説明

高精製多面体オリゴマー状シルセスキオキサンモノマー

マイクロ電子用途での使用のために好適な低い樹脂含量で、溶剤を含まず、微量金属を含まないモノマーを高収率で製造する多面体オリゴマー状シルセスキオキサンの合成方法。POSSシラノールを、溶媒と超塩基の存在下に、シランカップリング剤と反応させる。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
関連する出願および特許に対する相互参照
この出願は、2004年12月7日に出願された米国仮特許出願シリアルナンバー60/634,249の利益を主張するものである。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般的に、アクリル系およびメタクリル系フォトレジスト組成物の特性を向上させるための方法に係り、より具体的には、フォトレジスト組成物および関連マイクロ電子および医療製品に含めるための高純度ナノ構造化化学物質の製造方法に関する。
【0003】
POSSナノ構造化化学物質は、改善された透明性、減少したラインエッジラフネスおよび減少したガス放出特性を提供するので、フォトレジスト組成物において望ましいものである。
【0004】
発明の背景
ポリマーの特性は、ポリマー配列、構造、添加剤およびフィラーの混合、組成、モルホロジー、熱力学的および動力学的処理の制御のような変数により高度に調整することができるということが従前から認識されている。同様に、種々のサイズおよび形状のフィラーおよび粒子(例えば、炭酸カルシウム、シリカ、カーボンブラック等)および樹脂も、ポリマーまたはモノマー混合物に、それらの物理的および材料的特性を向上させるために、含めることができることが知られている。
【0005】
フォトレジストに有用なポリマー配合物は、高度工学的システムであり、それにより、特性の操作のために従来知られている技術のほぼすべてを利用している。加えて、フォトレジストポリマーは、その画像化およびエッチング機能を最適に果たすため、および電子回路の信頼性を確保するために、高度の純度を必要とする。最近の技術(WO2004/04040371)は、フィラータイプの補強をしかし可溶性化学物質の形態で提供するPOSSとして知られるナノ構造化化学物質を含めることによるフォトレジストの修飾に主眼を置いている。フォトレジストの最適な性能は、高純度POSS分子の使用を通じてのみ得ることができる。
【0006】
現在の技術プラクティスは、POSSを高収率で製造しているが、またそれらをフォトレジスト用途に好適なものとするために、さらなる精製を必要としている。米国特許出願09/631,982および10/186,318(参照によりここに組み込まれる)で検討されている先行方法は、POSSシラノールのシランカップリング剤によるシレート化(silation)を促進するために、プロトン性酸(ptotic acid)とヒドロキシド含有塩基の両方の有用性を記述している。これらのアプローチは一般に有効であることが知られているが、プロトン性酸とヒドロキシド塩基は、また、POSSシラノールのオリゴマー化された樹脂への自己縮合を触媒し得る(図1)という点で制限される。かかる樹脂は、ポリシルセスキオキサンまたはT−樹脂として知られており、その構造が分子的に不正確であり、ブロッキネス(blockiness)および形態上の不規則性に寄与し、粘度を増加させ、可使寿命を減少させ、フォトレジスト配合物のろ過の困難性を引き起こすことから、フォトレジストには望ましくない。
【0007】
ナノ構造化化学物質を1〜10nm強化剤として機能させるための鍵は、(1)ポリマー鎖寸法に対するその独特のサイズ、および(2)ポリマー鎖によりナノ強化剤の非相溶性および排除を促進する反発力に打ち勝つための、ポリマー系に対して相容化され得るその能力である。すなわち、ナノ構造化化学物質は、各ナノ構造上のR基の変更を通していくつかのポリマーマイクロ構造との優先的親和性/相容性を示すように仕立てることができる。同時に、ナノ構造化化学物質は、同じポリマー内の他のマイクロ構造と非相容性であるか相容性であるように仕立てることができ、かくして特定のポリマーマイクロ構造の選択的な強化を可能とする。したがって、選択的ナノ強化を達成するための要因には、ナノ構造化化学物質の具体的なナノサイズ、ナノサイズの分布、並びにナノ構造化化学物質とポリマー系との間の相溶性および差異(disparities)が含まれる。POSSについては、分子の分散およびそれらの、ポリマーセグメントとの相溶性は、混合の自由エネルギーの式(ΔG=ΔH−TΔS)により、熱力学的に支配される。R基の性質およびPOSSケージ上の反応性基がポリマーおよび表面と反応もしくは相互作用する能力は有利なエンタルピー(ΔH)項に大きく寄与する一方、POSSについてのエントロピー項(ΔS)は微視的なケージサイズおよび1.0の分布ゆえに非常に有利である。
【0008】
ナノ構造化化学物質は、低コストの多面体オリゴマー状シルセスキオキサン(POSS)および多面体オリゴマー状シリケート(POS)に基づくものにより、最もよく例示される。POSS系は、複合(すなわち、有機−無機)組成物を含有し、ここで、内部のケージ状骨組みは、主として、無機ケイ素−酸素結合から構成される。ナノ構造の外部は、ナノ構造の有機モノマーおよびポリマーとの相溶性および調整性(tailorability)を確保する反応性および非反応性有機官能基の双方により覆われている。ナノ構造化化学物質のこれらのおよび他の特性および特徴は、参照によりここにその全体を明示的に組み込まれているリヒテンハン(Lichtenhan)らへの米国特許第5,412,053号および第5,484,867号に詳しく検討されている。
【0009】
したがって、ナノ構造化モノマーの生成をもたらす先行技術のPOSSシレート化方法に対する改良についての要求が存在する。高純度で分子的に正確なシレート化POSS系を生成する改良された方法が記述される。
【0010】
発明の概要
本発明は、低い樹脂含有率を有し、溶媒および微量金属を含まない、[(R1SiO1.58(R234SiO1)]Σ9、[(R1SiO1.582(R23SiO2)]Σ17、[((R1SiO1.583(R2SiO3)]Σ25、[(R1SiO1.56(R1SiO12(R234SiO)2Σ10、[(R1SiO1.56(R1SiO12(R23SiO2)]Σ9、[(R1SiO1.56(R1HOSiO11(R23SiO)]Σ8、[(R1SiO1.56(R1(R234SiO)SiO1)(R23SiO)]Σ9、[(R1SiO1.54(R1(R234SiO)SiO13Σ10、[(R1SiO1.57(R2SiO1.51Σ8のタイプのPOSS組成物を調製する改良された合成方法を記述する。これらの式は、それ自体で興味深いものであるが、マイクロ電子用途での使用に特に好ましい。
【0011】
好ましい方法は、式[(R1SiO1.57(HOSiO1.51Σ8、[(R1SiO1.56(R1HOSiO12Σ8、[(R1SiO1.54(R1HOSiO13Σ7のPOSSシラノールを、溶媒と超塩基の存在下に、式R234SiX、R23SiX2、R2SiX3のシランカップリング剤と反応させることを含む。
【0012】
ナノ構造のための式による表示の定義
本発明の化学組成物を理解する目的のために、多面体オリゴマー状シルセスキオキサン(POSS)および多面体オリゴマー状シリケート(POS)ナノ構造の式による表示について以下の定義を行う。
【0013】
ポリシルセスキオキサンは、式[RSiO1.5](ここで、∞は、モル重合度を表し、R=有機置換基(H、シロキシ、環式もしくは線状脂肪族もしくは芳香族(これらはアルコール、エステル、アミン、ケトン、オレフィン、エーテルまたはハライドのような反応性官能基を追加して含有していてもよく、またはフッ素化基を含有していてもよい))で表される物質である。ポリシルセスキオキサンは、ホモレプティックであっても、ヘテロレプティックであってもよい。ホモレプティックな系は、1種類のみのR基を含有する一方、ヘテロレプティックな系は、1種類を超えるR基を含有する。
【0014】
POSSおよびPOSナノ構造組成物は、式:
ホモレプティック組成については、[(RSiO1.5nΣ#
ヘテロレプティック組成については、[(RSiO1.5n(R’SiO1.5mΣ#(ここで、R≠R’)
官能化ヘテロレプティック組成については、[(RSiO1.5n(RXSiO1.0mΣ#(ここで、R基は、同じであっても同じでなくてもよい)
により表される。
【0015】
上記すべてにおいて、Rは上記定義と同じであり、Xは、OH、Cl、Br、I、アルコキシド(OR)、アセテート(OCOR)、酸(OCOH)、エステル(OCOR)、ペルオキシド(OOR)、アミン(NR2)、イソシアネート(NCO)、およびR等であるが、これらに限定されない。記号mおよびnは、組成の化学量論をいう。記号Σは、組成が、ナノ構造を形成することを示し、記号#は、ナノ構造内に含まれるケイ素原子の数を指す。#の値は、通常、m+nの合計であり、ここでnは、典型的に、1〜24の範囲であり、mは、典型的に、1〜12の範囲である。Σ#は、単に当該系の全体的なナノ構造特性(別名ケージサイズ)を記述するものであるので、化学量論を決定するための乗数と混同すべきでないことに注意すべきである。
【0016】
好ましい態様の詳細な説明
本発明は、従来記述されたものよりも高い純度と低いコストの製造方法を与える、POSSナノ構造化化学物質のシレート化のための改善された合成方法を教示するものである。
【0017】
POSSシラノール(例えば、式[(R1SiO1.57(HOSiO1.51Σ8、[(R1SiO1.56(R1HOSiO12Σ8、[(R1SiO1.54(R1HOSiO13Σ7で示される)は、溶媒および超塩基の存在下、シランカップリング剤(例えば、式R234SiX、R23SiX2、R2SiX3で示される)と反応させることができる。HXの除去が生じ、それぞれ、[(R1SiO1.58(R234SiO1)]Σ9、[((R1SiO1.582(R23SiO2)]Σ17、[((R1SiO1.583(R2SiO3)]Σ25、[(R1SiO1.56(R1SiO12(R234SiO)2Σ10、[(R1SiO1.56(R1SiO12(R23SiO2)]Σ9、[(R1SiO1.56(R1HOSiO11(R23SiO)]Σ8、[(R1SiO1.56(R1(R234SiO)SiO1)(R23SiO)]Σ9、[(R1SiO1.54(R1(R234SiO)SiO13Σ10、[(R1SiO1.57(R2SiO1.51Σ8のような式の単官能性POSSモノマーを与える。得られるモノマーは、本質的に不純物を含まず、組成、R基、並びにナノ構造のサイズおよびトポロジーの選択を通じて制御可能な特性を有する。高精製ナノ構造化POSSモノマーは、改善されたろ過性能、減少した汚染および粘度、より信頼性のある重合、より低いコストおよび不純な系に対する廃棄物減少を示すので、望ましい。
【0018】
本発明の鍵となる実施可能性は、POSSシラノールのシレート化を触媒するためのホスファゼン超塩基の使用である。多くのホスファゼンが適用でき、分子量および組成が異なるポリホスファゼンが含まれる。ホスファゼンオリゴマーおよび分子が優先的に利用され、特にP1タイプP(NtBu)(NH2)3、P2タイプ(H2N)3P=N−P(NH2)4、P3タイプ(H2N)3P=N−P(NH2)−N=P(NH2)3、P4タイプ(H2N)3P=N−P(NH2)3=N−P(NH2)3−N=P(NH2)3である。ホスファゼン超塩基の塩基度は、リン原子の数が増加するにつれて増加し、このことは、この試薬の利用に際し価値のあるツールを提供する。トリシラノールに対する超塩基の好ましい濃度は、2モル%であるが、有用な範囲は、0.1モル%〜10モル%を含む。
【0019】
すべてのプロセスに適用できる一般的なプロセス変数
化学プロセスに典型的であるように、いずれもの方法の純度、選択性、速度および機構を制御するために用いることのできるいくつかの変数が存在する。プロセスに影響を与える変数には、ナノ構造化化学物質のサイズ、多分散性および組成;溶媒、分離および単離方法;並びに触媒または共触媒の使用が含まれる。加えて、制御、合成機構、速度および生成物分布の動力学的および熱力学的手段も、生成物の品質および経済性に影響を与え得る既知の商売道具である。
【0020】

[(EtSiO1.57(メタクリルプロピルSiO1.01Σ8の合成:
[(EtSiO1.54(Et(OH)SiO1.03Σ7(476g、0.8モル)をメタノール(1405mL)に溶解した後、メタクリルプロピルメトキシシラン(198.68g、0.8モル)を添加し、その溶液を0℃に冷却した。ついで、ホスファゼン超塩基(FW234.32、15.72mmol)を添加し、その混合物を0℃で3日間攪拌した。ついで、その溶液を酢酸(1.5g)でクエンチし、攪拌し、ろ過した。固体をメタノール(1400ml)で洗浄し、乾燥して、収率69%で415gの純粋な白色生成物を得た。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】先行技術と改良されたシレート化方法の比較を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒および超塩基の存在下に、POSSシラノールをシランカップリング剤と反応させることを含むPOSSモノマーの製造方法。
【請求項2】
複数種のPOSSシラノールを含有する混合物を反応させる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数種の超塩基を用いる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
複数種の溶媒を用いる請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記超塩基を不均質触媒または共試薬(coreagent)として用いる連続シレート化法を用いる請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記POSSモノマーが、[(R1SiO1.57(HOSiO1.51Σ8、[(R1SiO1.56(R1HOSiO12Σ8、および[(R1SiO1.54(R1HOSiO13Σ7からなる群の中から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記シランカップリング剤が、R234SiX、R23SiX2、およびR2SiX3からなる群の中から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記超塩基が、ホスファゼンである請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ホスファゼンが、P1タイプ、P2タイプ、P3タイプ、およびP4タイプからなる群の中から選ばれる請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記超塩基を不均質触媒または共試薬として用いる連続シレート化法を用いる請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記シランカップリング剤が、R234SiX、R23SiX2、およびR2SiX3からなる群の中から選ばれる請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記POSSモノマーが、[(R1SiO1.57(HOSiO1.51Σ8、[(R1SiO1.56(R1HOSiO12Σ8、および[(R1SiO1.54(R1HOSiO13Σ7からなる群の中から選ばれる請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記POSSモノマーが、[(R1SiO1.57(HOSiO1.51Σ8、[(R1SiO1.56(R1HOSiO12Σ8、および[(R1SiO1.54(R1HOSiO13Σ7からなる群の中から選ばれる請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記シランカップリング剤が、R234SiX、R23SiX2、およびR2SiX3からなる群の中から選ばれる請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記POSSモノマーが、[(R1SiO1.57(HOSiO1.51Σ8、[(R1SiO1.56(R1HOSiO12Σ8、および[(R1SiO1.54(R1HOSiO13Σ7からなる群の中から選ばれる請求項9に記載の方法。前記POSSモノマーが、[(R1SiO1.57(HOSiO1.41Σ8、[(R1SiO1.56(R1HOSiO12Σ8、および[(R1SiO1.54(R1HOSiO13Σ7からなる群の中から選ばれる請求項14に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−523220(P2008−523220A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545619(P2007−545619)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/044415
【国際公開番号】WO2006/063127
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(506207473)ハイブリッド・プラスティックス・インコーポレイテッド (16)
【Fターム(参考)】