説明

高純度1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカンおよびその製造法

【課題】ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、変性アクリル樹脂等の原料として有用な高純度1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカンおよびその製造法を提供する。
【解決手段】ヘテロポリ酸触媒の存在下、シクロドデカノンと2−メチルフェノールを反応させ、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカンを製造する方法において、4.0×10Pa以下の減圧還流下、30〜90℃の温度範囲で水のみを反応系外へ抜き出して反応させることにより副生成物三種が0.5重量%以下に低減された高純度1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカンが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、変性アクリル樹脂等の原料として有用な高純度1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカンおよびその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカンの製造方法としては、塩化水素ガスとチオールを触媒としてシクロドデカノンと2−メチルフェノールを脱水縮合させる方法が開示されている(特許文献1)。
しかし、塩化水素ガスは腐食性が強く、取扱いが難しいため、工業的に行なおうとすると専用の設備が必要となる。 このため、塩化水素ガスを用いることなく、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカンを高純度かつ高収率で工業的に有利に製造する方法の開発が求められていた。
本出願人は、先に塩化水素ガスを使用しない方法として、ヘテロポリ酸触媒存在下、特定の環状ケトン類と特定の化合物から環状炭化水素誘導体を製造する方法を提案した(特許文献2)。しかし、この方法を用いて、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカンを製造した場合、 当該化合物中には式(1)〜(3)で表される化合物が1重量%以上含まれていることが判明した。また、この方法においては反応が遅延する場合があった。
光学樹脂原料として当該化合物を用い、より均一なポリマーを製造するためには、式(1)〜(3)で表される化合物が低減された高純度の原料がより望ましく、式(1)〜(3)で表される化合物が低減された高純度の1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカンおよびその工業的に有利な製造方法の開発が求められていた。
【化1】

【0003】
【特許文献1】特開昭59−166528号公報
【特許文献2】特願2009−73027号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、耐熱性ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、変性アクリル樹脂等の原料として有用な式(1)〜(3)で表される化合物が低減された高純度の1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカンおよびその製造法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、従来の方法では、反応時に水とともに有機溶媒や2−メチルフェノールが留出することに着目し、鋭意研究を重ねた結果、ヘテロポリ酸存在下、シクロドデカノンと2−メチルフェノールを反応させ、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカンを製造する方法において、4.0×10Pa以下の減圧還流下、30〜90℃の温度範囲の条件下にあって、有機溶媒や2−メチルフェノールを留出させることなく、水のみを反応系外へ抜き出して反応させることにより、反応の遅延を防止でき、かつ、簡便な後処理によって式(1)〜(3)で表される化合物の含有量が低減された高純度の1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカンが得られる事をはじめて見い出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0006】
本発明によって、耐熱性ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、変性アクリル樹脂等の原料として有用な式(1)〜(3)で表される化合物が低減された高純度の1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカンおよびその反応の遅延を防止することができる工業的に有利な製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明をその実施の形態とともに記載する。
【0008】
本発明に用いられるヘテロポリ酸とは、一般的には異なる2種以上の酸化物複合体からなる複合酸化物酸、およびこれらのプロトンの一部もしくはすべてを他のカチオンで置き換えたものである。ヘテロポリ酸は、例えば、リン、ヒ素、スズ、ケイ素、チタン、ジルコニウムなどの元素の酸素酸イオン(例えば、リン酸、ケイ酸)とモリブデン、タングステン、バナジウム、ニオブ、タンタルなどの元素の酸素酸イオン(バナジン酸、モリブデン酸、タングステン酸)とで構成されており、その組み合わせにより種々のヘテロポリ酸が可能である。

【0009】
ヘテロポリ酸を構成する酸素酸の元素は特に限定されるものではないが、例えば、銅、ベリリウム、ホウ素、アルミニウム、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、チタン、ジルコニウム、セリウム、トリウム、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、ウラン、セレン、テルル、マンガン、ヨウ素、鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、オスミウム、イリジウム、白金などが挙げられる。 これらのうち構成元素として(A)リンまたはケイ素、および(B)バナジウム、モリブデンまたはタングステンから選ばれた少なくとも1種を含むものが好ましい。
【0010】
ヘテロポリ酸骨格を構成するヘテロポリ酸アニオンとしては種々の組成のものを使用できる。例えば、XM1240、XM1242、XM1862、XM24などが挙げられる。好ましいヘテロポリ酸アニオンの組成は、XM1240である。各式中、Xはケイ素、リンなどの元素であり、Mはバナジウム、モリブデン、タングステンなどの元素である。これらの組成を有するヘテロポリ酸として、具体的には、リンモリブデン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸、ケイタングステン酸、リンバナドモリブデン酸、リンタングストモリブデン酸、リンバナドモリブデン酸、ケイタングストモリブデン酸、リンバナドタングステン酸などが例示される。
【0011】
ヘテロポリ酸は、遊離のヘテロポリ酸であってもよく、プロトンの一部もしくはすべてを他のカチオンで置き換えて、ヘテロポリ酸の塩として使用することもできる。従って、本発明で言うヘテロポリ酸とはこれらのヘテロポリ酸の塩も含まれる。プロトンと置換可能なカチオンとしては、例えば、アンモニウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが挙げられる。
【0012】
ヘテロポリ酸は無水物であってもよく、結晶水含有物であってもよいが、無水物の方がより反応が早く、また副生成物の生成が抑制され好ましい。結晶水含有物の場合、予め減圧乾燥や溶媒との共沸脱水等の脱水処理を行なうことにより無水物と同様の効果を得ることができる。ヘテロポリ酸は活性炭、アルミナ、シリカ−アルミナ、ケイソウ土などの担体に担持した形態で用いてもよい。これらのヘテロポリ酸は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲でヘテロポリ酸以外の他の触媒を併用してもよい。
【0013】
ヘテロポリ酸の使用量は特に限定されるものではないが、充分な反応速度を得るには、原料である環状ケトン類に対して、0.0001重量倍以上、好ましくは0.001〜30重量倍、更に好ましくは0.01〜5重量倍である。30重量倍より多い場合は経済的に望ましくない。
【0014】
本発明における2−メチルフェノールの使用量は、特に限定されるものではないが、反応性、作業性及び経済性の点から、通常、シクロドデカノン1モルに対して、3〜25モルであり、好ましくは5〜15モルである。2−メチルフェノールの使用量が5モルより少ない場合は反応中結晶(生成物)が析出し、反応性、作業性が悪化する場合がある。また、2−メチルフェノールの使用量が25モル倍より多いと経済的に不利になる。
【0015】
シクロドデカノンと2−メチルフェノールの反応は、例えば、シクロドデカノンと2−メチルフェノールおよびヘテロポリ酸を反応装置に仕込み、4.0×10Pa以下の減圧還流下、30〜90℃の温度範囲で油水分離器等を用いて有機溶媒や2−メチルフェノールを反応系に戻し、反応系外へ水のみを抜き出すことにより行なうことができる。
【0016】
本発明における反応温度は、溶媒の有無やその種類と量および減圧度により異なるが、30〜90℃であり、好ましくは50〜80℃である。反応温度が90℃より高いと副生成物の増加により純度、収率が低下する。また、製品に着色が生じ好ましくない。反応温度が30℃より低いと反応が進行しないかまたは反応が完結するのに長時間を要し、好ましくない。
【0017】
本発明における減圧度は、4.0×10Pa以下であり、好ましくは3.0×10Pa以下、更に好ましくは0.1×10Pa〜2.0×10Paである。反応温度が30〜90℃である場合において、減圧度が4.0×10Paを超えた場合には、反応が進行しないかまたは反応が完結するのに長時間を要するため好ましくない。
【0018】
本発明において、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で共沸脱水溶媒を用いて減圧反応することもできる。反応に用いられる共沸脱水溶媒としては、特に限定されるものではないが、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、ジ−iso−プロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの脂肪族および環状エーテル溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリジノンなどのアミド溶媒、などが挙げられる。好ましくは芳香族炭化水素溶媒、ハロゲン化芳香族炭化水素溶媒であり、さらに好ましくはトルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンである。その使用量は特に限定されるものではないが、通常、シクロドデカノンに対し5重量部以下、好ましくは2重量部以下である。適量の溶媒は反応を促進するが、使用量が多いと反応が遅くなる場合がある。
【0019】
反応後、反応液中の1,1−ビス−(4―ヒドロキシ−3−メチルーフェニル)シクロドデカンには式(1)〜(3)で表される化合物が1重量%程度含まれている。
【0020】
本発明の式(1)〜(3)で示される不純物の含有量が0.5重量%以下である高純度1,1−ビス−(3−メチルー4―ヒドロキシフェニル)シクロドデカンを得る方法は、例えば、前記の式(1)〜(3)で表される化合物が1重量%程度含まれている反応液に溶媒を加え、冷却晶析し、析出した結晶を濾別する方法が挙げられる。 得られた結晶中の式(1)〜(3)で示される不純物の含有量が0.5重量%を超えている場合には、0.5重量%以下になるまで同様の操作を繰り返し実施することにより得ることができる。
【0021】
(実施例)
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例中、特にことわらないかぎり%はHPLCにおける面積百分率値であり、部は重量基準である。
純度、および式(1)〜(3)であらわされる化合物の含有量は、HPLCにより測定した。 HPLCでの検出波長UV 280nmにおいて(1)〜(3)であらわされる化合物を正確に測定することができる。

HPLC測定条件は以下のとおり。
HPLC測定条件:
装置 :島津 LC−2010A
カラム:L−Column ODS(5μm、4.6mmφ×150mm)
移動相:A液:水/メタノール=70/30(v/v)、B液:メタノール
B液濃度:30%→100%(25分)→100%(35分)
流量:1.0ml/min、カラム温度:40℃、検出波長:UV 280nm
【実施例1】
【0022】
攪拌機、窒素吹込管、温度計およびディーンスターク型油水分離器を付けたガラス製反応器に、シクロドデカノン23.7g(0.130モル)、2−メチルフェノール183g(1.69モル)および触媒としてリンタングステン酸[(H3PW1240)・nH2O]0.60g、ドデカンチオール1.32gを加え、温度70℃、1.3×10Paの減圧還流下で2−メチルフェノールを留出させることなく、生成する水のみを系外に除去しながら4時間反応した。得られた反応混合物にトルエン132gと水酸化ナトリウム水溶液を加え、70℃で中和後水洗した。 有機層を分液し得られた有機層を減圧濃縮することにより、トルエンおよび過剰の2−メチルフェノールを除去した。得られた濃縮物にトルエン164gを加え、115℃で1,1−ビス−(4―ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカンを溶解させた後、得られた溶液を100℃まで冷却し、1時間保温した後に5℃まで冷却した。析出した結晶を濾過により取り出し、乾燥させることにより、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカンの白色結晶38.5g(収率77.9%、純度99.0%、(1)〜(3)であらわされる化合物の含有量0.7%)を得た。得られた結晶をトルエンで再結晶し、式(1)〜(3)であらわされる化合物の低減された高純度1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカンの白色結晶35.8g(収率72.4%、純度99.6%、(1)〜(3)であらわされる化合物の含有量 検出限界0.01%未満)を得た。
【実施例2】
【0023】
攪拌機、窒素吹込管、温度計およびディーンスターク型油水分離器を付けたガラス製反応器に、シクロドデカノン23.7g(0.130モル)、2−メチルフェノール183g(1.69モル)および触媒としてリンタングステン酸[(H3PW1240)・nH2O]0.60g、ドデカンチオール1.32gを加え、温度50℃、0.65×10Paの減圧還流下で2−メチルフェノールを留出させることなく、生成する水のみを系外に除去しながら6時間反応した。得られた反応混合物にトルエン132gと水酸化ナトリウム水溶液を加え、70℃で中和後水洗した。 有機層を分液し得られた有機層を減圧濃縮することにより、トルエンおよび過剰の2−メチルフェノールを除去した。得られた濃縮物にトルエン164gを加え、115℃で1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカンを溶解させた後、得られた溶液を100℃まで冷却し、1時間保温した後に5℃まで冷却した。析出した結晶を濾過により取り出し、乾燥させることにより、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカンの白色結晶43.0g(収率86.9%、純度99.5%、(1)〜(3)であらわされる化合物の含有量0.3%)を得た。
【実施例3】
【0024】
攪拌機、窒素吹込管、温度計およびディーンスターク型油水分離器を付けたガラス製反応器に、シクロドデカノン23.7g(0.130モル)、2−メチルフェノール183g(1.69モル)および触媒としてリンタングステン酸[(H3PW1240)・nH2O]0.60g、ドデカンチオール1.32gを加え、温度80℃、2.0×10Paの減圧還流下で2−メチルフェノールを留出させることなく、生成する水のみを系外に除去しながら4時間反応した。得られた反応混合物にトルエン132gと水酸化ナトリウム水溶液を加え、70℃で中和後水洗した。 有機層を分液し得られた有機層を減圧濃縮することにより、トルエンおよび過剰の2−メチルフェノールを除去した。得られた濃縮物にトルエン164gを加え、115℃で1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカンを溶解させた後、得られた溶液を100℃まで冷却し、1時間保温した後に5℃まで冷却した。析出した結晶を濾過により取り出し、乾燥させることにより、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカンの白色結晶32.8g(収率66.2%、純度98.4%、(1)〜(3)であらわされる化合物の含有量1.0%)を得た。得られた結晶にトルエン231gを加えて再結晶し、式(1)〜(3)であらわされる化合物の低減された高純度1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカンの白色結晶30.5g(収率61.5%、純度98.8%、(1)〜(3)であらわされる化合物の含有量 検出限界0.01%未満)を得た。
【実施例4】
【0025】
攪拌機、窒素吹込管、温度計およびディーンスターク型油水分離器を付けたガラス製反応器に、シクロドデカノン23.7g(0.130モル)、2−メチルフェノール98.4g(0.910モル)および触媒としてリンタングステン酸[(H3PW1240)・nH2O]0.60g、ドデカンチオール1.32gを加え、温度70℃、1.3×10Paの減圧還流下で2−メチルフェノールを留出させることなく、生成する水のみを系外に除去しながら4時間反応した。得られた反応混合物にトルエン154gと水酸化ナトリウム水溶液を加え、86℃で中和後水洗した。 有機層を分液し得られた有機層を還流脱水し、115℃で1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカンを溶解させた後、得られた溶液を95℃まで冷却し、1時間保温した後に5℃まで冷却した。析出した結晶を濾過により取り出し、乾燥させることにより、1,1−ビス−(3−メチルー4―ヒドロキシフェニル)シクロドデカンの白色結晶36.8g(収率74.4%、純度99.0%、(1)〜(3)であらわされる化合物の含有量0.8%)を得た。得られた結晶をトルエンで再結晶し、式(1)〜(3)であらわされる化合物の低減された高純度1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカンの白色結晶34.2g(収率69.2%、純度98.8%、(1)〜(3)であらわされる化合物の含有量 検出限界0.01%未満)を得た。
【0026】
(比較例1)
攪拌機、窒素吹込管、温度計およびT字管を付けたガラス製反応器に、シクロドデカノン23.7g(0.13モル)、2−メチルフェノール183g(1.69モル)および触媒としてリンタングステン酸[(HPW1240)・nHO]0.6g、n-ドデシルメルカプタン2.63g(0.013モル)を加え、温度を70℃に保ちながら反応により生成する水を1.3×10Paの減圧下で系外に除去しながら8時間攪拌した。(水を減圧下で系外に除去中、水と共に2−メチルフェノールが留去されていることを確認した。)得られた反応混合物にトルエンを加え、得られたトルエン混合物を70℃に調整し、水を加え水酸化ナトリウムで中和後、水で洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮することにより、トルエンおよび過剰の2−メチルフェノールを除去した。得られた混合物にトルエンを加え、加熱し溶解させた後、得られた溶液をそのまま5℃まで冷却した。析出した結晶を濾過により取り出し、乾燥させることにより、1, 1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカンの白色結晶41g(収率82.8%、純度98.3%、(1)〜(3)であらわされる化合物の含有量1.5%))を得た。
【0027】
(比較例2)
攪拌機、窒素吹込管、温度計およびT字管を付けたガラス製反応器に、シクロドデカノン93.2g(0.51モル)、2−メチルフェノール737g(6.82モル)および触媒としてリンタングステン酸[(H3PW1240)・nH2O]2.32g、ドデカンチオール5.03gを加え、温度を70℃に保ちながら反応により生成する水を減圧下1.3×10Paで系外に除去しながら20時間攪拌した。(水を減圧下で系外に除去中、水と共に2−メチルフェノールが留去されていることを確認した。)得られた反応混合物にトルエン520gと水酸化ナトリウム水溶液を加え、70℃で中和後水洗した。 有機層を分液し得られた有機層を減圧濃縮することにより、トルエンおよび過剰の2−メチルフェノールを除去した。得られた濃縮物にトルエン644gを加え、115℃で1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカンを溶解させた後、得られた溶液を100℃まで冷却し、1時間保温した後に5℃まで冷却した。析出した結晶を濾過により取り出し、乾燥させることにより、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカンの白色結晶116g(収率59.4%、純度93.9%(1)〜(3)であらわされる化合物の含有量4.0%)を得た。
【0028】
(比較例3)
攪拌機、窒素吹込管、温度計およびディーンスターク型油水分離器を付けたガラス製反応器に、シクロドデカノン23.7g(0.130モル)、2−メチルフェノール183g(1.69モル)および触媒としてリンタングステン酸[(H3PW1240)・nH2O]0.60g、ドデカンチオール1.32gを加え、温度100℃、5.0×10Paの減圧還流下で2−メチルフェノールを留出させることなく、生成する水のみを系外に除去しながら8時間反応した。得られた反応混合物にトルエン132gと水酸化ナトリウム水溶液を加え、70℃で中和後水洗した。 有機層を分液し得られた有機層を減圧濃縮することにより、トルエンおよび過剰の2−メチルフェノールを除去した。得られた濃縮物にトルエン164gを加え、115℃で1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカンを溶解させた後、得られた溶液を100℃まで冷却し、1時間保温した後に5℃まで冷却した。析出した結晶を濾過により取り出し、乾燥させることにより、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカンの白色結晶16.1g(収率32.5%、純度92.6%、(1)〜(3)であらわされる化合物の含有量5.2%)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)〜(3)で示される化合物の含有量の合計が0.5重量%以下であることを特徴とする高純度1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカン。
【化1】

【請求項2】
ヘテロポリ酸存在下、シクロドデカノンと2−メチルフェノールを反応させ、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカンを製造する方法において、4.0×10Pa以下の減圧還流下、30〜90℃の温度範囲で水のみを反応系外へ抜き出して反応させることを特徴とする請求項1記載の高純度1,1−ビス−(3−メチルー4―ヒドロキシフェニル)シクロドデカンの製造法。

【公開番号】特開2011−6337(P2011−6337A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149303(P2009−149303)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000216243)田岡化学工業株式会社 (115)
【Fターム(参考)】