説明

高湿分ガスタービンシステム

【課題】設置場所の自由度が大きく、増湿塔の重量を低減できる高湿分ガスタービンシステムを提供することにある。
【解決手段】増湿塔5によって、空気もしくは空気を主体とするガスを加熱された液相水と接触させ、高温の空気と液相水蒸気の混合物と低温の液相水を製造する。空気と水蒸気の混合物および低温液相水により、ガスタービン排ガスの熱回収と、圧縮機内空気の冷却または圧縮機吐出空気の冷却を行う。増湿塔5の内部は、充填層6,7によって、上下に分割し、分割された各部それぞれに液相水を供給する管路15,16,17,18を備えている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、空気と蒸気の混合物によってガスタービン排ガスの熱回収を行う高湿分ガスタービンシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】高湿分ガスタービンシステム(AHAT)は、例えば、特公平1−31012号公報に記載されているように、加熱された液相水と空気とを増湿塔内部で接触させ、増湿塔から空気と水蒸気の混合物と冷却された液相水を得て、前者を排ガスからの熱回収に、後者を圧縮機中間冷却および後置冷却、排ガスからの熱回収に用いる。
【0003】しかし、高湿分ガスタービンシステムでは、システムの起動時には次のような問題があった。すなわち、冷態起動時には圧縮機吐出空気が低温の増湿塔、再生器を通過するために冷却され、また増湿塔へ供給される液相水が低温であるため、酸素濃度の低い低温高湿の空気が燃焼器へ流入する。しかも起動後の低負荷時には燃料流量が小さいために燃空比も小さいので、燃焼器着火が困難であったり、たとえ着火しても燃焼振動の発生や失火などの可能性が大きくなり、安定した燃焼状態が得られにくいものである。
【0004】また、高湿分ガスタービンシステムを停止する際には、やはり燃料流量が小さくなるため起動時と同様に安定した燃焼状態が得られにくくなる。また、停止後には、システム全体の温度低下に伴い、増湿塔の下流側にあたる再生器、燃焼器、タービン、給水加熱器などの機器内で空気中の水分が凝結して流路の閉塞やエロージョンなどの問題を引起こす恐れがある。従ってシステム停止に際しては空気中の湿分を徐々に下げて各機器およびそれらを連結する配管内を乾燥させ、次回の起動に備える必要があると考えられる。
【0005】従って、高湿分ガスタービンシステムの起動、停止にあたっては、増湿塔から取り出される空気中の含有湿分量を任意に制御することが望まれる。
【0006】ここで、例えば、特開平2000−230432号公報に記載のように、2つの増湿塔を備え、プラント負荷を大きくする場合には、第2の増湿塔により補助的に加湿し、負荷を小さくする場合には、第2の増湿塔による加湿を行わないようにすることが知られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平2000−230432号公報に記載されてものでは、2つの増湿塔を直列に配置するものであるため、次のような問題があった。
【0008】第1には、増湿塔は圧力容器であるため、設置面積が大きくなり、複数の増湿塔を用いる場合、設置面積が増大するため、設置場所の自由度が低下するとともに、増湿塔のトータルの重量も増加するという問題があった。
【0009】第2には、2つの増湿塔を直列配置する場合、2つの増湿塔に流れる加湿された空気の流量は等しいため、それぞれ、同程度の大きさの増湿塔を用いる必要があり、設置場所の自由度がさらに低下するという問題があった。
【0010】本発明の第1の目的は、設置場所の自由度が大きく、増湿塔の重量を低減できる高湿分ガスタービンシステムを提供することにある。
【0011】また、本発明の第2の目的は、さらに、設置場所の自由度が大きい高湿分ガスタービンシステムを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】(1)上記第1の目的を達成するために、本発明は、空気もしくは空気を主体とするガスを加熱された液相水と接触させ、高温の空気と液相水蒸気の混合物と低温の液相水を製造する増湿塔を有し、前記空気と水蒸気の混合物および低温液相水により、ガスタービン排ガスの熱回収と、圧縮機内空気の冷却または圧縮機吐出空気の冷却を行う高湿分ガスタービンシステムにおいて、上記増湿塔内部を複数に分割し、分割された各部それぞれに液相水を供給する管路を備えるようにしたものである。かかる構成により、設置場所の自由度を大きくでき、また、増湿塔の重量を低減し得るものとなる。
【0013】(2)上記(1)において、好ましくは、上記複数に分割された増湿塔内部の各部それぞれに空気を供給する管路を備えるようにしたものである。
【0014】(3)上記(1)において、好ましくは、上記増湿塔の内部は、上下方向に複数に分割したものである。
【0015】(4)上記(1)において、好ましくは、上記増湿塔の内部は、周方向に複数に分割したものである。
【0016】(5)上記(1)において、好ましくは、上記増湿塔の内部は、半径方向に複数に分割したものである。
【0017】(6)また、上記目的を達成するために、本発明は、空気もしくは空気を主体とするガスを加熱された液相水と接触させ、高温の空気と液相水蒸気の混合物と低温の液相水を製造する増湿塔を有し、前記空気と水蒸気の混合物および低温液相水により、ガスタービン排ガスの熱回収と、圧縮機内空気の冷却または圧縮機吐出空気の冷却を行う高湿分ガスタービンシステムにおいて、上記増湿塔として、複数基の増湿塔を備え、これら複数基の増湿塔を並列に配置し、複数基の増湿塔のそれぞれに液相水および空気を供給する管路を備えるようにしたものである。かかる構成により、さらに、設置場所の自由度を大きくし得るものとなる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、図1を用いて、本発明の第1の実施形態による高湿分ガスタービンシステムの構成について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態による高湿分ガスタービンシステムの構成を示す系統図である。
【0019】本実施形態のガスタービンシステムでは、空気3は、圧縮機2で圧縮された後、後置冷却器4を経て増湿塔5に入る。後置冷却器4には、増湿塔5の底部に貯留した液相水13が、ポンプ28によって供給され、また、補助水タンク27に貯蔵された補助水が、ポンプ30によって供給されている。
【0020】増湿塔5の内部には、ラシヒリング等の充填物によって形成される充填層6,7が上下2段に分割して設置されている。増湿塔5の内部では、高温液相水が充填層6,7の表面に形成する水膜と空気が接触して空気が昇温増湿され、高湿分空気となる。高湿分空気は、再生器8で加熱された後、燃焼器9で燃料と反応し高温のガスとなってタービン10を駆動し、負荷1によって利用される。タービン10の排ガスは、通常400〜600℃程度の高温であり、再生器8と給水加熱器11を通過して熱回収が行われ、熱回収された後の排ガスは煙突12から大気中へ排出される。
【0021】一方、増湿塔5に供給される高温液相水は、増湿塔内で空気中にその一部が蒸発することによって蒸発潜熱を奪われ、低温の液相水13となる。低温の液相水13は、増湿塔5から取り出されて、ポンプ28,29によって、後置冷却器4と給水加熱器11へ送出され、熱回収媒体として用いられ、再び高温の液相水となり増湿塔5へ供給される。低温の液相水13の温度が熱回収媒体として用いるには高すぎるときには、増湿塔5の下部に設けた伝熱管14に冷却水を流して冷却する。
【0022】本実施形態では、分割された充填層の各個に液相水を供給する管路15,16,17,18およびその経路上の弁19,20,21,22と、分割された充填層の各個に空気を供給する管路23,24およびその経路上の弁25,26に特徴があり、これらを操作してシステムの起動停止を行うものである。すなわち、増湿塔5の内部は、充填層6,7によって2分割されているとともに、2分割されたそれぞれの領域に、液相水および空気を独立して供給できる構成となっている。充填層6に供給する液相水は、弁19,20によって制御可能であり、充填層7に供給する液相水は、弁21,22によって制御可能である。また、充填層6に供給する空気は、弁25によって制御可能であり、充填層7に供給する空気は、弁26によって制御可能である。
【0023】次に、システム起動時,停止時の弁19,…,22,25,26の開閉制御の動作について説明する。
【0024】システム起動時には、弁26を全開、弁25を全閉とし、モータ等の外部動力でガスタービンを起動し、続いて燃焼器に着火する。このときは、システム各部が低温なので、弁19,20,21,22を閉じて、増湿塔5には液相水を供給せず、増湿運転をしないようにする。
【0025】次に、ガスタービンの昇速を行い、自立運転を開始後に燃料流量を増やし初期負荷を併入する。そして各部の暖機が終了した後、負荷を上昇させ、増湿運転を開始する。
【0026】負荷が低い状態では、空気流量に対して燃料流量が少ないので、燃焼器9での安定燃焼のため、増湿量を少量にしておき、負荷が大きいときは燃料流量増加に伴って増湿量を多くする必要がある。そこで以下のように操作する。
【0027】初めに、液相水管路17,18上の弁21,22および空気管路24上の弁25を少しずつ開く。すると、充填層6には液相水が供給され、空気管路24を通過した空気との接触が行われ、高湿分空気が得られる。この高湿分空気は、空気管路23から供給された空気と混合し、湿分の低い状態で充填層7を通過するが、充填層7には液相水が供給されず乾燥しているので、空気の湿度はそれ以上上昇せず、増湿塔5から取り出される空気は湿分の低い状態である。
【0028】増湿量を増やすときには、弁25を閉じていくことにより、充填層6を通過する空気量を増し、高湿分空気に対して混合する乾燥空気の割合を減らす。さらに増湿量を増やすときは、弁25を全閉とした上で液相水管路15,16上の弁19,20を開き、充填層7にも液相水を供給する。すると、充填層6と充填層7の両方で気液接触面が形成され、増湿量が最大となる。
【0029】以上の操作は、増湿塔5の空気出口に設けた湿度センサAか、又は図中にはない熱電対等の温度測定手段により増湿塔5の液相水出入口の水温を測定することによって、増湿塔5の出口の空気湿分を監視し、適切な値になるように各弁19,…,22,25,26を調節する。
【0030】システム停止操作の際には、上述とは逆の手順となる。すなわち、停止の際は、徐々に燃料投入量を減らして負荷を降下させるが、このとき燃空比の低下により燃焼器9では失火限界に近づくので、弁19,20を閉じて充填層7への液相水の供給を停止し、気液接触を充填層6のみに限ることにより増湿量を減らす。さらに、負荷が小さくなったら弁25を開いて弁26を閉じ、高湿分空気に乾燥空気を混入させることにより湿分を下げる。負荷が初期負荷と同程度に下がったところで弁21,22を閉止して、増湿塔5への液相水の供給を全て停止して乾燥空気による運転を行い、システム全体のガス通路を乾燥させ、負荷解列の後に燃料投入を停止して燃焼器を消火し、ガスタービンを停止する。
【0031】なお、上述の例では、増湿塔内を上下2段に分割し、それぞれに液相水,空気の流入管路を設ける例を示したが、さらに分割数を増やしてもよいものである。空気の代わりに、空気を主体とするガスを用いることもできる。
【0032】以上説明したように、本実施形態では、増湿塔内を上下に分割し、それぞれに供給する液相水,空気を制御可能として、高湿分ガスタービンシステムの起動時には、徐々に増湿することにより、安定した燃焼状態を得られるとともに、システム停止時には、徐々に増湿量を低減することにより、安定した燃焼状態を得られるとともに、次回の起動に備えることができる。
【0033】また、増湿塔の内部を上下に分割することにより、従来のように、2つの独立した増湿塔を直列に配置する場合に比べて、増湿塔は一つでよいため、設置面積を半減でき、設置場所の自由度も向上し、また、増湿塔のトータルの重量も低減できるものである。
【0034】次に、図2および図3を用いて、本発明の第2の実施形態による高湿分ガスタービンシステムに用いる増湿塔の構成について説明する。図2は、本発明の第2の実施形態による高湿分ガスタービンシステムに用いる増湿塔の構成を示す斜視図であり、図3は、図2のX−X’断面図である。
【0035】本実施形態では、増湿塔5Aの内部を隔壁によって周方向に複数の流路に分割し、液相水と空気が接触する流路の数を運転状態に応じ調節することに特徴がある。なお、図示した増湿塔5Aを用いた本実施形態による高湿分ガスタービンシステムの系統図は、図1に示したものと同様である。
【0036】図2に示すように、増湿塔5Aの内部は、充填層55が隔壁56によって円周方向に4つに分割されており、液相水と空気が接触する4つの流路が形成されている。各流路には、それぞれ液相水を供給する管路57,58,59,60と、その管路上の弁61,62,63,64が備えられている。充填槽55の下部に接続された空気管路65からは、空気が供給される。加湿された高湿分空気は、増湿塔5Aの上部から、図1に示したように、再生器8で加熱され、燃焼器9に送出される。また、増湿塔5Aの下部に溜まった低温の液相水13は、図1に示したように、後置冷却器4や給水加熱器11に送出される。また、図3に示すように、充填層55は、隔壁56によって、円周方向に、充填層55a,55b,55c,56dの4つに分割されている。
【0037】起動や停止の低負荷運転時に増湿量を小さくするときには、4つに分割された充填層の一部、たとえば充填層55aに液相水を供給する弁64を開き、弁61,62,63は閉じる。空気管路65から流入した空気と液相水の接触は55aのみで行われ、55b,55c,55dは乾燥空気が通過する。すると、増湿塔5Aの出口では、充填層55aから取り出された高湿分空気と、他の流路から取り出された乾燥空気が混合し、湿分の低い空気を製造することができる。
【0038】増湿量を大きくしていくときには、他の充填層55b,55c,55dに液相水を供給するように弁59,61,62を順次開いて行けばよいものである。
【0039】なお、以上の説明では、流路を4つに分割する例を示したが、さらに分割数を増やしたり、又は減らしてもよいものである。
【0040】以上説明したように、本実施形態では、増湿塔内を円周方向に分割し、それぞれに供給する液相水を制御可能として、高湿分ガスタービンシステムの起動時には、徐々に増湿することにより、安定した燃焼状態を得られるとともに、システム停止時には、徐々に増湿量を低減することにより、安定した燃焼状態を得られるとともに、次回の起動に備えることができる。
【0041】また、増湿塔の内部を上下に分割することにより、従来のように、2つの独立した増湿塔を直列に配置する場合に比べて、増湿塔は一つでよいため、設置面積を半減でき、設置場所の自由度も向上し、また、増湿塔のトータルの重量も低減できるものである。
【0042】さらに、空気の供給管路は、1つだけであるため、圧力容器を用いる増湿塔をコンパクトにすることができる。すなわち、空気の供給管路は、直径が数十cmと大きなものであるため、複数個の空気供給管路を増湿塔に取り付ける際には、取り付け用の大型フランジを増湿塔に備える必要があるが、空気供給管路を1つできることにより、フランジも1つでよく、増湿塔をコンパクトにできる。
【0043】次に、図4および図5を用いて、本発明の第3の実施形態による高湿分ガスタービンシステムに用いる増湿塔の構成について説明する。図4は、本発明の第3の実施形態による高湿分ガスタービンシステムに用いる増湿塔の構成を示す斜視図であり、図5は、図4のY−Y’断面図である。
【0044】本実施形態では、増湿塔5Bの内部を隔壁によって増湿塔の内部を隔壁によって半径方向に複数の流路に分割し、液相水と空気が接触する流路の数を運転状態に応じ調節することに特徴がある。なお、図示した増湿塔5Bを用いた本実施形態による高湿分ガスタービンシステムの系統図は、図1に示したものと同様である。
【0045】図4に示すように、増湿塔5Bの内部は、充填層66が隔壁67によって半径方向に2つに分割されており、液相水と空気が接触する2つの流路が形成されている。各流路には、それぞれ、液相水を供給する管路68,69,70と、その管路上の弁71,72,73が備えられている。加湿された高湿分空気は、増湿塔5Bの上部から、図1に示したように、再生器8で加熱され、燃焼器9に送出される。また、増湿塔5Bの下部に溜まった低温の液相水13は、図1に示したように、後置冷却器4や給水加熱器11に送出される。また、図5R>5に示すように、充填層66は、隔壁67によって、半径方向に、充填層66a,66bの2つに分割され、2つの流路が形成されている。
【0046】起動や停止の低負荷運転時に増湿量を小さくするときには、2つに分割された充填層の一方、たとえば充填層66aに液相水を供給する弁73を開き、弁71,72は閉じる。すると、液相水と空気の接触は、充填層66aのみで行われ、充填層66bは乾燥空気が通過する。従って、増湿塔5Bの出口では66aから取り出された高湿分空気と66bから取り出された乾燥空気が混合し、湿分の低い空気を製造することができる。
【0047】増湿量を大きくしていくときには、流路66bにも液相水を供給するように弁71,72を開いて行けばよいものである。
【0048】なお、以上の説明では、流路を2つに分割する例を示したが、さらに分割数を増やしてもよいものである。
【0049】以上説明したように、本実施形態では、増湿塔内を半径方向に分割し、それぞれに供給する液相水を制御可能として、高湿分ガスタービンシステムの起動時には、徐々に増湿することにより、安定した燃焼状態を得られるとともに、システム停止時には、徐々に増湿量を低減することにより、安定した燃焼状態を得られるとともに、次回の起動に備えることができる。
【0050】また、増湿塔の内部を上下に分割することにより、従来のように、2つの独立した増湿塔を直列に配置する場合に比べて、増湿塔は一つでよいため、設置面積を半減でき、設置場所の自由度も向上し、また、増湿塔のトータルの重量も低減できるものである。
【0051】さらに、空気の供給管路は、1つだけであるため、圧力容器を用いる増湿塔をコンパクトにすることができる。すなわち、空気の供給管路は、直径が数十cmと大きなものであるため、複数個の空気供給管路を増湿塔に取り付ける際には、取り付け用の大型フランジを増湿塔に備える必要があるが、空気供給管路を1つできることにより、フランジも1つでよく、増湿塔をコンパクトにできる。
【0052】次に、図6を用いて、本発明の第4の実施形態による高湿分ガスタービンシステムの構成について説明する。図6は、本発明の第4の実施形態による高湿分ガスタービンシステムの構成を示す系統図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
【0053】本実施形態では、2基の増湿塔5C,5Dを並列に設置し、増湿運転を行う増湿塔の基数を運転状態に応じ変化させるようにしている。増湿塔5C,5Dは、それぞれ、液相水を供給する管路31,32,33,34と、その管路上の弁35,36,37,38と、空気を供給する管路39,40と、その管路上の弁41,42とを備えている。
【0054】起動や停止の低負荷運転時に増湿量を小さくするときには、液相水を供給する管路の弁36,37を開いて弁35,38を閉じ、増湿塔5Cのみに液相水を供給する。すなわち、増湿量を小さくしたいときには増湿操作を増湿塔5Cによってのみ行い、増湿塔5Dは乾燥空気が通過する状態とし、増湿塔5Cから得られる高湿分空気と増湿塔5Dから得られる乾燥空気を混合して、湿分の低い空気を製造する。また、このときに空気を供給する経路上の弁41,42の開度を調節して増湿塔5Cと増湿塔5Dへ供給する空気流量の配分を変えれば、さらに湿分の微小な制御も可能である。
【0055】増湿量を大きくするときには、弁35,38を開いて増湿塔5Dにも液相水を供給し、増湿塔5C,5Dの両方で増湿運転を行う。
【0056】なお、以上の説明では、2基の増湿塔による構成を示したが、さらに増湿塔基数を増やしてもよいものである。
【0057】以上説明したように、本実施形態では、複数基の増湿塔を用い、それぞれを並列に配置するとともに、それぞれに供給する液相水を制御可能として、高湿分ガスタービンシステムの起動時には、徐々に増湿することにより、安定した燃焼状態を得られるとともに、システム停止時には、徐々に増湿量を低減することにより、安定した燃焼状態を得られるとともに、次回の起動に備えることができる。
【0058】また、複数基の増湿塔を並列配置して用いることにより、従来のように、2基の増湿塔を直列に配置する場合に比べて、1基の増湿塔の断面積を小さくでき、増湿塔を小型化することができる。すなわち、従来のように、2基の増湿塔を直列配置する場合、それぞれの増湿塔には同量の空気を流す必要があるのに対して、2基を並列配置し、例えば、両者を同一の大きさのものとすると、1基の増湿塔に流れる空気量は1/2にすることができ、従って、1基の増湿塔の断面積を1/2にでき、増湿塔の直径は、1/√2にすることができる。したがって、容器肉厚が薄く軽量となり、塔体も小型となるため、輸送や据付が容易となり、設置場所の自由度も向上する。
【0059】
【発明の効果】本発明によれば、高湿分ガスタービンシステムの設置場所の自由度が大きくし、増湿塔の重量を低減することができる。
【0060】また、高湿分ガスタービンシステムの設置場所の自由度をさらに大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態による高湿分ガスタービンシステムの構成を示す系統図である。
【図2】本発明の第2の実施形態による高湿分ガスタービンシステムに用いる増湿塔の構成を示す斜視図である。
【図3】図2のX−X’断面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態による高湿分ガスタービンシステムに用いる増湿塔の構成を示す斜視図である。
【図5】図4のY−Y’断面図である。
【図6】本発明の第4の実施形態による高湿分ガスタービンシステムの構成を示す系統図である。
【符号の説明】
1…負荷
2…圧縮機
3…空気
4…後置冷却器
5,5A,5B,5C,5D…増湿塔
6,7,55,66…充填層
8…再生器
9…燃焼器
10…タービン
11…給水加熱器
12…煙突
13…液相水
14…伝熱管
15,16,17,18,31,32,33,34,43,44,45,46,57,58,59,60,68,69,70…液相水管路
19,20,21,22、25,26,35,36,37,38,41,42、47,48,49,50,53,54,61,62,63,64,71,72,73…弁
23,24,39,40、51,52,65…空気管路
27…補給水タンク
28,29,30…ポンプ
56,67…隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】空気もしくは空気を主体とするガスを加熱された液相水と接触させ、高温の空気と液相水蒸気の混合物と低温の液相水を製造する増湿塔を有し、前記空気と水蒸気の混合物および低温液相水により、ガスタービン排ガスの熱回収と、圧縮機内空気の冷却または圧縮機吐出空気の冷却を行う高湿分ガスタービンシステムにおいて、上記増湿塔内部を複数に分割し、分割された各部それぞれに液相水を供給する管路を備えたことを特徴とする高湿分ガスタービンシステム。
【請求項2】請求項1に記載の高湿分ガスタービンシステムにおいて、上記複数に分割された増湿塔内部の各部それぞれに空気を供給する管路を備えたことを特徴とする高湿分ガスタービンシステム。
【請求項3】請求項1に記載のガスタービンシステムにおいて、上記増湿塔の内部は、上下方向に複数に分割したことを特徴とする高湿分ガスタービンシステム。
【請求項4】請求項1に記載のガスタービンシステムにおいて、上記増湿塔の内部は、周方向に複数に分割したことを特徴とする高湿分ガスタービンシステム。
【請求項5】請求項1に記載のガスタービンシステムにおいて、上記増湿塔の内部は、半径方向に複数に分割したことを特徴とする高湿分ガスタービンシステム。
【請求項6】空気もしくは空気を主体とするガスを加熱された液相水と接触させ、高温の空気と液相水蒸気の混合物と低温の液相水を製造する増湿塔を有し、前記空気と水蒸気の混合物および低温液相水により、ガスタービン排ガスの熱回収と、圧縮機内空気の冷却または圧縮機吐出空気の冷却を行う高湿分ガスタービンシステムにおいて、上記増湿塔として、複数基の増湿塔を備え、これら複数基の増湿塔を並列に配置し、複数基の増湿塔のそれぞれに液相水および空気を供給する管路を備えたことを特徴とする高湿分ガスタービンシステム。

【図3】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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