説明

高炉用コークスの製造方法

【課題】コークスの製造方法において、石炭を乾燥分級した後の微粉炭に粘結材を添加し混練した後、成形または塊成化し塊成炭とする際に、少ない粘結材の添加量で擬似粒子化性を高め、良好な強度の塊成炭を生成することが可能なコークスの製造方法を提供する。
【解決手段】石炭を乾燥した後、または、該乾燥と同時に、微粉炭と粗粒炭とに分級し、水分6%以下の微粉炭に粘結材を5〜12%添加、混練した後、または、該添加、混練と同時に、塊成化補助材を0.005%以上添加し、さらに、造粒または成形して塊成炭とし、該塊成炭と前記粗粒炭を混合し、コークス炉に装入することを特徴とするコークスの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉に装入するコークス炉用石炭の事前処理方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コークス生産に際し、コークスの品質向上およびコークス炉での生産性向上を目的としてコークス炉装入前に装入炭を乾燥することが行われている。コークス炉用石炭の付着水分は乾燥前で通常7%から10%程度であるが、この石炭を石炭乾燥機で付着水分0%から6%に乾燥するものである。この乾燥した装入炭をコークス炉まで搬送するに際し、装入炭に含まれる微粉炭が発塵し、またコークス炉内でも装入炭の装入時及び乾留時に発生するガスやタールにこの微粉炭が随伴するいわゆるキャリーオーバー現象が発生する。さらに、装入時の発塵微粉炭が増加すると、コークス炉の炉壁に付着するカーボン量が増える。コークス炉炉壁への付着物はコークスを押し出すときの抵抗となるため、カーボン付着増加によりコークス炉の安定操業が阻害される。このような石炭乾燥に伴う搬送時の発塵およびキャリーオーバー現象を抑制するため、乾燥した装入炭を発塵しやすい粒径の微粉炭とそれより粒径の大きい粗粒炭に分級し、この微粉炭を集塵機で集め添加材を加えて擬似粒子化した上でコークス炉に装入する方法が知られている。
【0003】
例えば、石炭を乾燥する際に発生した微粉炭を乾燥機などに付属した集塵機で回収し、この微粉炭に重油、タール油、タール滓などを粘結剤として添加して擬似粒子を形成する方法や、分級中あるいは分級後に微粉炭を冷却し、該微粉炭にタール、タール滓、タール抽出物、鉱物系廃油から選ばれた1種または2種以上の添加物(粘結材)を加えて混練、疑似粒子化して粗粒炭と混合してコークス炉に装入するコークス炉用石炭の事前処理方法が知られている(例えば特許文献1、2参照)。
【0004】
これらの従来技術においては、乾燥分級後の微粉炭にタール、タール滓、タール抽出物などを含む添加物を粘結材として添加して形成した擬似粒子をコークス炉に装入すると、添加物自身がコークス炉炉壁へのカーボン付着の原因物質であるため、添加物量が増加すると添加物によるカーボン付着量の問題が生じるおそれがある。また、この添加物として使用される、タール、タール滓、タール抽出物、石炭系ピッチ、石油系ピッチなどは、化学製品の原料として付加価値が高いため、これらの添加物の使用量はなるべく低下させ、化学原料として用いたいというニーズがあった。
【0005】
しかし、上記微粉炭に粘結材のみを添加し、混練して疑似粒子とする方法では、粘結材量を減らすと、疑似粒子化が低下し、疑似粒子の搬送過程やハンドリング過程での衝撃により容易に崩壊し、また、コークス炉に装入する際のキャリーオーバーを抑制することができず、カーボン付着が増大してしまうという問題があった。
【0006】
また、従来から、石炭を乾燥し分級した後に分離した微粉炭をそのまま、または、微粉炭にタールなどの粘結剤を添加した後、成型機、塊成機などを用いて成形炭とする方法が提案されている(例えば特許文献3、参照)。
【0007】
この方法では、成型機、塊成機などを用いて疑似粒子に比べて強度の高い成形炭または塊成炭を形成できるが、成形または塊成化する前の疑似粒子化が十分でないと、成形炭または塊成炭の歩留まりが低くなり、結果として添加物量を低減できないという問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開平4−285690号公報
【特許文献2】特開平11−116970号公報
【特許文献3】特開平5−65487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来技術の現状を踏まえ、本発明は、コークスの製造方法において、石炭を乾燥分級した後の微粉炭に粘結材を添加し、混練した後、成形または塊成化し塊成炭とする際に、少ない粘結材の添加量で、良好な強度の塊成炭を生成することが可能なコークスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明の要旨とするところは以下の通りである。
(1)石炭を乾燥した後、または、該乾燥と同時に、微粉炭と粗粒炭とに分級し、水分6%以下の微粉炭に粘結材を5〜12%%添加、混練した後、または、該添加、混練と同時に、塊成化補助材を0.005%以上添加し、さらに、造粒または成形して塊成炭とし、該塊成物と前記粗粒炭を混合し、コークス炉に装入することを特徴とするコークスの製造方法。
(2)前記塊成炭は、該塊成炭から採取された試料を2mの高さから10回鉄板上に落下させた後、測定された全試料中の0.3mm以下の質量百分率が5%以下であることを特徴とする(1)に記載のコークスの製造方法。
(3)前記塊成炭は、該塊成炭から1mm以上15mm以下の試料を200g採取し、I型回転装置に入れて20rpmの回転数で3分間回転させた後、測定された全試料中の1mm以上の質量百分率が85%以上であることを特徴とする(1)に記載のコークスの製造方法。
(4)前記混練補助材もしくは塊成化補助材が、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤から選ばれた1種または2種以上からなることを特徴とする(1)〜(3)の何れかに記載のコークスの製造方法。
(5)前記粘結材が、タール、タール滓、タール抽出物、鉱物系廃油、石炭系ピッチ、石油系ピッチから選ばれた1種または2種以上からなることを特徴とする(1)〜(4)の何れかに記載のコークスの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コークスの製造方法において、石炭を乾燥分級した後の微粉炭に粘結材を添加し、混練した後、成形または塊成化し塊成炭とする際に、少ない粘結材の添加量で、良好な強度の塊成炭を生成することが可能なコークスの製造方法を提供することができる。
【0012】
本発明の適用により、コークスの製造において、石炭を乾燥分級した後の微粉炭を塊成化した後、搬送する際の発塵やコークス炉装入時のキャリーオーバーを抑制しつつ、タール、ピッチなどの粘結材の使用量を低減し付加価値の高い化学原料として利用できるため、本発明による社会的貢献は多大なものである。また、タールやピッチなどの粘結材の使用量を低減した結果として、コークス炉炉壁へのカーボン付着を軽減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
発明者らは、粘結材を低減させるための手法について鋭意検討し、適切な混練補助材、塊成化補助材をごく微量添加することにより粘結材の量を低減しても同等の効果が得られることを発見した。本発明はこの発見に基づいてなされた。
【0014】
本発明の実施形態について説明する。図1に示すように、まず、コークス製造用原料炭1を粉砕・混合工程2で粉砕、混合後、乾燥分級工程3で乾燥すると共に、微粉炭4と粗粒炭5に分級する。次に、微粉炭4に、粘結材7と塊成化補助材12を添加し、混練工程6で混練する。ここで、粘結材と塊成化補助材は混合・添加工程15により、事前に所定の条件で十分混合した後、なるべく均一に微粉炭4に添加する。さらに混練炭9を塊成化工程13で塊成化し、塊成炭14と粗粒炭5を混合工程10で混合した後、コークス炉11に装入し、コークスを製造する。
【0015】
また、粘結材と塊成化補助材の混合・添加工程15の条件は、粘結材7(タール、タール滓、タール抽出物、石炭系ピッチ、石油系ピッチなど)の温度として、70℃程度に熱すればよい。また混合時間は30秒以上、好ましくは3分以上、さらにより好ましくは10分以上であることが好ましい。
【0016】
粘結材の添加工程においては、なるべく細かいミスト状にして微粉炭に噴霧することがより好ましい。
【0017】
本発明において使用する塊成化補助材としては、界面活性剤を用いることができる。界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤(陰イオン性界面活性剤)、カチオン系界面活性剤(陽イオン性界面活性剤)、ノニオン系界面活性剤(非イオン性界面活性剤)、両性界面活性剤、高分子界面活性剤のいずれをも使用することができる。
【0018】
また、これらの界面活性剤の具体例としては、以下のものを挙げることができる。
【0019】
まず、アニオン系界面活性剤の具体例としては、例えば高級脂肪酸アルカリ塩(セッケン)、N−アシルアミノ酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド等のカルボン酸塩;例えばアルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルスルホン酸塩等のスルホン酸塩;硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩等の硫酸エステル塩;例えばアルキルリン酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、アルキルアリールエーテルリン酸塩等のリン酸エステル塩を挙げることができる。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩のごときノニオン型の界面活性部分を有するものも本発明で使用できるアニオン系界面活性剤に含まれる。さらに上記の塩の種類としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等を例示することができるがこれらに限定されない。
【0020】
また、本発明において使用するカチオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、高級脂肪族第一アミン塩、高級脂肪族第二アミン塩、高級脂肪族第三アミン塩、エステル結合アミン、アミド結合アミン、エーテル結合アミン、アミド結合ピリジウム塩、エステル結合ピリジウム塩、エーテル結合ピリジウム塩、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0021】
さらに、本発明において用いるノニオン系界面活性剤の具体例としては、例えばアルキルポリオキシエチレンエーテル、アルキルアリールポリオキシエチレンエーテル、アルキルアリールホルムアルデヒド結合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシプロピレンを親油基とするブロックポリマー等のエーテル型ノニオン界面活性剤;例えばグリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル等のエーテルエステル型ノニオン界面活性剤;例えばポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、プロピレングリコールエステル、ショ糖エステル等のエステル型ノニオン界面活性剤;例えば脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アミンオキシド等の含窒素型ノニオン界面活性剤を挙げることができる。
【0022】
さらに、本発明において用いる両性界面活性剤の具体例としては、例えばアルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド、アラニン系、イミダゾニウムベタイン系、アミドプロピルベタイン系、アミノジプロピオン酸塩などを挙げることができる。
【0023】
さらに、本発明において用いる高分子界面活性剤の具体例としては、例えばカチオン性セルロース誘導体、アクリル系高分子分散剤(アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物、ポリカルボン酸型、ポリスチレンスルホン酸Na塩等)等を挙げることができる。
【0024】
本発明においては、これらの界面活性剤を一種類を単独で使用してもよく、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
これらの塊成化補助材が効果を発揮する理由は以下の通りと考えられる。
【0026】
まず第一に、これらの塊成化補助材を添加することにより、微粉炭と粘結材の濡れ性が改善される。石炭の表面は疎水性基が多く、粘結材も疎水性であるため、水に比べると粘結材の方が石炭との濡れ性は一般的に良好であるが、目的とする強度の塊成炭を得るには粘結材と石炭との濡れ性が不十分なのである。塊成化補助材の添加により、微粉炭と粘結材の濡れ性が改善され、より少量の粘結材で微粉炭の表面を覆うことが可能になる。
【0027】
第二に、もともと微粉炭は帯電しているため、相互に反発して凝集しにくいという性質がある。この性質自体は従来の粘結材を添加して混練しても改善はされなかった。発明者らは、塊成化補助材を添加することにより、微粉炭の荷電が減じてニュートラル化することを見いだした。これにより、微粉炭同士の電荷による反発力が低下し、より少い粘結材で微粉炭を接着させることが可能となる。
【0028】
第三に、これらの塊成化補助材を添加することにより、疑似粒子化した微粉炭が衝撃を受けてもはがれにくくなる。これは、これらの塊成化補助材添加により、粘結材の性状が改善され、粘結材の界面化学的な粘結力が向上し、より効果的に堅い凝集物が形成されるためである。
【0029】
ここで、粘結材と塊成化補助材を添加する対象の微粉炭の水分については上限があり、微粉炭の水分は6%以下、好ましくは4.5%以下、さらにより好ましくは3%であることが好ましい。これは、微粉炭中に水が多く存在すると、塊成化補助材の機能が低下してしまうためである。この理由は、微粉炭中に水分が多いと、塊成化補助材が水に吸着されてしまい、塊成化補助材としての機能が失われてしまうためである。
【0030】
ここで、粘結材7と塊成化補助材12は、それぞれ別々に混練工程で微粉炭と混合しても良いが、事前に十分混合してから微粉炭4に混合することがより好ましい。これは、別々に微粉炭と混合すると、塊成化補助材が微粉炭中の水と接触する可能性が高くなり、機能が低下するためである。粘結材と塊成化補助材を事前に十分混合することにより、より大きな効果が発揮できるのである。
【0031】
ここで、本発明の実施の形態によって製造した塊成炭の塊成化性を評価する方法としては、例えば、下記の評価試験法A、評価試験法Bおよび評価試験法Cの何れかの方法を用いることができる。
【0032】
(評価試験法A)
所定の温度に調整した粘結材および混練補助材を微粉炭に対して所定の添加比率となるように混練機に投入し、所定時間混練した後、この混練炭を塊成機に投入して塊成化し塊成炭とする。この塊成炭を、1mmの篩に入れてロータップで5分間篩った後、1mm以上の試料を採取する。この塊成炭から採取された試料200gを、2mの高さから10回鉄板上に落下させた後、全試料中の0.3mm以下の微粉の質量百分率を測定する。0.3mm以下の微粉の質量百分率が低いほど塊成化性が良いと評価される。
【0033】
本発明の実施形態で得られた塊成炭が搬送時やコークス炉装入時に崩壊しないだけの十分な強度を確保するためには、この評価試験法により測定された、全試料中の0.3mm以下の質量百分率は5%以下であることが好ましい。
【0034】
(評価試験法B)
上記評価試験法Aと同様な方法で塊成炭とし、この塊成炭を、1mmの篩に入れてロータップで5分間篩った後、1mm以上の試料を採取する。さらにこの試料を15mmの篩に入れて同様に篩った後、1mm以上15mm以下の試料を採取する。
【0035】
なお、15mmで篩った後に採取された1mm以上15mm以下の試料が質量百分率で50%を超える場合は、さらに、5mmの篩に入れて同様に篩った後、5mm以上15mm以下の試料を採取する。
【0036】
この1mm以上15mm以下の試料(または、5mm以上15mm以下の試料)を200g計量し、この試料をI型回転装置(φ130mm×L700mm)に入れて20rpmの回転数で3分間(計60回転)回転させた後、全試料中の1mm以上の質量百分率を測定する。この1mm以上の質量百分率が高いほど塊成化性が良いと評価される。
【0037】
本発明の実施形態で得られた塊成炭が搬送時やコークス炉装入時に崩壊しないだけの十分な強度を確保するためには、この評価試験法により測定された、全試料中の1mm以上の質量百分率が85%以上であることが好ましい。
【0038】
(評価試験法C)
上記評価試験法Aと同様な方法で塊成炭とし、この塊成炭を、上記評価試験法Bと同様な方法で1mm以上、15mm以下の試料(または5mm以上15mm以下の試料)を採取する。
【0039】
予め粉砕後の石炭を0.3mmの篩で篩って得られた0.3mm以上の石炭と、上記1mm以上15mm以下の試料(または、5mm以上15mm以下の試料)を質量比で70:30の割合で混合する。さらに、2mの高さから10回鉄板上に落下させた後、I型回転装置(φ130mm×L700mm)に入れて、20rpmの回転数で3分間(計60回転)回転させた後、試料中の0.3mm以下の質量百分率を測定する。この0.3mm以下の質量百分率が低いほど塊成化性が良いと評価される。
【0040】
本発明の実施形態で得られた塊成炭が搬送時やコークス炉装入時に崩壊しないだけの十分な強度を確保するためには、この評価試験法により測定された、全試料中の0.3mm以下の質量百分率は10%以下であることが好ましい。
【0041】
このような方法で評価される塊成化性は、実機のコークス製造設備において、石炭搬送過程における発塵およびコークス炉への石炭装入時におけるキャリーオーバーの量と対応している。上記の方法で測定される塊成化性が良い(評価試験法Aおよび評価試験法Cの場合は、0.3mm以下微粉の質量百分率が低いほど、評価試験法Bの場合は、1mm以上の質量百分率が高いほど)ほど、発塵量およびキャリーオーバー量が少ない。
【0042】
本発明の発明形態において使用する塊成化補助材の乾燥微粉炭に対する混合量は、原料乾燥炭に対し、0.005質量%以上、1質量%以下が好ましい。さらに好ましくは、0.01質量%以上0.5質量%以下、さらにより好ましくは0.025質量%以上0.2質量%以下である。図2、3は、粘結材添加率6%および10%の場合において、塊成化補助材添加率と塊成化性の関係を示す図である。図2は上記評価試験法Aにより測定された塊成化性(全試料中の0.3mm以下の質量百分率(質量%))を示し、図3は上記評価試験法Bにより測定された塊成化性(全試料中の1mm以上の質量百分率(質量%))を示す。
【0043】
図2に示すように、原料乾燥炭(微粉炭)に対する塊成化補助材の添加率が0.005%未満になると、評価試験法Aにより測定された全試料中の0.3mm以下の質量百分率が5質量%を超え、塊成化性の向上効果が十分に発揮できない。また、図3も同様に、原料乾燥炭(微粉炭)に対する塊成化補助材の添加率が0.005%未満になると、評価試験法Bにより測定された全試料中の1mm以上の質量百分率が85質量%未満となり、塊成化性の向上効果が十分に発揮できない。また、図2、3から原料乾燥炭(微粉炭)に対する塊成化補助材の添加率が1質量%を越えて多くなると塊成化性の効果が飽和し、塊成化補助材の原料コストが高くなる。これらの理由から、原料乾燥炭(微粉炭)に対する塊成化補助材の添加率は0.005〜1質量%とする。
【0044】
また、粘結材の添加量は、原料乾燥炭(微粉炭)に対し5〜12%であることが好ましい。粘結材の添加率が5%未満になると塊成化性の効果が十分に発揮できない。また、添加率が12質量%を越えて多くなると塊成化性の効果が飽和するので、粘結材の原料コストが高くなる。
【0045】
本発明の発明形態において粘結材の添加量を12%以下とした結果として、タール、ピッチなどの粘結材の使用量を低減し、これらを付加価値の高い化学原料として利用することが可能となる。また、タールやピッチなどの粘結材の使用量が低減するので、本発明を用いてコークスを製造することにより、コークス炉炉壁へのカーボン付着を軽減させることができる。
【0046】
粉砕・混合工程2においては、数種類のコークス製造用原料炭を所定の比率で混合してから、反撥式粉砕機やハンマー式粉砕機などの粉砕機で所定の粒度に粉砕しても良いし、各原料炭別に所定の粒度に粉砕後、所定の比率で混合しても良い。粉砕後の石炭の粒度は、一般的に3mmアンダーの質量百分率が70%以上、好ましくは80%以上であることが好ましい。
【0047】
乾燥・分級工程3においては、石炭乾燥機としては、気流乾燥法や流動層乾燥法などの直接接触式の乾燥機であっても、またチューブ内に熱媒または蒸気などを通したり、逆にチューブ内に石炭を通すドラム式の間接接触式乾燥機であってもよい。分級機能の付随していない乾燥機の場合、乾燥後の石炭を篩い等の篩分設備で分級すれば良いが、乾燥と同時に微粉炭と粗粒炭を分級できる流動層式乾燥機を用いることが好ましい。また、微粉炭と粗粒炭の分級点は、0.15mm〜0.8mm、より好ましくは0.3mm〜0.5mmであることが好ましい。
【0048】
乾燥前の石炭の付着水分は通常7%から10%であるが、乾燥機を通すことによって付着水分を6%前後以下に低減する。
【0049】
混練工程6に使用する混練機としては、工業的に使用可能な混練機であれば、どのような方式のものを用いても良い。例えば、モルタルミキサー、パドルミキサー、ピンミキサー、アイリッヒミキサー、2軸ニーダー、レーデイゲミキサー等を用いることができる。塊成工程13に使用する塊成機としては、工業的に使用可能な塊成機、成型機であれば、どのような方式のものでも良い。例えば、ブリケットマシン、ロールコンパクター、ダブルロール成型機、押出成型機等を用いることができる。
【実施例】
【0050】
表1に示すような条件で塊成化試験を実施した。用いた微粉炭は水分3%または7%、−0.3mm 100%で、5kgの微粉炭に対し、所定量の粘結材(タール)と塊成化補助材を添加した。ここでは塊成化補助材としてB(ジアルキルスルホコハク酸ソーダ(アニオン系界面活性剤:ペレックスTR:花王社製)とポリオキシエチレンラウリルエーテル(ノニオン系界面活性剤:エマルゲン104P:花王社製)を容量比で1:1に混合した混合物)を用いた。混練にはバッチ式のモルタルミキサーを用いた。粘結材の温度は70℃、混練時間は5分とした。混練した後の混練炭を、ダブルロール式の塊成機を用い、約5ccのアーモンド状の塊成炭を製造した。表1のアンダーライン部は本発明範囲から外れていることを示す。また、塊成炭の塊成化性の評価は、上述の評価試験法A、および、評価試験法Bを用い、評価試験法Aにより測定された全試料中の0.3mm以下の質量百分率が5質量%以下、評価試験法Bにより測定された全試料中の1mm以上の質量百分率が85質量%以上である場合に塊成化性が良好であると評価した。
【0051】
【表1】

【0052】
比較例1、2は塊成化補助材を用いない場合である。比較例3は、塊成化補助材のみを添加した場合である。粘結材のみを15%添加した比較例1では評価試験法Aでは、目標の−0.3mm:5%以下、評価試験法Bでは、目標の+1mm:85%以上をそれぞれ達成できているが、粘結材を多く添加しているため、この塊成炭をコークス炉で乾留する場合に炉壁へのカーボン付着の問題が生じた。また、粘結材のみを10%添加した比較例2および混練補助材のみを添加した比較例3では評価試験法Aでは、目標の−0.3mm:5%以下、評価試験法Bでは、目標の+1mm:85%以上を何れも達成できていないことがわかる。
【0053】
一方、発明例1〜4、発明例5〜12に示すように、本発明の範囲で粘結材および塊成化補助材を添加することにより、評価試験法Aでは、目標とする−0.3mm:5%以下、評価試験法Bでは、目標の+1mm:85%以上を何れも達成できることがわかる。
【0054】
比較例4および比較例5は、塊成化補助材の添加比率が本発明の範囲をはずれた場合、比較例6は粘結材の添加比率が本発明の範囲をはずれた場合である。いずれの場合においても、評価試験法Aでは、目標とする−0.3mm:5%以下、評価試験法Bでは、目標の+1mm:85%以上を何れも達成できていないことがわかる。
【0055】
比較例7は水分の高い微粉炭を用いた場合である。この場合も、評価試験法Aでは、目標とする−0.3mm:5%以下、評価試験法Bでは、目標の+1mm:85%以上を何れも達成できていないことがわかる。
【0056】
塊成化補助材としてB1(ポリカルボン酸型高分子界面活性剤:(ポリティー A−550:ライオン社製))、B2(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:(アニオン系界面活性剤:ネオペレックス G−15:花王社製))を用いた場合にも、同様の結果を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】微粉炭に粘結材を添加、混練した後、または、該添加、混練と同時に、混練補助材を添加、混練して疑似粒子とし、さらに造粒または成型して塊成物としてコークス炉に装入する本発明について説明する図である。
【図2】粘結材添加率6%および10%の場合において、塊成化補助材添加率と塊成化性(評価試験法A)の関係を示す図である。
【図3】粘結材添加率6%および10%の場合において、塊成化補助材添加率と塊成化性(評価試験法B)の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 コークス製造用原料炭
2 粉砕・混合工程
3 乾燥・分級工程
4 微粉炭
5 粗粒炭
6 混練工程
7 粘結材
9 混練炭
10 混合工程
11 コークス炉
12 塊成化補助材
13 塊成工程
14 塊成炭
15 粘結材と混練補助材または塊成化補助材の混合・添加工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭を乾燥した後、または、該乾燥と同時に、微粉炭と粗粒炭とに分級し、水分6%以下の微粉炭に粘結材を5〜12%添加、混練した後、または、該添加、混練と同時に、塊成化補助材を0.005%以上添加し、さらに、造粒または成形して塊成炭とし、該塊成炭と前記粗粒炭を混合し、コークス炉に装入することを特徴とするコークスの製造方法。
【請求項2】
前記塊成炭は、該塊成炭から採取された試料を2mの高さから10回鉄板上に落下させた後、測定された全試料中の0.3mm以下の質量百分率が5%以下であることを特徴とする請求項1に記載のコークスの製造方法。
【請求項3】
前記塊成炭は、該塊成炭から1mm以上15mm以下の試料を200g採取し、I型回転装置に入れて20rpmの回転数で3分間回転させた後、測定された全試料中の1mm以上の質量百分率が85%以上であることを特徴とする請求項1に記載のコークスの製造方法。
【請求項4】
前記混練補助材もしくは塊成化補助材が、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤から選ばれた1種または2種以上からなることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のコークスの製造方法。
【請求項5】
前記粘結材が、タール、タール滓、タール抽出物、鉱物系廃油、石炭系ピッチ、石油系ピッチから選ばれた1種または2種以上からなることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のコークスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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