高硫酸化二糖製剤
喘息または喘息に関連する障害に有用性のある高硫酸化二糖を開示する。該化合物は、高硫酸化二糖の経口送達を増強する作用剤と共に調合する。この送達剤は、このような作用剤なしに薬物を送達する場合に比べて、二糖のバイオアベイラビリティを向上させる他の化合物または他の種類の化合物と並んで、イオン性側鎖を有する天然または合成ポリマーから成る群から選択される。前記高硫酸化二糖はヘパリンまたはその塩から作製する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年12月3日に出願された米国特許仮出願第61/266,361号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、以下に詳しく記載されるような化学式Iの高硫酸化二糖化合物と、前記化合物の経口送達を容易にする/増強する製薬学的に許容可能なビヒクル(添加剤)から選択される送達剤とを含む医薬製剤に関する。本製剤は、動物とヒトの様々な炎症性傷害および疾患、特に、喘息、および、肺と気道の炎症に関連する他の容態または疾患から選択される肺障害の治療に有用である。
【背景技術】
【0003】
米国特許第7,056,898号(898特許)は、ある高硫酸化二糖、および、ある炎症性障害を治療するための前記高硫酸化二糖の利用方法を開示および請求している。この特許は、その請求されている化合物を利用して、喘息と、アレルギー反応もしくは炎症性疾患または容態等の喘息に関連する病態とを含む肺炎を治療することを具体的に説明している。その明細書で開示されている化合物は、喘息と喘息に関連する病態との症状、特に、抗原刺激に続く喘息患者の晩期反応を予防、逆行および/または緩和する能力のあるものとして記載されている。その明細書に示されている実施例および図面は具体的には、記載されている二糖の静脈内投与手段および吸入投与手段に関連している。898特許では一般に、811−25−1と表記されている高硫酸化二糖をヒツジへ、0.5mgs/kgの投与量で経口投与することが開示されているが、具体的なデータが示されていない。その明細書では、具体的な経口製剤も開示されておらず、具体的な経口製剤の投与に関連するデータも具体的に開示されていない。患者に、その治療の必要性に応じて少ない投与量で都合良く送達することができ、例えば、ステロイドまたはモンテルカストナトリウム等のロイコトリエン受容体拮抗薬の長期投与に関連する副作用のない肺疾患治療薬または抗炎症薬を改善することが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、この未だに処理されていない要求に対処し、意外にも、本明細書で詳述されている高硫酸化二糖と、製薬学的に許容可能な天然ポリマーまたは合成ポリマーから成る群から選択される送達剤、ならびに、嵩高の化合物(例えば、分子量が平均分子量として4,500ダルトンを超えるそれらの化合物)の送達を向上させるのにこれまで利用されてきた他のビヒクルとを含むある製剤が、請求されている添加剤を用いずに送達される同じ化合物と比べて吸収/バイオアベイラビリティ/効能を増していることを見出した。文献には、あるカルボマーにより、分子量が約4500ダルトンの低分子量ヘパリン(LMWH)の腸吸収が増すことが開示されているが、この物質を利用して、低分子量の二糖の吸収を増大させることの教示または示唆はなかった。実際には、Thanou et al.,Pharmaceutical Research, 18(11)2001で報告されるように、LMWHは嵩が高く、分子量が12,000ダルトンの断片よりも困難ではないものの、経細胞経路または傍細胞経路(タイト結合を経由する通路)を介して腸上皮に浸透し難いと考えられたので、上記のようなカルボマーが添加された。上記のことは、LMWHと比べて分子が小さく、腸上皮にさらに容易に浸透可能な低分子量の二糖には該当し得ない。本発明者は、意外にも、低分子量の二糖、特に、低分子量の高硫酸化二糖(例えば、約1,000ダルトン)では、例えば、カルボポール934Pおよび/または他のカルボマーの化学的および/または物理的特性のうちの少なくとも1つを有するポリマー材料と組み合わせると、効能が驚くほど向上することを見出した。そのようなポリマーは、本発明の高硫酸化二糖を送達し易くするカルボン酸側鎖および/または親水性部分等のイオン基を有する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、化学式Iの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩と、製薬学的に許容可能な合成もしくは天然ポリマー、オリゴマー、または、化学式Iの化合物を動物の血流に送達または投与し易くする他の製剤から成る群から選択される送達剤とを含む医薬製剤に関する。本製剤中の化合物は、化学式Iの化合物またはその製薬学的に許容可能な塩であり、
【化1】
式中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、H、SO3HまたはPO3Hから成る群から独立して選択され、R1〜R6のうちの少なくとも2つは、SO3HまたはPO3Hから選択される。本発明は、R1〜R6のうちの少なくとも3つがSO3HまたはPO3Hから選択される。本発明は、R1〜R6のうちの少なくとも3つがSO3HまたはPO3Hから選択される、化学式Iの化合物を有する製剤にも関する。本発明はさらに、R1〜R6のうちの少なくとも4つがSO3HまたはPO3Hから選択される、化学式Iの化合物を有する製剤にも関する。本発明はさらに、R1〜R6のうちの少なくとも5つがSO3HまたはPO3Hから選択される、化学式Iの化合物を有する製剤にも関する。好ましくは、本発明は、R1〜R6がSO3Hから選択される、化学式Iの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩に関する。本発明は、R1〜R6がSO3HまたはPO3Hから独立して選択される、化学式Iの化合物を有する製剤にも関する。本発明は、プロドラッグ、誘導体、活性代謝物、化学式Iの前記化合物の部分的にイオン化された誘導体および完全にイオン化された誘導体、ならびに、それらの立体異性体をさらに含む。本発明の二糖を構成する単量体は、D異性体またはL異性体であり得る。炭素環の周りのヒドロキシ部分またはそれらの硫酸化異形またはリン酸化異形(それらの非環式異形または中間体)は、いずれかの特定の立体中心で、アルファ表記またはベータ表記であり得る。単糖部分の間を繋ぐ酸素原子も、アルファまたはベータであり得る。本発明の化合物の分子量は、通常、1,000ダルトン未満である。
【0006】
本発明は、
(i)化学式Iの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩と
【化2】
(式中、R1、R2、R4、R5およびR6は、H、SO3HまたはPO3Hから独立して選択され、R3は、SO3HまたはPO3Hから成る群から独立して選択される)、
(ii)製薬学的に許容可能な天然ポリマーまたは合成ポリマーから成る群から選択される添加剤と
を含む医薬製剤にも関する。
【0007】
本発明は、
(i)化学式Iの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩と
【化3】
(式中、R1、R2、R5およびR6は、H、SO3HまたはPO3Hから独立して選択され、R3およびR4は、SO3HまたはPO3Hから成る群から独立して選択される)、
(ii)製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤と
を含む医薬製剤にも関する。
【0008】
本発明は、
(i)化学式Iの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩と
【化4】
(式中、R1、R2およびR6は、H、SO3HまたはPO3Hから独立して選択され、R3、R4およびR5は、SO3HまたはPO3Hから成る群から独立して選択される)、
(ii)製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤と
を含む医薬製剤にも関する。
【0009】
別の実施形態では、本発明は、
(i)化学式IIの化合物
【化5】
およびその製薬学的に許容可能な塩と(式中、R1、R2、R4、R5およびR6は、H、SO3HまたはPO3Hから独立して選択される)、
(ii)製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤と
を含む医薬製剤にも関する。
【0010】
好ましい実施形態では、本発明は、(i)R1がSO3Hであり、R2、R4、R5およびR6がH、SO3HまたはPO3Hから独立して選択される、化学式IIの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩と、(ii)製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤とを含む医薬製剤に関する。
【0011】
追加の好ましい追加の実施形態では、本発明は、(i)R1がSO3Hであり、R2がHであり、R4、R5およびR6がSO3HまたはPO3Hから独立して選択される、化学式IIの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩と、(ii)製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤とを含む医薬製剤に関する。最も好ましい実施形態は、R1〜R6がSO3Hから選択される化学式Iの化合物とその製薬学的に許容可能な塩とを含む医薬製剤に関する。
【0012】
本発明は、式中のR1〜R6が上に示されているもののうちのいずれかである化学式IまたはIIの化合物およびそれらの製薬学的に許容可能な塩と、製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤とを含む経口投剤形にも関する。
【0013】
本発明は、生物の炎症状態をその治療の必要に応じて治療する方法であって、化学式Iの化合物
【化6】
およびその製薬学的に許容可能な塩と(式中、R1〜R6は、SO3H、PO3HまたはHから独立して選択され、R1〜R6のうちの少なくとも2つは、SO3HまたはPO3Hである)、
製薬学的に許容可能な天然もしくは合成ポリマー、オリゴマー、または、化学式Iの化合物を血流内および/または標的部位に送達し易くし、抗原への炎症反応を予防または緩和する製剤から成る群から選択される送達剤と
を含む製剤を製薬学的に有効な量を投与することを含む方法も含む。
【0014】
本発明について、以下の図面で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】ヒツジ(n=3)への抗原投与後(時間=0)の表示時間に随従する肺気流比抵抗(cm H2O/L/秒として計測)(すなわち、SRL)の百分率変化を比較するグラフを示し、抗原のみに曝露されたヒツジ(黒丸)(対照)、および、MD1599−8と表記される高硫酸化二糖、または、(硫酸塩およびカルボン酸塩の位置で)完全にイオン化されたナトリウム塩形態の表1中の化合物14(化合物14aともいう)を1mg/kgの液体経口投与量で加えた抗原に曝露されたヒツジ(白丸)の応答を示している。MD1599−8(化合物14a)は、抗原チャレンジの90分前に(すなわち、−1.5時間に)投与した。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、数週間後に再び、MD1599−8(化合物14a)を加えた抗原に曝露された3頭のヒツジ(n=3)の、抗原で誘発されたSRLの+/−SE変化率(%)の平均として示されている。
【図1B】アレルギー持ちのヒツジの気道過敏性(AHR)への前処理の効果を表す棒グラフを示す。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、再び、数週間後に、MD1599−8(化合物14a)を投与量(1mg/kg)で液体単回投与で経口投与する前処理(90分前)の後に、抗原に曝露されたヒツジの群(n=3)の基線と24時間後抗原チャレンジでの、呼吸単位での+/−SE PD400の平均(気道応答)として示されている。PD400は、SRLを400%増加させた、呼吸単位でのカルバコール誘発量として定義される。一呼吸単位は、カルバコール1%溶液の一呼吸である。PD400は気道応答の指標である。
【図2A】ヒツジ(n=3)への抗原投与(時間=0)後の表示時間に随従する肺気流比抵抗(すなわち、SRL)の百分率変化を比較するグラフを示し、抗原のみに曝露されたヒツジ(黒丸)(対照)、および、MD1599−8と表記される高硫酸化二糖、または、完全イオン化ナトリウム塩形態の表1中の化合物14(化合物14a)を2mg/kgの液体経口投与量で加えた抗原に曝露されたヒツジ(白丸)の応答を示している。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、数週間後に再び、MD1599−8を加えた抗原に曝露された3頭のヒツジ(n=3)の、抗原で誘発されたSRLの+/−SE変化率(%)の平均として示されている。MD1599−8は、抗原曝露の1.5時間前に液体で経口投与した。
【図2B】アレルギー持ちのヒツジの気道過敏性(AHR)への前処理の効果を表す棒グラフを示す。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、再び、数週間後に、MD1599−8(2mg/kg)の液体経口投与での前処理(1.5時間)の後に、抗原に曝露されたヒツジの群(n=3)の基線と24時間後抗原チャレンジでの、呼吸単位での+/−SEPD400の平均(気道応答)として示される。
【図3A】ヒツジ(n=4)への抗原投与(時間=0)後の表示時間に随従する肺気流比抵抗(cm H2O/L/秒として計測)(すなわち、SRL)の百分率変化を比較するグラフを示し、抗原のみに曝露されたヒツジ(黒丸)(対照)、および、MD1599−8と表記される高硫酸化二糖、または、完全イオン化ナトリウム塩形態の表1中の化合物14(化合物14aともいう)を1mg/kgの液体経口投与量で加えた抗原に曝露されたヒツジ(白丸)の応答を示している。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、数週間後に再び、抗原曝露前の2日間(×2日)、1mg/kgのMD1599−8(化合物14a)を合計3回、12時間間隔で液体で投与する前処理の後に、抗原に曝露された4頭のヒツジ(n=4)の、抗原で誘発されたSRLの+/−SE変化率(%)の平均として示されている。抗原チャレンジは、最後の1mg/kg投与後90分に行った。
【図3B】アレルギー持ちのヒツジの気道過敏性(AHR)への前処理の効果を表す棒グラフを示す。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、再び、数週間後に、MD1599−8(化合物14a)(1mg/kg)を液体経口投与で3回、12時間間隔で2日間に渡って与える2日間(曝露前の2日間)の前処理の後に、抗原に曝露されたヒツジの群(n=4)の基線と24時間後抗原チャレンジでの、呼吸単位での+/−SE PD400の平均(気道応答)として示されている。抗原チャレンジは、最後の1mg/kg投与後90分に行った。
【図4A】ヒツジ(n=2)への抗原投与(時間=0)後の表示時間に随従する肺気流比抵抗(cm H2O/L/秒として計測)(すなわち、SRL)の百分率変化を比較するグラフを示し、抗原のみに曝露されたヒツジ(黒丸)(対照)、および、MD1599−8と表記される高硫酸化二糖、または、完全イオン化ナトリウム塩形態の表1中の化合物14(化合物14a)を2mg/kgの液体経口投与量で加えた抗原に曝露されたヒツジ(白丸)の応答を示している。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、数週間後に再び、MD1599−8を1回投与量2mg/kgで朝に投与する(A.M.投与)前処理を抗原曝露前に3日間(×3日)行った後に、抗原に曝露された2頭のヒツジ(n=2)の、抗原で誘発されたSRLの+/−SE変化率(%)の平均として示されている。抗原チャレンジは、最後の2mg/kg投与後24時間であった。
【図4B】アレルギー持ちのヒツジの気道過敏性(AHR)への前処理の効果を表す棒グラフを示す。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、再び数週間後に、MD1599−8(化合物14a)(2mg/kg)を液体経口投与で3日間に渡り朝に投与する(2mg/kg/日)前処理を曝露前に3日間行った後に、抗原に曝露されたヒツジの群(n=2)の基線と24時間後抗原チャレンジでの、呼吸単位での+/−SE PD400の平均(気道応答)として示されている。抗原チャレンジは、最後の2mg/kg投与後24時間であった。
【図5A】ヒツジ(n=4)への抗原投与(時間=0)後の表示時間に随従する肺気流比抵抗(cm H2O/L/秒として計測)(すなわち、SRL)の百分率変化を比較するグラフを示し、抗原のみに曝露されたヒツジ(黒丸)(対照)、および、MD1599−8と表記される高硫酸化二糖(化合物14a)、または、完全イオン化ナトリウム塩形態の表1中の化合物14を2mg/kg液体経口投与で加えた抗原に曝露されたヒツジ(白丸)の応答を示している。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、数週間後に再び、1日当たり2mg/kgのMD1599−8を単回液体経口投与で夕方に投与する(P.M.投与)前処理を抗原曝露前に3日間(×3日)行った後に、抗原に曝露された4頭のヒツジ(n=4)の、抗原で誘発されたSRLの+/−SE変化率(%)の平均として示されている。抗原チャレンジは、最後の2mg/kg薬剤投与後15時間であった。
【図5B】アレルギー持ちのヒツジの気道過敏性(AHR)への前処理の効果を表す棒グラフを示す。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、再び数週間後に、MD1599−8(化合物14a)(2mg/kg)を経口投与で3日間連続して夕方に投与する(2mg/kg/日)前処理を曝露前に3日間行った後に、抗原に曝露されたヒツジの群(n=4)の基線と24時間後抗原チャレンジでの、呼吸単位での+/−SE PD400の平均(気道応答)として示されている。抗原曝露は、最後の2mg/kg処理後15時間で行った。
【図6A】ヒツジ(n=5)への抗原投与(時間=0)後の表示時間に随従する肺気流比抵抗(cm H2O/L/秒として計測)(すなわち、SRL)の百分率変化を比較するグラフを示し、抗原のみに曝露されたヒツジ(黒丸)(対照)、および、15mgの高硫酸化二糖(表1に示されている化合物14の完全イオン化ナトリウム塩形態(または化合物14a))とカルボポール934P NF(白丸)およびラクトース充填剤から選択される15mgの添加剤とを有し、1599−14と表記される製剤である経口カプセル剤形を1日1錠加えた抗原に曝露されたヒツジの応答を示している。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、数週間後に再び、15mgの化合物14のナトリウム塩(化合物14aともいう)/15mgのカルボポール934P NFという単回1日投与量で夕方にカプセル剤形で投与する(P.M.投与)前処理を抗原曝露前に3日間(×3日)行った後に、抗原に曝露された5頭のヒツジ(n=5)の、抗原で誘発されたSRLの+/−SE変化率(%)の平均として示されている。抗原チャレンジは、最後の15mg/kgの化合物14aで処理後、15時間で行った。
【図6B】アレルギー持ちのヒツジの気道過敏性(AHR)への前処理の効果を表す棒グラフを示す。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、再び数週間後に、化合物14のナトリウム塩(化合物14a)(15mg)とカルボポール934P(15mg)とを含む製剤という1日経口投与量で夕方にカプセル剤形(製剤1599−14)で投与する前処理を曝露前に3日間行った前に、抗原に曝露されたヒツジの群(n=5)の基線と24時間後抗原チャレンジでの、呼吸単位での+/−SE PD400の平均(気道応答)として示されている。抗原チャレンジは、最後の15mgの化合物14aで処理後、15時間で行った。
【図7A】ヒツジ(n=5)への抗原投与(時間=0)後の表示時間に随従する肺気流比抵抗(cm H2O/L/秒として計測)(すなわち、SRL)の百分率変化を比較するグラフを示し、抗原のみに曝露されたヒツジ(黒丸)(対照)、および、15mgの高硫酸化二糖(表1に示されている化合物14の完全イオン化ナトリウム塩形態、化合物14aともいう)とカルボポール934Pから選択される15mgの添加剤とを有し、1599−14と表記される製剤を1日2錠という経口カプセル剤形で加えた抗原に曝露されたヒツジ(白丸)の応答を示している。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、数週間後に再び、30mgの化合物14のナトリウム塩(すなわち化合物14a)/30mgのカルボポール934Pという1日投与量で夕方にカプセル剤形で投与する(P.M.投与)(1日当たり2カプセルを同時にまたは即座に続けて投与する)前処理を抗原曝露前に3日間(×3日)行った後に、抗原に曝露された5頭のヒツジ(n=5)の、抗原で誘発されたSRLの+/−SE変化率(%)の平均として示されている。抗原露曝は、最後の30mg投与後15時間で現れた。
【図7B】アレルギー持ちのヒツジの気道過敏性(AHR)への前処理の効果を表す棒グラフを示す。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、再び数週間後に、化合物14のナトリウム塩(化合物14a)(15mg)とカルボポール934P(15mg)とを含む製剤を経口投与で夕方にカプセル剤形(製剤1599−14)で2カプセル/日として投与し、合計で30mg/日の活性成分を3日間に渡り毎日与える前処理を暴露前3日間行った後に、抗原に曝露されたヒツジの群(n=5)の基線と24時間後抗原チャレンジでの、呼吸単位での+/−SE PD400の平均(気道応答)として示される。抗原露曝は、最後の30mg処理後15時間で現れた。
【図8A】ヒツジ(n=2)への抗原投与(時間=0)後の表示時間に随従する肺気流比抵抗(cm H2O/L/秒として計測)(すなわち、SRL)の百分率変化を比較するグラフを示し、抗原のみに曝露されたヒツジ(黒丸)(対照)、および、15mgの高硫酸化二糖(表1に示されている化合物14の完全イオン化ナトリウム塩形態、化合物14aともいう)とカルボポール934Pから選択される15mgの添加剤とを各々が有し、1599−14と表記される製剤を1日3錠という経口投与カプセル剤形で加えた抗原に曝露されたヒツジ(白丸)の応答を示している。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、数週間後に再び、45mgの化合物14のナトリウム塩(すなわち14a)/45mgのカルボポール934Pという1日投与量で夕方にカプセル剤形(1日当たり3カプセル)で投与する(P.M.投与)前処理を抗原曝露前に3日間(×3日)行った後に、抗原に曝露された2頭のヒツジ(n=2)の、抗原誘発されたSRLの+/−SE変化率(%)の平均として示される。抗原露曝は、最後の45mgの晩の投与後15時間で現れた。
【図8B】アレルギー持ちのヒツジの気道過敏性(AHR)への前処理の効果を表す棒グラフを示す。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、再び数週間後に、化合物14のナトリウム塩(14a)(15mg)とカルボポール934P(15mg)とを含む製剤を1日経口投与で夕方にカプセル剤形(製剤1599−14)で3カプセル/日として投与し、合計で45mg/日の活性成分と45mgのカルボポール934Pを3日間に渡り毎日与える前処理を曝露前に3日間行った後に、抗原に曝露されたヒツジの群(n=2)の基線と24時間後抗原チャレンジでの、呼吸単位での+/−SE PD400の平均(気道応答)として示されている。抗原曝露は、化合物14aの最後の晩の45mg投与後15時間で行った。
【図9A】ヒツジ(n=2)への抗原投与(時間=0)後の表示時間に随従する肺気流比抵抗(cm H2O/L/秒として計測)(すなわち、SRL)の百分率変化を比較するグラフを示し、抗原のみに曝露されたヒツジ(黒丸)(対照)、および、ラクトース充填剤中に15mgのカルボポール934Pを1599−17と表記される製剤と共に有する、カプセル剤形を1日3錠加えた抗原に曝露されたヒツジ(白丸)の応答を示している。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、数週間後に再び、1日の総投与量45mgのカルボポール添加剤を夕方にカプセル剤形(1日当たり3カプセル×3日)で投与する(P.M.投与)前処理を抗原曝露前に3日間(×3日)行った後に、抗原に曝露された2頭のヒツジ(n=2)の、抗原で誘発されたSRLの+/−SE変化率(%)の平均として示されている。
【図9B】アレルギー持ちのヒツジの気道過敏性(AHR)への前処理の効果を表す棒グラフを示す。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、再び数週間後に、カルボポール934P(ラクトース中カプセル当たり15mg)を含む製剤を経口投与で夕方にカプセル剤形(製剤1599−17)で3カプセル/日としてカルボポール総投与量45mg/日で3日間に渡り投与する前処理を曝露前に3日間行った後に、抗原に曝露されたヒツジの群(n=2)の基線と24時間後抗原チャレンジでの、呼吸単位での+/−SE PD400の平均(気道応答)として示される。
【図10A】ヒツジ(n=5)への抗原投与(時間=0)後の表示時間に随従する肺気流比抵抗(cm H2O/L/秒として計測)(すなわち、SRL)の百分率変化を比較するグラフを示し、抗原のみに曝露されたヒツジ(黒丸)(対照)、および、21mgの高硫酸化二糖(表1に示されているような化合物14の完全イオン化ナトリウム塩形態、14aともいう)とカルボポール934Pから選択される21mgの添加剤とを有し、1599−19と表記される製剤を単回連日経口カプセル剤形で加えた抗原に曝露されたヒツジ(白丸)の応答である。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、数週間後に再び、21mgの化合物14のナトリウム塩(14a)/21mgのカルボポール934Pという1日投与量で夕方にカプセル剤形(1日当たり1カプセル)で投与する(P.M.投与)前処理を抗原曝露前に3日間(×3日)行った後に、抗原に曝露された5頭のヒツジ(n=5)の、抗原で誘発されたSRLの+/−SE変化率(%)の平均として示されている。抗原露曝は、最後の夕方の21mg投与後15時間で現れた。
【図10B】アレルギー持ちのヒツジの気道過敏性(AHR)への前処理の効果を表す棒グラフを示す。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、再び数週間後に、化合物14のナトリウム塩(14a)(21mg)とカルボポール934P(21mg)とを含む製剤を連日経口投与で夕方にカプセル剤形(製剤1599−19)で1カプセル/日として3日間に渡り投与する前処理を曝露前に3日間行った後に、抗原に曝露されたヒツジの群(n=2)の基線と24時間後抗原チャレンジでの、呼吸単位での+/−SE PD400の平均(気道応答)として示されている。抗原曝露は、化合物14aの最後の晩の21mg投与後15時間で行った。
【図11A】ヒツジ(n=3)への抗原投与(時間=0)後の表示時間に随従する肺気流比抵抗(cm H2O/L/秒として計測)(すなわち、SRL)の百分率変化を比較するグラフを示し、抗原のみに曝露されたヒツジ(黒丸)(対照)、および、21mgの6−硫酸化二糖(表1に示されているような化合物14の完全イオン化ナトリウム塩形態(すなわち14a))を有し、1599−20と表記される製剤を単回連日経口カプセル剤形で加えた抗原に曝露されたヒツジ(白丸)の応答を示している。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、数週間後に再び、化合物14のナトリウム塩(14a)を21mgの1日投与量で夕方にカプセル剤形(1日当たり1カプセル)で投与する(P.M.投与)前処理を抗原曝露前に3日間(×3日)行った後に、抗原に曝露された5頭のヒツジ(n=3)の、抗原で誘発されたSRLの+/−SE変化率(%)の平均として示されている。抗原露曝は、最後の晩の21mg投与後15時間で現れた。
【図11B】アレルギー持ちのヒツジの気道過敏性(AHR)への前処理の効果を表す棒グラフを示す。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、再び数週間後に、化合物14のナトリウム塩(14a)(21mg)を含む製剤を連日経口投与で夕方にカプセル剤形(製剤1599−20)で1カプセル/日として3日間に渡り投与する前処理を曝露前に3日間行った後に、抗原に曝露されたヒツジの群(n=3)の基線と24時間後抗原チャレンジでの、呼吸単位での+/−SE PD400の平均(気道応答)として示されている。抗原曝露は、化合物14aの最後の晩の21mg投与後15時間で行った。
【図12A】ヒツジ(n=2)への抗原投与(時間=0)後の表示時間に随従する肺気流比抵抗(cm H2O/L/秒として計測)(すなわち、SRL)の百分率変化を比較するグラフを示し、抗原のみに曝露されたヒツジ(黒丸)(対照)、および、21mgの高硫酸化二糖(42mg総活性)(表1に示されているような化合物14の完全イオン化ナトリウム塩形態、すなわち14a)を有し、1599−20 42mgsと表記される製剤を1日2錠の連日経口カプセル剤形で加えた抗原に曝露されたヒツジ(白丸)の応答を示している。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、数週間後に再び、42mgの化合物14のナトリウム塩(14a)を連日投与で夕方にカプセル剤形で投与する(P.M.投与)(1日当たり2カプセルを同時に摂取)前処理を抗原曝露前に3日間(×3日)行った後に、抗原に曝露された5頭のヒツジ(n=2)の、抗原で誘発されたSRLの+/−SE変化率(%)の平均として示されている。抗原露曝は、最後の夕方の42mg投与後15時間で現れた。
【図12B】アレルギー持ちのヒツジの気道過敏性(AHR)への前処理の効果を表す棒グラフを示す。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、再び数週間後に、化合物14のナトリウム塩(14a)(42mg)を含む製剤を連日経口投与で夕方にカプセル剤形(製剤1599−20 42mgs)で2カプセル/日の同時摂取で3日間に渡り投与する前処理を曝露前に3日間行った後に、抗原に曝露されたヒツジの群(n=2)の基線と24時間後抗原チャレンジでの、呼吸単位での+/−SE PD400の平均(気道応答)として示されている。抗原曝露は、化合物14aの最後の晩の42mg投与後15時間で行った。
【図13A】ヒツジ(n=5)への抗原投与(時間=0)後の表示時間に随従する肺気流比抵抗(cm H2O/L/秒として計測)(すなわち、SRL)の百分率変化を比較するグラフを示し、抗原のみに曝露されたヒツジ(黒丸)(対照)、および、15mgの高硫酸化二糖化合物14a(表1に示されているような化合物14の完全イオン化ナトリウム塩形態)とカルボポール934Pから選択される30mgの添加剤とを有し、1599−22と表記される製剤を単回連日経口カプセル剤形で加えた抗原に曝露されたヒツジ(黒三角)の応答を示している。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、数週間後に再び、15mgの化合物14のナトリウム塩(化合物14a)/30mgのカルボポール934Pを連日投与で夕方にカプセル剤形で投与する(P.M.投与)(1日当たり1カプセル)前処理を抗原曝露前に3日間(×3日)行った後に、抗原に曝露された5頭のヒツジ(n=5)の、抗原で誘発されたSRLの+/−SE変化率(%)の平均として示される。抗原露曝は、最後の晩の15mg剤形の後、15時間で現れた。
【図13B】アレルギー持ちのヒツジの気道過敏性(AHR)への前処理の効果を表す棒グラフを示す。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、再び数週間後に、化合物14のナトリウム塩(15mgの化合物14a)とカルボポール(30mg)とを含む製剤を連日経口投与で夕方にカプセル剤形(製剤1599−22)で1カプセル/日として3日間に渡り投与する前処理を抗原曝露前に3日間行った後に、抗原に曝露されたヒツジの群(n=5)の基線と24時間後抗原チャレンジでの、呼吸単位での+/−SE PD400の平均(気道応答)として示されている。抗原曝露は、最後の15mgの晩の剤形の後、15時間で行った。上記の図で用いたカプセルは、腸溶コーティングが施されていた。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、医薬製剤およびその利用に関し、その製剤は、化学式Iの化合物およびその化合物の製薬学的に許容可能な塩と、
【化7】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、H、SO3HまたはPO3Hから成る群から独立して選択され、R1〜R6のうちの少なくとも2つは、SO3HまたはPO3Hから選択される)、製薬学的に許容可能な天然ポリマーもしくは合成ポリマー、オリゴマー、または、化学式Iの化合物を血流内に送達し易くする製剤から成る群から選択される送達剤とを含む。用語「製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマー」は一般に、単量体単位(単一または複数)上に側鎖置換基がある、炭素鎖または主鎖を有する単量体または単量体単位の繰り返し単位(飽和または不飽和のもの、もしくは、不飽和単量体および飽和単量体の両方を有するもの)を有する製薬学的に許容可能な天然由来ポリマーまたは合成ポリマーを意味する。そのようなポリマーは、隣接する単量体が同じであることも異なることもできる繰り返し単量体単位の同種重合体またはコポリマーであり得る。側鎖置換基としては、カルボン酸基、または、ヒドロキシル基もしくはアミノ基から選択される他の極性基が挙げられ、それらの側鎖置換基は、例えば、硫酸基またはリン酸基にさらに置換することができる。これらのポリマーは、架橋することができる。好ましい単量体はアクリル酸残基であり、カルボマーを形成する。上記のようなポリマーの分子量は、約500,000〜約40億であり得る。架橋間の分子量(MC)は、例えば、カルボポール941に関しては、推定で104,400g/モルであり得る。本明細書では、以下で、更なるポリマーおよび薬物送達増強剤について説明されている。
【0017】
本発明は、
(i)化学式Iの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩と、
【化8】
(式中、R1、R2、R4、R5およびR6は、H、SO3HまたはPO3Hから独立して選択され、R3は、SO3HまたはPO3Hから独立して選択される)、
(ii)製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤と
を含む、医薬製剤にも関する。
【0018】
本発明は、
(i)化学式Iの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩と、
【化9】
(式中、R1、R2、R5およびR6は、H、SO3HまたはPO3Hから独立して選択され、R3およびR4は、SO3HまたはPO3Hから独立して選択される)、
(ii)製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤と
を含む医薬製剤にも関する。
【0019】
本発明は、
(i)化学式Iの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩と、
【化10】
(式中、R1、R2およびR6は、H、SO3HまたはPO3Hから独立して選択され、R3、R4およびR5は、SO3HまたはPO3Hから独立して選択される)、
(ii)製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤と
を含む医薬製剤にも関する。
【0020】
別の実施形態では、本発明は、
(i)化学式IIの化合物
【化11】
およびその製薬学的に許容可能な塩と(式中、R1、R2、R4、R5およびR6は、H、SO3HまたはPO3Hから成る群から独立して選択される)、
(ii)製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤と
を含む医薬製剤にも関する。
【0021】
好ましい実施形態では、本発明は、(i)化学式IIの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩と
【化12】
(式中、R1はSO3Hであり、R2、R4、R5およびR6は、H、SO3HまたはPO3Hから独立して選択される)、(ii)製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤とを含む医薬製剤に関する。
【0022】
追加の好ましい追加の実施形態では、本発明は、(i)化学式IIの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩と
【化13】
(式中、R1はSO3Hであり、R2はHであり、R4、R5およびR6は、SO3HまたはPO3Hから独立して選択される)、(ii)製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤とを含む医薬製剤に関する。
【0023】
本発明は、上に定義されたようなR1〜R6を有する化学式IまたはIIの化合物およびそれらの製薬学的に許容可能な塩と、製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤とを含む経口剤形にも関する。
【0024】
本発明は、炎症状態を治療または緩和する方法であって、(i)化学式Iの化合物
【化14】
およびその製薬学的に許容可能な塩を含む製薬学的に有効な量の製剤と(式中、R1〜R6は、SO3H、PO3HまたはHから独立して選択され、R1〜R6のうちの少なくとも2つは、SO3HまたはPO3Hである)、
(ii)製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤と
を投与することを含む方法も含む。
【0025】
本発明は、好ましくは、R1、R2、R3、R4、R5およびR6が、表1に化合物1〜14として示されている変異体から選択される化学式Iの化合物と、製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤とを含む医薬製剤に関する。
【化15】
【表1】
【0026】
好ましい実施形態では、本発明の製剤中の化合物は、上の表1に示されている化学式Iの化合物の金属塩から選択される。それらの化合物では、カルボン酸基がイオン化され、二糖の周りの各々の硫酸基がイオン化されて金属塩を形成し、その金属は、例えばナトリウムから選択される。加えて、アミン塩を含む他の塩が、カルボン酸塩または硫酸塩の位置に形成され得る。最も好ましい化合物は、ナトリウム塩としての完全イオン化形態の化合物14である(化合物14a)。
【0027】
本発明の化合物は、本明細書で実施例において記載されているように、例えば、ヘパリンから得ることができる。用いた具体的なプロセスではブタヘパリンを用いたが、任意の哺乳類のヘパリンを用いて、本発明の化合物を生成してもよい。加えて、本化合物は、合成的に誘導してもよい。記載されている二糖の原料物質として、様々な他の多糖を用いてもよく、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、ポリ硫酸ペントサンならびに、他のグリコサミノグリカンおよびムコ多糖体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本発明の化合物は一般に、以下の工程を含むプロセスにより調製することができる。(1)ヘパリンナトリウムを水に溶解させ、pHを弱酸性(約pH6)に調節し、(2)この溶液を亜硝酸ナトリウム(NaNO2)水溶液で処理して亜硝酸を形成し、ヘパリンを脱重合し(および、例えば、IdoA(2S)GlcNS(6S)を脱アミノ化して、Ido(2S)−aManを形成する)、(3)脱重合したヘパリン溶液を塩基化して、pHを約7にし、(4)脱重合したヘパリン溶液を希釈し、(5)前記溶液を濾過し、3kDa(3000ダルトン)未満のヘパリンオリゴ糖を収集、濃縮し、(6)3kDA未満の脱重合したヘパリンを含む濾過溶液を塩基性に変化させ、(7)この塩基化した溶液を水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)で処理し、ヘパリンの酸性化および脱重合後に形成されたアルデヒドカルボニルを還元して、アルコールにし、(8)還元した生成物を濃酸で処理し、次に、pHを約7に調節し、(9)サイズ排除クロマトグラフィーを利用して、得られた還元オリゴマーをさらに分画して、二糖アンモニウム塩を得て、その二糖アンモニウム塩を陽イオン交換樹脂でさらに処理してナトリウム塩を形成し、そのナトリウム塩をさらに分画して、主成分として、式中のR1がHであり、R2がHであり、R3がSO3−であり、R4がSO3−であり、R5がHであり、R6がHであり、カルボキシ基(CO2H)がCO2−Na+である化学式Iの化合物がナトリウム塩の形態として得られると共に、主成分として、式中のR1がHであり、R2がHであり、R3がSO3−であり、R4がSO3−であり、R5がSO3−であり、R6がHであり、カルボキシ基(CO2H)がCO2−Na+である化学式Iの化合物が得られ、(10)その結果得られた二糖を適切な条件下で硫酸塩源(例えば、(CH3)3NSO3)で処理し、本発明の製剤で用いる高硫酸化二糖を形成する。硫化剤としては、SO3ピリジン、SO3トリメチルアミン、SO3ジオキサンおよびSO3ジメチルホルムアミド等のSO3錯体をさらに挙げることができ、加えて、クロロスルホン酸、クロロスルホン酸と硫酸との混合物およびピペリジンN硫酸塩を挙げてよい。反応は、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドまたは類似の溶媒等の適切な極性溶媒中で行う。反応温度は、約20℃〜約70℃の範囲の室温から高温まで様々であることができる。
【0029】
本明細書に限定することなく、ヘパリンおよび他の炭水化物または複合炭水化物は、ヒドロキシル基ならびに硫酸基またはカルボン酸基が規定の立体化学または絶対立体化学の環上に存在するキラル分子であることが分かる。ヘパリン中の最も一般的な二糖単位は、例えば、2−O−硫酸化イズロン酸および6−O−硫酸化グルコースアミンであるIdoA(2S)GlcNS(6S)である。
【化16】
【0030】
一般には、本発明の製剤で用いられる少糖類および二糖を生成する多糖源は、概して、炭水化物環の周囲にキラル中心の絶対立体化学を定めることが分かる。追加の硫酸基は、上に概要を記載したプロセスによる化学手段により、または、いずれかの既知の手段により付加され、最活性部分(高硫酸化二糖およびそれらの塩)が得られる。この最活性部分をさらに精製して、医薬品グレードの二糖が形成される。この二糖を添加剤とさらに調合し、哺乳類または他の生物へ、その治療の必要性に応じて投与するのに適した剤形に加工する。
【0031】
核磁気共鳴造影法および/または他の既知の構造識別法を利用して、ヘパリン(いずれかの既知のヘパリン源由来)または他の所定の多糖の脱重合から得られた分子の化学構造を決定し得る。本化合物を合成または半合成で作製する場合、当業者は、標準の有機化学技術を用いて、所望のヒドロキシ部分を当業者に既知の保護基で保護することができる。
【0032】
次に、上記のような化学式Iの化合物(またはその混合物)を添加剤(送達剤)と調合して、本発明の製剤を形成する。この添加剤は、いずれかの天然または合成ポリマーから成る群から選択され(後で詳述する)、本明細書に記載されている疾患または状態のうちのいずれか1つに対する治療の必要性に応じて、患者または動物への活性成分の送達を増強する。用語「送達を増強する」は、添加剤を用いずに投与される活性成分の送達に対する活性成分または活性医薬物質(ADS)の送達の量的および質的測定値(例えば、ADS+対ADS−)が向上することを意味する。このような測定値としては、本明細書にある図に示されているような気道応答または気道抵抗が挙げられるが、これらに限定されない。用語「製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマー」は、ポリマーが、投与される剤形で、ヒトを含む動物に投与される際に安全であることを意味する。添加剤またはポリマーは好ましくは、カルボポール934P等のカルボマーから選択されたポリマーの多くの化学的/物理的/生物学的特性のうちの少なくとも1つの共通のまたは共有の化学的および/または物理的および/または生物学的特性を有する。ポリマーの少なくとも1つの「共有の特性」は好ましくは、イオン化可能である側鎖または基を有することである。そのような基としては例えば、カルボン酸基、または、硫酸塩またはリン酸塩前駆体等の他のイオン化可能な部分(例えば、C−OH基が、−SO3HまたはPO3H側鎖または変異体で置換されたもの)が挙げられる。ポリマー中のカルボン酸基、または、他のイオン化可能もしくは中性化可能な基の乾燥重量での相対百分率は、好ましくは40〜80%である。他の共有の特性としては、親水性および/または膨潤性および/またはゲル化性および/または粘性(すなわち、水粘性[mPa s])が挙げられるが、これらに限定されない。カルボポール934Pは、0.5%重量/体積溶液での水粘性が29,400〜39,400mPa sである。共有の特性は、化学的、物理的または生物学的なものであり得る。共有の生物学特性としては例えば、カルボポールポリマーが、例えば、十二指腸組織または他の表皮組織を通じて経細胞手段または傍細胞手段により、細胞膜または組織を横切る送達特性を共有することが挙げられる。本発明の添加剤またはポリマーは、カルボマーと1つ超の共有の特性を有し得る。活性成分に対する製剤中の添加剤または作用剤の百分率は、重量/重量パーセントベースで約0.1%〜約80%またはそれ以上の範囲であり得る。添加剤の活性成分に対する好ましい重量比は、1:1またはそれ以上(例えば、1:1、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1等)である。
【0033】
製薬学的に許容可能なポリマーは、アルギン酸塩もしくは混合物、または、水溶性または不可溶性であり得る、アルギン酸およびアルギン酸の錯体塩等の天然ポリマーから選択され得る。天然アルギン酸およびそれらの錯体は一般に、例えば米国特許第4,842,866号に記載されている。アルギン酸ガム若しくは天然ポリマー、または、アルギン酸ガムに類似のガム(例えば、カラギーナンガム、キタンガム、トラガカントガム、ローカストビーンガム、グアーガム、又は、植物、微生物若しくは他の天然源に由来し、製薬学的に許容可能ないずれかの他の複合ポリマー)を本発明の製剤で用いてよい。
【0034】
製薬学的に許容可能な合成ポリマーは、疎水性ポリマーまたは親水性ポリマーから選択できる。該ポリマーは水溶性、わずかに水溶性または非水溶性とすることができる。水溶性の親水性ポリマーは、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、酢酸ビニル/クロトン酸のコポリマー、メタクリル酸のポリマーおよびコポリマー、無水マレイン酸/メチルビニルエーテルのコポリマーおよび誘導体、ならびにこれらの混合物から成る群から選択してよい。該ポリマーは、粘度が約50 cps〜約200 cpsの低粘度ポリマーとすることができ、Dow Chemical Company製のMethocelTM K100 LVや類似のポリマー等、市販のポリマーを挙げることができる。水溶性親水性ポリマーも、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウムまたはその他の類似の陰イオン性水溶性ポリマーから選択してよい。これらのポリマーとしては、ポリヒドロキシアルキルメタクリレート、陰イオン性または陽イオン性ヒドロゲル、ポリビニルアルコールまたは高分子量ポリエチレンオキシド、例えば、4,837,111を含め、様々な特許に記載されているポリマー等を挙げることができる。
【0035】
また、製薬学的に許容可能な合成ポリマーは、親水性の非水溶性ポリマーから選択してもよい。これらは水を容易に吸収し、含水し、および/または膨張することのできるポリマーである。これらのポリマーは、カルボキシビニルポリマー等の種々のカルボポールホモポリマーポリマーを含むカルボマー、およびカルボキシポリメチレンまたはポリアクリル酸コポリマーから選択することができる。好ましいポリマーは、ポリアルケニルエーテルまたはジビニルグリコールと架橋したアクリル酸のカルボポールポリマーである。これらのポリマーは膨張し、様々な条件下でゲルを形成することもできる。好ましいカルボポールポリマーとしては、カルボポール934P NF、カルボポール974P NF、カルボポール971P NF、およびカルボポール71Gが挙げられる。該製剤で用いるのに適したその他のイオン性ポリマーとしては、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはメタクリル酸、アクリル酸エチルエステルコポリマーが挙げられる。カルボポールポリマーは経口懸濁剤で使用されるが、乾燥製剤、例えば、二糖、カルボポールポリマー、およびラクトース等の充填剤を含有するか、それらから成るカプセルという形でも使用される。したがって、本発明は、上述の式IまたはIIの化合物と、水と接触すると膨張するか、イオン化するか、または中和することができ、作用部位への活性成分の送達または輸送を容易にする化学基を有するポリマーから選択される添加剤とを含む経口懸濁剤またはカプセルまたはその他の固体剤形にも関する。カプセルまたは錠剤は、さらに賦形剤または腸溶ポリマーを含むポリマーでコーティングすることもできる。コーティング材料は、例えば、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリエート、ヒロドキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸およびアクリル酸エチルのコポリマー(例えば、Eudragit L30D)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、またはポリビニルアセテートフタレート等の腸溶性コーティングから選択してよい。好ましいコーティングは、胃の酸性環境においては安定性が高いが、小腸の比較的塩基性環境では分解する。
【0036】
疎水性のポリマーまたは添加剤は、例えば、エチルセルロース、メタクリル酸エステルの重合体、セルロースアセテートブチレート、ポリ(エチレンコビニルアセテート)、ヒドロキシエチルセルロース、およびEudragitポリマーから選択されるメタクリル酸のポリマーから選択してよい。追加の疎水性添加剤は、蝋または脂肪酸エステルから選択してもよい。これらの疎水性ポリマーは膨張するか、または追加のポリマーを含有し、水または「ゲル」にさらされると、膨張またはイオン化するブレンドまたは混合物を形成することが好ましい。高硫酸化二糖の送達を増強する追加の「作用剤」としては、以下に限定されないが、ポリ陰イオン塩(グルタミン酸またはアスパラギン酸のポリ陰イオン塩等);ヒアルロン酸等のグリコサミノグリカン;変性アミノ酸;変性アミノ酸誘導体;アルカリ膨張性レオロジー変性剤;ポリオキシエチレングリコール;脂肪酸エステル;キトサン(米国特許第7,291,598号に記述されている高および低分子量版ならびにポリグルタミン酸およびそのナノ粒子;単独ならびに界面活性剤および任意の溶解補助剤と組み合せた胆汁酸塩およびその酸;リン脂質多価陽イオン;ホスフォリパーゼC阻害剤;単ラメラ小胞;硫酸化キチン質ポリマー;イミノジ酢酸、ニトリロ酢酸、エチレンジアミノモノ酢酸、エチレンジアミノジ酢酸、エチレンジアミノテトラ酢酸、タウロジヒドロ−フシジン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、コリルサルコシン、ミリスチン酸イソプロピル、部分的に加水分解されたトリグリセリド、脂肪酸糖誘導体およびオレイン酸誘導体から選択される透過処理用試薬;ならびにポリ(ラクチドコグリコリド)等の生分解可能ポリマーが挙げられる。かかる作用剤は、米国特許第5,498,410号、同第5,827,512号、同第5,908,637号、同第5,990,096号、同第6,458,383号、同第6,461,643号、同第6,635,702号、同第6,855,332号、同第7,291,598号、同第7,329,638号、米国特許出願公開第20010024658号、同第20020037316号、同第20020115641号、同第20030180348号、同第20040038870号、同第20040086550号、同第20040096504号、同第20070287683号、および同第20090082321号といった刊行物または特許に開示されており、これらの文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。これらの作用剤は、既に記述された天然または合成ポリマーの代わりまたは追加として添加することができる。
【0037】
本発明の製剤は、任意の適切な既知の手段により患者またはその他の生物に送達することができる。活性成分およびその他の賦形剤に対する、製剤に添加される添加剤の比率および添加剤の種類は、所望されている製剤の種類に依存する。例えば、その治療を必要とする患者または生物に送達する経口懸濁剤の製剤では、ビヒクルは経口液または経口カプセルとすることができる。好ましい製剤は経口カプセルである。
【0038】
本発明の組成物は、製薬学的に許容可能な賦形剤および/または充填剤と、増量剤、例えばラクトースまたは以下に制限されないが、グルコース、スクロース、マニトール等を含むその他の糖等と、潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸カルシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびこれらの混合物等をさらに含む。充填剤または潤滑剤またはその他の既知の製薬学的に許容可能な添加剤の量は、製剤の種類および製剤を加工または製造する方法によって異なる。
【0039】
本発明の組成物は錠剤、カプセルまたは懸濁剤の形態で経口的に送達または投与することができる。錠剤またはカプセルは、当該技術分野で既知の手段により調製することができ、例えば、ポリマー添加剤を含め、列挙した送達剤に加えて、治療に有効な量の本発明の式IまたはIIの高硫酸化二糖を含むことができる。錠剤および丸薬またはその他の適切な製剤は、腸溶コーティングおよびその他の放出制御コーティングを使って調製することができる。軽度の保護性または嚥下性を提供する目的で、コーティングを施すことができる。カプセルおよび錠剤または懸濁剤は、薬の味を改善する添加剤を含むことができる。
【0040】
経口投与用の液体剤形は、式Iの化合物およびその塩、ならびに製薬学的に許容可能なポリマーから選択される添加剤に加えて、水等の不活性な希釈剤を含む製薬学的に許容可能な乳化剤、溶剤、懸濁剤、シロップおよびエリキシル剤を含むことができる。このような製剤は、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、甘味剤、風味剤および芳香剤を含む補助剤をさらに含有してもよい。
【0041】
式IおよびIIの化合物は、上述のように、製薬学的に許容可能な塩を形成する。金属塩としては、例えば、Na、K、Ca、NgもしくはBa、またはAl、Zn、Cu、Zr、Ti、Bi、MnもしくはOsを有する塩、あるいは、式IまたはIIの化合物をアミノ酸等の有機塩基または任意のアミンと反応させることにより形成される塩が挙げられる。好ましい塩はナトリウム塩である。
【0042】
したがって、本発明の好ましい製剤には、表1に示す化合物が含まれ、それは高硫酸化二糖ナトリウムであり、例えば、カーボポール934P等のイオン性、膨潤性、親水性、かつ不溶性のポリマーから選択される添加剤から選択される送達剤をさらに含む。好ましい製剤は、カプセルまたは経口懸濁剤の形態で投与される。
【0043】
これらの製剤は、数多くの炎症性疾患および炎症状態の治療に有用である。本明細書で考慮される呼吸器の疾患および状態の種類としては、季節的または通年性のくしゃみ、鼻漏、鼻詰まり、ならびにしばしば結膜炎および咽頭炎を特徴とするアレルギー性鼻炎;鼻粘膜の浮腫、鼻汁および粘膜を特徴とする急性鼻炎が挙げられる。内因性または外因性の気管支喘息等の肺疾患、任意の炎症性肺疾患、急性/慢性気管支炎、慢性気管支炎に続発する肺の炎症反応、慢性閉塞性肺疾患、肺繊維症、グッドパスチャー症候群、ならびに特発性肺線維症およびその他の任意の自己免疫性肺障害も含め、白血球が役割を果たす可能性のある肺の疾患または状態は、本発明の製剤を使って治療可能である。
【0044】
耳、鼻および喉の障害、例えば急性外耳炎、フルンケル症および外耳の耳真菌症は、本発明の製剤によって治療可能である。その他の状態としては、外傷性および感染性の鼓膜炎、急性耳管炎、急性漿液性中耳炎ならびに急性および慢性副鼻腔炎等の呼吸器疾患が挙げられる。
【0045】
本発明の製剤は、肺の炎症の治療に有用である。用語「肺の炎症」には、任意の炎症性肺疾患、急性/慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、肺繊維症、グッドパスチャー症候群、ならびに以下に限定されないが、特発性肺線維症およびその他の任意の自己免疫性肺疾患も含めて、白血球が役割を果たしている可能性のある任意の肺の状態が含まれる。
【0046】
本発明の製剤は、喘息および喘息に関連する病態の治療に有用である。用語「喘息」は、アレルギーに起因し、喘鳴、胸部狭窄感、および多くの場合、咳またはあえぎを伴う継続的または発作性の呼吸困難を含む症状を有する状態を意味する。用語「喘息に関連する病態」は、気管支痙攣を伴う、主に炎症性の症状を有する状態を意味する。喘息および喘息に関連する病態はいずれも、程度は異なるが、平滑筋の収縮(けいれん)、粘膜の浮腫ならびに気管支および細気管支の内腔の粘液を原因とする、突発的にまたは治療の結果、短期間に渡って変化する気道の狭窄を含む症状を特徴とする。一般に、これらの症状は、アレルギー反応の過程でけいれん原物質および血管収縮物質(例えば、ヒスタミンまたは特定のロイコトリエンもしくはプロスタグランジン)が局所的に放出されることによって引き起こされる。喘息に関連する病態の非限定例としては、気道過敏性(例えば、慢性気管支炎、肺気腫および嚢胞性線維症)を特徴とする喘息以外の状態も含む。喘息の最も顕著な特徴は、気管支痙攣、すなわち気道の狭窄であり、喘息患者は中枢気道と末梢気道の平滑筋が顕著に収縮し、粘膜の産生が増加し、炎症が増加する。喘息における炎症反応は、粘膜で覆われた組織に典型的であり、血管拡張、血漿滲出、好中球、単球、マクロファージ、リンパ球および好酸球等の炎症細胞の炎症部位への動員ならびに常在組織細胞(マスト細胞)または移動炎症細胞による炎症性メディエーターの放出を特徴とする(J.C.Hogg,”Pathlogy of Asthma,”Asthma and Inflammatory Disease,P.O’Byren(ed.),Marcel Dekker, Inc.,New York,NY 1990,pp.1〜13)。
【0047】
喘息は、アレルゲンに対する反応、感染体への二次的暴露、工業性または職業性暴露、化学物質の摂取、運動および/または血管炎等の複数または種々の原因によって引き起こされる可能性がある(Hargreave et al.,
J.Allergy Clinical Immunnol.83:1013〜1026,1986)。本明細書で論じられている通り、アレルギー喘息の発作には2期ある可能性がある。初期と気管支刺激から4〜6時間後に起こる晩期である(Harrison’s Principles of Internal Medicine 14th Edl,Fauci et al.(eds),McGraw Hill,New York,NY 1998, pp.1419〜1426)。通常、突発的に消散する初期には、マスト細胞からの細胞メディエータの放出によって引き起こされる反応を含め、即時の炎症反応が含まれる。晩期反応は数時間の期間に渡って発現し、多形核白血球および繊維素析出の初期の出現に続く好酸球の湿潤により組織学的に特徴づけられる。特定の比率の患者は、「二重レスポンダー」であり、初期の急性反応と晩期の反応が発現する。二重レスポンダーにおいては、急性期の4〜14時間後に、気道抵抗が二次的に増加する(「晩期反応」またはLPRもしくは「晩期気道反応」またはLAR)。晩期反応は、気道の炎症と相まって、長期の気道過敏性(AHR)、喘息憎悪または過敏性、症状の悪化、および一般には、被験者によっては数日間から数ヶ月も続く可能性のある、より深刻な形態の臨床喘息に通じ、積極的治療を要するため、晩期レスポンダーおよび二重レスポンダーは、特に臨床的に重要である。アレルギー動物における薬理学的研究では、気管支収縮反応だけでなく、炎症細胞出現およびメディエータ放出パターンも、二重レスポンダーでは、急性レスポンダーとは相当異なることが実証されている。
【0048】
気道過敏性(AHR)の増大は、より深刻な形態の喘息の特徴であり、抗原刺激および非抗原刺激のどちらによっても誘発され得る。最終段階の反応、アレルゲン誘導性の喘息および永続的な反応亢進は、炎症を起こした肺組織への白血球、特に好酸球の動員と結び付けられてきた(W.M. Abraham et al.,Am.Rev.Respir.Dis.138:1565〜1567,1988)。好酸球は、15−HETE、ロイコトリエンC4、PAF、陽イオンタンパク質および好酸球ペルオキシダーゼを含むいくつかの炎症性メディエーターを放出する。
【0049】
さらに、本発明の製剤は、肺外部位における晩期反応および炎症反応、例えば、アレルギー性皮膚炎、炎症性腸疾患、リウマチ性関節炎およびその他の膠原病性脈管疾患、糸球体腎炎、炎症性皮膚疾患および状態、ならびにサルコイドーシスの治療にも有用である。
【0050】
本明細書で使用する場合、用語「症状の治療または緩和」は、本発明の製剤を投与した個人の症状を、治療を受けていない同じ個人またはとある個人の症状と比較して、軽減、予防および/または逆行させることを意味する。したがって、喘息または喘息に関連する病態の症状を治療または緩和する本発明の製剤は、二重レスポンダーである個人において抗原チャレンジに対する早期喘息反応を軽減、予防および/または逆行させ、より好ましくは、二重レスポンダーである個人において抗原チャレンジに対する晩期喘息反応を軽減、予防および/または逆行させ、さらに好ましくは、二重レスポンダーである個人において抗原チャレンジに対する早期および晩期の両方の喘息反応を軽減、予防および/または逆行させる。この「治療」または「緩和」は、記載されている製剤に関して本明細書で提示されている動物モデルで示されているように、LARおよびAHRのデータに関して、有意な比率であることが好ましい。
【0051】
用語「抗原」と「アレルゲン」は、アレルギー反応の誘発および/または喘息のエピソードもしくは喘息症状の誘発を、そのような状態を罹患している個人において起こし得る粉塵または花粉等の物質を記述するために同義的に用いる。したがって、個人に喘息反応を引き起こすのに十分な量、アレルゲンまたは抗原が存在しているとき、その個人は「チャレンジ」を受けている。
【0052】
本発明の製剤は、晩期反応(LPR)により影響を受ける任意の疾患または状態の治療に有用であることも分かる。気道はこのようなLPRによって影響を受ける器官または組織の単なるプロトタイプである。医学文献では、二重レスポンダーの喘息患者において観察される最終期の気管支収縮およびAHRは、喘息患者またはさらには肺疾患の患者に限られた独立した現象ではないことが確立されている。したがって、本発明の製剤は、肺に関係するLPRに加えて、皮膚、鼻、目および全身のLPRの兆候を含め、LPRにより影響を受けるあらゆる疾患または状態の治療に有用である。アレルギー機構が関与すると認識されている臨床疾患(皮膚、肺、鼻、目またはその他の器官のいずれでかに関わらない)には、抗原チャレンジを受けると発生する即時のアレルギー反応または過敏性反応に続く組織学的炎症性要素が存在する。この反応シーケンスは、マスト細胞メディエータに関係し、ターゲット器官内にあるその他の常在細胞によって、またはマスト細胞もしくは好塩基球の脱顆粒の部位に動員された細胞によって伝播するように見える。したがって、本製剤は、炎症性腸疾患、リウマチ性関節炎、糸球体腎炎および炎症性皮膚疾患の治療に有用である。したがって、本発明は、例として以下に制限されないが、肺、鼻、皮膚、目および全身のLPRが挙げられる晩期アレルギー反応によって特徴づけられ、ならびに/または炎症反応によって特徴づけられる疾患または状態を罹患しており、その治療を必要とする患者または生物に、式IまたはIIの化合物と、例えばポリマー添加剤等の送達剤とを含有する製剤を任意の既知の手段によって投与することを通じて、前記患者または生物を治療する方法に関する。
【0053】
用語「炎症状態」は、喘息および/または喘息に関連する病態等の肺炎症、肺炎、結核、リウマチ性関節炎、肺系統に影響を及ぼすアレルギー反応、喘息および喘息に関連する病態における早期および晩期の反応、肺の抹消気道および中枢気道の疾患、気管支痙攣、炎症、粘膜の増産、血管拡張、血漿滲出、好中球、単球、マクロファージ、リンパ球および好酸球等の炎症細胞の動員ならびに/または常在組織細胞(マスト細胞)による炎症性メディエータの放出を伴う状態、アレルゲン、感染に対する二次応答、産業暴露または職業暴露、特定の化学物質または食物の摂取、薬剤、運動または血管炎により引き起こされる状態または症状、急性気道炎症、長期の気道過敏性、気管支過敏性の増加、喘息憎悪、過敏性を伴う状態または症状、15−HETE、ロイコトリエンC4、PAF、陽イオンタンパク質または好酸球ペルオキシダーゼ等の炎症性メディエータの放出を伴う状態または症状、皮膚、鼻、目または全身の晩期アレルギー反応の兆候に関係する状態または症状、抗原チャレンジを受けた時に組織学的炎症要素を有するアレルギー機構が関与する、皮膚、肺、鼻、目もしくは喉またはその他の器官の臨床疾患、アレルギー性鼻炎、季節性または通年のくしゃみによって特徴づけられる呼吸器疾患、鼻漏、結膜炎、咽頭炎、内因性または外因性気管支喘息、任意の炎症性肺疾患、急性/慢性気管支炎、急性/慢性気管支炎に続発する肺の炎症反応、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺繊維症、グッドパスチャー症候群、以下に限られないが、特発性肺線維症およびその他の任意の自己免疫性肺疾患を含め、白血球が役割を果たす任意の肺の状態、急性外耳炎、フルンケル症および外耳の耳真菌症等の耳、鼻および喉の障害、外傷性および感染性鼓膜炎、急性耳管炎、急性漿液性中耳炎、急性および慢性副鼻腔炎等の呼吸器疾患、任意の晩期反応およびアレルギー性鼻炎等の炎症応答から選択される肺外状態、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、炎症が発生し、および/または炎症性腸疾患を含め、炎症反応が大きな役割を果たす外肺疾患、リウマチ性関節炎およびその他の膠原病性脈管疾患、糸球体腎炎、炎症性皮膚疾患およびサルコイドーシス、ならびに以下に記す心血管炎症から成る群より選択される疾患、状態または症状を意味する。
【0054】
本発明の製剤は、心臓血管系疾患に伴う炎症状態の治療に用いることも可能である。グルココルチコイドステロイドおよびシクロホスフォミド等の従来の抗炎症薬には重大な副作用が伴うことが知られているため、これらはアテローム硬化性の炎症の治療には不適切な選択肢になっている。他方、本発明のポリ硫酸化二糖製剤には、抗炎症性に加えて、副作用がほとんどないという利点がある。動脈硬化病変は、特定の場所に蓄積して、病変を引き起こし、および/または悪化させるマクロファージ、リンパ球および樹状細胞の存在を含め、慢性的炎症に伴う多くの性質に起因するかまたはそれらの性質を有することが明白に主張されている(L.K.Curtiss,N.Engl.J.Med.360;11 1144〜1146(2009))。したがって、本発明の製剤は、動脈硬化性疾患または状態を有する患者において、かかる障害の治療に有用であり、さらに、侵襲的血管手術後または臓器移植後の再狭窄の治療または予防にも有用である。心臓血管疾患の治療に適切な製剤は、内服投与または非経口投与も含めて、任意の既知の手段によって投与することができる。本発明は、心血管炎症の治療の方法であって、その治療を必要とする患者へ、R1〜R6が本明細書の定義に従う式Iの化合物およびその製薬学的に許容可能なその塩、ならびに送達剤を含有する組成物を投与することを含む方法を含む。本発明はさらに、本明細書の定義に従うR1〜R6を有する式Iの化合物と、HMGCoA還元酵素阻害剤または心臓血管系疾患の治療に使われるその他の心臓血管系薬(1種または複数)から選択される心臓血管系薬との組合せを含む。「組合せ」は、一方の活性成分が本発明の高硫酸化二糖であり、他方の活性成分がロバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチンまたはロサバスタチンカルシウム等のHMGCoA還元酵素阻害剤から選択される、少なくとも2つの活性成分を有する単一の剤形の形態とすることができる。好ましい実施形態では、組合せは、送達剤およびHMGCoA還元酵素阻害剤から選択されるもう第2の活性成分と共に、本明細書の定義に従うR1〜R6を有する式IまたはIIの化合物を含有する本発明の製剤を含む。
【0055】
本発明の製剤は、ヒトおよび他の動物での有用性を予測する動物実験で効果があることが明らかになっている。動物実験は、本発明の製剤が(a)抗原によって誘発される気管支収縮反応および気管支過敏性(気道過敏性(AHR)とも呼ばれる)の予防、ならびに(b)治療動物における抗原チャレンジに続くAHRの改善に有用であることを示している。肺の気流抵抗は、Ascaris Suum抗原に対して気管支収縮二重レスポンダーであることが事前に確認されているアレルギー性ヒツジを使って測定した。このヒツジに、カフ付き経鼻気管チューブを挿管し、肺の気流抵抗(RL)を食道バルーンカテーテル技法によって測定し、胸部ガス容積を体幹プレチスモグラフィーによって測定した。データをRLの比数(SRL=RL×胸部ガス容積(Vtg))として表した。気道応答性は、緩衝食塩水の吸入の前後およびカルバコールの濃度を上げた10呼吸の投与(0.25、0.5、1.0、2.0および4.0% wt/vol溶液)の各々の後にSRLを測定することにより、吸入カルバコール(収縮作用薬)に対する積算投与量反応曲線をまず求めることにより決定した。気道応答性は、SRLを基線を超えて400%に上昇させたカルバコール(呼吸単位)の積算誘発投与量(PD400)を決定することにより測定した。1呼吸単位は、1%カルバコール溶液の1呼吸として定義した。
【0056】
適宜、規定された投与方法に従って、本発明の製剤は、生物または患者が抗原に暴露される前、暴露された時点または暴露された後に、治療の対象とする特定の疾患または状態に関係して投与することができる。活性成分(式Iの高硫酸化二糖)の投与量は、1日当たり1mg未満〜1,000mgの範囲であってよい。適切な投与量も、治療対象の生物1匹に対し、1日当たり0.001mg/kg〜100mg/kgまたは100mg/kg超の範囲であってよい。好ましい投与量の範囲は、1日当たり0.1mg/kg〜1mg/kgである。当業者であれば、本明細書で言及されている疾患または状態の治療のために、患者ごとまたは患者グループごとに投与量を変更することができる。カプセル、錠剤または懸濁剤は、1日に1回または2回の投与に合わせて、活性成分を5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、100mgおよび200mg含む投与量で調製することができる。カプセルまたは錠剤または経口懸濁剤はさらに、本明細書で記述された活性薬の送達を増強するポリマー(天然または合成)またはその他/追加の作用剤から選択される添加剤等の送達剤を少なくとも0.1パーセント(wt/wt単位で)含む。
【0057】
本発明の製剤は、単独もしくは他の適切な薬物または活性成分と組み合せて、治療の対象とする特定の疾患または状態に応じて投与することができる。好ましい実施形態では、本発明の製剤または化合物は朝または夕方に投与する。したがって、本発明は、抗原曝露に関係し、早期および晩期反応を伴う疾患または状態の治療方法であって、本明細書での定義に従うR1〜R6を有する式IまたはIIの化合物(すなわち、硫酸基を少なくとも2個有する)と送達増強剤とを治療に有効な量、それを必要とする生物に投与することを含み、その製剤を朝または夕方に投与する方法を含む。本発明はさらに、抗原暴露に関係し、早期および晩期反応を伴う疾患または状態の治療方法であって、製剤を形成するための本明細書での定義に従うR1〜R6を有する式IまたはIIの化合物と、天然もしくは合成ポリマーまたはその他/追加の送達増強剤とを治療に有効な量、それを必要とする生物に投与することを含み、前記製剤を朝または夕方に生物に投与する方法を含む。追加の活性成分は、併用療法の形式または少なくとも2つの活性成分を有する単回投与単位の形式で投与することができ、第1の活性成分は、本明細書での定義に従うR1〜R6を有する式IまたはIIの化合物であり、第2の活性成分は、喘息もしくは喘息に関連する障害もしくは状態、または本明細書に列挙されたその他の炎症状態の治療のために最先端治療として使われるいずれかの薬または薬物から選択される。そのような薬物としては、抗炎症剤、ロイコトリエン拮抗薬または修飾剤、抗コリン作用薬、マスト細胞安定剤、コルチコステロイド、免疫刺激剤、ベータアドレナリン作動薬(短期作用および長期作用)、メチルキサンチン、および以下に制限されないが、モンテルカストナトリウム、アルブテロール、レバルブテロール、サルメテロール、ホルモテロール、プロピオン酸フルチカゾン、ブデソニド、セチリジン、ロラタジン、デスロラタジン、テオフィリン、イプラトロピウム、クロモリン、ネドクロミル、ベクロメタゾン、フルニソリド、モメタゾン、トリアミシノロン、プレドニゾリン、プレドニゾン、ザフィルルカスト、ジレウトンまたはオマルジウナブ(omalziunab)を含む、上記のような障害の治療に使用されるその他の一般クラスまたは特定の薬品が挙げられる。
【0058】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態をさらに詳しく説明することを目的としており、非制限的である。
【0059】
実施例1 高硫酸化二糖の調製
最初にヘパリンナトリウムを脱重合化することによって、本発明の製剤で用いる化合物を調製した。活性薬物物質の調製のための出発物質は、例えば、ブタ腸粘膜ヘパリン(1〜4個の連結したグルコサミンおよびウロン酸残基から成る多分散硫酸化コポリマー)である。本明細書で記述されている活性薬物物質(ADS)、高硫酸化二糖は、ヒツジモデルで抗アレルギー活性を有することが示された。ADSの生成は一般に、以下の手順であった。
1)ブタヘパリンを制御下で亜硝酸脱重合化
2)NaBH4を持つ末端アルデヒド基をアルコールに還元
3)サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)によって、分離した二糖のアンモニウム塩を生成
4)二糖アンモニウム塩を三酸化硫黄ピリジン錯体と反応させ、高硫酸化二糖を生成
5)SECに続いてナトリウム塩への陽イオン交換を行い、最終生成物を得る
この方法で生成される好ましい生成物は、以下に示すナトリウム塩形態の硫酸基を6個有する高硫酸化二糖(化合物14a)であった。
【化17】
化合物14aの溶解度は>0.5g/mLである。以下の手順において、本明細書に記述される化合物を製造するための数多くの可能な方法の1つを説明する。室温で、水3リットルを入れたビーカーに、市販のブタヘパリン−Na(例えば、Wisconsin州WaunakeeのSPL等の市販の供給源から入手)250gを加え、攪拌してスラリーにし、その時点でさらに水2リットルを加え、ヘパリン塩を完全に溶解した。
【0060】
次にヘパリン溶液のpHをおよそpH6(5.98)に調節した。この溶液に、NaNO2(0.25mmol、J.T.Baker、ACSグレード)を17.25g添加し、ヘパリンの制御した亜硝酸脱重合化を達成した。攪拌を10分間続け、その間に約23℃の温度で、37%HClを約35.1mlゆっくりと加え、pHをおよそ3(3.00)にした。溶液の温度およびpHを2時間(120分)モニタリングし、その間に温度は20℃に、pHは2.16に低下した。次に50%NaOHを約23mlゆっくりと加えて、pHを6.75に調節し、溶液をクエンチし、脱重合化したヘパリン溶液を得た。
【0061】
上記で得た脱重合化したヘパリン溶液をdtH2Oを使って最終容積8リットルに希釈し、濾過し(Millipore社(Mass.、Bedoford)、Pellicon 2、面積が0.5m2の3k PLBC−C(カセット:Cat#PS PLBCC 05)、(分子量3kDaでカットオフ)、サイズが3kDa(3000ダルトン)に満たないヘパリンオリゴ糖を採取し、濃縮した(すなわち、透過液は3000ダルトンに満たないこれらのオリゴ糖から構成されていた)。3000ダルトンより大きい濃縮物を、20M溶液を使って、亜硝酸の脱重合化処理に再びかけ、さらにヘパリンの分解を開始した。同じ種類のフィルター(分子量3000ダルトンでカットオフ)を使って、この2回処理したオリゴ糖調製物を限外濾過した後、得られた透過液(分子量3kDa未満)を初回の限外濾過から得た透過液に加え、続いて、バッチ全体を逆浸透圧法で濃縮し、最終容積を2.5リットルに減少させた。続いて、これを凍結乾燥した。
【0062】
凍結乾燥したオリゴ糖調製物(50g)を1リットルの純水に溶解した後、2〜10℃の氷浴で冷却した。冷却したオリゴ糖溶液にNaHCO3(21g)を添加し、完全に溶解するまで調製物を攪拌した。0.01MのNaOH溶液400mL中の0.5Mの水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)溶液を調製し、60分かけて、冷却したオリゴ糖/NaHCO3溶液にゆっくりと添加した。NaBH4溶液0.5Mの処理は、5員環上に形成されたアルデヒド(脱アミノ反応後に形成される)をアルコール成分に還元することが目的だった。この反応調製物を3時間、2〜10℃で攪拌した後、濃HClでクエンチし、pH4.0にした。その後、溶液のpHをNaOHを使って、6.75に調節し、最終的に逆浸透圧法で最小容量に濃縮し、その後、凍結乾燥して、還元オリゴ糖を得た。サイズが3kDa未満の還元オリゴ糖調製物を後にBio−Rad Biogel P6樹脂(0.2MのNH4HCO3による溶出)を使って、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)によって分画してオリゴミックス(oliogmix)を分画し、二糖アンモニウム塩を採取した。採取した画分をカルバゾールアッセイで分析し、Abs530対画分数のプロットにより、採取した画分のプロファイルを得た。プロファイル上の類似画分をプールし、後で凍結乾燥し、分離した画分をアンモニウム塩として得、NH4HCO3を除去した。Amberlite IR 120 Plus陽イオン交換樹脂(Sigma−Aldrich社から市販されている)を使った陽イオン交換によって、アンモニウム塩をナトリウム塩の形態に変えた。これらの画分から2つの二糖を得、化合物A(85重量%)およびB(3〜5重量%)と同定された。
化合物A:
【化18】
化合物B:
【化19】
【0063】
上記の化合物AおよびBを含有する画分をさらに処理し、高硫酸化二糖を形成した。2つの非制限的方法を利用した。方法1では、2.5グラムの二糖を含有する上記フラクションを50mLの水に溶解させた溶液を、Sigma−Aldrich社から市販されているDowex 500WX200酸性樹脂と、製造メーカーの指示に従って反応させることによって酸性化した。酸性の濾液をテトラブチルアンモニウムヒドロキシドを使って中和し、その溶液を凍結乾燥し、テトラブチルアンモニウム(Bu4N+)塩を綿状固体として得た。次にアルゴン下で、無水DMF(50mL)を二糖アンモニウム塩と(CH3)3NSO3(5.22グラム)との混合物に添加した。この反応混合物を50℃で48時間、加熱した。次にこの溶液を室温に冷却した。酢酸ナトリウムのエタノール飽和溶液100mlを添加し、この混合物を室温で20分間攪拌し、水2.5Lで希釈した後、500ダルトン(すなわち、0.5kDa)の膜で濾過した。濃縮物(すなわち、0.5kDaより大きい)を凍結乾燥し、NH4HCO3溶液0.2Mに再び懸濁し、製造メーカーの指示に従って、Bio−Rad Biogel P6樹脂(Bio−Rad社、Hercules、CA)でクロマトグラフィーにかけ、0.2MのNH4HCO3で溶出し、高硫酸化二糖のNH4+塩(3.5グラム)を得た。この塩の一部(2.4グラム)を、製造メーカーの指示に従って、Amberlite IR 120 Plus陽イオン交換樹脂(Sigma−Aldrich社から市販されている)と反応させ、Na+塩に変換し、表1に示されており、以下に化合物14aとして示されている化合物14のナトリウム塩を得た:
化合物14a:
【化20】
この化合物は、方法2によっても調製した。方法2では、化合物AとBを含有する画分0.5グラムと(CH3)3NSO33グラムとのアルゴン下、15mLのDMF中の混合物を48時間、60℃で加熱した。その後、この反応混合物を室温に冷却し、10%の酢酸ナトリウム水溶液20mLで希釈し、室温で20分間攪拌し、エタノール100mLを添加し、高真空下でこの反応混合物を濃縮し、固体残渣を得た。この残渣を500mLの水に溶解し、500ダルトンの膜で濾過した(H2Oで3回洗浄)。高硫酸化した14a生成物を含有するナトリウム塩濃縮物を凍結乾燥して、オフホワイトの固体を得た。
【0064】
実施例2 動物モデル(ヒツジ)の肺の評価
以下に限定されないが、本明細書に列挙された具体的な疾患および状態を含め、アレルゲンに関連する疾患および状態の治療および緩和に対する本発明による製剤の有効性を実証するために、添加ポリマーまたは添加剤を含有していない様々な製剤と、ポリマーから選択される添加剤と共に式Iの化合物(化合物14a)を含有する製剤を投与された動物とを比較する複数の実験で、ヒツジを評価した。肺の気流抵抗を測定するために、ヒツジにカフ付き経鼻気管チューブを挿管し、肺の気流抵抗(RL)を食道バルーンカテーテル技法によって測定し、胸部ガス容積を体幹プレチスモグラフィーによって測定した。これらの方法は一般に認められており、文献に書かれた周知の方法である。データはRLの比数(SRL=RL×胸部ガス容積(Vg))として表した。
【0065】
気道応答性を評価するために、緩衝食塩水の吸入の前後およびカルバコールの濃度を上げた10呼吸の投与(0.25、0.5、1.0、2.0および4.0% wt/vol溶液)の各々の後にSRLを測定することにより、吸入カルバコールに対する積算投与量反応曲線を描いた。気道応答性は、SRLを基線を超えて400%に上昇させたカルバコール(呼吸単位)の積算誘発投与量(PD400)を決定することにより測定した。1呼吸単位は1%カルバコール溶液の1呼吸として定義した。
【0066】
気道実験では、各動物の基線の気道応答性(PD400)を求めた後、実験日を変えて、試験ヒツジにAscaris suum抗原で気道チャレンジを与えた。SRLを測定して、基線を決定した後、抗原チャレンジの直後と8時間の期間、1時間に1回SRLを測定し、その後、抗原チャレンジの24時間後にチャレンジ後PD400を測定した。本明細書で提示されている図の各々では、図1A、2A、3A等は8時間の期間において1時間ごとに測定された2日目のデータを提示しており、対照データ(黒丸)と薬物治療データ(白丸)を含んでいる。薬物治療実験は、対照実験で使った動物と同じ動物で実施したが、実施したのは3日目のPD400測定の日から数週間後であった。図1B、2B、3B等には、1日目の基線PD400データと対照動物または薬物治療動物における抗原チャレンジ後の3日目のPD400データが含まれている。
【0067】
データは、(a)SRLの+/−SE変化率(%)の平均および(b)呼吸単位でのPD400として表したか、または表すことができる。データはまた、(c)早期気道応答(EAR、0〜4時間)および晩期気道応答(LAR、4〜8時間)の防護率(%)として表し、各々EARおよびLARの曲線下の面積で概算した。さらに、(d)AHR防護率(%)=100−基線PD400−薬物抗原PD400×100
基線PD400−対照抗原PD400
例として、図11Bでは、基線PD400−薬物抗原PD400は22−20.7であり、基線PD400−対照抗原PD400は24−12.3であった。1.3/11.7x100−10であり、AHRの防護率は100−10=90%である。
【0068】
図1A〜5Bに提示されている実験において、データは対照抗原応答実験についてと薬物治療応答実験について、SRLの変化率(%)および呼吸単位でのPD400を示している。薬物治療を施した動物には、ポリマー添加剤なしで、液状で経口投与した。図1Aは、経口投与量1mg/kgで化合物14a(MD1599−8)を投与した場合の対照と比較した動物のSRLの経時的な変化率(%)を示している。図1Aで分かるように、対照と薬物治療との間に、EAR(0〜4時間)には有意な効果はなかったが、薬物治療によって、抗原暴露後の期間におけるLAR(4〜8時間)には、ある程度ポジティブな効果があった(LAR防護率(%)=38%)。図1Bで分かるように、経口投与量1mg/kgでは、気道過敏性にもわずかなポジティブ効果があった(AHR防護率(%)=19%)。
【0069】
図2Aは、経口投与量2mg/kgで化合物14a(MD1599−8)を投与した場合の対照と比較した動物のSRLの経時的な変化率(%)を示している。図2Aで分かるように、対照と薬物治療との間に、EARにある程度の効果があったが、薬物治療によって、抗原暴露後のLARには、より有意なポジティブな効果が見られた(LAR防護率(%)=82%)。図2Bで分かるように、経口投与量2mg/kgでは、投与量1mg/kgに比べて、気道過敏性にもより有意な効果が見られた(AHR防護率(%)=85%)。
【0070】
図3Aは、12時間の間隔で2日間に渡り、経口投与量1mg/kgで化合物14a(MD1599−8)を投与した場合(1mg/kgの14aを3回投与)の対照と比較した動物のSRLの経時的な変化率(%)を示している。抗原チャレンジは1mg/kgを最後に投与した90分後に行った。図3Aで分かるように、対照と薬物治療との間において、EARには何の効果もなかったが、薬物治療によって、抗原暴露後のLARには、ある程度ポジティブな効果があった(LAR防護率(%)=48%)。図3Bで分かるように、経口投与量1mg/kgで、気道過敏性に顕著な効果があり(AHR防護率(%)=100%)、薬物治療からの累積効果を表している。
【0071】
図4Aは、3日間に渡り、朝にヒツジに経口投与量2mg/kgで化合物14a(MD1599−8)を投与した場合の対照と比較した動物のSRLの経時的な変化率(%)を示している。抗原チャレンジは2mg/kgを午前中に最後に投与した24時間後に行った。図4Aで分かるように、対照と薬物治療との間において、EARには何の効果もなかったが、薬物治療によって、LARには、有意なポジティブ効果が現れた(LAR防護率(%)=78%)。図4Bで分かるように、上記の要領で経口投与量2mg/kgを投与した場合、気道過敏性にポジティブな効果があった(AHR防護率(%)=100%)。
【0072】
図5Aは、抗原暴露前に3日間に渡り、夕方(午後)に経口投与量2mg/kgで化合物14a(MD1599−8)を投与した場合の対照と比較した動物のSRLの経時的な変化率(%)を示している。抗原チャレンジは2mg/kgを夕方に最後に投与した15時間後に行った。図5Aで分かるように、対照と薬物治療との間において、EARにはある程度の効果があり、薬物治療によって、抗原暴露後のLARには、有意な効果が現れた(LAR防護率(%)=75%)。図5Bで分かるように、経口投与量2mg/kgでは、気道過敏性にもポジティブな効果があった(AHR防護率(%)=75%)。
【0073】
図6A〜13Bは、薬物治療なしで抗原に暴露され、抗原と薬物製剤治療および/またはそれに関係する対照の動物におけるSRLの変化率(%)およびPD400を示している。ここでも、図のAとBは対になっており、最初の3日間と、その後、2回の治療期間の間に数週間を挟んだ第2の3日間に採取された対照データまたは薬物治療データが含まれている。薬物製剤のそれぞれには、腸溶コーティングしたカプセルで投与される所定の重量パーセントのポリマーとラクトースと共に、所定の投与量の化合物14aが含有されている。実験に使用したヒツジの体重は30〜40kgであった(平均体重35kg)。したがって、比較のために、1日1回与えられる20mgの投与量は、1日につき、約0.6mg/kgの平均投与量、例えば、1日につき20mg/35kgで投与した。
【0074】
図6Aは、3日間に渡って、夜(午後)に、ラクトースを充填した腸溶コーティングカプセルで、化合物14aを15mgおよびカルボポール934Pを15mg(製剤MD1599−14)(重量/重量=1:1)経口投与し、15mgを最後に投与した15時間後に抗原チャレンジを与えた場合の対照と比較した動物におけるSRLの経時的な変化率(%)を示している。図6Aで分かるように、対照と薬物治療との間において、EARには何の効果もなかったが、薬物治療によって、抗原暴露後のLARには、ある程度ポジティブな効果があった(LAR防護率(%)=32%)。図6Bで分かるように、夜に経口投与量15mg×3日で投与した場合、気道過敏性にもポジティブな効果があった(AHR防護率(%)=80%)。
【0075】
図7Aは、3日間に渡って、夜に、15mgの腸溶コーティングカプセル2錠として、化合物14aを30mgおよびカルボポール934Pを30mg(製剤MD1599−14)経口投与した場合の対照と比較した動物におけるSRLの経時的な変化率(%)を示している。抗原チャレンジは30mg治療を最後に実施した15時間後に行なった。図7Aで分かるように、対照と薬物治療との間において、EARにはある程度ポジティブな効果があったが、薬物治療によって、抗原暴露後のLARには、有意なポジティブ効果が現れた(LAR防護率(%)=77%)。図7Bで分かるように、3日間、夜に経口投与量30mgで投与した場合、気道過敏性にもポジティブな効果があった(AHR防護率(%)=96%)。
【0076】
図8Aは、3日間に渡って、夜に、15mgの腸溶コーティングカプセル3錠として、化合物14aを45mgおよびカルボポール934Pを45mg(製剤MD1599−14)経口投与した場合の対照と比較した動物におけるSRLの経時的な変化率(%)を示している。抗原チャレンジは45mg治療を最後に実施した15時間後に行なった。図8Aで分かるように、対照と薬物治療との間において、EARには有意なポジティブ効果が現れ、薬物治療によって、抗原暴露後のLARには、有意なポジティブ効果が現れた(LAR防護率(%)=77%)。図8Bで分かるように、夜に3日間、経口投与量45mgで投与した場合、気道過敏性にもポジティブな効果があった(AHR防護率(%)=90%)。
【0077】
図9Aは、3日間に渡って、夜に、15mgの腸溶コーティングカプセル3錠として、カルボポール934Pを45mgとラクトース充填剤のプラシーボ剤(製剤MD1599−17)を経口投与した場合の対照と比較した動物におけるSRLの経時的な変化率(%)を示している。抗原チャレンジは45mg治療を最後に実施した15時間後に行なった。図19で分かるように、対照と薬物治療との間において、EARにはポジティブな効果はなく、プラシーボ治療によって、抗原暴露後のLARには、ポジティブな効果はなかった(LAR防護率(%)=0%)。図9Bで分かるように、夜に3日間、経口投与量45mgで投与した場合、気道過敏性にもポジティブな効果はなかった(AHR防護率(%)=0)。
【0078】
図10Aは、3日間に渡って、夜に、21mgの腸溶コーティングカプセル1錠として、化合物14aを21mgおよびカルボポール934Pを21mg(製剤MD1599−19)経口投与した場合の対照と比較した動物におけるSRLの経時的な変化率(%)を示している。抗原チャレンジは21mg治療を最後に実施した15時間後に行なった。図10Aで分かるように、対照と薬物治療との間において、EARにはある程度ポジティブな効果があり、薬物治療によって、抗原暴露後のLARには、有意なポジティブ効果が現れた(LAR防護率(%)=78%)。図10Bで分かるように、夜に3日間、経口投与量21mgで投与した場合、気道過敏性にもポジティブな効果があった(AHR防護率(%)=95%)。
【0079】
図11Aは、3日間に渡って、夜に、21mgの腸溶コーティングカプセル1錠として、ラクトース充填剤に包んで化合物14aを21mg(製剤MD1599−20)経口投与した場合の対照と比較した動物におけるSRLの経時的な変化率(%)を示している。抗原チャレンジは21mg治療を最後に実施した15時間後に行なった。図11Aで分かるように、対照と薬物治療との間において、EARには効果はなく、薬物治療によって、抗原暴露後のLARには、ある程度ポジティブな効果があった(LAR防護率(%)=54%)。図11Bで分かるように、経口投与量21mgで投与した場合、気道過敏性にもポジティブな効果があった(AHR防護率(%)=89%)。LARへのポジティブな効果は、薬物とカルボポールの両方を含有する21mg製剤に比べて有意に小さく、予想外であった(LAR防護が78%に対し、カルボポールなしでは54%。図10Aを参照)。言い換えれば、化合物14a等の高硫酸化二糖と例えば、カルボポールから選択される送達剤等とを含む製剤は、経口カプセル(10A)の形態で、非制限的で比較のための経口投与量0.5mg/kgで、試験対象のLARに予想を超えた大きな防護を提供する。これは投与量を1mg/kgに上げると、経口液体形態よりも大きな防護を提供した(LAR防護48%を示す図3Aを参照)。
【0080】
図12Aも、カルボポールなしで化合物14aを各21mgのカプセル2錠(42mg)で投与した場合、LARにポジティブな効果があった(LAR防護率(%)=76%)ことを示している。これは図10Aに示した化合物14aとカルボポールを含むカプセル(21mg)1錠の場合(LAR防護率(%)=78%)に匹敵し、したがって、カルボポールを含まない製剤と比べて、カルボポールが高硫酸化二糖のバイオアベイラビリティを2倍にすることを示している。
【0081】
図13Aは、3日間に渡って、夜に、15mgの腸溶コーティングカプセル1錠として、化合物14aを15mgおよびカルボポール934Pを30mg(重量/重量比=1:2)(製剤MD1599−22)経口投与した場合の対照と比較した動物におけるSRLの経時的な変化率(%)を示している。抗原チャレンジは15mg治療を最後に実施した15時間後に行なった。図13Aで分かるように、対照と薬物治療との間において、EARにはある程度ポジティブな効果があり、薬物治療によって、抗原暴露後のLARには、有意なポジティブ効果が現れた(LAR防護率(%)=81%)。これは図6Aに示す化合物14aとカルボポールを1:1の比率(重量/重量単位で)で含有する15mg経口カプセルの場合に見られたLARの防護率32%を有意に上回っている。図13Bで分かるように、化合物14aを15mgおよびカルボポールを30mg(重量/重量比=1:2)経口投与した場合、気道過敏性にもポジティブな効果があった(AHR防護率(%)=95%)。これはポリマー対薬物の比率(重量/重量単位)が大きい製剤ほど、LARとAHRの防護率(%)が上がることを示している。
【0082】
特許請求する本発明について、その具体的な実施形態に言及しながら詳しく記述してきたが、特許請求する本発明に対して、その精神と範囲から逸脱することなく、各種の変更および改変を加えられることは、当業者には明らかであろう。したがって、例えば、当業者は、単なる日常的な実験を用いることにより、特許請求する本発明の無数の実施形態のうち、明確に記述されていない可能性のある実施形態を認識するであろう。そのような実施形態は本発明の範囲内である。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年12月3日に出願された米国特許仮出願第61/266,361号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、以下に詳しく記載されるような化学式Iの高硫酸化二糖化合物と、前記化合物の経口送達を容易にする/増強する製薬学的に許容可能なビヒクル(添加剤)から選択される送達剤とを含む医薬製剤に関する。本製剤は、動物とヒトの様々な炎症性傷害および疾患、特に、喘息、および、肺と気道の炎症に関連する他の容態または疾患から選択される肺障害の治療に有用である。
【背景技術】
【0003】
米国特許第7,056,898号(898特許)は、ある高硫酸化二糖、および、ある炎症性障害を治療するための前記高硫酸化二糖の利用方法を開示および請求している。この特許は、その請求されている化合物を利用して、喘息と、アレルギー反応もしくは炎症性疾患または容態等の喘息に関連する病態とを含む肺炎を治療することを具体的に説明している。その明細書で開示されている化合物は、喘息と喘息に関連する病態との症状、特に、抗原刺激に続く喘息患者の晩期反応を予防、逆行および/または緩和する能力のあるものとして記載されている。その明細書に示されている実施例および図面は具体的には、記載されている二糖の静脈内投与手段および吸入投与手段に関連している。898特許では一般に、811−25−1と表記されている高硫酸化二糖をヒツジへ、0.5mgs/kgの投与量で経口投与することが開示されているが、具体的なデータが示されていない。その明細書では、具体的な経口製剤も開示されておらず、具体的な経口製剤の投与に関連するデータも具体的に開示されていない。患者に、その治療の必要性に応じて少ない投与量で都合良く送達することができ、例えば、ステロイドまたはモンテルカストナトリウム等のロイコトリエン受容体拮抗薬の長期投与に関連する副作用のない肺疾患治療薬または抗炎症薬を改善することが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、この未だに処理されていない要求に対処し、意外にも、本明細書で詳述されている高硫酸化二糖と、製薬学的に許容可能な天然ポリマーまたは合成ポリマーから成る群から選択される送達剤、ならびに、嵩高の化合物(例えば、分子量が平均分子量として4,500ダルトンを超えるそれらの化合物)の送達を向上させるのにこれまで利用されてきた他のビヒクルとを含むある製剤が、請求されている添加剤を用いずに送達される同じ化合物と比べて吸収/バイオアベイラビリティ/効能を増していることを見出した。文献には、あるカルボマーにより、分子量が約4500ダルトンの低分子量ヘパリン(LMWH)の腸吸収が増すことが開示されているが、この物質を利用して、低分子量の二糖の吸収を増大させることの教示または示唆はなかった。実際には、Thanou et al.,Pharmaceutical Research, 18(11)2001で報告されるように、LMWHは嵩が高く、分子量が12,000ダルトンの断片よりも困難ではないものの、経細胞経路または傍細胞経路(タイト結合を経由する通路)を介して腸上皮に浸透し難いと考えられたので、上記のようなカルボマーが添加された。上記のことは、LMWHと比べて分子が小さく、腸上皮にさらに容易に浸透可能な低分子量の二糖には該当し得ない。本発明者は、意外にも、低分子量の二糖、特に、低分子量の高硫酸化二糖(例えば、約1,000ダルトン)では、例えば、カルボポール934Pおよび/または他のカルボマーの化学的および/または物理的特性のうちの少なくとも1つを有するポリマー材料と組み合わせると、効能が驚くほど向上することを見出した。そのようなポリマーは、本発明の高硫酸化二糖を送達し易くするカルボン酸側鎖および/または親水性部分等のイオン基を有する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、化学式Iの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩と、製薬学的に許容可能な合成もしくは天然ポリマー、オリゴマー、または、化学式Iの化合物を動物の血流に送達または投与し易くする他の製剤から成る群から選択される送達剤とを含む医薬製剤に関する。本製剤中の化合物は、化学式Iの化合物またはその製薬学的に許容可能な塩であり、
【化1】
式中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、H、SO3HまたはPO3Hから成る群から独立して選択され、R1〜R6のうちの少なくとも2つは、SO3HまたはPO3Hから選択される。本発明は、R1〜R6のうちの少なくとも3つがSO3HまたはPO3Hから選択される。本発明は、R1〜R6のうちの少なくとも3つがSO3HまたはPO3Hから選択される、化学式Iの化合物を有する製剤にも関する。本発明はさらに、R1〜R6のうちの少なくとも4つがSO3HまたはPO3Hから選択される、化学式Iの化合物を有する製剤にも関する。本発明はさらに、R1〜R6のうちの少なくとも5つがSO3HまたはPO3Hから選択される、化学式Iの化合物を有する製剤にも関する。好ましくは、本発明は、R1〜R6がSO3Hから選択される、化学式Iの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩に関する。本発明は、R1〜R6がSO3HまたはPO3Hから独立して選択される、化学式Iの化合物を有する製剤にも関する。本発明は、プロドラッグ、誘導体、活性代謝物、化学式Iの前記化合物の部分的にイオン化された誘導体および完全にイオン化された誘導体、ならびに、それらの立体異性体をさらに含む。本発明の二糖を構成する単量体は、D異性体またはL異性体であり得る。炭素環の周りのヒドロキシ部分またはそれらの硫酸化異形またはリン酸化異形(それらの非環式異形または中間体)は、いずれかの特定の立体中心で、アルファ表記またはベータ表記であり得る。単糖部分の間を繋ぐ酸素原子も、アルファまたはベータであり得る。本発明の化合物の分子量は、通常、1,000ダルトン未満である。
【0006】
本発明は、
(i)化学式Iの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩と
【化2】
(式中、R1、R2、R4、R5およびR6は、H、SO3HまたはPO3Hから独立して選択され、R3は、SO3HまたはPO3Hから成る群から独立して選択される)、
(ii)製薬学的に許容可能な天然ポリマーまたは合成ポリマーから成る群から選択される添加剤と
を含む医薬製剤にも関する。
【0007】
本発明は、
(i)化学式Iの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩と
【化3】
(式中、R1、R2、R5およびR6は、H、SO3HまたはPO3Hから独立して選択され、R3およびR4は、SO3HまたはPO3Hから成る群から独立して選択される)、
(ii)製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤と
を含む医薬製剤にも関する。
【0008】
本発明は、
(i)化学式Iの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩と
【化4】
(式中、R1、R2およびR6は、H、SO3HまたはPO3Hから独立して選択され、R3、R4およびR5は、SO3HまたはPO3Hから成る群から独立して選択される)、
(ii)製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤と
を含む医薬製剤にも関する。
【0009】
別の実施形態では、本発明は、
(i)化学式IIの化合物
【化5】
およびその製薬学的に許容可能な塩と(式中、R1、R2、R4、R5およびR6は、H、SO3HまたはPO3Hから独立して選択される)、
(ii)製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤と
を含む医薬製剤にも関する。
【0010】
好ましい実施形態では、本発明は、(i)R1がSO3Hであり、R2、R4、R5およびR6がH、SO3HまたはPO3Hから独立して選択される、化学式IIの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩と、(ii)製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤とを含む医薬製剤に関する。
【0011】
追加の好ましい追加の実施形態では、本発明は、(i)R1がSO3Hであり、R2がHであり、R4、R5およびR6がSO3HまたはPO3Hから独立して選択される、化学式IIの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩と、(ii)製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤とを含む医薬製剤に関する。最も好ましい実施形態は、R1〜R6がSO3Hから選択される化学式Iの化合物とその製薬学的に許容可能な塩とを含む医薬製剤に関する。
【0012】
本発明は、式中のR1〜R6が上に示されているもののうちのいずれかである化学式IまたはIIの化合物およびそれらの製薬学的に許容可能な塩と、製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤とを含む経口投剤形にも関する。
【0013】
本発明は、生物の炎症状態をその治療の必要に応じて治療する方法であって、化学式Iの化合物
【化6】
およびその製薬学的に許容可能な塩と(式中、R1〜R6は、SO3H、PO3HまたはHから独立して選択され、R1〜R6のうちの少なくとも2つは、SO3HまたはPO3Hである)、
製薬学的に許容可能な天然もしくは合成ポリマー、オリゴマー、または、化学式Iの化合物を血流内および/または標的部位に送達し易くし、抗原への炎症反応を予防または緩和する製剤から成る群から選択される送達剤と
を含む製剤を製薬学的に有効な量を投与することを含む方法も含む。
【0014】
本発明について、以下の図面で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】ヒツジ(n=3)への抗原投与後(時間=0)の表示時間に随従する肺気流比抵抗(cm H2O/L/秒として計測)(すなわち、SRL)の百分率変化を比較するグラフを示し、抗原のみに曝露されたヒツジ(黒丸)(対照)、および、MD1599−8と表記される高硫酸化二糖、または、(硫酸塩およびカルボン酸塩の位置で)完全にイオン化されたナトリウム塩形態の表1中の化合物14(化合物14aともいう)を1mg/kgの液体経口投与量で加えた抗原に曝露されたヒツジ(白丸)の応答を示している。MD1599−8(化合物14a)は、抗原チャレンジの90分前に(すなわち、−1.5時間に)投与した。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、数週間後に再び、MD1599−8(化合物14a)を加えた抗原に曝露された3頭のヒツジ(n=3)の、抗原で誘発されたSRLの+/−SE変化率(%)の平均として示されている。
【図1B】アレルギー持ちのヒツジの気道過敏性(AHR)への前処理の効果を表す棒グラフを示す。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、再び、数週間後に、MD1599−8(化合物14a)を投与量(1mg/kg)で液体単回投与で経口投与する前処理(90分前)の後に、抗原に曝露されたヒツジの群(n=3)の基線と24時間後抗原チャレンジでの、呼吸単位での+/−SE PD400の平均(気道応答)として示されている。PD400は、SRLを400%増加させた、呼吸単位でのカルバコール誘発量として定義される。一呼吸単位は、カルバコール1%溶液の一呼吸である。PD400は気道応答の指標である。
【図2A】ヒツジ(n=3)への抗原投与(時間=0)後の表示時間に随従する肺気流比抵抗(すなわち、SRL)の百分率変化を比較するグラフを示し、抗原のみに曝露されたヒツジ(黒丸)(対照)、および、MD1599−8と表記される高硫酸化二糖、または、完全イオン化ナトリウム塩形態の表1中の化合物14(化合物14a)を2mg/kgの液体経口投与量で加えた抗原に曝露されたヒツジ(白丸)の応答を示している。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、数週間後に再び、MD1599−8を加えた抗原に曝露された3頭のヒツジ(n=3)の、抗原で誘発されたSRLの+/−SE変化率(%)の平均として示されている。MD1599−8は、抗原曝露の1.5時間前に液体で経口投与した。
【図2B】アレルギー持ちのヒツジの気道過敏性(AHR)への前処理の効果を表す棒グラフを示す。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、再び、数週間後に、MD1599−8(2mg/kg)の液体経口投与での前処理(1.5時間)の後に、抗原に曝露されたヒツジの群(n=3)の基線と24時間後抗原チャレンジでの、呼吸単位での+/−SEPD400の平均(気道応答)として示される。
【図3A】ヒツジ(n=4)への抗原投与(時間=0)後の表示時間に随従する肺気流比抵抗(cm H2O/L/秒として計測)(すなわち、SRL)の百分率変化を比較するグラフを示し、抗原のみに曝露されたヒツジ(黒丸)(対照)、および、MD1599−8と表記される高硫酸化二糖、または、完全イオン化ナトリウム塩形態の表1中の化合物14(化合物14aともいう)を1mg/kgの液体経口投与量で加えた抗原に曝露されたヒツジ(白丸)の応答を示している。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、数週間後に再び、抗原曝露前の2日間(×2日)、1mg/kgのMD1599−8(化合物14a)を合計3回、12時間間隔で液体で投与する前処理の後に、抗原に曝露された4頭のヒツジ(n=4)の、抗原で誘発されたSRLの+/−SE変化率(%)の平均として示されている。抗原チャレンジは、最後の1mg/kg投与後90分に行った。
【図3B】アレルギー持ちのヒツジの気道過敏性(AHR)への前処理の効果を表す棒グラフを示す。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、再び、数週間後に、MD1599−8(化合物14a)(1mg/kg)を液体経口投与で3回、12時間間隔で2日間に渡って与える2日間(曝露前の2日間)の前処理の後に、抗原に曝露されたヒツジの群(n=4)の基線と24時間後抗原チャレンジでの、呼吸単位での+/−SE PD400の平均(気道応答)として示されている。抗原チャレンジは、最後の1mg/kg投与後90分に行った。
【図4A】ヒツジ(n=2)への抗原投与(時間=0)後の表示時間に随従する肺気流比抵抗(cm H2O/L/秒として計測)(すなわち、SRL)の百分率変化を比較するグラフを示し、抗原のみに曝露されたヒツジ(黒丸)(対照)、および、MD1599−8と表記される高硫酸化二糖、または、完全イオン化ナトリウム塩形態の表1中の化合物14(化合物14a)を2mg/kgの液体経口投与量で加えた抗原に曝露されたヒツジ(白丸)の応答を示している。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、数週間後に再び、MD1599−8を1回投与量2mg/kgで朝に投与する(A.M.投与)前処理を抗原曝露前に3日間(×3日)行った後に、抗原に曝露された2頭のヒツジ(n=2)の、抗原で誘発されたSRLの+/−SE変化率(%)の平均として示されている。抗原チャレンジは、最後の2mg/kg投与後24時間であった。
【図4B】アレルギー持ちのヒツジの気道過敏性(AHR)への前処理の効果を表す棒グラフを示す。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、再び数週間後に、MD1599−8(化合物14a)(2mg/kg)を液体経口投与で3日間に渡り朝に投与する(2mg/kg/日)前処理を曝露前に3日間行った後に、抗原に曝露されたヒツジの群(n=2)の基線と24時間後抗原チャレンジでの、呼吸単位での+/−SE PD400の平均(気道応答)として示されている。抗原チャレンジは、最後の2mg/kg投与後24時間であった。
【図5A】ヒツジ(n=4)への抗原投与(時間=0)後の表示時間に随従する肺気流比抵抗(cm H2O/L/秒として計測)(すなわち、SRL)の百分率変化を比較するグラフを示し、抗原のみに曝露されたヒツジ(黒丸)(対照)、および、MD1599−8と表記される高硫酸化二糖(化合物14a)、または、完全イオン化ナトリウム塩形態の表1中の化合物14を2mg/kg液体経口投与で加えた抗原に曝露されたヒツジ(白丸)の応答を示している。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、数週間後に再び、1日当たり2mg/kgのMD1599−8を単回液体経口投与で夕方に投与する(P.M.投与)前処理を抗原曝露前に3日間(×3日)行った後に、抗原に曝露された4頭のヒツジ(n=4)の、抗原で誘発されたSRLの+/−SE変化率(%)の平均として示されている。抗原チャレンジは、最後の2mg/kg薬剤投与後15時間であった。
【図5B】アレルギー持ちのヒツジの気道過敏性(AHR)への前処理の効果を表す棒グラフを示す。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、再び数週間後に、MD1599−8(化合物14a)(2mg/kg)を経口投与で3日間連続して夕方に投与する(2mg/kg/日)前処理を曝露前に3日間行った後に、抗原に曝露されたヒツジの群(n=4)の基線と24時間後抗原チャレンジでの、呼吸単位での+/−SE PD400の平均(気道応答)として示されている。抗原曝露は、最後の2mg/kg処理後15時間で行った。
【図6A】ヒツジ(n=5)への抗原投与(時間=0)後の表示時間に随従する肺気流比抵抗(cm H2O/L/秒として計測)(すなわち、SRL)の百分率変化を比較するグラフを示し、抗原のみに曝露されたヒツジ(黒丸)(対照)、および、15mgの高硫酸化二糖(表1に示されている化合物14の完全イオン化ナトリウム塩形態(または化合物14a))とカルボポール934P NF(白丸)およびラクトース充填剤から選択される15mgの添加剤とを有し、1599−14と表記される製剤である経口カプセル剤形を1日1錠加えた抗原に曝露されたヒツジの応答を示している。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、数週間後に再び、15mgの化合物14のナトリウム塩(化合物14aともいう)/15mgのカルボポール934P NFという単回1日投与量で夕方にカプセル剤形で投与する(P.M.投与)前処理を抗原曝露前に3日間(×3日)行った後に、抗原に曝露された5頭のヒツジ(n=5)の、抗原で誘発されたSRLの+/−SE変化率(%)の平均として示されている。抗原チャレンジは、最後の15mg/kgの化合物14aで処理後、15時間で行った。
【図6B】アレルギー持ちのヒツジの気道過敏性(AHR)への前処理の効果を表す棒グラフを示す。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、再び数週間後に、化合物14のナトリウム塩(化合物14a)(15mg)とカルボポール934P(15mg)とを含む製剤という1日経口投与量で夕方にカプセル剤形(製剤1599−14)で投与する前処理を曝露前に3日間行った前に、抗原に曝露されたヒツジの群(n=5)の基線と24時間後抗原チャレンジでの、呼吸単位での+/−SE PD400の平均(気道応答)として示されている。抗原チャレンジは、最後の15mgの化合物14aで処理後、15時間で行った。
【図7A】ヒツジ(n=5)への抗原投与(時間=0)後の表示時間に随従する肺気流比抵抗(cm H2O/L/秒として計測)(すなわち、SRL)の百分率変化を比較するグラフを示し、抗原のみに曝露されたヒツジ(黒丸)(対照)、および、15mgの高硫酸化二糖(表1に示されている化合物14の完全イオン化ナトリウム塩形態、化合物14aともいう)とカルボポール934Pから選択される15mgの添加剤とを有し、1599−14と表記される製剤を1日2錠という経口カプセル剤形で加えた抗原に曝露されたヒツジ(白丸)の応答を示している。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、数週間後に再び、30mgの化合物14のナトリウム塩(すなわち化合物14a)/30mgのカルボポール934Pという1日投与量で夕方にカプセル剤形で投与する(P.M.投与)(1日当たり2カプセルを同時にまたは即座に続けて投与する)前処理を抗原曝露前に3日間(×3日)行った後に、抗原に曝露された5頭のヒツジ(n=5)の、抗原で誘発されたSRLの+/−SE変化率(%)の平均として示されている。抗原露曝は、最後の30mg投与後15時間で現れた。
【図7B】アレルギー持ちのヒツジの気道過敏性(AHR)への前処理の効果を表す棒グラフを示す。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、再び数週間後に、化合物14のナトリウム塩(化合物14a)(15mg)とカルボポール934P(15mg)とを含む製剤を経口投与で夕方にカプセル剤形(製剤1599−14)で2カプセル/日として投与し、合計で30mg/日の活性成分を3日間に渡り毎日与える前処理を暴露前3日間行った後に、抗原に曝露されたヒツジの群(n=5)の基線と24時間後抗原チャレンジでの、呼吸単位での+/−SE PD400の平均(気道応答)として示される。抗原露曝は、最後の30mg処理後15時間で現れた。
【図8A】ヒツジ(n=2)への抗原投与(時間=0)後の表示時間に随従する肺気流比抵抗(cm H2O/L/秒として計測)(すなわち、SRL)の百分率変化を比較するグラフを示し、抗原のみに曝露されたヒツジ(黒丸)(対照)、および、15mgの高硫酸化二糖(表1に示されている化合物14の完全イオン化ナトリウム塩形態、化合物14aともいう)とカルボポール934Pから選択される15mgの添加剤とを各々が有し、1599−14と表記される製剤を1日3錠という経口投与カプセル剤形で加えた抗原に曝露されたヒツジ(白丸)の応答を示している。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、数週間後に再び、45mgの化合物14のナトリウム塩(すなわち14a)/45mgのカルボポール934Pという1日投与量で夕方にカプセル剤形(1日当たり3カプセル)で投与する(P.M.投与)前処理を抗原曝露前に3日間(×3日)行った後に、抗原に曝露された2頭のヒツジ(n=2)の、抗原誘発されたSRLの+/−SE変化率(%)の平均として示される。抗原露曝は、最後の45mgの晩の投与後15時間で現れた。
【図8B】アレルギー持ちのヒツジの気道過敏性(AHR)への前処理の効果を表す棒グラフを示す。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、再び数週間後に、化合物14のナトリウム塩(14a)(15mg)とカルボポール934P(15mg)とを含む製剤を1日経口投与で夕方にカプセル剤形(製剤1599−14)で3カプセル/日として投与し、合計で45mg/日の活性成分と45mgのカルボポール934Pを3日間に渡り毎日与える前処理を曝露前に3日間行った後に、抗原に曝露されたヒツジの群(n=2)の基線と24時間後抗原チャレンジでの、呼吸単位での+/−SE PD400の平均(気道応答)として示されている。抗原曝露は、化合物14aの最後の晩の45mg投与後15時間で行った。
【図9A】ヒツジ(n=2)への抗原投与(時間=0)後の表示時間に随従する肺気流比抵抗(cm H2O/L/秒として計測)(すなわち、SRL)の百分率変化を比較するグラフを示し、抗原のみに曝露されたヒツジ(黒丸)(対照)、および、ラクトース充填剤中に15mgのカルボポール934Pを1599−17と表記される製剤と共に有する、カプセル剤形を1日3錠加えた抗原に曝露されたヒツジ(白丸)の応答を示している。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、数週間後に再び、1日の総投与量45mgのカルボポール添加剤を夕方にカプセル剤形(1日当たり3カプセル×3日)で投与する(P.M.投与)前処理を抗原曝露前に3日間(×3日)行った後に、抗原に曝露された2頭のヒツジ(n=2)の、抗原で誘発されたSRLの+/−SE変化率(%)の平均として示されている。
【図9B】アレルギー持ちのヒツジの気道過敏性(AHR)への前処理の効果を表す棒グラフを示す。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、再び数週間後に、カルボポール934P(ラクトース中カプセル当たり15mg)を含む製剤を経口投与で夕方にカプセル剤形(製剤1599−17)で3カプセル/日としてカルボポール総投与量45mg/日で3日間に渡り投与する前処理を曝露前に3日間行った後に、抗原に曝露されたヒツジの群(n=2)の基線と24時間後抗原チャレンジでの、呼吸単位での+/−SE PD400の平均(気道応答)として示される。
【図10A】ヒツジ(n=5)への抗原投与(時間=0)後の表示時間に随従する肺気流比抵抗(cm H2O/L/秒として計測)(すなわち、SRL)の百分率変化を比較するグラフを示し、抗原のみに曝露されたヒツジ(黒丸)(対照)、および、21mgの高硫酸化二糖(表1に示されているような化合物14の完全イオン化ナトリウム塩形態、14aともいう)とカルボポール934Pから選択される21mgの添加剤とを有し、1599−19と表記される製剤を単回連日経口カプセル剤形で加えた抗原に曝露されたヒツジ(白丸)の応答である。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、数週間後に再び、21mgの化合物14のナトリウム塩(14a)/21mgのカルボポール934Pという1日投与量で夕方にカプセル剤形(1日当たり1カプセル)で投与する(P.M.投与)前処理を抗原曝露前に3日間(×3日)行った後に、抗原に曝露された5頭のヒツジ(n=5)の、抗原で誘発されたSRLの+/−SE変化率(%)の平均として示されている。抗原露曝は、最後の夕方の21mg投与後15時間で現れた。
【図10B】アレルギー持ちのヒツジの気道過敏性(AHR)への前処理の効果を表す棒グラフを示す。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、再び数週間後に、化合物14のナトリウム塩(14a)(21mg)とカルボポール934P(21mg)とを含む製剤を連日経口投与で夕方にカプセル剤形(製剤1599−19)で1カプセル/日として3日間に渡り投与する前処理を曝露前に3日間行った後に、抗原に曝露されたヒツジの群(n=2)の基線と24時間後抗原チャレンジでの、呼吸単位での+/−SE PD400の平均(気道応答)として示されている。抗原曝露は、化合物14aの最後の晩の21mg投与後15時間で行った。
【図11A】ヒツジ(n=3)への抗原投与(時間=0)後の表示時間に随従する肺気流比抵抗(cm H2O/L/秒として計測)(すなわち、SRL)の百分率変化を比較するグラフを示し、抗原のみに曝露されたヒツジ(黒丸)(対照)、および、21mgの6−硫酸化二糖(表1に示されているような化合物14の完全イオン化ナトリウム塩形態(すなわち14a))を有し、1599−20と表記される製剤を単回連日経口カプセル剤形で加えた抗原に曝露されたヒツジ(白丸)の応答を示している。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、数週間後に再び、化合物14のナトリウム塩(14a)を21mgの1日投与量で夕方にカプセル剤形(1日当たり1カプセル)で投与する(P.M.投与)前処理を抗原曝露前に3日間(×3日)行った後に、抗原に曝露された5頭のヒツジ(n=3)の、抗原で誘発されたSRLの+/−SE変化率(%)の平均として示されている。抗原露曝は、最後の晩の21mg投与後15時間で現れた。
【図11B】アレルギー持ちのヒツジの気道過敏性(AHR)への前処理の効果を表す棒グラフを示す。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、再び数週間後に、化合物14のナトリウム塩(14a)(21mg)を含む製剤を連日経口投与で夕方にカプセル剤形(製剤1599−20)で1カプセル/日として3日間に渡り投与する前処理を曝露前に3日間行った後に、抗原に曝露されたヒツジの群(n=3)の基線と24時間後抗原チャレンジでの、呼吸単位での+/−SE PD400の平均(気道応答)として示されている。抗原曝露は、化合物14aの最後の晩の21mg投与後15時間で行った。
【図12A】ヒツジ(n=2)への抗原投与(時間=0)後の表示時間に随従する肺気流比抵抗(cm H2O/L/秒として計測)(すなわち、SRL)の百分率変化を比較するグラフを示し、抗原のみに曝露されたヒツジ(黒丸)(対照)、および、21mgの高硫酸化二糖(42mg総活性)(表1に示されているような化合物14の完全イオン化ナトリウム塩形態、すなわち14a)を有し、1599−20 42mgsと表記される製剤を1日2錠の連日経口カプセル剤形で加えた抗原に曝露されたヒツジ(白丸)の応答を示している。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、数週間後に再び、42mgの化合物14のナトリウム塩(14a)を連日投与で夕方にカプセル剤形で投与する(P.M.投与)(1日当たり2カプセルを同時に摂取)前処理を抗原曝露前に3日間(×3日)行った後に、抗原に曝露された5頭のヒツジ(n=2)の、抗原で誘発されたSRLの+/−SE変化率(%)の平均として示されている。抗原露曝は、最後の夕方の42mg投与後15時間で現れた。
【図12B】アレルギー持ちのヒツジの気道過敏性(AHR)への前処理の効果を表す棒グラフを示す。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、再び数週間後に、化合物14のナトリウム塩(14a)(42mg)を含む製剤を連日経口投与で夕方にカプセル剤形(製剤1599−20 42mgs)で2カプセル/日の同時摂取で3日間に渡り投与する前処理を曝露前に3日間行った後に、抗原に曝露されたヒツジの群(n=2)の基線と24時間後抗原チャレンジでの、呼吸単位での+/−SE PD400の平均(気道応答)として示されている。抗原曝露は、化合物14aの最後の晩の42mg投与後15時間で行った。
【図13A】ヒツジ(n=5)への抗原投与(時間=0)後の表示時間に随従する肺気流比抵抗(cm H2O/L/秒として計測)(すなわち、SRL)の百分率変化を比較するグラフを示し、抗原のみに曝露されたヒツジ(黒丸)(対照)、および、15mgの高硫酸化二糖化合物14a(表1に示されているような化合物14の完全イオン化ナトリウム塩形態)とカルボポール934Pから選択される30mgの添加剤とを有し、1599−22と表記される製剤を単回連日経口カプセル剤形で加えた抗原に曝露されたヒツジ(黒三角)の応答を示している。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、数週間後に再び、15mgの化合物14のナトリウム塩(化合物14a)/30mgのカルボポール934Pを連日投与で夕方にカプセル剤形で投与する(P.M.投与)(1日当たり1カプセル)前処理を抗原曝露前に3日間(×3日)行った後に、抗原に曝露された5頭のヒツジ(n=5)の、抗原で誘発されたSRLの+/−SE変化率(%)の平均として示される。抗原露曝は、最後の晩の15mg剤形の後、15時間で現れた。
【図13B】アレルギー持ちのヒツジの気道過敏性(AHR)への前処理の効果を表す棒グラフを示す。データは、最初に、薬物のない抗原に曝露され、次に、再び数週間後に、化合物14のナトリウム塩(15mgの化合物14a)とカルボポール(30mg)とを含む製剤を連日経口投与で夕方にカプセル剤形(製剤1599−22)で1カプセル/日として3日間に渡り投与する前処理を抗原曝露前に3日間行った後に、抗原に曝露されたヒツジの群(n=5)の基線と24時間後抗原チャレンジでの、呼吸単位での+/−SE PD400の平均(気道応答)として示されている。抗原曝露は、最後の15mgの晩の剤形の後、15時間で行った。上記の図で用いたカプセルは、腸溶コーティングが施されていた。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、医薬製剤およびその利用に関し、その製剤は、化学式Iの化合物およびその化合物の製薬学的に許容可能な塩と、
【化7】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、H、SO3HまたはPO3Hから成る群から独立して選択され、R1〜R6のうちの少なくとも2つは、SO3HまたはPO3Hから選択される)、製薬学的に許容可能な天然ポリマーもしくは合成ポリマー、オリゴマー、または、化学式Iの化合物を血流内に送達し易くする製剤から成る群から選択される送達剤とを含む。用語「製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマー」は一般に、単量体単位(単一または複数)上に側鎖置換基がある、炭素鎖または主鎖を有する単量体または単量体単位の繰り返し単位(飽和または不飽和のもの、もしくは、不飽和単量体および飽和単量体の両方を有するもの)を有する製薬学的に許容可能な天然由来ポリマーまたは合成ポリマーを意味する。そのようなポリマーは、隣接する単量体が同じであることも異なることもできる繰り返し単量体単位の同種重合体またはコポリマーであり得る。側鎖置換基としては、カルボン酸基、または、ヒドロキシル基もしくはアミノ基から選択される他の極性基が挙げられ、それらの側鎖置換基は、例えば、硫酸基またはリン酸基にさらに置換することができる。これらのポリマーは、架橋することができる。好ましい単量体はアクリル酸残基であり、カルボマーを形成する。上記のようなポリマーの分子量は、約500,000〜約40億であり得る。架橋間の分子量(MC)は、例えば、カルボポール941に関しては、推定で104,400g/モルであり得る。本明細書では、以下で、更なるポリマーおよび薬物送達増強剤について説明されている。
【0017】
本発明は、
(i)化学式Iの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩と、
【化8】
(式中、R1、R2、R4、R5およびR6は、H、SO3HまたはPO3Hから独立して選択され、R3は、SO3HまたはPO3Hから独立して選択される)、
(ii)製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤と
を含む、医薬製剤にも関する。
【0018】
本発明は、
(i)化学式Iの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩と、
【化9】
(式中、R1、R2、R5およびR6は、H、SO3HまたはPO3Hから独立して選択され、R3およびR4は、SO3HまたはPO3Hから独立して選択される)、
(ii)製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤と
を含む医薬製剤にも関する。
【0019】
本発明は、
(i)化学式Iの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩と、
【化10】
(式中、R1、R2およびR6は、H、SO3HまたはPO3Hから独立して選択され、R3、R4およびR5は、SO3HまたはPO3Hから独立して選択される)、
(ii)製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤と
を含む医薬製剤にも関する。
【0020】
別の実施形態では、本発明は、
(i)化学式IIの化合物
【化11】
およびその製薬学的に許容可能な塩と(式中、R1、R2、R4、R5およびR6は、H、SO3HまたはPO3Hから成る群から独立して選択される)、
(ii)製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤と
を含む医薬製剤にも関する。
【0021】
好ましい実施形態では、本発明は、(i)化学式IIの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩と
【化12】
(式中、R1はSO3Hであり、R2、R4、R5およびR6は、H、SO3HまたはPO3Hから独立して選択される)、(ii)製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤とを含む医薬製剤に関する。
【0022】
追加の好ましい追加の実施形態では、本発明は、(i)化学式IIの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩と
【化13】
(式中、R1はSO3Hであり、R2はHであり、R4、R5およびR6は、SO3HまたはPO3Hから独立して選択される)、(ii)製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤とを含む医薬製剤に関する。
【0023】
本発明は、上に定義されたようなR1〜R6を有する化学式IまたはIIの化合物およびそれらの製薬学的に許容可能な塩と、製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤とを含む経口剤形にも関する。
【0024】
本発明は、炎症状態を治療または緩和する方法であって、(i)化学式Iの化合物
【化14】
およびその製薬学的に許容可能な塩を含む製薬学的に有効な量の製剤と(式中、R1〜R6は、SO3H、PO3HまたはHから独立して選択され、R1〜R6のうちの少なくとも2つは、SO3HまたはPO3Hである)、
(ii)製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤と
を投与することを含む方法も含む。
【0025】
本発明は、好ましくは、R1、R2、R3、R4、R5およびR6が、表1に化合物1〜14として示されている変異体から選択される化学式Iの化合物と、製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤とを含む医薬製剤に関する。
【化15】
【表1】
【0026】
好ましい実施形態では、本発明の製剤中の化合物は、上の表1に示されている化学式Iの化合物の金属塩から選択される。それらの化合物では、カルボン酸基がイオン化され、二糖の周りの各々の硫酸基がイオン化されて金属塩を形成し、その金属は、例えばナトリウムから選択される。加えて、アミン塩を含む他の塩が、カルボン酸塩または硫酸塩の位置に形成され得る。最も好ましい化合物は、ナトリウム塩としての完全イオン化形態の化合物14である(化合物14a)。
【0027】
本発明の化合物は、本明細書で実施例において記載されているように、例えば、ヘパリンから得ることができる。用いた具体的なプロセスではブタヘパリンを用いたが、任意の哺乳類のヘパリンを用いて、本発明の化合物を生成してもよい。加えて、本化合物は、合成的に誘導してもよい。記載されている二糖の原料物質として、様々な他の多糖を用いてもよく、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、ポリ硫酸ペントサンならびに、他のグリコサミノグリカンおよびムコ多糖体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本発明の化合物は一般に、以下の工程を含むプロセスにより調製することができる。(1)ヘパリンナトリウムを水に溶解させ、pHを弱酸性(約pH6)に調節し、(2)この溶液を亜硝酸ナトリウム(NaNO2)水溶液で処理して亜硝酸を形成し、ヘパリンを脱重合し(および、例えば、IdoA(2S)GlcNS(6S)を脱アミノ化して、Ido(2S)−aManを形成する)、(3)脱重合したヘパリン溶液を塩基化して、pHを約7にし、(4)脱重合したヘパリン溶液を希釈し、(5)前記溶液を濾過し、3kDa(3000ダルトン)未満のヘパリンオリゴ糖を収集、濃縮し、(6)3kDA未満の脱重合したヘパリンを含む濾過溶液を塩基性に変化させ、(7)この塩基化した溶液を水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)で処理し、ヘパリンの酸性化および脱重合後に形成されたアルデヒドカルボニルを還元して、アルコールにし、(8)還元した生成物を濃酸で処理し、次に、pHを約7に調節し、(9)サイズ排除クロマトグラフィーを利用して、得られた還元オリゴマーをさらに分画して、二糖アンモニウム塩を得て、その二糖アンモニウム塩を陽イオン交換樹脂でさらに処理してナトリウム塩を形成し、そのナトリウム塩をさらに分画して、主成分として、式中のR1がHであり、R2がHであり、R3がSO3−であり、R4がSO3−であり、R5がHであり、R6がHであり、カルボキシ基(CO2H)がCO2−Na+である化学式Iの化合物がナトリウム塩の形態として得られると共に、主成分として、式中のR1がHであり、R2がHであり、R3がSO3−であり、R4がSO3−であり、R5がSO3−であり、R6がHであり、カルボキシ基(CO2H)がCO2−Na+である化学式Iの化合物が得られ、(10)その結果得られた二糖を適切な条件下で硫酸塩源(例えば、(CH3)3NSO3)で処理し、本発明の製剤で用いる高硫酸化二糖を形成する。硫化剤としては、SO3ピリジン、SO3トリメチルアミン、SO3ジオキサンおよびSO3ジメチルホルムアミド等のSO3錯体をさらに挙げることができ、加えて、クロロスルホン酸、クロロスルホン酸と硫酸との混合物およびピペリジンN硫酸塩を挙げてよい。反応は、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドまたは類似の溶媒等の適切な極性溶媒中で行う。反応温度は、約20℃〜約70℃の範囲の室温から高温まで様々であることができる。
【0029】
本明細書に限定することなく、ヘパリンおよび他の炭水化物または複合炭水化物は、ヒドロキシル基ならびに硫酸基またはカルボン酸基が規定の立体化学または絶対立体化学の環上に存在するキラル分子であることが分かる。ヘパリン中の最も一般的な二糖単位は、例えば、2−O−硫酸化イズロン酸および6−O−硫酸化グルコースアミンであるIdoA(2S)GlcNS(6S)である。
【化16】
【0030】
一般には、本発明の製剤で用いられる少糖類および二糖を生成する多糖源は、概して、炭水化物環の周囲にキラル中心の絶対立体化学を定めることが分かる。追加の硫酸基は、上に概要を記載したプロセスによる化学手段により、または、いずれかの既知の手段により付加され、最活性部分(高硫酸化二糖およびそれらの塩)が得られる。この最活性部分をさらに精製して、医薬品グレードの二糖が形成される。この二糖を添加剤とさらに調合し、哺乳類または他の生物へ、その治療の必要性に応じて投与するのに適した剤形に加工する。
【0031】
核磁気共鳴造影法および/または他の既知の構造識別法を利用して、ヘパリン(いずれかの既知のヘパリン源由来)または他の所定の多糖の脱重合から得られた分子の化学構造を決定し得る。本化合物を合成または半合成で作製する場合、当業者は、標準の有機化学技術を用いて、所望のヒドロキシ部分を当業者に既知の保護基で保護することができる。
【0032】
次に、上記のような化学式Iの化合物(またはその混合物)を添加剤(送達剤)と調合して、本発明の製剤を形成する。この添加剤は、いずれかの天然または合成ポリマーから成る群から選択され(後で詳述する)、本明細書に記載されている疾患または状態のうちのいずれか1つに対する治療の必要性に応じて、患者または動物への活性成分の送達を増強する。用語「送達を増強する」は、添加剤を用いずに投与される活性成分の送達に対する活性成分または活性医薬物質(ADS)の送達の量的および質的測定値(例えば、ADS+対ADS−)が向上することを意味する。このような測定値としては、本明細書にある図に示されているような気道応答または気道抵抗が挙げられるが、これらに限定されない。用語「製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマー」は、ポリマーが、投与される剤形で、ヒトを含む動物に投与される際に安全であることを意味する。添加剤またはポリマーは好ましくは、カルボポール934P等のカルボマーから選択されたポリマーの多くの化学的/物理的/生物学的特性のうちの少なくとも1つの共通のまたは共有の化学的および/または物理的および/または生物学的特性を有する。ポリマーの少なくとも1つの「共有の特性」は好ましくは、イオン化可能である側鎖または基を有することである。そのような基としては例えば、カルボン酸基、または、硫酸塩またはリン酸塩前駆体等の他のイオン化可能な部分(例えば、C−OH基が、−SO3HまたはPO3H側鎖または変異体で置換されたもの)が挙げられる。ポリマー中のカルボン酸基、または、他のイオン化可能もしくは中性化可能な基の乾燥重量での相対百分率は、好ましくは40〜80%である。他の共有の特性としては、親水性および/または膨潤性および/またはゲル化性および/または粘性(すなわち、水粘性[mPa s])が挙げられるが、これらに限定されない。カルボポール934Pは、0.5%重量/体積溶液での水粘性が29,400〜39,400mPa sである。共有の特性は、化学的、物理的または生物学的なものであり得る。共有の生物学特性としては例えば、カルボポールポリマーが、例えば、十二指腸組織または他の表皮組織を通じて経細胞手段または傍細胞手段により、細胞膜または組織を横切る送達特性を共有することが挙げられる。本発明の添加剤またはポリマーは、カルボマーと1つ超の共有の特性を有し得る。活性成分に対する製剤中の添加剤または作用剤の百分率は、重量/重量パーセントベースで約0.1%〜約80%またはそれ以上の範囲であり得る。添加剤の活性成分に対する好ましい重量比は、1:1またはそれ以上(例えば、1:1、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1等)である。
【0033】
製薬学的に許容可能なポリマーは、アルギン酸塩もしくは混合物、または、水溶性または不可溶性であり得る、アルギン酸およびアルギン酸の錯体塩等の天然ポリマーから選択され得る。天然アルギン酸およびそれらの錯体は一般に、例えば米国特許第4,842,866号に記載されている。アルギン酸ガム若しくは天然ポリマー、または、アルギン酸ガムに類似のガム(例えば、カラギーナンガム、キタンガム、トラガカントガム、ローカストビーンガム、グアーガム、又は、植物、微生物若しくは他の天然源に由来し、製薬学的に許容可能ないずれかの他の複合ポリマー)を本発明の製剤で用いてよい。
【0034】
製薬学的に許容可能な合成ポリマーは、疎水性ポリマーまたは親水性ポリマーから選択できる。該ポリマーは水溶性、わずかに水溶性または非水溶性とすることができる。水溶性の親水性ポリマーは、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、酢酸ビニル/クロトン酸のコポリマー、メタクリル酸のポリマーおよびコポリマー、無水マレイン酸/メチルビニルエーテルのコポリマーおよび誘導体、ならびにこれらの混合物から成る群から選択してよい。該ポリマーは、粘度が約50 cps〜約200 cpsの低粘度ポリマーとすることができ、Dow Chemical Company製のMethocelTM K100 LVや類似のポリマー等、市販のポリマーを挙げることができる。水溶性親水性ポリマーも、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウムまたはその他の類似の陰イオン性水溶性ポリマーから選択してよい。これらのポリマーとしては、ポリヒドロキシアルキルメタクリレート、陰イオン性または陽イオン性ヒドロゲル、ポリビニルアルコールまたは高分子量ポリエチレンオキシド、例えば、4,837,111を含め、様々な特許に記載されているポリマー等を挙げることができる。
【0035】
また、製薬学的に許容可能な合成ポリマーは、親水性の非水溶性ポリマーから選択してもよい。これらは水を容易に吸収し、含水し、および/または膨張することのできるポリマーである。これらのポリマーは、カルボキシビニルポリマー等の種々のカルボポールホモポリマーポリマーを含むカルボマー、およびカルボキシポリメチレンまたはポリアクリル酸コポリマーから選択することができる。好ましいポリマーは、ポリアルケニルエーテルまたはジビニルグリコールと架橋したアクリル酸のカルボポールポリマーである。これらのポリマーは膨張し、様々な条件下でゲルを形成することもできる。好ましいカルボポールポリマーとしては、カルボポール934P NF、カルボポール974P NF、カルボポール971P NF、およびカルボポール71Gが挙げられる。該製剤で用いるのに適したその他のイオン性ポリマーとしては、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはメタクリル酸、アクリル酸エチルエステルコポリマーが挙げられる。カルボポールポリマーは経口懸濁剤で使用されるが、乾燥製剤、例えば、二糖、カルボポールポリマー、およびラクトース等の充填剤を含有するか、それらから成るカプセルという形でも使用される。したがって、本発明は、上述の式IまたはIIの化合物と、水と接触すると膨張するか、イオン化するか、または中和することができ、作用部位への活性成分の送達または輸送を容易にする化学基を有するポリマーから選択される添加剤とを含む経口懸濁剤またはカプセルまたはその他の固体剤形にも関する。カプセルまたは錠剤は、さらに賦形剤または腸溶ポリマーを含むポリマーでコーティングすることもできる。コーティング材料は、例えば、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリエート、ヒロドキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸およびアクリル酸エチルのコポリマー(例えば、Eudragit L30D)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、またはポリビニルアセテートフタレート等の腸溶性コーティングから選択してよい。好ましいコーティングは、胃の酸性環境においては安定性が高いが、小腸の比較的塩基性環境では分解する。
【0036】
疎水性のポリマーまたは添加剤は、例えば、エチルセルロース、メタクリル酸エステルの重合体、セルロースアセテートブチレート、ポリ(エチレンコビニルアセテート)、ヒドロキシエチルセルロース、およびEudragitポリマーから選択されるメタクリル酸のポリマーから選択してよい。追加の疎水性添加剤は、蝋または脂肪酸エステルから選択してもよい。これらの疎水性ポリマーは膨張するか、または追加のポリマーを含有し、水または「ゲル」にさらされると、膨張またはイオン化するブレンドまたは混合物を形成することが好ましい。高硫酸化二糖の送達を増強する追加の「作用剤」としては、以下に限定されないが、ポリ陰イオン塩(グルタミン酸またはアスパラギン酸のポリ陰イオン塩等);ヒアルロン酸等のグリコサミノグリカン;変性アミノ酸;変性アミノ酸誘導体;アルカリ膨張性レオロジー変性剤;ポリオキシエチレングリコール;脂肪酸エステル;キトサン(米国特許第7,291,598号に記述されている高および低分子量版ならびにポリグルタミン酸およびそのナノ粒子;単独ならびに界面活性剤および任意の溶解補助剤と組み合せた胆汁酸塩およびその酸;リン脂質多価陽イオン;ホスフォリパーゼC阻害剤;単ラメラ小胞;硫酸化キチン質ポリマー;イミノジ酢酸、ニトリロ酢酸、エチレンジアミノモノ酢酸、エチレンジアミノジ酢酸、エチレンジアミノテトラ酢酸、タウロジヒドロ−フシジン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、コリルサルコシン、ミリスチン酸イソプロピル、部分的に加水分解されたトリグリセリド、脂肪酸糖誘導体およびオレイン酸誘導体から選択される透過処理用試薬;ならびにポリ(ラクチドコグリコリド)等の生分解可能ポリマーが挙げられる。かかる作用剤は、米国特許第5,498,410号、同第5,827,512号、同第5,908,637号、同第5,990,096号、同第6,458,383号、同第6,461,643号、同第6,635,702号、同第6,855,332号、同第7,291,598号、同第7,329,638号、米国特許出願公開第20010024658号、同第20020037316号、同第20020115641号、同第20030180348号、同第20040038870号、同第20040086550号、同第20040096504号、同第20070287683号、および同第20090082321号といった刊行物または特許に開示されており、これらの文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。これらの作用剤は、既に記述された天然または合成ポリマーの代わりまたは追加として添加することができる。
【0037】
本発明の製剤は、任意の適切な既知の手段により患者またはその他の生物に送達することができる。活性成分およびその他の賦形剤に対する、製剤に添加される添加剤の比率および添加剤の種類は、所望されている製剤の種類に依存する。例えば、その治療を必要とする患者または生物に送達する経口懸濁剤の製剤では、ビヒクルは経口液または経口カプセルとすることができる。好ましい製剤は経口カプセルである。
【0038】
本発明の組成物は、製薬学的に許容可能な賦形剤および/または充填剤と、増量剤、例えばラクトースまたは以下に制限されないが、グルコース、スクロース、マニトール等を含むその他の糖等と、潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸カルシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびこれらの混合物等をさらに含む。充填剤または潤滑剤またはその他の既知の製薬学的に許容可能な添加剤の量は、製剤の種類および製剤を加工または製造する方法によって異なる。
【0039】
本発明の組成物は錠剤、カプセルまたは懸濁剤の形態で経口的に送達または投与することができる。錠剤またはカプセルは、当該技術分野で既知の手段により調製することができ、例えば、ポリマー添加剤を含め、列挙した送達剤に加えて、治療に有効な量の本発明の式IまたはIIの高硫酸化二糖を含むことができる。錠剤および丸薬またはその他の適切な製剤は、腸溶コーティングおよびその他の放出制御コーティングを使って調製することができる。軽度の保護性または嚥下性を提供する目的で、コーティングを施すことができる。カプセルおよび錠剤または懸濁剤は、薬の味を改善する添加剤を含むことができる。
【0040】
経口投与用の液体剤形は、式Iの化合物およびその塩、ならびに製薬学的に許容可能なポリマーから選択される添加剤に加えて、水等の不活性な希釈剤を含む製薬学的に許容可能な乳化剤、溶剤、懸濁剤、シロップおよびエリキシル剤を含むことができる。このような製剤は、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、甘味剤、風味剤および芳香剤を含む補助剤をさらに含有してもよい。
【0041】
式IおよびIIの化合物は、上述のように、製薬学的に許容可能な塩を形成する。金属塩としては、例えば、Na、K、Ca、NgもしくはBa、またはAl、Zn、Cu、Zr、Ti、Bi、MnもしくはOsを有する塩、あるいは、式IまたはIIの化合物をアミノ酸等の有機塩基または任意のアミンと反応させることにより形成される塩が挙げられる。好ましい塩はナトリウム塩である。
【0042】
したがって、本発明の好ましい製剤には、表1に示す化合物が含まれ、それは高硫酸化二糖ナトリウムであり、例えば、カーボポール934P等のイオン性、膨潤性、親水性、かつ不溶性のポリマーから選択される添加剤から選択される送達剤をさらに含む。好ましい製剤は、カプセルまたは経口懸濁剤の形態で投与される。
【0043】
これらの製剤は、数多くの炎症性疾患および炎症状態の治療に有用である。本明細書で考慮される呼吸器の疾患および状態の種類としては、季節的または通年性のくしゃみ、鼻漏、鼻詰まり、ならびにしばしば結膜炎および咽頭炎を特徴とするアレルギー性鼻炎;鼻粘膜の浮腫、鼻汁および粘膜を特徴とする急性鼻炎が挙げられる。内因性または外因性の気管支喘息等の肺疾患、任意の炎症性肺疾患、急性/慢性気管支炎、慢性気管支炎に続発する肺の炎症反応、慢性閉塞性肺疾患、肺繊維症、グッドパスチャー症候群、ならびに特発性肺線維症およびその他の任意の自己免疫性肺障害も含め、白血球が役割を果たす可能性のある肺の疾患または状態は、本発明の製剤を使って治療可能である。
【0044】
耳、鼻および喉の障害、例えば急性外耳炎、フルンケル症および外耳の耳真菌症は、本発明の製剤によって治療可能である。その他の状態としては、外傷性および感染性の鼓膜炎、急性耳管炎、急性漿液性中耳炎ならびに急性および慢性副鼻腔炎等の呼吸器疾患が挙げられる。
【0045】
本発明の製剤は、肺の炎症の治療に有用である。用語「肺の炎症」には、任意の炎症性肺疾患、急性/慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、肺繊維症、グッドパスチャー症候群、ならびに以下に限定されないが、特発性肺線維症およびその他の任意の自己免疫性肺疾患も含めて、白血球が役割を果たしている可能性のある任意の肺の状態が含まれる。
【0046】
本発明の製剤は、喘息および喘息に関連する病態の治療に有用である。用語「喘息」は、アレルギーに起因し、喘鳴、胸部狭窄感、および多くの場合、咳またはあえぎを伴う継続的または発作性の呼吸困難を含む症状を有する状態を意味する。用語「喘息に関連する病態」は、気管支痙攣を伴う、主に炎症性の症状を有する状態を意味する。喘息および喘息に関連する病態はいずれも、程度は異なるが、平滑筋の収縮(けいれん)、粘膜の浮腫ならびに気管支および細気管支の内腔の粘液を原因とする、突発的にまたは治療の結果、短期間に渡って変化する気道の狭窄を含む症状を特徴とする。一般に、これらの症状は、アレルギー反応の過程でけいれん原物質および血管収縮物質(例えば、ヒスタミンまたは特定のロイコトリエンもしくはプロスタグランジン)が局所的に放出されることによって引き起こされる。喘息に関連する病態の非限定例としては、気道過敏性(例えば、慢性気管支炎、肺気腫および嚢胞性線維症)を特徴とする喘息以外の状態も含む。喘息の最も顕著な特徴は、気管支痙攣、すなわち気道の狭窄であり、喘息患者は中枢気道と末梢気道の平滑筋が顕著に収縮し、粘膜の産生が増加し、炎症が増加する。喘息における炎症反応は、粘膜で覆われた組織に典型的であり、血管拡張、血漿滲出、好中球、単球、マクロファージ、リンパ球および好酸球等の炎症細胞の炎症部位への動員ならびに常在組織細胞(マスト細胞)または移動炎症細胞による炎症性メディエーターの放出を特徴とする(J.C.Hogg,”Pathlogy of Asthma,”Asthma and Inflammatory Disease,P.O’Byren(ed.),Marcel Dekker, Inc.,New York,NY 1990,pp.1〜13)。
【0047】
喘息は、アレルゲンに対する反応、感染体への二次的暴露、工業性または職業性暴露、化学物質の摂取、運動および/または血管炎等の複数または種々の原因によって引き起こされる可能性がある(Hargreave et al.,
J.Allergy Clinical Immunnol.83:1013〜1026,1986)。本明細書で論じられている通り、アレルギー喘息の発作には2期ある可能性がある。初期と気管支刺激から4〜6時間後に起こる晩期である(Harrison’s Principles of Internal Medicine 14th Edl,Fauci et al.(eds),McGraw Hill,New York,NY 1998, pp.1419〜1426)。通常、突発的に消散する初期には、マスト細胞からの細胞メディエータの放出によって引き起こされる反応を含め、即時の炎症反応が含まれる。晩期反応は数時間の期間に渡って発現し、多形核白血球および繊維素析出の初期の出現に続く好酸球の湿潤により組織学的に特徴づけられる。特定の比率の患者は、「二重レスポンダー」であり、初期の急性反応と晩期の反応が発現する。二重レスポンダーにおいては、急性期の4〜14時間後に、気道抵抗が二次的に増加する(「晩期反応」またはLPRもしくは「晩期気道反応」またはLAR)。晩期反応は、気道の炎症と相まって、長期の気道過敏性(AHR)、喘息憎悪または過敏性、症状の悪化、および一般には、被験者によっては数日間から数ヶ月も続く可能性のある、より深刻な形態の臨床喘息に通じ、積極的治療を要するため、晩期レスポンダーおよび二重レスポンダーは、特に臨床的に重要である。アレルギー動物における薬理学的研究では、気管支収縮反応だけでなく、炎症細胞出現およびメディエータ放出パターンも、二重レスポンダーでは、急性レスポンダーとは相当異なることが実証されている。
【0048】
気道過敏性(AHR)の増大は、より深刻な形態の喘息の特徴であり、抗原刺激および非抗原刺激のどちらによっても誘発され得る。最終段階の反応、アレルゲン誘導性の喘息および永続的な反応亢進は、炎症を起こした肺組織への白血球、特に好酸球の動員と結び付けられてきた(W.M. Abraham et al.,Am.Rev.Respir.Dis.138:1565〜1567,1988)。好酸球は、15−HETE、ロイコトリエンC4、PAF、陽イオンタンパク質および好酸球ペルオキシダーゼを含むいくつかの炎症性メディエーターを放出する。
【0049】
さらに、本発明の製剤は、肺外部位における晩期反応および炎症反応、例えば、アレルギー性皮膚炎、炎症性腸疾患、リウマチ性関節炎およびその他の膠原病性脈管疾患、糸球体腎炎、炎症性皮膚疾患および状態、ならびにサルコイドーシスの治療にも有用である。
【0050】
本明細書で使用する場合、用語「症状の治療または緩和」は、本発明の製剤を投与した個人の症状を、治療を受けていない同じ個人またはとある個人の症状と比較して、軽減、予防および/または逆行させることを意味する。したがって、喘息または喘息に関連する病態の症状を治療または緩和する本発明の製剤は、二重レスポンダーである個人において抗原チャレンジに対する早期喘息反応を軽減、予防および/または逆行させ、より好ましくは、二重レスポンダーである個人において抗原チャレンジに対する晩期喘息反応を軽減、予防および/または逆行させ、さらに好ましくは、二重レスポンダーである個人において抗原チャレンジに対する早期および晩期の両方の喘息反応を軽減、予防および/または逆行させる。この「治療」または「緩和」は、記載されている製剤に関して本明細書で提示されている動物モデルで示されているように、LARおよびAHRのデータに関して、有意な比率であることが好ましい。
【0051】
用語「抗原」と「アレルゲン」は、アレルギー反応の誘発および/または喘息のエピソードもしくは喘息症状の誘発を、そのような状態を罹患している個人において起こし得る粉塵または花粉等の物質を記述するために同義的に用いる。したがって、個人に喘息反応を引き起こすのに十分な量、アレルゲンまたは抗原が存在しているとき、その個人は「チャレンジ」を受けている。
【0052】
本発明の製剤は、晩期反応(LPR)により影響を受ける任意の疾患または状態の治療に有用であることも分かる。気道はこのようなLPRによって影響を受ける器官または組織の単なるプロトタイプである。医学文献では、二重レスポンダーの喘息患者において観察される最終期の気管支収縮およびAHRは、喘息患者またはさらには肺疾患の患者に限られた独立した現象ではないことが確立されている。したがって、本発明の製剤は、肺に関係するLPRに加えて、皮膚、鼻、目および全身のLPRの兆候を含め、LPRにより影響を受けるあらゆる疾患または状態の治療に有用である。アレルギー機構が関与すると認識されている臨床疾患(皮膚、肺、鼻、目またはその他の器官のいずれでかに関わらない)には、抗原チャレンジを受けると発生する即時のアレルギー反応または過敏性反応に続く組織学的炎症性要素が存在する。この反応シーケンスは、マスト細胞メディエータに関係し、ターゲット器官内にあるその他の常在細胞によって、またはマスト細胞もしくは好塩基球の脱顆粒の部位に動員された細胞によって伝播するように見える。したがって、本製剤は、炎症性腸疾患、リウマチ性関節炎、糸球体腎炎および炎症性皮膚疾患の治療に有用である。したがって、本発明は、例として以下に制限されないが、肺、鼻、皮膚、目および全身のLPRが挙げられる晩期アレルギー反応によって特徴づけられ、ならびに/または炎症反応によって特徴づけられる疾患または状態を罹患しており、その治療を必要とする患者または生物に、式IまたはIIの化合物と、例えばポリマー添加剤等の送達剤とを含有する製剤を任意の既知の手段によって投与することを通じて、前記患者または生物を治療する方法に関する。
【0053】
用語「炎症状態」は、喘息および/または喘息に関連する病態等の肺炎症、肺炎、結核、リウマチ性関節炎、肺系統に影響を及ぼすアレルギー反応、喘息および喘息に関連する病態における早期および晩期の反応、肺の抹消気道および中枢気道の疾患、気管支痙攣、炎症、粘膜の増産、血管拡張、血漿滲出、好中球、単球、マクロファージ、リンパ球および好酸球等の炎症細胞の動員ならびに/または常在組織細胞(マスト細胞)による炎症性メディエータの放出を伴う状態、アレルゲン、感染に対する二次応答、産業暴露または職業暴露、特定の化学物質または食物の摂取、薬剤、運動または血管炎により引き起こされる状態または症状、急性気道炎症、長期の気道過敏性、気管支過敏性の増加、喘息憎悪、過敏性を伴う状態または症状、15−HETE、ロイコトリエンC4、PAF、陽イオンタンパク質または好酸球ペルオキシダーゼ等の炎症性メディエータの放出を伴う状態または症状、皮膚、鼻、目または全身の晩期アレルギー反応の兆候に関係する状態または症状、抗原チャレンジを受けた時に組織学的炎症要素を有するアレルギー機構が関与する、皮膚、肺、鼻、目もしくは喉またはその他の器官の臨床疾患、アレルギー性鼻炎、季節性または通年のくしゃみによって特徴づけられる呼吸器疾患、鼻漏、結膜炎、咽頭炎、内因性または外因性気管支喘息、任意の炎症性肺疾患、急性/慢性気管支炎、急性/慢性気管支炎に続発する肺の炎症反応、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺繊維症、グッドパスチャー症候群、以下に限られないが、特発性肺線維症およびその他の任意の自己免疫性肺疾患を含め、白血球が役割を果たす任意の肺の状態、急性外耳炎、フルンケル症および外耳の耳真菌症等の耳、鼻および喉の障害、外傷性および感染性鼓膜炎、急性耳管炎、急性漿液性中耳炎、急性および慢性副鼻腔炎等の呼吸器疾患、任意の晩期反応およびアレルギー性鼻炎等の炎症応答から選択される肺外状態、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、炎症が発生し、および/または炎症性腸疾患を含め、炎症反応が大きな役割を果たす外肺疾患、リウマチ性関節炎およびその他の膠原病性脈管疾患、糸球体腎炎、炎症性皮膚疾患およびサルコイドーシス、ならびに以下に記す心血管炎症から成る群より選択される疾患、状態または症状を意味する。
【0054】
本発明の製剤は、心臓血管系疾患に伴う炎症状態の治療に用いることも可能である。グルココルチコイドステロイドおよびシクロホスフォミド等の従来の抗炎症薬には重大な副作用が伴うことが知られているため、これらはアテローム硬化性の炎症の治療には不適切な選択肢になっている。他方、本発明のポリ硫酸化二糖製剤には、抗炎症性に加えて、副作用がほとんどないという利点がある。動脈硬化病変は、特定の場所に蓄積して、病変を引き起こし、および/または悪化させるマクロファージ、リンパ球および樹状細胞の存在を含め、慢性的炎症に伴う多くの性質に起因するかまたはそれらの性質を有することが明白に主張されている(L.K.Curtiss,N.Engl.J.Med.360;11 1144〜1146(2009))。したがって、本発明の製剤は、動脈硬化性疾患または状態を有する患者において、かかる障害の治療に有用であり、さらに、侵襲的血管手術後または臓器移植後の再狭窄の治療または予防にも有用である。心臓血管疾患の治療に適切な製剤は、内服投与または非経口投与も含めて、任意の既知の手段によって投与することができる。本発明は、心血管炎症の治療の方法であって、その治療を必要とする患者へ、R1〜R6が本明細書の定義に従う式Iの化合物およびその製薬学的に許容可能なその塩、ならびに送達剤を含有する組成物を投与することを含む方法を含む。本発明はさらに、本明細書の定義に従うR1〜R6を有する式Iの化合物と、HMGCoA還元酵素阻害剤または心臓血管系疾患の治療に使われるその他の心臓血管系薬(1種または複数)から選択される心臓血管系薬との組合せを含む。「組合せ」は、一方の活性成分が本発明の高硫酸化二糖であり、他方の活性成分がロバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチンまたはロサバスタチンカルシウム等のHMGCoA還元酵素阻害剤から選択される、少なくとも2つの活性成分を有する単一の剤形の形態とすることができる。好ましい実施形態では、組合せは、送達剤およびHMGCoA還元酵素阻害剤から選択されるもう第2の活性成分と共に、本明細書の定義に従うR1〜R6を有する式IまたはIIの化合物を含有する本発明の製剤を含む。
【0055】
本発明の製剤は、ヒトおよび他の動物での有用性を予測する動物実験で効果があることが明らかになっている。動物実験は、本発明の製剤が(a)抗原によって誘発される気管支収縮反応および気管支過敏性(気道過敏性(AHR)とも呼ばれる)の予防、ならびに(b)治療動物における抗原チャレンジに続くAHRの改善に有用であることを示している。肺の気流抵抗は、Ascaris Suum抗原に対して気管支収縮二重レスポンダーであることが事前に確認されているアレルギー性ヒツジを使って測定した。このヒツジに、カフ付き経鼻気管チューブを挿管し、肺の気流抵抗(RL)を食道バルーンカテーテル技法によって測定し、胸部ガス容積を体幹プレチスモグラフィーによって測定した。データをRLの比数(SRL=RL×胸部ガス容積(Vtg))として表した。気道応答性は、緩衝食塩水の吸入の前後およびカルバコールの濃度を上げた10呼吸の投与(0.25、0.5、1.0、2.0および4.0% wt/vol溶液)の各々の後にSRLを測定することにより、吸入カルバコール(収縮作用薬)に対する積算投与量反応曲線をまず求めることにより決定した。気道応答性は、SRLを基線を超えて400%に上昇させたカルバコール(呼吸単位)の積算誘発投与量(PD400)を決定することにより測定した。1呼吸単位は、1%カルバコール溶液の1呼吸として定義した。
【0056】
適宜、規定された投与方法に従って、本発明の製剤は、生物または患者が抗原に暴露される前、暴露された時点または暴露された後に、治療の対象とする特定の疾患または状態に関係して投与することができる。活性成分(式Iの高硫酸化二糖)の投与量は、1日当たり1mg未満〜1,000mgの範囲であってよい。適切な投与量も、治療対象の生物1匹に対し、1日当たり0.001mg/kg〜100mg/kgまたは100mg/kg超の範囲であってよい。好ましい投与量の範囲は、1日当たり0.1mg/kg〜1mg/kgである。当業者であれば、本明細書で言及されている疾患または状態の治療のために、患者ごとまたは患者グループごとに投与量を変更することができる。カプセル、錠剤または懸濁剤は、1日に1回または2回の投与に合わせて、活性成分を5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、100mgおよび200mg含む投与量で調製することができる。カプセルまたは錠剤または経口懸濁剤はさらに、本明細書で記述された活性薬の送達を増強するポリマー(天然または合成)またはその他/追加の作用剤から選択される添加剤等の送達剤を少なくとも0.1パーセント(wt/wt単位で)含む。
【0057】
本発明の製剤は、単独もしくは他の適切な薬物または活性成分と組み合せて、治療の対象とする特定の疾患または状態に応じて投与することができる。好ましい実施形態では、本発明の製剤または化合物は朝または夕方に投与する。したがって、本発明は、抗原曝露に関係し、早期および晩期反応を伴う疾患または状態の治療方法であって、本明細書での定義に従うR1〜R6を有する式IまたはIIの化合物(すなわち、硫酸基を少なくとも2個有する)と送達増強剤とを治療に有効な量、それを必要とする生物に投与することを含み、その製剤を朝または夕方に投与する方法を含む。本発明はさらに、抗原暴露に関係し、早期および晩期反応を伴う疾患または状態の治療方法であって、製剤を形成するための本明細書での定義に従うR1〜R6を有する式IまたはIIの化合物と、天然もしくは合成ポリマーまたはその他/追加の送達増強剤とを治療に有効な量、それを必要とする生物に投与することを含み、前記製剤を朝または夕方に生物に投与する方法を含む。追加の活性成分は、併用療法の形式または少なくとも2つの活性成分を有する単回投与単位の形式で投与することができ、第1の活性成分は、本明細書での定義に従うR1〜R6を有する式IまたはIIの化合物であり、第2の活性成分は、喘息もしくは喘息に関連する障害もしくは状態、または本明細書に列挙されたその他の炎症状態の治療のために最先端治療として使われるいずれかの薬または薬物から選択される。そのような薬物としては、抗炎症剤、ロイコトリエン拮抗薬または修飾剤、抗コリン作用薬、マスト細胞安定剤、コルチコステロイド、免疫刺激剤、ベータアドレナリン作動薬(短期作用および長期作用)、メチルキサンチン、および以下に制限されないが、モンテルカストナトリウム、アルブテロール、レバルブテロール、サルメテロール、ホルモテロール、プロピオン酸フルチカゾン、ブデソニド、セチリジン、ロラタジン、デスロラタジン、テオフィリン、イプラトロピウム、クロモリン、ネドクロミル、ベクロメタゾン、フルニソリド、モメタゾン、トリアミシノロン、プレドニゾリン、プレドニゾン、ザフィルルカスト、ジレウトンまたはオマルジウナブ(omalziunab)を含む、上記のような障害の治療に使用されるその他の一般クラスまたは特定の薬品が挙げられる。
【0058】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態をさらに詳しく説明することを目的としており、非制限的である。
【0059】
実施例1 高硫酸化二糖の調製
最初にヘパリンナトリウムを脱重合化することによって、本発明の製剤で用いる化合物を調製した。活性薬物物質の調製のための出発物質は、例えば、ブタ腸粘膜ヘパリン(1〜4個の連結したグルコサミンおよびウロン酸残基から成る多分散硫酸化コポリマー)である。本明細書で記述されている活性薬物物質(ADS)、高硫酸化二糖は、ヒツジモデルで抗アレルギー活性を有することが示された。ADSの生成は一般に、以下の手順であった。
1)ブタヘパリンを制御下で亜硝酸脱重合化
2)NaBH4を持つ末端アルデヒド基をアルコールに還元
3)サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)によって、分離した二糖のアンモニウム塩を生成
4)二糖アンモニウム塩を三酸化硫黄ピリジン錯体と反応させ、高硫酸化二糖を生成
5)SECに続いてナトリウム塩への陽イオン交換を行い、最終生成物を得る
この方法で生成される好ましい生成物は、以下に示すナトリウム塩形態の硫酸基を6個有する高硫酸化二糖(化合物14a)であった。
【化17】
化合物14aの溶解度は>0.5g/mLである。以下の手順において、本明細書に記述される化合物を製造するための数多くの可能な方法の1つを説明する。室温で、水3リットルを入れたビーカーに、市販のブタヘパリン−Na(例えば、Wisconsin州WaunakeeのSPL等の市販の供給源から入手)250gを加え、攪拌してスラリーにし、その時点でさらに水2リットルを加え、ヘパリン塩を完全に溶解した。
【0060】
次にヘパリン溶液のpHをおよそpH6(5.98)に調節した。この溶液に、NaNO2(0.25mmol、J.T.Baker、ACSグレード)を17.25g添加し、ヘパリンの制御した亜硝酸脱重合化を達成した。攪拌を10分間続け、その間に約23℃の温度で、37%HClを約35.1mlゆっくりと加え、pHをおよそ3(3.00)にした。溶液の温度およびpHを2時間(120分)モニタリングし、その間に温度は20℃に、pHは2.16に低下した。次に50%NaOHを約23mlゆっくりと加えて、pHを6.75に調節し、溶液をクエンチし、脱重合化したヘパリン溶液を得た。
【0061】
上記で得た脱重合化したヘパリン溶液をdtH2Oを使って最終容積8リットルに希釈し、濾過し(Millipore社(Mass.、Bedoford)、Pellicon 2、面積が0.5m2の3k PLBC−C(カセット:Cat#PS PLBCC 05)、(分子量3kDaでカットオフ)、サイズが3kDa(3000ダルトン)に満たないヘパリンオリゴ糖を採取し、濃縮した(すなわち、透過液は3000ダルトンに満たないこれらのオリゴ糖から構成されていた)。3000ダルトンより大きい濃縮物を、20M溶液を使って、亜硝酸の脱重合化処理に再びかけ、さらにヘパリンの分解を開始した。同じ種類のフィルター(分子量3000ダルトンでカットオフ)を使って、この2回処理したオリゴ糖調製物を限外濾過した後、得られた透過液(分子量3kDa未満)を初回の限外濾過から得た透過液に加え、続いて、バッチ全体を逆浸透圧法で濃縮し、最終容積を2.5リットルに減少させた。続いて、これを凍結乾燥した。
【0062】
凍結乾燥したオリゴ糖調製物(50g)を1リットルの純水に溶解した後、2〜10℃の氷浴で冷却した。冷却したオリゴ糖溶液にNaHCO3(21g)を添加し、完全に溶解するまで調製物を攪拌した。0.01MのNaOH溶液400mL中の0.5Mの水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)溶液を調製し、60分かけて、冷却したオリゴ糖/NaHCO3溶液にゆっくりと添加した。NaBH4溶液0.5Mの処理は、5員環上に形成されたアルデヒド(脱アミノ反応後に形成される)をアルコール成分に還元することが目的だった。この反応調製物を3時間、2〜10℃で攪拌した後、濃HClでクエンチし、pH4.0にした。その後、溶液のpHをNaOHを使って、6.75に調節し、最終的に逆浸透圧法で最小容量に濃縮し、その後、凍結乾燥して、還元オリゴ糖を得た。サイズが3kDa未満の還元オリゴ糖調製物を後にBio−Rad Biogel P6樹脂(0.2MのNH4HCO3による溶出)を使って、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)によって分画してオリゴミックス(oliogmix)を分画し、二糖アンモニウム塩を採取した。採取した画分をカルバゾールアッセイで分析し、Abs530対画分数のプロットにより、採取した画分のプロファイルを得た。プロファイル上の類似画分をプールし、後で凍結乾燥し、分離した画分をアンモニウム塩として得、NH4HCO3を除去した。Amberlite IR 120 Plus陽イオン交換樹脂(Sigma−Aldrich社から市販されている)を使った陽イオン交換によって、アンモニウム塩をナトリウム塩の形態に変えた。これらの画分から2つの二糖を得、化合物A(85重量%)およびB(3〜5重量%)と同定された。
化合物A:
【化18】
化合物B:
【化19】
【0063】
上記の化合物AおよびBを含有する画分をさらに処理し、高硫酸化二糖を形成した。2つの非制限的方法を利用した。方法1では、2.5グラムの二糖を含有する上記フラクションを50mLの水に溶解させた溶液を、Sigma−Aldrich社から市販されているDowex 500WX200酸性樹脂と、製造メーカーの指示に従って反応させることによって酸性化した。酸性の濾液をテトラブチルアンモニウムヒドロキシドを使って中和し、その溶液を凍結乾燥し、テトラブチルアンモニウム(Bu4N+)塩を綿状固体として得た。次にアルゴン下で、無水DMF(50mL)を二糖アンモニウム塩と(CH3)3NSO3(5.22グラム)との混合物に添加した。この反応混合物を50℃で48時間、加熱した。次にこの溶液を室温に冷却した。酢酸ナトリウムのエタノール飽和溶液100mlを添加し、この混合物を室温で20分間攪拌し、水2.5Lで希釈した後、500ダルトン(すなわち、0.5kDa)の膜で濾過した。濃縮物(すなわち、0.5kDaより大きい)を凍結乾燥し、NH4HCO3溶液0.2Mに再び懸濁し、製造メーカーの指示に従って、Bio−Rad Biogel P6樹脂(Bio−Rad社、Hercules、CA)でクロマトグラフィーにかけ、0.2MのNH4HCO3で溶出し、高硫酸化二糖のNH4+塩(3.5グラム)を得た。この塩の一部(2.4グラム)を、製造メーカーの指示に従って、Amberlite IR 120 Plus陽イオン交換樹脂(Sigma−Aldrich社から市販されている)と反応させ、Na+塩に変換し、表1に示されており、以下に化合物14aとして示されている化合物14のナトリウム塩を得た:
化合物14a:
【化20】
この化合物は、方法2によっても調製した。方法2では、化合物AとBを含有する画分0.5グラムと(CH3)3NSO33グラムとのアルゴン下、15mLのDMF中の混合物を48時間、60℃で加熱した。その後、この反応混合物を室温に冷却し、10%の酢酸ナトリウム水溶液20mLで希釈し、室温で20分間攪拌し、エタノール100mLを添加し、高真空下でこの反応混合物を濃縮し、固体残渣を得た。この残渣を500mLの水に溶解し、500ダルトンの膜で濾過した(H2Oで3回洗浄)。高硫酸化した14a生成物を含有するナトリウム塩濃縮物を凍結乾燥して、オフホワイトの固体を得た。
【0064】
実施例2 動物モデル(ヒツジ)の肺の評価
以下に限定されないが、本明細書に列挙された具体的な疾患および状態を含め、アレルゲンに関連する疾患および状態の治療および緩和に対する本発明による製剤の有効性を実証するために、添加ポリマーまたは添加剤を含有していない様々な製剤と、ポリマーから選択される添加剤と共に式Iの化合物(化合物14a)を含有する製剤を投与された動物とを比較する複数の実験で、ヒツジを評価した。肺の気流抵抗を測定するために、ヒツジにカフ付き経鼻気管チューブを挿管し、肺の気流抵抗(RL)を食道バルーンカテーテル技法によって測定し、胸部ガス容積を体幹プレチスモグラフィーによって測定した。これらの方法は一般に認められており、文献に書かれた周知の方法である。データはRLの比数(SRL=RL×胸部ガス容積(Vg))として表した。
【0065】
気道応答性を評価するために、緩衝食塩水の吸入の前後およびカルバコールの濃度を上げた10呼吸の投与(0.25、0.5、1.0、2.0および4.0% wt/vol溶液)の各々の後にSRLを測定することにより、吸入カルバコールに対する積算投与量反応曲線を描いた。気道応答性は、SRLを基線を超えて400%に上昇させたカルバコール(呼吸単位)の積算誘発投与量(PD400)を決定することにより測定した。1呼吸単位は1%カルバコール溶液の1呼吸として定義した。
【0066】
気道実験では、各動物の基線の気道応答性(PD400)を求めた後、実験日を変えて、試験ヒツジにAscaris suum抗原で気道チャレンジを与えた。SRLを測定して、基線を決定した後、抗原チャレンジの直後と8時間の期間、1時間に1回SRLを測定し、その後、抗原チャレンジの24時間後にチャレンジ後PD400を測定した。本明細書で提示されている図の各々では、図1A、2A、3A等は8時間の期間において1時間ごとに測定された2日目のデータを提示しており、対照データ(黒丸)と薬物治療データ(白丸)を含んでいる。薬物治療実験は、対照実験で使った動物と同じ動物で実施したが、実施したのは3日目のPD400測定の日から数週間後であった。図1B、2B、3B等には、1日目の基線PD400データと対照動物または薬物治療動物における抗原チャレンジ後の3日目のPD400データが含まれている。
【0067】
データは、(a)SRLの+/−SE変化率(%)の平均および(b)呼吸単位でのPD400として表したか、または表すことができる。データはまた、(c)早期気道応答(EAR、0〜4時間)および晩期気道応答(LAR、4〜8時間)の防護率(%)として表し、各々EARおよびLARの曲線下の面積で概算した。さらに、(d)AHR防護率(%)=100−基線PD400−薬物抗原PD400×100
基線PD400−対照抗原PD400
例として、図11Bでは、基線PD400−薬物抗原PD400は22−20.7であり、基線PD400−対照抗原PD400は24−12.3であった。1.3/11.7x100−10であり、AHRの防護率は100−10=90%である。
【0068】
図1A〜5Bに提示されている実験において、データは対照抗原応答実験についてと薬物治療応答実験について、SRLの変化率(%)および呼吸単位でのPD400を示している。薬物治療を施した動物には、ポリマー添加剤なしで、液状で経口投与した。図1Aは、経口投与量1mg/kgで化合物14a(MD1599−8)を投与した場合の対照と比較した動物のSRLの経時的な変化率(%)を示している。図1Aで分かるように、対照と薬物治療との間に、EAR(0〜4時間)には有意な効果はなかったが、薬物治療によって、抗原暴露後の期間におけるLAR(4〜8時間)には、ある程度ポジティブな効果があった(LAR防護率(%)=38%)。図1Bで分かるように、経口投与量1mg/kgでは、気道過敏性にもわずかなポジティブ効果があった(AHR防護率(%)=19%)。
【0069】
図2Aは、経口投与量2mg/kgで化合物14a(MD1599−8)を投与した場合の対照と比較した動物のSRLの経時的な変化率(%)を示している。図2Aで分かるように、対照と薬物治療との間に、EARにある程度の効果があったが、薬物治療によって、抗原暴露後のLARには、より有意なポジティブな効果が見られた(LAR防護率(%)=82%)。図2Bで分かるように、経口投与量2mg/kgでは、投与量1mg/kgに比べて、気道過敏性にもより有意な効果が見られた(AHR防護率(%)=85%)。
【0070】
図3Aは、12時間の間隔で2日間に渡り、経口投与量1mg/kgで化合物14a(MD1599−8)を投与した場合(1mg/kgの14aを3回投与)の対照と比較した動物のSRLの経時的な変化率(%)を示している。抗原チャレンジは1mg/kgを最後に投与した90分後に行った。図3Aで分かるように、対照と薬物治療との間において、EARには何の効果もなかったが、薬物治療によって、抗原暴露後のLARには、ある程度ポジティブな効果があった(LAR防護率(%)=48%)。図3Bで分かるように、経口投与量1mg/kgで、気道過敏性に顕著な効果があり(AHR防護率(%)=100%)、薬物治療からの累積効果を表している。
【0071】
図4Aは、3日間に渡り、朝にヒツジに経口投与量2mg/kgで化合物14a(MD1599−8)を投与した場合の対照と比較した動物のSRLの経時的な変化率(%)を示している。抗原チャレンジは2mg/kgを午前中に最後に投与した24時間後に行った。図4Aで分かるように、対照と薬物治療との間において、EARには何の効果もなかったが、薬物治療によって、LARには、有意なポジティブ効果が現れた(LAR防護率(%)=78%)。図4Bで分かるように、上記の要領で経口投与量2mg/kgを投与した場合、気道過敏性にポジティブな効果があった(AHR防護率(%)=100%)。
【0072】
図5Aは、抗原暴露前に3日間に渡り、夕方(午後)に経口投与量2mg/kgで化合物14a(MD1599−8)を投与した場合の対照と比較した動物のSRLの経時的な変化率(%)を示している。抗原チャレンジは2mg/kgを夕方に最後に投与した15時間後に行った。図5Aで分かるように、対照と薬物治療との間において、EARにはある程度の効果があり、薬物治療によって、抗原暴露後のLARには、有意な効果が現れた(LAR防護率(%)=75%)。図5Bで分かるように、経口投与量2mg/kgでは、気道過敏性にもポジティブな効果があった(AHR防護率(%)=75%)。
【0073】
図6A〜13Bは、薬物治療なしで抗原に暴露され、抗原と薬物製剤治療および/またはそれに関係する対照の動物におけるSRLの変化率(%)およびPD400を示している。ここでも、図のAとBは対になっており、最初の3日間と、その後、2回の治療期間の間に数週間を挟んだ第2の3日間に採取された対照データまたは薬物治療データが含まれている。薬物製剤のそれぞれには、腸溶コーティングしたカプセルで投与される所定の重量パーセントのポリマーとラクトースと共に、所定の投与量の化合物14aが含有されている。実験に使用したヒツジの体重は30〜40kgであった(平均体重35kg)。したがって、比較のために、1日1回与えられる20mgの投与量は、1日につき、約0.6mg/kgの平均投与量、例えば、1日につき20mg/35kgで投与した。
【0074】
図6Aは、3日間に渡って、夜(午後)に、ラクトースを充填した腸溶コーティングカプセルで、化合物14aを15mgおよびカルボポール934Pを15mg(製剤MD1599−14)(重量/重量=1:1)経口投与し、15mgを最後に投与した15時間後に抗原チャレンジを与えた場合の対照と比較した動物におけるSRLの経時的な変化率(%)を示している。図6Aで分かるように、対照と薬物治療との間において、EARには何の効果もなかったが、薬物治療によって、抗原暴露後のLARには、ある程度ポジティブな効果があった(LAR防護率(%)=32%)。図6Bで分かるように、夜に経口投与量15mg×3日で投与した場合、気道過敏性にもポジティブな効果があった(AHR防護率(%)=80%)。
【0075】
図7Aは、3日間に渡って、夜に、15mgの腸溶コーティングカプセル2錠として、化合物14aを30mgおよびカルボポール934Pを30mg(製剤MD1599−14)経口投与した場合の対照と比較した動物におけるSRLの経時的な変化率(%)を示している。抗原チャレンジは30mg治療を最後に実施した15時間後に行なった。図7Aで分かるように、対照と薬物治療との間において、EARにはある程度ポジティブな効果があったが、薬物治療によって、抗原暴露後のLARには、有意なポジティブ効果が現れた(LAR防護率(%)=77%)。図7Bで分かるように、3日間、夜に経口投与量30mgで投与した場合、気道過敏性にもポジティブな効果があった(AHR防護率(%)=96%)。
【0076】
図8Aは、3日間に渡って、夜に、15mgの腸溶コーティングカプセル3錠として、化合物14aを45mgおよびカルボポール934Pを45mg(製剤MD1599−14)経口投与した場合の対照と比較した動物におけるSRLの経時的な変化率(%)を示している。抗原チャレンジは45mg治療を最後に実施した15時間後に行なった。図8Aで分かるように、対照と薬物治療との間において、EARには有意なポジティブ効果が現れ、薬物治療によって、抗原暴露後のLARには、有意なポジティブ効果が現れた(LAR防護率(%)=77%)。図8Bで分かるように、夜に3日間、経口投与量45mgで投与した場合、気道過敏性にもポジティブな効果があった(AHR防護率(%)=90%)。
【0077】
図9Aは、3日間に渡って、夜に、15mgの腸溶コーティングカプセル3錠として、カルボポール934Pを45mgとラクトース充填剤のプラシーボ剤(製剤MD1599−17)を経口投与した場合の対照と比較した動物におけるSRLの経時的な変化率(%)を示している。抗原チャレンジは45mg治療を最後に実施した15時間後に行なった。図19で分かるように、対照と薬物治療との間において、EARにはポジティブな効果はなく、プラシーボ治療によって、抗原暴露後のLARには、ポジティブな効果はなかった(LAR防護率(%)=0%)。図9Bで分かるように、夜に3日間、経口投与量45mgで投与した場合、気道過敏性にもポジティブな効果はなかった(AHR防護率(%)=0)。
【0078】
図10Aは、3日間に渡って、夜に、21mgの腸溶コーティングカプセル1錠として、化合物14aを21mgおよびカルボポール934Pを21mg(製剤MD1599−19)経口投与した場合の対照と比較した動物におけるSRLの経時的な変化率(%)を示している。抗原チャレンジは21mg治療を最後に実施した15時間後に行なった。図10Aで分かるように、対照と薬物治療との間において、EARにはある程度ポジティブな効果があり、薬物治療によって、抗原暴露後のLARには、有意なポジティブ効果が現れた(LAR防護率(%)=78%)。図10Bで分かるように、夜に3日間、経口投与量21mgで投与した場合、気道過敏性にもポジティブな効果があった(AHR防護率(%)=95%)。
【0079】
図11Aは、3日間に渡って、夜に、21mgの腸溶コーティングカプセル1錠として、ラクトース充填剤に包んで化合物14aを21mg(製剤MD1599−20)経口投与した場合の対照と比較した動物におけるSRLの経時的な変化率(%)を示している。抗原チャレンジは21mg治療を最後に実施した15時間後に行なった。図11Aで分かるように、対照と薬物治療との間において、EARには効果はなく、薬物治療によって、抗原暴露後のLARには、ある程度ポジティブな効果があった(LAR防護率(%)=54%)。図11Bで分かるように、経口投与量21mgで投与した場合、気道過敏性にもポジティブな効果があった(AHR防護率(%)=89%)。LARへのポジティブな効果は、薬物とカルボポールの両方を含有する21mg製剤に比べて有意に小さく、予想外であった(LAR防護が78%に対し、カルボポールなしでは54%。図10Aを参照)。言い換えれば、化合物14a等の高硫酸化二糖と例えば、カルボポールから選択される送達剤等とを含む製剤は、経口カプセル(10A)の形態で、非制限的で比較のための経口投与量0.5mg/kgで、試験対象のLARに予想を超えた大きな防護を提供する。これは投与量を1mg/kgに上げると、経口液体形態よりも大きな防護を提供した(LAR防護48%を示す図3Aを参照)。
【0080】
図12Aも、カルボポールなしで化合物14aを各21mgのカプセル2錠(42mg)で投与した場合、LARにポジティブな効果があった(LAR防護率(%)=76%)ことを示している。これは図10Aに示した化合物14aとカルボポールを含むカプセル(21mg)1錠の場合(LAR防護率(%)=78%)に匹敵し、したがって、カルボポールを含まない製剤と比べて、カルボポールが高硫酸化二糖のバイオアベイラビリティを2倍にすることを示している。
【0081】
図13Aは、3日間に渡って、夜に、15mgの腸溶コーティングカプセル1錠として、化合物14aを15mgおよびカルボポール934Pを30mg(重量/重量比=1:2)(製剤MD1599−22)経口投与した場合の対照と比較した動物におけるSRLの経時的な変化率(%)を示している。抗原チャレンジは15mg治療を最後に実施した15時間後に行なった。図13Aで分かるように、対照と薬物治療との間において、EARにはある程度ポジティブな効果があり、薬物治療によって、抗原暴露後のLARには、有意なポジティブ効果が現れた(LAR防護率(%)=81%)。これは図6Aに示す化合物14aとカルボポールを1:1の比率(重量/重量単位で)で含有する15mg経口カプセルの場合に見られたLARの防護率32%を有意に上回っている。図13Bで分かるように、化合物14aを15mgおよびカルボポールを30mg(重量/重量比=1:2)経口投与した場合、気道過敏性にもポジティブな効果があった(AHR防護率(%)=95%)。これはポリマー対薬物の比率(重量/重量単位)が大きい製剤ほど、LARとAHRの防護率(%)が上がることを示している。
【0082】
特許請求する本発明について、その具体的な実施形態に言及しながら詳しく記述してきたが、特許請求する本発明に対して、その精神と範囲から逸脱することなく、各種の変更および改変を加えられることは、当業者には明らかであろう。したがって、例えば、当業者は、単なる日常的な実験を用いることにより、特許請求する本発明の無数の実施形態のうち、明確に記述されていない可能性のある実施形態を認識するであろう。そのような実施形態は本発明の範囲内である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩と、送達剤とを含有する医薬製剤:
【化1】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、H、SO3H、PO3Hから成る群から独立して選択され、R1〜R6のうちの少なくとも2つは、SO3HまたはPO3Hおよび送達薬剤から選択される)。
【請求項2】
R1〜R6のうちの少なくとも3つがSO3HまたはPO3Hから選択される、請求項1の製剤。
【請求項3】
R1〜R6のうちの少なくとも4つがSO3HまたはPO3Hから選択される、請求項1の製剤。
【請求項4】
R1〜R6のうちの少なくとも5つがSO3HまたはPO3Hから選択される、請求項1の製剤。
【請求項5】
R1〜R6がSO3HまたはPO3Hから選択される、請求項1の製剤。
【請求項6】
式Iの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩と、送達剤とを含有する医薬製剤:
【化2】
(式中、R1、R2、R4、R5およびR6は、H、SO3HまたはPO3Hから独立して選択され、R3はSO3HまたはPO3Hから選択される)。
【請求項7】
式Iの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩と、製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される送達剤とを含有する医薬製剤:
【化3】
(式中、R1、R2、R5およびR6は、H、SO3HまたはPO3Hから独立して選択され、R3およびR4は、SO3HまたはPO3Hから独立して選択される)。
【請求項8】
(i)式Iの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩と
【化4】
(式中、R1、R2およびR6は、H、SO3HまたはPO3Hから独立して選択され、R3、R4およびR5は、SO3HまたはPO3Hから独立して選択される)、
(ii)送達剤と、
を含有する医薬製剤。
【請求項9】
(i)式IIの化合物
【化5】
およびその製薬学的に許容可能な塩と(式中、R1、R2、R4、R5およびR6は、H、SO3HまたはPO3Hから独立して選択される)、
(ii)送達剤と、
を含有する医薬製剤。
【請求項10】
下記のとおりのR1〜R6を有する式Iの化合物
【化6】
【表1】
およびその製薬学的に許容可能な塩と、親水性ポリマーから選択される送達剤とを含有する製剤。
【請求項11】
前記親水性ポリマーがアクリル酸の架橋ポリマーから選択される、請求項10の製剤。
【請求項12】
前記親水性ポリマーがカルボポール934Pから選択される、請求項11の製剤。
【請求項13】
炎症状態の治療を必要とする哺乳動物の炎症状態を治療または緩和する方法であって、
(i)式Iの化合物
【化7】
およびその製薬学的に許容可能な塩と(式中、R1〜R6は、SO3H、PO3HまたはHから独立して選択され、R1〜R6のうちの少なくとも2つは、SO3HまたはPO3Hである)、
(ii)送達剤と、
を含有する製剤を製薬学的に有効な量投与することを含む方法。
【請求項14】
前記送達剤が、製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤を含有する、請求項13の方法。
【請求項15】
R1〜R6のうちの少なくとも3つがSO3HまたはPO3Hから選択される、請求項13の方法。
【請求項16】
R1〜R6のうちの少なくとも4つがSO3HまたはPO3Hから選択される、請求項13の方法。
【請求項17】
R1〜R6のうちの少なくとも5つがSO3HまたはPO3Hから選択される、請求項13の方法。
【請求項18】
R1〜R6がSO3Hから選択され、前記送達剤が非水溶性の親水性の膨潤性ポリマーから選択される、請求項13の方法。
【請求項19】
前記非水溶性の親水性の膨潤性ポリマーがアクリル酸ポリマーから選択される、請求項18の方法。
【請求項20】
前記炎症状態が、喘息および/または喘息に関連する病態等の肺炎症、肺炎、結核、リウマチ性関節炎、肺系統に影響を及ぼすアレルギー反応、喘息および喘息に関連する病態における早期および晩期の反応、肺の抹消気道および中枢気道の疾患、気管支痙攣、炎症、粘膜の増産、血管拡張、血漿滲出、好中球、単球、マクロファージ、リンパ球および好酸球等の炎症細胞の動員ならびに/または常在組織細胞(マスト細胞)による炎症性メディエーターの放出を伴う状態、アレルゲン、感染に対する二次応答、産業暴露または職業暴露、特定の化学物質または食物の摂取、薬剤、運動または血管炎により引き起こされる状態または症状、急性気道炎症、長期の気道過敏性、気管支過敏性の増加、喘息憎悪、過敏性を伴う状態または症状、15−HETE、ロイコトリエンC4、PAF、陽イオンタンパク質または好酸球ペルオキシダーゼ等の炎症性メディエーターの放出を伴う状態または症状、皮膚、鼻、目または全身の晩期アレルギー反応の兆候に関係する状態または症状、抗原チャレンジを受けた時に組織学的炎症要素を有するアレルギー機構が関与する、皮膚、肺、鼻、目もしくは喉またはその他の器官の臨床疾患、アレルギー性鼻炎、季節性または通年のくしゃみによって特徴づけられる呼吸器疾患、鼻漏、結膜炎、咽頭炎、内因性または外因性気管支喘息、任意の炎症性肺疾患、急性/慢性気管支炎、急性/慢性気管支炎に続発する肺の炎症反応、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺繊維症、グッドパスチャー症候群、以下に限られないが、特発性肺線維症およびその他の任意の自己免疫性肺疾患を含め、白血球が役割を果たす任意の肺の状態、急性外耳炎、フルンケル症および外耳の耳真菌症等の耳、鼻および喉の障害、外傷性および感染性鼓膜炎、急性耳管炎、急性漿液性中耳炎、急性および慢性副鼻腔炎等の呼吸器疾患、任意の晩期反応およびアレルギー性鼻炎等の炎症応答から選択される肺外状態、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、炎症が発生し、および/または炎症性腸疾患を含め、炎症反応が大きな役割を果たす外肺疾患、リウマチ性関節炎およびその他の膠原病性脈管疾患、糸球体腎炎、炎症性皮膚疾患およびサルコイドーシス、ならびに心血管炎症から成る群より選択される、請求項13の方法。
【請求項21】
前記炎症状態の治療を必要とする哺乳動物がヒトである、請求項13の方法。
【請求項22】
(i)式Iの化合物またはその製薬学的に許容可能な塩と
【化8】
(式中、R1〜R6は、SO3H、PO3HまたはHから独立して選択され、R1〜R6のうちの少なくとも2つは、SO3HまたはPO3Hである)、
(ii)送達剤と、
を含有する経口薬。
【請求項1】
式Iの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩と、送達剤とを含有する医薬製剤:
【化1】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、H、SO3H、PO3Hから成る群から独立して選択され、R1〜R6のうちの少なくとも2つは、SO3HまたはPO3Hおよび送達薬剤から選択される)。
【請求項2】
R1〜R6のうちの少なくとも3つがSO3HまたはPO3Hから選択される、請求項1の製剤。
【請求項3】
R1〜R6のうちの少なくとも4つがSO3HまたはPO3Hから選択される、請求項1の製剤。
【請求項4】
R1〜R6のうちの少なくとも5つがSO3HまたはPO3Hから選択される、請求項1の製剤。
【請求項5】
R1〜R6がSO3HまたはPO3Hから選択される、請求項1の製剤。
【請求項6】
式Iの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩と、送達剤とを含有する医薬製剤:
【化2】
(式中、R1、R2、R4、R5およびR6は、H、SO3HまたはPO3Hから独立して選択され、R3はSO3HまたはPO3Hから選択される)。
【請求項7】
式Iの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩と、製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される送達剤とを含有する医薬製剤:
【化3】
(式中、R1、R2、R5およびR6は、H、SO3HまたはPO3Hから独立して選択され、R3およびR4は、SO3HまたはPO3Hから独立して選択される)。
【請求項8】
(i)式Iの化合物およびその製薬学的に許容可能な塩と
【化4】
(式中、R1、R2およびR6は、H、SO3HまたはPO3Hから独立して選択され、R3、R4およびR5は、SO3HまたはPO3Hから独立して選択される)、
(ii)送達剤と、
を含有する医薬製剤。
【請求項9】
(i)式IIの化合物
【化5】
およびその製薬学的に許容可能な塩と(式中、R1、R2、R4、R5およびR6は、H、SO3HまたはPO3Hから独立して選択される)、
(ii)送達剤と、
を含有する医薬製剤。
【請求項10】
下記のとおりのR1〜R6を有する式Iの化合物
【化6】
【表1】
およびその製薬学的に許容可能な塩と、親水性ポリマーから選択される送達剤とを含有する製剤。
【請求項11】
前記親水性ポリマーがアクリル酸の架橋ポリマーから選択される、請求項10の製剤。
【請求項12】
前記親水性ポリマーがカルボポール934Pから選択される、請求項11の製剤。
【請求項13】
炎症状態の治療を必要とする哺乳動物の炎症状態を治療または緩和する方法であって、
(i)式Iの化合物
【化7】
およびその製薬学的に許容可能な塩と(式中、R1〜R6は、SO3H、PO3HまたはHから独立して選択され、R1〜R6のうちの少なくとも2つは、SO3HまたはPO3Hである)、
(ii)送達剤と、
を含有する製剤を製薬学的に有効な量投与することを含む方法。
【請求項14】
前記送達剤が、製薬学的に許容可能な天然または合成ポリマーから成る群から選択される添加剤を含有する、請求項13の方法。
【請求項15】
R1〜R6のうちの少なくとも3つがSO3HまたはPO3Hから選択される、請求項13の方法。
【請求項16】
R1〜R6のうちの少なくとも4つがSO3HまたはPO3Hから選択される、請求項13の方法。
【請求項17】
R1〜R6のうちの少なくとも5つがSO3HまたはPO3Hから選択される、請求項13の方法。
【請求項18】
R1〜R6がSO3Hから選択され、前記送達剤が非水溶性の親水性の膨潤性ポリマーから選択される、請求項13の方法。
【請求項19】
前記非水溶性の親水性の膨潤性ポリマーがアクリル酸ポリマーから選択される、請求項18の方法。
【請求項20】
前記炎症状態が、喘息および/または喘息に関連する病態等の肺炎症、肺炎、結核、リウマチ性関節炎、肺系統に影響を及ぼすアレルギー反応、喘息および喘息に関連する病態における早期および晩期の反応、肺の抹消気道および中枢気道の疾患、気管支痙攣、炎症、粘膜の増産、血管拡張、血漿滲出、好中球、単球、マクロファージ、リンパ球および好酸球等の炎症細胞の動員ならびに/または常在組織細胞(マスト細胞)による炎症性メディエーターの放出を伴う状態、アレルゲン、感染に対する二次応答、産業暴露または職業暴露、特定の化学物質または食物の摂取、薬剤、運動または血管炎により引き起こされる状態または症状、急性気道炎症、長期の気道過敏性、気管支過敏性の増加、喘息憎悪、過敏性を伴う状態または症状、15−HETE、ロイコトリエンC4、PAF、陽イオンタンパク質または好酸球ペルオキシダーゼ等の炎症性メディエーターの放出を伴う状態または症状、皮膚、鼻、目または全身の晩期アレルギー反応の兆候に関係する状態または症状、抗原チャレンジを受けた時に組織学的炎症要素を有するアレルギー機構が関与する、皮膚、肺、鼻、目もしくは喉またはその他の器官の臨床疾患、アレルギー性鼻炎、季節性または通年のくしゃみによって特徴づけられる呼吸器疾患、鼻漏、結膜炎、咽頭炎、内因性または外因性気管支喘息、任意の炎症性肺疾患、急性/慢性気管支炎、急性/慢性気管支炎に続発する肺の炎症反応、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺繊維症、グッドパスチャー症候群、以下に限られないが、特発性肺線維症およびその他の任意の自己免疫性肺疾患を含め、白血球が役割を果たす任意の肺の状態、急性外耳炎、フルンケル症および外耳の耳真菌症等の耳、鼻および喉の障害、外傷性および感染性鼓膜炎、急性耳管炎、急性漿液性中耳炎、急性および慢性副鼻腔炎等の呼吸器疾患、任意の晩期反応およびアレルギー性鼻炎等の炎症応答から選択される肺外状態、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、炎症が発生し、および/または炎症性腸疾患を含め、炎症反応が大きな役割を果たす外肺疾患、リウマチ性関節炎およびその他の膠原病性脈管疾患、糸球体腎炎、炎症性皮膚疾患およびサルコイドーシス、ならびに心血管炎症から成る群より選択される、請求項13の方法。
【請求項21】
前記炎症状態の治療を必要とする哺乳動物がヒトである、請求項13の方法。
【請求項22】
(i)式Iの化合物またはその製薬学的に許容可能な塩と
【化8】
(式中、R1〜R6は、SO3H、PO3HまたはHから独立して選択され、R1〜R6のうちの少なくとも2つは、SO3HまたはPO3Hである)、
(ii)送達剤と、
を含有する経口薬。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【公表番号】特表2013−512904(P2013−512904A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542094(P2012−542094)
【出願日】平成22年11月23日(2010.11.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/057787
【国際公開番号】WO2011/068721
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(511287891)オプコ ヘルス インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月23日(2010.11.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/057787
【国際公開番号】WO2011/068721
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(511287891)オプコ ヘルス インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
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