説明

高濃度のカルシウム含有飲料の製法及びその清涼飲料水

【課題】本発明はカルシウム含有量が多く且つ長期間に渡って濁りや変色の変化がなく、透明な液体状態を安定して維持出来る高濃度のカルシウム含有飲料の製法及びその清涼飲料水を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも酸味料,果汁,甘味料,カルシウム成分を含有する飲料の殺菌工程に於いて、カルシウム成分のみ或いはカルシウム成分と甘味料だけを別に殺菌すると共に他の含有成分も殺菌し、次いで全体を混合し調合させる高濃度のカルシウム含有飲料の製法と成す。また前記含有物にビタミン,食物繊維,他の栄養物を追加し添加された飲料の殺菌工程に於いて、カルシウム成分と甘味料と食物繊維とを別に殺菌すると共に他の含有成分も殺菌し、次いで全体を混合し調合させる方法としても良い。又、高濃度のカルシウムの含有の透明な清涼飲料水とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカルシウム濃度50mg/dl以上の高濃度のカルシウム含有飲料の製法及びその清涼飲料水に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、清涼飲料水を製造する際の殺菌方法は、タンクでのバッチ式殺菌(90〜95℃で1〜5分間)の方法や、プレート式(100〜120℃で2〜6秒間)を用いて連続的に殺菌する方法が採られている。また高濃度のカルシウム含有飲料の一般的な製法としては、酸味料,果汁,甘味料,カルシウム成分,他の栄養物などの必要成分を調合し、その後、この調合した液体を連続殺菌又はバッチ式で殺菌して完成させるのが普通であった。
【0003】
しかしながら前記高濃度のカルシウム含有飲料は、濁りが発生し易く且つ浮遊物が生じ易い問題点があるため、高濃度のカルシウム含有で且つ透明な清涼飲料水の市販品はなかった。一方、前記高濃度のカルシウム含有飲料としては果汁飲料,炭酸飲料,乳酸飲料,乳飲料など多種類が市販されている。この飲料は濁りや浮遊物があっても目立たぬように不透明な液体に仕上げたもの、着色したもの、或いはコロイド状にしたものなどが殆どである。前記高濃度のカルシウム含有飲料の濁りや浮遊物の発生原因としては、殺菌工程を行う際に生じ、カルシウムと蛋白質の反応、有機酸とカルシウムの反応、ビタミンやアミノ酸とカルシウムの反応が複雑に重なるものと考えられる。尚、前記高濃度のカルシウム含有飲料が製造時に透明であっても時間が経過すると共に褐変現象(メラード反応)が起きたり、浮遊物が生じたり、冬期に透明であっても、夏期になると濁るもの又はこの逆の現象が起きるものも確認されているので、今までには透明な液体の高濃度のカルシウム含有の清涼飲料水は市販されていないのが現状である。他方、カルシウム含有率が高く且つ安定な溶液状態を長期間維持するものとしては、特開平7−203922号がある。これはグリシンカルシウムを、液体飲料中に含有させたカルシウム補給強化飲料であり、液体を透明にする技術は何処にも開示されておらず、且つ液体を透明化する発想はないものであった。
【特許文献1】特開平7−203922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はカルシウム含有量が多く且つ長期に渡って濁りや変色の変化がなく、透明な液体状態を安定して維持出来る高濃度のカルシウム含有飲料の製法及びその清涼飲料水を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記問題点を解消し、且つ含有物の対象となる食品の物性として、味,臭い,加工上の変色等実質的に影響を及ぼすことのない殺菌条件などを模索し、且つ本発明のように高濃度のカルシウム含有飲料の製法に際しては、殺菌工程が製品の良否を左右することを究め、この殺菌工程に着目し、長期間安定した商品を得るに至った。つまり、少なくとも酸味料,果汁,甘味料,カルシウム成分を含有する飲料の殺菌工程に於いて、カルシウム成分のみ或いはカルシウム成分と甘味料だけを別に殺菌すると共に他の含有成分も殺菌し、次いで全体を混合し調合させる高濃度のカルシウム含有飲料の製法と成す。
【0006】
また前記含有物にビタミン,食物繊維,他の栄養物を添加した飲料の殺菌工程に於いて、カルシウム成分と甘味料と食物繊維とを別に殺菌すると共に他の含有成分も殺菌し、次いで全体を混合し調合させる方法としても良い。尚、本発明で言う「カルシウム含有飲料」とは、カルシウムと炭酸が反応して濁ってしまうため、炭酸飲料は含まないものにすると共にミネラルウオーターも含まないものとする。
【0007】
又、高濃度のカルシウム含有の清涼飲料水が、少なくとも酸味料,果汁,甘味料,カルシウム成分を含有し、且つ透明な液体とする。またカルシウム成分として食品添加物用のカルシウム塩を用い、その濃度を50〜600mg/dlにすると良い。尚、本発明で言う「清涼飲料水」には、炭酸飲料水とミネラルウオーターが含まれないものとする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1のように少なくとも酸味料,果汁,甘味料,カルシウム成分を含有する飲料の殺菌工程に於いて、カルシウム成分のみを別に殺菌すると共に他の含有成分も殺菌し、次いで全体を混合し調合させる製法と成すことにより、本発明はカルシウム含有量が多く且つ長期間に渡って濁りや変色の変化がなく、透明な液体状態を安定して維持出来る飲料を製造することが可能なものとなった。特に高濃度のカルシウム含有で且つ透明な清涼飲料水の製造が可能になると共にコストアップにならず且つ安定して製造が行えるものとなった。
【0009】
請求項2のように少なくとも酸味料,果汁,甘味料,カルシウム成分を含有する飲料の殺菌工程に於いて、カルシウム成分と甘味料だけを別に殺菌すると共に他の含有成分も殺菌し、次いで全体を混合し調合させる製法と成すことにより、請求項1と同様な効果が得られる。
【0010】
請求項3に示すように酸味料,果汁,甘味料,カルシウム成分,ビタミン,食物繊維,他の栄養物を含有する飲料の殺菌工程に於いて、カルシウム成分と甘味料と食物繊維とを別に殺菌すると共に他の含有成分も殺菌し、次いで全体を混合し調合させる製法と成すことにより、請求項1と同様な効果が得られる。
【0011】
請求項4に示すように少なくとも酸味料,果汁,甘味料,カルシウム成分を含有し、且つ前記製法によって透明な液体として清涼飲料水を得ることにより、味,臭い,色などが変化せず、且つ長期間に渡って濁りがなく、透明な液体状態を安定して維持でき、従来にはない新たな商品が提供出来る。また清涼飲料水を飲むだけで多くのカルシウムが身体に吸収されるので、カルシウム不足が解消可能なものとなる。更に本発明品は透明な液体であるため、変色や異物の発生等による品質劣化度が簡単に判定でき、品質管理がより安定した商品が提供できるものとなる。しかも固形物が溶液中に一切なく透明であるため、殺菌性が良く、且つ見た目に清潔感を与える商品となるのである。
【0012】
請求項5のようにカルシウム成分として食品添加物用のカルシウム塩を用い、その濃度を50〜600mg/dlとすることにより、高濃度のカルシウム含有で且つ透明な清涼飲料水が提供でき、且つカルシウム塩の濃度がこの範囲に於いて清涼飲料水の変わらぬ味が確保でき、且つ濁りや沈殿物及び浮遊物の発生が防止出来るものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のカルシウム含有飲料の製法を詳細に説明する。先ず本発明で用いる酸味料としては、クエン酸,コハク酸,リンゴ酸などを用いるが、これに限定されるものではない。果汁としては、リンゴ,ブドウ,ミカン,グレープフルーツ,桃,ブルーベリーなどを用いるが、これに限定されるものではない。また甘味料としては、砂糖,ブドウ糖,果糖,液糖の1つ又は2つ以上を合せて用いるのが好ましいが、これに限定されるものではなく、例えば,人工甘味料としては、アスパルテーム,スクラローズ,アルコール糖などを用いても良い。更にカルシウム成分としては食品添加物用のカルシウム塩を用いるが、該カルシウム塩の種類として乳酸カルシウム,グルコン酸カルシウム,酢酸カルシウム,塩化カルシウム,パントテン酸カルシウム,硫酸カルシウム,アスパラギン酸カルシウム,グルタミン酸カルシウム,クエン酸カルシウム,リンゴ酸カルシウム,燐酸カルシウム,天然カルシウムなどを用いる。他の栄養物としては、ビタミン類,アミノ酸,動植物抽出ペプチッド,植物や茸類の抽出エックス,グルコサミン,ムコ多糖類などを用いる。
【0014】
次に本発明のカルシウム含有飲料の製法としては、酸味料,果汁,甘味料,50mg/dl以上の高濃度のカルシウムが含有される飲料の各成分の配合割合を、従来と同じにし、且つ割合分の各含有成分を用意する。また調合工程の前までは、従来と同様の工程を行っておく。先ず始めに用意した各含有成分の殺菌工程を行う。この時の殺菌方法としては2通りあり、第1の殺菌方法としては、カルシウム塩の規定量の溶液を93〜95℃で1〜3分間殺菌し、他の含有成分を別の容器などに規定量入れて,93〜95℃で1〜3分間殺菌する。その後、カルシウム塩の溶液と、他の含有成分の溶液とを混合し且つ調合して冷却する。この時、冷却水を別に準備しておき、更に容積調整を行い、香料を入れて容器に詰めて完了する。第2の殺菌方法としては、カルシウム溶液に甘味料を規定量入れ、これだけを93〜95℃で1〜3分間殺菌し、残りの他の含有成分を別の容器などに規定量入れて、93〜95℃で1〜3分間殺菌する。その後、甘味料を入れたカルシウム塩溶液と、他の含有成分の溶液とを混合し且つ調合して冷却する。この時、冷却水を別に準備しておき、更に容積調整を行い、香料を入れて容器に詰めて完了するのである。
【0015】
また本発明のカルシウム含有飲料の他の製法としては、酸味料,果汁,甘味料,カルシウム塩,ビタミン,食物繊維,アミノ酸,動植物抽出ペプチッドが含有される飲料の各成分の配合割合を、従来と同じにし、且つ割合分の各含有成分を用意する。また調合工程の前までは、従来と同様の工程を行っておく。先ず始めに用意した各含有成分の殺菌工程を行う。この時の殺菌方法としては上記2通り以外の方法が行われる。つまり、カルシウム塩の規定量の溶液に甘味料と食物繊維を規定量入れ、これだけを93〜95℃で1〜3分間殺菌し、残りの他の含有成分を別の容器などに規定量入れて,93〜95℃で1〜3分間殺菌する。その後、甘味料や食物繊維を入れたカルシウム塩溶液と、他の含有成分の溶液とを混合し且つ調合して冷却する。この時、冷却水を別に準備しておき、更に容積調整を行い、香料を入れて容器に詰めて完了するのである。
【0016】
次に本発明のクエン酸,リンゴ果汁,果糖,ブドウ糖,50mg/dl〜600mg/dlの乳酸カルシウムが含有され且つ透明な清涼飲料水の製法について説明する。本発明の清涼飲料水の各成分の配合割合としては、従来の清涼飲料水にカルシウム成分を添加した状態と同じであり、カルシウム成分以外は従来と同じ割合成分とすれば良い。予め調合工程の前まで従来と同様の工程を行っておく。先ず始めに用意した各含有成分の殺菌工程を行う。この時、乳酸カルシウム溶液だけ、或いは乳酸カルシウム溶液に果糖とブドウ糖の液を規定量入れ、93〜95℃で1〜3分間殺菌する。これとは別にして他の残りの含有成分の溶液を規定量作り、93〜95℃で1〜3分間殺菌し、次いで全体を混合し調合させる。その後、これを冷却する。そして別に準備した殺菌済みの冷却水で容積調整を行い、香料を入れて容器に詰めれば本発明品は得られるのである。尚、カルシウム含有量が50mg/dl以下になると従来方法でも透明な清涼飲料水が製造可能となるため、敢えて本発明の製法を行う必要がなくなり、一方、600mg/dl以上になっても透明度は確保できるが、カルシウムの苦味が出て清涼飲料水としては使用できないものとなってしまう。
【0017】
又、本発明のクエン酸,リンゴ果汁,果糖,ブドウ糖,50mg/dl〜600mg/dlの乳酸カルシウム,ビタミン,食物繊維,アミノ酸,動植物抽出ペプチッドが含有され且つ透明な清涼飲料水の製法について説明する。本発明の清涼飲料水の各成分の配合割合としては、従来の清涼飲料水にカルシウム成分を添加した状態と同じであり、カルシウム成分以外は従来と同じ割合成分とすれば良い。予め調合工程の前まで従来と同様の工程を行っておく。先ず始めに用意した各含有成分の殺菌工程を行う。この時、乳酸カルシウム溶液に、果糖とブドウ糖の液及び食物繊維の液を規定量入れ、93〜95℃で1〜3分間殺菌する。これとは別にして他の残りの含有成分の溶液を規定量作り、93〜95℃で1〜3分間殺菌した後、全体を混合し調合させて冷却する。そして上記同様に別に準備した殺菌済みの冷却水で容積調整を行い、香料を入れて容器に詰めれば本発明品は得られるのである。
【0018】
このようにして得られた透明な清涼飲料水は、容器に詰められた時点で透明な状態であった。又、これを恒温室に入れて温度40℃、湿度60%の状態を4ヶ月経過した後、濁りと着色度を検査したところ変化がないことが確認出来た。更にカルシウム濃度を、50mg/dl,300mg/dl,600mg/dlにした清涼飲料水を下記の配合で製造し、上記同様の検査を行った。
【0019】
つまり、クエン酸,リンゴ果汁,果糖,ブドウ糖,乳酸カルシウムが含有され且つ透明な清涼飲料水に、カルシウム含有量が50mg/dlのもの(以降、スポーツドリンクと言う)、300mg/dlのもの(以降、カルシウム強化飲料と言う)、600mg/dlのもの(以降、高カルシウム強化飲料と言う)をそれぞれ100mlの容器に各10本ずつ製造して経時変化を確認した。尚、この時の各成分配合は、カルシウム含有量が50mg/dlのスポーツドリンクは、クエン酸0.2g/dl,クエン酸ソーダー0.02g/dl,リンゴ果汁1g/dl,果糖とブドウ糖の混合した液糖13g/dl,ビタミン類0.011g/dl,残りは水である。また300mg/dlのカルシウム強化飲料は、クエン酸0.3g/dl,クエン酸ソーダー0.03g/dl,リンゴ果汁1g/dl,果糖とブドウ糖の混合した液糖15g/dl,ビタミン類0.011g/dl,残りは水である。600mg/dlの高カルシウム強化飲料は、クエン酸0.35g/dl,クエン酸ソーダー0.035g/dl,リンゴ果汁1g/dl,果糖とブドウ糖の混合した液糖17g/dl,ビタミン類0.011g/dl,残りは水である。前記スポーツドリンク,カルシウム強化飲料,高カルシウム強化飲料の各10本ずつを恒温室に入れ、温度40℃、湿度60%の状態を4ヶ月経過した後、濁りと着色度を検査したところ、変化がないことが確認出来た。また各スポーツドリンク,各カルシウム強化飲料,各高カルシウム強化飲料を飲んでみたところ、何ら味の変化がないことが確認でき、長期間放置されても透明な状態が安定して維持出来るものであることが確認出来た。更に各酸味料,各果汁,各甘味料及び2つ以上を合せた甘味料,各人工甘味料,各カルシウム塩,各栄養物を用いた清涼飲料水の検査の詳細な説明は省略するが、上記同様に4ヶ月経過した後、濁りと着色度に変化がなく、飲んで味を確認したところ、何ら味に変化がなかった。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の高濃度のカルシウム含有飲料の製法を、嗜好飲料,滋養飲料,強壮飲料等の液体飲料などに用いることが可能となる。また得られた飲料は濁りや沈殿がないので、液体の見た目が良く、品質が長期間に渡ってより安定した前記飲料の製造が可能となる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも酸味料,果汁,甘味料,カルシウム成分を含有する飲料の殺菌工程に於いて、カルシウム成分のみを別に殺菌すると共に他の含有成分も殺菌し、次いで全体を混合し調合させたことを特徴とする高濃度のカルシウム含有飲料の製法。
【請求項2】
少なくとも酸味料,果汁,甘味料,カルシウム成分を含有する飲料の殺菌工程に於いて、カルシウム成分と甘味料だけを別に殺菌すると共に他の含有成分も殺菌し、次いで全体を混合し調合させたことを特徴とする高濃度のカルシウム含有飲料の製法。
【請求項3】
酸味料,果汁,甘味料,カルシウム成分,ビタミン,食物繊維,他の栄養物を含有する飲料の殺菌工程に於いて、カルシウム成分と甘味料と食物繊維とを別に殺菌すると共に他の含有成分も殺菌し、次いで全体を混合し調合させたことを特徴とする高濃度のカルシウム含有飲料の製法。
【請求項4】
少なくとも酸味料,果汁,甘味料,カルシウム成分を含有し、且つ透明な液体であることを特徴とする高濃度のカルシウム含有の清涼飲料水。
【請求項5】
前記カルシウム成分が、食品添加物用のカルシウム塩であり、その濃度が50〜600mg/dlである請求項4記載の高濃度のカルシウム含有の清涼飲料水。


【公開番号】特開2006−29(P2006−29A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178209(P2004−178209)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(304027143)株式会社カルシン (3)
【Fターム(参考)】