説明

高純度シリカ・光触媒複合体

【課題】光触媒作用を効率よく発揮できるとともに、非処理物(水、空気等)の浄化を高度に達成することができる高純度シリカ・光触媒複合体を提供する
【解決手段】(A)珪質頁岩の粉状物とアルカリ水溶液を混合して、pHが11.5以上のアルカリ性スラリーとし、上記珪質頁岩の粉状物中のSi、Al、Feを液分中に溶解させた後、該アルカリ性スラリーを固液分離してSi、Al、Feを含む液分を得るアルカリ溶解工程と、(B)工程(A)で得られた液分と酸を混合してpHを10.3以上11.5未満とし、液分中のAl、Feを析出させた後、固液分離を行い、Siを含む液分を得るSi液分分離工程と、(C)工程(B)で得られた液分と酸を混合してpHを9.0以上10.3未満とし、液分中のSiを析出させた後、固液分離を行い、SiO2を含む固形分を得るシリカ分離工程を経て得られる高純度シリカに、光触媒である酸化チタンを担持させてなる高純度シリカ・光触媒複合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度シリカに光触媒を担持させた高純度シリカ・光触媒複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、可視光や紫外光照射下で水や空気を浄化する光触媒が知られている。各種の光触媒の中でも特に酸化チタンは光触媒能に優れ、化学的に安定であるから溶出して環境を汚染することのない安全な化合物である。かかる酸化チタンの光触媒の用途としては、例えば、水の浄化、水中のアンモニア、アルデヒド類およびアミン類等の悪臭物質の分解、菌類の殺菌、藻類の殺藻等が知られている。
【0003】
酸化チタンを光触媒として使用する場合、一般に、他の無機材料を担体として酸化チタンを担持させることが一般的である。例えば、特許文献1には、陶磁器、セメント、発泡コンクリート、レンガ、シリカ、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸バリウム等を主体とするセラミックス多孔体が担体として好ましいことが記載されている。
また、特許文献2には、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、アルミナ、パーライト、多孔質ガラスが担体として用いられている。
【0004】
しかし、これらの担体に不純物が多く含まれると、担体に含まれる不純物元素により酸化チタンが汚染されてその光触媒能が低下する場合がある。また、水や空気の浄化において、浄化した水や空気にこれら担体に含まれる不純物元素が混入する場合がある。特に、処理する気体が高温で腐蝕性ガスを含んでいる場合には、担体の劣化が促進されて2次的不純物が発生しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−230301号公報
【特許文献2】特開2006−110470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、光触媒作用を効率よく発揮できるとともに、非処理物(水、空気等)の浄化を高度に達成することができる高純度シリカ・光触媒複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は具体的には、
(A)珪質頁岩の粉状物と、アルカリ水溶液を混合して、pHが11.5以上のアルカリ性スラリーとし、上記珪質頁岩の粉状物中のSi、Al、Feを液分中に溶解させた後、該アルカリ性スラリーを固液分離して、Si、Al、Feを含む液分を得るアルカリ溶解工程と、
(B)工程(A)で得られた液分と酸を混合してpHを10.3以上11.5未満とし、液分中のAl、Feを析出させた後、固液分離を行い、Siを含む液分を得るSi液分分離工程と、
(C)工程(B)で得られた液分と酸を混合してpHを9.0以上10.3未満とし、液分中のSiを析出させた後、固液分離を行い、SiO2を含む固形分を得るシリカ分離工程
を経て得られる高純度シリカに、光触媒である酸化チタンを担持させてなる高純度シリカ・光触媒複合体である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光触媒作用を効率よく発揮できるとともに、非処理物(水、空気等)の浄化を高度に達成することができる高純度シリカ・光触媒複合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の高純度シリカ・光触媒複合体について詳しく説明する。
本発明で用いる高純度シリカは、(A)アルカリ溶解工程、(B)Si液分分離工程、および(C)シリカ分離工程を経て得られるものである。
【0010】
[工程(A);アルカリ溶解工程]
本工程は、珪質頁岩の粉状物と、アルカリ水溶液を混合して、pHが11.5以上のアルカリ性スラリーとし、珪質頁岩の粉状物中のSi、Al、Feを液分中に溶解させた後、該アルカリ性スラリーを固液分離して、Si、Al、Feを含む液分を得る工程である。
本工程において、スラリーのpHは11.5以上、好ましくは12.5以上、より好ましくは13.0以上となるように調整される。該pHが11.5未満であると、シリカを十分に溶解させることができず、シリカが固形分中に残存してしまうため、得られるシリカの収量が減少する。pHを上記数値範囲内に調整するためのアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等が用いられる。
スラリーの固液比(溶液1リットル中の珪質頁岩の粉状物の質量)は、好ましくは150〜350g/リットル、より好ましくは200〜300g/リットルである。該固液比が150g/リットル未満では、スラリーの固液分離に要する時間が増大するなど、処理効率が低下する。該固液比が350g/リットルを超えると、シリカ等を十分に溶出させることができないことがある。
スラリーは、通常、所定時間(例えば、30〜 90分間)攪拌される。
攪拌後のスラリーは、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて、固形分と液分に分離される。液分は、Si、Al、Feを含むものであり、次の工程(B)で処理される。
なお、本工程においてアルカリ性スラリーを得る際の液温は、35〜100℃ に保持されることが好ましく、35〜80℃ に保持されることが、エネルギーコストの観点から、より好ましい。液温を上記範囲内とすることにより、処理効率を高めることができる。
【0011】
[工程(B);Si液分分離工程]
本工程は、工程(A)で得られた液分と酸を混合して、pHを10.3以上11.5未満とし、液分中のAl、Feを析出させた後、固液分離を行い、Siを含む液分を得る工程である。
本工程において、酸との混合後の液分のpHは、10.3以上11.5未満、好ましくは10.4以上11.0以下、特に好ましくは10.5以上10.8未満である。該pHが10.3未満であると、Al、Feと共にSiも析出してしまうため、得られるシリカの収量が低下する。一方、該pHが11.5以上では、Al、Feが十分に析出せずに液分中に残存するため、得られるシリカ中の不純物が多くなり、シリカの純度が低下する。
pHを上記数値範囲内に調整するための酸としては、硫酸、塩酸等が用いられる。
pH調整後、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて、固形分と液分に分離する。
このうち、固形分(ケーキ)は、Al、Fe等を含むものである。
液分は、Siを含むものであり、次の工程(C)で処理される。
なお、本工程においてpH調整を行う際の液温は、35〜100℃ に保持されることが好ましく、35〜85℃ に保持されることが、エネルギーコストの観点から、より好ましい。液温を上記範囲内とすることにより、処理効率を高めることができる。
【0012】
[工程(C);シリカ分離工程]
本工程は、工程(B)で得られた液分と酸を混合して、pHを9.0以上10.3未満とし、液分中のSiを析出させた後、固液分離を行い、Si(具体的にはSiO2)を含む固形分を得る工程である。
本工程において、液分のpHは、9.0以上10.3未満、好ましくは9.2以上10.0未満である。該pHが9.0未満では、シリカの収量は増大せずに、酸の使用量が多くなるため、薬剤コストの観点から好ましくない。一方、該pHが10.3以上では、十分にシリカが析出せずに液分中に残存するため、得られるシリカの収量が減少する。
pHを上記数値範囲内に調整するための酸としては、硫酸、塩酸等が用いられる。
pH調整後、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて、固形分と液分とに分離する。
固形分は、Si(具体的にはSiO2)を含むものである。
なお、本工程においてpH調整を行う際の液温は、35〜100℃ に保持されることが好ましく、35〜80℃ に保持されることが、エネルギーコストの観点から、より好ましい。液温を上記範囲内とすることにより、良好な固液分離性を有する固形分が得られ、処理効率を高めることができる。
【0013】
得られたシリカ(SiO2)を含む固形分は、Al、Fe、B、P、Ni等の不純物が低減された高純度のシリカである。
本工程で得られたシリカを含む固形分に対して、適宜、次の工程である酸洗浄工程を行うことができる。酸洗浄工程を行うことにより、より高純度のシリカを得ることができる
また、本工程で得られたシリカを含む固形分には、上記特定のpH域における3段階の調整(具体的には、上記工程(A)〜(C);アルカリ溶解工程、Si液分分離工程、シリカ分離工程)と同じ操作を1回以上(通常は1回)、繰り返し行うことができる。工程(A)〜(C)を繰り返すことによつて、さらに高純度のシリカを得ることができる。
なお、工程(A)〜(C)と同じ操作を繰り返し行う場合、酸洗浄工程は、1回目の処理工程の終了時と、2回目の処理工程の終了時の両方あるいはいずれか一方のみに行うことができる。
すなわち、次の(1)〜(3)のいずれのパターンでも行うことができる。
(1)工程(A)→工程(B)→工程(C)→酸洗浄工程→工程(A)→工程(B)→工程(C)→酸洗浄工程
(2)工程(A)→工程(B)→工程(C)→工程(A)→工程(B)→工程(C)→酸洗浄工程
(3)工程(A)→工程(B)→工程(C)→酸洗浄工程→工程(A)→工程(B)→工程(C)
中でも、シリカの純度を高める観点から、上記(1)が好ましい。
本工程または次の工程(D)で最終的に得られたシリカを含む固形分は、適宜、乾燥処理及び/又は焼成処理を行うことができる。乾燥処理及び/又は焼成処理の条件は、例えば、100〜800 ℃ で1〜5時間である。
【0014】
[工程(D);酸洗浄工程]
本工程は、工程(C)で得られたSiO2を含む固形分と酸溶液を混合して、pHが1.5以下の酸性スラリーとし、前記固形分中に残存するアルミニウム分、鉄分を溶解させた後、前記酸性スラリーを固液分離して、SiO2を含む固形分と、液分を得る工程である。
本工程における酸性スラリーのpHは、1.5以下、好ましくは1.2以下である。酸性スラリーのpHを上記範囲内に調整して酸洗浄を行うことにより、工程(C)で得られた固形分中にわずかに残存するアルミニウム分、鉄分等の不純物を溶解して液分中へ移行させることができ、固形分中のシリカ含有率を上昇させることができるため、さらに高純度のシリカを得ることができる。
pHを上記数値範囲内に調整するための酸としては、硫酸、塩酸等が用いられる。
pH調整後、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて、固形分と液分に分離する。
なお、本工程においてpH調整を行う際の液温は、35〜100℃ に保持されることが好ましく、35〜80℃ に保持されることが、エネルギーコストの観点から、より好ましい。液温を上記範囲内とすることにより、処理効率を高めることができる。
【0015】
本発明で得られるシリカは、シリカの含有率が高く、またアルミニウム、鉄、ホウ素、リン、ニッケル等の不純物の含有量が低いものである。
本発明の高純度シリカ中のSiO2の含有率は、好ましくは99.0質量%以上、より好ましくは99.5質量%以上、特に好ましくは99.6質量%以上である。また、本発明の高純度シリカ中のAl23、Fe23、B、P、及びNiの含有率は、好ましくはそれぞれ3000ppm以下、500ppm以下、0.2ppm以下、0.5ppm以下、及び0.3ppm以下である。
特に、工程(A)〜工程(D)と同じ操作を1回以上繰り返し行うことによって、特に高純度のシリカを得ることができる。該シリカ中のSiO2の含有率は、好ましくは99.8質量%以上、より好ましくは99.9質量%以上、特に好ましくは99.95質量%以上である。また、上記シリカ中、Al23、Fe23、B、P、及びNiの含有率は、好ましくはそれぞれ500ppm以下、20ppm以下、0.2ppm以下、0.5ppm以下、及び0.2ppm以下である。
これにより不純物の少ない高純度シリカを、簡易な操作でかつ低コストで得ることができる。
【0016】
[光触媒の担持]
光触媒の被膜は、乾式法又は湿式法により形成することができる。
乾式法としては、酸化チタン単独、または必要に応じて更に酸化チタンの触媒活性を向上させるためにW、S、Mo、V、Mn等の元素を少量ドープさせた酸化チタンをスパッタリング法、グロー放電法、熱蒸着法、真空蒸着法、化学蒸着法(CVD法)、イオンプレーティング法等の膜付け技術により蒸着することができる。被膜として形成される酸化チタンはアナターゼ型酸化チタンが好ましい。
【0017】
湿式法は、有機チタン化合物の溶液又は酸化チタン分散液に、前記高純度シリカを含浸させた後、加熱乾燥処理することにより行うものである(ディップコーティング法)。
例えば、有機チタン化合物を酸触媒下で加水分解によって調整した酸化チタンのゾル溶液に前記高純度シリカを浸漬して含浸させ、次いで一定速度で引き上げて乾燥した後、300〜700℃程度で加熱焼成する。均一で高品質の酸化チタンの被膜を作成するためには、前述の浸漬、含浸、乾燥及び焼成の各工程を複数回繰り返すのが好ましい。有機チタン化合物としては、チタンエトキシド[Ti(OC254]、チタンプロキシド[Ti(OC374]、チタンブロキシド[Ti(OC494]等のチタンアルコキシドが利用できる。酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸、又は蓚酸、乳酸、酢酸などの有機酸を使用することができる。
【0018】
高純度シリカの表面部に形成、担持させる酸化チタンの量は特に限定されず、その用途や目的、被処理体の気体又は液体かの物質形態等に応じて適宜選択することができる。一般的には高純度シリカ100重量部に対して、光触媒0.1〜50重量部を被膜として担持させることが好ましい。
【0019】
そして、本発明の高純度シリカ・光触媒複合体を反応器内に収容し、紫外線ランプにより高純度シリカ・光触媒複合体を照射しながら、高純度シリカ・光触媒複合体に被処理物を通過させ、光触媒作用によって被処理物を浄化処理する浄化装置として使用することができる。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[シリカAの製造]
北海道北部地域産の稚内層珪質頁岩(成分組成; SiO2:80質量%、Al23:10質量%、Fe23:5質量%、B:1000ppm、P:330ppm、Ni:10ppm)を、ボールミルを用いて粉砕し、珪質頁岩の粉状物(最大粒径:0.5mm)を得た。
次いで、得られた粉状物250gに、2.5N水酸化ナトリウム水溶液1000gを混合して、60分間混合撹拌し、pHが13.5であるスラリーを得た。
このスラリーを減圧下でブフナー漏斗で固液分離し、液分800gを得た。
次いで、得られた液分に対して98%硫酸を添加して、pHを10.5に調整した後、減圧下でブフナー漏斗で固液分離し、鉄、アルミニウム等を含む含水固形分50gと、Siを含む液分800gを得た。
次に、得られた液分に対して98%硫酸を添加して、pHを9.5に調整した後、減圧下でブフナー漏斗で固液分離し、シリカ(SiO2)を含む含水固形分330gと、液分430gを得た。
得られたシリカを含む含水固形分に対して、98%硫酸溶液を添加し、pH1.0のスラリーとした。このスラリーを固液分離し、シリカを含む含水固形分Aを310g得た。
なお、各反応中の液温は、70℃ に保持した。
得られた含水固形分Aは、乾燥後に、SiO2:99.68質量%、Al23:2800ppm、Fe23:48ppm、B:0.13ppm、P:0.5ppm未満、Ni:0.18ppmの成分組成を有していた(以下「シリカA」という。)。
【0021】
[シリカBの製造]
実施例1で得られたシリカを含む含水固形分Aに対し、再度、3段階のpH調整(アルカリ溶解工程、Si液分分離工程、シリカ分離工程)と、酸洗浄を行い、シリカを含む含水固形分Bを得た。
具体的には、シリカを含む固形分A310gに対し、1.0N水酸化ナトリウム水溶液700gを加えて、60分間混合撹拌し、pHが13.5であるスラリーを得た。
このスラリーを減圧下でブフナー漏斗で固液分離し、液分900gを得た。
次いで、得られた液分に対し98%硫酸を添加し、pHを10.5に調整した後、減圧下でブフナー漏斗で固液分離し、固形分10gと、Siを含む液分880gを得た。
得られた液分に対し98%硫酸を添加し、pHを9.5に調整した後、減圧下でブフナー漏斗で固液分離し、シリカを含む含水固形分280gと、液分600gを得た。
得られたシリカを含む固形分に対し、98%硫酸溶液を添加し、pH1.0のスラリーとした。このスラリーを固液分離して、シリカを含む含水固形分Bを260g得た。
なお、実施例1と同様、各反応において液温は70℃ に保持した。
得られた含水固形分Bは、乾燥後に、SiO2:99.92質量%、Al23:3800ppm、Fe23:7.7ppm、B:0.19ppm、P:0.5ppm未満、Ni:0.11ppmの成分組成を有していた(以下「シリカB」という。)。
【0022】
[シリカCの製造]
実施例1で用いたものと同じ北海道北部地域産の稚内層珪質頁岩を、ボールミルで粉砕し、珪質頁岩の粉状物(最大粒径:0.5mm)を得た。次に、得られた粉状物250gを600℃ で3時間焼成した。
得られた焼成物243gに49%硫酸250gを混合して3時間撹拌した。撹拌後、減圧下でブフナー漏斗で固液分離し、含水固形分240gを得た。
次に、得られた含水固形分240gに10%フッ酸500gを混合して3時間撹拌した。撹拌後、減圧下でブフナー漏斗で固液分離し、含水固形分200gを得た。
次いで、含水固形分200gに対して18%塩酸600gを混合して3時間撹拌した。
撹拌後、減圧下でブフナー漏斗で固液分離し、含水固形分C160gを得た。なお、各反応中の液温は、70℃ に保持した。得られた含水固形分Cは、乾燥後に、SiO2:98.20質量%、Al23:4000ppm、Fe23:433ppm、B:3.0ppm、P:84.6ppm未満、Ni:1.0ppmの成分組成を有していた(以下「シリカC」という。)。
【0023】
前記した通り、本発明に用いる高純度シリカ(シリカAおよびシリカB)は、シリカの含有率が高く、アルミニウム、鉄、ホウ素、リン、ニッケルなどの不純物が少ない。これに対し、フッ酸処理により得られたシリカCでは、高純度シリカに比して、シリカの含有率が低く、アルミニウム等の不純物がいずれも高濃度で含まれている。
【0024】
[光触媒の製造]
酸化チタン源となるチタンアルコキシドと溶媒となるエチルアルコール、安定化剤となるジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールの4種の試薬を混合して、ディップコーティング液として調整した。次に、耐圧性のグローブボックス内に、前記シリカA、シリカB及びシリカCと容器入りのディップコーティング液を載置し、次いでグローブボックス内を10-2Torr以下の減圧にしつつ前記シリカA、シリカB及びシリカCを脱ガスし、次いで常圧に戻しつつ各シリカをそれぞれのディップコーティング液に入れてディップコーティング液に浸漬させた。このディップコーティング操作を5回繰り返し、未焼成のシリカ・光触媒複合体を製造した。
その後、グローブボックスより取り出し、電気炉内に設置し、450℃で1時間の焼成を行い透明の被膜を得た。次に、シリカ・光触媒複合体の透明被膜をX線回折分析法により調べたところ、アナターゼ型の酸化チタンであることが確認され、また走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ被膜表面は粒径約9〜18nm程度の酸化チタンの超微粒子から成っていた。
【0025】
[一酸化窒素(NO)浄化試験]
中心に紫外線ランプを備えた円筒形の反応容器内に、シリカA・光触媒複合体(実施例1)、シリカB・光触媒複合体(実施例2)又はシリカC・光触媒複合体(比較例1)を、該紫外線ランプの周りに配置した。
次に、NO濃度1ppm、ガス流量60ml/minで30分間のNOガスフローを行って、複合体への吸着安定化を図った。
次に、反応容器内の紫外線ランプを点灯し紫外線強度1mW/cm2として、NO濃度1ppm、ガス流量600ml/min、温度25℃、相対湿度50%で5時間のNOガスフローを行ってNO分解実験を実施した。
NO浄化率(%)は、下記式により求めた。
{(NO初期濃度)−(NO浄化後濃度)}/(NO初期濃度)
【0026】
【表1】

【0027】
表1から分かるように、高純度シリカに担持した光触媒(実施例1及び2)は、光触媒作用が高いことがわかる。また、シリカが高純度のため、非処理物(水、空気等)の浄化を高度に達成できることが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)珪質頁岩の粉状物と、アルカリ水溶液を混合して、pHが11.5以上のアルカリ性スラリーとし、上記珪質頁岩の粉状物中のSi、Al、Feを液分中に溶解させた後、該アルカリ性スラリーを固液分離して、Si、Al、Feを含む液分を得るアルカリ溶解工程と、
(B)工程(A)で得られた液分と酸を混合してpHを10.3以上11.5未満とし、液分中のAl、Feを析出させた後、固液分離を行い、Siを含む液分を得るSi液分分離工程と、
(C)工程(B)で得られた液分と酸を混合してpHを9.0以上10.3未満とし、液分中のSiを析出させた後、固液分離を行い、SiO2を含む固形分を得るシリカ分離工程
を経て得られる高純度シリカに、光触媒である酸化チタンを担持させてなることを特徴とする高純度シリカ・光触媒複合体。

【公開番号】特開2010−234189(P2010−234189A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82595(P2009−82595)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】