説明

高級清涼織編物

【課題】従来の麻調織編物やスパンシルク調織編物、スパンシルク麻交調織編物等では表現できなかった高級感のある上品で控えめな光沢やドライタッチ、軽量感、膨らみ感、ナチュラルな紡績糸調の異繊度感、爽やかな清涼感、吸湿性と放湿性に富みムレ感の少ない快適な着用感等の特長を表現した高級清涼織編物を生産性の高い効率的な方法で、安定した価格で安価に提供する。
【解決手段】高級清涼織編物は、少なくとも長手方向に30cm以上230cm以下の未解撚部と過解撚部を有する仮撚加工糸を含み、公定水分率8%以下で熱可塑性を有するセルロース系フィラメント糸の混用率が50%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高級清涼織編物に関し、更に詳しくは麻織編物やシルクスパン織編物、スパンシルク麻交織編物等の高級清涼織編物の有する欠点を改善し、これらの高級清涼織編物の特長を表現した高級清涼織編物に関する。
【背景技術】
【0002】
麻織編物は、麻の有する繊度斑による独特な異繊度感やドライで清涼感のある風合いと、中空構造からくる軽量感、適度なハリコシ感や吸湿性と放湿性に優れるなど麻に特有の性質から快適な高級夏物衣料、高級清涼織編物として広く認められている。しかし、一方で皺になり易く洗濯堅牢度や湿摩擦堅牢度が低い等の取り扱い上の問題や、発色性が劣り、更には高価であり価格も不安定である等の問題もある。
【0003】
また、スパンシルク織編物も上品な控えめの光沢と膨らみ感があり、ソフトで上品なドライ感がある等から高級な織編物として広く認められている。更に、麻糸とスパンシルク糸とを複合した高級な清涼織編物も市販されている。しかし、一方で高価でありイージーケアー性に問題がある。
【0004】
麻織編物やスパンシルク織編物、スパンシルク麻交織編物等の上記特長を表現し、更に上記欠点を補ったものを生産すべく多様な開発が行われ、多様な商品が市販されているが、未だ満足のいく商品が得られているとは言いがたい。例えば、ポリエステル系フィラメント糸を用いて長手方向に太細差を付与したシックアンドシン糸や仮撚加工等でスラブ外観を付与したものを用いた商品も多種開発されてきた。しかし、ワキシイで硬い風合い、吸湿性がないためのムレ感、静電性等の問題があり、清涼感、高級感に劣る。また、高級感のある光沢や紡績調の異繊度感などの外観も得られていない。
【0005】
こうした課題を解消する仮撚加工糸が、例えば特開平8−284033号公報(特許文献1)により提案されている。この特許文献1に開示された強撚糸調複合仮撚加工糸は、複数本のマルチフィラメント糸によって構成された40〜140cmの未解撚部と40〜140cmの過解撚部とが糸の長手方向に沿って交互に存在し、且つその撚り方向の変換部に短いピッチの40cm以下のS、Z交互撚り構造部が存在しており、嵩高でありながら、シャリ感やドレープ性に優れ、紡績糸調の斑感を有し、表面変化に富み、後工程通過性が優れ、しかも錘間斑のない加工糸が得られる。
【0006】
しかしながら、特許文献1により提案されている仮撚加工糸を用いた清涼織編物にあっても、未だ高級感のある上品で控えめな光沢やドライタッチが得られず、軽量感、膨らみ感、ナチュラルな紡績糸調の異繊度感、爽やかな清涼感に乏しく、吸湿性と放湿性が十分でなく、ムレ感による多少の不快感が残る。
【特許文献1】特開平8−284033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、麻織編物やスパンシルク織編物、スパンシルク麻交織編物等の高級清涼織編物がもつ形態安定性、皺の生じ易さ、発色性、染色堅牢度、イージーケアー性等の欠点を改善し、従来の麻調織編物やスパンシルク調織編物、スパンシルク麻交調織編物等では表現できなかった高級感のある上品で控えめな光沢やドライタッチ、軽量感、膨らみ感、ナチュラルな紡績糸調の異繊度感、爽やかな清涼感、吸湿性と放湿性に富みムレ感の少ない快適な着用感等の、特長を表現した高級清涼織編物を生産性の高い効率的な方法で、安定した価格で安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の基本構成は、少なくとも長手方向に30cm以上230cm以下の未解撚部と過解撚部を有する仮撚加工糸を含み、公定水分率8%以下で熱可塑性を有するセルロース系フィラメント糸の混用率が50%以上からなる高級清涼織編物にある。
【0009】
好適には、本発明の高級清涼織編物は、少なくとも上記仮撚加工糸と前記セルロース系フィラメント糸とが合撚された合撚複合糸を含んでいる。また本発明の高級清涼織編物は、皺加工が施されていることが好ましい。また本発明の高級清涼織編物は、カレンダー加工が施されていることが望ましい。好ましくは、公定水分率8%以下で熱可塑性を有する上記セルロース系フィラメント糸が、セルロースアセテートフィラメント糸である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の高級清涼織編物によれば、麻織編物やスパンシルク織編物、スパンシルク麻交織編物等が有する高級清涼織編物の特長を表現しつつ、これらの高級清涼織編物がもつ形態安定性、皺の生じ易さ、発色性、染色堅牢度、イージーケアー性等に対する欠点を改善し、従来の麻調織編物やスパンシルク調織編物、スパンシルク麻交調織編物等では表現できなかった更なる高級感のある上品で控えめな光沢やドライタッチ、軽量感、膨らみ感、ナチュラルな紡績糸調の異繊度感、爽やかな清涼感、吸湿性と放湿性に富みムレ感の少ない快適な着用感等が表現される。こうした高級清涼織編物は、生産性の高い効率的な方法で、安定した価格で安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明における未解撚部と過解撚部を有する仮撚加工糸の未解撚部と過解撚部の長さは30cm以上230cm以下が必要であり、更に好ましくは40cm以上200cm以下である。本発明における仮撚加工糸は、仮撚加工の加撚方向がZ撚方向であれば未解撚部にはZ撚の実撚が施され、過解撚部にはS撚の実撚が施され、Z撚部とS撚部が交互に存在するものである。この実撚によってシャリ感やドライ感が得られ、Z撚部とS撚部が交互に存在することにより膨らみ感や紡績糸調の異繊度感や杢感が得られる。この未解撚部と過解撚部の長さが30cm未満ではシャリ感やハリコシが強過ぎ、高級感のある適度なシャリ感やドライ感、ドレープ性が得られず高級清涼織編物の表現ができない。また、未解撚部と過解撚部の長さが230cmを超えるとスパンシルク織編物や麻織編物の有する上品で自然な紡績糸調の異繊度感や杢感の表現が得られず、更に、適度なシャリ感やドライ感が得られず高級清涼織編物の表現ができない。
【0012】
また、このZ撚部とS撚部の境界には30cm未満の短い未解撚部と過解撚部や無撚部等が存在してもよい。更にまた、未解撚部や過解撚部に融着した部分が存在していてもよい。融着した部分が存在することによりシャリ感やドライ感が増し麻調の風合いが得られやすい。一方、融着した部分がない場合には、ソフトで光沢感に優れたスパンシルク調やシルクリネン調の商品が得られやすい。
【0013】
本発明における長手方向に30cm以上230cm以下の未解撚部と過解撚部を有する仮撚加工糸の製法や原糸の種類は特に限定するものではない。例えば、製法としては特許文献1に記載の方法が挙げられる。また、仮撚加工糸の原糸の種類としては、例えば、公定水分率8%以下で熱可塑性を有するセルロース系フィラメント糸と、ポリエステル系フィラメント糸との複合糸、ポリエステル系フィラメント糸単独、公定水分率8%以下で熱可塑性を有するセルロース系フィラメント糸単独などが挙げられ、目的とする織編物の風合いや意匠性により任意に選定すればよい。
【0014】
公定水分率8%以下で熱可塑性を有するセルロース系フィラメント糸とポリエステル系フィラメント糸との複合仮撚加工糸は、ポリエステル系フィラメント糸による強度向上効果、公定水分率8%以下で熱可塑性を有するセルロース系フィラメント糸とポリエステル系フィラメント糸との間の異収縮異繊度による膨らみ感付与効果が得られ、特にポリエステル系フィラメントとして弾性糸を用いるときは、更にストレッチ性付与効果が生じ、ポリエステル系フィラメント糸としてカチオン可染糸やシックアンドシン糸を用いるときは異染効果が得られる。
【0015】
また、ポリエステル系フィラメント糸を100%用いた仮撚加工糸に、公定水分率8%以下で熱可塑性を有するセルロース系フィラメント糸を混用すると、高級感のある風合いや外観が得られる。また、セルロース系フィラメント糸100%の仮撚加工糸は、よりソフトな風合いが表現できる。
【0016】
本発明における公定水分率8%以下で熱可塑性を有するセルロース系フィラメント糸とは、セルロースを原料として、再生或いは半合成された繊維のフィラメント糸であればよく、再生繊維としては、例えばビスコースレーヨン、リヨセル等が、半合成繊維としては、例えばセルロースジアセテート繊維、セルローストリアセテート繊維等が挙げられるが、その製法や種類は特に限定するものではない。また、単糸の断面形状、表面形状、艶、繊度等を特に限定するものではなく、得ようとする織編物表現を考慮して任意に選定すればよい。
【0017】
本発明においてセルロース系フィラメント糸の公定水分率が8%を超えると、水膨潤性による収縮が問題となり、洗濯収縮、形態安定性、湿潤堅牢度の問題や、保水性が高く速乾性に劣る等の問題が生じる。このため、ポリエステル系フィラメント糸の混率を高める必要があり、ポリエステル系フィラメント糸の欠点である金属光沢、発色性、ワキシイな硬い風合いが強調されてしまう。また、染色加工中での収縮が大きくポリエステル系フィラメント糸との収縮差による膨らみ表現も難しい等の理由から、本発明の所期の目的である高級清涼織編物は得られない。また、熱可塑性がないと、仮撚加工や皺加工、カレンダー加工で付与した形態が染色加工や洗濯で失われやすい問題がある。
【0018】
本発明における高級清涼織編物の、公定水分率が8%以下で熱可塑性を有するセルロース系フィラメント糸の混用率は50%以上が必要である。公定水分率が8%以下で熱可塑性を有するセルロース系フィラメント糸の混用率が50%未満では、高級感のある光沢や、爽やかで清涼感のあるソフトな風合い、適度な吸湿性による快適な着用感等が得られず本発明の目的とする高級清涼織編物は得られない。
本発明における織編物の組織や目付け、密度等は特に限定されるものではなく、得ようとする織編物表現を考慮して任意に選定すればよい。
【0019】
本発明における高級清涼織編物は、長手方向に30cm以上230cm以下の未解撚部と過解撚部を有する仮撚加工糸と、公定水分率8%以下で熱可塑性を有するセルロース系フィラメント糸とが合撚された合撚複合糸が好ましく用いられる。この合撚複合を施すことにより長手方向に30cm以上230cm以下の未解撚部と過解撚部を有する仮撚加工糸の杢調をより自然で上品な紡績糸調の繊度斑外観にすることができる。また、この合撚複合糸を経糸に用いた場合には、合撚による収束性向上効果によって経糸のローリングの発生が改善され製織性が向上する。合撚の撚数は特に限定しないが、撚係数(撚数回/m×√dTex)3000〜20000であることが好ましい。撚係数が大きくなるとシャリ感、ドライ感が増加するので、狙いとする商品に合わせて選択すればよい。
【0020】
更にまた、未解撚部と過解撚部を有する仮撚加工糸と、公定水分率8%以下で熱可塑性を有するセルロース系フィラメント糸とを前述のように合撚することによって、セルロース系フィラメント糸の有する吸湿性や清涼感、絹調光沢ソフトな癒される手触り等の効果が付与される。特に長手方向に30cm以上230cm以下の未解撚部と過解撚部を有する仮撚加工糸がポリエステル系フィラメント糸単独の場合は、これを公定水分率8%以下で熱可塑性を有するセルロース系フィラメント糸と合撚するこにより、ポリエステル系フィラメント糸の風合いや光沢、清涼感、快適性等の問題が大幅に改善され、目的とする高級清涼織編物が得やすくなる。
【0021】
本発明の高級清涼織編物は、皺加工を施すことにより皺形態と繊度斑形態とが調和したナチュラルな表面感を有する高級感のある紡績糸調外観が得られるため、皺加工が好ましく用いられる。セルロース系フィラメント糸は皺加工によりナチュラルな皺の形成が容易であり、本発明の織編物はセルロース系フィラメント糸を豊富に含有しているため、ナチュラルな皺形成が容易に得られる。また、本発明におけるセルロース系フィラメント糸が公定水分率8%以下で熱可塑性を有するため、その耐久性にも優れた織編物が得られる。皺加工の条件は特に限定するものではなく、加工方法、温度や時間、加工の順番等は目的とする商品に合わせて任意に選定すればよい。
【0022】
本発明の高級清涼織編物は、カレンダー加工を施すことにより高級感のある適度な光沢やハリコシ感が得られ好ましく用いられる。また、セルロース系フィラメント糸が公定水分率8%以下で熱可塑性を有するため、耐久性にも優れた織編物が得られる。カレンダー加工の条件は特に限定するものではなく、温度や圧力、加工の順番等は目的とする商品に合わせて任意に選定すればよい。
【0023】
本発明における公定水分率8%以下の熱可塑性を有するセルロース系フィラメント糸は、その製法や種類を特に限定するものではないが、アセテート繊維がその低屈折率からくる鮮明性、発色性、高級感のある光沢、適度なヤング率、分散染料可染性等を有しており好ましく用いられる。因みに、ジアセテートの公定水分率は6.5%、トリアセテートは3.5%であり、適度な吸湿性と速乾性を有し、沸水収縮率も約2〜3%と少ない。特に風合いや光沢の高級感の点からトリアセテートの使用が更に好ましい。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。また、風合いや外観、発色性等はハンドリングと目視によって評価した。
【0025】
〔実施例1〕
未解撚部と過解撚部を有する仮撚加工糸として、単糸菊型断面のセルローストリアセテートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、ブライト167dTex/24フィラメント(f)、公定水分率3.5%、以下セルローストリアセテートはトリアセテートと略記する。)と、ポリエステルフィラメント糸(三菱レイヨン社製、ブライト56dTex/36f A228、単糸三角断面)とからなる、未解撚部35〜100cm、過解撚部40〜100cm、242dTex、仮撚加撚方向Z、トリアセテート混率75%の仮撚加工糸を作成した。これを経糸と緯糸に用いて、平織組織の織物を製織した。得られた織物の生機を常法により分散染料にて若草色に染色して仕上加工し、仕上経密度が66本/2.54cm、仕上緯密度が57本/2.54cmの平織物を得た。
【0026】
得られた織物は、ソフトで膨らみ感があり、スパンシルク調の独特なドライタッチや軽量感、ハリコシ、ナチュラルな異繊度感等があり、また、高級感のある光沢を有するものであった。更に、吸湿性と放湿性に富み、ムレ感の少ない快適な着用感等を表現した、従来得られなかった好適な高級清涼織物であった。
【0027】
〔実施例2〕
未解撚部と過解撚部を有する仮撚加工糸として、単糸菊型断面のトリアセテートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、ブライト167dTex/24f、公定水分率3.5%)と、ポリエステルフィラメント糸(三菱レイヨン社製、セミダル78dTex/36f A724、単糸三角断面、シックアンドシンタイプ)とからなる、未解撚部60〜165cm、過解撚部65〜160cm、262dTex、仮撚加撚方向Z、トリアセテート混率68%の仮撚加工糸を作成した。この仮撚加工糸と、単糸菊型断面のトリアセテートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、ブライト135dTex/33f、公定水分率3.5%)とを合わせてZ方向に600回/mの撚糸をした合撚糸を作成し経糸に用いた。
【0028】
緯糸には単糸菊型断面のトリアセテートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、ブライト84dTex/20f、公定水分率3.5%)とポリエステルフィラメント糸(三菱レイヨン社製、セミダル56dTex/12f V210、単糸丸断面、サイドバイサイドコンジュゲートタイプ)からなる、未解撚部60〜160cm、過解撚部65〜160cm、150dTex、仮撚加撚方向Z、トリアセテート混率60%の仮撚加工糸を2本合わせてZ方向に1000回/mの撚糸をした合撚糸を作成して用い、上記経糸とで平織組織の織物を製織した。
【0029】
得られた織物の生機を常法により分散染料にてクリーム色に染色して仕上加工し、仕上経密度が50本/2.54cm、仕上緯密度が42本/2.54cmの平織物を得た。得られた織物はドライタッチで麻織物調の適度なシャリ感とソフトな膨らみ感があり、またナチュラルな異繊度感や、高級感のある控えめな光沢を有するものであった。更に吸湿性と放湿性に富み、ムレ感の少ない快適な着用感等を表現した、従来得られなかった好適な高級清涼織物であった。
【0030】
〔実施例3〕
実施例2で経糸に用いた未解撚部と過解撚部を有する仮撚加工糸を2本合わせてZ方向に450回/mの撚糸として合撚糸を作成し、これを経糸、緯糸に用い、平組織の織物を製織した。得られた織物の生機を常法により分散染料にてクリーム色に染色し仕上加工して、仕上経密度が38本/2.54cm、仕上緯密度が31本/2.54cmの平織物を得た。
得られた織物はドライタッチで麻織物調の適度なシャリ感とソフトな膨らみ感があり、またナチュラルな異繊度感や、高級感のある控えめな光沢を有するものであった。更に吸湿性と放湿性に富み、ムレ感の少ない快適な着用感等を表現した、従来得られなかった好適な高級清涼織物であった。
【0031】
〔実施例4〕
未解撚部と過解撚部を有する仮撚加工糸として、ポリエステルフィラメント糸(三菱レイヨン社製、ブライト56dTex/36f A228、単糸三角断面)からなる未解撚部90〜215cm、過解撚部90〜215cm、60dTex、仮撚加撚方向Z、トリアセテート混率0%の仮撚加工糸を作成した。この仮撚加工糸と単糸菊型断面のトリアセテートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、ブライト167dTex/24f、公定水分率3.5%)とを合わせてZ方向に500回/mで合撚して合撚糸を作成した。これを経糸と緯糸に用いて、平織組織の織物を製織した。得られた織物の生機を常法により皺加工を施し、分散染料にて茶色に染色し仕上加工して、仕上経密度が65本/2.54cm、仕上緯密度が59本/2.54cmの平織物を得た。
【0032】
得られた織物はドライタッチで麻織物調の適度なシャリ感とハリコシ感およびソフトな膨らみ感があり、また皺加工との相乗効果によるナチュラルな異繊度感や、高級感のある絹織物調光沢を有するものであった。更に吸湿性と放湿性に富み、ムレ感の少ない快適な着用感等を表現した、従来得られなかった好適な高級清涼織物であった。
【0033】
〔実施例5〕
実施例1で得られた生機を常法により分散染料にて茶色に染色した後、表面にカレンダー加工を施し、仕上経密度が65本/2.54cm、仕上緯密度が58本/2.54cmの平織物を得た。得られた織物は、スパンシルク調の独特なドライタッチや軽量感、ハリコシ、ナチュラルな異繊度感等があり、更に、カレンダー加工による、より高級感のある光沢を有した高級清涼織物であった。
【0034】
〔実施例6〕
実施例2で用いた単糸菊型断面のトリアセテートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、ブライト167dTex/24f、公定水分率3.5%)とポリエステルフィラメント糸(三菱レイヨン社製、セミダル78dTex/36f A724、単糸三角断面、シックアンドシンタイプ)とからなる、未解撚部60〜165cm、過解撚部70〜160cm、262dTex、仮撚加撚方向Z、トリアセテート混率68%の仮撚加工糸を用い、天竺組織の丸編を製編した。得られた編物を常法により分散染料にてクリーム色に染色し仕上げ加工をして、仕上げウェールが38本/2.54cm、仕上げコースが36本/2.54cmの天竺編物を得た。得られた編物は、ドライタッチで適度なシャリ感、ハリコシ感、ソフトな膨らみ感があり、またナチュラルな異繊度感に加え、高級感のある光沢を有するものであった。更に吸湿性と放湿性に富み、ムレ感の少ない快適な着用感等を有するものであり、従来には得られなかった好適な高級清涼編物であった。
【0035】
〔実施例7〕
未解撚部と過解撚部とを有する仮撚加工糸として、単糸菊型断面のトリアセテートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、ダル84dTex/20f、公定水分率3.5%)からなる、未解撚部90〜215cm、過解撚部95〜215cm、85dTex、仮撚加撚方向Z、トリアセテート混率100%の仮撚加工糸を作成した。これを表糸に用い、裏糸にポリエステルフィラメント糸(ユニチカファイバー社製、セミダル56dTex/12f Z10、サイドバイサイドコンジュゲートタイプ)を用い、リバーシブル天竺組織の丸編を製編した。得られた編物を常法により分散染料にてクリーム色に染色し仕上げ加工をして、仕上げウェールが49本/2.54cm、仕上げコースが51本/2.54cmのリバーシブル天竺編物を得た。得られた編物は、ドライタッチで適度なシャリ感、ハリコシ感、ソフトな膨らみ感があり、またナチュラルな異繊度感に加え、高級感のある光沢を有するものであった。更に吸湿性と放湿性に富み、ムレ感の少ない快適な着用感等を有するものであり、従来には得られなかった好適な高級清涼編物であった。
【0036】
〔比較例1〕
未解撚部と過解撚部を有する仮撚加工糸として、単糸菊型断面のトリアセテートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、ブライト167dTex/24f、公定水分率3.5%)とポリエステルフィラメント糸(三菱レイヨン社製、ブライト56dTex/36f A228、単糸三角断面)とからなる、未解撚部10〜20cm、過解撚部15〜25cm、240dTex、仮撚加撚方向Z、トリアセテート混率75%の仮撚加工糸を作成した。これを経糸と緯糸に用いて、平織組織の織物を製織した。得られた織物の生機を常法により分散染料にて若草色に染色し仕上加工して、仕上経密度が68本/2.54cm、仕上緯密度が58本/2.54cmの平織物を得た。得られた織物はシャリ感や、ハリコシが強すぎており、硬い風合いであった。
【0037】
〔比較例2〕
未解撚部と過解撚部を有する仮撚加工糸として単糸菊型断面のトリアセテートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、ブライト167dTex/24f、公定水分率3.5%)とポリエステルフィラメント糸(三菱レイヨン社製、ブライト56dTex/36f A228、単糸三角断面)とからなる、未解撚部240〜340cm、過解撚部245〜355cm、245dTex、仮撚加撚方向Z、トリアセテート混率75%の仮撚加工糸を作成した。これを経糸と緯糸に用いて、平織組織の織物を製織した。得られた織物の生機を常法により分散染料にて若草色に染色し仕上加工して、仕上経密度が68本/2.54cm、仕上緯密度が58本/2.54cmの平織物を得た。得られた織物は、未解撚、過解撚により表現される繊度斑パターンが長く紡績糸調の異繊度感とは言いがたいものであった。また、シャリ感や、ハリコシが不足した織物であった。
【0038】
〔比較例3〕
未解撚部と過解撚部を有する仮撚加工糸として、単糸菊型断面のトリアセテートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、ブライト135dTex/33f、公定水分率3.5%)とポリエステルフィラメント糸(三菱レイヨン社製、セミダル167dTex/96f A110、単糸三角断面)とからなる、未解撚部65〜160cm、過解撚部60〜160cm、310dTex、仮撚加撚方向Z、トリアセテート混率45%の仮撚加工糸を作成した。これを経糸と緯糸に用いて、平織組織の織物を製織した。得られた織物の生機を常法により分散染料にて若草色に染色し仕上加工して、仕上経密度が60本/2.54cm、仕上緯密度が51本/2.54cmの平織物を得た。得られた織物は、ワキシイな風合いであり、また光沢感も弱く高級清涼織物とは言いがたいものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも長手方向に30cm以上230cm以下の未解撚部と過解撚部を有する仮撚加工糸を含み、公定水分率8%以下で熱可塑性を有するセルロース系フィラメント糸の混用率が50%以上である高級清涼織編物。
【請求項2】
少なくとも前記仮撚加工糸と前記セルロース系フィラメント糸とが合撚された合撚複合糸を含んでなる請求項1記載の高級清涼織編物。
【請求項3】
皺加工が施されてなる請求項1又は2に記載の高級清涼織編物。
【請求項4】
カレンダー加工が施されてなる請求項1〜3のいずれかに記載の高級清涼織編物。
【請求項5】
前記セルロース系フィラメント糸が、セルロースアセテートフィラメント糸である請求項1〜4のいずれかに記載の高級清涼織編物。

【公開番号】特開2010−100952(P2010−100952A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271809(P2008−271809)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(301067416)三菱レイヨン・テキスタイル株式会社 (102)
【Fターム(参考)】