説明

高純度ヒドロキノンの製造方法

本発明は、高純度ヒドロキノンの調製方法であって、その調製方法の結果としての不純物を含まない前記高純度ヒドロキノンの調製方法に関する。本発明の方法は、少なくとも次の工程:(a)不純物として少なくともレゾルシン及びピロガロールを含む液体の形の未精製ヒドロキノンを、純粋なヒドロキノンの結晶化を保証する制御された冷却に付す工程、(b)母液から純粋なヒドロキノン結晶を分離する工程、(c)加熱及び部分融解を実施する工程、(d)精製されたヒドロキノンを完全に融解させる工程、並びに(e)精製されたヒドロキノンを回収する工程:を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、高純度ヒドロキノンの製造方法であって、特に様々な高純度を達成することが可能な方法にある。
【0002】
本発明は、その製造方法の結果としての不純物を含まないヒドロキノンを提供することを目指す。
【背景技術】
【0003】
ヒドロキノン(即ち1,4−ジヒドロキシベンゼン)は、多くの利用分野において、重合防止剤として又はエラストマー中の酸化防止剤として又は合成中間体として、幅広く用いられている物質である。別の利用分野としては、写真術の分野もある。従って、これは重要な製品である。
【0004】
対象とする市場に応じて、様々な純度が要求される。
【0005】
実際、ある種の用途、特に写真術の用途では非常に高い純度が要求されるが、他の用途では、運転費用を最小限にするために工業用ヒドロキノン、即ちもっと低い純度のヒドロキノンで満足される。
【0006】
従って、ヒドロキノンは様々な純度要件を満たさなければならず、これは場合によってはかなりの制約となり得る。
【0007】
提起される問題は、ヒドロキノンは酸化に対して敏感な物質であり、着色した分解生成物をすぐにもたらすので、精製するのが容易ではないということである。
【0008】
さらに、用途に応じて粒子寸法や流動性、溶解速度に関する様々な物理化学的特徴が必要とされることがある。
【0009】
従って、市場では、貯蔵時に良好な化学的安定性を有する多彩な製品が要求される。
【0010】
ヒドロキノンへの合成ルートの1つは、過酸化水素によるフェノールのヒドロキシル化を、特に均質又は不均質酸触媒の存在下で、実施することから成る。
【0011】
従って、仏国特許第2071464号明細書に記載されたように、強プロトン酸、即ち水中におけるpKaが0.1未満である(好ましくは−1より小さい)酸に頼らなければならないことがある。
【0012】
強プロトン酸の例としては、他にもあるが特に硫酸、クロロ硫酸、過塩素酸又はスルホン酸、例えばメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸若しくはフェノールスルホン酸を挙げることができる。
【0013】
プロトン酸触媒の他の例としては、スルホン樹脂、より特定的には様々な商品名で販売されている樹脂を挙げることができる。その中でも、Temex 50、Amberlyst 15、Amberlyst 35、Amberlyst 36及びDowex 50W樹脂を挙げることができる。
【0014】
上記の樹脂は、ポリスチレン主鎖がスルホン酸基である官能基を有して成る。前記ポリスチレン主鎖は、スチレン及びジビニルベンゼンを活性化用触媒(一般的に過酸化物)の作用下で重合させて架橋したポリスチレンを得て、これを次いで濃硫酸又はクロロスルホン酸(acide sulfochlorique)で処理してスルホン化スチレン/ジビニルベンゼンコポリマーにすることによって得られる。
【0015】
また、フェノール/ホルムアルデヒドコポリマーであって芳香環上にメチレンスルホン酸基を有するスルホン酸樹脂、例えばDuolite ARC 9359の名称で販売されている樹脂を用いることも可能である。
【0016】
その他の商品として入手できる樹脂もまた好適であり、スルホン酸基を有するペルフッ素化樹脂、より特定的にはNafion(これはテトラフルオロエチレンとペルフルオロ[2−(フルオロスルホニルエトキシ)プロピル]ビニルエーテルとのコポリマーである)を挙げることができる。
【0017】
ヒドロキシル化プロセスにおいて好適なその他の触媒としては、鉄(II)錯体及び銅(II)錯体(仏国特許第2121000号明細書、ソ連特許第1502559号明細書)並びにFentonタイプの任意のその他の触媒を挙げることができる。
【0018】
ヒドロキノンを製造するための別の方法としては、不均質触媒反応を伴うものがある。例えば、チタンシリカライト(若しくはチタノシリカライト−1)タイプ若しくは鉄シリカライトタイプ(TS−1タイプ)の酸ゼオライト(仏国特許第2489816号明細書)、MELチタンシリカライトタイプのゼオライト(欧州特許第1131264号公報)又はMFIタイプのチタノゼオシライト(欧州特許第1123159号公報)を用いることが可能である。また、MCM−22ゼオライト(仏国特許第2856681号明細書)を用いることも可能である。
【0019】
斯かるヒドロキシル化反応の結果として、本質的にピロカテコール(即ち1,2−ジヒドロキシベンゼン)及びヒドロキノンを様々な割合で(一般的に0.25〜4.0程度のピロカテコール/ヒドロキノン重量比で)含み且つ各種副生成物、特にレゾルシノール(即ちレゾルシン若しくは1,3−ジヒドロキシベンゼン)及びトリヒドロキシベンゼン、より特定的にはピロガロール(即ち1,2,3−トリヒドロキシベンゼン)を非常に少量、一般的に0.5〜4.0重量%程度の含有率で含む混合物が得られる{百分率は、生成したヒドロキノン及びピロカテコール(又はピロカテキン)の量に対して表わしたものである}。
【0020】
ピロカテコール20〜80重量%、ヒドロキノン80〜20重量%、レゾルシノール0.1〜2重量%及びピロガロール0.1〜2重量%を含む様々な組成の混合物が得られる。
【0021】
典型的には、ピロカテコール50〜80重量%、ヒドロキノン20〜50重量%、レゾルシノール0.1〜2重量%及びピロガロール0.1〜2重量%を含む混合物が得られる。
【0022】
このタイプの未精製混合物からヒドロキノンを単離するための1つの従来知られている方法は、この混合物を蒸留して、蒸留トップにおいて(混合物の最も揮発性が高い化合物である)ピロカテコールを得て且つ蒸留ボトムにおいて「未精製ヒドロキノン」(HQ0){即ち本質的にヒドロキノンを少量の不純物(レゾルシノール及びピロガロール、並びに可能性としての蒸留により除去されなかった痕跡量のピロカテコール)と組み合わせて含む混合物}を得ることから成る。
【0023】
ヒドロキノンを合成するための別の方法は、1,4−ジイソプロピルベンゼン並びに副生成物としての1,2−及び/又は1,3−ジヒドロキシベンゼン(ピロカテコール及びレゾルシノール)を、トリヒドロキシベンゼンタイプの化合物(例えばピロガロール)の不在下で酸化させることから成る。例えば仏国特許第2788763号明細書には、ジヒドロキシル化不純物、ピロカテコール及びレゾルシンを含む未精製ヒドロキノンの調製が記載されている。このピロカテコールは蒸留によって除去され、次いでヒドロキノン/レゾルシンの2成分混合物を融解浴精製することによって、精製されたヒドロキノンが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】仏国特許第2071464号明細書
【特許文献2】仏国特許第2121000号明細書
【特許文献3】ソ連特許第1502559号明細書
【特許文献4】仏国特許第2489816号明細書
【特許文献5】欧州特許第1131264号公報
【特許文献6】欧州特許第1123159号公報
【特許文献7】仏国特許第2856681号明細書
【特許文献8】仏国特許第2788763号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、所望の純度のヒドロキノンを得ることを可能にする方法を提供する。
【0026】
かくして、本発明の1つの目的は、ジヒドロキシベンゼン及びトリヒドロキシベンゼンタイプの不純物が同時に存在する未精製ヒドロキノンの精製方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、所望のヒドロキノン純度を調節し、高純度要件を満たすことができる生成物を得ることを可能にする融通性のある方法を提供することにある。
【0027】
本発明に従えば、そして様々な一連の工程を含むことができる選ばれた実施形態に従えば、得られる生成物の純度を変化させることが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0028】
ここに、未精製ヒドロキノンから出発するヒドロキノンの製造方法であって、少なくとも次の工程:
(a)不純物として少なくともレゾルシン及びピロガロールを含む液体の形の未精製ヒドロキノンを、純粋なヒドロキノンの結晶化を保証する制御された冷却に付す工程、
(b)母液から純粋なヒドロキノン結晶を分離する工程、
(c)再加熱して部分融解させる工程、
(d)精製されたヒドロキノンを完全に融解させる工程、及び
(e)精製されたヒドロキノンを回収する工程
を含むことを特徴とする前記方法が見出され、これが本発明の主題事項を構成する。
【0029】
本発明に従えば、本発明の実施形態のタイプに応じて多かれ少なかれ改善された純度を有するヒドロキノンが得られる。
【0030】
本発明の方法の工程に従って処理される未精製ヒドロキノンHQ0の正確な組成は、かなり大きく変化し得る。本発明の方法は、未精製ヒドロキノンの総重量に対して0.5〜6重量%、例えば0.5〜4重量%、特に1〜3重量%程度の合計不純物含有率を有する未精製ヒドロキノンに特に適している。
【0031】
しかしながら、本発明は、もっと不純物に富んだ未精製ヒドロキノン、特に不純物含有率10%超の未精製ヒドロキノンにも適用することができる。
【0032】
用語「重質」不純物とは、ヒドロキノンより高分子量の不純物を意味するものとし、用語「軽質」不純物とは、ヒドロキノンより低分子量の不純物を意味するものとする。
【0033】
典型的には、本発明に従って処理される未精製ヒドロキノンHQ0は、ヒドロキノン異性体(即ちレゾルシン及び随意としての残留ピロカテコール)から本質的に成る「軽質」不純物を0.1〜4重量%、例えば0.2〜3重量%含む。
【0034】
さらに、未精製ヒドロキノンHQ0中の「重質」不純物(その最も重要なものはピロガロールから成る)の量は、通常0.1〜4重量%、例えば0.2〜3重量%である。
【0035】
本発明の方法に特に適した未精製ヒドロキノンHQ0は、未精製ヒドロキノンの総量に対する重量%として:
・94〜99.5%のヒドロキノン、
・0.1〜4%、例えば0.2〜3%のレゾルシン、
・0.1〜4%、例えば0.2〜3%のピロガロール、
・随意としての痕跡の形、例えば10〜100ppm、好ましくは10〜20ppmの範囲のピロカテコール
を含む。
【0036】
本発明において、用語「ヒドロキノン」とは融点172℃±1℃の1,4−ジヒドロキシベンゼン(CAS RN 123-31-9)を意味し、用語「レゾルシノール」とは融点110℃±1℃の1,3−ジヒドロキシベンゼン(CAS RN 108-46-3)を意味し、そして用語「ピロガロール」とは融点133℃±1℃の1,2,3−トリヒドロキシベンゼン(CAS RN 87-66-1)を意味するものとする。融点は、特に「Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry (2004), 7th edition, Wiley VCH (electronic version)」に示されている。
【0037】
本発明の方法に従って処理される未精製ヒドロキノンHQ0の正確な性状に拘らず、本発明の方法の工程は下記の条件下で実施するのが有利である。
【0038】
かくして、本発明の精製方法は、溶剤なしでの結晶化による精製に相当する。不純物を含む未精製ヒドロキノンは、溶剤なしの液体の形、即ち融解状態で、精製プロセスに導入される。
【0039】
この精製技術は周知であり、一般的に「精錬(raffinage、refining)」(以下においては「精製」とも言う)、「融解浴再結晶」又は単純に「融解再結晶」又は「MSC」{融解静的結晶化(Melt Static Crystallization)}とも称される。
【0040】
しかしながら、斯かる技術は、ジヒドロキシベンゼン及びトリヒドロキシベンゼンタイプの軽質不純物及び重質不純物の両方を含む未精製ヒドロキノン(特にレゾルシンをピロガロール及び随意としてのピロカテコールと共に含む未精製ヒドロキノン)を様々な純度に精製することについては、知られていない。
【発明の効果】
【0041】
本発明に従う方法は、従来用いられていた方法と比較して比較的低コストで、工業的に容易に実施できるという利点を示す。さらに、本発明の方法は、蒸留や溶媒中での再結晶のような大量のエネルギーを用いたり多量の溶媒の使用を必要としたりする従来の方法に頼ることなく、高純度のヒドロキノンを得ることを可能にする。
【0042】
本発明に従う方法は、高純度のヒドロキノン、特に不純物含有率が3重量%未満、有利には2重量%未満、一般的に1重量%未満〜数百ppm(重量による)まで、さらには数十ppm(重量による)までであるヒドロキノンを得ることを可能にする。
【0043】
さらに、本発明の方法は、レゾルシノールのようなジヒドロキシベンゼンタイプの不純物及びピロガロールのようなトリヒドロキシベンゼンの不純物の量を同時に大幅に減らすことを可能にし、さらにはこれら不純物を除去することさえ可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】1回の精製工程を用いた本発明の方法の実施形態の概略図である。
【図2】1回の精製工程及び中間純度のHQ画分のリサイクルを用いた実施形態の概略図である。
【図3】2回の精製工程及びこれら2つの工程のそれぞれにおける2回の内部リサイクル並びに工程2から工程1へのリサイクルをも用いた本発明の方法の別の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の好ましい実施形態に従えば、精製操作を実施するチャンバーから前もって酸素を取り除いておく。かくして、液体状態のヒドロキノンの供給は、酸素フリーの雰囲気中で実施される。
【0046】
本発明の1つの実施形態に従えば、前記チャンバー中に不活性ガスの雰囲気を確立する。希ガス、好ましくはアルゴンを用いることができるが、しかし一般的には低価格の窒素を用いるのが好ましい。不活性雰囲気が確立されたら、液体状態のヒドロキノンを晶析装置(crystallizer)中に導入する。
【0047】
製造ラインから直接得られた液体状態のヒドロキノンを供給するようにすることが可能である。
また、ヒドロキノンを融解させることから成る工程を用意することも可能である。この目的で、この物質をその融点に加熱する。好ましくは、未精製ヒドロキノンを、ヒドロキノンの融点より僅かに高い温度、好ましくはその融点より5℃高い温度、より一層好ましくはその融点より5℃〜30℃高い温度にする。
【0048】
この未精製ヒドロキノンの温度は、175℃〜200℃の範囲、好ましくは178℃〜195℃の範囲、有利には180℃〜185℃の範囲から選択される。製造ラインから直接得られた液体状態のヒドロキノンについても、これらの同じ温度が適用される。
【0049】
前記融解操作は、一般的に撹拌しながら実施され、撹拌されて加熱された容器中で実施することができる。加熱は、ジャケット内に水蒸気又は好適な熱交換流体を循環させることによって実施するのが有利である。
【0050】
本発明にとって好適な熱交換流体としては、重質カルボン酸エステル(例えばフタル酸オクチル)、芳香族エーテル、例えばビフェニルオキシド及び/又はベンジルオキシド、ジフェニル、テルフェニル、他のポリフェニル(随意に部分水素化されたもの)、パラフィン油及び/又はナフテン油、石油蒸留残渣、シリコーン油等を挙げることができる。
【0051】
本発明の方法に従えば、上に示したように、前もって不活性雰囲気下に置いた晶析装置中に未精製ヒドロキノン(製造ラインから直接得られるもの又は融解操作に付したもの)を融解状態で導入する。
【0052】
晶析装置は、特にその方法を連続式で実施するかバッチ式で実施するかに応じて、下に示すような任意のタイプのそれ自体既知のものであることができ、随意に撹拌システムを備えたものである。静的融解媒体中で(撹拌したり液体相を循環させたりせずに)又は動的融解媒体中で(ループ中の液体の循環、流下薄膜技術他)運転することが可能である。
【0053】
すべての場合において、晶析装置には、晶析装置内に存在する物の制御された加熱及び制御された冷却の両方を可能にするシステムが備え付けられる。一般的には、ジャケット内に熱交換流体を循環させるためのシステム及び/又は管、板、円盤等を含む熱交換器タイプのシステムが用いられる。
【0054】
本発明にとって好適な熱交換流体としては、これらの目的のために通常用いられる流体、特に沸点少なくとも200℃超、さらには250℃超の高沸点流体であって、本発明の方法の際に採用される温度範囲内において適切な粘度を有するものが用いられる。
【0055】
例として、随意としてのヒドロキノンの融解のために用いられる容器の加熱に関して上で列挙したものを熱交換流体として用いるのが有利である。
【0056】
本発明の方法のために用いられる装置、特に晶析装置は、周知のものであり、それ自体既知のすべてのタイプのもの、例えばProabd(登録商標)MSCプロセスに用いることができるもの、特にSulzer社(http://www.sulzerchemtech.com)又はCovalence社(フランス国Saint-Amand-les-Eaux)より販売されている融解媒体中での結晶化のための晶析装置であることができる。
【0057】
この方法の第1工程は、前もって作成されたヒドロキノン/不純物の状態図に従う「温度降下/時間勾配」曲線(例1を参照せよ)に従って融解未精製ヒドロキノン(HQ0)を制御された態様で冷却することから成る。実際、純粋なヒドロキノンとその中に存在する不純物との間の状態図を作成することができることが見出された。
【0058】
これらの状態図は、ヒドロキノン/レゾルシノールについての共融点、ヒドロキノン/ピロガロールについての共融点、レゾルシノール/ピロガロールについての共融点及びヒドロキノン/レゾルシノール/ピロガロールについての共融点を示す。後者の点(温度)はより単純に「共融点」と称され、本明細書の続きにおいては「逆転温度」と称される温度に相当する。
【0059】
この逆転温度は、上で規定したような不純物を0.5%〜6%含む未精製ヒドロキノンについては、融解HQ0の温度より低く、一般的に80℃〜100℃の範囲、有利には90℃〜95℃の範囲、例えば95℃付近にある。
【0060】
逆転温度まで冷却するこの第1工程の期間は、温度勾配{晶析装置(熱交換流体)と融解物との間の温度差}が小さいか大きいかに応じて、広い範囲内で変えることができる。
【0061】
例えば、温度勾配が一般的に大きい「動的」方法の場合、第1工程の期間は一般的に数分〜数時間(例えば1又は2時間)の範囲であることができる。静的方法の場合には、比較的ゆっくりした冷却、例えば5〜15時間程度、有利には8〜12時間程度、一般的には10時間程度の冷却を実施するのが一般的である。
【0062】
そのゆっくりした固化のせいで、この融解物の冷却は、精製ヒドロキノン{即ち(HQ0と比較して)不純物含有量が減少したヒドロキノン}の結晶の発現をもたらす。逆転温度において、晶析装置は、精製ヒドロキノンの結晶及び不純物が濃縮された残留液相(母液)を含む。
【0063】
この方法のこの工程においては、結晶と液体との混合物を、熱平衡を達成して最終的な過飽和を最小限にするのに充分な時間、前記逆転温度に保つのが有利である(しかし必須というわけではない)。この時間は、この方法が上記のように静的条件下で実施されるか動的条件下で実施されるかに応じて変化し得るものであり、静的態様で実施される方法の場合には、一般的に数分〜4時間の範囲、例えば約2時間である。
【0064】
また、例えば冷点を作ることによって又は結晶化種を好ましくは2%未満の含有率で導入することによって、結晶化を促進することが、そして結晶格子の形成及びその空隙率を制御することさえ、可能である。結晶化種としては、少量の結晶質ヒドロキノン、例えば前の製造操作から得られた随意に好適な粒子寸法を有する結晶質ヒドロキノンが用いられる。
【0065】
本発明の方法の第2工程において、ヒドロキノン結晶が母液から分離される。この分離は、当業者に周知の慣用の液体−固体分離技術に従って実施され、その例としては、例えば重力流による分離又は機械的分離、例えば濾過、遠心分離若しくは水切り、或は不活性ガス(一般的に窒素)で加圧することによる分離を挙げることができる。この最後の技術は、結晶格子に含浸している液体保持物の脱飽和/濾過を可能にし、即ち結晶中に存在する不純な液相の除去を促進する。
【0066】
本発明の方法に完全に適した固体/液体分離技術は、重力流による分離である。
【0067】
この分離工程は、結晶化の最後の温度、即ち前記逆転温度において実施されるのが一般的である。しかしながら、本発明の好ましい実施形態を構成するものではないが、異なる温度を選択することもできる。
【0068】
本方法の第3工程は、前記逆転温度から純粋なヒドロキノンの融点(172℃)まで又はこの融点よりちょっと上の173〜174℃まで制御された態様で前記晶析装置を再加熱し、不純な液相の保持物が含浸した純粋なヒドロキノン結晶を部分的に融解させることから成る。ここでは発汗(溶離)という用語が用いられる:連続的に取り出される液相の純度は、連続的に高くなる:その純度は、全体として液体/固体状態図の液相線を描く。
【0069】
この第3工程の期間も、(上に示したように静的方法であるか動的方法であるかに応じて)広い範囲内で変えることができ、静的方法の場合には一般的に数分〜12時間、好ましくは2〜10時間、より一層好ましくは約6時間の期間実施する。
【0070】
172℃の温度に到達したら、精製ヒドロキノン結晶全部を再融解させるために、部分融点(172℃)より高い温度に加熱することによって融解工程を実施する。この工程は、一般的に数分〜8時間の範囲、より一層好ましくは1〜6時間の範囲、特に4時間程度の時間で、実施される。
【0071】
この完全再融解の結果として、精製ヒドロキノンが液体の形で得られて回収され、これは、例えば合成反応成分として即時利用してもいいし、冷却してから慣用の技術に従って成形して、粉塵の危険性なしに取り扱うのに適した寸法(典型的には少なくとも数百μ〜数mm程度の寸法)を有する固体物品の形にしてもよい。
【0072】
この成形は、特に次の技術の内のいずれかを採用することによって実施することができる。
・シリンダー又はベルト上でのフレーキング(薄片化):液状ヒドロキノンを低温の金属シリンダー又はベルトと接触させ、次いでシリンダー上で得られたフィルムをナイフで掻き取り、それにより固体状ヒドロキノンをフレークの形で回収する;
・特に欧州特許公開第1556322号公報に記載されたような「プリリング(prilling)」(ビーズ形成):液状ヒドロキノンを、例えば塔頂から空気又は不活性ガスのカラム中に落下させることによって、空気流中に液滴の形で分散させ、それによって固体状ヒドロキノンをビーズの形で得る;
・クエンチング又はショットブラスティング:液状ヒドロキノンを冷たい不混和性液体中に一般的に液滴の形で分散させ、それにより固体状ヒドロキノンを粒体の形で得る。
【0073】
その最終形態にどのようであろうとも、本発明の方法に従って得られる精製ヒドロキノンは、後記のように、不純物含有率が非常に低い。
【0074】
有利な実施形態に従えば、液体の形の精製ヒドロキノンは、その全部又は一部を上に記載した精製プロセスに再び装填する、即ち2回目の精製工程に装填することができる。この実施形態は、ヒドロキノンの純度をさらに高めることを可能にする。
【0075】
こうして精製工程を複数化することによって、非常に高いレベルのヒドロキノン純度を達成することが可能になる。
【0076】
別の実施形態に従えば、未精製ヒドロキノンHQ0を含む晶析装置中に、同じ晶析装置から得られた中間純度のヒドロキノンHQ1(例えばプロセスを連続式で実施する場合)又は前の操作から得られた中間純度のヒドロキノンを導入するのもまた有利である。この場合を「リサイクルプロセス」と称する。
【0077】
未精製ヒドロキノンHQ0から成る主要供給物と共に導入される中間純度のヒドロキノンHQ1の量は、広い範囲内で変えることができる。有利なリサイクル比HQ0/HQ1は、例えば約1であることができる。1より大きい、例えば2付近のHQ0/HQ1比も可能であるが、処理容量が大きくなる。とは言え、得られるヒドロキノン純度の増加に完全に適合する。また、1より小さい、例えば1/2付近のHQ0/HQ1比も可能だが、しかし得られるヒドロキノン純度の増大の観点からは利点がほとんどない。
【0078】
従って、1付近のリサイクル比HQ0/HQ1は純度の増大と処理容量との間の良好な折衷点を提供する。
【0079】
別の有利な実施形態に従えば、本発明の方法は、1回以上の精製工程と1回以上のリサイクルとを組み合わせることによって実施することができる。リサイクルは、同じ精製工程に対して実施することもでき、2つ以上の精製工程の間に実施することもできるということに留意されたい。
【0080】
かくして、本発明の方法は、2回の精製工程と工程2から工程1へのリサイクルとの組合せ、又は3回の精製工程と工程3から工程2及び/若しくは工程1へのリサイクルとの組合せ、又は4回の精製工程と工程4から工程3へのリサイクル及び/若しくは工程2から工程1へのリサイクル及び/若しくは工程4から工程1へのリサイクルとの組合せ等で、実施することができる。
【0081】
上記のように、本発明の方法を利用する精製操作は、連続式で実施することもでき、バッチ式で実施することもできる。連続実施に従えば、複数の静的又は動的晶析装置をカスケード式に、直列に及び/又は並列に配置させることができる。
【0082】
リサイクルありで又はなしで1回以上の精製工程を用いることができる本発明の方法の結果として、次の特徴を有する精製されたヒドロキノンが得られる:
・ヒドロキノン含有率は97%超、有利には98%超であり、
・レゾルシノール含有率は8000ppm未満、好ましくは4000ppm未満、より一層好ましくは400ppm未満、実際さらには100ppm未満であり、
・ピロガロール含有率は8000ppm未満、好ましくは4000ppm未満、より一層好ましくは400ppm未満、実際さらには100ppm未満である。
【0083】
例として、
・1回の精製工程を用いたリサイクルなしの方法で、98%以上、さらに実際には99%以上の純度、
・1回の精製工程を用い且つ内部リサイクル1回の方法で、99.58%以上の純度、
・2回の精製工程及び内部リサイクルを用いた方法で、200ppm未満、さらに実際には150ppm未満の不純物含有率
のヒドロキノンを得ることが可能である。
【0084】
ジフェノール及びピロガロール含有率は、高性能液体クロマトグラフィーによって決定される。
【0085】
かくして、本発明の方法は、少なくとも98%〜約100%であり得る様々な純度のヒドロキノンを得ることを可能にするので、特に有利である。
【0086】
添付した図1〜3は、本発明の範囲を限定することなく本発明の理解を容易にするためのものである。
【0087】
図1は、1回の精製工程を用いた本発明の方法の実施形態を概略的に示す。図中、
1:未精製HQ供給物
2:不純HQ残留物
3:純粋HQ製品。
【0088】
図2は、1回の精製工程及び中間純度のHQ画分のリサイクルを用いた実施形態の概略図である。図中、
1:未精製HQ装填物
2:不純HQ残留物
3:中間純度のHQリサイクル物
4:純粋HQ製品
5:未精製HQ供給物(1)+中間純度HQリサイクル物(3)。
【0089】
図3は、2回の精製工程及びこれら2つの工程のそれぞれにおける2回の内部リサイクル並びに工程2から工程1へのリサイクルをも用いた本発明の方法の別の実施形態を概略的に示す。この実施形態において、
1:未精製HQ装填物(HQ0
2:第1工程の不純HQ残留物
3:第1工程の中間純度HQリサイクル物
4:第2工程供給物への第1工程の純粋HQ製品
5:第1工程供給物:HQ0(1)+第1工程中間純度HQリサイクル物(3)
6:第2工程供給物:第1工程純粋HQ(4)+第2工程中間純度HQリサイクル物(7)
7:第2工程供給物への第2工程中間純度HQリサイクル物
8:n+1回目の運転の第1工程への第2工程不純HQ残留物リサイクル
9:第2工程高純度HQ製品。
【0090】
以下の本発明の具体例としての例示的実施形態は、例示として与えたものであり、限定的な性格を持つものではない。
【実施例】
【0091】
例1:精製熱サイクル及び実験の特徴付け
不純物を合計5重量%(レゾルシン2.5重量%、ピロガロール2.5重量%)含む融解未精製ヒドロキノン(HQ0)1000gを、185℃の温度に保った1.5リットルの晶析装置に装填する。
【0092】
第1工程は、185℃から95℃まで10時間で制御された態様で冷却して成る;167℃から結晶化が始まる。
【0093】
第2工程(安定化、2時間の期間)は、熱平衡を達成して最終的な過飽和を最小限にするために、95℃の逆転温度において実施される。
【0094】
第3工程(2時間の期間)は、95℃の逆転温度における排出(液抜き)であり、不純物が濃縮された残留液相を抜き出すことから成る。
【0095】
第4工程(発汗、6時間の期間)は、晶析装置を95℃から172℃まで制御された態様で再加熱し、不純な液相の保持物が含浸した純粋なヒドロキノン結晶を部分的に融解させることから成る。抜き出し物を分留し、各画分を化学的に分析した後に、精製実験の特徴付けを確立する。生成物の純度は、初期装填物の回収率の関数として表わされる。
【0096】
第5工程は融解工程である(4時間の期間);これは172℃から出発して実施される;純粋なヒドロキノン結晶全部を再融解させる。
【表1】

【0097】
この実験特徴付けの利用は、プロセスの全体収率を最適化して精製ヒドロキノン(HQ)の化学的品質を調節するために、未精製HQの組成変化、装置の寸法、リサイクル材料の割合及びそれらの純度並びに排出材料の割合及びそれらの純度に応じて、様々な精製プログラム及び変法(リサイクル及び/若しくは精製段階化を行うもの又は行わないもの)を練り上げることを可能にする。
【0098】
例2:内部リサイクルなしの1工程方法(図1)
不純物を合計4重量%(レゾルシン2重量%、ピロガロール2重量%、ピロカテキン痕跡量)含む未精製ヒドロキノンを精製する。
【0099】
精製実験特徴付けのデータを下記の表2にまとめる。
【表2】

【0100】
精製の物質収支を下記の表3に示す。
【表3】

HQの純度=98.605%
【0101】
例3:内部リサイクルなしの1工程方法(図1)
不純物を合計2重量%(レゾルシン1重量%、ピロガロール1重量%、ピロカテキン痕跡量)含む未精製ヒドロキノンを精製する。
【0102】
図1のプロセス図に従って、表4が得られた。
【表4】

HQの純度=99.352%
【0103】
例4:内部リサイクルありの1工程方法(図2)
不純物を合計4重量%(レゾルシン2重量%、ピロガロール2重量%、ピロカテキン痕跡量)含む未精製ヒドロキノンと、前の操作からリサイクルされて不純物を6.02重量%(レゾルシン3.01重量%、ピロガロール3.01重量%)含むヒドロキノンとの混合物の精製を実施する。
【0104】
図2のプロセス図に従って、表5が得られた。
【表5】

HQの純度=99.719%
【0105】
例5:2回の精製工程及び内部リサイクルを含む方法
不純物を合計4重量%(レゾルシン2重量%、ピロガロール2重量%、ピロカテキン痕跡量)含む未精製ヒドロキノン(HQ0)と、前の操作からリサイクルされて不純物を6.02重量%(レゾルシン3.01重量%、ピロガロール3.01重量%)含むヒドロキノンとの混合物を、第1工程で精製する。
【0106】
例4に従って得られた第1工程からの純粋なHQ生成物を、前の操作の2回目の精製工程からリサイクルされたHQと共に導入する。高純度のHQ生成物(合計不純物200ppm未満)が得られた。この第2工程からの残留物は、n+1回目の操作の第1工程の供給物に完全にリサイクルすることができる。
【0107】
図3のプロセス図に従って、表6が得られた。
【表6】

【0108】
例6:2回の精製工程及び内部リサイクルを含む方法
例5についてのように、不純物を合計4重量%(レゾルシン2重量%、ピロガロール2重量%、ピロカテキン痕跡量)含む未精製ヒドロキノンと、前の操作からリサイクルされて不純物を6重量%(レゾルシン3重量%、ピロガロール3重量%)含むヒドロキノンとの混合物を、第1工程で精製する。
【0109】
例4に従って得られた第1工程からの純粋なHQ生成物を、前の操作の2回目の精製工程からリサイクルされたHQと共に導入する。2回目の精製工程のために用いられる装置の寸法は、この場合には前の例のものの2倍とする。高純度のHQ生成物(合計不純物150ppm未満)が得られた。この第2工程からの残留物は、n+1回目の操作の第1工程の供給物に完全にリサイクルすることができる。
【0110】
図3のプロセス図に従って、表7が得られた。
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
未精製ヒドロキノンから出発するヒドロキノンの製造方法であって、
少なくとも次の工程:
(a)不純物として少なくともレゾルシン及びピロガロールを含む液体の形の未精製ヒドロキノンを、純粋なヒドロキノンの結晶化を保証する制御された冷却に付す工程、
(b)母液から純粋なヒドロキノン結晶を分離する工程、
(c)再加熱して部分融解させる工程、
(d)精製されたヒドロキノンを完全に融解させる工程、及び
(e)精製されたヒドロキノンを回収する工程
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記未精製ヒドロキノンが未精製ヒドロキノンの総重量に対して0.5〜6重量%、例えば0.5〜4重量%、特に1〜3重量%程度の不純物含有率を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記未精製ヒドロキノンHQ0がヒドロキノン異性体(即ちレゾルシン及び随意としての残留ピロカテコール)から本質的に成る「軽質」不純物を0.1〜4重量%、例えば0.2〜3重量%含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記未精製ヒドロキノンHQ0がピロガロールから本質的に成る「重質」不純物を0.1〜4重量%、例えば0.2〜3重量%含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記未精製ヒドロキノンHQ0が未精製ヒドロキノンの総量に対する重量%として:
・94〜99.5%のヒドロキノン、
・0.1〜4%、例えば0.2〜3%のレゾルシン、
・0.1〜4%、例えば0.2〜3%のピロガロール、
・随意としての痕跡の形、例えば10〜100ppm、好ましくは10〜20ppmの範囲のピロカテコール
を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
工程(a)を、175℃〜200℃の範囲、好ましくは178℃〜195℃の範囲、有利には180℃〜185℃の範囲の温度において融解した未精製ヒドロキノンを数分〜数時間の範囲、好ましくは5〜15時間、有利には8〜12時間程度、一般的に10時間程度の時間をかけて80℃〜100℃の範囲、有利には90℃〜95℃の範囲、好ましくは95℃付近の逆転温度に制御された態様で冷却することにより実施することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
工程(a)の後に結晶と液体との混合物を数分〜4時間、例えば約2時間、前記逆転温度に保つことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
母液からの純粋なヒドロキノン結晶の分離を前記逆転温度において実施することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
母液からの純粋なヒドロキノン結晶の分離を重力流によって実施することを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
再加熱及び部分融解工程を、前記逆転温度から出発して純粋なヒドロキノンの融点まで、数分〜12時間、好ましくは2〜10時間、より一層好ましくは約6時間の期間をかけて実施することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
完全融解工程を一般的に数分〜8時間の範囲、より一層好ましくは1〜6時間の範囲、特に4時間程度の期間をかけて実施することを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
連続式で又はバッチ式で、撹拌しながら又は撹拌せずに、実施することを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
不活性雰囲気下、好ましくは窒素雰囲気下で実施することを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
液体の形の精製されたヒドロキノンの全部又は一部を別の精製工程に再び装填することを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
カスケード式に、直列に及び/又は並列に配置された複数の精製工程の組合せを含むことを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
1回以上の精製工程及び1回以上のリサイクルを組み合わせることによって実施されることを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記未精製ヒドロキノンが、酸触媒の存在下での過酸化水素によるフェノールのヒドロキシル化の結果としての反応混合物から、随意にピロカテコールを蒸留によって実質的に除去した後に、得られたもの又は得ることができるものであることを特徴とする、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記酸触媒が
・強プロトン酸類、好ましくは硫酸、クロロ硫酸、過塩素酸、スルホン酸類、好ましくはメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸又はフェノールスルホン酸、
・スルホン樹脂、好ましくはスルホン化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、芳香環上にメチレンスルホン酸基を有するフェノール−ホルムアルデヒドコポリマー、又はスルホン酸基を有するペルフッ素化樹脂、
・鉄(II)又は銅(II)錯体、
・酸性ゼオライト、好ましくはチタンシリカライト(若しくはチタノシリカライト−1)タイプ又は鉄シリカライトタイプ(TS−1タイプのもの)のゼオライト、MELチタンシリカライトタイプのゼオライト又はMFIタイプのチタノゼオシライト又はMCM−22ゼオライト
から選択されることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
得られるヒドロキノンが少なくとも98%〜ほぼ100%の範囲の純度を有することを特徴とする、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
リサイクルなしで1回の精製工程を含み、前記未精製ヒドロキノンが2重量%のレゾルシン、2重量%のピロガロール及び痕跡量のピロカテキンを含み、精製ヒドロキノンが98%以上の純度を示すことを特徴とする、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
リサイクルなしで1回の精製工程を含み、前記未精製ヒドロキノンが1重量%のレゾルシン、1重量%のピロガロール及び痕跡量のピロカテキンを含み、精製ヒドロキノンが99%以上の純度を示すことを特徴とする、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
1回の精製工程を内部リサイクルと共に含み、前記未精製ヒドロキノンが2重量%のレゾルシン、2重量%のピロガロール及び痕跡量のピロカテキンを含み、前の操作からリサイクルされたヒドロキノンが3.0重量%のレゾルシン及び3.0重量%のピロガロールを含み、リサイクル比が1であり、精製ヒドロキノンが99.5%以上の純度を示すことを特徴とする、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
2回の精製工程及び内部リサイクル工程を含み、前記未精製ヒドロキノンが2重量%のレゾルシン、2重量%のピロガロール及び痕跡量のピロカテキンを含み、前の操作からリサイクルされたヒドロキノンが3.0重量%のレゾルシン及び3.0重量%のピロガロールを含み、リサイクル比が1であり、精製ヒドロキノンが200ppm未満の合計不純物を示すことを特徴とする、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
2回の精製工程及び内部リサイクル工程を含み、前記未精製ヒドロキノンが2重量%のレゾルシン、2重量%のピロガロール及び痕跡量のピロカテキンを含み、前の操作からリサイクルされたヒドロキノンが3重量%のレゾルシン及び3重量%のピロガロールを含み、リサイクル比が3であり、精製ヒドロキノンが150ppm未満の合計不純物を示すことを特徴とする、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−502684(P2010−502684A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527175(P2009−527175)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【国際出願番号】PCT/FR2007/001424
【国際公開番号】WO2008/029018
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(508076598)ロディア オペレーションズ (98)
【氏名又は名称原語表記】RHODIA OPERATIONS
【住所又は居所原語表記】40 rue de la Haie Coq F−93306 Aubervilliers FRANCE
【Fターム(参考)】