説明

高温組付体、高温組付体の製造方法

【課題】高温環境で使用される第1部材と第2部材との境界領域におけるシール性を高めるのに有利な高温組付体、高温組付体の製造方法を提供する。
【解決手段】高温組付体は、金属または耐火物で形成された第1部材1Xと、金属または耐火物で形成された第1部材に対向する第2部材6と、第1部材1Xと第2部材6との境界領域に配置されるように第1部材1Xおよび第2部材6のうちの少なくとも一方に形成された凹状プール部1Wと、凹状プール部1Wに装填され使用時の熱により合成された体積膨張する耐熱シール剤を焼成して形成された耐熱セラミックスシール部1Rとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高温組付体、高温組付体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶湯などの金属溶湯にガスを吹き込んでガスバブリングを行うガス吹き込みノズルが使用されている。ガス吹き込みノズルは、ガスを流すガス通路を有する耐火物と、耐火物を包囲する鉄皮とを有する(特許文献1)。しかし、耐火物と鉄皮との境界領域のシール性を更に高めることが要請されている。更に、溶鋼等の溶湯を通過させる溶湯ノズルも提供されている。溶湯ノズルは、溶湯を通過させる溶湯通路を有する耐火物と、耐火物を包囲する鉄皮とを有する。この場合においても、耐火物と鉄皮との境界領域のシール性を更に高めることが要請されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-262471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、加熱される高温環境で使用される第1部材と第2部材との境界領域におけるシール性を高めるのに有利な高温組付体および高温組付体の製造方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る高温組付体は、金属または耐火物で形成された第1部材と、第1部材に対向する金属または耐火物で形成された第2部材と、第1部材と第2部材との境界領域に配置されるように第1部材および第2部材のうちの少なくとも一方に形成された凹状プール部と、凹状プール部に装填され使用時の熱により合成された体積膨張する耐熱シール剤を焼成して形成された耐熱セラミックスシール部とを具備することを特徴とする。
【0006】
本発明に係る高温組付体の製造方法は、(1)合成されると体積膨張する複数種類のセラミックス粒子を含有する耐熱シール剤と、第1部材と、第2部材とを用意する第1工程と、(2)第1部材と前記第2部材との境界領域に形成された凹状プール部に前記耐熱シール剤を装填させた状態で、少なくとも第1部材と第2部材とを組み付けて組付体を形成する第2工程と、(3)組付体の第1部材と第2部材との境界領域に形成された凹状プール部に耐熱シール剤を装填させた状態で、組付体の使用時における組付体の使用温度、組付体の使用前における組付体の予熱温度、組付体の搬入前における組付体の加熱温度のうちのいずれか少なくとも一つで耐熱シール剤を加熱して焼成させ、複数種類のセラミックス粒子を合成させて体積膨張する合成セラミックスを形成して組付体の第1部材と第2部材との境界領域をシールする第3工程とを含むことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る高温組付体は、少なくとも第1部材および第2部材を具備すると共に、第1部材と第2部材との境界領域に形成された凹状プール部に装填された耐熱シール剤を焼成させた形成された耐熱セラミックスプール部を有する。使用時、予熱時等において、高温組付体は、例えば600〜2000℃、特に800〜2000℃の高温領域に加熱されるものである。このため耐熱シール剤は高温領域に長時間にわたり加熱される。上記したように第1部材と第2部材との境界領域に形成された凹状プール部に未焼成または半焼成の耐熱シール剤を装填させる。その状態で、組付体の使用時における組付体の使用温度、組付体の使用前における組付体の予熱温度、組付体の搬入前における組付体の加熱温度のうちのいずれか少なくとも一つで、耐熱シール剤を加熱して焼成させる。すなわち、組付体を使用するときの使用温度により、あるいは、組付体の使用前に予熱工程または加熱工程を別途実施して、耐熱シール剤を加熱して焼成させる。これにより耐熱シール剤を構成する複数種類のセラミックス粒子を合成させてセラミックスを形成し、耐熱セラミックスプール部を形成する。この結果、組付体の第1部材と第2部材との境界領域をシールする。この場合、第1部材と第2部材との境界領域におけるシール性を高めることができる。
【0008】
組付体の使用時における組付体の使用温度、組付体の使用前における組付体の予熱温度、組付体の搬入前における組付体の加熱温度は、600〜2000℃、特に800〜2000℃の高温領域である。従って第1部材と第2部材との境界領域に介在する耐熱シール剤も高温に加熱されるため、耐熱シール剤に含有されている第1セラミックス粒子および第2セラミックス粒子は、反応前よりも体積膨張するセラミックス(例えばムライト、スピネル等)を形成する。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本発明によれば、耐熱シール剤を構成する複数種類のセラミックスを合成させて合成セラミックスを形成して耐熱セラミックスプール部が形成される。これにより高温組付体の第1部材と第2部材との境界領域がシールされる。耐熱シール部の焼成については、使用時の温度で加熱して焼成しても良いし、あるいは、使用前の段階において別途加熱して焼成しても良い。使用時の温度で加熱して焼成すれば、耐熱シール部を加熱して焼成させる焼成工程を別途必要としないため、簡易である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態1に係り、タンディッシュ上部ノズルの断面図である。
【図2】実施形態1に係り、耐熱セラミックスプール部付近の断面図である。
【図3】実施形態2に係るタンディッシュ上部ノズルの断面図である。
【図4】実施形態3に係るタンディッシュ上部ノズルの断面図である。
【図5】実施形態6に係るタンディッシュ上部ノズルの断面図である。
【図6】実施形態7に係るタンディッシュ上部ノズルの断面図である。
【図7】実施形態8に係る吹き込みプラグの断面図である。
【図8】実施形態8係る吹き込みプラグの断面図であり、図7のVIII−VIII線に沿って切断した断面図である。
【図9】実施形態10に係り、タンディッシュ上部ノズルの断面図である。
【図10】実施形態11に係り、タンディッシュ上部ノズルの断面図である。
【図11】試験例に係り、ガス漏れ試験の結果を示すグラフである。
【図12】試験例に係り、シール層の組織の顕微鏡写真を示す写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
耐熱セラミックスプール部は、第1部材および第2部材のうちの少なくとも一方よりも厚肉にできる。但しこれに限定されるものではない。本発明によれば、合成されると体積膨張する合成セラミックスはムライトであり、第1セラミックス粒子はシリカで形成され、第2セラミックス粒子はアルミナで形成されていることが好ましい。この場合、次の(1)式のようにムライトが合成される。
2SiO2+3Al2O3→3Al2O3・2SiO2 (ムライト) (1)
合成されたムライト(3Al2O3・2SiO2)は、体積が反応前より膨張する。この場合、耐熱シール剤における気孔が閉じられ易い。この場合、(1)の式を考慮すれば、質量比でシリカ(SiO2)よりも多くのアルミナ(Al2O3)を含有することがより好ましい。例えば、シリカ(SiO2)とSiO2より多くのアルミナ(Al2O3)を含む材料を水等の分散媒で練って耐熱シール剤材を形成できる。また、合成されると体積膨張する合成セラミックスはスピネルであり、第1セラミックス粒子はマグネシアで形成され、第2セラミックス粒子はアルミナで形成されていることが好ましい。
この場合、次の(2)式のようにムライトが合成される。
MgO+Al2O3→MgO・Al2O3 (スピネル) (2)
合成されたスピネル(MgO・Al2O3)は体積が反応前より膨張する。
【0012】
また、耐熱シール剤を構成する第1セラミックス粒子および第2セラミックス粒子の一方の粒径は、30マイクロメートル以下であることが好ましい。この場合、一方の粒径は、30マイクロメートル以下、20マイクロメートル以下、10マイクロメートル以下、5マイクロメートル以下であることが好ましい。粒径が小さいと、反応性を高めることができる。第1セラミックス粒子および第2セラミックス粒子の他方の粒径は200マイクロメートル以下、100マイクロメートル以下、50マイクロメートル以下、30マイクロメートル以下、20マイクロメートル以下であることが好ましい。耐熱シール剤で形成されたシール層の厚みは高温組付体の用途、サイズ、種類によって相違するが、0.2〜20ミリメートル、0.2〜10ミリメートルが例示される。
【0013】
本発明に係る高温組付体は、第1部材と、第2部材と、第1部材と第2部材との境界領域に配置された凹状プール部に装填された耐熱シール剤を焼成させた耐熱セラミックスプール部とを具備するものであり、高温領域で使用される。耐熱シール剤は、合成されると体積膨張する合成セラミックスを形成する複数種類のセラミックス粒子を含有する。体積膨張するため、第1部材と第2部材との境界領域におけるシール性が高まる。第1部材および第2部材は金属でも良いし耐火物でも良い。従って、第1部材と第2部材との組合わせは、耐火物と金属との組み合わせ、耐火物と耐火物との組み合わせ、金属と金属との組み合わせが例示される。金属としては、炭素鋼、合金鋼、鋳鉄、鋳鋼、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金が挙げられる。第1部材と第2部材との組合わせに金属が存在すれば、耐熱シール剤への熱伝導を高めることができる。
【0014】
焼成前の耐熱シール剤において、カイアナイトおよびアンダルサイトのうちの少なくとも一方を必要に応じて配合できる。カイアナイトおよびアンダルサイトはシリマイト系鉱物である。ここで、焼成前の耐熱シール剤におけるセラミックスを100%とするとき、質量比で、カイアナイトおよびアンダルサイトのうちの少なくとも一方が0.01〜40%含有されている形態を採用できる。加熱されると、カイアナイトおよびアンダルサイトはそれぞれ膨張するため、シール層における膨張に伴うシール性を向上させることができる。シリマナイト族鉱物は、加熱により分解してムライトとシリカになると考えられている。ムライトは、シリマナイト族鉱物より比重が小さいため容積変化(膨張)を起こす。カイアナイトおよびアンダルサイトの粒径が大きいほど、残存膨張は大きくなり、粒径が小さくなると、ほとんど残存膨張に関する効果が得られなくなる。
【0015】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1について図1を参照しつつ説明する。吹き込みノズル(タンディッシュ上部ノズル,高温組付体)は、高温の溶湯(例えば溶鋼)を保持する溶湯容器であるタンデッシュの底側に装備されるものであり、ガス透過性を有する筒状ポーラス耐火物1X(第1部材および第2部材のうちの一方)と、ポーラス耐火物1Xを包囲する金属製(鉄系)の筒状の外側鉄皮6(第1部材および第2部材のうちの他方)とを有する。筒状ポーラス耐火物1Xの内部には、リング状のガスプール19が形成されている。ガスプール19に吹込ガスを供給する下段ガス導入通路としてのガス導入パイプ5が設けられている。筒状ポーラス耐火物1Xには、上下方向にのびる溶湯通過用の通路7が縦方向に沿って形成されている。ポーラス耐火物1Xは、ガスを透過できる多数の連通細孔を有しており、材料としては、例えば、アルミナ系、マグネシア系、ジルコニア系等を例示できる。
【0016】
図1に示すように、筒状ポーラス耐火物1Xと筒状の外側鉄皮6との境界領域には、軸線P1回りのリング状の凹状プール部1Wが形成されている。凹状プール部1Wは、筒状ポーラス耐火物1Xの外周部の上部においてこれを1周するようにリング状に形成されている。組付時には、凹状プール部1Wには、未焼成の耐熱シール剤が装填されている。この耐熱シール剤は、予熱時の加熱、使用(搬入)前の加熱、または使用時の加熱等により焼成(合成)される。これにより耐熱セラミックスプール部1Rが軸線P1回りのリング状に形成される。耐熱セラミックスプール部1Rは、焼成(合成)により径方向および高さ方向に残存膨張として膨張する。この結果、筒状ポーラス耐火物1Xの上部と筒状の外側鉄皮6の上部6uとの境界領域をシールする。殊に、耐熱セラミックスプール部1Rは、外側鉄皮6の厚みよりも厚く、径方向への残存膨張量が良好に確保される。この結果、筒状ポーラス耐火物1Xの上部と筒状の外側鉄皮6の上部との境界領域を良好にシールできる。この結果、ガスプール18などに吹き込まれたガスが当該境界領域から外側鉄皮6の上端6up側に漏れることが抑制される。鉄皮6(組付体)の全高寸法をHAとして示し、高さ寸法の中央位置をHmとして示し、高さ寸法のうち下端6dから2/3の位置をHxとして示す。図1に示すように、耐熱セラミックスプール部1Rは鉄皮6において位置Hmよりも上側に位置にする。従って、耐熱セラミックスプール部1Rは、鉄皮6のうち上端6upに向かうにつれて縮径する円錐形状の上部6uに位置している。殊に、耐熱セラミックスプール部1Rは鉄皮6において位置Hxよりも上側に位置することが好ましい。タンデッシュ内の溶湯により鉄皮6はこれの上側からも激しく加熱され、鉄皮6の上側は激しい高温環境に晒されるため、シール性を高めることが好ましいためである。この結果、ガスプール19などに吹き込まれたガスが外側鉄皮6の上端6up側に漏れることが耐熱セラミックスプール部1Rにより抑制される。なお、鉄皮6の径方向の熱膨張は、筒状ポーラス耐火物1Xの径方向の膨張量に比較して小さいと考えられる。
【0017】
上記した耐熱セラミックスプール部1Rを形成する焼成前の耐熱シール剤は、アルミナ(Al2O3)およびシリカ(SiO2)を主要成分(有効成分)として含有する。耐熱シール剤の組成については、質量比で、シリカ(SiO2)よりも多くのアルミナ(Al2O3)を含有すること好ましい。例えば、シリカ(SiO2)と、シリカ(SiO2)より多くのアルミナ(Al2O3)を含む材料を水(分散媒)で練った耐熱シール剤を用いる。分散媒はアルコール等としても良い。そして、かかる耐熱シール剤を凹状プール部1Wに装填する。このように装填した状態で、吹き込みノズルの使用時には、吹き込みノズルは高温領域において維持される。この場合、例えば1400〜1700℃程度といった高温の溶湯が通路7を矢印A1方向に流れる。このように高温組付体の使用時において高温の溶湯からの受熱で、シール剤には、(1)式のような反応が起こる。鉄皮6,耐火物1Xは伝熱性を有するため、シール剤の加熱に貢献できる。
2SiO2+3Al2O3→3Al2O3・2SiO2 (1)
このように2モルのSiO2と3モルのAl2O3とでムライト(3Al2O3・2SiO2)が合成される。合成される3Al2O3・2SiO2(ムライト)は、体積が反応前より膨張する。更にムライトを生成させた耐熱セラミックスプール部1Rは、緻密体であるか、気孔を有していたとしても、気孔は閉じられることが好ましい。このように高温組付体であるガス吹き込みノズルの使用時の熱により、ムライト(3Al2O3・2SiO2)は合成され、体積が反応前より膨張するため、合成工程である加熱工程を別途実施せずとも良い。ここで、シリカ粒子(SiO2)とアルミナ粒子(Al2O3)の粒径が小さい程、(1)式の合成反応が起こりやすい。このため、シリカ粒子(SiO2)とアルミナ粒子(Al2O3)の粒径は小さい方がよい。シリカ粒子(SiO2)とアルミナ粒子(Al2O3)の粒径粒径は、100マイクロメートル以下が好ましく、30マイクロメートル以下、10マイクロメートル以下、3マイクロメートル以下が更に好ましく、1マイクロメートル以下が特に好ましい。
【0018】
ある形態によれば、例えば、シリカ粒子(SiO2)の粒子粒径は3マイクロメートル以下または1マイクロメートル以下とされ、アルミナ粒子(Al2O3)の粒径粒径は、高密度で充填することを考慮し、75〜1マイクロメートルとされていることが好ましい。ここで、焼成前の耐熱シール剤における組成は、シリカ(SiO2)が5〜50質量%で、残部がアルミナ(Al2O3)であると、体積膨張の点で好ましい。さらに、シリカ(SiO2)が10〜20質量%で、残りがアルミナ(Al2O3)であると、更に好ましい。焼成前のシール剤のセラミックスは、質量比で、アルミナおよびシリカで実質的に95%以上、98%以上、100%であることが好ましい。従って、焼成前(合成反応前)の耐熱シール剤は、マグネシア、ジルコニア等の他の成分を含有していない方が良いと考えられる。従って、耐熱シール剤のセラミックス組成としては、次の(a)〜(e)ように例示できる。但しこれに限定されるものではない。
(a)75マイクロメートル以下のアルミナ粒子(Al2O3)を70%、10マイクロメートル以下のアルミナ粒子(Al2O3)を15%、1マイクロメートル以下のシリカ粒子(SiO2)を15%の配合にできる。
(b)75マイクロメートル以下のアルミナ粒子(Al2O3)を70%、10マイクロメートル以下のアルミナ粒子(Al2O3)を15%、3マイクロメートル以下のシリカ粒子(SiO2)を15%の配合にできる。
(c)100マイクロメートル以下のアルミナ粒子(Al2O3)を70%、10マイクロメートル以下のアルミナ粒子(Al2O3)を10%、3マイクロメートル以下のシリカ粒子(SiO2)を20%の配合にできる。但しこれに限定されるものではない。
(d)50マイクロメートル以下のアルミナ粒子(Al2O3)を60%、10マイクロメートル以下のアルミナ粒子(Al2O3)を20%、1マイクロメートル以下のシリカ粒子(SiO2)を20%の配合にできる。
(e)30マイクロメートル以下のアルミナ粒子(Al2O3)を50%、10マイクロメートル以下のアルミナ粒子(Al2O3)を10%、1マイクロメートル以下のシリカ粒子(SiO2)を40%の配合にできる。%は質量%を意味する。ムライトに合成されなかったアルミナは、アルミナとして残存する。シール層におけるアルミナはシール層の耐熱性の向上に貢献できる。
【0019】
次に、本実施形態のガス吹き込みノズルを連続鋳造において使用する際のガスの流れについて説明する。使用の際には、取鍋から移し替えられたタンディッシュ内の溶鋼等の溶湯は連鋳機に向けて流れるが、溶湯は、通路7内を下方(図1に示す矢印A1方向)に向けて流れる。この場合、ガス源からガス導入パイプ5にガス(例えばアルゴンガス等の不活性ガス)がそれぞれ供給される。ガス供給パイプ5に供給されたガスは、ガスプール19を介してポーラス耐火物1Xのポーラス部分に供給され、内周面1Xiから通路7内に向けて(矢印C1方向,B1方向)吹き出される。これによりタンディッシュスライディングノズル装置の摺動板、コレクターノズル、浸漬ノズルへのアルミナの付着が抑制される。また、耐熱セラミックスプール部1Rを形成する耐熱シール剤が、焼成により体積が増大して筒状ポーラス耐火物1Xの外周部と外側鉄皮6との境界領域に隙間を生じさせ難い組成を有している。このため使用中に高温になっても当該境界領域からガスが漏れ出し難くなる。なお、焼成前の耐熱シール剤は、カイアナイトおよびアンダルサイトのうちの少なくとも一方を必要に応じて含有できる。
【0020】
図2は、耐熱シール剤の焼成(合成)で形成された耐熱セラミックスプール部1R付近を示す。ここで、外側鉄皮6の厚みをa1とし、耐熱セラミックスプール部1Rの最大厚みをa2とし、耐熱セラミックスプール部1Rの高さをbとすると、耐熱セラミックスプール部1R付近のシール性を高める為には、a1<a2の関係、a1<a2<bの関係が得られることが好ましい。但しこれに限定されるものではない。a2<bであるため、耐熱セラミックスプール部1Rのシール距離(斜辺部101)がbとして確保され、高いシール性が得られる。なお、耐熱セラミックスプール部1Rが形成される筒状ポーラス耐火物1Xは、多数の気孔を有するポーラス質であるため、膨張が気孔で吸収され、膨張量には限界がある。この点本実施形態によれば、合成により径方向および高さ方向に膨張する残存膨張を形成できるリング状の耐熱セラミックスプール部1Rで形成されているため、膨張量の確保ひいてはシール性の確保に有利である。
【0021】
鉄皮6の上部6u側では、筒状ポーラス耐火物1X(耐火物)の上部は円錐形状されており、鉄皮6の上端6up側に向かうにつれて径方向(矢印DA方向)の厚みが小さくなる。この場合、環境条件が過酷であれば、筒状ポーラス耐火物1Xの強度が不足し、亀裂が発生するおそれがある。そこで図2に示すように、凹状プール部1Wおよび耐熱セラミックスプール部1Rの断面ほぼ三角形状とされており、鉄皮6の内壁面に沿った斜辺部101と、筒状ポーラス耐火物1Xに対面する上側の斜辺部102と、筒状ポーラス耐火物1Xに対面する下側の斜辺部103と、斜辺部102および斜辺部103が交差する交差部104とをもつ。図2に示すように、斜辺部101の長さをK1として示し、斜辺部102の長さをK2として示し、斜辺部103の長さをK3として示す。K2>K3の関係、K2>K1>K3の関係とされている。これにより耐熱セラミックスプール部1Rにおいて交差部104が相対的に下側に位置する。このため筒状ポーラス耐火物1Xのうち斜辺部102に対面する部分1X3(図2参照)の径方向(矢印DA方向)の厚みが確保される。K3/K2=0.8以下、0.6以下、0.4以下が例示される。交差部104は丸みをもつことが好ましい。但し、亀裂等が問題にならないときには、K2=K3、K3>K2としても良い。場合によっては、凹状プール部1Wおよび耐熱セラミックスプール部1Rの断面をほぼ台形状としても良い。
【0022】
(実施形態2)
図3は実施形態2を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。図3に示すように、吹き込みノズル(タンディッシュ上部ノズル,高温組付体)は、相対的に上側に配置されたガス透過性を有する筒状上段ポーラス耐火物1と、上段ポーラス耐火物1よりも相対的に下側に配置されたガス透過性を有する筒状下段ポーラス耐火物2と、上段ポーラス耐火物1と下段ポーラス耐火物2との間に介装される筒状緻密質耐火物3と、上段ポーラス耐火物1に吹込ガスを供給する上段ガス導入通路としての上段ガス導入パイプ4と、下段ポーラス耐火物2に吹込ガスを供給する下段ガス導入通路としての下段ガス導入パイプ5と、上段ポーラス耐火物1、緻密質耐火物3及び下段ポーラス耐火物2の外周面を包囲して保持する金属皮体としての鉄皮として機能する筒形状をなす外側鉄皮6と、を備えている。これにより上下方向にのびる溶湯通過用の通路7を形成している。なお、16は、上段ポーラス耐火物1の上方に積層された補助緻密質耐火物である。筒状ポーラス耐火物1Xと筒状の外側鉄皮6との間には、リング状の上段のガスプール18が形成されている。筒状ポーラス耐火物1Xの内部には、リング状の下段のガスプール19が形成されている。図2に示すように、緻密質耐火物3は、上段緻密質耐火物3aと下段緻密質耐火物3bとに分割されている。上段緻密質耐火物3aと下段緻密質耐火物3bとの間には、耐熱シール剤が填装されてシール層8を形成している。上段緻密質耐火物3a、下段緻密質耐火物3b及び下段ポーラス耐火物2の外周面には、焼嵌め等で取り付けられ鉄皮(内側金属皮体)9を備えている。鉄皮9は外側鉄皮6の内周側に位置している。この部分は二重鉄皮になっている。鉄皮6(第1部材)と鉄皮9(第1部材)との間にはシール層17が介装されている。
【0023】
上段ガス導入パイプ4は、先端部4aが緻密質耐火物3の外周部に沿って上向きになるように導入されている。上段ガス導入パイプ4の先端部4aは、リング状または筒状のガスプール18を介して上段ポーラス耐火物1の外周部1pに連通している。鉄皮9の内周部と緻密質耐火物3の外周部との境界領域には、シール層8と同じ耐熱シール剤が填装されておりシール層8cを形成しており、ガスが漏れ出せないようになっている。下段ガス導入パイプ5は、先端部5aが横向きになるように導入され、リング状のガスプール19を介して下段ポーラス耐火物2の外周部2pに連通している。上段ポーラス耐火物1及び下段ポーラス耐火物2は、ガスを透過できる多数の連通細孔を有し、互いに同一材料または同系材料で形成されていることが好ましい。材料としては、例えば、アルミナ系、マグネシア系、ジルコニア系等を例示できる。緻密質耐火物3と補助緻密質耐火物16とは、緻密となるように焼成された耐火物で形成されており、不焼成のキャスタブル層とは異なり、気孔率が極めて低く、ガス透過性が小さく、高い緻密性及び高い強度を有する。すなわち、緻密質耐火物3は、上段ポーラス耐火物1及び下段ポーラス耐火物2よりもガス透過性が小さく緻密性を有する。
【0024】
シール層8,8c,17を形成する焼成前の耐熱シール剤は、アルミナ(Al2O3)およびシリカ(SiO2)を主要成分(有効成分)として含有する。耐熱シール剤の組成については、質量比で、シリカ(SiO2)よりも多くのアルミナ(Al2O3)を含有すること好ましい。例えば、シリカ(SiO2)と、シリカ(SiO2)より多くのアルミナ(Al2O3)を含む材料を水またはアルコール等で練った耐熱シール剤を用いる。そして、かかる耐熱シール剤を、上段緻密質耐火物3a(第1部材)の下面3dと下段緻密質耐火物3b(第2部材)の上面3uとの間の境界領域に塗布しておく。筒状ポーラス耐火物1Xの外周部に形成されている凹状プール部1Wにも耐熱シール剤を装填しておく。このように焼成前のシール剤を当該境域領域に塗布しておく。この状態の吹き込みノズルの使用時には、吹き込みノズルは高温領域において維持される。この場合、例えば1400〜1600℃程度といった高温の溶湯が通路7を矢印A1方向に流れる。このように高温組付体の使用時において高温の溶湯からの受熱で、シール剤には、(1)式のような反応が起こる。鉄皮6,9,耐火物1,2,3a,3b,16は伝熱性を有するため、シール剤の加熱に貢献できる。
【0025】
2SiO2+3Al2O3→3Al2O3・2SiO2 (1)
このように2モルのSiO2と3モルのAl2O3とでムライト(3Al2O3・2SiO2)が合成される。合成される3Al2O3・2SiO2(ムライト)は、体積が反応前より膨張する。このように高温組付体であるガス吹き込みノズルの使用時の熱により、ムライト(3Al2O3・2SiO2)は合成され、体積が合成反応(焼成)前より膨張するため、合成工程である加熱工程を別途実施せずとも良い。ここで、シリカ粒子(SiO2)とアルミナ粒子(Al2O3)の粒径が小さい程、(1)式の合成反応が起こりやすい。このため、シリカ粒子(SiO2)とアルミナ粒子(Al2O3)の粒径は小さい方がよい。シリカ粒子(SiO2)とアルミナ粒子(Al2O3)の粒径粒径は、100マイクロメートル以下が好ましく、30マイクロメートル以下、10マイクロメートル以下、3マイクロメートル以下が更に好ましく、1マイクロメートル以下が特に好ましい。
【0026】
ある形態によれば、例えば、シリカ粒子(SiO2)の粒子粒径は3マイクロメートル以下または1マイクロメートル以下とされ、アルミナ粒子(Al2O3)の粒径粒径は、高密度で充填することを考慮し、75〜1マイクロメートルとされていることが好ましい。ここで、焼成前の耐熱シール剤における組成は、シリカ(SiO2)が5〜50質量%で、残部がアルミナ(Al2O3)であると、体積膨張の点で好ましい。さらに、シリカ(SiO2)が10〜20質量%で、残りがアルミナ(Al2O3)であると、更に好ましい。焼成前のシール剤のセラミックスは、質量比で、アルミナおよびシリカで実質的に95%以上、98%以上、100%であることが好ましい。
【0027】
次に、本実施形態のガス吹き込みノズルを連続鋳造において使用する際のガスの流れについて説明する。使用の際には、取鍋から移し替えられたタンディッシュ内の溶鋼等の溶湯は連鋳機に向けて流れるが、溶湯は、通路7内を下方(図1に示す矢印A1方向)に向けて流れる。この場合、ガス源から上段ガス導入パイプ4、下段ガス導入パイプ5にガス(例えばアルゴンガス等の不活性ガス)がそれぞれ供給される。上段ガス導入パイプ4に供給されたガスは、ガスプール18を介して上段ポーラス耐火物1のポーラス部分に供給され、上段ポーラス耐火物1の内周面1iから通路7内に向けて(矢印B1方向に)吹き出される。これによりノズル上部へのアルミナの付着が抑制される。下段ガス供給パイプ5に供給されたガスは、ガスプール19を介して下段ポーラス耐火物2のポーラス部分に供給され、下段ポーラス耐火物2の内周面2iから通路7内に向けて(矢印C1方向に)吹き出される。これによりタンディッシュスライディングノズル装置の摺動板、コレクターノズル、浸漬ノズルへのアルミナの付着が抑制される。
【0028】
さて本実施形態によれば、図3に示すように、筒状の緻密質耐火物16の外周部と筒状の外側鉄皮6の内周部との境界領域には、軸線P1回りのリング状の凹状プール部1Wが形成されている。凹状プール部1Wは、筒状ポーラス耐火物1Xの外周部に1周するようにリング状に形成されている。組付時には、凹状プール部1Wには耐熱シール剤が装填されている。この耐熱シール剤は、使用時の熱により焼成されて耐熱セラミックスプール部1Rとなる。耐熱セラミックスプール部1Rは、鉄皮6の厚みよりも厚くされており、軸線P1回りでリング状に形成されている。耐熱セラミックスプール部1Rは、筒状ポーラス耐火物1Xの上部と筒状の外側鉄皮6の上部との境界領域をシールしている。このため、ガスプール18からのガスが当該境界領域から、即ち、外側鉄皮6の上部から外部に漏れることが抑制されている。耐熱セラミックスプール部1Rは鉄皮6において位置Hmよりも上側に位置にする。殊に、耐熱セラミックスプール部1Rは鉄皮6において位置Hxよりも上側に位置することが好ましい。タンデッシュに保持されている高温の溶湯により鉄皮6はこれの上側からも激しく加熱される。鉄皮6の上側は激しい高温環境に晒される。このため、シール性を高めることが好ましいためである。ガスプール18からのガスが外側鉄皮6の上部から外部に漏れることが抑制されている。場合によっては、セラミックスプール部1Rは位置Hxと位置Hmとの間に位置していても良い。図3に示すように、耐熱セラミックスプール部1Rを保持する緻密質耐火物16は緻密質であり、気孔率は極めて小さい。このため、耐熱セラミックスプール部1Rの径方向の膨張量が緻密質耐火物16によって吸収されることが抑制され、シール性を高めるのに貢献できる。
【0029】
緻密質耐火物3は、不焼成のキャスタブルと異なり、予め焼成された緻密な焼成耐火物で形成されているためガス透過性が小さいが、僅かながらガスが透過することもある。すなわち、上段ポーラス耐火物1に供給されたガスの一部が上段緻密質耐火物3a内を透過して下段緻密質耐火物3bに漏れ出そうとすることもある。同様に、下段ポーラス耐火物2に供給されたガスの一部が下段緻密質耐火物3b内を透過して上段緻密質耐火物3aに漏れ出そうとすることもある。しかし本実施形態によれば、上段緻密質耐火物3aの下面3dと下段緻密質耐火物3bの上面3uとの境界領域にはシール層8が介在している。このため、上段緻密質耐火物3aから下段緻密質耐火物3bへの漏れ出しがブロックされる。且つ、下段緻密質耐火物3bから上段緻密質耐火物3aへの漏れ出しがブロックされる。したがって、上段ポーラス耐火物1及び下段ポーラス耐火物2へのガス供給をそれぞれ独立して行うことができる。
【0030】
また、シール層8を形成する耐熱シール剤が、焼成により体積が増大して上段緻密質耐火物3aと下段緻密質耐火物3bとの境界領域に隙間を生じさせ難い組成を有している。このため使用中に高温になってもシール層8からガスが漏れ出し難くなる。また、上段緻密質耐火物3a、下段緻密質耐火物3b及び下段ポーラス耐火物2の外周面を包囲する金属皮体として鉄皮9が設けられている。そして、シール層8の外周縁部8pが鉄皮9の内周壁に当接しているので、上段緻密質耐火物3a、下段緻密質耐火物3b及び下段ポーラス耐火物2の外周に沿ってガスが流れることが抑制される。したがって、上段ポーラス耐火物1及び下段ポーラス耐火物2へのガス供給を一層独立して行うのに有利となる。また、パイプ4と接する鉄皮9及び緻密質耐火物3との間には、シール層8と同じ耐熱シール剤で形成されたシール層8cが填装されている。このためパイプ4の外側を通ってガスが漏れ出せないようになっている。したがって、上段ポーラス耐火物1及び下段ポーラス耐火物2へのガス供給を一層独立して行うことができる。
【0031】
また本実施形態によれば、上段緻密質耐火物3aと下段緻密質耐火物3bとの間に耐熱シール剤が填装されてシール層8を形成するので、上段ポーラス耐火物1と上段緻密質耐火物3aからなる上段部の組と、下段ポーラス耐火物2と下段緻密質耐火物3bとからなる下段部の組とを、シール層8を形成する耐熱シール剤で接着して組み立てることができる。また本実施形態によれば、前述したように、鉄皮6(第1部材および第2部材のうちの一方)と鉄皮9(第1部材および第2部材のうちの他方)との間にも、耐熱シールで形成されたシール層17が介装されている。シール層17を形成する耐熱シール剤に有効成分として含有されているシリカ粒子(SiO2)およびアルミナ粒子(Al2O3)が配合されている。更に外側鉄皮6(第1部材および第2部材のうちの一方)の下部6dと下段ポーラス耐火物2(第1部材および第2部材のうちの他方)との境界領域においても、耐熱シール剤を塗布して形成されたシール層20が形成されている。更にまた、外側鉄皮6(第1部材)の上部6uの内周部と上段ポーラス耐火物1(第2部材)の外周部との境界領域においても、外側鉄皮6(第1部材)の上部6uの内周部と補助緻密室耐火物16(第2部材)の外周部との境界領域においても、耐熱シール剤を塗布して形成されたシール層25が形成されている。
【0032】
そして、耐熱セラミックスプール部1R、シール層8,8c,17,20,25を構成するシール剤は、上記した耐熱シール剤で形成されている。このため吹き込みノズルの使用時において、高温の溶鋼等の溶湯が通路7を通過するため、溶鋼等の溶湯の熱からの伝熱により、耐熱セラミックスプール部1R、シール層8,8c,17,20,25が高温に加熱される。よって、当該シール剤を構成するシリカ粒子(SiO2)およびアルミナ粒子(Al2O3)がムライトを合成して膨張する。このため上記したシール層8,8c,17,20,25におけるシール性も高めることができる。場合によっては、使用前の予熱または組付体の搬入前の加熱により、耐熱セラミックスプール部1R、シール層8,8c,17,20,25が高温に加熱されることにしても良い。なお上述したように、シール層8,8c,17,20,25は本実施形態に係る耐熱シール剤で形成されているが、これに限らず、シール層8,8c,17,20,25のうちの少なくともいずれか一つについて、本実施形態に係る耐熱シール剤で形成されており、残りを公知のシール剤(モルタル等)で形成することにしても良い。なお、焼成前の耐熱シール剤は、カイアナイトおよびアンダルサイトのうちの少なくとも一方を必要に応じて含有できる。
【0033】
(実施形態3)
図4は実施形態3を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。前記した図3に示す実施形態では、緻密質耐火物3は、上段緻密質耐火物3aと下段緻密質耐火物3bとに分割されている。そして上段緻密質耐火物3aと下段緻密質耐火物3bとの間には、上記したように焼成されるとムライトを合成する耐熱シール剤が填装されてシール層8が形成されている。但し本実施形態では、図4に示すように、緻密質耐火物3は、実施形態1に係る上段緻密質耐火物3aと下段緻密質耐火物3bとが一体化された形状とされているため、実施形態1のシール層8は形成されていない。本実施形態においても、耐熱セラミックスプール部1R、シール層8c,17,20,25は、本実施形態に係るムライトを形成する耐熱シール剤で形成されている。すなわち、本実施形態においても、図4に示すように、筒状の緻密質耐火物16と筒状の外側鉄皮6との境界領域には、軸線P1回りのリング状の凹状プール部1Wが形成されている。凹状プール部1Wは筒状ポーラス耐火物1Xの外周部に1周するように形成されている。組付時に凹状プール部1Wには耐熱シール剤が装填されている。この耐熱シール剤は、使用時の熱により、つまり通路7を通過する溶湯の熱により、焼成されて耐熱セラミックスプール部1Rとなり、径方向および高さ方向に膨張する。耐熱セラミックスプール部1Rは、鉄皮6の厚みよりも厚く、軸線P1回りでリング状に形成されている。
【0034】
この結果、耐熱セラミックスプール部1Rは、径方向および高さ方向に膨張して緻密質耐火物16の外周部と筒状の外側鉄皮6の内周部との境界領域をシールする。このため、ガスプール18のガスが当該境界領域から鉄皮6の上端6up側に漏れることが抑制されている。図4に示すように、耐熱セラミックスプール部1Rは鉄皮6において位置Hmよりも上側に位置にする。殊に、耐熱セラミックスプール部1Rは鉄皮6において位置Hxよりも上側に位置することが好ましい。鉄皮6はこれの上側からも激しく加熱されるため、鉄皮6の上側は激しい高温環境に晒されるため、シール性を高めることが好ましいためである。図4に示すように、緻密質耐火物16の外周部と筒状の外側鉄皮6の内周部とは、上部に向かうにつれて縮径する円錐形状をなしている。なお、焼成前の耐熱シール剤は、カイアナイトおよびアンダルサイトのうちの少なくとも一方を必要に応じて含有できる。
【0035】
(実施形態4)
実施形態4は実施形態1〜3と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1〜図4を準用する。耐熱セラミックスプール部1Rなどを形成する焼成前の耐熱シール剤におけるセラミックスを100%とするとき、質量比で、シリカ粒子(SiO2)が0.1〜30%、アルミナ粒子(Al2O3)が50〜70%、アンダルサイトおよびカイアナイトのうちの一方または双方の粒子が0.1〜20%(0.1〜10%,0.1〜50%)含有されている。加熱されると、アンダルサイトおよびカイアナイト(カイヤナイトともいう)はアルミニウムケイ酸塩(Al2SiO5)であり、加熱されると膨張するため、使用中に膨張して、シール性を更に向上させることができる。アンダルサイトまたはカイアナイトの粒子の粒径としては、必要に応じて選択でき、1〜1000マイクロメートル、1〜100マイクロメートル、5〜50マイクロメートルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。カイアナイトおよびアンダルサイトの粒径が大きいほど、残存膨張は大きくなり、粒径が小さくなると、ほとんど残存膨張に関する効果が得られなくなる。場合によっては、アンダルサイトおよび/またはカイアナイトの粒子の配合割合は質量比で1〜30%とすることもできる。アンダルサイトまたはカイアナイトの粒子が過大であると、均質な組織が得られにくい。なお、アンダルサイトまたはカイアナイトの添加量を増やすと、焼成後において残存線変化率は大きくなり、膨張が継続すると考えられる。ただし、アンダルサイトまたはカイアナイトの添加量が過剰に多くなると、残存膨張が大きくなりすぎ、しかも、膨張が継続して組織が脆弱化し、剥落発生の恐れが生じる。
【0036】
(実施形態5)
実施形態5は実施形態1〜3と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1〜図4を準用する。但し、以下の点が相違する。本実施形態においては、耐熱セラミックスプール部1Rなどを形成する耐熱シール剤により合成されると体積膨張するセラミックスはスピネルである。従って耐熱シール剤においては、第1セラミックス粒子はマグネシアで形成され、第2セラミックス粒子はアルミナで形成されている。耐熱シール剤は、アルミナ(Al2O3)およびマグネシア(MgO)を主要成分(有効成分)として含有する。耐熱シール剤のセラミックス組成については、質量比で、マグネシア(MgO)よりも多くのアルミナ(Al2O3)を含有すること好ましい。例えば、マグネシア(MgO)と、シリカ(SiO2)より多くのアルミナ(Al2O3)を含む材料を水で練った耐熱シール剤を用いることが好ましい。そして、かかる耐熱シール剤を、上段緻密質耐火物3a(第1部材)の下面3dと下段緻密質耐火物3b(第2部材)の上面3uとの間の境界領域に塗布しておく。このように焼成前のシール剤を当該境域領域に塗布しておく。この状態の吹き込みノズルの使用時には、吹き込みノズルは高温領域において維持される。この場合、例えば1400〜1650℃程度といった高温の溶湯が通路7を矢印A1方向に流れる。溶湯からの受熱でシール剤には(2)式のような反応が起こる。
【0037】
MgO+Al2O3→MgO・Al2O3 (2)
1モルのMgOと1モルのAl2O3とが焼成されてスピネルが合成される。スピネル(MgO・Al2O3)は、体積が反応前より膨張する。膨張は残存膨張として残る。このように高温組付体であるガス吹き込みノズルの使用時の熱により、スピネルは使用の際に合成され、体積が反応前より膨張するため、加熱工程(合成工程)を別途実施せずとも良い。ここで、マグネシア粒子(MgO)とアルミナ粒子(Al2O3)の粒径が小さい程、(2)式の合成反応が起こりやすい。このため、マグネシア粒子(MgO)とアルミナ粒子(Al2O3)の粒径は小さい方がよい。マグネシア粒子(MgO)とアルミナ粒子(Al2O3)の粒径粒径は、100マイクロメートル以下が好ましく、50マイクロメートル以下、10マイクロメートル以下が更に好ましく、1マイクロメートル以下が特に好ましい。
【0038】
ある実施形態によれば、例えば、マグネシア粒子(MgO)の粒径粒径は1マイクロメートル以下とされ、アルミナ粒子(Al2O3)の粒径粒径は、高密度で充填することを考慮し、75〜1マイクロメートルとされていることが好ましい。ここで、焼成前の耐熱シール剤におけるセラミックスについては、アルミナおよびシリカで実質的に95%以上、98%以上、100%であることが好ましい。焼成前の耐熱シール剤におけるセラミックスについては、マグネシア(MgO)が1〜50質量%で、残部がアルミナ(Al2O3)であると、体積膨張の点で好ましい。さらに、マグネシア(MgO)が1〜20質量%で、残りがアルミナ(Al2O3)であると、更に好ましい。次の(a)〜(c)の形態を採用できる。
(a)75マイクロメートル以下のアルミナ粒子(Al2O3)を70%、10マイクロメートル以下のアルミナ粒子(Al2O3)を15%、1マイクロメートル以下のマグネシア粒子(MgO)を15%の配合にできる。
(b)75マイクロメートル以下のアルミナ粒子(Al2O3)を70%、10マイクロメートル以下のアルミナ粒子(Al2O3)を15%、3マイクロメートル以下のマグネシア粒子(MgO)を15%の配合にできる。
(c)100マイクロメートル以下のアルミナ粒子(Al2O3)を70%、10マイクロメートル以下のアルミナ粒子(Al2O3)を10%、3マイクロメートル以下のマグネシア粒子(MgO)を20%の配合にできる。但しこれに限定されるものではない。なお、焼成前の耐熱シール剤は、カイアナイトおよびアンダルサイトのうちの少なくとも一方を必要に応じて含有できる。
【0039】
(実施形態6)
図5は実施形態6を示す。本実施形態は前記した実施形態と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。本実施形態においても、図5に示すように、筒状の緻密質耐火物16の外周部と筒状の外側鉄皮6の内周部との境界領域には、軸線P1回りのリング状の凹状プール部1Wが形成されている。凹状プール部1Wは、緻密質耐火物16の円錐形状(上部に向かうにつれて縮径する円錐)の外周部に1周するように形成されている。鉄皮6の上部は、これの上端に向かうにつれて縮径するように円錐状とされている。ここで円錐形状は、上部に向かうにつれて縮径する円錐を意味する。組付時には、凹状プール部1Wには耐熱シール剤が装填されている。この耐熱シール剤は、使用時の熱により、つまり通路7を通過する溶湯の熱により、焼成されて膨張して耐熱セラミックスプール部1Rとなる。耐熱セラミックスプール部1Rは、軸線P1回りのリング状に形成されている。耐熱セラミックスプール部1Rは、合成されると膨張するムライトまたはスピネルで形成されており、緻密質耐火物16の円錐形状の上部と筒状の外側鉄皮6の円錐形状の上部との境界領域をシールしている。図5に示すように、耐熱セラミックスプール部1Rを保持する緻密質耐火物16は緻密質であり、ポーラス耐火物よりも気孔率は極めて小さい。このため、耐熱セラミックスプール部1Rの径方向の膨張量が緻密質耐火物16によって吸収されることが抑制される。よって、シール性を高めるのに貢献できる。
【0040】
図5に示すように、緻密質耐火物3は、上段緻密質耐火物3aと下段緻密質耐火物3bとに分割されている。そして上段緻密質耐火物3aと下段緻密質耐火物3bとの間には、上記したように焼成されるとムライトを合成する耐熱シール剤が填装されてシール層8が形成されている。さらに図5に示すように、上段緻密質耐火物3aと下段緻密質耐火物3bとの境界領域には、リング状の凹状プール部3Wが軸線P1回りで形成されている。組付時には、凹状プール部3Wには耐熱シール剤が装填されている。装填された耐熱シール剤は、使用時の熱によりムライトまたはスピネルとして焼成(合成)されて径方向および高さ方向に膨張し、耐熱セラミックスプール部3Rが形成される。この膨張は残存膨張としてその後においても存存する。この結果、外側鉄皮6の上部6uの上端6upに向かう付勢力FA(図5参照)が発生する。この結果、筒状の緻密質耐火物16の円錐形状の外周部を、外側鉄皮6の円錐形状の内周部に接近または密接させるのに有利となる。このため、筒状の緻密質耐火物16の円錐形状の外周部と外側鉄皮6の円錐形状の内周部との境界領域のシール性を一層高め得る。なお、焼成前の耐熱シール剤は、カイアナイトおよびアンダルサイトのうちの少なくとも一方を必要に応じて含有できる。
【0041】
(実施形態7)
図6は実施形態7を示す。本実施形態は前記した実施形態と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。本実施形態においても、図6に示すように、筒状の緻密質耐火物16と筒状の外側鉄皮6との境界領域には、軸線P1回りのリング状の凹状プール部1Wが形成されている。凹状プール部1Wは、筒状の緻密質耐火物16の外周部において1周するように形成されている。組付時において、凹状プール部1Wには、未焼成または半焼成の耐熱シール剤が装填されている。この耐熱シール剤は、使用時の熱により焼成されて耐熱セラミックスプール部1Rが形成される。耐熱セラミックスプール部1Rは、軸線P1回りでリング状に形成されている。耐熱セラミックスプール部1Rは、合成されると膨張するムライトまたはスピネルで形成されており、径方向および高さ方向に膨張し、結果として、筒状の緻密質耐火物16の外周部と筒状の外側鉄皮6の内周部との境界領域をシールしている。このためガスプール18のガスが当該境界領域を介して鉄皮6の上端6up側から漏れることが抑制されている。
【0042】
さらに本実施形態によれば、図6に示すように、筒状上段ポーラス耐火物1と補助緻密質耐火物16との境界領域には、リング状の凹状プール部16Wが軸線P1回りで形成されている。凹状プール部16Wには未焼成の耐熱シール剤が装填されている。装填された耐熱シール剤は、使用時の熱により焼成(合成)されると、ムライトまたはスピネルを形成して径方向および高さ方向に膨張し、耐熱セラミックスプール部16Rを形成する。この膨張は残存膨張として存存する。この結果、外側鉄皮6の上端6upに向かう付勢力FA(図6参照)を発揮する。この結果、補助緻密質耐火物16の円錐形状(上部に向かうにつれて縮径する円錐)の外周部を、外側鉄皮6の円錐形状の内周部(上部に向かうにつれて縮径する円錐)に接近または密接させるのに有利となる。従って、補助緻密質耐火物16の円錐形状の外周部と外側鉄皮6の円錐形状の内周部との境界領域のシール性を一層高め得る。なお、焼成前の耐熱シール剤は、カイアナイトおよびアンダルサイトのうちの少なくとも一方を必要に応じて含有できる。図6に示すように、耐熱セラミックスプール部1Rは鉄皮6において中央高さ位置Hmよりも上側に位置にする。殊に、耐熱セラミックスプール部1Rは鉄皮6において高さ方向の位置Hxよりも上側に位置することが好ましい。タンデッシュ等の貯湯容器の下側に配置されている鉄皮6はこれの上側から激しく加熱され、鉄皮6の上側は激しい高温環境に晒されるため、シール性を高めることが好ましいためである。凹状プール部1Wおよび耐熱セラミックスプール部1Rの断面をほぼ台形状とされているが、断面三角形状としても良い。
【0043】
(実施形態8)
図7および図8は実施形態8を示す。本実施形態は前記した実施形態と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。本実施形態は、取鍋の底壁Wに埋設されるように取り付けられる吹き込みプラグ(高温組付体)に適用した場合である。吹き込みプラグは、耐火物層30(第1部材および第2部材のうちの他方)と、耐火物層30の外周部30pを包囲する鉄皮32(第1部材および第2部材のうちの一方)と、鉄皮32の底部32bに接続されたガス供給管33とをもつ。耐火物層30は、金属溶湯Mにハブリング用のガスを吹き込むガス通路35と、耐火物層30の下面30dと鉄皮32との間に形成され且つガス通路35に連通するガスプール室36とをもつ。耐火物層30の外周部30pと鉄皮32の内周部32iとの間には、耐熱シール剤が塗布されたシール層38が形成されている。シール層38を形成する耐熱シール剤のセラミックスは、実施形態1と同様に、アルミナ粒子(Al2O3)およびシリカ粒子(SiO2)を主要成分(有効成分)として含有する。耐熱シール剤のセラミックス組成については、質量比で、シリカ(SiO2)よりも多くのアルミナ(Al2O3)を含有すること好ましい。例えば、シリカ(SiO2)と、シリカ(SiO2)より多くのアルミナ(Al2O3)を含む材料を水で練った耐熱シール剤を用いることができる。そして、かかる耐熱シール剤を、耐火物層30の外周部30p、および/または、鉄皮32の内周部32iに塗布しておく。このように焼成前のシール剤を当該境域領域に塗布しておく。その後、耐火物層30および鉄皮32を組み付ける。この状態の吹き込みプラグの使用すれば、吹き込みノズルは高温領域において維持される。この場合、吹き込みプラグは例えば1400〜1700℃程度といった高温の溶湯Mを貯留する取鍋の底壁Wに埋設されている。このため、溶湯Mからの受熱で加熱されたシール剤には、前記した(1)式のような反応が起こり、ムライトが合成される。このため耐火物層30(第1部材および第2部材のうちの一方)の外周部30pと鉄皮32(第1部材および第2部材のうちの他方)の内周部32iとの境界領域におけるシール性を高めることができる。必要に応じて、焼成前の耐熱シール剤にカイアナイトを配合させることもできる。
【0044】
本実施形態によれば、図7に示すように、耐火物層30と筒状の鉄皮32との境界領域には、軸線P1回りのリング状の凹状プール部1Wが形成されている。凹状プール部1Wは、耐火物層30の外周部においてこれを1周するように形成されている。組付時において、凹状プール部1Wには耐熱シール剤が装填されている。この耐熱シール剤は、使用時の熱により、つまり溶湯Mの熱により、焼成されて耐熱セラミックスプール部1Rが形成される。耐熱セラミックスプール部1Rは、軸線P1回りのリング状に形成されている。耐熱セラミックスプール部1Rは、合成されると膨張するムライトで形成されており、径方向および高さ方向に膨張する。この結果、耐火物層30の外周部の上部と鉄皮32の内周部の上部との境界領域をシールするシール性を高める。なお、焼成前の耐熱シール剤は、カイアナイトおよびアンダルサイトのうちの少なくとも一方を必要に応じて含有できる。耐熱セラミックスプール部1Rは鉄皮32の高さ寸法の中央の位置Hmよりも上側に位置にする。鉄皮32はこれの上側からも激しく加熱されるため、鉄皮6の上側は激しい高温環境に晒されるため、シール性を高めることが好ましいためである。
【0045】
図7に示すように凹状プール部1Wおよび耐熱セラミックスプール部1Rの断面ほぼ三角形状とされており、鉄皮32の内壁面に沿った斜辺部101と、上側の斜辺部102と、下側の斜辺部103と、交差部104とをもつ。そして斜辺部102の長さは長いため交差部104が相対的に下側に位置する。このため耐火物層30のうち斜辺部102に対面する部分30x(図7参照)の径方向(矢印DA方向)の厚みが確保される。
【0046】
(実施形態9)
本実施形態は前記した図7および図8に示す実施形態8と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図7および図8を準用する。耐熱シール剤は、シール層38および耐熱セラミックスプール部1Rを形成する。耐熱シール剤は、実施形態1と同様に、アルミナ粒子(Al2O3)およびマグネシア粒子(MgO)を主要成分(有効成分)として含有しており、使用時の熱により合成されてスピネルを形成する。なお、焼成前の耐熱シール剤は、カイアナイトおよびアンダルサイトのうちの少なくとも一方を必要に応じて含有できる。
【0047】
(実施形態10)
図9は実施形態10を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。図9に示すように、筒状ポーラス耐火物1X(耐火物)の外周部と筒状の外側鉄皮6の内周部との境界領域には、軸線P1回りのリング状の凹状プール部1W1,1W2が形成されている。凹状プール部1W1,1W2は、筒状ポーラス耐火物1Xの外周部に1周するように形成されている。組付時には、凹状プール部1W1,1W2に耐熱シール剤が装填されている。この耐熱シール剤は、使用時の熱により、つまり通路7を通過する溶湯の熱により、焼成(合成)されて耐熱セラミックスプール部1R1,1R2を形成する。耐熱セラミックスプール部1R1,1R2は、軸線P1回りのリング状に形成されており、焼成より膨張するムライトまたはスピネルで形成されている。この耐熱セラミックスプール部1R1,1R2は、筒状ポーラス耐火物1Xの円錐形状の外周部の上部と筒状の外側鉄皮6の円錐形状の内周部の上部6uとの境界領域をシールしている。殊に、耐熱セラミックスプール部1R1,1R2は、外側鉄皮6の厚みよりも厚く、径方向(軸線P1に対して直交する方向)への残存膨張量が良好に確保される。この結果、筒状ポーラス耐火物1Xの外周部の上部と、筒状の外側鉄皮6の上部6uとの境界領域を良好にシールできる。ここで、上部は、鉄皮6の高さ寸法HAの半分の高さ位置Hmよりも上側を意味する。耐熱セラミックスプール部1Rは鉄皮6において位置Hmよりも上側に位置する。殊に、位置Hxよりも上側に位置することが好ましい。この結果、ガスプール19などに吹き込まれたガスが当該境界領域から外側鉄皮6の上端6up側に漏れることが効果的に抑制される。筒状ポーラス耐火物1Xは多数の気孔を有するポーラス質であるため、膨張が気孔で吸収されるため、膨張には限界がある。この点本実施形態によれば、リング状の耐熱セラミックスプール部1R1,1R2が位置Hmよりも上側において高さ方向に複数段(2段)で形成されているため、膨張量の確保に有利である。
【0048】
図9に示すように、上側の耐熱セラミックスプール部1R1の厚みをa11として示す。下側の耐熱セラミックスプール部1R1の厚みをa12として示す。この場合、a11>a12の関係とされている。筒状ポーラス耐火物1Xの上部と筒状の外側鉄皮6の上部との境界領域を良好にシールできる。使用時には鉄皮6は上方からも激しく加熱されるため、鉄皮6の上部はより激しい環境に晒される。このためa11>a12の関係により耐熱シール剤の効果をより効果的に発揮することができる利点が得られる。この結果、ガスプール19などに吹き込まれたガスが当該境界領域から外側鉄皮6の上端6up側に漏れることが抑制される。耐熱シール剤は実施形態1と同様に、使用時の熱により合成されてムライトまたはスピネルを形成する。なお、焼成前の耐熱シール剤は、カイアナイトおよびアンダルサイトのうちの少なくとも一方を必要に応じて含有できる。但し使用環境によっては、a11<a12、あるいは、a11=a12の関係とされていても良い。
【0049】
図9に示すように、筒状ポーラス耐火物1Xの上部は円錐形状とされており、径方向(DA方向)の厚みが小さくされている。このため、筒状ポーラス耐火物1XのDA方向の厚みをできるだけ確保すべく、相対的に上側に位置する凹状プール部1W1および耐熱セラミックスプール部1R1の断面は、ほぼ三角形状とされている。但し、相対的に下側に位置する凹状プール部1W1および耐熱セラミックスプール部1R1の断面は、ほぼ四角形状または台形状とされている。耐熱セラミックスプール部1R1は下側であるため、ポーラス耐火物1XのDA方向の厚みを確保できるためである。
【0050】
(実施形態11)
図10は実施形態11を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。図10に示すように、筒状ポーラス耐火物1Xの外周部の上部には、これよりも気孔率が少なく緻密なリング状の緻密耐火物1Mが同軸的に設けられている。緻密耐火物1Mの外周部と筒状の外側鉄皮6の内周部との境界領域には、つまり、緻密耐火物1Mの外周部には、軸線P1回りにリング状の凹状プール部1W1,1W2が上下複数段に形成されている。凹状プール部1W1,1W2は、緻密耐火物1Mの外周部において1周するように形成されている。組付時には、凹状プール部1W1,1W2には未焼成(未合成)の耐熱シール剤が装填されている。焼成前の耐熱シール剤は、カイアナイトおよびアンダルサイトのうちの少なくとも一方を必要に応じて含有できる。この耐熱シール剤は、使用時の熱により、つまり通路7を通過する溶湯の熱により、焼成(合成)されて耐熱セラミックスプール部1R1,1R2を上下に形成する。耐熱セラミックスプール部1R1,1R2は、軸線P1回りのリング状に形成されており、焼成より膨張するムライトまたはスピネルで形成されている。耐熱セラミックスプール部1R1,1R2の内周側は、高い緻密性をもつ緻密耐火物1Mとされているため、耐熱セラミックスプール部1R1,1R2の径方向の膨張は良好に確保され、前記した境界領域におけるシール性が向上する。
【0051】
(試験例)
耐熱セラミックスプール部1Rなどを形成する耐熱シール剤について試験を行った。この試験例では、耐熱シール剤のうちセラミックスは、質量比で、75マイクロメートル以下のアルミナ粒子(Al2O3)を70%、10マイクロメートル以下のアルミナ粒子(Al2O3)を15%、1マイクロメートル以下のシリカ粒子(SiO2)を15%の配合にされていた。そして分散媒である水とセラミックスとを混合して耐熱シール剤が形成されていた。第1部材(材質:ハイアルミナ)と第2部材(材質:ハイアルミナ)との境界領域にこの耐熱シール剤を塗布した。塗布厚みは1ミリメートルとした。そして、外側からバーナの燃焼火炎で1500℃に加熱しつつ、ガスを入口から出口に向けて流した。そして出口から排出されるガスのリーク流量を測定した。ノズルの背圧については0.2kg/cmを保持した。比較例として、従来から使用しているモルタルを使用し、試験例と同様な条件で試験を行った。
【0052】
試験結果を図11に示す。図11において●印は本発明の試験例を示す。◆は比較例を示す。図11の◆印として示すように、比較例では、試験開始から20分間を経過した頃から、リークするガス流量が増加している。また図11の●印として示すように、試験例では、試験開始から120分間を経過しても、リークするガス流量は増加していない。このことから本発明に係る耐熱シール剤は高温領域における高いシール性が安定して得られることがわかる。
【0053】
試験開始から120分間経過したシール層の一例について光学顕微鏡で観察した。その結果を図12に示す。図12に示すように、ノズル本体にシール層は密着していた。ノズル本体とシール層との境界をみると、一部に溶融が発生している可能性があるとも推定される。微細なシリカ粒子が溶融したものと考えられる。シール層に島状の気孔(黒色部分)が発生しているが、気孔は開放気孔ではなく、閉鎖気孔とされていた。このことからも本発明のシール層のシール性が向上していることがわかる。ムライト合成により反応前よりも体積膨張が影響しているものと推察される。閉鎖気孔は体積膨張に有利と考えられる。またシール層において気孔以外のセラミックス部分は緻密であった。このことからも本発明のシール層のシール性が更に向上していることがわかる。
【0054】
(その他)本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。第1部材と第2部材との組み合わせは、耐火物−耐火物、金属−金属、耐火物−金属、金属−耐火物の組み合わせでも良いものである。耐熱シール剤としてモルタル(mortar)としても良い。モルタルは、砂(細骨材)とセメントと水とを練り混ぜて作るバインダである。本発明の高温組付体の用途としても、溶鋼、溶銑、アルミニウム溶湯、チタン溶湯等の金属溶湯が使用される高温領域、高温のガスに晒される高温領域などに広く使用できる。
【符号の説明】
【0055】
1Xは筒状ポーラス耐火物、1Wは凹状プール部、1Rは耐熱セラミックスプール部、1は上段ポーラス耐火物、2は下段ポーラス耐火物、3は緻密質耐火物、3aは上段緻密質耐火物、3bは下段緻密質耐火物、4は上段ガス導入通路、5は下段ガス導入通路、6は外側鉄皮、7は通路、8はシール層、9は鉄皮を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属または耐火物で形成された第1部材と、前記第1部材に対向する金属または耐火物で形成された第2部材と、前記第1部材と前記第2部材との境界領域に配置されるように前記第1部材および前記第2部材のうちの少なくとも一方に形成された凹状プール部と、前記凹状プール部に装填され使用時の熱により合成されて体積膨張する耐熱シール剤を焼成して形成された耐熱セラミックスシール部とを具備することを特徴とする高温組付体。
【請求項2】
請求項1において、合成されると体積膨張するセラミックスはムライトであり、前記耐熱シール剤は第1セラミックス粒子および第2セラミックス粒子を含み、前記第1セラミックス粒子はシリカで形成され、前記第2セラミックス粒子はアルミナで形成されていることを特徴とする高温組付体。
【請求項3】
請求項1において、合成されると体積膨張するセラミックスはスピネルであり、前記耐熱シール剤は第1セラミックス粒子および第2セラミックス粒子を含み、前記第1セラミックス粒子はマグネシアで形成され、前記第2セラミックス粒子はアルミナで形成されていることを特徴とする高温組付体。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、前記第1セラミックス粒子および前記第2セラミックス粒子の一方の粒径は、30マイクロメートル以下であり、他方の粒径は200マイクロメートル以下であることを特徴とする高温組付体。
【請求項5】
請求項1〜4のうちの一項において、前記耐熱シール剤におけるセラミックスを100%とするとき、質量比で、アンダルサイトおよびカイアナイトのうちの一方または双方が0.01〜40%含有されていることを特徴とする高温組付体。
【請求項6】
合成されると体積膨張する複数種類のセラミックス粒子を含有する耐熱シール剤と、第1部材と、第2部材とを用意する第1工程と、
前記第1部材と前記第2部材との境界領域に形成された凹状プール部に前記耐熱シール剤を装填させた状態で、少なくとも前記第1部材と前記第2部材とを組み付けて組付体を形成する第2工程と、
前記組付体の前記第1部材と前記第2部材との境界領域に形成された前記凹状プール部に前記耐熱シール剤を装填させた状態で、前記組付体の使用時における前記組付体の使用温度、前記組付体の使用前における前記組付体の予熱温度、前記組付体の搬入前における前記組付体の加熱温度のうちのいずれか少なくとも一つで前記耐熱シール剤を加熱して焼成させ、前記複数種類のセラミックス粒子を合成させて体積膨張する合成セラミックスを形成して前記組付体の前記第1部材と前記第2部材との境界領域をシールする第3工程とを含むことを特徴とする高温組付体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−55944(P2012−55944A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203079(P2010−203079)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000220767)東京窯業株式会社 (211)
【Fターム(参考)】