説明

高炉スラグ微粉末を結合材の主成分とするプレキャストコンクリート製品の製造方法

【課題】
高炉スラグ微粉末の置換率が高いコンクリート材料を使用しながら生産性高く製造できる、高炉スラグ微粉末を結合材の主成分とするプレキャストコンクリート製品の製造方法を提供する。
【解決手段】
セメントを高炉スラグ微粉末に置き換える置換率を71%から95%としたコンクリート材料を調製し、前記コンクリート材料を振動付与しながら型枠の成形用空間に供給し、振動付与しながら、前記型枠に対して移動するプレス板によって前記コンクリート材料を加圧して、所要形状のプレキャストコンクリート製品を成形し、成形直後に前記プレキャストコンクリート製品を型枠から取り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地球環境に対する二酸化炭素ガスの負荷を軽減するために、結合材の主成分をセメントから高炉スラグ微粉末に置換したプレキャストコンクリート製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントは製造段階で大量の二酸化炭素ガスを発生するものであるが、その固有の水和反応を利用して
コンクリート材料の結合材として使用され続けられている。
従来のコンクリート製品やコンクリート構造物の中でもプレキャストコンクリート製品では、生産性を重視するために大量のセメントを使用して、早期にコンクリート強度を高くする必要があった。
このようにセメントを大量に使用することは、生産コスト面からだけでなく環境面から見ても改善するべき点であり、セメントの使用量を出来る限り減らしたプレキャストコンクリート製品が模索されていた。
【0003】
比較的安価に提供され、二酸化炭素ガスの環境負荷面でも影響が小さい高炉スラグ微粉末は、従来から混和材料として使用されていたが(特許文献1参照)、セメントに対して高炉スラグ微粉末の比率を高くすると、コンクリート材料の硬化遅延を招き、所要の初期強度が発現するまでに数日を要する。コンクリート材料を型枠に流し込み、初期強度が発現するまで当該型枠内に残し置くようにした従来の流し込み成型法では、型枠の回転率が上がらず、生産性が悪くなった。そのため、セメントを高炉スラグ微粉末に置き換える置換率は60%程度までが一般的であった。
【0004】
例えば、高流動性コンクリート成形品の表面気泡低減方法に関するものであるが、高炉スラグ微粉末等の混和材置換率を全粉体量の10から50%としたものがある(特許文献1参照)。
レディーミクストコンクリートの調製方法において、結合材としてポルトランドセメントと高炉スラグ微粉末を使用し、高炉スラグ微粉末の置換率を30から70%としたものがある(特許文献2参照)。
また、高強度吹付けコンクリートまたはモルタルにおいて、結合材としてセメントと高炉スラグ微粉末を使用し、高炉スラグ微粉末の置換率を10から40%としたものがある(特許文献3参照)。
【0005】
高炉スラグ微粉末を混和材として用い、置換率を25%から95%の範囲で6段階変化させ、水結合材比65%、スランプ16±1.5cm、空気量4±1.0%で土中コンクリートを打設し、温度上昇量、強度の発現性状、中性化深さなどの諸性質について材齢10年間で測定した結果を報告する論文もあるが(非特許文献1参照)、工場生産されるプレキャストコンクリート製品への適用は考えられていない。
【0006】
【特許文献1】特開2000−102912号公報
【特許文献2】特開平11−278881号公報
【特許文献3】特開平11−116289号公報
【非特許文献1】コンクリート工学年次論文集,Vol.22,No. 2, 2000,「高炉スラグ微粉末を用いた土中コンクリートの10年までの性質について」,横室隆他
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、高炉スラグ微粉末の置換率の高いコンクリート材料を打設したとき脱型可能となるまでに一定の日数がかかるという不都合を改善すべく種々の研究と実験を重ねた結果、コンクリート材料を型枠内において振動をかけなげら加圧すると、脱型可能な初期強度を早期に得られることを見出した。
本発明はこの知見に基づくものであり、本発明の課題は、高炉スラグ微粉末の置換率が高いコンクリート材料を使用しながら生産性高く製造できる、高炉スラグ微粉末を結合材の主成分とするプレキャストコンクリート製品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の製造方法の特徴は、セメントを高炉スラグ微粉末に置き換える置換率を71%から95%としたコンクリート材料を調製し、振動を付与しながら前記コンクリート材料を型枠の成形用空間に供給し、振動付与しながら、前記型枠に対して移動するプレス板によって前記コンクリート材料を加圧して、所要形状のプレキャストコンクリート製品を成形し、成形直後に前記プレキャストコンクリート製品を型枠から取り出すことである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法では、高炉スラグ微粉末の置換率を71%から95%としたコンクリート材料は、振動付与により締固めされながら型枠の成形用空間に投入され、振動を付与されながら、プレス板によって加圧されるため、脱型時に崩れないよう程度以上の初期強度が容易に得られ、所要形状に固化したプレキャストコンクリート製品は型枠から取り出されて、養生槽や養生ヤードに直ちに搬送される。この材料投入、振動加圧成形、脱型の一連の作業サイクルが短縮され、次の作業サイクルに即座に移行することができるため、高炉スラグ微粉末を結合材の主成分とするプレキャストコンクリート製品の生産性が高くなる。
【0010】
本発明の製造方法によれば、セメントの高炉スラグ微粉末への置換率を強度不足の危険性なしに71%から95%と高くすることができ、セメントの使用量を大幅に減らすことができるため、セメント製造時の二酸化炭素ガスの発生量を削減し、地球環境への負荷を減らすことができる。また、製造されたプレキャストコンクリート製品は、従来のセメント使用量の多いものよりもpHが低く、潜在水硬性による長期強度の増進によって優れた固化体となるものであり、また、塩化物を含まず、アルカリ骨材反応の抑制効果があるため耐久性に優れ、軽量性があるため施工用途が広く、従来品と比べて材料価格の低減が可能である。
このプレキャストコンクリート製品の利用分野としては、歩車道境界ブロック等の一般的な無筋プレキャストコンクリート製品があり、特に低アルカリ性や塩化物を含まない点から生態系保全を重視すべき河川の護岸ブロック等がある。
【実施例】
【0011】
セメントの高炉スラグ微粉末への置換率を高く設定した結合材と水及び所要の骨材はミキサーによって混練され、スランプを小さくした硬練り状態のコンクリート材料1が調製される。このコンクリート材料1は図2に示したように型枠2の成形用空間に投入される。型枠2は振動機付きテーブル3に載せられており、コンクリート材料1の打設は、所要の振動付与により締め固めされながら行なわれる。
【0012】
この振動付与と並行して、図3に示したように型枠2に対して垂直にプレス板4が降下する。コンクリート材料1は振動締固めと加圧の両作用によって脱型時に崩れない程度以上の強度が発現するように成形される。成形されたプレキャストコンクリート製品5の上面には、図4に示したように支持板6がセットされる。
【0013】
この後、型枠3は上下反転させられ、図5に示したように支持板2の上にプレキャストコンクリート製品5を載せた状態で、プレキャストコンクリート製品5が脱型される。支持板6上のプレキャストコンクリート製品5は直ちに養生槽や養生ヤードに移送される。
必要に応じて型枠2が清掃され、次の作業サイクルに入る。所要の養生時間が経過した後、プレキャストコンクリート製品5は支持板6から外される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の製造方法に使用される型枠の縦断面図である。
【図2】図1の型枠にコンクリート材料を投入したときの縦断面図である。
【図3】投入されたコンクリート材料を振動加圧によってプレキャストコンクリート製品に成形するときの縦断面図である。
【図4】型枠内のプレキャストコンクリート製品に支持板を当てたときの縦断面図である。
【図5】型枠を反転してプレキャストコンクリート製品を脱型するときの縦断面図である。
【図6】脱型されたプレキャストコンクリート製品と支持板の縦断面図である。
【符号の説明】
【0015】
1 コンクリート材料
2 型枠
3 振動機付きテーブル
4 プレス板
5 プレキャストコンクリート製品
6 支持板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントを高炉スラグ微粉末に置き換える置換率を71%から95%としたコンクリート材料を調製し、振動付与しながら前記コンクリート材料を型枠の成形用空間に供給し、振動を付与しながら、前記型枠に対して移動するプレス板によって前記コンクリート材料を加圧して、所要形状のプレキャストコンクリート製品を成形し、成形直後に前記プレキャストコンクリート製品を型枠から取り出すようにした、高炉スラグ微粉末を結合材の主成分とするプレキャストコンクリート製品の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−113296(P2009−113296A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287774(P2007−287774)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(591047327)大和クレス株式会社 (17)
【Fターム(参考)】