説明

高精度液中パーティクル計測装置

【課題】汚染の問題を伴わず、極めて効率的に液中の気泡を除去することで高精度に液中パーティクルを計測する高精度液中パーティクル計測装置を提供する。
【解決手段】被測定媒体1と、耐圧容器2と、耐圧容器2内の石英ガラス製セル3と、キャビテーションを発生させない周波数・出力の組み合わせを持った超音波振動子4と、耐圧容器2内の減圧用ポンプ5と、脱気された被測定媒体1中の微小パーティクルを計測する液中パーティクルカウンタ6と、被測定媒体1を量・速度を規定して吸引するシリンジポンプ7で構成される。そして、石英ガラス製セル内に被測定媒体をシリンジポンプで連続的に運び入れ、減圧下でセル内被測定媒体に超音波振動を伝播させることで、高効率に気泡を除去し、高精度に液中パーティクルを計測可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水等の計測用媒体中の微小パーティクルを計測する高精度液中パーティクル計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造、特にウェハ処理プロセスで使用される硫酸、塩酸などの薬液や、洗浄工程に使用される純水は、半導体の高集積化に伴い、金属不純物とともに粒子状不純物の低減を強く要求されている。
こうした薬液や純水などの計測用媒体中の微小パーティクルを計測する方法としては、媒体を穴径が規定されている複数のフィルタでろ過し、フィルタ上にトラップされたパーティクルの数を径ごとに光学顕微鏡や電子顕微鏡観察によって全数を数える方法がある。
この方法は実際のパーティクルの形状が分かること、別途、エネルギー分散型X線分析装置や顕微FT-IRなどを用いてパーティクル種の同定ができるという利点があるが、その前処理が煩雑であり、操作汚染を受けやすい上に、さらに計測が長時間を要するなどの欠点が多く、単純にパーティクル数を計数するという意味では非常に時間・手間がかかる方法である。
【0003】
また、計測用媒体中の微小パーティクルを計測する簡易な方法としては、液中パーティクルカウンタを用いる方法がある(例えば特許文献1参照)。
この方法は計測用媒体にレーザー光を照射し、散乱した光の強度・数を測定し、散乱光強度をパーティクルの大きさに換算することで、どの程度の大きさのパーティクルが媒体中に存在しているかを計数する方法である。
【特許文献1】特開2003−121315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような光散乱方式であっても、液体中に気泡など光を散乱させる要因があれば、粒子が存在していなくとも、あたかも粒子が存在するように計数され、顕微鏡観察による計数値よりも高く計測されてしまうという欠点があった。このような誤差は、薬液が充填された容器をトラックなどの輸送直後に最も顕著に出ることが知られている。
【0005】
そこで、このような計測用媒体中の気泡を除去する方法としては、1.長時間静置する方法、2.薬液を減圧または加圧処理する方法、3.遠心力により気泡を除去する方法、4.多孔質物質と接触処理して気泡を捕捉する方法、5.加熱・冷却する方法などが知られている。
しかし、単に長時間静置しただけでは時間効率が悪く、また減圧・加圧処理では効果が不十分であり、さらに3.遠心力を利用する場合、遠心装置の保守点検管理の点から問題があり、また4.多孔質物質を利用する方法では、多孔質物質を使用することに伴う不純物混入という問題があり、5.加熱・冷却する方法では加熱・冷却に伴うパーティクルの破壊が発生する他、通常の測定よりも時間がかかるなど、必ずしも満足しうる処理方法ではなかった。
【0006】
このような状況の下、本発明者らは鋭意検討した結果、減圧・加圧では不十分な気泡除去処理をキャビテーションを発生させない条件で超音波をかけながら行うことで、気泡が効率よく除去できることを見出した。
【0007】
そこで本発明は、比較的簡単な装置を用い、保守管理も容易であり、汚染の問題を伴わず、極めて効率的に液中の気泡を除去することで高精度に液中パーティクルを計測する高精度液中パーティクル計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明の高精度液中パーティクル計測装置は、計測用溶媒中の気泡を除去させるための減圧ポンプと超音波振動素子を組み込んだセルを有し、被測定媒体をセル内に取り込んだ時に、減圧ポンプと超音波振動素子によって被測定媒体中の気泡を取り除くことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の高精度液中パーティクル計測装置によれば、被測定媒体中の気泡を効率的に除去し、自ら発塵することがないので、高精度に被測定媒体中のパーティクルを計数することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の高精度液中パーティクル計測装置を実施の形態に沿って以下に図面を参照にしながら詳細に説明する。
図1は、高精度液中パーティクル計測装置の一実施例の概略を説明するブロック図である。
図1に示すように、本発明の高精度液中パーティクル計測装置は、被測定媒体1と、減圧に耐えうる耐圧容器2と、耐圧容器2内に設置された石英ガラス製セル3と、石英ガラス製セル3に接触するように配したキャビテーションを発生させない周波数・出力の組み合わせを持った超音波振動子4と、耐圧容器2内を減圧にするための減圧用ポンプ5と、脱気された被測定媒体1中の微小パーティクルを計測するための液中パーティクルカウンタ6と、被測定媒体1を量・速度を規定して吸引するためのシリンジポンプ7で構成されている。
【0011】
以下に、本例の高精度液中パーティクル計測装置における実際の測定手順について説明する。なお、測定手順は二次純水によるパージ工程、二次純水による装置ブランク測定工程、被測定媒体によるパージ工程、被測定媒体の実測定工程に分かれる。
【0012】
まずは二次純水によるパージ工程について手順を説明する。
被測定媒体1として二次純水を用いて、装置内部に存在している前回の被測定媒体を被測定媒体1で置換するために行う工程である。この工程によって装置内部をクリーン化することが可能で、前回の被測定媒体のメモリーをなくすことができる。被測定媒体1はシリンジポンプ7によって吸引され、石英ガラス製セル3及び液中パーティクルカウンタ6内に充満される。ここで、1回に吸引できる容量はシリンジポンプ7の容量によって規定されるため、十分に置換されるまで、すなわち全容量の3倍以上この工程を繰り返す。
【0013】
次に二次純水による装置ブランク測定工程の手順を説明する。
まずは減圧ポンプ5によって耐圧容器2内を減圧にする。次に超音波振動子4によって石英ガラス製セル3に超音波を伝播させる。シリンジポンプ7で規定量を吸引し、液中パーティクルカウンタ6で被測定媒体1中のパーティクルを計数する。計数された値が目的とする被測定媒体に必要な計数値以下になるまでこの工程を繰り返す。この工程で本装置起因のパーティクル発生・装置内部汚染がないことを確認する。
【0014】
次に被測定媒体によるパージ工程の手順を説明する。
被測定媒体1を用いて、装置内部に存在している前回の被測定媒体である二次純水を被測定媒体1で置換するために行う工程である。被測定媒体1はシリンジポンプ7によって吸引され、石英ガラス製セル3及び液中パーティクルカウンタ6内に充満される。1回に吸引できる容量はシリンジポンプ7の容量によって規定されるため、十分に置換されるまで、すなわち全容量の3倍以上この工程を繰り返す。
【0015】
次に被測定媒体の実測定工程の手順を説明する。
まずは減圧ポンプ5によって耐圧容器2内を減圧にする。次に超音波振動子4によって石英ガラス製セル3に超音波を伝播させる。減圧下で超音波伝播することによって被測定媒体1中の気泡が脱気される。シリンジポンプ7で規定量を吸引し、液中パーティクルカウンタ6で被測定媒体1中のパーティクルを計数する。
【0016】
以上の工程によって、被測定媒体1中の微小パーティクルを装置汚染・気泡の影響なく、簡易に精度よく計数することが可能になる。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものでない。
ここでは図1に示す装置を使用して、96%電子工業用硫酸中の微小パーティクルの計測を行った。超音波周波数は1MHzとし、出力は50W/cmとした。
輸送した後の96%電子工業用硫酸を、本装置で減圧・超音波伝播させずに液中パーティクルの計数を行ったところ、0.3μm以上のパーティクルの計数値は500.6個/mlであった。この計数値は輸送によって発生した気泡を含む計数値である(これを比較例1とする)。
【0018】
次に、実施例1として、比較例1と同じ輸送した後の96%電子工業用硫酸を、本装置で減圧・超音波伝播しながら、液中パーティクルの計数を行ったところ、0.3μm以上のパーティクルの計数値は30.2個/mlであった。この計数値は輸送によって発生した気泡が取り除かれた計数値である。
【0019】
次に、この実施例1の妥当性を検証するために、96%電子工業用硫酸100mlを0.3μm径のメンブランフィルターに濾過した後に、電子顕微鏡で0.3μm以上のパーティクルを全て計数し、mlあたりに換算したところ、29.3個/mlであった。
この計数値は本装置で計数した値である30.2個/mlと非常に近い値であり、本装置が気泡の除去に有効であり、極めて簡便に精度よく被測定媒体中の微小パーティクルを計数できることを示している。
【0020】
以上のような本実施の形態を適用することにより、輸送によって発生した気泡を含む半導体用薬液中の微小パーティクルを簡易かつ高精度に計数できるため、微小パーティクルの管理が必要な半導体製造工程において薬液が使用可能かどうか容易に判断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例による高精度液中パーティクル計測装置の概略を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0022】
1……被測定媒体、2……耐圧容器、3……石英ガラス製セル、4……超音波振動子、5……減圧用ポンプ、6……光散乱方式パーティクルカウンタ、7……シリンジポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測用溶媒中の気泡を除去させるための減圧ポンプと超音波振動素子を組み込んだセルを有し、
被測定媒体をセル内に取り込んだ時に、減圧ポンプと超音波振動素子によって被測定媒体中の気泡を取り除くことを特徴とする高精度液中パーティクル計測装置。
【請求項2】
前記超音波振動素子がキャビテーションを発生させない周波数・出力の組み合わせを有することを特徴とする請求項1記載の高精度液中パーティクル計測装置。
【請求項3】
前記セルが不純物の少ない石英ガラス製であることを特徴とする請求項1記載の薬液供給装置。
【請求項4】
被測定媒体と、減圧に耐えうる耐圧容器と、前記耐圧容器内に設置された石英ガラス製セルと、前記石英ガラス製セルに接触するように配したキャビテーションを発生させない周波数・出力の組み合わせを持った超音波振動子と、前記耐圧容器内を減圧にするための減圧用ポンプと、脱気された被測定媒体中の微小パーティクルを計測するための液中パーティクルカウンタと、前記被測定媒体を量・速度を規定して吸引するためのシリンジポンプとを有することを特徴とする請求項1記載の高精度液中パーティクル計測装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−31173(P2009−31173A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−196862(P2007−196862)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】