高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法および燃料制御装置
【課題】増湿器への水分添加の開始後でガスタービン燃焼器に対する過渡的な条件変化が生じた場合に、ガスタービン燃焼器を低NOxで安定して燃焼させる高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法。
【解決手段】燃料を供給する複数の燃料ノズルと燃焼用空気を供給する複数の空気流路とで構成する燃焼部を複数設置し、複数設置された一部の燃焼部に他の燃焼部よりも保炎性に優れた燃焼部を形成している高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法において、高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法において、保炎性に優れた燃焼部に燃料を供給する燃料比率の設定を増湿器の内部温度と増湿器の内圧から推算した圧縮空気の空気湿度をもとに設定して前記ガスタービン燃焼器の複数の燃焼部に供給する燃料の流量割合を制御する。
【解決手段】燃料を供給する複数の燃料ノズルと燃焼用空気を供給する複数の空気流路とで構成する燃焼部を複数設置し、複数設置された一部の燃焼部に他の燃焼部よりも保炎性に優れた燃焼部を形成している高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法において、高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法において、保炎性に優れた燃焼部に燃料を供給する燃料比率の設定を増湿器の内部温度と増湿器の内圧から推算した圧縮空気の空気湿度をもとに設定して前記ガスタービン燃焼器の複数の燃焼部に供給する燃料の流量割合を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高湿分空気利用ガスタービンに搭載する低NOxガスタービン燃焼器を安定に運用する高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法および燃料制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
公知例の特開2008−175098号公報には、ガスタービン作動流体(空気)に水分を添加して加湿し、この加湿空気によってガスタービン排ガスの持つ熱エネルギーを回収することで、出力及び効率の向上を図る高湿分空気利用ガスタービン発電プラントにおいて、水分添加開始の前後に燃焼器の低NOx性能を確保しつつ火炎の安定性を維持可能にする燃料制御に関する技術が開示されている。
【0003】
一般に、ガスタービン起動時の回転数上昇時には、圧縮機吸込み空気流量や回転体の振動特性が変化するため、定格回転数到達後に比べると外乱により系が不安定になりやすい傾向がある。高湿分空気利用ガスタービンプラントにおいても、回転数上昇途中に水分添加を開始するとガスタービンに対して外乱を与えることになるため、起動時の安定性を確保するためには定格回転数到達後の部分負荷状態で水分添加を開始する方が望ましい。
【0004】
一方、ガスタービン燃焼器で発生する窒素酸化物(NOx)は、天然ガスや灯油、軽油等の窒素含有量の少ない燃料を用いる場合、空気中の窒素が酸化されて発生するサーマルNOxが大部分である。サーマルNOxの生成は温度依存性が高いため、一般にこれらの燃料を使用するガスタービンでは、火炎温度の低減が低NOx燃焼法の基本思想である。
【0005】
火炎温度を低減する方策として、燃料と空気を予め混合した後に燃焼させる予混合燃焼が知られている。また、高湿分空気利用ガスタービンプラントのように、再生器により燃焼用空気が高温化されている場合には、燃料の自発火を防止しつつ火炎温度を適度に制御して低NOx化を図る必要があり、そのためには、前記特開2008−175098号公報に開示されているように、燃料と空気を多数の小径の同軸噴流としてガスタービン燃焼室に噴出して燃焼させる技術が有効である。
【0006】
このような低NOx化を図るガスタービン燃焼器では、低NOx性能と火炎の安定性を両立させるために燃料流量と空気流量の比である燃空比を所定の範囲に調節することが肝要である。
【0007】
公知例の特開平07−189743号公報には、一般のガスタービンに使用される低NOxガスタービン燃焼器として、ガスタービンの運用にともなう圧縮機入口案内弁の開度変化、大気温度変化、大気圧力変化に起因する空気流量の変化や、燃料温度および燃料発熱量変化に起因する燃料流量の変化に基づいて、ガスタービン燃焼器に供給する燃料流量と空気流量の比を調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−175098号公報
【特許文献2】特開平07−189743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
高湿分空気利用ガスタービンプラントで水分添加が開始されると、ガスタービン燃焼器では燃焼空気中の湿分が増加するため、燃料の燃焼熱が湿分に奪われて火炎温度が低下してNOx発生量は減少する。また、水分の添加によってタービン作動流体の流量が増加するため、回転数を一定に保持するために燃料が減少することによっても火炎温度が低下してNOx発生量は減少する。
【0010】
さらにガスタービン燃焼器で燃焼する火炎温度が低下したことにより、再生器での回収熱量が減少するため、燃焼空気温度が低下することによっても火炎温度が低下し、NOx発生量は減少する。
【0011】
このように水分添加が開始されることよって、(1)湿分増加、(2)燃料減少、(3)空気温度低下が同時に進行して火炎温度が低下するため、NOx発生量は減少するが、逆に火炎の安定性は悪くなる。
【0012】
そこで、あらかじめ水分添加を考慮してガスタービン燃焼器に供給する空気配分を設定しておけば、高湿分条件で火炎の吹き消えが生じないようにガスタービン燃焼器の頭部の予混合部または同軸噴流部に供給する空気流量を適切に設定することができる。
【0013】
しかしながら、このようにガスタービン燃焼器に供給する空気配分が設定されたガスタービン燃焼器では、水分添加開始前には上記とは逆に火炎温度が高くなるため、火炎の安定性は確保されるもののNOx発生量は増加する傾向がある。
【0014】
すなわち、高湿分空気利用ガスタービンにおいては、水分添加開始前後で、ガスタービン燃焼器のNOx生成および火炎安定性に対して大きな条件変化が生ずる。また、水分添加開始後に弁制御やその系の体積等によって、ガスタービン増負荷時には、燃焼用空気に実際に水分が添加されるまでに遅れが生じると考えられる。
【0015】
またガスタービン降負荷時には、同様の理由によって燃焼用空気の湿度が低下するまでに遅れが生じると考えられる。このような条件変化に対してもガスタービン燃焼器を低NOxで安定に燃焼する制御手段が求められる。
【0016】
そこで、前記特開2008−175098号公報に開示されたように、個別に燃料が供給される複数の燃焼部を備えたガスタービン燃焼器の一部の燃焼部を他の燃焼部よりも保炎性に優れた燃焼部(空気流に旋回成分を与える空気孔を備えた燃焼部)で構成し、増湿開始後の所定の間、保炎性に優れた燃焼部における燃焼ガス温度が増湿開始前の燃焼ガス温度以上となるように、保炎性に優れた燃焼部に供給される燃料の比率を大きく設定して燃料を制御することによって、加湿後の燃焼安定性を確保することができる。
【0017】
このような湿度の変化に対して、前記特開平07−189743号公報に開示されているような制御装置の技術を適用して燃焼の安定性を確保する場合は、圧縮空気中の湿分を計測し、その値をもとに燃料流量割合を制御することが考えられる。
【0018】
しかしながら、増湿器出口の空気は飽和条件でかつ100℃前後の高温であり、増湿器出口に湿度センサーを設置した場合、この湿度センサーによる湿度計測は誤差が大きくなる可能性がある。また、再生器出口の空気は飽和条件ではないものの450℃〜650℃と高温であり、湿度センサーを設置した場合、再生器出口の湿度センサーには高い耐熱性が要求されるという課題がある。
【0019】
そこで、高湿分空気利用ガスタービンプラントにおいては、水分添加開始後に燃焼器のNOx生成および燃焼安定性に対して大きな条件変化が生じる燃焼空気湿度の変化に対して、低NOxと燃焼安定性を両立するガスタービン燃焼器の制御手段が求められる。
【0020】
本発明の目的は、高湿分空気利用ガスタービンの増湿器への水分添加の開始後でガスタービン燃焼器のNOx生成および火炎安定性に対する過渡的な条件変化が生じた場合に、ガスタービン燃焼器を低NOxで安定して燃焼させることを可能にした高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法および燃料制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法は、圧縮機と、圧縮機で圧縮された圧縮空気を用いて燃料を燃焼し燃焼ガスを発生させるガスタービン燃焼器と、ガスタービン燃焼器で発生した燃焼ガスによって駆動されるタービンと、圧縮機で圧縮されて前記ガスタービン燃焼器に供給される圧縮空気を加湿する増湿器と、増湿器に供給する水を前記タービンから排気した排ガスで加熱する再生熱交換器を備えた高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器であって、前記ガスタービン燃焼器は、燃料を供給する複数の燃料ノズルと燃焼用空気を供給する複数の空気流路とで構成する燃焼部を複数設置し、前記複数設置された燃焼部のうち一部の燃焼部に他の燃焼部よりも保炎性に優れた燃焼部を形成しているガスタービン燃焼器の燃料制御方法において、前記保炎性に優れた燃焼部に燃料を供給する燃料比率の設定を、前記増湿器の内部温度と増湿器の内圧から推算した圧縮空気の空気湿度をもとに設定して、前記ガスタービン燃焼器の複数の燃焼部に供給する燃料の流量割合を制御することを制御することを特徴とする。
また本発明の高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法は、圧縮機と、圧縮機で圧縮された圧縮空気を用いて燃料を燃焼し燃焼ガスを発生させるガスタービン燃焼器と、ガスタービン燃焼器で発生した燃焼ガスによって駆動されるタービンと、圧縮機で圧縮されて前記ガスタービン燃焼器に供給される圧縮空気を加湿する増湿器と、増湿器に供給する水を前記タービンから排気した排ガスで加熱する再生熱交換器を備えた高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器であって、前記ガスタービン燃焼器は、燃料を供給する複数の燃料ノズルと、前記燃料ノズルと同軸となるように空気孔プレートに形成された燃焼用空気を供給する複数の空気孔とで構成する燃焼部を複数設置し、前記複数設置された燃焼部のうち、空気孔プレートの内周側に位置する燃焼部に空気孔プレートの外周側に位置する他の燃焼部よりも保炎性に優れた燃焼部を形成しているガスタービン燃焼器の燃料制御方法において、前記保炎性に優れた燃焼部に燃料を供給する燃料比率の設定を、前記増湿器の内部温度と増湿器の内圧から推算した圧縮空気の空気湿度をもとに設定して、前記ガスタービン燃焼器の複数の燃焼部に供給する燃料の流量割合を制御することを制御することを特徴とする。
【0022】
本発明の高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御装置は、圧縮機と、圧縮機で圧縮された圧縮空気を用いて燃料を燃焼し燃焼ガスを発生させるガスタービン燃焼器と、ガスタービン燃焼器で発生した燃焼ガスによって駆動されるタービンと、圧縮機で圧縮されて前記ガスタービン燃焼器に供給される燃焼用空気を加湿する増湿器と、増湿器に供給する水を前記タービンから排気した排ガスで加熱する再生熱交換器を備えた高湿分空気利用ガスタービンであって、前記ガスタービン燃焼器は、燃料を供給する複数の燃料ノズルと燃焼用空気を供給する複数の空気流路とで構成する燃焼部を複数設置し、前記複数設置された燃焼部のうち一部の燃焼部に他の燃焼部よりも保炎性に優れた燃焼部を形成しているガスタービン燃焼器の燃料制御装置において、前記ガスタービン燃焼器の複数の燃焼部に燃料を供給する燃料制御装置は、
増湿器の内部空気温度と増湿器の内圧から推算した燃焼用空気湿度をもとに前記保炎性に優れたガスタービン燃焼器の燃焼部に供給する燃料比率のバイアス量を演算するバイアス演算器と、前記バイアス演算器の出力に基づいて前記保炎性に優れた燃焼部に供給する燃料比率を算出する燃料流量比率設定器を備えて、前記ガスタービン燃焼器の複数の燃焼部に供給する燃料の流量割合を制御することを特徴とする。
【0023】
また本発明の高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御装置は、圧縮機と、圧縮機で圧縮された圧縮空気を用いて燃料を燃焼し燃焼ガスを発生させるガスタービン燃焼器と、ガスタービン燃焼器で発生した燃焼ガスによって駆動されるタービンと、圧縮機で圧縮されて前記ガスタービン燃焼器に供給される燃焼用空気を加湿する増湿器と、増湿器に供給する水を前記タービンから排気した排ガスで加熱する再生熱交換器を備えた高湿分空気利用ガスタービンであって、前記ガスタービン燃焼器は、燃料を供給する複数の燃料ノズルと、前記燃料ノズルと同軸となるように空気孔プレートに形成された燃焼用空気を供給する複数の空気孔とで構成する燃焼部を複数設置し、前記複数設置された燃焼部のうち、空気孔プレートの内周側に位置する燃焼部に空気孔プレートの外周側に位置する他の燃焼部よりも保炎性に優れた燃焼部を形成しているガスタービン燃焼器の燃料制御装置において、前記ガスタービン燃焼器の複数の燃焼部に燃料を供給する燃料制御装置は、増湿器の内部空気温度と増湿器の内圧から推算した燃焼用空気湿度をもとに前記保炎性に優れたガスタービン燃焼器の燃焼部に供給する燃料比率のバイアス量を演算するバイアス演算器と、
前記バイアス演算器の出力に基づいて前記保炎性に優れた燃焼部に供給する燃料比率を算出する燃料流量比率設定器を備えて、前記ガスタービン燃焼器の複数の燃焼部に供給する燃料の流量割合を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、高湿分空気利用ガスタービンの増湿器への水分添加の開始後でガスタービン燃焼器のNOx生成および火炎安定性に対する過渡的な条件変化が生じた場合に、ガスタービン燃焼器を低NOxで安定して燃焼させることを可能にした高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法および燃料制御装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施例であるガスタービン燃焼器を備えた高湿分空気利用ガスタービンの概略構成を示す系統図。
【図2】本発明の第1実施例であるガスタービン燃焼器に設置した燃料ノズルの構成を示す部分構造図。
【図3】図2示した第1実施例のガスタービン燃焼器に設置した燃焼部を構成する空気孔プレートを示す正面図。
【図4】本発明の第1実施例のガスタービン燃焼器を備えた高湿分空気利用ガスタービンの運転方法の一例を表す特性図。
【図5】本発明の第1実施例のガスタービン燃焼器を備えた高湿分空気利用ガスタービンの運転方法の他の一例を表す特性図。
【図6】本発明の第1実施例のガスタービン燃焼器による燃料制御装置の構成を示す制御ブロック図。
【図7】本発明の第2実施例であるガスタービン燃焼器を備えた高湿分空気利用ガスタービンの概略構成を示す系統図。
【図8】本発明の第2実施例のガスタービン燃焼器を備えた高湿分空気利用ガスタービンの運転方法の一例を表す特性図。
【図9】本発明の第2実施例のガスタービン燃焼器による燃料制御装置の構成を示す制御ブロック図。
【図10】本発明の第3実施例であるガスタービン燃焼器を備えた高湿分空気利用ガスタービンの概略構成を示す系統図。
【図11】本発明の第3実施例のガスタービン燃焼器を備えた高湿分空気利用ガスタービンの運転方法の一例を表す特性図。
【図12】本発明の第3実施例のガスタービン燃焼器を備えた高湿分空気利用ガスタービンの運転方法の他の一例を表す特性図。
【図13】本発明の第3実施例のガスタービン燃焼器による燃料制御装置の構成を示す制御ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
高湿分空気利用ガスタービンに設置される本発明の実施例であるガスタービン燃焼器の燃料制御方法及び燃料制御装置について図面を引用して以下に説明する。
【実施例1】
【0027】
高湿分空気利用ガスタービンに設置される本発明の第1実施例であるガスタービン燃焼器の燃料制御方法及び燃料制御装置について図1乃至図6を用いて説明する。
【0028】
図1は本発明の第1の実施例であるガスタービン燃焼器が設置される高湿分空気利用ガスタービンの全体構成を表す系統図である。
【0029】
図1において、発電用の高湿分空気利用ガスタービンは、空気を圧縮する圧縮機1と、圧縮機1で圧縮された圧縮空気を用いて燃料を燃焼し燃焼ガスを発生させるガスタービン燃焼器2と、ガスタービン燃焼器2で発生した燃焼ガスによって駆動されるタービン3と、圧縮機1で圧縮されて前記ガスタービン燃焼器2に供給される圧縮空気を加湿する増湿器4と、増湿器4に供給する水を前記タービン3から排気した排ガスで加熱する再生熱交換器5とから構成され、タービン3の出力により発電機20を回転させ電力を得ている。
【0030】
ガスタービン燃焼器2は、燃焼器ケーシング7および燃焼器カバー8内に格納されている。このガスタービン燃焼器2の頭部には燃料ノズル9が設置されており、燃料ノズル9の下流側には、燃焼用空気と燃焼ガスを隔てる概略円筒状の燃焼器ライナ10が接地されている。
【0031】
また、高湿分空気利用ガスタービンには、圧縮機1入口のガスタービン吸い込み空気100に水300を噴霧する吸気噴霧装置27が備えられている。前記吸気噴霧装置27に供給される水300は水質浄化装置26で水処理されて噴霧水量制御弁310で流量を調整された水300である。
【0032】
そして吸気噴霧装置27によって水300を水噴霧した後の吸い込み空気101(大気圧)を圧縮機1で圧縮した高圧空気102は、トランジションピース12とトランジションピースフロースリーブ13との間隙を流れてトランジションピース12を対流冷却し、抽気空気103となる。
【0033】
抽気空気103は、空気冷却器28によって100℃近くまで冷却されて増湿器流入空気110となって、増湿器4に供給される。
【0034】
増湿器流入空気110は、増湿器4において水分を添加されて加湿空気104となる。空気の加湿方法として、濡壁塔或いは増湿塔による加湿が知られている。
【0035】
増湿器4の上部には、高湿分空気利用ガスタービンの健全性を監視するために、増湿器内部温度500を計測する温度計と増湿器内圧600を計測する圧力計がそれぞれ設置される。
【0036】
増湿器4で水分を添加された加湿空気104は再生熱交換器5に導かれ、この再生熱交換器5でタービン3から排出された排気ガス107との熱交換により加熱されて高温空気105となりガスタービン燃焼器2の燃焼器ケーシング7へと注入される。
【0037】
ガスタービン燃焼器2における燃焼器ケーシング7内を流れる空気は、燃焼器ライナ10の外側の概して環状の空間を通って燃焼器頭部へ向かって流れ、途中、燃焼器ライナ10の対流冷却に使用される。
【0038】
また、高温空気105の一部は燃焼器ライナ10に設けられた冷却孔から燃焼器ライナ10内へ流入し、フィルム冷却に使用される。残りの高温空気105(図中A部詳細の36)は、後述する空気孔32から燃焼器ライナ10内に流入し、燃料ノズル31から噴出される燃料とともに燃焼に使用され、高温の燃焼ガス106を生成してタービン3へと送られる。
【0039】
タービン3で仕事をしてタービン3から排出された低圧の排気ガス107は、再生器5で排気ガス107の保有する熱エネルギーを熱回収した後に、該再生器5の下流側に位置する水回収装置24を経て、低温の排気ガス109として排気塔25から大気中に排気される。
【0040】
また、前記排気ガス108中の水分は再生器5の下流側の水回収装置24によって回収する。本図では、水回収の方式として煙道に水を噴霧して排気ガス108中の水分を凝集、落下させて回収する方式を採用している。
【0041】
高温の燃焼ガス106によって駆動される前記タービン3で得られた駆動力は、シャフト21を通じてタービン3と連結された圧縮機1及び発電機20に伝えられる。駆動力の一部は圧縮機1を回転させて吸い込み空気の加圧に用いられる。また、発電機20ではこの駆動力を電力に変換する。
【0042】
水回収装置24及び増湿器4の底部から回収した水は、水回収装置24への噴霧水あるいは増湿器4への加湿水として再利用される。
【0043】
発電用の高湿分空気利用ガスタービンの出力である発電機20の発電量MWは、ガスタービン燃焼器2に供給する燃料流量を調節する燃料流量調整弁211〜214の開閉によって制御される。一方、ガスタービン燃焼器2に供給する空気への加湿量は増湿器4への加湿水量を調節する増湿器給水弁312の開閉によって制御される。
【0044】
図2及び図3は本発明の第1実施例であるガスタービン燃焼器2に設置した燃焼部を構成する燃料ノズル9の構造を示した部分断面図と、空気孔プレート33を示した正面図である。
【0045】
本実施例のガスタービン燃焼器2においては、図2及び図3に示したように燃焼器カバー8の燃料ノズルヘッダ30に環状に配置された多数の燃料ノズル31が取り付けられており、前記各燃料ノズル31の1本1本に対応した空気流路を形成する環状に配置された多数の空気孔32を備えた空気孔プレート33が、サポート34を介して燃焼器カバー8に取り付けられた構造となっている。
【0046】
前記複数の燃料ノズル31と、該燃料ノズル31と対応してそれぞれ設置された複数の空気孔32とは円環状のほぼ同心状を成すように配設されており、図2のA部詳細に示したように、空気孔プレート33に形成した空気孔32の中央に燃料噴流35と、この燃料噴流35の周囲に空気孔32に流入する空気噴流36との同軸噴流を形成するように構成されている。
【0047】
前記した同軸噴流構造によって、空気孔32内では燃料−空気は未混合であるため、高湿分空気利用ガスタービンの様に燃焼空気が高温であっても燃料の自発火は発生せず、空気孔プレート33を溶損するようなことなく信頼性の高いガスタービン燃焼器2を得ることができる。
【0048】
また、このような同軸噴流を多数形成することにより、燃料と空気の界面が増加して混合が促進するため、ガスタービン燃焼器2で生じるNOxの発生量を抑制することができる。
【0049】
図3は本実施例のガスタービン燃焼器2を構成する空気孔プレート33を燃焼器下流側から見た正面図である。本実施例のガスタービン燃焼器2において、多数の空気孔32(および、図示されていないが空気孔32と対を成す燃料ノズル31)は空気孔プレート33の半径方向内周側から半径方向外周側にかけて環状の空気孔列が同心状に8列配置されている。
【0050】
前記ガスタービン燃焼器2の燃焼部を形成するバーナは、中心側の4列(第1列〜第4列)が第1群(F1)の燃焼部を形成するF1バーナ、第5列が第2群(F2)の燃焼部を形成するF2バーナ、その外側の2列(第6、7列)が第3群(F3)の燃焼部を形成するF3バーナ、最外周(第8列)が第4群(F4)の燃焼部を形成するF4バーナとそれぞれ群分けされており、図2に示した様に、F1バーナ〜F4バーナのそれぞれの群ごとにヘッダ30に設けたフランジ(41〜44)を通じて燃料が燃料ノズル31から供給できる様に燃料系統が群分けして配設されている。
【0051】
このような燃料系統の群分け構造を採用することにより、ガスタービン燃焼器2に供給する燃料流量変化に対して燃料供給する燃料ノズルの本数を段階的に変化させる燃料ステージングが可能となり、ガスタービン部分負荷運転時におけるガスタービン燃焼器2の燃焼安定性が高まるとともに低NOx化が可能となる。
【0052】
さらに中央の4列(F1)の燃焼部を形成するF1バーナを構成する空気孔プレート33の空気孔32はピッチ円接線方向に角度(図3中のα°、本実施例では15°としている)を持った斜め穴に形成することで、この空気孔32を流下する空気流全体に旋回をかけ、生じる循環流によって火炎を安定化させている。
【0053】
F1バーナの外周側に配設したF2バーナ〜F4バーナは、中央のF1バーナの燃焼熱によって火炎が安定化される。したがって、高湿分ガスタービンにおいて加湿が開始され、燃焼用空気の湿分が増加する際には、ガスタービン燃焼器2のF1バーナに供給する燃料流量を増加させ、局所的に高温な部分を設けることで、F1火炎の燃焼安定性が向上する。
【0054】
F1燃料の増加分、F2バーナ以降のバーナの燃料流量は減少するが、これらの火炎はF1バーナの燃焼熱によって火炎が安定化されているため、バーナ全体として、燃焼安定性が確保される。
【0055】
本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料制御方法及び燃料制御装置を適用した高湿分空気利用ガスタービンの運転方法の一例について、図4、図5に示した特性図を参照しながら説明する。
【0056】
図4の高湿分空気利用ガスタービンの運転方法の特性図の横軸は起動開始からの時刻、縦軸は上から回転数、発電量、空気流量、増湿器供給水量301、加湿空気104の湿度、増湿器内部温度500をそれぞれ示したものである。
【0057】
また、図5の高湿分空気利用ガスタービンの運転方法の横軸は図4と同じく起動開始からの時刻、縦軸は上から燃焼温度、全体の燃料流量、F1バーナ〜F4バーナに燃料を供給する各燃料系統の個別燃料流量(F1流量〜F4流量)を模式的に表したものである。
【0058】
また、図4及び図5の特性図において、期間aは起動から定格回転数に達するまでの回転数昇速期間、期間bはガスタービン起動中の増負荷期間、期間cは起動終了後の負荷追従運転期間を表す。増負荷期間bは前半の水分無添加期間b1、水分添加量変化期間b2、水分添加量一定期間b3に分かれている。
【0059】
本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料制御装置によるガスタービン燃焼器2の運転方法においては、まず、制御装置400からの指令によって燃料流量が比較的少ない着火および昇速時はガスタービン燃焼器2の軸心側に位置するF1バーナのみを燃焼させて運転(すなわち図2の燃料系統201のみに燃料を供給)し、定格回転数無負荷条件付近まで昇速させる。このF1バーナの単独燃焼を今後の説明では1/4モードと呼ぶことにする。
【0060】
次にそれ以降の負荷上昇過程(期間b)では、ガスタービン燃焼器2のF1バーナの外周側に設置したF2バーナに燃料を投入して、F1+F2で運転する。すなわち、燃料系統201及び202に燃料を供給し、制御装置400からの指令によってこれらの燃料系統201及び202にそれぞれ設置された流量制御弁211及び212の開度を調節することにより各燃料流量を制御する。このときを2/4モードと呼ぶことにする。
【0061】
次に、さらにガスタービン燃焼器2のF2バーナの外周側に設置したF3バーナに燃料を投入する燃料系統203に燃料を供給し、F3バーナに着火した状態を3/4モードと呼ぶ。ここまでの過程では高湿分空気利用ガスタービンの増湿器4には水分が添加されていない(b1)。すなわち図1に示した高湿分空気利用ガスタービンの増湿器4に供給する水の流量を調節する増湿器給水弁311は全閉であり、増湿器バイパス弁312の開度によって再生熱交換器5の下流側に設置された給水過熱器12を流れる水量が制御されている。
【0062】
また、この間の燃料流量増加は、ガスタービンの起動計画に定められた負荷上昇率に従ってガスタービン発電量が増加する様に、流量制御弁211、212及び213の開度を調節することによってF1バーナ、F2バーナ、F3バーナに供給する燃料流量が制御される。また、F1バーナ、F2バーナ、F3バーナに供給する各燃料系統201乃至203の燃料流量配分は、ガスタービン燃焼器2の燃焼が安定しかつ生成するNOxが最小となる様に定められた比率で供給される。
【0063】
本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料制御方法及び燃料制御装置においては、この3/4モードで、高湿分空気利用ガスタービンの増湿器4への水分添加を開始する。加湿開始指令により空気冷却器側増湿器給水弁312が開き、開度に応じた流量の給水が増湿器4へと注水される(期間b2)。同時に、空気冷却器側増湿器バイパス弁313は、空気冷却器28を流れる水量が所定の値となるよう制御されながら、開度を減少し最終的には全閉状態となる。
【0064】
その後は空気冷却器側増湿器給水弁312の開度を制御することで、空気冷却器28を流れる水量が所定の値となるよう調整される(期間b2〜b3)。
【0065】
このとき、ガスタービンの起動計画に定められた負荷上昇率に従ってガスタービン発電量が増加する様に、燃料流量が制御される。そのうち、F1燃料は、燃焼安定性の確保に主要な役割を担うため、加湿開始前に対して加湿開始後には、全燃料流量に対するF1流量の比率が大きくなるように設定される必要がある。
【0066】
燃焼安定性の確保に最適なF1流量の比率の決定には、F1燃焼温度による判断が有効である。燃焼温度は、燃焼空気温度、燃焼空気湿度、燃料流量と空気流量の比(燃空比)から計算できる。
【0067】
発明者らの高湿分空気利用ガスタービンのパイロットプラントによる実験結果から、加湿空気104は飽和状態であることが分かっている。そこで、本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料制御装置400では、加湿空気104は増湿器内部空気温度500において飽和状態であることから、加湿空気104の湿度を間接的に求める。増湿空気104の圧力が飽和水蒸気圧以上であれば、以下の式(1)から燃焼空気湿度が求められる。
【0068】
Hm(vol%) = Psat / Ptotal × 100 :(1)
ここで、Hm(vol%):湿度、Ptotal:増湿器内圧600、Psat:飽和水蒸気圧である。飽和水蒸気圧は蒸気表から求めることができる。
【0069】
即ち、燃料制御装置400を構成するF1バイアス演算器404に内包した飽和湿度演算器によって増湿器内部空気温度500及び増湿器内圧600の測定値に基づいて上記(1)式の演算式を用いて燃焼空気湿度を演算する。
【0070】
前記F1バイアス演算器404では、演算した燃焼空気湿度から燃焼温度が計算できるので、計算で求めた燃焼温度と、ガスタービン燃焼器2の燃焼安定性の確保に必要なF1燃焼温度を比較することによって、燃焼安定性の確保に必要なF1バイアス流量であるF1バイアス415を求めることができる。
【0071】
本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料制御装置400におけるF1バイアス演算器404による燃焼空気湿度の算出方法は、増湿器4に増湿器給水量制御弁312によって供給される増湿器供給水量301が一定量である期間(図4の期間b3)だけでなく、増湿器給水量制御弁が全閉状態から指定開度に開くまでの増湿器給水量301が変化する数十秒から数分の期間(図4の期間b2)においても燃焼空気湿度の算出に有効である。
【0072】
したがって、増湿器給水量301の変化による燃焼用空気の過渡的な湿度変化に対しても、F1バイアス演算器404による適切なF1バイアス415を演算することによってガスタービン燃焼器2の燃焼安定性が確保できる。
【0073】
発電量またはタービン排ガス温度が所定の量に達した時点で、高湿分ガスタービンの起動が完了し、その後は、負荷の増減に合わせて燃料流量が増減することで負荷追従する(期間c)。高負荷運転時においては、主としてガスタービン燃焼器2の最外周に設置されたF4バーナの燃料流量を増減させて対応する。
【0074】
このときF4バーナに供給する燃料と空気の混合気は、F1〜F3バーナの燃焼ガスと混合して高温になるため、燃料の酸化反応が進行し、高い燃焼効率を得ることができる。
【0075】
また燃焼完結後の温度をNOx生成が顕著となる温度以下になるよう空気配分が設定されているため、F4バーナからのNOx発生をほとんど零とする燃焼が可能となる。またF4バーナに投入した燃料がごくわずかでも反応が完結するため、連続的な燃料切り換えが可能となり、運用性が向上する。
【0076】
本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料を制御する燃料制御装置400の制御ブロックの一例を図6に示す。
【0077】
図6に示すように、本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料を制御する燃料制御装置400は、減算器401と、燃料流量制御器402と、燃料流量比率設定器403と、F1バイアス設定器404と、データベース405と、実燃料制御器407を備えている。
【0078】
そして前記燃料制御装置400では、予め定められた発電量増加率に従うように与えられた負荷指令MWDと実際の発電量MWの差を減算器401で求め、この減算器401で求めた負荷指令MWDと実際の発電量MWの差に基づいて燃料流量制御器402でガスタービン燃焼器2に供給する燃料流量指令値410を演算する。
【0079】
燃料流量制御器402で演算した燃料流量指令値410に基づいて燃料流量比率設定器403でガスタービン燃焼器2に設置されたF1バーナ〜F4バーナに供給する燃料の各燃料流量比率(411〜414)をそれぞれ演算する。
【0080】
一方、F1バイアス演算器404では、増湿器内部空気温度500と増湿器内圧600の計測値に基づいてF1バイアス演算器404に内包した飽和湿度演算器によって上記(1)式の演算式を用いて燃焼空気の飽和湿度を演算する。
【0081】
次に前記F1バイアス演算器404では、計算で求めた燃焼空気の飽和湿度に対応した燃焼空気温度を演算し、演算したこの燃焼空気温度と、ガスタービン燃焼器2の燃焼安定性の確保に必要なF1燃焼温度を比較することによって、燃焼安定性の確保に必要なF1バイアス流量であるF1バイアス415を求めている。
【0082】
データベース405は燃焼空気の飽和湿度を求めるために必要な蒸気表データと、燃焼空気温度、燃焼空気湿度、燃焼空気流量に対するF1の燃焼安定性を確保するために必要なF1燃料流量のデータの中から前記飽和湿度に対応した値をバイアス値としてF1バイアス演算器404に提供するように構成されている。
【0083】
燃料流量比率設定器403では、燃料流量制御器402で演算した燃料流量指令値410を入力値として、F1バイアス415の値を参照しながらガスタービン燃焼器2に設置されたF1バーナ〜F4バーナに供給する燃料の各燃料流量比率(411〜414)をそれぞれ演算する。
【0084】
実燃料制御器407では、F1バーナ〜F4バーナの各燃料流量比率(411〜414)および燃料流量指令値410で演算した燃料流量指令値410を入力し、F1〜F4各燃焼系統の流量または弁開度(211〜214)をそれぞれ演算して出力して、前記ガスタービン燃焼器2に設置されたF1バーナ〜F4バーナに供給する燃料の流量を調節する燃料流量制御弁211〜214の弁開度を制御するように構成している。
【0085】
かくして、図6に示した本実施例であるガスタービン燃焼器2の燃料制御装置400によって、図5の特性図中に実線で示した期間b2におけるF1流量の増加が実現できる。ここで、期間b2でF1流量の低下を示す点線は本実施例によるF1バイアス415を適用しない場合のF1流量であり、この場合、F1燃焼温度が低下してガスタービン燃焼器2の燃焼安定性が損なわれる状況に至ることになる。
【0086】
これに対して本実施例であるガスタービン燃焼器2の燃料制御装置400におけるF1バイアス演算器404で演算したF1バイアス415を燃料流量比率設定器403に入力してガスタービン燃焼器2に供給する燃料を制御することによって、図5に実線で示したように、期間b2におけるF1流量を増加させると、F1燃焼温度を所定の温度に維持でき、この結果、ガスタービン燃焼器2の燃焼安定性を実現することが可能となる。
【0087】
なお、前記F1バイアス演算器404の演算において、増湿器内部温度500と増湿器内圧600は加湿空気104の温度と圧力の計測値で代用しても、加湿空気104の飽和湿度を求めることができる。
【0088】
また、増湿器バイパス弁312や配管等の系が保有する体積によって、水分添加開始後に実際に燃焼空気に水分が添加されるまでに時間遅れが生ずる場合が考えられる。その時は、前記F1バイアス演算器404の演算によって増湿器内部温度500と増湿器内圧600の計測値から求まる燃焼空気湿度に対して、一次遅れを考慮して実際の燃焼空気湿度を推算すれば、ガスタービン燃焼器2の低NOx化と燃焼安定性の確保を両立できる。
【0089】
ガスタービン降負荷時には、配管等の系が保有する体積によって燃焼空気湿度が増湿器4での増湿器供給水量301に追従するまでに遅れが生じると考えられるので一次遅れを考慮して実際の燃焼空気湿度を推算することは特に有効である。
【0090】
本実施例によれば、高湿分空気利用ガスタービンの増湿器への水分添加の開始後でガスタービン燃焼器のNOx生成および火炎安定性に対する過渡的な条件変化が生じた場合に、ガスタービン燃焼器を低NOxで安定して燃焼させることを可能にした高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法および燃料制御装置が実現できる。
【実施例2】
【0091】
高湿分空気利用ガスタービンに設置される本発明の第2実施例であるガスタービン燃焼器の燃料制御方法及び燃料制御装置について図7乃至図9を用いて説明する。
【0092】
本実施例のガスタービン燃焼器の燃料制御装置は、先の第1実施例のガスタービン燃焼器の燃料制御装置と基本的な構成は共通しているので、両者に共通した説明は省略し、相違する部分のみ以下に説明する。
【0093】
本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料制御装置400におけるF1バイアス演算器404が第1実施例のガスタービン燃焼器2の燃料制御装置と異なる点は、増湿器内部温度500の計測値に替えて増湿器供給水温度501、増湿器循環水温度502、増湿器流入空気温度503のいずれか1つの計測値によって、増湿空気104の飽和湿度を求めることである。
【0094】
高湿分空気利用ガスタービンでは、プラントの健全性を確保するため、増湿器供給水温度501、増湿器循環水温度502、増湿器流入空気温度503の計測は必須項目であるため、各部の温度から加湿空気104の飽和湿度を求めるように構成したものである。
【0095】
また、増湿器内部温度500を計測する場合でも、そのバックアップとして、増湿器内部温度500に替えて増湿器供給水温度501、増湿器循環水温度502、増湿器流入空気温度503のいずれか1つの計測値が利用できるという点でも利点がある。
【0096】
図8は、本実施例のガスタービン燃焼器の燃料制御方法及び燃料制御装置を適用した高湿分空気利用ガスタービンの運転方法の一例を表す特性図であり、この図8の特性図においては、図4に示した先の第1実施例のガスタービン燃焼器の燃料制御方法及び燃料制御装置を適用した高湿分空気利用ガスタービンの運転方法の特性図に示した湿度と、増湿器内部温度500(再掲)と、増湿器供給水温度501、増湿器循環水温度502、増湿器流入空気温度503をそれぞれ並べて比較した。
【0097】
発明者らの高湿分空気利用ガスタービンのパイロットプラントを用いた実験によれば、第1実施例の図4と図5で示した高湿分空気利用ガスタービンの運転方法において、増湿器供給水温度501、増湿器循環水温度502、増湿器流入空気温度503は、増湿器内部温度500と時間に対する温度変化が比例していた。
【0098】
本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料を制御する燃料制御装置400の制御ブロックの一例を図9に示す。
【0099】
図9に示した本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料を制御する燃料制御装置400の制御ブロックにおいては、データベース405に、増湿器供給水温度501、増湿器循環水温度502、増湿器入口空気温度503から増湿器内部温度500´を推算する機能を加えた構成となっているが、他の構成は第1実施例の燃料制御装置400の制御ブロックと同じである。
【0100】
本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料を制御する燃料制御装置400によれば、F1バイアス演算器404に内在する飽和湿度の演算器によって、増湿器内部温度500、あるいはデータベース405における増湿器供給水温度501、増湿器循環水温度502、増湿器入口空気温度503のいずれか1つの値から推算される増湿塔内部空気温度500´と、増湿器内圧600とによって燃焼空気の飽和湿度が演算され、この燃焼空気の飽和湿度から演算された燃焼空気温度の計算結果から第1実施例の燃料制御装置400と同様に、増湿器4に水分添加後もガスタービン燃焼器2の燃焼安定性を確保する図5の特性図中に実線で示した期間b2におけるF1流量の増加が実現できる。
【0101】
また、増湿器4に供給する増湿器給水量301の変化による燃焼用空気の過渡的な湿度変化に対しても、第1実施例の場合と同様にガスタービン燃焼器2の燃焼安定性が確保できる。
【0102】
本実施例によれば、高湿分空気利用ガスタービンの増湿器への水分添加の開始後でガスタービン燃焼器のNOx生成および火炎安定性に対する過渡的な条件変化が生じた場合に、ガスタービン燃焼器を低NOxで安定して燃焼させることを可能にした高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法および燃料制御装置が実現できる。
【実施例3】
【0103】
高湿分空気利用ガスタービンに設置される本発明の第3実施例であるガスタービン燃焼器の燃料制御方法及び燃料制御装置について図10乃至図13を用いて説明する。
【0104】
本実施例のガスタービン燃焼器の制御方法及び制御装置は、先の第1実施例のガスタービン燃焼器の制御方法及び制御装置と基本的な構成は共通しているので、両者に共通した説明は省略し、相違する部分のみ以下に説明する。
【0105】
本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料制御装置400は、ガスタービン排気ガス107から熱回収する再生熱交換器5の下流側に給水加熱器22を設置した点が第1実施例のガスタービン燃焼器2の燃料制御装置と異なっている。給水加熱器22は、再生熱交換器5を通過後の排気ガス107から熱エネルギーをさらに回収して増湿器4に供給する水を加温することで高湿分空気利用ガスタービンの熱効率を向上させる利点を有する。
【0106】
本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料制御装置400では、増湿器内部温度500、増湿器供給水温度501、増湿器循環水温度502、増湿器流入空気温度503、空気冷却器側の供給水温度504、給水加熱器側の供給水温度505のうち少なくとも一点と増湿器内圧600とを計測している。
【0107】
本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料制御方法及び燃料制御装置を適用した高湿分空気利用ガスタービンの運転方法の一例を示す特性図について図11、図12を参照しながら説明する。
【0108】
図11の特性図の横軸は図4の特性図と同様に起動開始からの時刻、縦軸は上から回転数、発電量、空気流量、増湿器供給水量(給水加熱器側の増湿器供給水量303と空気冷却器側の増湿器供給水量305)、加湿空気104の湿度、増湿器内部温度500、増湿器供給水温度501、増湿器循環水温度502、増湿器流入空気温度503、空気冷却器側の供給水温度504、給水加熱器側の供給水温度505をそれぞれ示したものである。
【0109】
ここで、増湿器内部温度500、増湿器供給水温度501、増湿器循環水温度502、増湿器流入空気温度503、空気冷却器側供給水温度504、給水加熱器側供給水温度505は時刻に対して同様に温度変化することが、発明者らの高湿分空気利用ガスタービンのパイロットプラントの実験から分かっているのでまとめて示した。
【0110】
また、図12の特性図の横軸は図11の特性図と同様に起動開始からの時刻、縦軸は上から燃焼温度、燃料流量、F1〜F4各系統の個別燃料流量を模式的に表したものである。また、期間aは起動から定格回転数に達するまでの回転数昇速期間、期間bはガスタービン起動中の増負荷期間、期間cは起動終了後の負荷追従運転期間を表す。増負荷期間bは前半の水分無添加期間b1、水分添加量変化期間b2、水分添加量一定期間b3に分かれている。
【0111】
第1実施例の場合の高湿分空気利用ガスタービンの運転方法を示した特性図と異なり、水分添加量変化期間b2は、本実施例の高湿分空気利用ガスタービンでは増湿器4に対して合流して水を供給する2つの給水系統を備えていることから、給水加熱器側の供給水303の添加後に空気冷却器側の供給水305が添加される構成となっている。増湿器4へ水分添加を開始するまでの高湿分空気利用ガスタービンの運転の流れは第1実施例の場合と同様である。
【0112】
本実施例の場合の高湿分空気利用ガスタービンの運転方法では、加湿開始指令により、まず給水加熱器側増湿器給水弁315が開き、開度に応じた流量の給水が増湿器4へと注水される。同時に、給水加熱器バイパス弁314は、給水加熱器22を流れる水量が所定の値となるよう制御されながら、開度を減少し最終的には全閉状態となる。
【0113】
その後は給水加熱器側増湿器給水弁315の開度を制御することで、給水加熱器22を流れる水量が所定の値となるよう調整される。引き続き、空気冷却器側増湿器給水弁312が開き、開度に応じた流量の給水が増湿器4へと注水される。
【0114】
同時に、空気冷却器バイパス弁313は、空気冷却器28を流れる水量が所定の値となるよう制御されながら、開度を減少し最終的には全閉状態となる。その後は空気冷却器側増湿器給水弁312の開度を制御することで、空気冷却器28を流れる水量が所定の値となるよう調整される(期間b2〜b3)。
【0115】
本実施例においても、増湿器4による加湿後のガスタービン燃焼器2の燃焼安定性を確保するのに必要なF1燃料流量を求めるために、燃料制御装置400に設けたF1バイアス演算器404に内在する飽和湿度の演算器によって燃焼空気の飽和湿度を求める。第1実施例において述べたように、増湿器内部温度500と増湿器内圧600から加湿空気104の湿度を求めることができる。
【0116】
または、本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料を制御する燃料制御装置400によれば、増湿器供給水温度501、増湿器循環水温度502、増湿器入口空気温度503、空気冷却器側供給水温度504、給水加熱器側供給水温度505のいずれか1つの計測値から第2実施例の場合と同様にして燃料制御装置400に設けたF1バイアス演算器404に内在する飽和湿度の演算器によって、増湿器内部温度500´を推算し、推算した増湿器内部温度500´と増湿器内圧600から加湿空気104の飽和湿度(燃焼空気湿度)を演算し、演算した燃焼空気湿度から燃焼温度を計算するようにしても良い。
【0117】
この結果、第1実施例及び第2実施例のガスタービン燃焼器2の燃燃料制御装置400と同様に、増湿器4に水分添加後もガスタービン燃焼器2の燃焼安定性を確保する図5の特性図中に実線で示した期間b2におけるF1流量の増加が実現できる。
【0118】
本実施例のガスタービン燃焼器2の燃燃料制御装置400が適用される高湿分空気利用ガスタービンのように給水加熱器28を備えるときは、第2実施例の水温計測箇所に加えてさらに給水加熱器28の給水系統の水温計測によっても燃料制御が可能となり、計測箇所の選択肢が広がる点で利点がある。
【0119】
図13に示した本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料を制御する燃料制御装置400の制御ブロックにおいては、増湿器内部温度500、あるいはデータベース405における増湿器供給水温度501、増湿器循環水温度502、増湿器入口空気温度503、空気冷却器側供給水温度504、給水加熱器側供給水温度505のいずれか1つの値から推算される増湿器内部温度500´と、増湿器内圧600とによって燃焼空気の飽和湿度が演算され、この燃焼空気の飽和湿度から演算された燃焼空気温度の計算結果から第1実施例、第2実施例の燃料制御装置400と同様に増湿器4に水分添加後もガスタービン燃焼器2の燃焼安定性を確保する図5の特性図中に実線で示した期間b2におけるF1流量の増加が実現できる。
【0120】
また、増湿器4に供給する増湿器給水量301の変化による燃焼用空気の過渡的な湿度変化に対しても、第1実施例、第2実施例の場合と同様にガスタービン燃焼器2の燃焼安定性が確保できる。
【0121】
なお、期間b3に到達後の高湿分空気利用ガスタービンの運転方法は第1実施例の場合と同じ運用である。
【0122】
本実施例では、空気冷却器28と給水加熱器22とを備えた構成の高湿分空気利用ガスタービンに本実施例のガスタービン燃焼器の燃料制御装置を適用した場合について説明したが、本構成において空気冷却器28を含まない構成の場合も同様の高湿分空気利用ガスタービンの運転方法が可能である。その場合、増湿器内部温度500の他に、増湿器循環水温度502、給水加熱器側供給水温度505、増湿器供給水温度501によって加湿空気104の湿度(燃焼空気湿度)を求めれば良い。
【0123】
本実施例によれば、高湿分空気利用ガスタービンの増湿器への水分添加の開始後でガスタービン燃焼器のNOx生成および火炎安定性に対する過渡的な条件変化が生じた場合に、ガスタービン燃焼器を低NOxで安定して燃焼させることを可能にした高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法および燃料制御装置が実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は 高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法および燃料制御装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0125】
1:圧縮機、2:燃焼器、3:タービン、4:増湿器、5:再生熱交換器、7:燃焼器ケーシング、8:燃焼器カバー、9:燃料ノズル、10:燃焼器ライナ、 11:ライナフロースリーブ、12:トランジションピース、13:トランジションピースフロースリーブ、20:発電機 、21:シャフト、22:給水加熱器、23:煙道、24:水回収装置、25:排気筒、26:水質浄化装置、27:吸気噴霧装置、28:空気冷却器、30:燃料ヘッダ、31:燃料ノズル、32:空気孔、33:空気孔プレート、35:燃料噴流、36:空気噴流、51:F1燃料フランジ、52:F2燃料フランジ、53:F3燃料フランジ、54:F4燃料フランジ、100:ガスタービン吸い込み空気(大気圧)、101:吸い込み空気(大気圧)、102:高圧空気、103:抽気空気、104:加湿空気、105:高温空気、106〜109:排気ガス、110:増湿器流入空気、200:燃料、201:F1燃料、202:F2燃料、203:F3燃料、204:F4燃料、210:燃料遮断弁、211:F1燃料制御弁、212:F2燃料制御弁、213:F3燃料制御弁、214:F4燃料制御弁、300:圧縮機吸気噴霧水、301:増湿器供給水、302、304:バイパス水、303、305:供給水、310:噴霧水量制御弁、312:増湿器給水量制御弁、313:増湿器バイパス弁、314:増湿器バイパス弁、315:増湿器給水量制御弁、401:減算器、402:燃料流量制御器、403:燃料流量比率設定器、404:F1バイアス設定器、405:データベース、407:実燃料流量制御器、410:燃料流量指令値、411:F1燃料比率、412:F2燃料比率、413:F3燃料比率、414:F4燃料比率、415:F1バイアス、500:増湿器内部温度、501:増湿器供給水温度、502:増湿器循環水温度、503:増湿器流入空気温度、504:増湿器供給水温度、505:増湿器供給水温度、600:増湿器内圧。
【技術分野】
【0001】
本発明は、高湿分空気利用ガスタービンに搭載する低NOxガスタービン燃焼器を安定に運用する高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法および燃料制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
公知例の特開2008−175098号公報には、ガスタービン作動流体(空気)に水分を添加して加湿し、この加湿空気によってガスタービン排ガスの持つ熱エネルギーを回収することで、出力及び効率の向上を図る高湿分空気利用ガスタービン発電プラントにおいて、水分添加開始の前後に燃焼器の低NOx性能を確保しつつ火炎の安定性を維持可能にする燃料制御に関する技術が開示されている。
【0003】
一般に、ガスタービン起動時の回転数上昇時には、圧縮機吸込み空気流量や回転体の振動特性が変化するため、定格回転数到達後に比べると外乱により系が不安定になりやすい傾向がある。高湿分空気利用ガスタービンプラントにおいても、回転数上昇途中に水分添加を開始するとガスタービンに対して外乱を与えることになるため、起動時の安定性を確保するためには定格回転数到達後の部分負荷状態で水分添加を開始する方が望ましい。
【0004】
一方、ガスタービン燃焼器で発生する窒素酸化物(NOx)は、天然ガスや灯油、軽油等の窒素含有量の少ない燃料を用いる場合、空気中の窒素が酸化されて発生するサーマルNOxが大部分である。サーマルNOxの生成は温度依存性が高いため、一般にこれらの燃料を使用するガスタービンでは、火炎温度の低減が低NOx燃焼法の基本思想である。
【0005】
火炎温度を低減する方策として、燃料と空気を予め混合した後に燃焼させる予混合燃焼が知られている。また、高湿分空気利用ガスタービンプラントのように、再生器により燃焼用空気が高温化されている場合には、燃料の自発火を防止しつつ火炎温度を適度に制御して低NOx化を図る必要があり、そのためには、前記特開2008−175098号公報に開示されているように、燃料と空気を多数の小径の同軸噴流としてガスタービン燃焼室に噴出して燃焼させる技術が有効である。
【0006】
このような低NOx化を図るガスタービン燃焼器では、低NOx性能と火炎の安定性を両立させるために燃料流量と空気流量の比である燃空比を所定の範囲に調節することが肝要である。
【0007】
公知例の特開平07−189743号公報には、一般のガスタービンに使用される低NOxガスタービン燃焼器として、ガスタービンの運用にともなう圧縮機入口案内弁の開度変化、大気温度変化、大気圧力変化に起因する空気流量の変化や、燃料温度および燃料発熱量変化に起因する燃料流量の変化に基づいて、ガスタービン燃焼器に供給する燃料流量と空気流量の比を調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−175098号公報
【特許文献2】特開平07−189743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
高湿分空気利用ガスタービンプラントで水分添加が開始されると、ガスタービン燃焼器では燃焼空気中の湿分が増加するため、燃料の燃焼熱が湿分に奪われて火炎温度が低下してNOx発生量は減少する。また、水分の添加によってタービン作動流体の流量が増加するため、回転数を一定に保持するために燃料が減少することによっても火炎温度が低下してNOx発生量は減少する。
【0010】
さらにガスタービン燃焼器で燃焼する火炎温度が低下したことにより、再生器での回収熱量が減少するため、燃焼空気温度が低下することによっても火炎温度が低下し、NOx発生量は減少する。
【0011】
このように水分添加が開始されることよって、(1)湿分増加、(2)燃料減少、(3)空気温度低下が同時に進行して火炎温度が低下するため、NOx発生量は減少するが、逆に火炎の安定性は悪くなる。
【0012】
そこで、あらかじめ水分添加を考慮してガスタービン燃焼器に供給する空気配分を設定しておけば、高湿分条件で火炎の吹き消えが生じないようにガスタービン燃焼器の頭部の予混合部または同軸噴流部に供給する空気流量を適切に設定することができる。
【0013】
しかしながら、このようにガスタービン燃焼器に供給する空気配分が設定されたガスタービン燃焼器では、水分添加開始前には上記とは逆に火炎温度が高くなるため、火炎の安定性は確保されるもののNOx発生量は増加する傾向がある。
【0014】
すなわち、高湿分空気利用ガスタービンにおいては、水分添加開始前後で、ガスタービン燃焼器のNOx生成および火炎安定性に対して大きな条件変化が生ずる。また、水分添加開始後に弁制御やその系の体積等によって、ガスタービン増負荷時には、燃焼用空気に実際に水分が添加されるまでに遅れが生じると考えられる。
【0015】
またガスタービン降負荷時には、同様の理由によって燃焼用空気の湿度が低下するまでに遅れが生じると考えられる。このような条件変化に対してもガスタービン燃焼器を低NOxで安定に燃焼する制御手段が求められる。
【0016】
そこで、前記特開2008−175098号公報に開示されたように、個別に燃料が供給される複数の燃焼部を備えたガスタービン燃焼器の一部の燃焼部を他の燃焼部よりも保炎性に優れた燃焼部(空気流に旋回成分を与える空気孔を備えた燃焼部)で構成し、増湿開始後の所定の間、保炎性に優れた燃焼部における燃焼ガス温度が増湿開始前の燃焼ガス温度以上となるように、保炎性に優れた燃焼部に供給される燃料の比率を大きく設定して燃料を制御することによって、加湿後の燃焼安定性を確保することができる。
【0017】
このような湿度の変化に対して、前記特開平07−189743号公報に開示されているような制御装置の技術を適用して燃焼の安定性を確保する場合は、圧縮空気中の湿分を計測し、その値をもとに燃料流量割合を制御することが考えられる。
【0018】
しかしながら、増湿器出口の空気は飽和条件でかつ100℃前後の高温であり、増湿器出口に湿度センサーを設置した場合、この湿度センサーによる湿度計測は誤差が大きくなる可能性がある。また、再生器出口の空気は飽和条件ではないものの450℃〜650℃と高温であり、湿度センサーを設置した場合、再生器出口の湿度センサーには高い耐熱性が要求されるという課題がある。
【0019】
そこで、高湿分空気利用ガスタービンプラントにおいては、水分添加開始後に燃焼器のNOx生成および燃焼安定性に対して大きな条件変化が生じる燃焼空気湿度の変化に対して、低NOxと燃焼安定性を両立するガスタービン燃焼器の制御手段が求められる。
【0020】
本発明の目的は、高湿分空気利用ガスタービンの増湿器への水分添加の開始後でガスタービン燃焼器のNOx生成および火炎安定性に対する過渡的な条件変化が生じた場合に、ガスタービン燃焼器を低NOxで安定して燃焼させることを可能にした高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法および燃料制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法は、圧縮機と、圧縮機で圧縮された圧縮空気を用いて燃料を燃焼し燃焼ガスを発生させるガスタービン燃焼器と、ガスタービン燃焼器で発生した燃焼ガスによって駆動されるタービンと、圧縮機で圧縮されて前記ガスタービン燃焼器に供給される圧縮空気を加湿する増湿器と、増湿器に供給する水を前記タービンから排気した排ガスで加熱する再生熱交換器を備えた高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器であって、前記ガスタービン燃焼器は、燃料を供給する複数の燃料ノズルと燃焼用空気を供給する複数の空気流路とで構成する燃焼部を複数設置し、前記複数設置された燃焼部のうち一部の燃焼部に他の燃焼部よりも保炎性に優れた燃焼部を形成しているガスタービン燃焼器の燃料制御方法において、前記保炎性に優れた燃焼部に燃料を供給する燃料比率の設定を、前記増湿器の内部温度と増湿器の内圧から推算した圧縮空気の空気湿度をもとに設定して、前記ガスタービン燃焼器の複数の燃焼部に供給する燃料の流量割合を制御することを制御することを特徴とする。
また本発明の高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法は、圧縮機と、圧縮機で圧縮された圧縮空気を用いて燃料を燃焼し燃焼ガスを発生させるガスタービン燃焼器と、ガスタービン燃焼器で発生した燃焼ガスによって駆動されるタービンと、圧縮機で圧縮されて前記ガスタービン燃焼器に供給される圧縮空気を加湿する増湿器と、増湿器に供給する水を前記タービンから排気した排ガスで加熱する再生熱交換器を備えた高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器であって、前記ガスタービン燃焼器は、燃料を供給する複数の燃料ノズルと、前記燃料ノズルと同軸となるように空気孔プレートに形成された燃焼用空気を供給する複数の空気孔とで構成する燃焼部を複数設置し、前記複数設置された燃焼部のうち、空気孔プレートの内周側に位置する燃焼部に空気孔プレートの外周側に位置する他の燃焼部よりも保炎性に優れた燃焼部を形成しているガスタービン燃焼器の燃料制御方法において、前記保炎性に優れた燃焼部に燃料を供給する燃料比率の設定を、前記増湿器の内部温度と増湿器の内圧から推算した圧縮空気の空気湿度をもとに設定して、前記ガスタービン燃焼器の複数の燃焼部に供給する燃料の流量割合を制御することを制御することを特徴とする。
【0022】
本発明の高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御装置は、圧縮機と、圧縮機で圧縮された圧縮空気を用いて燃料を燃焼し燃焼ガスを発生させるガスタービン燃焼器と、ガスタービン燃焼器で発生した燃焼ガスによって駆動されるタービンと、圧縮機で圧縮されて前記ガスタービン燃焼器に供給される燃焼用空気を加湿する増湿器と、増湿器に供給する水を前記タービンから排気した排ガスで加熱する再生熱交換器を備えた高湿分空気利用ガスタービンであって、前記ガスタービン燃焼器は、燃料を供給する複数の燃料ノズルと燃焼用空気を供給する複数の空気流路とで構成する燃焼部を複数設置し、前記複数設置された燃焼部のうち一部の燃焼部に他の燃焼部よりも保炎性に優れた燃焼部を形成しているガスタービン燃焼器の燃料制御装置において、前記ガスタービン燃焼器の複数の燃焼部に燃料を供給する燃料制御装置は、
増湿器の内部空気温度と増湿器の内圧から推算した燃焼用空気湿度をもとに前記保炎性に優れたガスタービン燃焼器の燃焼部に供給する燃料比率のバイアス量を演算するバイアス演算器と、前記バイアス演算器の出力に基づいて前記保炎性に優れた燃焼部に供給する燃料比率を算出する燃料流量比率設定器を備えて、前記ガスタービン燃焼器の複数の燃焼部に供給する燃料の流量割合を制御することを特徴とする。
【0023】
また本発明の高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御装置は、圧縮機と、圧縮機で圧縮された圧縮空気を用いて燃料を燃焼し燃焼ガスを発生させるガスタービン燃焼器と、ガスタービン燃焼器で発生した燃焼ガスによって駆動されるタービンと、圧縮機で圧縮されて前記ガスタービン燃焼器に供給される燃焼用空気を加湿する増湿器と、増湿器に供給する水を前記タービンから排気した排ガスで加熱する再生熱交換器を備えた高湿分空気利用ガスタービンであって、前記ガスタービン燃焼器は、燃料を供給する複数の燃料ノズルと、前記燃料ノズルと同軸となるように空気孔プレートに形成された燃焼用空気を供給する複数の空気孔とで構成する燃焼部を複数設置し、前記複数設置された燃焼部のうち、空気孔プレートの内周側に位置する燃焼部に空気孔プレートの外周側に位置する他の燃焼部よりも保炎性に優れた燃焼部を形成しているガスタービン燃焼器の燃料制御装置において、前記ガスタービン燃焼器の複数の燃焼部に燃料を供給する燃料制御装置は、増湿器の内部空気温度と増湿器の内圧から推算した燃焼用空気湿度をもとに前記保炎性に優れたガスタービン燃焼器の燃焼部に供給する燃料比率のバイアス量を演算するバイアス演算器と、
前記バイアス演算器の出力に基づいて前記保炎性に優れた燃焼部に供給する燃料比率を算出する燃料流量比率設定器を備えて、前記ガスタービン燃焼器の複数の燃焼部に供給する燃料の流量割合を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、高湿分空気利用ガスタービンの増湿器への水分添加の開始後でガスタービン燃焼器のNOx生成および火炎安定性に対する過渡的な条件変化が生じた場合に、ガスタービン燃焼器を低NOxで安定して燃焼させることを可能にした高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法および燃料制御装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施例であるガスタービン燃焼器を備えた高湿分空気利用ガスタービンの概略構成を示す系統図。
【図2】本発明の第1実施例であるガスタービン燃焼器に設置した燃料ノズルの構成を示す部分構造図。
【図3】図2示した第1実施例のガスタービン燃焼器に設置した燃焼部を構成する空気孔プレートを示す正面図。
【図4】本発明の第1実施例のガスタービン燃焼器を備えた高湿分空気利用ガスタービンの運転方法の一例を表す特性図。
【図5】本発明の第1実施例のガスタービン燃焼器を備えた高湿分空気利用ガスタービンの運転方法の他の一例を表す特性図。
【図6】本発明の第1実施例のガスタービン燃焼器による燃料制御装置の構成を示す制御ブロック図。
【図7】本発明の第2実施例であるガスタービン燃焼器を備えた高湿分空気利用ガスタービンの概略構成を示す系統図。
【図8】本発明の第2実施例のガスタービン燃焼器を備えた高湿分空気利用ガスタービンの運転方法の一例を表す特性図。
【図9】本発明の第2実施例のガスタービン燃焼器による燃料制御装置の構成を示す制御ブロック図。
【図10】本発明の第3実施例であるガスタービン燃焼器を備えた高湿分空気利用ガスタービンの概略構成を示す系統図。
【図11】本発明の第3実施例のガスタービン燃焼器を備えた高湿分空気利用ガスタービンの運転方法の一例を表す特性図。
【図12】本発明の第3実施例のガスタービン燃焼器を備えた高湿分空気利用ガスタービンの運転方法の他の一例を表す特性図。
【図13】本発明の第3実施例のガスタービン燃焼器による燃料制御装置の構成を示す制御ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
高湿分空気利用ガスタービンに設置される本発明の実施例であるガスタービン燃焼器の燃料制御方法及び燃料制御装置について図面を引用して以下に説明する。
【実施例1】
【0027】
高湿分空気利用ガスタービンに設置される本発明の第1実施例であるガスタービン燃焼器の燃料制御方法及び燃料制御装置について図1乃至図6を用いて説明する。
【0028】
図1は本発明の第1の実施例であるガスタービン燃焼器が設置される高湿分空気利用ガスタービンの全体構成を表す系統図である。
【0029】
図1において、発電用の高湿分空気利用ガスタービンは、空気を圧縮する圧縮機1と、圧縮機1で圧縮された圧縮空気を用いて燃料を燃焼し燃焼ガスを発生させるガスタービン燃焼器2と、ガスタービン燃焼器2で発生した燃焼ガスによって駆動されるタービン3と、圧縮機1で圧縮されて前記ガスタービン燃焼器2に供給される圧縮空気を加湿する増湿器4と、増湿器4に供給する水を前記タービン3から排気した排ガスで加熱する再生熱交換器5とから構成され、タービン3の出力により発電機20を回転させ電力を得ている。
【0030】
ガスタービン燃焼器2は、燃焼器ケーシング7および燃焼器カバー8内に格納されている。このガスタービン燃焼器2の頭部には燃料ノズル9が設置されており、燃料ノズル9の下流側には、燃焼用空気と燃焼ガスを隔てる概略円筒状の燃焼器ライナ10が接地されている。
【0031】
また、高湿分空気利用ガスタービンには、圧縮機1入口のガスタービン吸い込み空気100に水300を噴霧する吸気噴霧装置27が備えられている。前記吸気噴霧装置27に供給される水300は水質浄化装置26で水処理されて噴霧水量制御弁310で流量を調整された水300である。
【0032】
そして吸気噴霧装置27によって水300を水噴霧した後の吸い込み空気101(大気圧)を圧縮機1で圧縮した高圧空気102は、トランジションピース12とトランジションピースフロースリーブ13との間隙を流れてトランジションピース12を対流冷却し、抽気空気103となる。
【0033】
抽気空気103は、空気冷却器28によって100℃近くまで冷却されて増湿器流入空気110となって、増湿器4に供給される。
【0034】
増湿器流入空気110は、増湿器4において水分を添加されて加湿空気104となる。空気の加湿方法として、濡壁塔或いは増湿塔による加湿が知られている。
【0035】
増湿器4の上部には、高湿分空気利用ガスタービンの健全性を監視するために、増湿器内部温度500を計測する温度計と増湿器内圧600を計測する圧力計がそれぞれ設置される。
【0036】
増湿器4で水分を添加された加湿空気104は再生熱交換器5に導かれ、この再生熱交換器5でタービン3から排出された排気ガス107との熱交換により加熱されて高温空気105となりガスタービン燃焼器2の燃焼器ケーシング7へと注入される。
【0037】
ガスタービン燃焼器2における燃焼器ケーシング7内を流れる空気は、燃焼器ライナ10の外側の概して環状の空間を通って燃焼器頭部へ向かって流れ、途中、燃焼器ライナ10の対流冷却に使用される。
【0038】
また、高温空気105の一部は燃焼器ライナ10に設けられた冷却孔から燃焼器ライナ10内へ流入し、フィルム冷却に使用される。残りの高温空気105(図中A部詳細の36)は、後述する空気孔32から燃焼器ライナ10内に流入し、燃料ノズル31から噴出される燃料とともに燃焼に使用され、高温の燃焼ガス106を生成してタービン3へと送られる。
【0039】
タービン3で仕事をしてタービン3から排出された低圧の排気ガス107は、再生器5で排気ガス107の保有する熱エネルギーを熱回収した後に、該再生器5の下流側に位置する水回収装置24を経て、低温の排気ガス109として排気塔25から大気中に排気される。
【0040】
また、前記排気ガス108中の水分は再生器5の下流側の水回収装置24によって回収する。本図では、水回収の方式として煙道に水を噴霧して排気ガス108中の水分を凝集、落下させて回収する方式を採用している。
【0041】
高温の燃焼ガス106によって駆動される前記タービン3で得られた駆動力は、シャフト21を通じてタービン3と連結された圧縮機1及び発電機20に伝えられる。駆動力の一部は圧縮機1を回転させて吸い込み空気の加圧に用いられる。また、発電機20ではこの駆動力を電力に変換する。
【0042】
水回収装置24及び増湿器4の底部から回収した水は、水回収装置24への噴霧水あるいは増湿器4への加湿水として再利用される。
【0043】
発電用の高湿分空気利用ガスタービンの出力である発電機20の発電量MWは、ガスタービン燃焼器2に供給する燃料流量を調節する燃料流量調整弁211〜214の開閉によって制御される。一方、ガスタービン燃焼器2に供給する空気への加湿量は増湿器4への加湿水量を調節する増湿器給水弁312の開閉によって制御される。
【0044】
図2及び図3は本発明の第1実施例であるガスタービン燃焼器2に設置した燃焼部を構成する燃料ノズル9の構造を示した部分断面図と、空気孔プレート33を示した正面図である。
【0045】
本実施例のガスタービン燃焼器2においては、図2及び図3に示したように燃焼器カバー8の燃料ノズルヘッダ30に環状に配置された多数の燃料ノズル31が取り付けられており、前記各燃料ノズル31の1本1本に対応した空気流路を形成する環状に配置された多数の空気孔32を備えた空気孔プレート33が、サポート34を介して燃焼器カバー8に取り付けられた構造となっている。
【0046】
前記複数の燃料ノズル31と、該燃料ノズル31と対応してそれぞれ設置された複数の空気孔32とは円環状のほぼ同心状を成すように配設されており、図2のA部詳細に示したように、空気孔プレート33に形成した空気孔32の中央に燃料噴流35と、この燃料噴流35の周囲に空気孔32に流入する空気噴流36との同軸噴流を形成するように構成されている。
【0047】
前記した同軸噴流構造によって、空気孔32内では燃料−空気は未混合であるため、高湿分空気利用ガスタービンの様に燃焼空気が高温であっても燃料の自発火は発生せず、空気孔プレート33を溶損するようなことなく信頼性の高いガスタービン燃焼器2を得ることができる。
【0048】
また、このような同軸噴流を多数形成することにより、燃料と空気の界面が増加して混合が促進するため、ガスタービン燃焼器2で生じるNOxの発生量を抑制することができる。
【0049】
図3は本実施例のガスタービン燃焼器2を構成する空気孔プレート33を燃焼器下流側から見た正面図である。本実施例のガスタービン燃焼器2において、多数の空気孔32(および、図示されていないが空気孔32と対を成す燃料ノズル31)は空気孔プレート33の半径方向内周側から半径方向外周側にかけて環状の空気孔列が同心状に8列配置されている。
【0050】
前記ガスタービン燃焼器2の燃焼部を形成するバーナは、中心側の4列(第1列〜第4列)が第1群(F1)の燃焼部を形成するF1バーナ、第5列が第2群(F2)の燃焼部を形成するF2バーナ、その外側の2列(第6、7列)が第3群(F3)の燃焼部を形成するF3バーナ、最外周(第8列)が第4群(F4)の燃焼部を形成するF4バーナとそれぞれ群分けされており、図2に示した様に、F1バーナ〜F4バーナのそれぞれの群ごとにヘッダ30に設けたフランジ(41〜44)を通じて燃料が燃料ノズル31から供給できる様に燃料系統が群分けして配設されている。
【0051】
このような燃料系統の群分け構造を採用することにより、ガスタービン燃焼器2に供給する燃料流量変化に対して燃料供給する燃料ノズルの本数を段階的に変化させる燃料ステージングが可能となり、ガスタービン部分負荷運転時におけるガスタービン燃焼器2の燃焼安定性が高まるとともに低NOx化が可能となる。
【0052】
さらに中央の4列(F1)の燃焼部を形成するF1バーナを構成する空気孔プレート33の空気孔32はピッチ円接線方向に角度(図3中のα°、本実施例では15°としている)を持った斜め穴に形成することで、この空気孔32を流下する空気流全体に旋回をかけ、生じる循環流によって火炎を安定化させている。
【0053】
F1バーナの外周側に配設したF2バーナ〜F4バーナは、中央のF1バーナの燃焼熱によって火炎が安定化される。したがって、高湿分ガスタービンにおいて加湿が開始され、燃焼用空気の湿分が増加する際には、ガスタービン燃焼器2のF1バーナに供給する燃料流量を増加させ、局所的に高温な部分を設けることで、F1火炎の燃焼安定性が向上する。
【0054】
F1燃料の増加分、F2バーナ以降のバーナの燃料流量は減少するが、これらの火炎はF1バーナの燃焼熱によって火炎が安定化されているため、バーナ全体として、燃焼安定性が確保される。
【0055】
本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料制御方法及び燃料制御装置を適用した高湿分空気利用ガスタービンの運転方法の一例について、図4、図5に示した特性図を参照しながら説明する。
【0056】
図4の高湿分空気利用ガスタービンの運転方法の特性図の横軸は起動開始からの時刻、縦軸は上から回転数、発電量、空気流量、増湿器供給水量301、加湿空気104の湿度、増湿器内部温度500をそれぞれ示したものである。
【0057】
また、図5の高湿分空気利用ガスタービンの運転方法の横軸は図4と同じく起動開始からの時刻、縦軸は上から燃焼温度、全体の燃料流量、F1バーナ〜F4バーナに燃料を供給する各燃料系統の個別燃料流量(F1流量〜F4流量)を模式的に表したものである。
【0058】
また、図4及び図5の特性図において、期間aは起動から定格回転数に達するまでの回転数昇速期間、期間bはガスタービン起動中の増負荷期間、期間cは起動終了後の負荷追従運転期間を表す。増負荷期間bは前半の水分無添加期間b1、水分添加量変化期間b2、水分添加量一定期間b3に分かれている。
【0059】
本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料制御装置によるガスタービン燃焼器2の運転方法においては、まず、制御装置400からの指令によって燃料流量が比較的少ない着火および昇速時はガスタービン燃焼器2の軸心側に位置するF1バーナのみを燃焼させて運転(すなわち図2の燃料系統201のみに燃料を供給)し、定格回転数無負荷条件付近まで昇速させる。このF1バーナの単独燃焼を今後の説明では1/4モードと呼ぶことにする。
【0060】
次にそれ以降の負荷上昇過程(期間b)では、ガスタービン燃焼器2のF1バーナの外周側に設置したF2バーナに燃料を投入して、F1+F2で運転する。すなわち、燃料系統201及び202に燃料を供給し、制御装置400からの指令によってこれらの燃料系統201及び202にそれぞれ設置された流量制御弁211及び212の開度を調節することにより各燃料流量を制御する。このときを2/4モードと呼ぶことにする。
【0061】
次に、さらにガスタービン燃焼器2のF2バーナの外周側に設置したF3バーナに燃料を投入する燃料系統203に燃料を供給し、F3バーナに着火した状態を3/4モードと呼ぶ。ここまでの過程では高湿分空気利用ガスタービンの増湿器4には水分が添加されていない(b1)。すなわち図1に示した高湿分空気利用ガスタービンの増湿器4に供給する水の流量を調節する増湿器給水弁311は全閉であり、増湿器バイパス弁312の開度によって再生熱交換器5の下流側に設置された給水過熱器12を流れる水量が制御されている。
【0062】
また、この間の燃料流量増加は、ガスタービンの起動計画に定められた負荷上昇率に従ってガスタービン発電量が増加する様に、流量制御弁211、212及び213の開度を調節することによってF1バーナ、F2バーナ、F3バーナに供給する燃料流量が制御される。また、F1バーナ、F2バーナ、F3バーナに供給する各燃料系統201乃至203の燃料流量配分は、ガスタービン燃焼器2の燃焼が安定しかつ生成するNOxが最小となる様に定められた比率で供給される。
【0063】
本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料制御方法及び燃料制御装置においては、この3/4モードで、高湿分空気利用ガスタービンの増湿器4への水分添加を開始する。加湿開始指令により空気冷却器側増湿器給水弁312が開き、開度に応じた流量の給水が増湿器4へと注水される(期間b2)。同時に、空気冷却器側増湿器バイパス弁313は、空気冷却器28を流れる水量が所定の値となるよう制御されながら、開度を減少し最終的には全閉状態となる。
【0064】
その後は空気冷却器側増湿器給水弁312の開度を制御することで、空気冷却器28を流れる水量が所定の値となるよう調整される(期間b2〜b3)。
【0065】
このとき、ガスタービンの起動計画に定められた負荷上昇率に従ってガスタービン発電量が増加する様に、燃料流量が制御される。そのうち、F1燃料は、燃焼安定性の確保に主要な役割を担うため、加湿開始前に対して加湿開始後には、全燃料流量に対するF1流量の比率が大きくなるように設定される必要がある。
【0066】
燃焼安定性の確保に最適なF1流量の比率の決定には、F1燃焼温度による判断が有効である。燃焼温度は、燃焼空気温度、燃焼空気湿度、燃料流量と空気流量の比(燃空比)から計算できる。
【0067】
発明者らの高湿分空気利用ガスタービンのパイロットプラントによる実験結果から、加湿空気104は飽和状態であることが分かっている。そこで、本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料制御装置400では、加湿空気104は増湿器内部空気温度500において飽和状態であることから、加湿空気104の湿度を間接的に求める。増湿空気104の圧力が飽和水蒸気圧以上であれば、以下の式(1)から燃焼空気湿度が求められる。
【0068】
Hm(vol%) = Psat / Ptotal × 100 :(1)
ここで、Hm(vol%):湿度、Ptotal:増湿器内圧600、Psat:飽和水蒸気圧である。飽和水蒸気圧は蒸気表から求めることができる。
【0069】
即ち、燃料制御装置400を構成するF1バイアス演算器404に内包した飽和湿度演算器によって増湿器内部空気温度500及び増湿器内圧600の測定値に基づいて上記(1)式の演算式を用いて燃焼空気湿度を演算する。
【0070】
前記F1バイアス演算器404では、演算した燃焼空気湿度から燃焼温度が計算できるので、計算で求めた燃焼温度と、ガスタービン燃焼器2の燃焼安定性の確保に必要なF1燃焼温度を比較することによって、燃焼安定性の確保に必要なF1バイアス流量であるF1バイアス415を求めることができる。
【0071】
本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料制御装置400におけるF1バイアス演算器404による燃焼空気湿度の算出方法は、増湿器4に増湿器給水量制御弁312によって供給される増湿器供給水量301が一定量である期間(図4の期間b3)だけでなく、増湿器給水量制御弁が全閉状態から指定開度に開くまでの増湿器給水量301が変化する数十秒から数分の期間(図4の期間b2)においても燃焼空気湿度の算出に有効である。
【0072】
したがって、増湿器給水量301の変化による燃焼用空気の過渡的な湿度変化に対しても、F1バイアス演算器404による適切なF1バイアス415を演算することによってガスタービン燃焼器2の燃焼安定性が確保できる。
【0073】
発電量またはタービン排ガス温度が所定の量に達した時点で、高湿分ガスタービンの起動が完了し、その後は、負荷の増減に合わせて燃料流量が増減することで負荷追従する(期間c)。高負荷運転時においては、主としてガスタービン燃焼器2の最外周に設置されたF4バーナの燃料流量を増減させて対応する。
【0074】
このときF4バーナに供給する燃料と空気の混合気は、F1〜F3バーナの燃焼ガスと混合して高温になるため、燃料の酸化反応が進行し、高い燃焼効率を得ることができる。
【0075】
また燃焼完結後の温度をNOx生成が顕著となる温度以下になるよう空気配分が設定されているため、F4バーナからのNOx発生をほとんど零とする燃焼が可能となる。またF4バーナに投入した燃料がごくわずかでも反応が完結するため、連続的な燃料切り換えが可能となり、運用性が向上する。
【0076】
本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料を制御する燃料制御装置400の制御ブロックの一例を図6に示す。
【0077】
図6に示すように、本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料を制御する燃料制御装置400は、減算器401と、燃料流量制御器402と、燃料流量比率設定器403と、F1バイアス設定器404と、データベース405と、実燃料制御器407を備えている。
【0078】
そして前記燃料制御装置400では、予め定められた発電量増加率に従うように与えられた負荷指令MWDと実際の発電量MWの差を減算器401で求め、この減算器401で求めた負荷指令MWDと実際の発電量MWの差に基づいて燃料流量制御器402でガスタービン燃焼器2に供給する燃料流量指令値410を演算する。
【0079】
燃料流量制御器402で演算した燃料流量指令値410に基づいて燃料流量比率設定器403でガスタービン燃焼器2に設置されたF1バーナ〜F4バーナに供給する燃料の各燃料流量比率(411〜414)をそれぞれ演算する。
【0080】
一方、F1バイアス演算器404では、増湿器内部空気温度500と増湿器内圧600の計測値に基づいてF1バイアス演算器404に内包した飽和湿度演算器によって上記(1)式の演算式を用いて燃焼空気の飽和湿度を演算する。
【0081】
次に前記F1バイアス演算器404では、計算で求めた燃焼空気の飽和湿度に対応した燃焼空気温度を演算し、演算したこの燃焼空気温度と、ガスタービン燃焼器2の燃焼安定性の確保に必要なF1燃焼温度を比較することによって、燃焼安定性の確保に必要なF1バイアス流量であるF1バイアス415を求めている。
【0082】
データベース405は燃焼空気の飽和湿度を求めるために必要な蒸気表データと、燃焼空気温度、燃焼空気湿度、燃焼空気流量に対するF1の燃焼安定性を確保するために必要なF1燃料流量のデータの中から前記飽和湿度に対応した値をバイアス値としてF1バイアス演算器404に提供するように構成されている。
【0083】
燃料流量比率設定器403では、燃料流量制御器402で演算した燃料流量指令値410を入力値として、F1バイアス415の値を参照しながらガスタービン燃焼器2に設置されたF1バーナ〜F4バーナに供給する燃料の各燃料流量比率(411〜414)をそれぞれ演算する。
【0084】
実燃料制御器407では、F1バーナ〜F4バーナの各燃料流量比率(411〜414)および燃料流量指令値410で演算した燃料流量指令値410を入力し、F1〜F4各燃焼系統の流量または弁開度(211〜214)をそれぞれ演算して出力して、前記ガスタービン燃焼器2に設置されたF1バーナ〜F4バーナに供給する燃料の流量を調節する燃料流量制御弁211〜214の弁開度を制御するように構成している。
【0085】
かくして、図6に示した本実施例であるガスタービン燃焼器2の燃料制御装置400によって、図5の特性図中に実線で示した期間b2におけるF1流量の増加が実現できる。ここで、期間b2でF1流量の低下を示す点線は本実施例によるF1バイアス415を適用しない場合のF1流量であり、この場合、F1燃焼温度が低下してガスタービン燃焼器2の燃焼安定性が損なわれる状況に至ることになる。
【0086】
これに対して本実施例であるガスタービン燃焼器2の燃料制御装置400におけるF1バイアス演算器404で演算したF1バイアス415を燃料流量比率設定器403に入力してガスタービン燃焼器2に供給する燃料を制御することによって、図5に実線で示したように、期間b2におけるF1流量を増加させると、F1燃焼温度を所定の温度に維持でき、この結果、ガスタービン燃焼器2の燃焼安定性を実現することが可能となる。
【0087】
なお、前記F1バイアス演算器404の演算において、増湿器内部温度500と増湿器内圧600は加湿空気104の温度と圧力の計測値で代用しても、加湿空気104の飽和湿度を求めることができる。
【0088】
また、増湿器バイパス弁312や配管等の系が保有する体積によって、水分添加開始後に実際に燃焼空気に水分が添加されるまでに時間遅れが生ずる場合が考えられる。その時は、前記F1バイアス演算器404の演算によって増湿器内部温度500と増湿器内圧600の計測値から求まる燃焼空気湿度に対して、一次遅れを考慮して実際の燃焼空気湿度を推算すれば、ガスタービン燃焼器2の低NOx化と燃焼安定性の確保を両立できる。
【0089】
ガスタービン降負荷時には、配管等の系が保有する体積によって燃焼空気湿度が増湿器4での増湿器供給水量301に追従するまでに遅れが生じると考えられるので一次遅れを考慮して実際の燃焼空気湿度を推算することは特に有効である。
【0090】
本実施例によれば、高湿分空気利用ガスタービンの増湿器への水分添加の開始後でガスタービン燃焼器のNOx生成および火炎安定性に対する過渡的な条件変化が生じた場合に、ガスタービン燃焼器を低NOxで安定して燃焼させることを可能にした高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法および燃料制御装置が実現できる。
【実施例2】
【0091】
高湿分空気利用ガスタービンに設置される本発明の第2実施例であるガスタービン燃焼器の燃料制御方法及び燃料制御装置について図7乃至図9を用いて説明する。
【0092】
本実施例のガスタービン燃焼器の燃料制御装置は、先の第1実施例のガスタービン燃焼器の燃料制御装置と基本的な構成は共通しているので、両者に共通した説明は省略し、相違する部分のみ以下に説明する。
【0093】
本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料制御装置400におけるF1バイアス演算器404が第1実施例のガスタービン燃焼器2の燃料制御装置と異なる点は、増湿器内部温度500の計測値に替えて増湿器供給水温度501、増湿器循環水温度502、増湿器流入空気温度503のいずれか1つの計測値によって、増湿空気104の飽和湿度を求めることである。
【0094】
高湿分空気利用ガスタービンでは、プラントの健全性を確保するため、増湿器供給水温度501、増湿器循環水温度502、増湿器流入空気温度503の計測は必須項目であるため、各部の温度から加湿空気104の飽和湿度を求めるように構成したものである。
【0095】
また、増湿器内部温度500を計測する場合でも、そのバックアップとして、増湿器内部温度500に替えて増湿器供給水温度501、増湿器循環水温度502、増湿器流入空気温度503のいずれか1つの計測値が利用できるという点でも利点がある。
【0096】
図8は、本実施例のガスタービン燃焼器の燃料制御方法及び燃料制御装置を適用した高湿分空気利用ガスタービンの運転方法の一例を表す特性図であり、この図8の特性図においては、図4に示した先の第1実施例のガスタービン燃焼器の燃料制御方法及び燃料制御装置を適用した高湿分空気利用ガスタービンの運転方法の特性図に示した湿度と、増湿器内部温度500(再掲)と、増湿器供給水温度501、増湿器循環水温度502、増湿器流入空気温度503をそれぞれ並べて比較した。
【0097】
発明者らの高湿分空気利用ガスタービンのパイロットプラントを用いた実験によれば、第1実施例の図4と図5で示した高湿分空気利用ガスタービンの運転方法において、増湿器供給水温度501、増湿器循環水温度502、増湿器流入空気温度503は、増湿器内部温度500と時間に対する温度変化が比例していた。
【0098】
本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料を制御する燃料制御装置400の制御ブロックの一例を図9に示す。
【0099】
図9に示した本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料を制御する燃料制御装置400の制御ブロックにおいては、データベース405に、増湿器供給水温度501、増湿器循環水温度502、増湿器入口空気温度503から増湿器内部温度500´を推算する機能を加えた構成となっているが、他の構成は第1実施例の燃料制御装置400の制御ブロックと同じである。
【0100】
本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料を制御する燃料制御装置400によれば、F1バイアス演算器404に内在する飽和湿度の演算器によって、増湿器内部温度500、あるいはデータベース405における増湿器供給水温度501、増湿器循環水温度502、増湿器入口空気温度503のいずれか1つの値から推算される増湿塔内部空気温度500´と、増湿器内圧600とによって燃焼空気の飽和湿度が演算され、この燃焼空気の飽和湿度から演算された燃焼空気温度の計算結果から第1実施例の燃料制御装置400と同様に、増湿器4に水分添加後もガスタービン燃焼器2の燃焼安定性を確保する図5の特性図中に実線で示した期間b2におけるF1流量の増加が実現できる。
【0101】
また、増湿器4に供給する増湿器給水量301の変化による燃焼用空気の過渡的な湿度変化に対しても、第1実施例の場合と同様にガスタービン燃焼器2の燃焼安定性が確保できる。
【0102】
本実施例によれば、高湿分空気利用ガスタービンの増湿器への水分添加の開始後でガスタービン燃焼器のNOx生成および火炎安定性に対する過渡的な条件変化が生じた場合に、ガスタービン燃焼器を低NOxで安定して燃焼させることを可能にした高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法および燃料制御装置が実現できる。
【実施例3】
【0103】
高湿分空気利用ガスタービンに設置される本発明の第3実施例であるガスタービン燃焼器の燃料制御方法及び燃料制御装置について図10乃至図13を用いて説明する。
【0104】
本実施例のガスタービン燃焼器の制御方法及び制御装置は、先の第1実施例のガスタービン燃焼器の制御方法及び制御装置と基本的な構成は共通しているので、両者に共通した説明は省略し、相違する部分のみ以下に説明する。
【0105】
本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料制御装置400は、ガスタービン排気ガス107から熱回収する再生熱交換器5の下流側に給水加熱器22を設置した点が第1実施例のガスタービン燃焼器2の燃料制御装置と異なっている。給水加熱器22は、再生熱交換器5を通過後の排気ガス107から熱エネルギーをさらに回収して増湿器4に供給する水を加温することで高湿分空気利用ガスタービンの熱効率を向上させる利点を有する。
【0106】
本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料制御装置400では、増湿器内部温度500、増湿器供給水温度501、増湿器循環水温度502、増湿器流入空気温度503、空気冷却器側の供給水温度504、給水加熱器側の供給水温度505のうち少なくとも一点と増湿器内圧600とを計測している。
【0107】
本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料制御方法及び燃料制御装置を適用した高湿分空気利用ガスタービンの運転方法の一例を示す特性図について図11、図12を参照しながら説明する。
【0108】
図11の特性図の横軸は図4の特性図と同様に起動開始からの時刻、縦軸は上から回転数、発電量、空気流量、増湿器供給水量(給水加熱器側の増湿器供給水量303と空気冷却器側の増湿器供給水量305)、加湿空気104の湿度、増湿器内部温度500、増湿器供給水温度501、増湿器循環水温度502、増湿器流入空気温度503、空気冷却器側の供給水温度504、給水加熱器側の供給水温度505をそれぞれ示したものである。
【0109】
ここで、増湿器内部温度500、増湿器供給水温度501、増湿器循環水温度502、増湿器流入空気温度503、空気冷却器側供給水温度504、給水加熱器側供給水温度505は時刻に対して同様に温度変化することが、発明者らの高湿分空気利用ガスタービンのパイロットプラントの実験から分かっているのでまとめて示した。
【0110】
また、図12の特性図の横軸は図11の特性図と同様に起動開始からの時刻、縦軸は上から燃焼温度、燃料流量、F1〜F4各系統の個別燃料流量を模式的に表したものである。また、期間aは起動から定格回転数に達するまでの回転数昇速期間、期間bはガスタービン起動中の増負荷期間、期間cは起動終了後の負荷追従運転期間を表す。増負荷期間bは前半の水分無添加期間b1、水分添加量変化期間b2、水分添加量一定期間b3に分かれている。
【0111】
第1実施例の場合の高湿分空気利用ガスタービンの運転方法を示した特性図と異なり、水分添加量変化期間b2は、本実施例の高湿分空気利用ガスタービンでは増湿器4に対して合流して水を供給する2つの給水系統を備えていることから、給水加熱器側の供給水303の添加後に空気冷却器側の供給水305が添加される構成となっている。増湿器4へ水分添加を開始するまでの高湿分空気利用ガスタービンの運転の流れは第1実施例の場合と同様である。
【0112】
本実施例の場合の高湿分空気利用ガスタービンの運転方法では、加湿開始指令により、まず給水加熱器側増湿器給水弁315が開き、開度に応じた流量の給水が増湿器4へと注水される。同時に、給水加熱器バイパス弁314は、給水加熱器22を流れる水量が所定の値となるよう制御されながら、開度を減少し最終的には全閉状態となる。
【0113】
その後は給水加熱器側増湿器給水弁315の開度を制御することで、給水加熱器22を流れる水量が所定の値となるよう調整される。引き続き、空気冷却器側増湿器給水弁312が開き、開度に応じた流量の給水が増湿器4へと注水される。
【0114】
同時に、空気冷却器バイパス弁313は、空気冷却器28を流れる水量が所定の値となるよう制御されながら、開度を減少し最終的には全閉状態となる。その後は空気冷却器側増湿器給水弁312の開度を制御することで、空気冷却器28を流れる水量が所定の値となるよう調整される(期間b2〜b3)。
【0115】
本実施例においても、増湿器4による加湿後のガスタービン燃焼器2の燃焼安定性を確保するのに必要なF1燃料流量を求めるために、燃料制御装置400に設けたF1バイアス演算器404に内在する飽和湿度の演算器によって燃焼空気の飽和湿度を求める。第1実施例において述べたように、増湿器内部温度500と増湿器内圧600から加湿空気104の湿度を求めることができる。
【0116】
または、本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料を制御する燃料制御装置400によれば、増湿器供給水温度501、増湿器循環水温度502、増湿器入口空気温度503、空気冷却器側供給水温度504、給水加熱器側供給水温度505のいずれか1つの計測値から第2実施例の場合と同様にして燃料制御装置400に設けたF1バイアス演算器404に内在する飽和湿度の演算器によって、増湿器内部温度500´を推算し、推算した増湿器内部温度500´と増湿器内圧600から加湿空気104の飽和湿度(燃焼空気湿度)を演算し、演算した燃焼空気湿度から燃焼温度を計算するようにしても良い。
【0117】
この結果、第1実施例及び第2実施例のガスタービン燃焼器2の燃燃料制御装置400と同様に、増湿器4に水分添加後もガスタービン燃焼器2の燃焼安定性を確保する図5の特性図中に実線で示した期間b2におけるF1流量の増加が実現できる。
【0118】
本実施例のガスタービン燃焼器2の燃燃料制御装置400が適用される高湿分空気利用ガスタービンのように給水加熱器28を備えるときは、第2実施例の水温計測箇所に加えてさらに給水加熱器28の給水系統の水温計測によっても燃料制御が可能となり、計測箇所の選択肢が広がる点で利点がある。
【0119】
図13に示した本実施例のガスタービン燃焼器2の燃料を制御する燃料制御装置400の制御ブロックにおいては、増湿器内部温度500、あるいはデータベース405における増湿器供給水温度501、増湿器循環水温度502、増湿器入口空気温度503、空気冷却器側供給水温度504、給水加熱器側供給水温度505のいずれか1つの値から推算される増湿器内部温度500´と、増湿器内圧600とによって燃焼空気の飽和湿度が演算され、この燃焼空気の飽和湿度から演算された燃焼空気温度の計算結果から第1実施例、第2実施例の燃料制御装置400と同様に増湿器4に水分添加後もガスタービン燃焼器2の燃焼安定性を確保する図5の特性図中に実線で示した期間b2におけるF1流量の増加が実現できる。
【0120】
また、増湿器4に供給する増湿器給水量301の変化による燃焼用空気の過渡的な湿度変化に対しても、第1実施例、第2実施例の場合と同様にガスタービン燃焼器2の燃焼安定性が確保できる。
【0121】
なお、期間b3に到達後の高湿分空気利用ガスタービンの運転方法は第1実施例の場合と同じ運用である。
【0122】
本実施例では、空気冷却器28と給水加熱器22とを備えた構成の高湿分空気利用ガスタービンに本実施例のガスタービン燃焼器の燃料制御装置を適用した場合について説明したが、本構成において空気冷却器28を含まない構成の場合も同様の高湿分空気利用ガスタービンの運転方法が可能である。その場合、増湿器内部温度500の他に、増湿器循環水温度502、給水加熱器側供給水温度505、増湿器供給水温度501によって加湿空気104の湿度(燃焼空気湿度)を求めれば良い。
【0123】
本実施例によれば、高湿分空気利用ガスタービンの増湿器への水分添加の開始後でガスタービン燃焼器のNOx生成および火炎安定性に対する過渡的な条件変化が生じた場合に、ガスタービン燃焼器を低NOxで安定して燃焼させることを可能にした高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法および燃料制御装置が実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は 高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法および燃料制御装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0125】
1:圧縮機、2:燃焼器、3:タービン、4:増湿器、5:再生熱交換器、7:燃焼器ケーシング、8:燃焼器カバー、9:燃料ノズル、10:燃焼器ライナ、 11:ライナフロースリーブ、12:トランジションピース、13:トランジションピースフロースリーブ、20:発電機 、21:シャフト、22:給水加熱器、23:煙道、24:水回収装置、25:排気筒、26:水質浄化装置、27:吸気噴霧装置、28:空気冷却器、30:燃料ヘッダ、31:燃料ノズル、32:空気孔、33:空気孔プレート、35:燃料噴流、36:空気噴流、51:F1燃料フランジ、52:F2燃料フランジ、53:F3燃料フランジ、54:F4燃料フランジ、100:ガスタービン吸い込み空気(大気圧)、101:吸い込み空気(大気圧)、102:高圧空気、103:抽気空気、104:加湿空気、105:高温空気、106〜109:排気ガス、110:増湿器流入空気、200:燃料、201:F1燃料、202:F2燃料、203:F3燃料、204:F4燃料、210:燃料遮断弁、211:F1燃料制御弁、212:F2燃料制御弁、213:F3燃料制御弁、214:F4燃料制御弁、300:圧縮機吸気噴霧水、301:増湿器供給水、302、304:バイパス水、303、305:供給水、310:噴霧水量制御弁、312:増湿器給水量制御弁、313:増湿器バイパス弁、314:増湿器バイパス弁、315:増湿器給水量制御弁、401:減算器、402:燃料流量制御器、403:燃料流量比率設定器、404:F1バイアス設定器、405:データベース、407:実燃料流量制御器、410:燃料流量指令値、411:F1燃料比率、412:F2燃料比率、413:F3燃料比率、414:F4燃料比率、415:F1バイアス、500:増湿器内部温度、501:増湿器供給水温度、502:増湿器循環水温度、503:増湿器流入空気温度、504:増湿器供給水温度、505:増湿器供給水温度、600:増湿器内圧。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、圧縮機で圧縮された圧縮空気を用いて燃料を燃焼し燃焼ガスを発生させるガスタービン燃焼器と、ガスタービン燃焼器で発生した燃焼ガスによって駆動されるタービンと、圧縮機で圧縮されて前記ガスタービン燃焼器に供給される圧縮空気を加湿する増湿器と、増湿器に供給する水を前記タービンから排気した排ガスで加熱する再生熱交換器を備えた高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器であって、
前記ガスタービン燃焼器は、燃料を供給する複数の燃料ノズルと燃焼用空気を供給する複数の空気流路とで構成する燃焼部を複数設置し、前記複数設置された燃焼部のうち一部の燃焼部に他の燃焼部よりも保炎性に優れた燃焼部を形成しているガスタービン燃焼器の燃料制御方法において、
前記保炎性に優れた燃焼部に燃料を供給する燃料比率の設定を、前記増湿器の内部温度と増湿器の内圧から推算した圧縮空気の空気湿度をもとに設定して、前記ガスタービン燃焼器の複数の燃焼部に供給する燃料の流量割合を制御することを特徴とする高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法。
【請求項2】
圧縮機と、圧縮機で圧縮された圧縮空気を用いて燃料を燃焼し燃焼ガスを発生させるガスタービン燃焼器と、ガスタービン燃焼器で発生した燃焼ガスによって駆動されるタービンと、圧縮機で圧縮されて前記ガスタービン燃焼器に供給される圧縮空気を加湿する増湿器と、増湿器に供給する水を前記タービンから排気した排ガスで加熱する再生熱交換器を備えた高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器であって、
前記ガスタービン燃焼器は、燃料を供給する複数の燃料ノズルと、前記燃料ノズルと同軸となるように空気孔プレートに形成された燃焼用空気を供給する複数の空気孔とで構成する燃焼部を複数設置し、前記複数設置された燃焼部のうち、空気孔プレートの内周側に位置する燃焼部に空気孔プレートの外周側に位置する他の燃焼部よりも保炎性に優れた燃焼部を形成しているガスタービン燃焼器の燃料制御方法において、
前記保炎性に優れた燃焼部に燃料を供給する燃料比率の設定を、前記増湿器の内部温度と増湿器の内圧から推算した圧縮空気の空気湿度をもとに設定して、前記ガスタービン燃焼器の複数の燃焼部に供給する燃料の流量割合を制御することを特徴とする高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法において、
前記増湿器に供給する供給水の水温、前記増湿器の余剰水を増湿器に再供給させる循環系の水温、及び前記増湿器に流入する空気の温度から前記増湿器内部の空気温度を推定し、
推定した前記増湿器内部の空気温度と前記増湿器の内圧から燃焼用空気の湿度を推算し、
推算した燃焼用空気の湿度に基づいてガスタービン燃焼器に設置した保炎性に優れた前記燃焼部に供給する燃料比率を制御することを特徴とする高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法。
【請求項4】
圧縮機と、圧縮機で圧縮された圧縮空気を用いて燃料を燃焼し燃焼ガスを発生させるガスタービン燃焼器と、ガスタービン燃焼器で発生した燃焼ガスによって駆動されるタービンと、圧縮機で圧縮されて前記ガスタービン燃焼器に供給される燃焼用空気を加湿する増湿器と、増湿器に供給する水を前記タービンから排気した排ガスで加熱する再生熱交換器を備えた高湿分空気利用ガスタービンであって、
前記ガスタービン燃焼器は、燃料を供給する複数の燃料ノズルと燃焼用空気を供給する複数の空気流路とで構成する燃焼部を複数設置し、前記複数設置された燃焼部のうち一部の燃焼部に他の燃焼部よりも保炎性に優れた燃焼部を形成しているガスタービン燃焼器の燃料制御装置において、
前記ガスタービン燃焼器の複数の燃焼部に燃料を供給する燃料制御装置は、
増湿器の内部空気温度と増湿器の内圧から推算した燃焼用空気湿度をもとに前記保炎性に優れたガスタービン燃焼器の燃焼部に供給する燃料比率のバイアス量を演算するバイアス演算器と、
前記バイアス演算器の出力に基づいて前記保炎性に優れた燃焼部に供給する燃料比率を算出する燃料流量比率設定器を備えて、前記ガスタービン燃焼器の複数の燃焼部に供給する燃料の流量割合を制御することを特徴とする高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御装置。
【請求項5】
圧縮機と、圧縮機で圧縮された圧縮空気を用いて燃料を燃焼し燃焼ガスを発生させるガスタービン燃焼器と、ガスタービン燃焼器で発生した燃焼ガスによって駆動されるタービンと、圧縮機で圧縮されて前記ガスタービン燃焼器に供給される燃焼用空気を加湿する増湿器と、増湿器に供給する水を前記タービンから排気した排ガスで加熱する再生熱交換器を備えた高湿分空気利用ガスタービンであって、
前記ガスタービン燃焼器は、燃料を供給する複数の燃料ノズルと、前記燃料ノズルと同軸となるように空気孔プレートに形成された燃焼用空気を供給する複数の空気孔とで構成する燃焼部を複数設置し、前記複数設置された燃焼部のうち、空気孔プレートの内周側に位置する燃焼部に空気孔プレートの外周側に位置する他の燃焼部よりも保炎性に優れた燃焼部を形成しているガスタービン燃焼器の燃料制御装置において、
前記ガスタービン燃焼器の複数の燃焼部に燃料を供給する燃料制御装置は、
増湿器の内部空気温度と増湿器の内圧から推算した燃焼用空気湿度をもとに前記保炎性に優れたガスタービン燃焼器の燃焼部に供給する燃料比率のバイアス量を演算するバイアス演算器と、
前記バイアス演算器の出力に基づいて前記保炎性に優れた燃焼部に供給する燃料比率を算出する燃料流量比率設定器を備えて、前記ガスタービン燃焼器の複数の燃焼部に供給する燃料の流量割合を制御することを特徴とする高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御装置において、
前記ガスタービン燃焼器の複数の燃焼部に燃料を供給する燃料制御装置は、
前記バイアス演算器として前記増湿器に供給する供給水の水温、前記増湿器の余剰水を増湿器に再供給させる循環系の水温及び前記増湿器に流入する空気の温度から前記増湿器内部の空気温度を推定し、推定した増湿器内部の空気温度と増湿器の内圧から燃焼用空気の湿度を推算し、推算した燃焼用空気の湿度に基づいてガスタービン燃焼器に設置した前記保炎性に優れた燃焼部に供給する燃料比率のバイアス量を演算するように構成したことを特徴とする高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御装置。
【請求項1】
圧縮機と、圧縮機で圧縮された圧縮空気を用いて燃料を燃焼し燃焼ガスを発生させるガスタービン燃焼器と、ガスタービン燃焼器で発生した燃焼ガスによって駆動されるタービンと、圧縮機で圧縮されて前記ガスタービン燃焼器に供給される圧縮空気を加湿する増湿器と、増湿器に供給する水を前記タービンから排気した排ガスで加熱する再生熱交換器を備えた高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器であって、
前記ガスタービン燃焼器は、燃料を供給する複数の燃料ノズルと燃焼用空気を供給する複数の空気流路とで構成する燃焼部を複数設置し、前記複数設置された燃焼部のうち一部の燃焼部に他の燃焼部よりも保炎性に優れた燃焼部を形成しているガスタービン燃焼器の燃料制御方法において、
前記保炎性に優れた燃焼部に燃料を供給する燃料比率の設定を、前記増湿器の内部温度と増湿器の内圧から推算した圧縮空気の空気湿度をもとに設定して、前記ガスタービン燃焼器の複数の燃焼部に供給する燃料の流量割合を制御することを特徴とする高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法。
【請求項2】
圧縮機と、圧縮機で圧縮された圧縮空気を用いて燃料を燃焼し燃焼ガスを発生させるガスタービン燃焼器と、ガスタービン燃焼器で発生した燃焼ガスによって駆動されるタービンと、圧縮機で圧縮されて前記ガスタービン燃焼器に供給される圧縮空気を加湿する増湿器と、増湿器に供給する水を前記タービンから排気した排ガスで加熱する再生熱交換器を備えた高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器であって、
前記ガスタービン燃焼器は、燃料を供給する複数の燃料ノズルと、前記燃料ノズルと同軸となるように空気孔プレートに形成された燃焼用空気を供給する複数の空気孔とで構成する燃焼部を複数設置し、前記複数設置された燃焼部のうち、空気孔プレートの内周側に位置する燃焼部に空気孔プレートの外周側に位置する他の燃焼部よりも保炎性に優れた燃焼部を形成しているガスタービン燃焼器の燃料制御方法において、
前記保炎性に優れた燃焼部に燃料を供給する燃料比率の設定を、前記増湿器の内部温度と増湿器の内圧から推算した圧縮空気の空気湿度をもとに設定して、前記ガスタービン燃焼器の複数の燃焼部に供給する燃料の流量割合を制御することを特徴とする高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法において、
前記増湿器に供給する供給水の水温、前記増湿器の余剰水を増湿器に再供給させる循環系の水温、及び前記増湿器に流入する空気の温度から前記増湿器内部の空気温度を推定し、
推定した前記増湿器内部の空気温度と前記増湿器の内圧から燃焼用空気の湿度を推算し、
推算した燃焼用空気の湿度に基づいてガスタービン燃焼器に設置した保炎性に優れた前記燃焼部に供給する燃料比率を制御することを特徴とする高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御方法。
【請求項4】
圧縮機と、圧縮機で圧縮された圧縮空気を用いて燃料を燃焼し燃焼ガスを発生させるガスタービン燃焼器と、ガスタービン燃焼器で発生した燃焼ガスによって駆動されるタービンと、圧縮機で圧縮されて前記ガスタービン燃焼器に供給される燃焼用空気を加湿する増湿器と、増湿器に供給する水を前記タービンから排気した排ガスで加熱する再生熱交換器を備えた高湿分空気利用ガスタービンであって、
前記ガスタービン燃焼器は、燃料を供給する複数の燃料ノズルと燃焼用空気を供給する複数の空気流路とで構成する燃焼部を複数設置し、前記複数設置された燃焼部のうち一部の燃焼部に他の燃焼部よりも保炎性に優れた燃焼部を形成しているガスタービン燃焼器の燃料制御装置において、
前記ガスタービン燃焼器の複数の燃焼部に燃料を供給する燃料制御装置は、
増湿器の内部空気温度と増湿器の内圧から推算した燃焼用空気湿度をもとに前記保炎性に優れたガスタービン燃焼器の燃焼部に供給する燃料比率のバイアス量を演算するバイアス演算器と、
前記バイアス演算器の出力に基づいて前記保炎性に優れた燃焼部に供給する燃料比率を算出する燃料流量比率設定器を備えて、前記ガスタービン燃焼器の複数の燃焼部に供給する燃料の流量割合を制御することを特徴とする高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御装置。
【請求項5】
圧縮機と、圧縮機で圧縮された圧縮空気を用いて燃料を燃焼し燃焼ガスを発生させるガスタービン燃焼器と、ガスタービン燃焼器で発生した燃焼ガスによって駆動されるタービンと、圧縮機で圧縮されて前記ガスタービン燃焼器に供給される燃焼用空気を加湿する増湿器と、増湿器に供給する水を前記タービンから排気した排ガスで加熱する再生熱交換器を備えた高湿分空気利用ガスタービンであって、
前記ガスタービン燃焼器は、燃料を供給する複数の燃料ノズルと、前記燃料ノズルと同軸となるように空気孔プレートに形成された燃焼用空気を供給する複数の空気孔とで構成する燃焼部を複数設置し、前記複数設置された燃焼部のうち、空気孔プレートの内周側に位置する燃焼部に空気孔プレートの外周側に位置する他の燃焼部よりも保炎性に優れた燃焼部を形成しているガスタービン燃焼器の燃料制御装置において、
前記ガスタービン燃焼器の複数の燃焼部に燃料を供給する燃料制御装置は、
増湿器の内部空気温度と増湿器の内圧から推算した燃焼用空気湿度をもとに前記保炎性に優れたガスタービン燃焼器の燃焼部に供給する燃料比率のバイアス量を演算するバイアス演算器と、
前記バイアス演算器の出力に基づいて前記保炎性に優れた燃焼部に供給する燃料比率を算出する燃料流量比率設定器を備えて、前記ガスタービン燃焼器の複数の燃焼部に供給する燃料の流量割合を制御することを特徴とする高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御装置において、
前記ガスタービン燃焼器の複数の燃焼部に燃料を供給する燃料制御装置は、
前記バイアス演算器として前記増湿器に供給する供給水の水温、前記増湿器の余剰水を増湿器に再供給させる循環系の水温及び前記増湿器に流入する空気の温度から前記増湿器内部の空気温度を推定し、推定した増湿器内部の空気温度と増湿器の内圧から燃焼用空気の湿度を推算し、推算した燃焼用空気の湿度に基づいてガスタービン燃焼器に設置した前記保炎性に優れた燃焼部に供給する燃料比率のバイアス量を演算するように構成したことを特徴とする高湿分空気利用ガスタービン用のガスタービン燃焼器の燃料制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−36779(P2012−36779A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175990(P2010−175990)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
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