金(実施例3、実施例4、実施例6、実施例7)であることが分かる。
【0082】
そこで、Li−Mg合金を負極4として用い、より高温(例えば、220℃)の環境下において、種々のイオン液体と組み合わせた場合の放電容量をさらに検証した(実施例11〜実施例14)。
【0083】
なお、Li−Mg合金においてリチウム含有量を75%超(マグネシウム含有量を25%未満)とすると、DSC(Differential Scanning Calorimetry:示差走査熱量測定)等の熱分析により、200℃を超える環境温度では、金属リチウムが溶融析出することが判明し、一方、マグネシウムの含有量を増大させるとLi−Mg合金の加工性が著しく低下することが分かった。そこで、以下の実施例においては、Li−Mg合金中のマグネシウム含有量を製造上の下限値(製造限界)である32重量%(リチウム含有量の上限値として68重量%)に設定している。
【実施例11】
【0084】
負極4として、リチウムとマグネシウムとの重量比を68:32としたLi−Mg合金を用いた。また、イオン液体としては、前述したTEMMP−TFSI(トリエチル−メトキシメチル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)を用いた。
【0085】
上記組み合わせにて、放電レートを0.01Cとすると共に、カットオフ電圧を2.0Vとし、室温(25℃)、150℃、200℃、220℃にて放電特性を測定した結果を図13に示す。
【0086】
図13から理解されるように、本実施例に係るリチウム一次電池は、室温で0.2mAh、150℃で9.0mAh、200℃で9.0mAh、220℃で4.5mAhの放電容量がそれぞれ得られた。
【0087】
この測定結果から明らかなように、Li−Mg合金(重量比:68:32)とTEMMP−TFSIとを用いたリチウム一次電池では、室温領域から高温領域に至る幅広い温度領域で動作可能であると共に、室温状態での放電容量よりも高温状態での放電容量の方が増大し、かつ、200℃超の高温状態(本例では、220℃)においても動作可能であることが分かった。これは、かかる組み合わせにおいて、イオン液体TEMMP−TFSIが高温領域でより活性化してリチウムイオン伝導性が高まり、かつ、このような活性化状態を200℃を超える高温環境下でも維持できるためであると考えられる。
【実施例12】
【0088】
負極4として、リチウムとマグネシウムとの重量比を68:32としたLi−Mg合金を用いた。また、イオン液体としては、前述したTEPP−TFSI(トリエチル−ペンチル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)を用いた。
【0089】
上記組み合わせにて、放電レートを0.01Cとすると共に、カットオフ電圧を2.0Vとし、室温(25℃)、150℃、200℃、220℃にて放電特性を測定した結果を図14に示す。
【0090】
図14から理解されるように、本実施例に係るリチウム一次電池は、室温では動作しなかったが、150℃で8.6mAh、200℃で4.2mAh、220℃で4.5mAhの放電容量がそれぞれ得られた。
【0091】
この測定結果から明らかなように、Li−Mg合金(重量比:68:32)とTEPP−TFSIとを用いたリチウム一次電池では、室温領域から環境温度が上昇(150℃程度まで)するにつれてイオン液体TEPP−TFSIが活性化して動作可能となると共に、実施例11と同様に、リチウムイオン伝導性が高まった活性化状態を200℃を超える高温環境下でも維持できることが分かった。
【実施例13】
【0092】
負極4をLi−Mg合金として、リチウムとマグネシウムとの重量比を68:32としたLi−Mg合金を用いた。また、イオン液体としては、前述したMPPi−TFSI(1−メチル−1−プロピル−ピペリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)を用いた。
【0093】
上記組み合わせにて、放電レートを0.01Cとすると共に、カットオフ電圧を2.0Vとし、室温(25℃)、150℃、200℃、220℃にて放電特性を測定した結果を図15に示す。
【0094】
図15から理解されるように、本実施例に係るリチウム一次電池は、室温では動作しなかったが、150℃で4.6mAh、200℃で6.2mAh、220℃で3.1mAhの放電容量がそれぞれ得られた。
【0095】
この測定結果から明らかなように、Li−Mg合金(重量比:68:32)とMPPi−TFSIとを用いたリチウム一次電池では、室温領域から環境温度が上昇するにつれてイオン液体MPPi−TFSIが活性化して動作可能となると共に、実施例11、実施例12と同様に、リチウムイオン伝導性が高まった活性化状態を200℃を超える高温環境下でも維持できることが分かった。
【実施例14】
【0096】
負極4をLi−Mg合金として、リチウムとマグネシウムとの重量比を68:32としたLi−Mg合金を用いた。また、イオン液体としては、前述したMPPy−TFSI(1−メチル−1−プロピル−ピロリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)を用いた。
【0097】
上記組み合わせにて、放電レートを0.01Cとすると共に、カットオフ電圧を2.0Vとし、室温(25℃)、150℃、200℃、220℃にて放電特性を測定した結果を図16に示す。
【0098】
図16から理解されるように、本実施例に係るリチウム一次電池は、室温では動作しなかったが、150℃で6.5mAh、200℃で4.5mAh、220℃で2.0mAhの放電容量がそれぞれ得られた。
【0099】
この測定結果から明らかなように、Li−Mg合金(重量比:68:32)とMPPy−TFSIとを用いたリチウム一次電池では、室温領域から環境温度が上昇するにつれてイオン液体MPPi−TFSIが活性化して動作可能となると共に、実施例11〜実施例13と同様に、リチウムイオン伝導性が高まった活性化状態を200℃を超える高温環境下でも維持できることが分かった。
【0100】
以上の検証結果を表2にまとめて示す。
【表2】
【0101】
表2より明らかなように、実施例11〜14に係るリチウム一次電池はいずれも、220℃の高温環境下にて動作可能であることが理解される。特に、室温から200℃を超える高温領域(本例では、220℃)まで広い温度領域で動作可能であると共に、200℃程度で十分な放電容量を有するという観点からは、実施例11(Li−Mg合金(68:32)+TEMMP−TFSI)の組み合わせが最も好ましいことが分かる。
【0102】
なお、前述したように、Li−Mg合金中におけるリチウムの含有量(重量%)が75%以上(マグネシウムの含有量が25%以下)となると、200℃を越える高温環境下では、金属リチウムが溶融析出する虞が生じ、一方、マグネシウムの含有量が32%以上となると加工性が著しく低下し製造が困難となる。
【0103】
従って、200℃を超える高温環境下で動作可能なLi−Mg合金を用いたリチウム一次電池としては、当該合金中のマグネシウム含有量が、20〜32重量%であることが好ましく、25〜32重量%であることがより好ましい。
【0104】
なお、本発明の技術的範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨に逸脱しない範囲において多様な変更もしくは改良を加え得るものである。例えば、本発明に係る高温用リチウム電池は、上述したコイン型のみならず、扁平型、角型、円筒型等種々の形態に適用することができる。また、高温環境下でも使用できるフッ化黒鉛に代わるリチウムイオン用正極材料を用いることができれば、負極をSi等とのリチウム合金として二次電池として使用することも可能である。
【符号の説明】
【0105】
1:リチウム一次電池、2:負極外装体、3:正極外装体、4:負極、5:正極、6:セパレータ、7:電解質、8:ガスケット、EMI−TFSI,MPPy−TFSI,MPPi−TFSI,TEAP−TFSI,TEAA−TFSI:イオン液体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極にフッ化黒鉛を用いると共に、負極にリチウム合金を用いた高温用リチウム電池において、
電解質としてイオン液体を用いると共に、
前記負極は、リチウム合金中のリチウム含有量が重量比で20〜80%である、Li−Al合金、又は、Li−Mg合金、又は、Li−B合金、又は、Li−B−Mg合金、又は、Li−Si合金からなる群より選択されるリチウム合金であり、かつ、
前記イオン液体は、下記一般式(1)で表される1−アルキル−3−メチル−イミダゾリウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、
【化1】
下記一般式(2)で表される1−メチル−1−アルキル−ピロリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、
【化2】
下記一般式(3)で表される1−メチル−1−アルキル−ピペリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、
【化3】
下記一般式(4)で表されるトリエチル−アルキル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、
【化4】
及び、下記一般式(5)で表されるトリエチル−アルキル−アンモニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、
【化5】
からなる群より選択されるイオン液体であることを特徴とする高温用リチウム電池。
【請求項2】
電解質塩として、リチウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドを用いることを特徴とする請求項1に記載の高温用リチウム電池。
【請求項3】
前記リチウム合金は、Li−Mg合金であり、かつ、前記イオン液体は、トリエチル−アルキル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高温用リチウム電池。
【請求項4】
前記イオン液体は、トリエチル−メトキシメチル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドであることを特徴とする請求項3に記載の高温用リチウム電池。
【請求項5】
前記イオン液体は、トリエチル−メトキシエチル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドであることを特徴とする請求項3に記載の高温用リチウム電池。
【請求項6】
前記イオン液体は、トリエチル−ペンチル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドであることを特徴とする請求項3に記載の高温用リチウム電池。
【請求項7】
前記イオン液体は、1−メチル−1−プロピル−ピペリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドであることを特徴とする請求項3に記載の高温用リチウム電池。
【請求項8】
前記イオン液体は、1−メチル−1−プロピル−ピロリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドであることを特徴とする請求項3に記載の高温用リチウム電池。
【請求項9】
前記Li−Mg合金中のマグネシウム含有量は、重量比で25〜32%であることを特徴とする請求項3ないし8のいずれかに記載の高温用リチウム電池。
【請求項10】
前記リチウム合金は、Li−Al合金であり、かつ、前記イオン液体は、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドであることを特徴とする請求項1又は2に記載の高温用リチウム電池。
【請求項11】
前記リチウム合金は、Li−Al合金であり、かつ、前記イオン液体は、1−メチル−1−プロピル−ピぺリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドであることを特徴とする請求項1又は2に記載の高温用リチウム電池。
【請求項12】
絶縁部材としてのガスケットとセパレータをさらに備え、前記ガスケットは、250℃以上に融点を持つフッ素樹脂を用いると共に、前記セパレータは、250℃以上に融点を持つアラミドを用いることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の高温用リチウム電池。
【請求項1】
正極にフッ化黒鉛を用いると共に、負極にリチウム合金を用いた高温用リチウム電池において、
電解質としてイオン液体を用いると共に、
前記負極は、リチウム合金中のリチウム含有量が重量比で20〜80%である、Li−Al合金、又は、Li−Mg合金、又は、Li−B合金、又は、Li−B−Mg合金、又は、Li−Si合金からなる群より選択されるリチウム合金であり、かつ、
前記イオン液体は、下記一般式(1)で表される1−アルキル−3−メチル−イミダゾリウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、
【化1】
下記一般式(2)で表される1−メチル−1−アルキル−ピロリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、
【化2】
下記一般式(3)で表される1−メチル−1−アルキル−ピペリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、
【化3】
下記一般式(4)で表されるトリエチル−アルキル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、
【化4】
及び、下記一般式(5)で表されるトリエチル−アルキル−アンモニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、
【化5】
からなる群より選択されるイオン液体であることを特徴とする高温用リチウム電池。
【請求項2】
電解質塩として、リチウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドを用いることを特徴とする請求項1に記載の高温用リチウム電池。
【請求項3】
前記リチウム合金は、Li−Mg合金であり、かつ、前記イオン液体は、トリエチル−アルキル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高温用リチウム電池。
【請求項4】
前記イオン液体は、トリエチル−メトキシメチル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドであることを特徴とする請求項3に記載の高温用リチウム電池。
【請求項5】
前記イオン液体は、トリエチル−メトキシエチル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドであることを特徴とする請求項3に記載の高温用リチウム電池。
【請求項6】
前記イオン液体は、トリエチル−ペンチル−フォスフォニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドであることを特徴とする請求項3に記載の高温用リチウム電池。
【請求項7】
前記イオン液体は、1−メチル−1−プロピル−ピペリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドであることを特徴とする請求項3に記載の高温用リチウム電池。
【請求項8】
前記イオン液体は、1−メチル−1−プロピル−ピロリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドであることを特徴とする請求項3に記載の高温用リチウム電池。
【請求項9】
前記Li−Mg合金中のマグネシウム含有量は、重量比で25〜32%であることを特徴とする請求項3ないし8のいずれかに記載の高温用リチウム電池。
【請求項10】
前記リチウム合金は、Li−Al合金であり、かつ、前記イオン液体は、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドであることを特徴とする請求項1又は2に記載の高温用リチウム電池。
【請求項11】
前記リチウム合金は、Li−Al合金であり、かつ、前記イオン液体は、1−メチル−1−プロピル−ピぺリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドであることを特徴とする請求項1又は2に記載の高温用リチウム電池。
【請求項12】
絶縁部材としてのガスケットとセパレータをさらに備え、前記ガスケットは、250℃以上に融点を持つフッ素樹脂を用いると共に、前記セパレータは、250℃以上に融点を持つアラミドを用いることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の高温用リチウム電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−192627(P2011−192627A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198071(P2010−198071)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(397009152)エナックス株式会社 (23)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(397009152)エナックス株式会社 (23)
【Fターム(参考)】
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