高炉出銑流測定システム、高炉出銑流測定方法、及びコンピュータプログラム
【課題】出銑口から流出した溶銑及び溶融スラグの正確な混合比率を時間的に連続して把握することができるようにする。
【解決手段】CCDカメラ5で撮像された出銑流2の画像41のデータから濃度ヒストグラム42を算出し、算出した濃度ヒストグラム42における溶銑に起因するピークでの濃度値PMを演算する。また、溶銑に起因するピークでの濃度値PMに、溶銑及び溶融スラグの分光放射率の比率に基づく定数を乗じて、溶融スラグに起因するピークでの濃度値PSを求める。そして、求めた濃度値PM、PSを用いて、溶銑に起因する濃度分布43と、溶融スラグに起因する濃度分布44にガウス関数GM、GSをフィッティングする。そして、フィッティングすることによって得られたガウス関数GM、GSの面積SM、SSを求め、ガウス関数GM、GSの面積SM、SSから溶銑の重量比率αを求めて表示する。
【解決手段】CCDカメラ5で撮像された出銑流2の画像41のデータから濃度ヒストグラム42を算出し、算出した濃度ヒストグラム42における溶銑に起因するピークでの濃度値PMを演算する。また、溶銑に起因するピークでの濃度値PMに、溶銑及び溶融スラグの分光放射率の比率に基づく定数を乗じて、溶融スラグに起因するピークでの濃度値PSを求める。そして、求めた濃度値PM、PSを用いて、溶銑に起因する濃度分布43と、溶融スラグに起因する濃度分布44にガウス関数GM、GSをフィッティングする。そして、フィッティングすることによって得られたガウス関数GM、GSの面積SM、SSを求め、ガウス関数GM、GSの面積SM、SSから溶銑の重量比率αを求めて表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉出銑流測定システム、高炉出銑流測定方法、及びコンピュータプログラムに関し、特に、高炉に形成された出銑口から流出した溶銑と溶融スラグとの混合比率を測定するために用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
高炉の内部では、高温還元反応により溶銑と溶融スラグとが生成され、生成された溶銑と溶融スラグは、炉底に滴下して湯溜まりを形成する。高炉の炉底横の側壁部分には、出銑口が形成されており、この出銑口にはマッド材が充填されている。ドリル等を用いてマッド材が除去されて出銑口が開孔されると、溶銑と溶融スラグとの混合物が流出する。流出した溶銑と溶融スラグとの混合物は、出銑桶に到達し、出銑桶に沿って流れる。その後、溶銑と溶融スラグは、出銑桶の途中に形成されたスキンマで分離される。
【0003】
以上のようにして高炉を操業するに際し、出銑口から流出した溶銑及び溶融スラグの混合比率の時間推移は、安定していることが望ましい。例えば、溶銑及び溶融スラグのどちらかが終始偏って流出するといった溶銑及び溶融スラグの混合比率の時間推移が通常と異なる場合には、湯溜まり部分の通液性や湯面上下動に何らかの異変があることが懸念される。このように、溶銑及び溶融スラグの混合比率の変動は、高炉の安定操業を維持する上で監視すべき重要な指標の一つとなる。
【0004】
そこで、従来から、溶銑及び溶融スラグの流出量を、溶銑及び溶融スラグの生成重量を測定することで管理することが行われている。具体的に説明すると、スキンマで分離された溶銑を、出銑桶の先にあるトーピード車に注ぎ込んだ後に秤量すると共に、同じくスキンマで分離された溶融スラグを、水冷及び粉砕を行った後に秤量する技術がある。
【0005】
この他、スキンマで分離された溶銑を蓄える溶銑鍋の上方に、マイクロ波レベル計を設け、このマイクロ波レベル計を用いて溶銑鍋内にある溶銑の表面位置を測定すると共に、前述したようにして水冷及び粉砕を行った溶融スラグをコンベヤスケールで秤量する技術もある(特許文献1を参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平5−156331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した従来の技術では、数十メートルの長さを有する出銑桶を流れた後に、溶銑及び溶融スラグの重量を測定しているので、出銑桶の途中に滞留している溶銑の量が不明である。従って、出銑口から流出した直後の溶銑及び溶融スラグの重量と異なる重量を測定してしまう虞がある。また、溶融スラグに関しては、水冷及び粉砕を行った後に重量を測定するので、溶融スラグの重量測定時刻と出銑時刻とを対応付けることが困難である。さらに、溶融スラグは、水冷及び粉砕が行われた際に水を吸収するので、溶融スラグの正確な生成量を求めることが困難である。
【0008】
以上のような理由から、従来の技術では、出銑口から流出した溶銑及び溶融スラグの正確な混合比率を時間的に連続して把握することができないという問題点があった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、出銑口から流出した溶銑及び溶融スラグの正確な混合比率を時間的に連続して把握することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の高炉出銑流測定システムは、高炉に形成された出銑口から流出した溶融物を含む領域の熱放射輝度分布を、濃度分布を示す画像として撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された画像の濃度分布から、前記溶融物に含まれる溶銑を表す画像の濃度分布と、前記溶融物に含まれる溶融スラグを表す画像の濃度分布とを分別する濃度分布分別手段と、前記濃度分布分別手段により分別された、前記溶銑を表す画像の濃度分布と、前記溶融スラグを表す画像の濃度分布とを用いて、前記溶銑及び前記溶融スラグの混合比率を求める混合比率導出手段とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明の高炉出銑流測定方法は、高炉に形成された出銑口から流出した溶融物を含む領域の熱放射輝度分布を、濃度分布を示す画像として撮像する撮像ステップと、前記撮像ステップにより撮像された画像の濃度分布から、前記溶融物に含まれる溶銑を表す画像の濃度分布と、前記溶融物に含まれる溶融スラグを表す画像の濃度分布とを分別する濃度分布分別ステップと、前記濃度分布分別ステップにより分別された、前記溶銑を表す画像の濃度分布と、前記溶融スラグを表す画像の濃度分布とを用いて、前記溶銑及び前記溶融スラグの混合比率を求める混合比率導出ステップとを有することを特徴とする。
【0011】
本発明のコンピュータプログラムは、高炉に形成された出銑口から流出した溶融物を含む領域の熱放射輝度分布を、濃度分布を示す画像として、撮像手段により撮像する撮像ステップと、前記撮像ステップにより撮像された画像の濃度分布から、前記溶融物に含まれる溶銑を表す画像の濃度分布と、前記溶融物に含まれる溶融スラグを表す画像の濃度分布とを分別する濃度分布分別ステップと、前記濃度分布分別ステップにより分別された、前記溶銑を表す画像の濃度分布と、前記溶融スラグを表す画像の濃度分布とを用いて、前記溶銑及び前記溶融スラグの混合比率を求める混合比率導出ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、出銑口から流出した溶融物を含む領域の熱放射輝度分布が、濃度分布を示す画像として撮像されると、撮像された画像の濃度分布から、溶銑を表す画像の濃度分布と、溶融スラグを表す画像の濃度分布とを分別し、分別した濃度分布を用いて、溶銑及び溶融スラグの混合比率を求める。
【0013】
従って、出銑口から流出した直後の溶銑及び溶融スラグの混合比率を時間的に連続して測定することができ、出銑口から流出した溶銑及び溶融スラグの正確な混合比率を迅速に且つ連続的に測定することができる。
これにより、出銑中の溶銑及び溶融スラグの混合比率の変化を監視し、高炉の異変や異常を早期に把握することができ、高炉の操業を安定させることが可能になる。
【0014】
また、出銑口から流出した溶融物を含む領域の撮像画像を利用して溶銑及び溶融スラグの混合比率を求めるようにしたので、出銑口付近に装置を設置せずに、溶銑及び溶融スラグの混合比率を求めることができる。これにより、溶銑及び溶融スラグの熱放射や飛散等を、装置が受けてしまうことを防止することができ、装置の環境対策を比較的容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。
図1は、出銑流測定システムの構成の一例を示す図である。尚、図1では、高炉1全体のうち、出銑口1a付近の一部分のみを示している。
図1に示すように、高炉1の炉底横の側壁部分に形成された出銑口1aから、溶銑と溶融スラグとの混合物(溶融物)2が流出している。流出した溶銑と溶融スラグとの混合物2は、出銑桶3に到達し、出銑桶3に沿って流れる。また、出銑口1aと間隔を有して、桶カバー4が出銑桶3を囲むようにして形成されている。尚、以下の説明では、溶銑と溶融スラグとの混合物2を出銑流2と称する。
【0016】
図1に示すように、出銑口1aから流出した直後の出銑流2は、桶カバー4によって遮蔽されていない。本実施形態では、この出銑口1aから流出した直後の出銑流2の熱放射輝度分布を、横方向からモノクロのCCDカメラ5を用いて撮像するようにしている。具体的に本実施形態では、CCD(Charge Coupled Devices)カメラは640×480画素を有し、約0.4mmの分解能で出銑流2を撮像した。
【0017】
本願発明者らは、露光時間(シャッタースピード)を極めて短くして、出銑口1aから流出した出銑流2の画像(熱放射輝度分布)を撮像すると、放射輝度の低い部分と、放射輝度の高い部分とが分離されるという知見を得た。この知見は、5〜10m/sという速い速度で出銑流2が出銑口1aから流出していることに着目したものであり、従来から使用されていた放射温度計による測定や、肉眼による観察等では得ることができなかったものである。
そこで、本実施形態では、撮像時の露光時間を、1/10000秒として、出銑口から流出した出銑流2を、CCDカメラ5を用いて撮像するようにした。
【0018】
以上のようにして撮像された出銑流2の画像のデータは、画像処理装置6に入力される。図2は、画像処理装置6の機能構成の一例を示すブロック図である。
図2において、画像処理装置6は、濃度ヒストグラム算出部6aと、溶銑ピーク濃度演算部6bと、スラグピーク濃度導出部6cと、分別部6dと、混合比率導出部6eと、混合比率出力部6fとを有している。これらの各部6a〜6eは、例えば、CPUがROMに記憶されているプログラムを、RAMを用いて実行することにより実現することができる。
【0019】
濃度ヒストグラム算出部6aは、入力した出銑流2の画像のデータから、濃度ヒストグラムを算出する。
図3は、CCDカメラ5を用いて撮像された出銑流2の画像(図3(a))と、その画像を用いて濃度ヒストグラム算出部6aにより算出された濃度ヒストグラム(図3(b))との一例を示した図である。尚、出銑流2の直径は、大凡100mmである。
図3(a)に示すような出銑流2の画像21について、画素毎の濃度を濃度階調に分解したものを横軸にし、その濃度階調毎の画素数を縦軸にしたものが、図3(b)に示す濃度ヒストグラム22となる。図3(b)に示す濃度ヒストグラム22において、濃度レベルの低い部分に出現している濃度分布23は、出銑流2の画像21における背景の画像21aに起因するものである。濃度レベルの高い部分には2つの濃度分布24、25が出現しており、これら2つの濃度分布24、25のうち、濃度レベルの低い方の濃度分布24は、溶銑21bの画像に起因するものであり、濃度レベルの高い方の濃度分布25は、溶融スラグ21cの画像に起因するものである。
【0020】
尚、溶銑及び溶融スラグの濃度レベルが1点に集中せずに分布を有するのは、出銑流2が複雑な挙動で出銑口1aから流出することに起因するからであると考えられる。即ち、出銑流2の表面は複雑な挙動を示しているので、出銑流2の画像21は、この複雑な挙動の影響を受けて、同じ対象物(例えば溶銑21b)であっても局所的な温度ばらつきや見かけの放射率変動によって異なる濃度で撮像され、出銑流2の画像21は、本来の濃度に対し分布が生じることになる。
【0021】
出銑流2に含まれる溶銑及び溶融スラグの比率や、出銑流2の流出量は、時々刻々と変動する。そこで、出銑状態が異なる複数の出銑流の画像を撮像して濃度ヒストグラムの様子を見たところ、例えば図4に示すように、溶銑と溶銑スラグとの比率に対応して、両者の分布の形状も変化することが確認された。具体的に、図4(a)に示す濃度ヒストグラム31では、溶銑に起因する濃度分布32のピークが、溶融スラグに起因する濃度分布33のピークよりも大きくなっているのに対し、図4(b)に示す濃度ヒストグラム34では、溶融スラグに起因する濃度分布36のピークが、溶銑に起因する濃度分布35のピークよりも大きくなっている。
【0022】
以上のようにして濃度ヒストグラム算出部6aにより算出される濃度ヒストグラムにおいて、本願発明者らは以下のような知見を得た。
第1に、濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMは、出銑流2の画像の分布形状には無関係であることが明らかになった。
【0023】
第2に、濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMと、溶銑の温度との関係を、浸漬消耗型熱電対プローブを試験的に出銑流2に挿入して溶銑の温度を測定することによって調べたところ、溶銑の温度が高くなると、溶銑に起因するピークの濃度値PMが大きくなる(画像21が明るくなる)ことが明らかになった。
第3に、濃度ヒストグラム22における溶銑に起因する濃度分布24と、溶融スラグに起因する濃度分布25とに、後述するようにしてガウス関数をフィッティングすることにより、溶銑に起因する濃度分布24と、溶融スラグに起因する濃度分布25とを分離することができることが明らかになった。以下、この第3の知見について、詳細に説明する。
【0024】
図5は、CCDカメラ5を用いて撮像された出銑流2の画像(図5(a))と、その画像を用いて濃度ヒストグラム算出部6aにより算出された濃度ヒストグラム(図5(b))との測定例を示した図である。
図5に示すように、濃度階調が80以上のところに、溶銑41bに起因する濃度分布43と、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44とが存在している。このように、溶銑41bに起因する濃度分布43と、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44とには、重複する領域がある。
【0025】
尚、図5では、濃度ヒストグラム42のうち、溶銑41bに起因する濃度分布43と、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44とを示しているが、背景41aに起因する濃度分布も存在している。この背景41aに起因する濃度分布は、濃度階調が40以下のところに存在しており、溶銑41bに起因する濃度分布43、及び溶融スラグ41cに起因する濃度分布44とは完全に分離して存在している。よって、図5では背景41aに起因する濃度分布の図示を省略している。
【0026】
以上のように、溶銑41bに起因する濃度分布43と、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44には重複する領域があるので、溶銑41bと溶融スラグ41cとの混合比率を求めるためには、これら2つの濃度分布43、44を分離する必要がある(図3及び図4も参照)。
そこで、本願発明者らは、多数の濃度ヒストグラムを用いて、溶銑に起因する濃度分布と、溶融スラグに起因する濃度分布とに、ガウス関数をフィッティングして、これら2つの濃度分布を分離することを試みた。
【0027】
その結果、本願発明者らは、例えば、図5に示した濃度ヒストグラム42のように、溶融スラグ43cの量が少なく、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44にピークが明確に生じていない場合には、溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PS等の情報を事前に与えなければ、ガウス関数を、溶銑41bに起因する濃度分布43と、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44とに精度良くフィッティングすることが困難になる(フィッティングが不安定になる)という知見を得た。
【0028】
本願発明者らは、具体的に以下の手法を採ることにより、溶銑41bに起因する濃度分布43と、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44とに重複する領域が存在していても、これら2つの濃度分布43、44に、ガウス関数を精度良くフィッティングすることができることを見出した。以下にその手法を用いた画像処理装置6の動作の一例を説明する。
【0029】
(1)溶銑ピーク濃度演算部6bは、濃度ヒストグラム算出部6aにより算出された濃度ヒストグラム42に含まれる溶銑41bに起因するピークでの濃度値PMを自動検出する。
濃度ヒストグラム42における背景41aに起因する濃度分布は、常にほぼ同一形状である。背景41aは、常温近傍で温度変化がないからである。そこで、本実施形態では、溶銑ピーク濃度演算部6bは、以下のようにして溶銑に起因するピークでの濃度値PMを求める。
【0030】
まず、溶銑ピーク濃度演算部6bは、溶銑41bに起因する濃度分布42における低濃度側(低輝度側)の裾野部分(背景41aに起因する濃度分布41における高濃度側(高輝度側)の裾野部分)の所定の濃度レベルに、予め始点Kを指定する。図5に示した例では、濃度階調が80の点を始点Kとしている。そして、溶銑ピーク濃度演算部6bは、始点Kから高濃度側(高輝度側)の方向にピーク検出処理を実行する。このピーク検出処理では、例えば、隣り合う濃度レベルで画素数(度数)の多寡を比較する処理を逐次進めることにより最初に得られた画素数の変曲点を、溶銑に起因するピークとし、そのピークでの濃度値を、溶銑41bに起因するピークでの濃度値PMとする処理が行われる。図5に示した例では、溶銑41bに起因するピークでの濃度値PMは、93となった。
【0031】
(2) スラグピーク濃度導出部6cは、溶銑41bに起因するピークでの濃度値PMの値を用いて、溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PSを求める。
前述したように、図5に示したような濃度ヒストグラム42では、溶融スラグ41cに起因するピークが明確に出現していないので、前述した(1)の手法のようにして溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PSを演算することは困難である。
そこで、スラグピーク濃度導出部6cは、溶銑41bに起因するピークでの濃度値PMに、溶銑41b及び溶融スラグ41cの分光放射率により定められる定数を乗じることにより、溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PSを求める。
【0032】
このようにして溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PSを求めるために、スラグピーク濃度導出部6cは、高炉1で生成されスキンマで分離された溶銑の分光放射率と溶融スラグの分光放射率との測定結果を用いるようにしている。例えば、溶銑の分光放射率εMとして0.42、溶融スラグの分光放射率εSとして0.61が得られたとすると、スラグピーク濃度導出部6cは、これら分光放射率εM、εSの比である1.45(=0.61/0.42)を用いて、溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PSを、以下の(1)式により求めることができる。
PS=1.45×PM ・・・(1)
図5に示した例では、画像41に濃度値が27のバイアスがあったので、溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PSは、123(=(93−27)×1.45+27)になった。
【0033】
(3) 分別部6dは、溶銑41bに起因する濃度分布43と、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44とにガウス関数をフィッティングする。
本実施形態では、以下の3種類のガウス関数を使用した。
具体的に、溶銑41bに起因する濃度分布43の濃度値PMよりも低濃度側(左側)を表現するためのガウス関数GM1と、溶銑41bに起因する濃度分布43の濃度値PMよりも高濃度側(右側)を表現するためのガウス関数GM2と、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44の全体を表現するためのガウス関数GSとを用いた。
【0034】
このように、本実施形態では、溶銑41bに起因する濃度分布43については、濃度値PMよりも高濃度側の分布と、濃度値PMよりも低濃度側の分布とが非対称であるとして、2つのガウス関数GM1、GM2を用いるようにした。溶銑41bに起因する濃度分布43が左右非対称のガウス分布を示す理由として、以下の理由が推測される。
【0035】
まず、濃度値PMよりも低濃度側では、高炉1内の溶銑にもともと多少の温度分布があることと、たまたま出銑流2の表面に存在する時間が長い流れ成分の温度が、大気との接触により、瞬間的に且つ局所的に低下することとによって、濃度レベルが小さくなるためと考えられる。
一方、濃度値PMよりも高濃度側では、高炉1内の溶銑にもともと多少の温度分布があることと、乱流となっている出銑流2の表面における波立ちの谷間で生じる放射光の多重反射によって見かけの放射率が高くなることとによって、濃度レベルが実際の濃度レベルよりも大きくなるためと考えられる。
【0036】
以上のように、溶銑41bに起因するピークでの濃度値PMを境として、低濃度側と高濃度側とで、溶銑に生じている物理現象が異なることにより、溶銑41bに起因する濃度分布43が左右非対称となっているとすれば、ガウス分布の分散も左右で異なるはずである。
一方、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44も、溶銑41bに起因する濃度分布43と同様に、左右非対称のガウス分布になっていると推測されるが、本実施形態では、処理を高速且つ確実に行うようにするために、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44については、左右対称のガウス分布であるとして、1つのガウス関数GSのみを用いた。
【0037】
本実施形態の分別部6dは、前述したようにして求めた、溶銑に起因するピークでの濃度値PMと、溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PSとを用いて、以上の3つのガウス関数GM1、GM2、GSが、図4に示した濃度ヒストグラム42に合うように、3つのガウス関数GM1、GM2、GSのパラメータを定める最適化計算を、市販のソフトウェアを用いて実行するようにした。
図6は、このようにして分別部6dが濃度ヒストグラム42にガウス関数をフィッティングして得られた結果の一例を示す図である。
【0038】
図6に示す例では、溶銑41bに起因する濃度分布43に対してフィッティングして得られたガウス関数GM(=GM1+GM2)におけるピークでの高さ(画素数)は、1740であった。また、ガウス関数GMにおける低濃度側での標準偏差σは46であり、高濃度側での標準偏差σは93であった。さらに、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44に対してフィッティングして得られたガウス関数GSにおけるピークでの高さ(画素数)は、512であり、このガウス関数GSにおける標準偏差σは552であった。
【0039】
図6に示すように、溶銑41bに起因する濃度分布43に対してフィッティングして得られたガウス関数GM(=GM1+GM2)と、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44に対してフィッティングして得られたガウス関数GSとを加算した関数GAは、濃度ヒストグラム42と良く一致していることが分かる。即ち、ガウス関数GM、GSは、それぞれ溶銑41bに起因する濃度分布43、及び溶融スラグ41cに起因する濃度分布44に対して、精度良くフィッティングされたものであることが分かる。
【0040】
以上のようにして、溶銑41bに起因する濃度分布43に対してフィッティングしてガウス関数GM、GSが得られると、混合比率導出部6eは、ガウス関数GM、GSの面積SM、SSを求める。図6は、ガウス関数GM、GSの面積SM、SSとなる部分を斜線で示した図である。
図6に示すように、ガウス関数GM、GSは、画像の濃度Pの関数であるので、以下の(2)式及び(3)式を用いることにより、ガウス関数GM、GSの面積SM、SSを求めることができる。
【0041】
【数1】
【0042】
このように、ガウス関数GM、GSの面積SM、SSは、ガウス関数GM、GSの積分値である。図7に示した例では、ガウス関数GMの面積SMは、2.5×104であり、ガウス関数GSの面積SSは、2.1×104であった。
以上のようにして得られたガウス関数GMの面積SMは、溶銑41bの表面積を表し、ガウス関数GSの面積SSは溶融スラグ41cの表面積を表す。ここで、出銑口1aから流出した出銑流2は乱流であるので、溶銑と溶融スラグとの混合比率は、出銑流2の表面と内部とで均一であると仮定することができる。そうすると、画像41として観察して得られる溶銑41bの表面積と溶融スラグ41cの表面積との比率が、溶銑の体積と溶融スラグの体積との比率に等しいとすることができる。即ち、ガウス関数GM、GSの面積SM、SSの比率が、溶銑の体積と溶融スラグの体積との比率に相当する。従って、ガウス関数GM、GSの面積SM、SSの比率を求めれば、出銑口1aから流出した溶銑と溶融スラグとの混合比率を求めることができる。
【0043】
ところで、溶銑と溶融スラグとでは、比重が異なる。具体的に説明すると、溶銑の比重は6.8ton/m3であり、溶融スラグの比重は2.6ton/m3である。そこで、混合比率導出部6eは、溶融スラグに対する溶銑の重量比率を求めるようにしている。具体的に説明すると、溶銑の重量比率αは、以下の(4)式を用いることにより求めることができる。
【0044】
α=(SM×WM)/(SM×WM+SS×WS) ・・・(4)
ここで、WM、WSは、それぞれ溶銑の比重と溶融スラグの比重である。
図6に示した例では、ガウス関数GMの面積SMは、2.5×104であり、ガウス関数GSの面積SSは、2.1×104であるので、溶銑の重量比率αは0.76となる。
混合比率導出部6eは、以上のようにして溶銑の重量比率αを時間的に連続して算出する。
そして、混合比率出力部6fは、混合比率導出部6eにより算出された結果を記憶媒体に記憶すると共に表示装置に表示する。
【0045】
図8は、溶銑と溶融スラグの混合比率の算出結果の表示画面の一例を示した図である。
図8に示すように、本実施形態では、溶銑の重量比率αの瞬時値71と、トレンドグラフ(溶銑の重量比率αと出銑経過時間との関係を表すグラフ)72とを、溶銑の重量比率αの算出結果として表示するようにしている。また、高炉1に装入された原料から計算される溶銑の重量比率73も合わせて表示するようにしている。
【0046】
ここで、重量比率73は、高炉1に装入する前の原料を秤量し、秤量した結果を用いて溶銑及び溶融スラグの理論上の生成重量を求めることにより計算されるものである。従って、重量比率73は、溶銑の重量比率αの精度を判断する際の指標となる。図8に示す例では、溶銑の重量比率αの出銑全期間における平均値は、高炉1に装入された溶銑の重量比率73に近くなっていることから、溶銑の重量比率αは精度良く求められていることが分かる。
【0047】
以上のような表示を行うことにより、操業管理者は、時々刻々と変化する溶銑の重量比率αをリアルタイムで把握することができる。具体的に、図8に示す例では、溶銑の重量比率αは、時間の経過と共に、溶銑の比率が低下して溶融スラグの比率が増加していく傾向にあることを容易に把握することができる。
【0048】
以上のように、本実施形態では、CCDカメラ5と画像処理装置6とを用いて、出銑流測定システムが構成されることになる。
【0049】
次に、図9のフローチャートを参照しながら、出銑流測定システムに設けられた画像処理装置6の動作の一例を説明する。
まず、ステップS1において、濃度ヒストグラム算出部6aは、出銑口1aから流出した出銑流2の画像を、CCDカメラ5から入力するまで待機する。
出銑口1aから流出した出銑流2の画像を入力すると、ステップS2に進み、濃度ヒストグラム算出部6aは、入力した出銑流2の画像のデータから、濃度ヒストグラムを算出する。
次に、ステップS3において、溶銑ピーク濃度演算部6bは、ステップS2で算出した濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMを、前述したピーク検出処理を行って演算する。
【0050】
次に、ステップS4において、スラグピーク濃度導出部6cは、ステップS3で演算した、溶銑に起因するピークでの濃度値PMに1.45を乗じて、溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PSを求める((1)式を参照)。
【0051】
次に、ステップS5において、分別部6dは、ステップS3で演算した、溶銑に起因するピークでの濃度値PMと、ステップS4で求めた、溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PSとを用いて、濃度ヒストグラム42(溶銑41bに起因する濃度分布43と、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44)に合うガウス関数GM1、GM2、GSのパラメータを定める最適化計算を行う。即ち、濃度ヒストグラム42(溶銑41bに起因する濃度分布43と、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44)にガウス関数GM1、GM2、GSをフィッティングする処理を行う。
【0052】
次に、ステップS6において、混合比率導出部6eは、ステップS5で得られたガウス関数GM(=GM1+GM2)の面積SMを求める((2)式を参照)。
次に、ステップS7において、混合比率導出部6eは、ステップS5で得られたガウス関数GSの面積SSを求める((3)式を参照)。
【0053】
次に、ステップS8において、混合比率導出部6eは、溶融スラグに対する溶銑の重量比率αを求め((4)式を参照)、混合比率出力部6fは、求めた溶銑の重量比率αの瞬時値71と、トレンドグラフ72とを表示装置に表示する。
【0054】
次に、ステップS9において、濃度ヒストグラム算出部6aは、測定終了指示がユーザによりなされたか否かを判定する。この判定の結果、測定終了指示がユーザによりなされていない場合には、測定終了指示がなされるまで、ステップS1〜S9を繰り返し行う。一方、測定終了指示がユーザによりなされた場合には処理を終了する。
【0055】
尚、本実施形態では、以上のような処理を行う画像処理装置6として、画像入出力ボードを備えたパソコンを使用している。画像処理装置6のハードウェア構成は、例えば、図10に示すようなものになる。
【0056】
図10において、画像処理装置6は、CPU101と、ROM102と、RAM103と、キーボード(KB)104のキーボードコントローラ(KBC)105と、CRTディスプレイ(CRT)106のCRTコントローラ(CRTC)107と、ハードディスク(HD)108及びフレキシブルディスク(FD)109のディスクコントローラ(DKC)110と、画像入出力ボード(PIB)111のコントローラ(IC)112とが、システムバス113を介して互いに通信可能に接続された構成としている。
【0057】
CPU101は、ROM102或いはHD108に記憶されたソフトウェア、或いはFD109より供給されるソフトウェアを実行することで、システムバス103に接続された各構成部を総括的に制御する。
すなわち、CPU101は、所定の処理シーケンスに従った処理プログラムを、ROM102、或いはHD108、或いはFD109から読み出して実行することで、前述した処理動作を実現するための制御を行う。
【0058】
RAM103は、CPU101の主メモリ或いはワークエリア等として機能する。
KBC105は、KB104や図示していないポインティングデバイス等からの指示入力を制御する。
【0059】
CRTC107は、CRT106の表示を制御する。
DKC110は、ブートプログラム、種々のアプリケーション、編集ファイル、ユーザファイル、ネットワーク管理プログラム、及び本実施の形態における所定の処理プログラム等を記憶するHD108及びFD109とのアクセスを制御する。
IC112は、PIB111に接続されたCCDカメラ5等の装置との間で行われる画像データの入出力を制御する。
【0060】
以上のように本実施形態では、CCDカメラ5で撮像された出銑流2の画像41のデータから濃度ヒストグラム42を算出し、算出した濃度ヒストグラム42における溶銑に起因するピークでの濃度値PMを演算する。また、溶銑に起因するピークでの濃度値PMに、溶銑及び溶融スラグの分光放射率の比率に基づく定数を乗じて、溶融スラグに起因するピークでの濃度値PSを求める。そして、求めた濃度値PM、PSを用いて、溶銑に起因する濃度分布43と、溶融スラグに起因する濃度分布44にガウス関数GM、GSをフィッティングする。そして、フィッティングすることによって得られたガウス関数GM、GSの面積SM、SSを求め、ガウス関数GM、GSの面積SM、SSから溶銑の重量比率αを求めて表示する。
【0061】
そして、以上のようにして溶銑の重量比率αを求めるに際し、溶銑41bに起因する濃度分布43については、濃度値PMよりも高濃度側の分布と、濃度値PMよりも低濃度側の分布とが非対称であるとして、2つのガウス関数GM1、GM2を用いるようにした。これにより、溶銑41bに起因する濃度分布43に、ガウス関数GMをより精度良くフィッティングすることができる。
一方、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44については、濃度値PSよりも高濃度側の分布と、濃度値PSよりも低濃度側の分布とが対称であるとして、1つのガウス関数GSを用いるようにした。これにより、ガウス関数のフィッティングを比較的精度良く迅速に行えると共に、最適化計算の結果が発散してしまうことを防止することができる。尚、ガウス関数のフィッティングを比較的精度良く行えるのは、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44は、なだらかな分布(分散が大きい)だからである。
【0062】
以上のことから、本実施形態では、出銑口1aから流出した直後の溶銑及び溶融スラグの混合比率を時間的に連続して測定することができ、出銑口1aから流出した溶銑及び溶融スラグの正確な混合比率を迅速に且つ連続的に測定することができる。
これにより、出銑中の溶銑及び溶融スラグの混合比率の変化を監視し、高炉1の異変や異常を早期に把握することができ、高炉1の操業を安定させることが可能になる。
【0063】
また、出銑口1aから流出した溶融物を含む領域の撮像画像を利用して溶銑及び溶融スラグの混合比率を求めるようにしたので、出銑口1a付近に装置を設置せずに、溶銑及び溶融スラグの混合比率を求めることができる。これにより、溶銑及び溶融スラグの熱放射や飛散等を、装置が受けてしまうことを防止することができ、装置の環境対策を比較的容易に行うことができる。
【0064】
尚、本実施形態では、濃度ヒストグラム42にガウス関数をフィッティングするようにしたが、必ずしもガウス関数を用いる必要はなく、χ2乗分布関数、F分布関数、又はt分布関数等の分布関数を用いることもできる。
【0065】
また、本実施形態では、溶銑41bに起因するピークでの濃度値PMを求め、この濃度値PMを基準として溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PSを求める場合を例に挙げて示したが、これとは逆に、溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PSを求め、この濃度値PSを基準として溶銑41bに起因するピークでの濃度値PMを求めることもできる。
【0066】
このような場合には、例えば、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44の高濃度側の裾野部分の所定の濃度レベルに始点Kを指定し、この始点Kから低濃度側の方向にピーク検出処理を実行して、溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PSを求める。そして、求めた濃度値PSに、溶銑41b及び溶融スラグ41cの分光放射率により定められる定数(=0.69(=0.42/0.61))を乗じて、溶銑41bに起因するピークでの濃度値PMを求める。そして、求めた濃度値PS、PMを用いて、前述したように溶銑に起因する濃度分布43と、溶融スラグに起因する濃度分布44にガウス関数GM、GSをフィッティングする。
【0067】
例えば、出銑口1aから流出した溶融スラグが溶銑よりも遥かに多いために、溶銑41bに起因するピークでよりも、溶融スラグ41cに起因するピークの方が明確な場合には、以上のように、溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PSを求め、この濃度値PSを基準として溶銑41bに起因するピークでの濃度値PMを求めることができる。
また、算出された濃度ヒストグラムのピークの形状等に応じて、溶銑41bに起因するピークでの濃度値PMを求めてから、溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PSを求めるか、又は溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PSを求めてから、溶銑41bに起因するピークでの濃度値PMを求めるかを選択するようにしてもよい。
【0068】
さらに、本実施形態では、前述したように、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44については、濃度値PSよりも高濃度側の分布と、濃度値PSよりも低濃度側の分布とが対称であるとして、1つのガウス関数GSを用いるようにしたが、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44についても、溶銑に起因する濃度分布43と同様に、濃度値PSよりも低濃度側の分布と濃度値PSよりも高濃度側の分布とが非対称であるとして2つのガウス関数を用いるようにしてもよい。
【0069】
また、本実施形態では、濃度ヒストグラム42にフィッティングして得られたガウス関数GM、GSを用いて、出銑口1aから流出した溶銑と溶融スラグとの混合比率を求めるようにした。しかしながら、CCDカメラ5により撮像された画像41から、溶銑41bと溶融スラグ41cとの混合比率を求めることができれば、必ずしも濃度ヒストグラム42にフィッティングして得られたガウス関数GM、GSを用いる必要はない。
【0070】
例えば、CCDカメラ5により撮像された画像41から、濃度が第1のしきい値以下の画素を除外して溶銑41b及び溶融スラグ41cの画像を取り出した後、取り出した画像を第2のしきい値で二値化し、二値化した一方の値を有する画素数と他方の値を有する画素数との比から、出銑口1aから流出した溶銑と溶融スラグとの混合比率を求めるようにしてもよい。ここで、第2のしきい値は、例えば、溶銑に起因する濃度分布43の高濃度側の裾野部分(溶融スラグに起因する濃度分布44の低濃度側の裾野部分の画素値)の濃度とすればよい。
【0071】
また、本実施形態では、溶銑の重量比率αの瞬時値71と、トレンドグラフ72と、高炉1に装入された溶銑の重量比率73とを表示装置に表示するようにしたが、溶銑と溶融スラグの混合比率の算出結果を表示していれば、必ずしもこれらを表示する必要はない。高炉1に装入された溶銑の重量比率73を表示しなくてもよいし、溶銑の重量比率αの瞬時値71と、トレンドグラフ72の代わりに、ガウス関数GM、GSの面積SM、SSの比率の瞬時値と、トレンドグラフを表示するようにしてもよい。
【0072】
また、本実施形態では、CCDカメラ5の分解能を約0.4mmとし、露光時間を1/10000秒としたが、CCDカメラ5の分解能及び露光時間は、これらに限定されない。ただし、CCDカメラ5の分解能は1mm以下が好ましく、露光時間は1/5000秒以下であることが好ましい。このように、CCDカメラ5の分解能を1mm以下にするのは、溶融スラグの細部に存在する、2mm程度のサイズの線状又は点状の部分を捉えるためである。また、露光時間は1/5000秒以下にするのは、高速で且つ乱流状態で移動する出銑流2を、像流れすることなく静止させて観察することができるようにするためである。
【0073】
具体的に、CCDカメラ5の分解能を1mm以下にすると共に、露光時間を1/5000秒以下にすると、例えば、図11(a)に示すように、濃度ヒストグラム91に、溶銑を表す分布のピーク92と、溶融スラグを表す分布のピーク93とが明確に存在する。これに対し、CCDカメラ5の分解能を1mm以下にすると共に、露光時間を1/5000秒以下にしないと、図11(b)に示すように、濃度ヒストグラム91に、溶銑を表す分布のピーク92と、溶融スラグを表す分布のピーク93とが個別に存在しなくなり、溶銑の分布のピークを求めることができなくなる虞がある。よって、CCDカメラ5の分解能は1mm以下が好ましく、露光時間は1/5000秒以下であることが好ましい。
尚、CCDカメラ5に、一定の狭い波長を有する光のみを透過する波長選択フィルタをCCDカメラ5に取り付けるようにしてもよい。
【0074】
また、本実施形態では、CCDカメラ5を用いて出銑流2の画像を撮像するようにしたが、必ずしもCCDカメラ5を用いる必要はない。例えば、CCD以外のセンサ(例えばCMOSセンサ)を撮像素子として用いたカメラ、銀塩フィルムを用いたスチールカメラ等の撮像装置をCCDカメラ5の代わりに用いることができる。
【0075】
さらに、本実施形態では、出銑流2の画像(熱放射輝度分布)を、2次元の濃度分布を示す静止画像として撮像するようにしたが、例えば1次元のリニアアレイカメラで時間的に連続して露光時間が短い高速シャッターで撮像を繰り返し、カメラの素子配列方向と時間方向とを直行させて2次元の濃度分布を示す画像を形成し、形成した2次元の濃度分布を示す画像から濃度ヒストグラムを算出してもよい。
【0076】
また、本実施形態では、算出した濃度ヒストグラムをそのまま用いてピーク検出処理を行うようにしたが、予め濃度ヒストグラムの平滑化処理を行い、平滑化処理を行った濃度ヒストグラムを用いてピーク検出処理を行うようにしてもよい。このようにすれば、濃度ヒストグラムの波形に細かい雑音が乗っている場合でも、濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMを正確に求めることが可能になる。
【0077】
また、出銑流2における溶銑の温度は、概ね1450〜1600℃の範囲で変動する。よって、濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMの存在範囲もある程度予測することができる。そこで、予め予測した存在範囲内でピーク検出処理を行うようにしてもよい。このようにすれば、濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMを迅速に求めることが可能になる。
また、画像処理装置6が有する機能を複数の装置に分担させて行わせるようにしてもよい。
【0078】
(本発明の他の実施形態)
前述した実施形態の機能を実現するべく各種のデバイスを動作させるように、該各種デバイスと接続された装置あるいはシステム内のコンピュータに対し、前記実施形態の機能を実現するためのソフトウェアのプログラムコードを供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(CPUあるいはMPU)に格納されたプログラムに従って前記各種デバイスを動作させることによって実施したものも、本発明の範疇に含まれる。
【0079】
また、この場合、前記ソフトウェアのプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、及びそのプログラムコードをコンピュータに供給するための手段、例えば、かかるプログラムコードを格納した記録媒体は本発明を構成する。かかるプログラムコードを記憶する記録媒体としては、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
【0080】
また、コンピュータが供給されたプログラムコードを実行することにより、前述の実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードがコンピュータにおいて稼働しているOS(オペレーティングシステム)あるいは他のアプリケーションソフト等と共同して前述の実施形態の機能が実現される場合にもかかるプログラムコードは本発明の実施形態に含まれることは言うまでもない。
【0081】
さらに、供給されたプログラムコードがコンピュータの機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに格納された後、そのプログラムコードの指示に基づいてその機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合にも本発明に含まれることは言うまでもない。
【0082】
なお、前述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施形態を示し、出銑流測定システムの構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態を示し、画像処理装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態を示し、CCDカメラを用いて撮像された出銑流の画像と、その画像における濃度ヒストグラムとの一例を示した図である。
【図4】本発明の実施形態を示し、溶銑と溶銑スラグとの比率が異なる場合の出銑流の画像の一例を示した図である。
【図5】本発明の実施形態を示し、CCDカメラを用いて撮像された出銑流の画像と、その画像における濃度ヒストグラムとの測定例を示した図である。
【図6】本発明の実施形態を示し、濃度ヒストグラムにガウス関数をフィッティングして得られた結果の一例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態を示し、ガウス関数の面積となる部分を斜線で示した図である。
【図8】本発明の実施形態を示し、溶銑と溶融スラグの混合比率の算出結果の表示画面の一例を示した図である。
【図9】本発明の実施形態を示し、出銑流測定システムに設けられた画像処理装置の動作の一例を説明するフローチャートである。
【図10】本発明の実施形態を示し、画像処理装置6のハードウェア構成の一例を示した図である。
【図11】本発明の実施形態を示し、撮像条件が異なる場合の濃度ヒストグラムの一例を示した図である。
【符号の説明】
【0084】
1 高炉
1a 出銑口
2 出銑流
3 出銑桶
4 桶カバー
5 CCDカメラ
6 画像処理装置
21、41 出銑流の画像
22、31、34、42 濃度ヒストグラム
23 背景に起因する濃度分布
24、32、35、43 溶銑に起因する濃度分布
25、33、36、44 溶融スラグに起因する濃度分布
GM 溶銑に起因する濃度分布に対してフィッティングされたガウス関数
GS 溶融スラグに起因する濃度分布に対してフィッティングされたガウス関数
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉出銑流測定システム、高炉出銑流測定方法、及びコンピュータプログラムに関し、特に、高炉に形成された出銑口から流出した溶銑と溶融スラグとの混合比率を測定するために用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
高炉の内部では、高温還元反応により溶銑と溶融スラグとが生成され、生成された溶銑と溶融スラグは、炉底に滴下して湯溜まりを形成する。高炉の炉底横の側壁部分には、出銑口が形成されており、この出銑口にはマッド材が充填されている。ドリル等を用いてマッド材が除去されて出銑口が開孔されると、溶銑と溶融スラグとの混合物が流出する。流出した溶銑と溶融スラグとの混合物は、出銑桶に到達し、出銑桶に沿って流れる。その後、溶銑と溶融スラグは、出銑桶の途中に形成されたスキンマで分離される。
【0003】
以上のようにして高炉を操業するに際し、出銑口から流出した溶銑及び溶融スラグの混合比率の時間推移は、安定していることが望ましい。例えば、溶銑及び溶融スラグのどちらかが終始偏って流出するといった溶銑及び溶融スラグの混合比率の時間推移が通常と異なる場合には、湯溜まり部分の通液性や湯面上下動に何らかの異変があることが懸念される。このように、溶銑及び溶融スラグの混合比率の変動は、高炉の安定操業を維持する上で監視すべき重要な指標の一つとなる。
【0004】
そこで、従来から、溶銑及び溶融スラグの流出量を、溶銑及び溶融スラグの生成重量を測定することで管理することが行われている。具体的に説明すると、スキンマで分離された溶銑を、出銑桶の先にあるトーピード車に注ぎ込んだ後に秤量すると共に、同じくスキンマで分離された溶融スラグを、水冷及び粉砕を行った後に秤量する技術がある。
【0005】
この他、スキンマで分離された溶銑を蓄える溶銑鍋の上方に、マイクロ波レベル計を設け、このマイクロ波レベル計を用いて溶銑鍋内にある溶銑の表面位置を測定すると共に、前述したようにして水冷及び粉砕を行った溶融スラグをコンベヤスケールで秤量する技術もある(特許文献1を参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平5−156331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した従来の技術では、数十メートルの長さを有する出銑桶を流れた後に、溶銑及び溶融スラグの重量を測定しているので、出銑桶の途中に滞留している溶銑の量が不明である。従って、出銑口から流出した直後の溶銑及び溶融スラグの重量と異なる重量を測定してしまう虞がある。また、溶融スラグに関しては、水冷及び粉砕を行った後に重量を測定するので、溶融スラグの重量測定時刻と出銑時刻とを対応付けることが困難である。さらに、溶融スラグは、水冷及び粉砕が行われた際に水を吸収するので、溶融スラグの正確な生成量を求めることが困難である。
【0008】
以上のような理由から、従来の技術では、出銑口から流出した溶銑及び溶融スラグの正確な混合比率を時間的に連続して把握することができないという問題点があった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、出銑口から流出した溶銑及び溶融スラグの正確な混合比率を時間的に連続して把握することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の高炉出銑流測定システムは、高炉に形成された出銑口から流出した溶融物を含む領域の熱放射輝度分布を、濃度分布を示す画像として撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された画像の濃度分布から、前記溶融物に含まれる溶銑を表す画像の濃度分布と、前記溶融物に含まれる溶融スラグを表す画像の濃度分布とを分別する濃度分布分別手段と、前記濃度分布分別手段により分別された、前記溶銑を表す画像の濃度分布と、前記溶融スラグを表す画像の濃度分布とを用いて、前記溶銑及び前記溶融スラグの混合比率を求める混合比率導出手段とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明の高炉出銑流測定方法は、高炉に形成された出銑口から流出した溶融物を含む領域の熱放射輝度分布を、濃度分布を示す画像として撮像する撮像ステップと、前記撮像ステップにより撮像された画像の濃度分布から、前記溶融物に含まれる溶銑を表す画像の濃度分布と、前記溶融物に含まれる溶融スラグを表す画像の濃度分布とを分別する濃度分布分別ステップと、前記濃度分布分別ステップにより分別された、前記溶銑を表す画像の濃度分布と、前記溶融スラグを表す画像の濃度分布とを用いて、前記溶銑及び前記溶融スラグの混合比率を求める混合比率導出ステップとを有することを特徴とする。
【0011】
本発明のコンピュータプログラムは、高炉に形成された出銑口から流出した溶融物を含む領域の熱放射輝度分布を、濃度分布を示す画像として、撮像手段により撮像する撮像ステップと、前記撮像ステップにより撮像された画像の濃度分布から、前記溶融物に含まれる溶銑を表す画像の濃度分布と、前記溶融物に含まれる溶融スラグを表す画像の濃度分布とを分別する濃度分布分別ステップと、前記濃度分布分別ステップにより分別された、前記溶銑を表す画像の濃度分布と、前記溶融スラグを表す画像の濃度分布とを用いて、前記溶銑及び前記溶融スラグの混合比率を求める混合比率導出ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、出銑口から流出した溶融物を含む領域の熱放射輝度分布が、濃度分布を示す画像として撮像されると、撮像された画像の濃度分布から、溶銑を表す画像の濃度分布と、溶融スラグを表す画像の濃度分布とを分別し、分別した濃度分布を用いて、溶銑及び溶融スラグの混合比率を求める。
【0013】
従って、出銑口から流出した直後の溶銑及び溶融スラグの混合比率を時間的に連続して測定することができ、出銑口から流出した溶銑及び溶融スラグの正確な混合比率を迅速に且つ連続的に測定することができる。
これにより、出銑中の溶銑及び溶融スラグの混合比率の変化を監視し、高炉の異変や異常を早期に把握することができ、高炉の操業を安定させることが可能になる。
【0014】
また、出銑口から流出した溶融物を含む領域の撮像画像を利用して溶銑及び溶融スラグの混合比率を求めるようにしたので、出銑口付近に装置を設置せずに、溶銑及び溶融スラグの混合比率を求めることができる。これにより、溶銑及び溶融スラグの熱放射や飛散等を、装置が受けてしまうことを防止することができ、装置の環境対策を比較的容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。
図1は、出銑流測定システムの構成の一例を示す図である。尚、図1では、高炉1全体のうち、出銑口1a付近の一部分のみを示している。
図1に示すように、高炉1の炉底横の側壁部分に形成された出銑口1aから、溶銑と溶融スラグとの混合物(溶融物)2が流出している。流出した溶銑と溶融スラグとの混合物2は、出銑桶3に到達し、出銑桶3に沿って流れる。また、出銑口1aと間隔を有して、桶カバー4が出銑桶3を囲むようにして形成されている。尚、以下の説明では、溶銑と溶融スラグとの混合物2を出銑流2と称する。
【0016】
図1に示すように、出銑口1aから流出した直後の出銑流2は、桶カバー4によって遮蔽されていない。本実施形態では、この出銑口1aから流出した直後の出銑流2の熱放射輝度分布を、横方向からモノクロのCCDカメラ5を用いて撮像するようにしている。具体的に本実施形態では、CCD(Charge Coupled Devices)カメラは640×480画素を有し、約0.4mmの分解能で出銑流2を撮像した。
【0017】
本願発明者らは、露光時間(シャッタースピード)を極めて短くして、出銑口1aから流出した出銑流2の画像(熱放射輝度分布)を撮像すると、放射輝度の低い部分と、放射輝度の高い部分とが分離されるという知見を得た。この知見は、5〜10m/sという速い速度で出銑流2が出銑口1aから流出していることに着目したものであり、従来から使用されていた放射温度計による測定や、肉眼による観察等では得ることができなかったものである。
そこで、本実施形態では、撮像時の露光時間を、1/10000秒として、出銑口から流出した出銑流2を、CCDカメラ5を用いて撮像するようにした。
【0018】
以上のようにして撮像された出銑流2の画像のデータは、画像処理装置6に入力される。図2は、画像処理装置6の機能構成の一例を示すブロック図である。
図2において、画像処理装置6は、濃度ヒストグラム算出部6aと、溶銑ピーク濃度演算部6bと、スラグピーク濃度導出部6cと、分別部6dと、混合比率導出部6eと、混合比率出力部6fとを有している。これらの各部6a〜6eは、例えば、CPUがROMに記憶されているプログラムを、RAMを用いて実行することにより実現することができる。
【0019】
濃度ヒストグラム算出部6aは、入力した出銑流2の画像のデータから、濃度ヒストグラムを算出する。
図3は、CCDカメラ5を用いて撮像された出銑流2の画像(図3(a))と、その画像を用いて濃度ヒストグラム算出部6aにより算出された濃度ヒストグラム(図3(b))との一例を示した図である。尚、出銑流2の直径は、大凡100mmである。
図3(a)に示すような出銑流2の画像21について、画素毎の濃度を濃度階調に分解したものを横軸にし、その濃度階調毎の画素数を縦軸にしたものが、図3(b)に示す濃度ヒストグラム22となる。図3(b)に示す濃度ヒストグラム22において、濃度レベルの低い部分に出現している濃度分布23は、出銑流2の画像21における背景の画像21aに起因するものである。濃度レベルの高い部分には2つの濃度分布24、25が出現しており、これら2つの濃度分布24、25のうち、濃度レベルの低い方の濃度分布24は、溶銑21bの画像に起因するものであり、濃度レベルの高い方の濃度分布25は、溶融スラグ21cの画像に起因するものである。
【0020】
尚、溶銑及び溶融スラグの濃度レベルが1点に集中せずに分布を有するのは、出銑流2が複雑な挙動で出銑口1aから流出することに起因するからであると考えられる。即ち、出銑流2の表面は複雑な挙動を示しているので、出銑流2の画像21は、この複雑な挙動の影響を受けて、同じ対象物(例えば溶銑21b)であっても局所的な温度ばらつきや見かけの放射率変動によって異なる濃度で撮像され、出銑流2の画像21は、本来の濃度に対し分布が生じることになる。
【0021】
出銑流2に含まれる溶銑及び溶融スラグの比率や、出銑流2の流出量は、時々刻々と変動する。そこで、出銑状態が異なる複数の出銑流の画像を撮像して濃度ヒストグラムの様子を見たところ、例えば図4に示すように、溶銑と溶銑スラグとの比率に対応して、両者の分布の形状も変化することが確認された。具体的に、図4(a)に示す濃度ヒストグラム31では、溶銑に起因する濃度分布32のピークが、溶融スラグに起因する濃度分布33のピークよりも大きくなっているのに対し、図4(b)に示す濃度ヒストグラム34では、溶融スラグに起因する濃度分布36のピークが、溶銑に起因する濃度分布35のピークよりも大きくなっている。
【0022】
以上のようにして濃度ヒストグラム算出部6aにより算出される濃度ヒストグラムにおいて、本願発明者らは以下のような知見を得た。
第1に、濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMは、出銑流2の画像の分布形状には無関係であることが明らかになった。
【0023】
第2に、濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMと、溶銑の温度との関係を、浸漬消耗型熱電対プローブを試験的に出銑流2に挿入して溶銑の温度を測定することによって調べたところ、溶銑の温度が高くなると、溶銑に起因するピークの濃度値PMが大きくなる(画像21が明るくなる)ことが明らかになった。
第3に、濃度ヒストグラム22における溶銑に起因する濃度分布24と、溶融スラグに起因する濃度分布25とに、後述するようにしてガウス関数をフィッティングすることにより、溶銑に起因する濃度分布24と、溶融スラグに起因する濃度分布25とを分離することができることが明らかになった。以下、この第3の知見について、詳細に説明する。
【0024】
図5は、CCDカメラ5を用いて撮像された出銑流2の画像(図5(a))と、その画像を用いて濃度ヒストグラム算出部6aにより算出された濃度ヒストグラム(図5(b))との測定例を示した図である。
図5に示すように、濃度階調が80以上のところに、溶銑41bに起因する濃度分布43と、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44とが存在している。このように、溶銑41bに起因する濃度分布43と、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44とには、重複する領域がある。
【0025】
尚、図5では、濃度ヒストグラム42のうち、溶銑41bに起因する濃度分布43と、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44とを示しているが、背景41aに起因する濃度分布も存在している。この背景41aに起因する濃度分布は、濃度階調が40以下のところに存在しており、溶銑41bに起因する濃度分布43、及び溶融スラグ41cに起因する濃度分布44とは完全に分離して存在している。よって、図5では背景41aに起因する濃度分布の図示を省略している。
【0026】
以上のように、溶銑41bに起因する濃度分布43と、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44には重複する領域があるので、溶銑41bと溶融スラグ41cとの混合比率を求めるためには、これら2つの濃度分布43、44を分離する必要がある(図3及び図4も参照)。
そこで、本願発明者らは、多数の濃度ヒストグラムを用いて、溶銑に起因する濃度分布と、溶融スラグに起因する濃度分布とに、ガウス関数をフィッティングして、これら2つの濃度分布を分離することを試みた。
【0027】
その結果、本願発明者らは、例えば、図5に示した濃度ヒストグラム42のように、溶融スラグ43cの量が少なく、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44にピークが明確に生じていない場合には、溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PS等の情報を事前に与えなければ、ガウス関数を、溶銑41bに起因する濃度分布43と、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44とに精度良くフィッティングすることが困難になる(フィッティングが不安定になる)という知見を得た。
【0028】
本願発明者らは、具体的に以下の手法を採ることにより、溶銑41bに起因する濃度分布43と、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44とに重複する領域が存在していても、これら2つの濃度分布43、44に、ガウス関数を精度良くフィッティングすることができることを見出した。以下にその手法を用いた画像処理装置6の動作の一例を説明する。
【0029】
(1)溶銑ピーク濃度演算部6bは、濃度ヒストグラム算出部6aにより算出された濃度ヒストグラム42に含まれる溶銑41bに起因するピークでの濃度値PMを自動検出する。
濃度ヒストグラム42における背景41aに起因する濃度分布は、常にほぼ同一形状である。背景41aは、常温近傍で温度変化がないからである。そこで、本実施形態では、溶銑ピーク濃度演算部6bは、以下のようにして溶銑に起因するピークでの濃度値PMを求める。
【0030】
まず、溶銑ピーク濃度演算部6bは、溶銑41bに起因する濃度分布42における低濃度側(低輝度側)の裾野部分(背景41aに起因する濃度分布41における高濃度側(高輝度側)の裾野部分)の所定の濃度レベルに、予め始点Kを指定する。図5に示した例では、濃度階調が80の点を始点Kとしている。そして、溶銑ピーク濃度演算部6bは、始点Kから高濃度側(高輝度側)の方向にピーク検出処理を実行する。このピーク検出処理では、例えば、隣り合う濃度レベルで画素数(度数)の多寡を比較する処理を逐次進めることにより最初に得られた画素数の変曲点を、溶銑に起因するピークとし、そのピークでの濃度値を、溶銑41bに起因するピークでの濃度値PMとする処理が行われる。図5に示した例では、溶銑41bに起因するピークでの濃度値PMは、93となった。
【0031】
(2) スラグピーク濃度導出部6cは、溶銑41bに起因するピークでの濃度値PMの値を用いて、溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PSを求める。
前述したように、図5に示したような濃度ヒストグラム42では、溶融スラグ41cに起因するピークが明確に出現していないので、前述した(1)の手法のようにして溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PSを演算することは困難である。
そこで、スラグピーク濃度導出部6cは、溶銑41bに起因するピークでの濃度値PMに、溶銑41b及び溶融スラグ41cの分光放射率により定められる定数を乗じることにより、溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PSを求める。
【0032】
このようにして溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PSを求めるために、スラグピーク濃度導出部6cは、高炉1で生成されスキンマで分離された溶銑の分光放射率と溶融スラグの分光放射率との測定結果を用いるようにしている。例えば、溶銑の分光放射率εMとして0.42、溶融スラグの分光放射率εSとして0.61が得られたとすると、スラグピーク濃度導出部6cは、これら分光放射率εM、εSの比である1.45(=0.61/0.42)を用いて、溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PSを、以下の(1)式により求めることができる。
PS=1.45×PM ・・・(1)
図5に示した例では、画像41に濃度値が27のバイアスがあったので、溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PSは、123(=(93−27)×1.45+27)になった。
【0033】
(3) 分別部6dは、溶銑41bに起因する濃度分布43と、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44とにガウス関数をフィッティングする。
本実施形態では、以下の3種類のガウス関数を使用した。
具体的に、溶銑41bに起因する濃度分布43の濃度値PMよりも低濃度側(左側)を表現するためのガウス関数GM1と、溶銑41bに起因する濃度分布43の濃度値PMよりも高濃度側(右側)を表現するためのガウス関数GM2と、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44の全体を表現するためのガウス関数GSとを用いた。
【0034】
このように、本実施形態では、溶銑41bに起因する濃度分布43については、濃度値PMよりも高濃度側の分布と、濃度値PMよりも低濃度側の分布とが非対称であるとして、2つのガウス関数GM1、GM2を用いるようにした。溶銑41bに起因する濃度分布43が左右非対称のガウス分布を示す理由として、以下の理由が推測される。
【0035】
まず、濃度値PMよりも低濃度側では、高炉1内の溶銑にもともと多少の温度分布があることと、たまたま出銑流2の表面に存在する時間が長い流れ成分の温度が、大気との接触により、瞬間的に且つ局所的に低下することとによって、濃度レベルが小さくなるためと考えられる。
一方、濃度値PMよりも高濃度側では、高炉1内の溶銑にもともと多少の温度分布があることと、乱流となっている出銑流2の表面における波立ちの谷間で生じる放射光の多重反射によって見かけの放射率が高くなることとによって、濃度レベルが実際の濃度レベルよりも大きくなるためと考えられる。
【0036】
以上のように、溶銑41bに起因するピークでの濃度値PMを境として、低濃度側と高濃度側とで、溶銑に生じている物理現象が異なることにより、溶銑41bに起因する濃度分布43が左右非対称となっているとすれば、ガウス分布の分散も左右で異なるはずである。
一方、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44も、溶銑41bに起因する濃度分布43と同様に、左右非対称のガウス分布になっていると推測されるが、本実施形態では、処理を高速且つ確実に行うようにするために、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44については、左右対称のガウス分布であるとして、1つのガウス関数GSのみを用いた。
【0037】
本実施形態の分別部6dは、前述したようにして求めた、溶銑に起因するピークでの濃度値PMと、溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PSとを用いて、以上の3つのガウス関数GM1、GM2、GSが、図4に示した濃度ヒストグラム42に合うように、3つのガウス関数GM1、GM2、GSのパラメータを定める最適化計算を、市販のソフトウェアを用いて実行するようにした。
図6は、このようにして分別部6dが濃度ヒストグラム42にガウス関数をフィッティングして得られた結果の一例を示す図である。
【0038】
図6に示す例では、溶銑41bに起因する濃度分布43に対してフィッティングして得られたガウス関数GM(=GM1+GM2)におけるピークでの高さ(画素数)は、1740であった。また、ガウス関数GMにおける低濃度側での標準偏差σは46であり、高濃度側での標準偏差σは93であった。さらに、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44に対してフィッティングして得られたガウス関数GSにおけるピークでの高さ(画素数)は、512であり、このガウス関数GSにおける標準偏差σは552であった。
【0039】
図6に示すように、溶銑41bに起因する濃度分布43に対してフィッティングして得られたガウス関数GM(=GM1+GM2)と、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44に対してフィッティングして得られたガウス関数GSとを加算した関数GAは、濃度ヒストグラム42と良く一致していることが分かる。即ち、ガウス関数GM、GSは、それぞれ溶銑41bに起因する濃度分布43、及び溶融スラグ41cに起因する濃度分布44に対して、精度良くフィッティングされたものであることが分かる。
【0040】
以上のようにして、溶銑41bに起因する濃度分布43に対してフィッティングしてガウス関数GM、GSが得られると、混合比率導出部6eは、ガウス関数GM、GSの面積SM、SSを求める。図6は、ガウス関数GM、GSの面積SM、SSとなる部分を斜線で示した図である。
図6に示すように、ガウス関数GM、GSは、画像の濃度Pの関数であるので、以下の(2)式及び(3)式を用いることにより、ガウス関数GM、GSの面積SM、SSを求めることができる。
【0041】
【数1】
【0042】
このように、ガウス関数GM、GSの面積SM、SSは、ガウス関数GM、GSの積分値である。図7に示した例では、ガウス関数GMの面積SMは、2.5×104であり、ガウス関数GSの面積SSは、2.1×104であった。
以上のようにして得られたガウス関数GMの面積SMは、溶銑41bの表面積を表し、ガウス関数GSの面積SSは溶融スラグ41cの表面積を表す。ここで、出銑口1aから流出した出銑流2は乱流であるので、溶銑と溶融スラグとの混合比率は、出銑流2の表面と内部とで均一であると仮定することができる。そうすると、画像41として観察して得られる溶銑41bの表面積と溶融スラグ41cの表面積との比率が、溶銑の体積と溶融スラグの体積との比率に等しいとすることができる。即ち、ガウス関数GM、GSの面積SM、SSの比率が、溶銑の体積と溶融スラグの体積との比率に相当する。従って、ガウス関数GM、GSの面積SM、SSの比率を求めれば、出銑口1aから流出した溶銑と溶融スラグとの混合比率を求めることができる。
【0043】
ところで、溶銑と溶融スラグとでは、比重が異なる。具体的に説明すると、溶銑の比重は6.8ton/m3であり、溶融スラグの比重は2.6ton/m3である。そこで、混合比率導出部6eは、溶融スラグに対する溶銑の重量比率を求めるようにしている。具体的に説明すると、溶銑の重量比率αは、以下の(4)式を用いることにより求めることができる。
【0044】
α=(SM×WM)/(SM×WM+SS×WS) ・・・(4)
ここで、WM、WSは、それぞれ溶銑の比重と溶融スラグの比重である。
図6に示した例では、ガウス関数GMの面積SMは、2.5×104であり、ガウス関数GSの面積SSは、2.1×104であるので、溶銑の重量比率αは0.76となる。
混合比率導出部6eは、以上のようにして溶銑の重量比率αを時間的に連続して算出する。
そして、混合比率出力部6fは、混合比率導出部6eにより算出された結果を記憶媒体に記憶すると共に表示装置に表示する。
【0045】
図8は、溶銑と溶融スラグの混合比率の算出結果の表示画面の一例を示した図である。
図8に示すように、本実施形態では、溶銑の重量比率αの瞬時値71と、トレンドグラフ(溶銑の重量比率αと出銑経過時間との関係を表すグラフ)72とを、溶銑の重量比率αの算出結果として表示するようにしている。また、高炉1に装入された原料から計算される溶銑の重量比率73も合わせて表示するようにしている。
【0046】
ここで、重量比率73は、高炉1に装入する前の原料を秤量し、秤量した結果を用いて溶銑及び溶融スラグの理論上の生成重量を求めることにより計算されるものである。従って、重量比率73は、溶銑の重量比率αの精度を判断する際の指標となる。図8に示す例では、溶銑の重量比率αの出銑全期間における平均値は、高炉1に装入された溶銑の重量比率73に近くなっていることから、溶銑の重量比率αは精度良く求められていることが分かる。
【0047】
以上のような表示を行うことにより、操業管理者は、時々刻々と変化する溶銑の重量比率αをリアルタイムで把握することができる。具体的に、図8に示す例では、溶銑の重量比率αは、時間の経過と共に、溶銑の比率が低下して溶融スラグの比率が増加していく傾向にあることを容易に把握することができる。
【0048】
以上のように、本実施形態では、CCDカメラ5と画像処理装置6とを用いて、出銑流測定システムが構成されることになる。
【0049】
次に、図9のフローチャートを参照しながら、出銑流測定システムに設けられた画像処理装置6の動作の一例を説明する。
まず、ステップS1において、濃度ヒストグラム算出部6aは、出銑口1aから流出した出銑流2の画像を、CCDカメラ5から入力するまで待機する。
出銑口1aから流出した出銑流2の画像を入力すると、ステップS2に進み、濃度ヒストグラム算出部6aは、入力した出銑流2の画像のデータから、濃度ヒストグラムを算出する。
次に、ステップS3において、溶銑ピーク濃度演算部6bは、ステップS2で算出した濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMを、前述したピーク検出処理を行って演算する。
【0050】
次に、ステップS4において、スラグピーク濃度導出部6cは、ステップS3で演算した、溶銑に起因するピークでの濃度値PMに1.45を乗じて、溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PSを求める((1)式を参照)。
【0051】
次に、ステップS5において、分別部6dは、ステップS3で演算した、溶銑に起因するピークでの濃度値PMと、ステップS4で求めた、溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PSとを用いて、濃度ヒストグラム42(溶銑41bに起因する濃度分布43と、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44)に合うガウス関数GM1、GM2、GSのパラメータを定める最適化計算を行う。即ち、濃度ヒストグラム42(溶銑41bに起因する濃度分布43と、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44)にガウス関数GM1、GM2、GSをフィッティングする処理を行う。
【0052】
次に、ステップS6において、混合比率導出部6eは、ステップS5で得られたガウス関数GM(=GM1+GM2)の面積SMを求める((2)式を参照)。
次に、ステップS7において、混合比率導出部6eは、ステップS5で得られたガウス関数GSの面積SSを求める((3)式を参照)。
【0053】
次に、ステップS8において、混合比率導出部6eは、溶融スラグに対する溶銑の重量比率αを求め((4)式を参照)、混合比率出力部6fは、求めた溶銑の重量比率αの瞬時値71と、トレンドグラフ72とを表示装置に表示する。
【0054】
次に、ステップS9において、濃度ヒストグラム算出部6aは、測定終了指示がユーザによりなされたか否かを判定する。この判定の結果、測定終了指示がユーザによりなされていない場合には、測定終了指示がなされるまで、ステップS1〜S9を繰り返し行う。一方、測定終了指示がユーザによりなされた場合には処理を終了する。
【0055】
尚、本実施形態では、以上のような処理を行う画像処理装置6として、画像入出力ボードを備えたパソコンを使用している。画像処理装置6のハードウェア構成は、例えば、図10に示すようなものになる。
【0056】
図10において、画像処理装置6は、CPU101と、ROM102と、RAM103と、キーボード(KB)104のキーボードコントローラ(KBC)105と、CRTディスプレイ(CRT)106のCRTコントローラ(CRTC)107と、ハードディスク(HD)108及びフレキシブルディスク(FD)109のディスクコントローラ(DKC)110と、画像入出力ボード(PIB)111のコントローラ(IC)112とが、システムバス113を介して互いに通信可能に接続された構成としている。
【0057】
CPU101は、ROM102或いはHD108に記憶されたソフトウェア、或いはFD109より供給されるソフトウェアを実行することで、システムバス103に接続された各構成部を総括的に制御する。
すなわち、CPU101は、所定の処理シーケンスに従った処理プログラムを、ROM102、或いはHD108、或いはFD109から読み出して実行することで、前述した処理動作を実現するための制御を行う。
【0058】
RAM103は、CPU101の主メモリ或いはワークエリア等として機能する。
KBC105は、KB104や図示していないポインティングデバイス等からの指示入力を制御する。
【0059】
CRTC107は、CRT106の表示を制御する。
DKC110は、ブートプログラム、種々のアプリケーション、編集ファイル、ユーザファイル、ネットワーク管理プログラム、及び本実施の形態における所定の処理プログラム等を記憶するHD108及びFD109とのアクセスを制御する。
IC112は、PIB111に接続されたCCDカメラ5等の装置との間で行われる画像データの入出力を制御する。
【0060】
以上のように本実施形態では、CCDカメラ5で撮像された出銑流2の画像41のデータから濃度ヒストグラム42を算出し、算出した濃度ヒストグラム42における溶銑に起因するピークでの濃度値PMを演算する。また、溶銑に起因するピークでの濃度値PMに、溶銑及び溶融スラグの分光放射率の比率に基づく定数を乗じて、溶融スラグに起因するピークでの濃度値PSを求める。そして、求めた濃度値PM、PSを用いて、溶銑に起因する濃度分布43と、溶融スラグに起因する濃度分布44にガウス関数GM、GSをフィッティングする。そして、フィッティングすることによって得られたガウス関数GM、GSの面積SM、SSを求め、ガウス関数GM、GSの面積SM、SSから溶銑の重量比率αを求めて表示する。
【0061】
そして、以上のようにして溶銑の重量比率αを求めるに際し、溶銑41bに起因する濃度分布43については、濃度値PMよりも高濃度側の分布と、濃度値PMよりも低濃度側の分布とが非対称であるとして、2つのガウス関数GM1、GM2を用いるようにした。これにより、溶銑41bに起因する濃度分布43に、ガウス関数GMをより精度良くフィッティングすることができる。
一方、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44については、濃度値PSよりも高濃度側の分布と、濃度値PSよりも低濃度側の分布とが対称であるとして、1つのガウス関数GSを用いるようにした。これにより、ガウス関数のフィッティングを比較的精度良く迅速に行えると共に、最適化計算の結果が発散してしまうことを防止することができる。尚、ガウス関数のフィッティングを比較的精度良く行えるのは、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44は、なだらかな分布(分散が大きい)だからである。
【0062】
以上のことから、本実施形態では、出銑口1aから流出した直後の溶銑及び溶融スラグの混合比率を時間的に連続して測定することができ、出銑口1aから流出した溶銑及び溶融スラグの正確な混合比率を迅速に且つ連続的に測定することができる。
これにより、出銑中の溶銑及び溶融スラグの混合比率の変化を監視し、高炉1の異変や異常を早期に把握することができ、高炉1の操業を安定させることが可能になる。
【0063】
また、出銑口1aから流出した溶融物を含む領域の撮像画像を利用して溶銑及び溶融スラグの混合比率を求めるようにしたので、出銑口1a付近に装置を設置せずに、溶銑及び溶融スラグの混合比率を求めることができる。これにより、溶銑及び溶融スラグの熱放射や飛散等を、装置が受けてしまうことを防止することができ、装置の環境対策を比較的容易に行うことができる。
【0064】
尚、本実施形態では、濃度ヒストグラム42にガウス関数をフィッティングするようにしたが、必ずしもガウス関数を用いる必要はなく、χ2乗分布関数、F分布関数、又はt分布関数等の分布関数を用いることもできる。
【0065】
また、本実施形態では、溶銑41bに起因するピークでの濃度値PMを求め、この濃度値PMを基準として溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PSを求める場合を例に挙げて示したが、これとは逆に、溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PSを求め、この濃度値PSを基準として溶銑41bに起因するピークでの濃度値PMを求めることもできる。
【0066】
このような場合には、例えば、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44の高濃度側の裾野部分の所定の濃度レベルに始点Kを指定し、この始点Kから低濃度側の方向にピーク検出処理を実行して、溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PSを求める。そして、求めた濃度値PSに、溶銑41b及び溶融スラグ41cの分光放射率により定められる定数(=0.69(=0.42/0.61))を乗じて、溶銑41bに起因するピークでの濃度値PMを求める。そして、求めた濃度値PS、PMを用いて、前述したように溶銑に起因する濃度分布43と、溶融スラグに起因する濃度分布44にガウス関数GM、GSをフィッティングする。
【0067】
例えば、出銑口1aから流出した溶融スラグが溶銑よりも遥かに多いために、溶銑41bに起因するピークでよりも、溶融スラグ41cに起因するピークの方が明確な場合には、以上のように、溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PSを求め、この濃度値PSを基準として溶銑41bに起因するピークでの濃度値PMを求めることができる。
また、算出された濃度ヒストグラムのピークの形状等に応じて、溶銑41bに起因するピークでの濃度値PMを求めてから、溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PSを求めるか、又は溶融スラグ41cに起因するピークでの濃度値PSを求めてから、溶銑41bに起因するピークでの濃度値PMを求めるかを選択するようにしてもよい。
【0068】
さらに、本実施形態では、前述したように、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44については、濃度値PSよりも高濃度側の分布と、濃度値PSよりも低濃度側の分布とが対称であるとして、1つのガウス関数GSを用いるようにしたが、溶融スラグ41cに起因する濃度分布44についても、溶銑に起因する濃度分布43と同様に、濃度値PSよりも低濃度側の分布と濃度値PSよりも高濃度側の分布とが非対称であるとして2つのガウス関数を用いるようにしてもよい。
【0069】
また、本実施形態では、濃度ヒストグラム42にフィッティングして得られたガウス関数GM、GSを用いて、出銑口1aから流出した溶銑と溶融スラグとの混合比率を求めるようにした。しかしながら、CCDカメラ5により撮像された画像41から、溶銑41bと溶融スラグ41cとの混合比率を求めることができれば、必ずしも濃度ヒストグラム42にフィッティングして得られたガウス関数GM、GSを用いる必要はない。
【0070】
例えば、CCDカメラ5により撮像された画像41から、濃度が第1のしきい値以下の画素を除外して溶銑41b及び溶融スラグ41cの画像を取り出した後、取り出した画像を第2のしきい値で二値化し、二値化した一方の値を有する画素数と他方の値を有する画素数との比から、出銑口1aから流出した溶銑と溶融スラグとの混合比率を求めるようにしてもよい。ここで、第2のしきい値は、例えば、溶銑に起因する濃度分布43の高濃度側の裾野部分(溶融スラグに起因する濃度分布44の低濃度側の裾野部分の画素値)の濃度とすればよい。
【0071】
また、本実施形態では、溶銑の重量比率αの瞬時値71と、トレンドグラフ72と、高炉1に装入された溶銑の重量比率73とを表示装置に表示するようにしたが、溶銑と溶融スラグの混合比率の算出結果を表示していれば、必ずしもこれらを表示する必要はない。高炉1に装入された溶銑の重量比率73を表示しなくてもよいし、溶銑の重量比率αの瞬時値71と、トレンドグラフ72の代わりに、ガウス関数GM、GSの面積SM、SSの比率の瞬時値と、トレンドグラフを表示するようにしてもよい。
【0072】
また、本実施形態では、CCDカメラ5の分解能を約0.4mmとし、露光時間を1/10000秒としたが、CCDカメラ5の分解能及び露光時間は、これらに限定されない。ただし、CCDカメラ5の分解能は1mm以下が好ましく、露光時間は1/5000秒以下であることが好ましい。このように、CCDカメラ5の分解能を1mm以下にするのは、溶融スラグの細部に存在する、2mm程度のサイズの線状又は点状の部分を捉えるためである。また、露光時間は1/5000秒以下にするのは、高速で且つ乱流状態で移動する出銑流2を、像流れすることなく静止させて観察することができるようにするためである。
【0073】
具体的に、CCDカメラ5の分解能を1mm以下にすると共に、露光時間を1/5000秒以下にすると、例えば、図11(a)に示すように、濃度ヒストグラム91に、溶銑を表す分布のピーク92と、溶融スラグを表す分布のピーク93とが明確に存在する。これに対し、CCDカメラ5の分解能を1mm以下にすると共に、露光時間を1/5000秒以下にしないと、図11(b)に示すように、濃度ヒストグラム91に、溶銑を表す分布のピーク92と、溶融スラグを表す分布のピーク93とが個別に存在しなくなり、溶銑の分布のピークを求めることができなくなる虞がある。よって、CCDカメラ5の分解能は1mm以下が好ましく、露光時間は1/5000秒以下であることが好ましい。
尚、CCDカメラ5に、一定の狭い波長を有する光のみを透過する波長選択フィルタをCCDカメラ5に取り付けるようにしてもよい。
【0074】
また、本実施形態では、CCDカメラ5を用いて出銑流2の画像を撮像するようにしたが、必ずしもCCDカメラ5を用いる必要はない。例えば、CCD以外のセンサ(例えばCMOSセンサ)を撮像素子として用いたカメラ、銀塩フィルムを用いたスチールカメラ等の撮像装置をCCDカメラ5の代わりに用いることができる。
【0075】
さらに、本実施形態では、出銑流2の画像(熱放射輝度分布)を、2次元の濃度分布を示す静止画像として撮像するようにしたが、例えば1次元のリニアアレイカメラで時間的に連続して露光時間が短い高速シャッターで撮像を繰り返し、カメラの素子配列方向と時間方向とを直行させて2次元の濃度分布を示す画像を形成し、形成した2次元の濃度分布を示す画像から濃度ヒストグラムを算出してもよい。
【0076】
また、本実施形態では、算出した濃度ヒストグラムをそのまま用いてピーク検出処理を行うようにしたが、予め濃度ヒストグラムの平滑化処理を行い、平滑化処理を行った濃度ヒストグラムを用いてピーク検出処理を行うようにしてもよい。このようにすれば、濃度ヒストグラムの波形に細かい雑音が乗っている場合でも、濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMを正確に求めることが可能になる。
【0077】
また、出銑流2における溶銑の温度は、概ね1450〜1600℃の範囲で変動する。よって、濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMの存在範囲もある程度予測することができる。そこで、予め予測した存在範囲内でピーク検出処理を行うようにしてもよい。このようにすれば、濃度ヒストグラムにおける溶銑に起因するピークでの濃度値PMを迅速に求めることが可能になる。
また、画像処理装置6が有する機能を複数の装置に分担させて行わせるようにしてもよい。
【0078】
(本発明の他の実施形態)
前述した実施形態の機能を実現するべく各種のデバイスを動作させるように、該各種デバイスと接続された装置あるいはシステム内のコンピュータに対し、前記実施形態の機能を実現するためのソフトウェアのプログラムコードを供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(CPUあるいはMPU)に格納されたプログラムに従って前記各種デバイスを動作させることによって実施したものも、本発明の範疇に含まれる。
【0079】
また、この場合、前記ソフトウェアのプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、及びそのプログラムコードをコンピュータに供給するための手段、例えば、かかるプログラムコードを格納した記録媒体は本発明を構成する。かかるプログラムコードを記憶する記録媒体としては、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
【0080】
また、コンピュータが供給されたプログラムコードを実行することにより、前述の実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードがコンピュータにおいて稼働しているOS(オペレーティングシステム)あるいは他のアプリケーションソフト等と共同して前述の実施形態の機能が実現される場合にもかかるプログラムコードは本発明の実施形態に含まれることは言うまでもない。
【0081】
さらに、供給されたプログラムコードがコンピュータの機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに格納された後、そのプログラムコードの指示に基づいてその機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合にも本発明に含まれることは言うまでもない。
【0082】
なお、前述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施形態を示し、出銑流測定システムの構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態を示し、画像処理装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態を示し、CCDカメラを用いて撮像された出銑流の画像と、その画像における濃度ヒストグラムとの一例を示した図である。
【図4】本発明の実施形態を示し、溶銑と溶銑スラグとの比率が異なる場合の出銑流の画像の一例を示した図である。
【図5】本発明の実施形態を示し、CCDカメラを用いて撮像された出銑流の画像と、その画像における濃度ヒストグラムとの測定例を示した図である。
【図6】本発明の実施形態を示し、濃度ヒストグラムにガウス関数をフィッティングして得られた結果の一例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態を示し、ガウス関数の面積となる部分を斜線で示した図である。
【図8】本発明の実施形態を示し、溶銑と溶融スラグの混合比率の算出結果の表示画面の一例を示した図である。
【図9】本発明の実施形態を示し、出銑流測定システムに設けられた画像処理装置の動作の一例を説明するフローチャートである。
【図10】本発明の実施形態を示し、画像処理装置6のハードウェア構成の一例を示した図である。
【図11】本発明の実施形態を示し、撮像条件が異なる場合の濃度ヒストグラムの一例を示した図である。
【符号の説明】
【0084】
1 高炉
1a 出銑口
2 出銑流
3 出銑桶
4 桶カバー
5 CCDカメラ
6 画像処理装置
21、41 出銑流の画像
22、31、34、42 濃度ヒストグラム
23 背景に起因する濃度分布
24、32、35、43 溶銑に起因する濃度分布
25、33、36、44 溶融スラグに起因する濃度分布
GM 溶銑に起因する濃度分布に対してフィッティングされたガウス関数
GS 溶融スラグに起因する濃度分布に対してフィッティングされたガウス関数
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉に形成された出銑口から流出した溶融物を含む領域の熱放射輝度分布を、濃度分布を示す画像として撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像の濃度分布から、前記溶融物に含まれる溶銑を表す画像の濃度分布と、前記溶融物に含まれる溶融スラグを表す画像の濃度分布とを分別する濃度分布分別手段と、
前記濃度分布分別手段により分別された、前記溶銑を表す画像の濃度分布と、前記溶融スラグを表す画像の濃度分布とを用いて、前記溶銑及び前記溶融スラグの混合比率を求める混合比率導出手段とを有することを特徴とする高炉出銑流測定システム。
【請求項2】
前記濃度分布分別手段は、前記撮像された画像の濃度と画素数との関係を示す濃度ヒストグラムを算出する濃度ヒストグラム算出手段と、
前記濃度ヒストグラム算出手段により算出された濃度ヒストグラムに含まれる、前記溶銑に起因する濃度分布と、前記溶融スラグに起因する濃度分布に、所定の分布関数をフィッティングして、前記溶銑に起因する濃度分布と、前記溶融スラグに起因する濃度分布とを分別する分別手段とを更に有することを特徴とする請求項1に記載の高炉出銑流測定システム。
【請求項3】
前記濃度分布分別手段は、前記濃度ヒストグラム算出手段により算出された濃度ヒストグラムに含まれる、前記溶銑に起因する濃度分布がピークを示す点での濃度値を演算する溶銑ピーク濃度演算手段と、
前記溶融スラグに起因する濃度分布がピークとなる濃度値を、前記溶銑ピーク濃度演算手段により演算された濃度値に定数を乗じて求めるスラグピーク濃度導出手段とを更に有し、
前記分別手段は、前記溶銑濃度ピーク演算手段により演算された濃度値と、前記スラグピーク濃度導出手段により求められた濃度値とを用いて、前記溶銑に起因する濃度分布と、前記溶融スラグに起因する濃度分布に、所定の分布関数をフィッティングすることを特徴とする請求項2に記載の高炉出銑流測定システム。
【請求項4】
前記定数は、前記溶銑スラグの放射率と、前記溶融スラグの放射率との比から定められる値であることを特徴とする請求項3に記載の高炉出銑流測定システム。
【請求項5】
前記所定の分布関数は、ガウス関数であることを特徴とする請求項2〜4の何れか1項に記載の高炉出銑流測定システム。
【請求項6】
前記撮像手段の分解能が1mm以下であり、
前記撮像手段における撮像時の露光時間が1/5000秒以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の高炉出銑流測定システム。
【請求項7】
高炉に形成された出銑口から流出した溶融物を含む領域の熱放射輝度分布を、濃度分布を示す画像として、撮像手段により撮像する撮像ステップと、
前記撮像ステップにより撮像された画像の濃度分布から、前記溶融物に含まれる溶銑を表す画像の濃度分布と、前記溶融物に含まれる溶融スラグを表す画像の濃度分布とを分別する濃度分布分別ステップと、
前記濃度分布分別ステップにより分別された、前記溶銑を表す画像の濃度分布と、前記溶融スラグを表す画像の濃度分布とを用いて、前記溶銑及び前記溶融スラグの混合比率を求める混合比率導出ステップとを有することを特徴とする高炉出銑流測定方法。
【請求項8】
高炉に形成された出銑口から流出した溶融物を含む領域の熱放射輝度分布を、濃度分布を示す画像として、撮像手段により撮像する撮像ステップと、
前記撮像ステップにより撮像された画像の濃度分布から、前記溶融物に含まれる溶銑を表す画像の濃度分布と、前記溶融物に含まれる溶融スラグを表す画像の濃度分布とを分別する濃度分布分別ステップと、
前記濃度分布分別ステップにより分別された、前記溶銑を表す画像の濃度分布と、前記溶融スラグを表す画像の濃度分布とを用いて、前記溶銑及び前記溶融スラグの混合比率を求める混合比率導出ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項1】
高炉に形成された出銑口から流出した溶融物を含む領域の熱放射輝度分布を、濃度分布を示す画像として撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像の濃度分布から、前記溶融物に含まれる溶銑を表す画像の濃度分布と、前記溶融物に含まれる溶融スラグを表す画像の濃度分布とを分別する濃度分布分別手段と、
前記濃度分布分別手段により分別された、前記溶銑を表す画像の濃度分布と、前記溶融スラグを表す画像の濃度分布とを用いて、前記溶銑及び前記溶融スラグの混合比率を求める混合比率導出手段とを有することを特徴とする高炉出銑流測定システム。
【請求項2】
前記濃度分布分別手段は、前記撮像された画像の濃度と画素数との関係を示す濃度ヒストグラムを算出する濃度ヒストグラム算出手段と、
前記濃度ヒストグラム算出手段により算出された濃度ヒストグラムに含まれる、前記溶銑に起因する濃度分布と、前記溶融スラグに起因する濃度分布に、所定の分布関数をフィッティングして、前記溶銑に起因する濃度分布と、前記溶融スラグに起因する濃度分布とを分別する分別手段とを更に有することを特徴とする請求項1に記載の高炉出銑流測定システム。
【請求項3】
前記濃度分布分別手段は、前記濃度ヒストグラム算出手段により算出された濃度ヒストグラムに含まれる、前記溶銑に起因する濃度分布がピークを示す点での濃度値を演算する溶銑ピーク濃度演算手段と、
前記溶融スラグに起因する濃度分布がピークとなる濃度値を、前記溶銑ピーク濃度演算手段により演算された濃度値に定数を乗じて求めるスラグピーク濃度導出手段とを更に有し、
前記分別手段は、前記溶銑濃度ピーク演算手段により演算された濃度値と、前記スラグピーク濃度導出手段により求められた濃度値とを用いて、前記溶銑に起因する濃度分布と、前記溶融スラグに起因する濃度分布に、所定の分布関数をフィッティングすることを特徴とする請求項2に記載の高炉出銑流測定システム。
【請求項4】
前記定数は、前記溶銑スラグの放射率と、前記溶融スラグの放射率との比から定められる値であることを特徴とする請求項3に記載の高炉出銑流測定システム。
【請求項5】
前記所定の分布関数は、ガウス関数であることを特徴とする請求項2〜4の何れか1項に記載の高炉出銑流測定システム。
【請求項6】
前記撮像手段の分解能が1mm以下であり、
前記撮像手段における撮像時の露光時間が1/5000秒以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の高炉出銑流測定システム。
【請求項7】
高炉に形成された出銑口から流出した溶融物を含む領域の熱放射輝度分布を、濃度分布を示す画像として、撮像手段により撮像する撮像ステップと、
前記撮像ステップにより撮像された画像の濃度分布から、前記溶融物に含まれる溶銑を表す画像の濃度分布と、前記溶融物に含まれる溶融スラグを表す画像の濃度分布とを分別する濃度分布分別ステップと、
前記濃度分布分別ステップにより分別された、前記溶銑を表す画像の濃度分布と、前記溶融スラグを表す画像の濃度分布とを用いて、前記溶銑及び前記溶融スラグの混合比率を求める混合比率導出ステップとを有することを特徴とする高炉出銑流測定方法。
【請求項8】
高炉に形成された出銑口から流出した溶融物を含む領域の熱放射輝度分布を、濃度分布を示す画像として、撮像手段により撮像する撮像ステップと、
前記撮像ステップにより撮像された画像の濃度分布から、前記溶融物に含まれる溶銑を表す画像の濃度分布と、前記溶融物に含まれる溶融スラグを表す画像の濃度分布とを分別する濃度分布分別ステップと、
前記濃度分布分別ステップにより分別された、前記溶銑を表す画像の濃度分布と、前記溶融スラグを表す画像の濃度分布とを用いて、前記溶銑及び前記溶融スラグの混合比率を求める混合比率導出ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−246959(P2007−246959A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−69699(P2006−69699)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
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