説明

高温腐食保護用の付着性金属酸化物薄膜コーティングの熱水堆積

金属酸化物層は、表面を前駆体溶液に高温で晒すことにより構造の金属又はセラミック表面上にin situで堆積させることができる。前駆体溶液は、有機金属、酸化剤、界面活性剤、キレート剤、及び水を含む。前駆体溶液は構造に注入され、所定期間に亘り所定の温度、pHレベル、及び圧力に維持される。in situで堆積させて得られる金属酸化物層は、構造内部の表面に永久的に結合し、且つ堆積後の熱処理を必要としない。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
技術分野
本出願は、共に「高温腐食保護用の付着性金属酸化物薄膜コーティングの熱水堆積」と題する継続中の2002年10月30日出願の米国特許出願第60/422,745号及び2003年6月11日出願の第10/460,609号の優先権を主張するものであり、これらの出願を本明細書において参照することによりその内容を本発明の開示に包含する。
【0002】
背景技術
沸騰水型原子炉(BWR)は炉心、圧力容器に収容される内部構造、及び関連システムから成る蒸気生成システムである。原子炉の炉心において生成される熱によって水が沸騰して蒸気を発生させ、この蒸気を使用して複数のタービン発電機を駆動し、よって電気エネルギーを生成する。
BWRシステムに関する問題は、金属成分の多くが高温且つ高圧の流体に晒され、これらの流体によって電気化学腐食及び粒間応力腐食割れ(IGSCC)が生じることである。IGSCCは主要な金属成分を不良にするので、IGSCCを緩和する対応策の開発が望まれる。電気化学腐食はBWRの陽極領域から陰極領域に流れる電子によって引き起こされる。金属成分のIGSCCは、BWRシステムを流れる流体の酸化性分子に晒されることに起因する。特に、原子炉の炉心を冷却するために使用する水は、放射線分解によって一部分解され、酸化性ラジカル及び還元性ラジカルに分かれる。
【0003】
電気化学腐食電位(ECP)は、BWRの露出金属表面上で生じる酸化/還元(REDOX)反応の指標である。REDOX反応は、水に溶解しているO、H及びHの濃度によって変化する。ECPは、交換電流密度を下げて酸素及び過酸化水素を減らすことにより下げることができる。ECPは、交換電流密度を上げて水素を酸化することによっても下げることができる。ECPプローブは、BWRシステムのECPレベルをモニターするために利用することができる。ECPレベルは金属成分のIGSCCに関連する。特に、IGSCCは、ECPが、標準水素電極換算式による−230mVの「臨界値」を超えると加速する。これとは異なり、ECPがこの臨界値を下回ると、金属成分のIGSCCは無視することができる。
腐食劣化及びIGSCCの危険に晒される大きな構造の例として、商用原子力発電所のBWRの内部炉心が挙げられる。沸騰水型原子炉では、放射線分解によって大量の酸化剤、すなわち主としてO及びHが生成される。これらの酸化剤は冷却水に溶解し、ステンレススチール及びNi系合金チューブ、パイプ、及び容器の電気化学腐食電位(ECP)が上昇してIGSCCが生じるレベルに達する。
【0004】
また、原子炉の炉心の中性子が励起されると、Co−60及びN−16のような放射性核種が生成される。Co−60放射性核種は、ステンレススチール及びNi系合金(例えばアロイ600)の上に形成されるスピネル酸化物のような酸化膜の表面に吸収されるので、これらの構成要素の放射能が増大する。これらの構成要素の放射能の増大は、原子炉作業者が放射能に晒される機会が増えるという望ましくない結果につながる。
BWRシステムの臨界値を下回るようにECPを維持することによって腐食及びIGSCCを最小化することが望まれる。ECPを下げる幾つかの公知の方法がある。ECPは、高濃度の水素をBWRシステムを流れる供給水に加えることにより下げることができる。水素は、水に含まれる酸化剤と、水が接触するステンレススチール及びNi系合金の表面の上で結合する。水素が酸化剤と反応することにより、酸化剤が露出金属成分と反応し、ECPを上昇させる現象を防止することができる。水素注入設備に関する問題は、これらの設備を設置するためのコストが高いことと、設備によって炉心以外の原子炉構成要素への放射能蓄積が大きくなることである。水素注入設備に関する別の問題は、BWRシステムの構成要素の全てをIGSCCから保護することができる訳ではないことである。
【0005】
水素注入の効率を高くする方法では、白金(Pt)及びパラジウム(Pd)のような貴金属から成る層を露出表面に堆積させる。貴金属は、酸化剤と注入水素との反応を加速させる触媒材料として作用する。貴金属によって効率が高くなるので、ECPを臨界電位よりも低くなるように下げるために必要な水素の量が減る。貴金属コーティング(NMC)工法又はドーピング技術によって水素注入効率が高くなるが、水素注入はそれでもなお必要である。
ECPを下げる別の方法では、ZrOのような誘電体コーティングをBWRシステムの金属成分の上に堆積させる。絶縁性コーティングをECPを下げ、水素を供給水に注入することなく高温BWRを利用する設備においてIGSCCを抑制することができる。誘電体層は、BWRの露出表面から電荷が移動する現象を防止する。電荷の移動が少なくなることにより、酸化性化学種を生成するREDOX反応の交換電流密度が低くなる。REDOX反応を最小化することにより、ECPレベルも下がる。更に、ECPを臨界レベルよりも低いレベルに維持すると、IGSCCが最小化される。
【0006】
金属酸化物誘電体から成るコーティングを形成する多くの公知の方法があり、これらの方法には、化学気相成長(CVD)、物理気相成長(PVD)、溶射、イオンスパッタリング、ゾル−ゲル、電気泳動堆積、電気化学堆積などが含まれる。これらの金属酸化物堆積法の多くは、コーティングを複雑で入り組んだ形状を有するBWR構成要素に堆積させることには容易に適用できない複雑な機械を必要とする。公知の方法を使用して、チューブ及びパイプの内部表面のような嵩張った複雑な構造を有する多くのBWR構成要素の上に金属酸化物を堆積させることは極めて難しい。
【0007】
発明の概要
本発明は、BWRシステムにおいてIGSCCが観察されるレベルよりも低い値にECPを下げることができる、薄い、高密度の付着性金属酸化物コーティングを金属表面に堆積させるin−situ法(現場で実行される方法)である。金属酸化物層は、液体前駆体を構造体に注入し、前駆体を加熱することにより堆積させる。金属酸化物は、前駆体と接触し、約170℃の温度にまで加熱される構造体の領域の上に堆積させる。本発明による金属酸化物コーティング法は、金属酸化物を、BWRシステムのような複雑な構造体に組み込まれたチューブ、パイプ、及び容器の内側表面の上に堆積させる際に特に有用である。
【0008】
一実施形態では、酸化ジルコニウム層をBWRシステムの内側のステンレススチール表面の上に堆積させる。液体前駆体は2つの圧力容器に保存し、これらの圧力容器から構造体に注入する。有機金属化合物を含む第1圧力容器及び混合溶液を含む第2圧力容器は、適切なバルブ、パイプ、及び器具類によってBWRシステムに接続される。有機金属化合物は、Zr−n−プロポキシド及び1−プロパノールを含むことができる。混合溶液は、酸化剤、界面活性剤、キレート剤、及び水を含むことができる。有機金属及び混合溶液は、IGSCCから保護する対象となる構造体に、バルブを開いて流体を構造体に流し込むことにより2つの圧力容器から注入される。構造体が満たされると、液体前駆体は全ての露出している内側表面と接触するようになってZrO層が表面に堆積する。構造体及び流体の温度はヒータによって高温に維持される。注入された液体前駆体は構造体内部を流れ、そして構造体の内圧を制御する圧力開放バルブを通って出て行く。
ZrOの結合は構造体材料との化学反応を通して行なわれる。前駆体溶液中の酸化剤によって構造体の表面が酸化される。スチール構造体では、酸化物によって酸化鉄膜が露出表面の上に形成される。酸化剤は露出しているスチール基板とも反応してFe2+陽イオン及びFe3+陽イオンを生成する。これらの陽イオンは前駆体中のヒドロキシルイオンと結合してFe(OH)及びFe(OH)を形成する。界面結合が、露出しているステンレススチール表面上のZrOと酸化鉄膜との間に形成される。
【0009】
種々の堆積処理条件は、堆積するZrO層が非多孔質で、高密度で、均一な厚さを有し、且つ露出表面に固く結合するように、制御システムによって維持される。堆積条件は、圧力変換器、熱電対、酸素プローブ、基準電極、及びpHプローブによりモニターする。センサからのフィードバックに基づいて、制御システムは種々の調整を設備構成要素に対して行なうことができる。例えば、堆積中において、開放バルブ、流量バルブ、及びポンプ圧力を調整することにより圧力を制御することができる。前駆体の温度は、ヒータに供給される電力を調整することにより制御することができる。前駆体の化学混合物は、前駆体成分の注入量を制御することにより調整することができる。pHレベルは、制御システムによる前駆体の滴定によって制御する。
特に、金属酸化物層のスチール表面上への堆積は、前駆体溶液のpHレベル及び構造体の表面電荷密度の影響を受ける。界面結合を強くするためには、目的とする表面及びジルコニア粒子が逆極性の電荷を有さねばならない。表面電荷密度は前駆体流体のpHの影響を受ける。pHが低いと、ジルコニア粒子はより一層正に帯電し、pHが高いと表面はより一層負に帯電する。好適な実施形態では、表面電荷密度はゼロであり、pHレベルは約5.5〜7.0である。pHがこの範囲に収まる場合、構造体表面及び粒子は逆極性に帯電し、そして金属酸化物の堆積中に界面結合が形成される。pHレベルがこの範囲から外れると、表面及び粒子は同じ極性の電荷を有し、金属酸化物の堆積が生じない。
【0010】
本発明による方法では、所望の属性を持つ酸化ジルコニウム膜の堆積を可能にするために制御しなければならない重要因子(すなわち、前駆体溶液化学反応及び温度、溶液のpH、及び流量のような堆積パラメータ)を特定している。これは、in situで堆積が行われるという点で、先行技術による金属酸化物の堆積方法を改良したものである。多くの金属酸化物堆積システムは特殊な設備を必要とし、広い表面、又は複雑な形をした表面の上に金属酸化物を均一に堆積させることができない。ゾル−ゲル法、電気泳動堆積法、及び無電解メッキ法のような幾つかの公知の金属酸化物堆積方法は、乾燥及び焼成のような堆積後の熱処理を必要とする。これらの堆積後の熱処理手順は、BWRに見られるような大きく複雑な構造に適用する場合には実用的ではない。本発明による金属酸化物堆積方法は、堆積後の熱処理が不要となり、堆積方法が簡素化された点で、これらの堆積方法の改良である。
以下に、例示のみを目的とする添付図面に示す本発明の実施形態を参照しながら例本発明について記載する。
【実施例】
【0011】
本発明によるシステムの実施形態について図1を参照しながら記載する。例示としての構造は水ループ101であり、このループは、壁の厚みを横切る大きな温度勾配に晒される工業部品である。この種の構造体には、原子力発電所の燃料棒クラッディング及び精製所の加熱炉のパイプが含まれる。
【0012】
有機金属化合物が第1圧力容器111に収容され、有機溶剤が第1コンテナ113に貯蔵される。ポンプ121は有機溶剤をポンピングして第1圧力容器111に送り込み、第1圧力容器111を加圧する。第2圧力容器117は、キレート剤、酸化剤、界面活性剤、及び水を含む混合溶液を貯蔵する。第2コンテナ119に保存される純水はポンプ121によってポンピングされて第2圧力容器117に送り込まれ、第2圧力容器117を加圧する。複数のバルブ123を使用して第1圧力容器111及び第2圧力容器117から構造体151に向かう流体の流れを制御する。この構造体の上には、金属酸化物層を堆積させることになる。有機金属化合物及び混合溶液はポンピングされて搬送ライン131に送り込まれ、それらがこの搬送ラインにおいて混合されて前駆体を形成する。ポンプ121及びバルブ123は第1圧力容器111及び第2圧力容器117内部の圧力を制御する。
前駆体は、構造体135に流入する前にプレヒータ139によって加熱することができる。次に前駆体は構造体135に流入して金属酸化物層を一連の物理及び化学プロセスを経て堆積させる。主要構造体135内にある間、前駆体は、構造体135の周辺に取り付けられるバンドヒータ133によって加熱される。金属酸化物層は、前駆体流体と接触し、且つ正常な堆積温度が維持される構造体135表面の上に堆積する。金属酸化物は構造体135の内側表面の上だけでなく、構造体135の内部に位置して、加熱された前駆体に晒される全ての物体151の上に堆積する。
【0013】
金属酸化物の堆積プロセスの間、温度、圧力、及びpHレベルを含むパラメータは、適切なプローブ及び制御装置(図示せず)によってモニターされる。制御装置は最適な金属酸化物堆積条件を維持する。前駆体の温度は熱電対137によりモニターする。モニターされる温度が最適範囲から外れると、温度制御装置はバンドヒータ133に供給される電力を調整して構造体135及び前駆体の温度を補正する。具体的には、モニターした温度が低すぎる場合にバンドヒータ133に供給される電力を増大させ、モニターした温度が高すぎる場合に同電力を減らす。
圧力トランスデューサ127は構造体135の内圧及び圧力開放バルブ129をモニターする。開放バルブ129は、内圧が所定の設定圧力を超えないように設定される。内圧が設定圧力を超えると、開放バルブ129は構造体135から流出する前駆体の流量を増大させる。制御装置は前駆体成分の構造体135への流入量を減らすこともできる。逆に、内圧が所望レベルを下回ると、開放バルブ129は構造体135から流出する前駆体の流量を減らす。制御装置は、バルブ123を開くか、又はポンプ121の出力を増大させることにより、前駆体の構造体135への流入量を増やすこともできる。
【0014】
搬送ライン内の溶解酸素レベルは酸素プローブ125によってモニターする。絶縁層を持たないBWRシステムでは、構造体のECPは酸素レベルとともに増大する。ECPは、外部基準電極147を使用してモニターする。ECPレベルは腐食電位及びIGSCCに対する脆弱性を示す。前術のように、ECPが約−230mVを下回ると、IGSCCは無視できる。ECPレベルをモニターすることにより、金属酸化物層の有効性を判断することができる。金属酸化物堆積プロセスの前に、ECPレベルは−230mVよりもはるかに高くなり得る。金属酸化物が堆積すると、ECPレベルは−400mVを下回り、酸素レベルに関係なくIGSCCを効果的に軽減する。
使用済み前駆体は冷却ジャケット141を通過して流体の温度を下げ、そして構造体135から圧力開放バルブ129を通って出て行く。使用済み前駆体は一時貯蔵タンク145に流入し、このタンクでpHプローブ143によってpH値が測定される。制御装置はpHレベルを検出し、そして滴定によって前駆体成分の混合物を調整することによりpH誤差を補正することができる。制御装置は、前駆体成分の構造体135への流入量を調整することによって前駆体を滴定することができる。制御装置は、必要に応じてバルブ123を調整することにより前駆体のpHレベルを補正する。
【0015】
図2は、壁の厚みを横切る温度勾配が小さい温度に晒される構造体を示しており、例えば原子力発電所の冷却回路の耐熱絶縁パイプ及びチューブのような用途に適用した場合を示している。構造体は図1の水ループに類似しているが、プレヒータ及びバンドヒータではなくオートクレーブ191を利用して流体を加熱する点が異なる。同じ参照番号が付された構成要素は、図1を参照して記載したものと同じように機能する。図2では、チューブ状試験用試料161及びテフロンシリンダー163がオートクレーブ191内部に配置されている。テフロンシリンダー163は試験用試料161の外側表面を覆っている。試験用試料161の内側表面のみが加熱された前駆体に晒され、金属酸化物層により覆われる。金属酸化物はテフロンシリンダー163には付着しない。前駆体溶液混合物、内部温度、内圧、及びpHを制御する機能を備える種々の他のシステム構成も本特許出願の技術範囲に含まれる。
【0016】
金属酸化物層は、目標となる構造と前駆体溶液との一連の化学反応によって金属表面又はセラミック表面の上に堆積する。次に、酸化ジルコニウム層をスチール表面の上に堆積させるために使用する本発明の方法の一の実施形態による化学反応について開示する。前駆体の組成は、ジルコニウム酸イソプロピル−有機金属、1−プロパノール−有機溶剤、ZrO(ClO−酸化剤、C1225SNa(SDS)−界面活性剤、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)−キレート剤、NaOH,及び水を含む。酸化ジルコニウム堆積反応は、有機金属の加水分解、懸濁粒子サイズの微細化、表面への懸濁粒子の吸着、及び界面結合形成を含む。
ジコニウムイソプロポキシドの加水分解は、等式nZr(OR)+4nHO=nZr(OH)+4nROHにより表わされる。ここで、「R」は任意の有機鎖を指す。ジコニウムイソプロポキシドの加水分解によってジルコニア懸濁粒子が生成される。加水分解速度が非常に大きく、大量の有機金属が短時間で加水分解する場合、ジルコニア粒子は成長して不所望な凝集体となり得る。加水分解速度は、混合溶液圧力チャンバーへの水の注入量と、有機金属圧力チャンバーへの有機溶剤の注入量の比を制御することにより安定させる。水及び有機溶剤の濃度が高いと加水分解速度が遅くなる。
【0017】
前駆体中のジルコニア懸濁粒子のサイズは、酸化ジルコ二ウム層の堆積に影響を及ぼす別の因子である。粒子サイズを最小化すると懸濁液の安定性が増し、懸濁粒子が前駆体とともに所望の堆積位置にまで流れることができる。また、粒子が小さいことによって、より高密度の酸化ジルコニウム層が生成され、この高密度の酸化ジルコニウム層は目標となる構造に固く結合する。粒子が大きいと、結合力の弱い緩んだコーティングが形成されてしまう。
ジルコニア懸濁粒子の大きさは、EDTAキレート剤への懸濁粒子の吸収に影響される。高温(>100℃)では、EDTAは懸濁粒子と複合化する。EDTAとの複合化が生じると、大きな粒子が部分的に溶解することによって粒子サイズが小さくなる。酸化ジルコニウム堆積を最適化するには、これらの粒子が完全に溶解してしまうのを避けながら、できる限り小さな、又は優先的に200nm未満の大きさの粒子を生成することが望ましい。粒子をEDTAに完全に溶解させることがないようにすることが望ましいのは、金属酸化物コーティングを堆積させるために粒子が必要であるからである。粒子の溶解プロセスは、pH、流量、又は滞留時間を調整することにより制御する。ジルコニア粒子の複合化反応は、次式で表わされる。
Zr(OH)+HEDTA=Zr−HEDTA2++2OH+2H
【0018】
酸化ジルコニウム層のスチール構造への付着は、コーティングによって覆われることになる構造表面に懸濁粒子がどの程度吸着されるかに影響される。金属表面に懸濁粒子が吸着される現象は、構造の表面電荷の変化によって生じる。表面電荷は、表面のヒドロキシ基のプロトン化及びイオン化の影響を受ける。これらのプロセスでは、前駆体のpHに応じて−OH又は−O単位が露出金属表面の上に形成される。
pHレベルが低いと、より多くのHイオンが前駆体に含まれ、次の反応が生じる。
(M−OH)surface+Hsolution=(M−OHsurface
pHレベルが高いと、より多くのOHイオンが含まれ、次の反応が生じる。
(M−OH)surface+OHsolution=(M−O)surface+H
これらの化学式では、(M−OH)surface、(M−OHsurface,及び(M−O)surfaceは、酸化膜又は酸化懸濁粒子の表面基である。これらの表面基は酸−塩基平衡の一部である。各反応サイトは特定の面積を占有するので、露出表面の単位面積当たりに固定数の反応サイトが存在する。
【0019】
図3は、表面電荷密度とpHレベルの関係をグラフで示したものである。横軸はゼロに等しい表面電荷に対応する。横軸よりも上方の領域は、(M−OHsurfaceがより多く存在する条件を表わし、同軸の下方の領域は(M−O)surfaceがより多く存在する条件を表わす。表面電荷(ゼータ電位)がゼロの場合、(M−OHsurface基及び(M−O)surface基の数が等しい。表面電荷がゼロの場合、この条件は等電点(IEP)又は「ゼロ電荷点のpH」(PZC)として知られる。
【0020】
膜堆積システムは、Fe、Cr及びNiOのような金属酸化物を含む既存の膜によって覆われるステンレススチール酸化表面と、ZrO懸濁粒子と、及び溶液から構成される。従って、上記解析によれば、ステンレススチール酸化表面及びZrO粒子の両方の表面電荷密度(及びゼータ電位)は、溶液のpHの関数である。一例として図3を参照すると、曲線303及び305はそれぞれ、前駆体溶液のpH値の変化に伴うステンレス酸化表面及びZrO懸濁粒子の表面電荷を表わしている。
横軸は表面電荷密度=0の場合を表わす。適切な堆積を行なうためには、ZrO懸濁粒子の表面電荷(ゼータ電位)は、目標となるステンレススチール酸化表面の電荷と逆極性である必要がある。pH値がPZC(ゼロ電荷点)301とPZC302との間に位置する場合、ZrO懸濁粒子の表面電荷は正であり、目標となるステンレススチール酸化表面の表面電荷は負である。例えば、前駆体溶液がPZC301とPZC302の間のpH311である場合、懸濁粒子の表面電荷は点321で示すように正であり、ステンレススチール酸化表面の表面電荷は点322で示すように負である。pH311では、懸濁粒子及び目標となるステンレス表面は逆極性に帯電し、互いに対して付着するので、正常なZrOの堆積が容易になる。in−situでの堆積の間、前駆体溶液のpHレベルを滴定して前駆体のpHレベルをPZC301とPZC302の間に調節する。
【0021】
前駆体溶液のpHがPZC301とPZC302の間にない場合、ZrO粒子と目標となる表面が同じ極性の表面電荷を有するためZrOの堆積が生じない。例えば、PZC302よりも低いpH312では、目標となる表面324の表面電荷とZrO粒子323の表面電荷が共に正の帯電を有するため、金属酸化物懸濁粒子が堆積しない。同様に、目標となる表面306の表面電荷とZrO粒子325の表面電荷が共に負の帯電を有するため、PZC301よりも高いpHであるpH313では堆積は生じない。
金属酸化物の堆積の間、界面結合が堆積金属酸化物と露出表面との間に形成される。金属酸化物コーティングの界面結合は、前駆体酸化剤ZrO(ClOの化学反応により形成される。酸化剤によって、目標となる表面が酸化され、そして共有結合が構造体表面と酸化ジルコニウムとの界面に形成される。図4及び5は、金属酸化物が露出金属に結合する形成プロセスにおいて生じる化学反応を示している。目標となる表面403は、酸化鉄膜405を有する硬質スチール表面を表わす。
【0022】
図4を参照すると、酸化剤ZrO(ClOは2つの化学反応を促進してZrO層をステンレススチールに結合させる。第1の反応はスチール403の溶解であり、これによりスチール403と酸化鉄膜405との界面にFe2+又はFe3+陽イオンが生成される。これらの陽イオンは水に拡散し、ヒドロキシルイオンと結合してFe(OH)又はFe(OH)を形成する。溶解反応によって放出される電子は、陰極反応2e+HO+ClO=2OH+ClOにより消費される。鉄イオン及びヒドロキシルイオンは更に、化学式Fe2++2OH=Fe(OH)に従って反応する。
酸化剤による第2の反応では、ZrO分子407が既に形成されている酸化鉄膜405に結合する。ClO及びFe(OH)は、酸化鉄とZrOの界面結合によって消費される。界面結合反応によって水及びClOが生成される。この反応は、目標となるステンレススチール表面と、目標となる表面に付着し、吸着されるZrO粒子との界面、及び粒子が目標となる表面に近接する(数マイクロメートル)場合はZrO粒子の間の界面で生じる。両方の状況において、Fe(OH)は界面に拡散して界面結合を形成することができる。しかしながら、粒子が目標となるステンレススチール表面から非常に離れている場合、結合反応はFe(OH)が不足するので生じない。結合反応は、高温においては拡散及び化学反応が速まることにより加速される。しかしながら、220℃よりも高温になると、腐食が進行しEDTAが分解するといった他の問題が生じる。EDTAの分解によって溶液の化学的性質及びpHが大きく変化し、堆積条件がなくなってしまう。
【0023】
図5は、酸化剤による第2の反応によって生じる、ZrO粒子407と酸化鉄膜405の間の分子界面結合を示している。酸化剤による第2の反応により、HO及びClOが生成される。界面結合によって酸化ジルコニウム層が形成され、この酸化物層は酸化鉄膜405及び目標となるスチール403表面に対して強固な界面結合を有する。この界面結合は、露出表面403上に緩い多孔質金属酸化物層を形成する弱い静電吸着力及び/又は水素結合よりも強い。
【0024】
ZrOを304のようなステンレススチール製のチューブの露出表面に堆積させる本発明による熱水法に関する好適な化学組成及び処理条件を実験により決定した。実験結果を以下に開示する。図1を参照して説明したように、堆積システムは、有機金属化合物を貯蔵する第1圧力容器111、有機溶剤を貯蔵する第1プラスチックコンテナ113、混合溶液を保存する第2圧力容器117、及び水を収容する第2コンテナ119を含む。本実験では、第1圧力容器111に貯蔵される有機金属は、Zr−n−プロポキシド(70%)100ml及び1−プロパノール110mlであった。コンテナ113に貯蔵される有機溶剤は1−プロパノール110mlであった。第2圧力容器117に貯蔵される混合溶液は、EDTA70g、ZrO(ClO10g、C1225SNa(SDS)1.0g、NaOH24g、及び水750mlであった。第2コンテナ119には純水を貯蔵した。前駆体成分は搬送ライン131に注入され、そこで混合され、そしてステンレススチールチューブ135の内側表面を通って流れる。第2圧力容器内の混合溶液のpHレベルは5.6である。
この実験では、特定の堆積条件を維持した。有機溶剤の1−プロパノールを1.5ml/分の流量で注入した。第2コンテナから第2圧力容器117に注入される水の注入量は15ml/分であった。堆積溶液の温度は170〜200℃に維持した。酸化ジルコニウム堆積中の流体圧力は約500psi〜1,500psiであった。酸素プローブ125により測定される酸素濃度は、濃度が3〜10ppmに維持した。pHプローブ143によって排出口で測定される廃棄溶液のpHは5.5〜7.0であった。チューブの内側表面は加熱された前駆体流体に10時間に亘って晒された。
【0025】
実験における堆積プロセスの最後で、均一な酸化ジルコニウムのコーティングがチューブ状の試験用試料の露出表面の上に形成された。コーティングは1〜4μmの厚さを有し、孔が無く、そして基板金属に良好に結合した。試験試料は走査電子顕微鏡及びエネルギー分散型測定装置(EDS)による解析法を使用して分析し、堆積膜がZrを含んでいることを確認した。試験試料に対してX線回折による解析を行なったところ、コーティングが単斜晶系のZrOであることが確認された。ACインピーダンスに関するスペクトル分析を行なったところ、酸化ジルコニウムコーティングの界面抵抗は約10Ωcmであった。酸化ジルコニウムコーティングの抵抗は、被覆されていないステンレススチール表面の、通常約300Ωcmの界面抵抗よりも有意に高かった。
上述のように、構造体のECPが標準水素電極換算式による値の−230mVを下回る場合、酸化ジルコニウム層は構造体がIGSCCを生じないように構造体を保護する。図6は、堆積プロセス中のプロセス温度の記録、及び実験チューブ試料のECPを示している。酸化ジルコニウムが堆積した実験試料のECPは、堆積プロセスの35時間内に、P−100mVから−400mV未満にまで下がった。ECPが−230mV未満に下がることによって、沸騰水反応炉用途では普通の高温水の中の304タイプのステンレススチールの腐食及びIGSCCが軽減される。
【0026】
本発明による金属酸化物堆積方法によって、薄い付着性の金属酸化物コーティングが形成され、この金属酸化物コーティングによって、高温及び低温での進行性環境において通常発生する腐食、IGSCC、酸化、及び放射能が軽減される。本発明による方法は、先行技術による金属酸化物堆積法よりも優れた幾つかの利点を有する。本発明による方法は複雑な工業設備を必要としない。本発明による方法は、単に前駆体をポンピングにより送り出して構造体と接触させ、コーティングにより覆う構造体において所望の温度及び圧力条件を維持することにより実行することができる。本発明による方法は、所望の結果を得るために堆積後の熱処理を行なう必要がないワンステップの手順を利用する。本発明による熱水堆積方法の適用温度は、CVD、イオンスパッタリング、クラッディング、及び溶射のような他のコーティング法の適用温度よりも低い。列挙したこれらの方法の温度は500℃に達し、望ましくない構造的変形及び熱応力を基板材料に生じさせる。
【0027】
本明細書では、金属酸化物層を構造体の上に堆積させるシステムについて記載した。特定の例示的実施形態を参照しながら本発明について説明したが、請求の範囲に示す本発明の広い技術思想及び技術範囲から逸脱せずに、種々の変形及び変更をこれらの実施形態に加え得ることが明らかであろう。従って、明細書及び添付図面は、制限的な意味ではなく例示として捉えられるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】金属酸化物堆積システムの第1の実施形態を示す図である。
【図2】金属酸化物堆積システムの第2の実施形態を示す図である。
【図3】表面電荷密度と金属酸化物を堆積させる前駆体溶液のpHレベルとの関係を示すグラフである。
【図4】金属酸化物を露出スチール表面に結合させる化学反応を示す図である。
【図5】露出スチール表面と金属酸化物との分子結合を示す図である。
【図6】金属酸化物堆積方法を実施する間のECPの変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物層を熱水によって堆積させる方法であって、
有機金属、酸化剤、界面活性剤、キレート剤、及び水を含む前駆体溶液を構造体に注入するステップ、
前駆体溶液を100℃よりも高い温度にまで加熱するステップ、
構造体の一部を加熱された前駆体溶液に晒すステップ、及び
前駆体溶液に晒された構造体内の表面上に金属酸化物層を堆積させるステップ
を含む方法。
【請求項2】
金属酸化物が酸化ジルコニウムであり、有機金属がZr−n−プロポキシドであり、堆積させるステップが、構造体内の表面上に酸化鉄層を形成し、酸化ジルコニウムを酸化鉄層に結合させることを含む、請求項1記載の金属酸化物層を熱水によって堆積させる方法。
【請求項3】
堆積させるステップの間に、構造体を300psi超の圧力に加圧するステップ
を更に含む、請求項1記載の金属酸化物層を熱水によって堆積させる方法。
【請求項4】
更に、加圧するステップが、構造体の内圧を圧力変換器によってモニターし、内圧が2,000psiを超える場合、圧力開放バルブによって内圧を下げることを含む、請求項1記載の金属酸化物層を熱水によって堆積させる方法。
【請求項5】
加熱するステップが、前駆体溶液の温度を熱電対によってモニターし、前駆体溶液の温度が100℃未満である場合、前駆体溶液と熱的に連通する電気ヒータに供給する電力を増大することを含む、請求項1記載の金属酸化物層を熱水によって堆積させる方法。
【請求項6】
加熱するステップが、前駆体溶液の温度を熱電対によってモニターし、前駆体溶液の温度が300℃超である場合、電気ヒータに供給する電力を減らすことを含む、請求項5記載の金属酸化物層を熱水によって堆積させる方法。
【請求項7】
堆積される金属酸化物が酸化ジルコニウムであり、有機金属がZr−n−プロポキシドであり、堆積させるステップが、構造体内の表面上に酸化鉄層を形成し、酸化ジルコニウムを酸化鉄層に結合させることを含む、請求項1記載の金属酸化物層を熱水によって堆積させる方法。
【請求項8】
酸化剤がZrO(ClOであり、堆積させるステップが、酸化剤と化学反応させて酸化ジルコニウムを酸化鉄層に結合させることを含む、請求項7記載の金属酸化物層を熱水によって堆積させる方法。
【請求項9】
キレート剤がエチレンジアミン四酢酸であり、注入するステップが、前駆体溶液中の懸濁粒子をキレート剤と複合化させることを含む、請求項7記載の金属酸化物層を熱水によって堆積させる方法。
【請求項10】
構造体内の表面が表面ステンレススチールであり、堆積させるステップが、構造体内の表面上に酸化鉄層を形成し、酸化ジルコニウムを酸化鉄層に結合させることを含む、請求項7記載の金属酸化物層を熱水によって堆積させる方法。
【請求項11】
構造体、
有機金属、キレート剤、界面活性剤、酸化剤、及び水を含む前駆体溶液、
構造体と流体連通して前駆体溶液の有機金属成分を構造体に注入する第1加圧容器、
構造体に取り付けられて、構造体に注入された前駆体溶液を加熱するヒータ、
構造体の温度をモニターする熱電対、
熱電対と連通してヒータを制御し、構造体内で前駆体溶液を100℃超の温度に維持する第1制御装置、及び
構造体と流体連通して、構造体を通過する前駆体溶液の流量を制御する圧力開放バルブ
を備え、金属酸化物から成る層を、100℃超の温度の前駆体溶液に晒される構造体内の表面上に堆積させる、金属酸化物層を堆積させるシステム。
【請求項12】
構造体と流体連通し、前駆体流体の酸化剤成分及び水成分を構造体に注入する第2加圧容器を更に備える、請求項11記載の金属酸化物層を堆積させるシステム。
【請求項13】
金属酸化物層が酸化ジルコニウムであり、有機金属がZr−n−プロポキシドである、請求項11記載の金属酸化物層を堆積させるシステム。
【請求項14】
酸化剤がZrO(ClOである、請求項11記載の金属酸化物層を堆積させるシステム。
【請求項15】
キレート剤がエチレンジアミン四酢酸である、請求項11記載の金属酸化物層を堆積させるシステム。
【請求項16】
構造体の内圧をモニターする圧力変換器、及び
圧力開放バルブを制御する圧力変換器と連通する第2制御装置
を更に備え、内圧が所定の低圧側レベルを下回る場合、圧力開放バルブが構造体を通過する前駆体流体の流量を減らすように動作する、請求項11記載の金属酸化物層を堆積させるシステム。
【請求項17】
構造体の内圧をモニターする圧力変換器、及び
圧力開放バルブを制御する圧力変換器と連通する第2制御装置
を更に備え、内圧が所定の高圧側レベルを超える場合、第2制御装置が圧力開放バルブを通過する前駆体流体の流量を増やすように動作する、請求項11記載の金属酸化物層を堆積させるシステム。
【請求項18】
前駆体溶液のpHレベルを測定するpHプローブ、及び
pHプローブ、第2加圧容器と連通する第3制御装置
を更に備え、第3制御装置は、溶液中の酸化剤及び水の比を調整して前駆体のpHレベルを約5.5〜7.0にする、請求項12記載の金属酸化物層を堆積させるシステム。
【請求項19】
前駆体溶液の酸素濃度を測定する酸素プローブを更に備える、請求項11記載の金属酸化物層を堆積させるシステム。
【請求項20】
前駆体溶液の電気化学腐食電位を測定する基準電極を更に備える、請求項11記載の金属酸化物層を堆積させるシステム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物層を熱水によって堆積させる方法であって、
有機金属、酸化剤、界面活性剤、キレート剤、及び水を含む前駆体溶液を構造体に注入するステップ、
前駆体溶液を100℃よりも高い温度にまで加熱するステップ、
構造体の一部を加熱された前駆体溶液に晒すステップ、及び
前駆体溶液に晒された構造体内の表面上に金属酸化物層を堆積させるステップ
を含む方法。
【請求項2】
堆積させるステップの間に、構造体を300psi超の圧力に加圧するステップを更に含む、請求項1記載の金属酸化物層を熱水によって堆積させる方法。
【請求項3】
更に、加圧するステップが、構造体の内圧を圧力変換器によってモニターし、内圧が所定の最大運転圧力を超える場合、圧力開放バルブを作動させることによって内圧を下げることを含む、請求項1記載の金属酸化物層を熱水によって堆積させる方法。
【請求項4】
加熱するステップが、前駆体溶液の温度を熱電対によってモニターし、前駆体溶液の温度が100℃未満である場合、前駆体溶液と熱的に連通する電気ヒータに供給する電力を増大することを含む、請求項1記載の金属酸化物層を熱水によって堆積させる方法。
【請求項5】
加熱するステップが、前駆体溶液の温度を熱電対によってモニターし、前駆体溶液の温度が所定の最大運転温度を超えて上昇した場合、電気ヒータに供給する電力を減らすことを含む、請求項4記載の金属酸化物層を熱水によって堆積させる方法。
【請求項6】
構造体内の表面上に酸化鉄層を形成するステップ
を更に含み、堆積される金属酸化物が酸化ジルコニウムであり、有機金属がZr−n−プロポキシドであり、堆積させるステップが酸化ジルコニウムを酸化鉄層に結合させることを含む、請求項1記載の金属酸化物層を熱水によって堆積させる方法。
【請求項7】
酸化剤がZrO(ClOであり、酸化鉄層への酸化ジルコニウムの結合が物理化学的プロセスを含む、請求項6記載の金属酸化物層を熱水によって堆積させる方法。
【請求項8】
キレート剤がエチレンジアミン四酢酸であり、注入するステップが、前駆体溶液中の懸濁粒子をキレート剤と複合化させることを含む、請求項6記載の金属酸化物層を熱水によって堆積させる方法。
【請求項9】
前駆体溶液に晒される構造体内の表面がステンレススチールであり、堆積させるステップが酸化ジルコニウムをステンレススチールに結合させる化学反応を含む、請求項6記載の金属酸化物層を熱水によって堆積させる方法。
【請求項10】
酸化ジルコニウム層を熱水によって堆積させる方法であって、
有機金属、酸化剤、界面活性剤、キレート剤、及び水を含む前駆体溶液を構造体に注入するステップ、
前駆体溶液を100℃よりも高い温度にまで加熱するステップ、
構造体の一部を加熱された前駆体溶液に晒すステップ、
構造体の酸化表面を酸化剤に晒すステップ、及び
化学反応により酸化ジルコニウムを酸化表面上に結合させることにより、酸化表面に酸化ジルコニウム層を堆積させるステップ
を含む方法。
【請求項11】
構造体から前駆体溶液を取り除くステップ
を更に含む、請求項10記載の酸化ジルコニウム層を熱水によって堆積させる方法。
【請求項12】
圧力調節器を用いて構造体の内圧を調節するステップ
を更に含む、請求項10記載の酸化ジルコニウム層を熱水によって堆積させる方法。
【請求項13】
構造体内部の前駆体溶液の温度を熱電対によってモニターするステップ、及び
加熱要素を作動させることにより、構造体内部の前駆体溶液の温度を調節するステップ
を更に含む、請求項10記載の酸化ジルコニウム層を熱水によって堆積させる方法。
【請求項14】
注入するステップの前に有機金属を第1の圧力容器内に貯蔵するステップ、及び
注入するステップの前に酸化剤、界面活性剤、キレート剤及び水を第2圧力容器に貯蔵するステップ
を更に含む、請求項10記載の酸化ジルコニウム層を熱水によって堆積させる方法。
【請求項15】
注入ステップの前に、
有機金属を第1の圧力容器内に貯蔵するステップ、又は
酸化剤、界面活性剤、キレート剤及び水を第2圧力容器に貯蔵するステップ
を更に含む、請求項14記載の酸化ジルコニウム層を熱水によって堆積させる方法。
【請求項16】
前駆体溶液のpHレベルを検出するステップ
を更に含む、請求項10記載の酸化ジルコニウム層を熱水によって堆積させる方法。
【請求項17】
構造体のステンレススチール表面上に酸化ジルコニウム層を熱水によって堆積させる方法であって、
Zr−n−プロポキシドを含む有機金属、ZrO(ClOを含む酸化剤、及び水を含む前駆体溶液をステンレススチール構造体に注入するステップ、
前駆体溶液を100〜300℃に加熱するステップ、
ステンレススチール構造体の一部を前駆体溶液の酸化剤に晒すステップ、及び
前駆体溶液に晒された構造体のステンレススチール表面上に酸化ジルコニウム層を堆積させるステップ
を含む方法。
【請求項18】
注入するステップの前に、前駆体溶液の成分の少なくとも一部のpHレベルを4.5〜8に滴定するステップ
を更に含む、請求項17記載の酸化ジルコニウム層を熱水によって堆積させる方法。
【請求項19】
圧力調節器を用いて構造体の内圧を調節するステップ、及び
加熱するステップの間、前駆体溶液の温度を制御するステップ
を更に含む、請求項14記載の酸化ジルコニウム層を熱水によって堆積させる方法。
【請求項20】
堆積させるステップの間、構造体内部の前駆体溶液の圧力を200psi〜2,000psiの所定圧力に調節するステップ
を更に含む、請求項14記載の酸化ジルコニウム層を熱水によって堆積させる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−508254(P2006−508254A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502237(P2005−502237)
【出願日】平成15年10月30日(2003.10.30)
【国際出願番号】PCT/US2003/034689
【国際公開番号】WO2004/042742
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(501243432)ザ ペン ステート リサーチ ファウンデーション (7)
【氏名又は名称原語表記】THE PENN STATE RESEARCH FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】304 Old Main, University Park, PA 16802, US
【Fターム(参考)】