説明

高耐久性エマルジョン

【課題】樹脂組成物の塗膜の耐候性、耐汚染性、耐水性、耐クラック性に優れた水性シリコーン変性アクリレート重合体エマルジョンを提供する。
【解決手段】シリコーン変性剤〔A〕と、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕と、少なくとも1種の他のエチレン性不飽和単量体〔C〕とを乳化重合に付して得られるシリコーン含有高分子エマルジョンであって、シリコーン変性剤〔A〕がフェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシリコーン構造を有するシランからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐汚染性、柔軟性、耐水性、耐候性、耐久性、顔料分散性、光沢保持性、密着性、防錆性に優れた塗膜を形成し得る、貯蔵安定性に優れたシリコーン含有高分子エマルジョンに関する。具体的には、塗料、建材の下地処理材または仕上げ材、接着剤、紙加工剤、または織布、不織布の仕上げ材として有用であり、特に、コンクリート、セメントモルタル、スレート板、ケイカル板、石膏ボード、押し出し成形板、発泡性コンクリートなどの無機建材、織布あるいは不織布を基材とした建材、金属建材などの各種下地に対する塗料または建築仕上げ材として、複層仕上げ塗材用の主材およびトップコート、薄付け仕上塗材、厚付け仕上塗材、石材調仕上げ材、グロスペイントなどの合成樹脂エマルジョンペイントとして、金属用塗料、木部塗料、瓦用塗料として有用なシリコーン含有高分子エマルジョンに関する。
【背景技術】
【0002】
乳化重合により得られる水性エマルジョンは、常温あるいは加熱下で乾燥形成した皮膜が比較的良好な耐久性を示すことから、水性塗料用の樹脂として多く用いられているが、屋外で長期間曝露された場合には、その皮膜はほこり、煤煙、砂などの付着により汚染され、さらに耐候性すなわち光、熱、雨などにより艶の低下、変色、膨れ、ヒビわれなど変質の問題がある。そのため塗料が塗装された直後の美しい外観は、経時的な汚染により非常に汚れた皮膜となってしまう。また雨や結露によって白化あるいは脆弱化など、耐水性の低下により塗装直後の美観を維持できないという欠点も有していた。
【0003】
特許文献1では、シリコーンを複合化したエマルジョンが開示され、耐候性を改善する効果があるものの、その皮膜は柔軟性に劣り、フェニルトリメトキシシランを使用した例示においても長期の耐候性ではヒビわれなど変質の問題があった。
特許文献2では、シリコーンを複合化したエマルジョンにおいて、シリコーン部分に本発明の式(2)で表されるシラン、および本発明の環状シランまたは式(3)で表されるシランとを併用することが開示され、事実、耐候性は改善されかつその皮膜の柔軟性が改善された。しかし長期の耐候性ではヒビわれなど変質の問題があった。
【0004】
特許文献3では、シリコーンを複合化したエマルジョンにおいて、シリコーン部分に環状シラン、本発明の式(2)で表されるシラン、および本発明のシラン(1)であるジフェニルジメトキシシランを併用する方法が開示されている。本文献では、シリコーンの分散液の製造後にエチレン性不飽和単量体を乳化重合しているため、シリコーンとエチレン性不飽和単量体からなるポリマーの相溶状態が充分でなく、その皮膜の耐候性は充分なものではなかった。
特許文献4では、シリコーンを複合化したエマルジョンにおいて、シリコーン部分に本発明の式(2)で表されるシラン、および本発明シラン(1)であるジフェニルジメトキシシランを併用する方法が開示されているが、皮膜の強靱さに劣り、長期の耐候性ではヒビわれなど変質の問題があった。
【0005】
【特許文献1】特許3108152号公報
【特許文献2】特許3159234号公報
【特許文献3】特開2000−319579号公報
【特許文献4】特開2004−149668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、耐候性、耐クラック性に優れた塗膜を形成し得る高耐久性エマルジョンの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記のような 問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の第1は、シリコーン変性剤〔A〕と、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕と、少なくとも1種の他のエチレン性不飽和単量体〔C〕とからなるシリコーン含有高分子エマルジョンであって、シリコーン変性剤〔A〕が下記式(1):
1−Si−R4−(n+m)
| ・・・(1)

((n.m)は(1.0)又は(1.1)の組であり、式中n=1およびm=0のとき、R1はフェニル基またはシクロヘキシル基であり、各R はそれぞれ、独立して、炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、または水酸基であるか、または式中n=1およびm=1のときR1はフェニル基またはシクロヘキシル基であり、Rは水素原子、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜10のアクリル酸アルキル基、または炭素数1〜10のメタクリル酸アルキル基であり、各R はそれぞれ、独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、または水酸基である)で表されるシリコーン構造を有するシラン(1)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、下記式(2):
CH−Si−(R) ・・・(2)
(式中Rはそれぞれ、独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、または水酸基である)で表されるシリコーン構造を有するシラン(2)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、下記式(3):
(CH −Si−(R・・・(3)
(式中Rはそれぞれ、独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、または水酸基である)で表されるシリコーン構造を有するシラン(3)からなる群より選ばれる少なくとも一種及び/又は環状シランを含むことを特徴とするシリコーン含有高分子エマルジョンである。
【0008】
発明の第2は、シリコーン変性剤〔A〕と、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕と、少なくとも1種の他のエチレン性不飽和単量体〔C〕とを乳化重合に付して得られることを特徴とする発明の第1記載のシリコーン含有高分子エマルジョンである。
発明の第3は、カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕と他のエチレン性不飽和単量体〔C〕の合計重量に対して、該カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕及び他のエチレン性不飽和単量体〔C〕を、それぞれ90〜99.5重量%及び0.5〜10重量%用い、又、上記シリコーン変性剤〔A〕を下記の式
1/5≦{単量体〔B〕+単量体〔C〕}/単量体〔A〕≦99.5/0.5
で表される関係を満足する量を用いて得られることを特徴とする発明の第1または2記載のシリコーン含有高分子エマルジョンである。
【0009】
発明の第4は、上記シリコーン変性剤〔A〕が、上記式(2)で表されるシリコーン構造を有するシラン(2)からなる群から選ばれる少なくとも1種と、上記環状シラン及び式(3)で表されるシリコーン構造を有するシラン(3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の合計重量に対して、該式(2)で表されるシリコーン構造を有するシラン(2)からなる群から選ばれる少なくとも1種に対する、上記環状シラン及び式(3)で表されるシリコーン構造を有するシラン(3)からなる群から選ばれる少なくとも1種のモル
比が少なくとも1/100であり、又、上記式(1)で表されるシリコーン構造を有するシラン(1)からなる群より選ばれる少なくとも一種を下記の式
1/100≦シラン(1)/{シラン(2)+シラン(3)}≦10/1
で表される関係を満足するモル比で用いることを特徴とする発明の第1〜3のいずれかに記載のシリコーン含有高分子エマルジョンである。
【0010】
発明の第5は、該シリコーン変性剤〔A〕が、同じか異なった(A−1)と(A−2)よりなり、該カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕が、同じか異なった(B−1)と(B−2)よりなり、該他のエチレン性不飽和単量体〔C〕が、同じか異なった(C−1)と(C−2)よりなり、上記乳化重合をステップ(1)およびステップ(2)の順で行い、ステップ(1)においては、該シリコーン変性剤(A−1)と、少なくとも1種の該カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体(B−1)と、少なくとも1種の該他のエチレン性不飽和単量体(C−1)とを同時に乳化重合してシリコーンを含むシードエマルジョンを得、ステップ(2)おいては該シリコーン変性剤(A−2)と、少なくとも1種の該カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体(B−2)と、少なくとも1種の該他のエチレン性不飽和単量体(C−2)より乳化重合された重合体とからなることを特徴とする発明の第1〜4のいずれかに記載のシリコーン含有高分子エマルジョンである。
【0011】
発明の第6は、少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体〔B〕が、該他のエチレン性不飽和単量体〔B〕の重量に対して5重量%以上のアクリル酸、メタクリル酸の炭素数が5〜12のシクロアルキルエステルを含有することを特徴とする発明の第1〜5記載のシリコーン含有高分子エマルジョンである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエマルジョンは、シリコーン変性剤としてシラン(1)から選ばれる少なくとも1種を含むことにより、従来のシリコーン含有高分子エマルジョンに比して、耐候性、耐クラック性に優れた塗膜を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
シリコーン変性剤〔A〕
本発明においては、高耐候性能及び高耐久性能を付与するためにシリコーン変性剤〔A〕の使用が必須である。シリコーン変性剤〔A〕は、下記式(1):
1−Si−R4−(n+m)
| ・・・(1)

((n.m)は(1.0)又は(1.1)の組であり、式中n=1およびm=0のとき、R1はフェニル基またはシクロヘキシル基であり、各R はそれぞれ、独立して、炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、または水酸基であるか、または式中n=1およびm=1のときR1はフェニル基またはシクロヘキシル基であり、Rは水素原子、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜10のアクリル酸アルキル基、または炭素数1〜10のメタクリル酸アルキル基であり、各R はそれぞれ、独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、または水酸基である)で表されるシリコーン構造を有するシラン(1)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む。シラン(1)の好ましい具体例としては、フェニルトリメトシキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトシキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシランなどがあり、またこれらの二種以上を含んでいて
もよい。
【0014】
またシリコーン変性剤〔A〕は、上記式(1)のシリコーン構造を有するシラン(1)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、式(2):
CH−Si−(R) ・・・(2)
(式中Rはそれぞれ、独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、または水酸基である)で表されるシリコーン構造を有するシラン(2)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが、シリコーン構造の架橋密度を付与するために好ましい。シラン(2)の好ましい具体例としては、メチルトリメトシキシシラン、メチルトリエトキシシランなどがあり、またこれらの二種以上を含んでいてもよい。
【0015】
またシリコーン変性剤〔A〕は、上記式(1)のシリコーン構造を有するシラン(1)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、下記式(3):
(CH −Si−(R・・・(3)
(式中Rはそれぞれ、独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、または水酸基である)で表されるシリコーン構造を有するシラン(3)からなる群より選ばれる少なくとも一種〕及び/又は環状シランを含むことが好ましい。これは、上記シラン(3)及び/又は環状シランを用いることにより、該シリコーン変性剤〔A〕が形成するシリコーン重合体の架橋密度を低くし、重合体の構造が複雑になるのを防ぐことができ、これによって、高耐久性エマルジョンから提供される塗膜に可撓性を付与することができるためである。上記シラン(3)の好ましい具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等が挙げられる。また環状シランとしては、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンなども用いることができ、これらの二種以上を含んでいてもよい。
【0016】
シリコーン変性剤〔A〕は、上記したシラン(1)から選ばれる少なくとも1種の化合物に加え、上記シラン(2)及び/又は上記シラン(3)から選ばれる化合物に加え、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、などを含むことができる。
【0017】
本発明は、シリコーン変性剤〔A〕を用いることによって、高耐久性エマルジョンより得られるフィルムの屋外などの長期曝露における光沢保持性を改善し、始めて高度な耐候性を示すフィルムを得ることができる。上記したシラン縮合物の存在は、29SiNMR(29Si核磁気共鳴スペクトル)または1HNMR(プロトン核磁気共鳴スペクトル)によって知ることができる。例えば、シラン(2)の縮合物は、29SiNMRのケミカルシフトが−40〜−80PPMにピークを示すことで同定することができる。また、シラン(3)あるいは環状シランの縮合物は29SiNMRのケミカルシフトが−16〜−26PPMにピークを示すことで同定することができる。
【0018】
カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕
本発明における少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕には、(メタ)アクリル酸エステル(本願において、アクリル酸およびメタアクリル酸を合わせて(メタ)アクリル酸と標記する)に代表される(メタ)アクリレート単量体を含む必要がある。(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート、アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸ヒドロキシ
アルキルエステル、エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレートなどがある。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルなどが挙げられる。(ポリ)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコールなどが挙げられる。(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコールなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどが挙げられる。又、(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレートの具体例としては、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコールなどが挙げられる。また、上記以外の具体例としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。上記(メタ)アクリレート単量体は、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕の質量に対して好ましくは80〜100質量%、より好ましくは90質量%〜100質量%用いることが好ましい。
【0019】
さらに本発明において、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕として上記(メタ)アクリレート単量体と混合して使用できる単量体には、ラジカル重合性カルボン酸単量体から選ばれる、上記(メタ)アクリレート単量体と共重合可能な少なくとも1種のコモノマーが挙げられる。ラジカル重合性カルボン酸単量体の具体的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびそのモノエステル、フマル酸およびそのモノエステル、並びにマレイン酸およびそのモノエステル等が挙げられ、これらの群から選ばれる少なくとも1種を含むことが特に好ましい。これらラジカル重合性カルボン酸単量体は、シリコーン変性剤〔A〕の加水分解反応および縮合反応を促進させる触媒としても作用するからである。
【0020】
本発明においては、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕としてシクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート系単量体を含むことが、特に耐久性に優れるため好ましい。シクロアルキル基の水素原子の一部が炭素数1〜6のアルキル基、水酸基又はエポキシ基に置換されていても良い。少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕の5質量%以上、より好ましくは5質量%以上99質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上80質量%以下が、シクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート系単量体、或いはそれらの混合物であることが好ましい。シクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート系単量体、或いはそれらの混合物が少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕の5質量%以上で耐久性に優れ、80質量%以下で成膜性が良い。シクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート系単量体としては、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、炭素数5〜12のシクロアルキル基のエステルが好ましく、該シクロアルキルエステルは、シクロアルキル基の水素原子の一部が炭素数1〜6のアルキル基、水酸基又はエポキシ基に置換されていても良い。シクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート系単量体の例として下記式(4)で表される化合物が
挙げられる。
【0021】
【化1】

(式中、R1 は水素原子またはメチル基であり、R2はシクロペンチル基、シクロヘキシル基又はシクロドデシル基であり、これらシクロアルキル基は、炭素数1〜6のアルキル基、水酸基またはエポキシ基を置換基として有してもよい。)その具体例としては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3シクロヘキセンオキサイドなどを挙げることができる。
【0022】
他のエチレン性不飽和単量体〔C〕
本発明における他のエチレン性不飽和単量体〔C〕には、アクリルアミド単量体、メタクリルアミド単量体、ビニル単量体から選ばれる(メタ)アクリレート単量体と共重合可能な少なくとも1種のコモノマーが挙げられる。アクリルアミド単量体またはメタクリルアミド単量体としては、(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどがあり、ビニル系単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ビニルピロリドン、メチルビニルケトンなどがあり、 又、シアン化ビニル単量体の例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
さらにエチレン性不飽和単量体〔C〕として(メタ)アクリレート単量体と混合して使用できる単量体としては、ビニルトルエン、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族単量体、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル、ブタジエン、エチレンなども挙げられる。
【0023】
乳化剤〔D〕
本発明において、乳化重合に用いる乳化剤〔D〕には、スルホン酸基又はスルホネート基を有するエチレン性不飽和単量体、硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体のうち、少なくともいずれか一を含むことが、高度な耐水性を達成するために好ましい。ここにいうスルホン酸基又はスルホネート基を有するエチレン性不飽和単量体としては、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつフリーのスルホン酸基、又はそのアンモニウム塩かアルカリ金属塩である基(アンモニウムスルホネート基、又はアルカリ金属スルホネート基)を有する化合物であることが好ましい。たとえば、スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素2〜4のポリアルキルエーテル基、炭素数6または10のアリール基およびコハク酸基からなる群より選ばれる置換基を 有する化合物であるか、スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩である基に結合しているビニル基を有するビニルスルホネート化合物が好ましい。
【0024】
本発明におけるスルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩である基により一部が置換されたコハク酸化合物の具体例として、アリルスルホコハク酸塩、たとえば、下記式(5)、(6)、(7)、(8)で表される化合物が挙げられる。
【化2】

【化3】

【0025】
【化4】

【化5】

(式中、R1は水素またはメチル基、R2は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜19のアラルキル基等の炭化水素基、又はその一部が水酸基、カルボン酸基等で置換されたもの、もしくはポリオキシエチレンアルキルエーテル基(アルキル部分の炭素数が0〜20、およびアルキレ
ン部分の炭素が2〜4)、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル基(アルキル部分の炭素数が0〜20、およびアルキレン部分の炭素数が2〜4)等のアルキレンオキサイド 化合物を含む有機基であり、Aは炭素数2〜4個のアルキレン基または一部が置換されたアルキレン基であり、 nは0〜200の整数であり、Mはアンモニウム、ナトリウムまたはカリウムである。)
上記式(5)及び(6)を含むものとして、例えば、エレミノールJS−2、JS−5(製品名、三洋化成(株)製)があり、上記式(7)及び(8)を含むものとして、例えば、ラテムルS−120、S−180A、S−180(製品名、花王(株)製)がある。
【0026】
また、スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換された炭素数2〜4のアルキルエーテル基又は炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基を有する化合物の例として、下記式(9)〜(11)で表される化合物が挙げられる。
【化6】

(式中、R1 は炭素数6〜18のアルキル 基、アルケニル基またはアラルキル基であり、Rは炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基またはアラルキル基、R3は水素またはプロペニル基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、nは1〜200の整数、Mはアンモニウム、ナトリウム、カリウムもしくはアルカノールアミン残基である。)
【0027】
【化7】

(式中、R1は水素またはメチル基、Rは炭素数8〜24のアルキル基またはアルキルフェニル基、アシル基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、nは0〜50の整数、mは0〜20の整数、Mはアンモニウム、ナトリウム、カリウムもしくはアルカノールアミン残基である。)
【0028】
【化8】

(式中、R1は炭素数8〜30のアルキル基、Rは水素またはメチル基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、もしくは置換アルキレン基、nは0または、1〜200の整数であり、Mはアンモニウム、ナトリウム、カリウムもしくはアルカノールアミン残基である。)
【0029】
上記式(9)で表されるアルキルフェノールエーテル系化合物として、例えばアクアロンHS−10(製品名、 第一工業製薬(株)製)等があり、上記式(10)で表される化合物として、例えばアデカリアソープSE−1025A、SR−10N、SR−20N(製品名、旭電化工業(株)製)、上記式(11)で表される化合物として、例えばアクアロンKH−10,KH−05がある。
【0030】
その他、スルホネート基により一部が置換 されたアリール基を有する化合物の具体例として、p− スチレンスルホン酸アンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩が挙げられる。スルホネート基により一部 が置換されたアルキル基を有する化合物の具体例として、メチルプロパンスルホン酸アクリルアミドのアンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩、アクリル酸 スルホアルキルエステルのアンモニウム塩、ナトリウム 塩およびカリウム塩、メタアクリル酸スルホアルキルエステルのアンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩が挙げられる。また上記以外のスルホネート基を有する化合物の具体例として、スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩である基が結合しているビニル基を有するビニルスルホネート化合物が挙げられる。硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体とは、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつ硫酸エステル基又はそのアンモニウム塩かアルカリ金属塩である基を有する化合物をいう。これらのうち、硫酸エステル基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基および炭素数6または10のアリール基からなる群より選ばれる基を有する化合物が好ましい。硫酸エステル基のアンモニウム塩、ナトリ
ウム塩又はカリウム塩により一部が置換された、炭素数2〜4のアルキルエーテル基または炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基を有する化合物の例としては、例えば上記式(9)と(10)で表される、スルホネート基により一部が置換されたアルキルエーテル基を有する化合物がある。
【0031】
これらの乳化剤〔D〕として用いられるエチレン性不飽和単量体は、エマルジョン中に、エマルジョン粒子にラジカル重合した共重合物として存在するか、未反応物としてエマルジョン粒子へ吸着、あるいは エマルジョン水相中に存在するか、または、水溶性単量体との共重合物あるいは乳化剤として用いられるエチレン性不飽和単量体どうしの共重合物としてエマルジョン粒子へ吸着、あるいはエマルジョン水相中に存在している。とくにエマルジョン粒子にラジカル重合した共重合物の状態で存在する比率を高めることによって、エマルジョンより得られるフィルムの耐水性を高度なものとすることができる。
【0032】
乳化剤として用いられるエチレン性不飽和単量体は、エマルジョンより得られるフィルムの熱分解ガスクロマトグラム質量分析(Py−GC−MS)により、各物質を同定することができる。他の方法として、エマルジョンの水相成分を分離した後、高速原子衝撃質量分析(FABマススペクトル)によって同定することも可能である。
本発明において、乳化剤〔D〕は、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕及びエチレン性不飽和単量体〔C〕との合計質量に対して0.05質量%〜10質量%用いられ、好ましくは0.1質量%〜5質量%用いる。
【0033】
本発明では、スルホン酸基またはスルホネート基、あるいは硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体を含む乳化剤〔D〕以外に、通常の界面活性剤を併用することもできる。例えば、脂肪酸石鹸、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩などのアニオン型界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマーなどの非反応性ノニオン型界面活性剤、アデカリアソープNE−20、NE−30、NE− 40(製品名、旭電化工業(株)製)などのα−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン、またはアクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50(製品名、第一工業製薬(株)製)などのポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルなどの反応性ノニオン型界面活性剤といわれる、エチレン性不飽和単量体と共重合可能なノニオン型界面活性剤 などを併用することができる。
【0034】
上記の界面活性剤の使用量は、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕及びエチレン性不飽和単量体〔C〕との合計の質量に対して、アニオン型界面活性剤については好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.25質量%以下であり、非反応性ノニオン型界面活性剤および 反応性ノニオン型界面活性剤については、2.0質量%以下、好ましくは1.0質量%以下である。この範囲で使用すると、耐水性良好なフィルムが形成される。
【0035】
本発明のエマルジョンは、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕、エチレン性不飽和単量体〔C〕及び乳化剤〔D〕からなるプレ乳化液と、シリコーン変性剤〔A〕とを混合した後、水性媒体中において重合することにより高耐久性エマルジョンを得ることができる。
重合方法としては、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、ミニエマルション重合が挙げられるが、平均粒子径が10nm〜1μm程度の分散安定性の良好なエマルジョンを安定的に製造する方法としては、乳化重合が好ましい。
【0036】
本発明のエマルジョンは、例えば、乳化重合、すなわちラジカル重合性単量体のラジカル重合による乳化重合と、シリコーン変性剤〔A〕化合物の加水分解・縮合反応による乳化重合を同時に水性媒体中で行うことにより得られる。ここにいう水性媒体としては、反応系へ導入されるものであって、主に水が用いられるが、炭素数1〜3の低級アルコールまたはアセトンなどの水に可溶な溶媒を水に添加したものも含む。この際添加する水以外の溶媒の量はエマルジョン中に20質量%以下であることが好ましい。ここでは乳化液へ使用する水性媒体は、水に可溶な溶媒量は好ましくは水性媒体の5質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下であり、さらに好ましくは水だけである。この量を超えると、プレ乳化液の乳化状態が破壊され、重合安定が不良となってしまう。
【0037】
本発明において、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕、エチレン性不飽和単量体〔C〕及び乳化剤〔D〕からなるプレ乳化液のpHは限定されるものでないがpH4.0以下で重合を実施することにより、シリコーン変性剤〔A〕
の縮合反応が速やかに起こり、乳化重合後に縮合反応が進むことを抑制できるため、製品としての貯蔵安定性が良く、反応系のpHが4.0以下であることが好ましく、より好ましくはpH1.5以上3.0以下で実施される。
本発明において、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕、エチレン性不飽和単量体〔C〕及び乳化剤〔D〕とからなるプレ乳化液は、酸触媒、ラジカル重合性カルボン酸単量体、ラジカル開始剤用の過硫酸塩等の酸性成分を含まずに中性付近の乳化液とし、酸触媒、ラジカル重合性カルボン酸単量体、ラジカル開始剤用の過硫酸塩等の酸性成分はあらかじめ反応系へ導入しておくか、乳化液導入系とは別の位置から反応系へ逐次導入することも可能である。
【0038】
本発明において、紫外線吸収剤および/または光安定剤をエマルジョン中に含有させることは、高耐候性を付与する上で好ましく、エマルジョンに含有させる方法としては、紫外線吸収剤及び/または光安定剤を乳化重合時に存在させることが好ましい。紫外線吸収剤および/または光安定剤を成膜助剤などと混合して後添加した場合、分散性に劣り、得られた塗膜の粒子界面に集中して存在するため、降雨などにより溶出し、長期の耐久性の向上が認められない。紫外線吸収剤および/または光安定剤は、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕及びエチレン性不飽和単量体〔C〕との合計質量に対して0.1質量%〜5質量%用いることが好ましい。又、紫外線吸収剤として、分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性のもの、光安定剤として、分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性のものを用いることもできる。また、紫外線吸収剤と光安定剤を併用すると、その高耐久性エマルジョンを用いて皮膜を形成した際に、皮膜が特に耐候性に優れるため好ましい。
【0039】
本発明における紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系から選ばれる少なくとも1種、光安定剤として、ヒンダードアミン系から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。耐久性の優れたシリコーン変性高耐久性エマルジョンと紫外線吸収能が高い、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤と組み合わせることで、相乗効果により卓越した耐久性を示す。ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤としては、具体的には、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベン ゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’ジメトキシベンゾフェノン、2,2’, 4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ステアリルオキシベンゾフェノンなどがある。ラジカル重合性ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤として具体的には、2−ヒドロキシ−4−アクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−アクリロ キシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−メタクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(アクリロキシ−エトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4 −(メタクリロキシ−エトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロキシ−ジエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(アクリロキシ−ト リエトキシ)ベンゾフェノンなどがある。本発明において使用できるベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤として具体的には、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール
、2−〔2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)フェニル〕ベンゾトリアゾール)、メチル−3−〔3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネートとポリエチレングリコール(分子量300)との縮合物(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN1130)、イソオクチル−3−〔3−(2H−ベンゾトリ アゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネート(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN384)、2−(3−ドデシル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベ ンゾトリアゾール(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN571)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’− テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス〔4 −(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN 900)などがある。ラジカル重合性ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤として具体的には、2−(2’−ヒドロキシ
−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学(株)製、製品名:RUVA−93)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロ キシエチル−3−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリリルオキシプロピル−3−tert−ブチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、3−メタクリロイル−2−ヒドロキシプロピル−3−〔3’−(2’’−ベンゾトリアゾリル)−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチル〕フェニルプロピオネート(日本チバガイギー(株)製、製品名:CGL−104)などがある。
【0040】
本発明において使用できるトリアジン系紫外線吸収剤として具体的には、TINUVIN400(製品名、日本チバガイギー(株)製)などがある。本発明において使用できるヒンダードアミン系光安定剤としては、塩基性が低いものが好ましく、具体的には塩基定数(pKb)が8以上のものが好ましい。具体的には、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)サクシネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−(3,5−ジ −tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、1−〔2−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕エチル〕−4−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとメチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−セバケートの混合物(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN292)、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、TINUVIN123(製品名、日本チバガイギー(株)製)などがある。ラジカル重合性ヒンダードアミン系光安定剤として具体的には、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルアクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−イミノピペリジルメタクリレート、2,2,6,6,−テトラメチル−4−イミノピペリジルメタクリレート、4−シアノ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、4−シアノ−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレートなどがある。
【0041】
本発明における乳化重合は、ラジカル重合触媒として、熱または還元性物質などによってラジカル分解してエチレン性不飽和単量体の付加重合を起こさせることができ、水溶性または油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物などを有利に使用することができる。その例としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、2,2 −アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)など挙げることができるが、シリコーン変性剤〔A〕の加水分解反応および縮合反応を促進させるための触媒としても効果のある過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモ ニウムを用いることが好ましい。ラジカル重合触媒の量としては、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕及びエチレン性不飽和単量体〔C〕との合計質量に対して通常0.05質量%〜1質量%を用いることができる。
【0042】
通常、重合反応は常圧下、65〜90℃の重合温度で行うことが好ましいが、モノマーの重合温度における蒸気圧などの特性に合わせ、高圧下でも実施することができる。重合時間としては、導入時間と、導入後の熟成(cooking)時間がある。導入時間は、各種原料を反応系へ同時に導入する場合は通常数分であり、各種原料を反応系へ逐次導入する場合は重合による発熱が除熱可能な範囲で反応系へ逐次導入するため、最終的に得られるエマルジョン中の重合体濃度によっても異なるが、通常10分以上である。導入後の熟成(cooking)時間としては、少なくとも10分以上であることが好ましい。この重合時間以下では、各原料がそのまま残留したり、シリコーン変性剤〔A〕が縮合せずに加水分解物のまま残留してしまう恐れがある。なお、重合速度の促進、および70℃以下での低温での重合が望まれるときには、例えば重亜硫酸 ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸塩、ロンガリットなどの還元剤をラジカル重合触媒と組み合わせて用いると有利である。さらに、分子量を調整するために、ドデシルメルカプタンなどの連鎖移動剤を任意に添加することも可能である。
【0043】
本発明におけるシリコーン変性では、乳化重合終了後、成膜時の硬化触媒として、例えばジブチルすずジラウレート、ジオクチルすずジラウレート、ジブチルすずジアセテート、オクチル酸すず、ラウリン酸すず、オクチル酸鉄、オクチル酸鉛、テトラブチルチタネートなどの有機酸の金属塩、n−ヘキシルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセンなどのアミン化合物を、本発明の高耐久性エマルジョンへ添加することができる。
なおこれらの硬化用触媒が水溶性でない場合には、その使用に際して、界面活性剤と水を用いてエマルジョン化しておくことが好ましい。本発明の高耐久性エマルジョンは、エマルジョンの長期の分散安定性を保つため、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ジメチルアミノエタノールなどのアミン類を用いてpH5〜10の範囲に調整することが好ましい。
【0044】
本発明によって製造される高耐久性エマルジョンは、乳化重合終了後、未反応単量体の揮発性物質、水、アルコール等を蒸発除去するためにpH9〜12であり、濃縮工程終了後にpHが7以上である濃縮行程を行うことが好ましい。
本発明によって製造される高耐久性エマルジョンは、分散質の平均粒子径として、10〜1000nmであることが好ましい。得られたエマルジョン中の分散質(固形分)と分散媒としての水性媒体との質量比は70/30以下、好ましくは30/70以上65/35以下である。
【0045】
本発明の高耐久性エマルジョンは、塗料、建材の下地処理材または仕上げ材、接着剤、紙加工剤、または織布、不織布の仕上げ材として有用であり、 とくに塗料用、建材の仕上げ材として具体的には、コンクリート、セメントモルタル、スレート板、ケイカル板、
石膏ボード、押し出し成形板、発砲性コンクリートなどの無機建材、織布あるいは不織布を基材とした建材、金属建材などの各種下地に対する塗料または建築仕上げ材として、複層仕上げ塗材用の主材およびトップコート、薄付け仕上塗材、厚付け仕上塗材、石材調仕上げ材、グロスペイントなどの合成樹脂エマルジョンペイント、金属用塗料、木部塗料、瓦用塗料として有用である。
本発明の高耐久性エマルジョンには、通常水系塗料などに添加配合される成分、例えば成膜助剤、 増粘剤、消泡剤、顔料、分散剤、染料、防腐剤などを任意に配合することができる。
【0046】
本発明の高耐久性エマルジョンを提供するための好ましい1つの態様は、シリコーン変性剤〔A〕が互いに同じか異なった〔A1〕および〔A2〕よりなり、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕が(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含みかつ互いに同じか異なった〔B1〕および〔B2〕よりなり、また他のエチレン性不飽和単量体〔C〕が互いに同じか異なった〔C1〕および〔C2〕よりなり、乳化剤〔D〕が、スルホン酸基またはスルホネート基を有するエチレン性不飽和単量体、硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体およびそれらの混合物よりなる群から選ばれかつ互いに同じか異なった乳化剤〔D1〕および〔D2〕よりなり、上記乳化重合を ステップ〔1〕、ステップ〔2〕の順で行い、ステップ〔1〕においては少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B1〕と他のエチレン性不飽和単量体〔C1〕と乳化剤〔D1〕と、必要に応じて水性媒体とからなる乳化液とシリコーン変性剤〔A1〕とを混合しながら、水性媒体中において乳化重合に付すことにより、ステップ〔1〕エマルジョンを得、ステップ〔2〕においては、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B2〕と他のエチレン性不飽和単量体〔C2〕および乳化剤〔D2〕と、および必要に応じて水性媒体とからなる乳化液と、シリコーン変性剤〔A2〕とを混合しながら、ステップ〔1〕エマルジョンに添加することによって、乳化重合を行い最終的な所望エマルジョンを得、また紫外線吸収剤および/または光安定剤を乳化重合中に存在させることも可能である。上記ステップ〔1〕において、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B1〕は、ラジカル重合性カルボン酸単量体を2.5質量%以上〜20質量%以下含み、上記ステップ〔2〕において、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B2〕は、ラジカル重合性カルボン酸単量体を含まないか又は含んでも2.5質量%未満であることが好ましい。
【0047】
また、本発明の高耐久性エマルジョンを提供するための好ましいもう1つの態様によれば、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕が(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含みかつ互いに同じか異なった〔B1〕、〔B2〕および〔B3〕よりなり、また他のエチレン性不飽和単量体〔C〕が互いに同じか異なった〔C1〕、〔C2〕および〔C3〕よりなり、乳化剤〔D〕が、スルホン酸基またはスルホネート基を有するエチレン性不飽和単量体、硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体およびそれらの混合物よりなる群から選ばれかつ互いに同じか異なった乳化剤〔D1〕、〔D2〕および〔D3〕よりなり、上記乳化重合をステップ〔1〕、ステップ〔2〕、ステップ〔3〕の順で行い、ステップ〔1〕においては少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B1〕と他のエチレン性不飽和単量体〔C1〕と乳化剤〔D1〕と、必要に応じて水性媒体とからなるプレ乳化液を、水性媒体中において乳化重合に付すことにより、ステップ〔1〕エマルジョンを得、ステップ〔2〕においては、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B2〕と他のエチレン性不飽和単量体〔C2〕と、乳化剤〔D2〕とおよび必要に応じて水性媒体とからなるプレ乳化液を水性媒体中においてステップ〔1〕エマルジョンに添加することによって、乳化重合を行いステップ〔2〕エマルジョンを得、ステップ〔3〕においては、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B3〕と他のエチレン性不飽和単量体〔C3〕および乳化剤〔D3〕を、必要に応じて水性媒体とからなる乳化液を、ステップ
〔2〕エマルジョンに添加することによって、乳化重合を行い最終的な所望エマルジョンを得、および必要に応じて乳化液とシリコーン変性剤〔A〕とを混合しながら乳化重合中にシリコーン変性し、また紫外線吸収剤および/または光安定剤を乳化重合中に存在させてなる高耐久性エマルジョンが提供される。上記ステップ〔1〕、ステップ〔2〕および/またはステップ〔3〕における乳化液とシリコーン変性剤〔A〕とを混合しながら、乳化重合中にシリコーン変性を行うことができる。また、上記ステップ〔1〕において、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B1〕は、ラジカル重合性カルボン酸単量体を含まないか又は含んでも2.5質量%未満であり、上記ステップ〔2〕において、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B2〕は、ラジカル重合性カルボン酸単量体を2.5質量%以上〜2 0質量%以下含み、上記ステップ〔3〕において、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B3〕は、ラジカル重合性カルボン酸単量体を含まないか又は含んでも2.5 質量%未満であることが好ましい。
【0048】
本発明における高耐久性エマルジョンを提供するための好ましい態様は、シリコーン変性剤〔A〕と少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕、他のエチレン性不飽和単量体〔C〕からなる原料を混合させ反応の場に供給することにより、縮合及び重合を同時に進行させることにあり、得られるエマルジョンがシリコーン変性剤〔A〕と少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕、他のエチレン性不飽和単量体〔C〕が均一状態にあり、組成の偏在の無い状態を形成することが肝要である。特に好ましい態様は、シリコーン変性剤〔A〕の式(1)におけるR1がフェニル基又はシクロヘキシル基からなるシラン(1)を導入することにより、シリコーン変性剤〔A〕と少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕、他のエチレン性不飽和単量体〔C〕の相溶化が進行し、より均一化されたポリマーからなるエマルジョン粒子を得ることが可能となり、さらに均一化されたエマルジョン粒子から形成される塗膜組成も均一化される結果、強靭な塗膜を形成することができる。
【実施例】
【0049】
実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものでない。尚、実施例及び比較例中の部及び%はそれぞれ質量部、及び質量%を表す。重合安定性の評価及び得られた水性シリコーン変性アクリレート重合体エマルジョンの物性試験については、該エマルジョンを用いて下記に示す評価及び試験方法に従って実施した。
【0050】
<重合安定性の評価>
乳化重合後に得られた水性シリコーン変性アクリレート重合体エマルジョンを100メッシュの濾布で凝固物を濾過し、その残渣質量を水性シリコーン変性アクリレート重合体エマルジョンの固形分質量で割り、残渣率とした。
(判断基準) ○ :残渣率が100ppm未満
△ :残渣率が100ppm以上
× :多量の凝集物が発生
【0051】
<ろ過性の評価>
乳化重合後に得られた水性シリコーン変性アクリレート重合体エマルジョンを100メッシュの濾布で凝固物を濾過し、終了するまでに要する時間で評価した。
(判断基準) ○ :濾過時間が30秒未満
△ :濾過時間が30秒以上60秒未満
× :濾過時間が60秒以上
【0052】
<粒子径の測定>
得られた水性シリコーン変性アクリレート重合体エマルジョンの平均粒子径を、リーズ&ノースラップ社製のマイクロトラック粒度分布計にて測定した。
<引張り特性の評価>
乳化重合後に得られた水性シリコーン変性アクリレート重合体エマルジョンを用いて下記に示す配合組成でクリア塗料を調整し、0.25ミルのアプリケーターで塗工後、幅1cmの塗膜サンプルを切り出し、50℃で1週間養生して作製した後、下記に示した条件にて引張り試験を行い、その破断点伸度及び応力を測定した。
クリア塗料配合物の調整
各実施例のエマルジョン(固形分換算) 460部
エチレングリコールモノブチルエーテル 45部
エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル 90部
引張り試験
試験機:テンシロン/UTM−III−500
(東洋ボールドウィン(株)製)
引張り速度:50mm/min
試験温度 :20℃
【0053】
<耐候性の評価>
乳化重合後に得られた水性シリコーン変性アクリレート重合体エマルジョンを用いて下記に示す配合組成でエナメル塗料を調整し、バーコーターにてアルミ板上に塗工し、50℃で1週間養生して塗膜を作製し、この塗膜についてアイスーパーUVテスター(岩崎電気(株)製)により下記に示す試験条件にて1500時間照射試験を実施し、塗膜の外観(クラック、はがれなど)を目視にて観察した。また同時に光沢保持率の評価も行った。
(判断基準) ○ :外観に変化無し
× :クラック、はがれあり
エナメル塗料配合物の調整
各実施例のエマルジョン(固形分40%換算) 250部
エチレングリコールモノブチルエーテル 20部
エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル 40部
酸化チタン 130部
増粘剤 0.1部
アイスーパーUVテスター試験条件
照度:1000W/m2
照射:63℃、50%RH、8時間
暗黒・湿潤:30℃、96%RH以上、4時間
【0054】
[実施例1]
撹拌機、還流冷却器、滴下槽 および温度計を取りつけた反応容器に、水320部、エチレン性不飽和単量体と共重合可能な二重結合を分子中に持つスルホコハク酸ジエステルアンモニウム塩(製品名:ラムテルS−180A、花王(株)製)の20%水溶液10部を入れ、温度を80℃に上げてから、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を10部添加した5分後に、ステップ(1)として、メタクリル酸メチル87部、メタクリル酸シクロヘキシル50部及びアクリル酸ブチル110部、メタクリル酸3部とラテムルS−180Aの20%水溶液30部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液15部、水290部の混合液を作製し、該混合液をホモミキサーにより乳化し、プレ乳化液を得た。得られたプレ乳化液をγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン3.3部、メチルトリメトキシシラン136部、ジメチルジメトキシシラン136部、フェニルトリメトキシシラン26部からなるシリコーン変性剤〔A〕の混合液とY字管〔Y字管の出口には100メッシュの金網を詰め2つ滴下槽の液が混じり合うところまで、モレキュラシーブス3A(製品名:和光純薬(株)製)を充填し、プレ乳化液とシリコーン変性剤〔A〕との緩やかな混合ができる
ように調整した。〕を介して反応容器中へ滴下槽より1時間かけて流入させた。流入中は反応容器中の温度を80℃に保った。流入が終了してから反応容器中の温度を80℃にして30分保った。
【0055】
次にステップ(2)として、水80部、メタクリル酸メチル65部、メタクリル酸シクロヘキシル20部及びアクリル酸ブチル15部、メタクリル酸5部、ラテムルS−180Aの20%水溶液6部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液5部の混合液をホモミキサーにより乳化し、得られたプレ乳化液を反応容器中へ滴下槽より1時間かけて流入させた。流入中は反応容器中の温度を80℃に保った。流入が終了してから反応容器中の温度を80℃にして30分保った。
【0056】
次にステップ(3)として、メタクリル酸メチル63部、メタクリル酸シクロヘキシル30部及びアクリル酸ブチル50部、メタクリル酸2部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(製品名TINUVIN384、日本チバガイギー(株)製)5部、ヒンダードアミン系光安定剤(製品名TINUVIN123、日本チバガイギー(株)製)2.5部を溶解させ、次にラテムルS−180Aの20%水溶液10部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液8部、水230部の混合液混合液を作製し、該混合液をホモミキサーにより乳化し、得られたプレ乳化液をγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.7部、メチルトリメトキシシラン68部、ジメチルジメトキシシラン68部、フェニルトリメトキシシラン13部からなるシリコーン変性剤〔A〕の混合液とY字管内の金属メッシュで混合しながら反応容器中へ滴下槽より1時間かけて流入させた。流入中は反応容器中の温度を80℃に保った。流入が終了してから反応容器中の温度を80℃にして120分保った。
【0057】
室温まで冷却した後、水素イオン濃度を測定したところpH2.7であった。上記の混合液に25%アンモニア水溶液を添加してpH10に調整してから100メッシュの金網でろ過した。ろ過された凝集物の乾燥質量は得られた固形分質量に対して20ppm以下と非常にわずかで、また反応容器内壁及び攪拌羽根への付着物もわずかであった。得られたエマルジョンの固形分は40.2%、平均粒子径123nmであった。
続いて、内容量2リットルのSUS製セパラブルフラスコに、上述の乳化重合で得られたシリコーン変性アクリル系エマルジョン1kgをこのフラスコに仕込んだ。フラスコをウォーターバスに浸してラテックスを80℃まで加熱した。適量の消泡剤を添加した後、フラスコ内を40kPaまで減圧にして、固形分が45質量%に上がるまで濃縮を行った。
室温まで冷却後、水素イオン濃度を測定したところpH7.2であった。
その後、25質量%アンモニア水溶液を添加してpHを8.5に調整してから100メッシュの金網で濾過した。濾過された凝集物の乾燥重量は、全単量体に対して60ppmと非常にわずかであった。
【0058】
[実施例2]
ステップ(1)に使用するシリコーン変性剤〔A〕をγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン3.3部、メチルトリメトキシシラン136部、ジメチルジメトキシシラン136部、フェニルトリエトキシシラン31部、及びステップ(3)に使用するシリコーン変性剤〔A〕をγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.7部、メチルトリメトキシシラン68部、ジメチルジメトキシシラン68部、フェニルトリメトキシシラン16部とした以外は、実施例1と同一の処理を行った。ろ過された凝集物の乾燥質量は得られた固形分質量に対して40ppm以下と非常にわずかで、また反応容器内壁及び攪拌羽根への付着物もわずかであった。得られたエマルジョンの固形分は42.3%、平均粒子径146nmであった。その後、実施例1と同一の濃縮処理を行った。
【0059】
[実施例3]
ステップ(1)に使用するシリコーン変性剤〔A〕をγ−メタクリロキシプロピルトリ
メトキシシラン3.3部、メチルトリメトキシシラン169部、ジメチルジメトキシシラン108部、ジフェニルジメトキシシラン21部、及びステップ(3)に使用するシリコーン変性剤〔A〕をγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.7部、メチルトリメトキシシラン85部、ジメチルジメトキシシラン54部、ジフェニルジメトキシシラン10部とした以外は、実施例1と同一の処理を行った。ろ過された凝集物の乾燥質量は得られた固形分質量に対して20ppm以下と非常にわずかで、また反応容器内壁及び攪拌羽根への付着物もわずかであった。得られたエマルジョンの固形分は40.5%、平均粒子径118nmであった。その後、実施例1と同一の濃縮処理を行った。
【0060】
[実施例4]
ステップ(1)に使用するシリコーン変性剤〔A〕をγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン3.3部、メチルトリメトキシシラン169部、ジメチルジメトキシシラン108部、ジフェニルジエトキシシラン23部、及びステップ(3)に使用するシリコーン変性剤〔A〕をγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.7部、メチルトリメトキシシラン85部、ジメチルジメトキシシラン54部、ジフェニルジエトキシシラン12部とした以外は、実施例1と同一の処理を行った。ろ過された凝集物の乾燥質量は得られた固形分質量に対して50ppm以下と非常にわずかで、また反応容器内壁及び攪拌羽根への付着物もわずかであった。得られたエマルジョンの固形分は42.7%、平均粒子径133nmであった。その後、実施例1と同一の濃縮処理を行った。
【0061】
[実施例5]
ステップ(1)に使用するシリコーン変性剤〔A〕をγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン3.3部、メチルトリメトキシシラン136部、ジメチルジメトキシシラン136部、シクロヘキシルトリメトキシシラン25部、及びステップ(3)に使用するシリコーン変性剤〔A〕をγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.7部、メチルトリメトキシシラン68部、ジメチルジメトキシシラン68部、シクロヘキシルトリメトキシシラン13部とした以外は、実施例1と同一の処理を行った。ろ過された凝集物の乾燥質量は得られた固形分質量に対して50ppm以下と非常にわずかで、また反応容器内壁及び攪拌羽根への付着物もわずかであった。得られたエマルジョンの固形分は44.8%、平均粒子径156nmであった。その後、実施例1と同一の濃縮処理を行った。
【0062】
[実施例6]
撹拌機、還流冷却器、滴下槽 および温度計を取りつけた反応容器に、水320部、エチレン性不飽和単量体と共重合可能な二重結合を分子中に持つスルホコハク酸ジエステルアンモニウム塩(製品名:ラムテルS−180A、花王(株)製)の20%水溶液10部を入れ、温度を50℃に上げた。ステップ(1)として、メタクリル酸メチル34部、メタクリル酸シクロヘキシル30部及びアクリル酸ブチル83部、メタクリル酸3部とラテムルS−180Aの20%水溶液30部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液15部、水320部の混合液を作製し、該混合液をホモミキサーにより乳化し、プレ乳化液を得た。得られたプレ乳化液反応容器に入れ、温度を60℃に上げた。次にシリコーン変性剤〔A〕として、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン3.3部、メチルトリメトキシシラン122部、ジメチルジメトキシシラン122部、フェニルトリメトキシシラン23部の混合液を反応容器中へ滴下槽より約1分かけて流入させた。流入が終了してから反応容器中の温度を80℃にして、過硫酸アンモニウムの2%水溶液10部を添加し、60分保った。
【0063】
次にステップ(2)として、メタクリル酸メチル181部、メタクリル酸シクロヘキシル70部及びアクリル酸ブチル92部、メタクリル酸7部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(製品名TINUVIN384、日本チバガイギー(株)製)5部、ヒンダードアミン系光安定剤(製品名TINUVIN123、日本チバガイギー(株)製)2.5部を
溶解させ、次にラテムルS−180Aの20%水溶液10部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液8部、水350部の混合液混合液を作製し、該混合液をホモミキサーにより乳化し、得られたプレ乳化液をγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.7部、メチルトリメトキシシラン81部、ジメチルジメトキシシラン81部、フェニルトリメトキシシラン15部からなるシリコーン変性剤〔A〕の混合液とY字管内の金属メッシュで混合しながら反応容器中へ滴下槽より90分かけて流入させた。流入中は反応容器中の温度を80℃に保った。流入が終了してから反応容器中の温度を80℃にして90分保った。
【0064】
室温まで冷却した後、水素イオン濃度を測定したところpH2.6であった。
上記の混合液に25%アンモニア水溶液を 添加してpH8に調整してから100メッシュの金網で ろ過した。ろ過された凝集物の乾燥質量は得られた固形分質量に対して20ppm以下と非常にわずかで、また反応容器内壁及び攪拌羽根への付着物もわずかであった。得られたエマルジョンの固形分は40.0%、平均粒子径103nmであった。その後、実施例1と同一の濃縮処理を行った。
【0065】
[実施例7]
ステップ(1)に使用するシリコーン変性剤〔A〕をγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン3.3部、メチルトリメトキシシラン153部、ジメチルジメトキシシラン98部、ジフェニルジメトキシシラン21部、及びステップ(2)に使用するシリコーン変性剤〔A〕をγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.7部、メチルトリメトキシシラン102部、ジメチルジメトキシシラン65部、ジフェニルジメトキシシラン13部とした以外は、実施例6と同一の処理を行った。ろ過された凝集物の乾燥質量は得られた固形分質量に対して20ppm以下と非常にわずかで、また反応容器内壁及び攪拌羽根への付着物もわずかであった。得られたエマルジョンの固形分は39.9%、平均粒子径99nmであった。その後、実施例1と同一の濃縮処理を行った。
【0066】
[比較例1]
ステップ(1)に使用するシリコーン変性剤〔A〕をγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン3.3部、メチルトリメトキシシラン169部、ジメチルジメトキシシラン135部、及びステップ(3)に使用するシリコーン変性剤〔A〕をγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.7部、メチルトリメトキシシラン85部、ジメチルジメトキシシラン68部とした以外は、実施例1と同一の処理を行った。ろ過された凝集物の乾燥質量は得られた固形分質量に対して20ppm以下と非常にわずかで、また反応容器内壁及び攪拌羽根への付着物もわずかであった。得られたエマルジョンの固形分は41.6%、平均粒子径125nmであった。その後、実施例1と同一の濃縮処理を行った。
【0067】
[比較例2]
ステップ(1)に使用するシリコーン変性剤〔A〕をγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.7部、メチルトリメトキシシラン203部、ジメチルジメトキシシラン108部、及びステップ(3)に使用するシリコーン変性剤〔A〕をγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.7部、メチルトリメトキシシラン102部、ジメチルジメトキシシラン54部とした以外は、実施例1と同一の処理を行った。ろ過された凝集物の乾燥質量は得られた固形分質量に対して20ppm以下と非常にわずかで、また反応容器内壁及び攪拌羽根への付着物もわずかであった。得られたエマルジョンの固形分は41.5%、平均粒子径121mであった。その後、実施例1と同一の濃縮処理を行った。
【0068】
これらのエマルジョンの性状と評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、比較例1及び2ではアイスーパーUVテスターによる耐候性促進試験においてクラックが発生したのに対し、実施例1〜7では、クラックを発生せず、光沢保持率の低下も少なかった。これは使用したシリコーン変性剤〔A〕としてフェニ
ルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、及びシクロヘキシルトリメトキシシランを用いたことにより、シリコーン成分がエチレン性不飽和単量体からなるポリマー中に均質に分散されたためと考えられる。
【0069】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン変性剤〔A〕と、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕と、少なくとも1種の他のエチレン性不飽和単量体〔C〕とからなるシリコーン含有高分子エマルジョンであって、シリコーン変性剤〔A〕が下記式(1):
1−Si−R4−(n+m)
| ・・・(1)

((n.m)は(1.0)又は(1.1)の組であり、式中n=1およびm=0のとき、R1はフェニル基またはシクロヘキシル基であり、各R はそれぞれ、独立して、炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、または水酸基であるか、または式中n=1およびm=1のときR1はフェニル基またはシクロヘキシル基であり、Rは水素原子、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜10のアクリル酸アルキル基、または炭素数1〜10のメタクリル酸アルキル基であり、各R はそれぞれ、独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、または水酸基である)で表されるシリコーン構造を有するシラン(1)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、下記式(2):
CH−Si−(R) ・・・(2)
(式中Rはそれぞれ、独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、または水酸基である)で表されるシリコーン構造を有するシラン(2)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、下記式(3):
(CH −Si−(R・・・(3)
(式中Rはそれぞれ、独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、または水酸基である)で表されるシリコーン構造を有するシラン(3)からなる群より選ばれる少なくとも一種及び/又は環状シランを含むことを特徴とするシリコーン含有高分子エマルジョン。
【請求項2】
シリコーン変性剤〔A〕と、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕と、少なくとも1種の他のエチレン性不飽和単量体〔C〕とを乳化重合に付して得られることを特徴とする請求項1記載のシリコーン含有高分子エマルジョン。
【請求項3】
カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕と他のエチレン性不飽和単量体〔C〕の合計重量に対して、該カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕及び他のエチレン性不飽和単量体〔C〕を、それぞれ90〜99.5重量%及び0.5〜10重量%用い、又、上記シリコーン変性剤〔A〕を下記の式
1/5≦{単量体〔B〕+単量体〔C〕}/単量体〔A〕≦99.5/0.5
で表される関係を満足する量を用いて得られることを特徴とする請求項1または2記載のシリコーン含有高分子エマルジョン。
【請求項4】
上記シリコーン変性剤〔A〕が、上記式(2)で表されるシリコーン構造を有するシラン(2)からなる群から選ばれる少なくとも1種と、上記環状シラン及び式(3)で表されるシリコーン構造を有するシラン(3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の合計重量に対して、該式(2)で表されるシリコーン構造を有するシラン(2)からなる群から選ばれる少なくとも1種に対する、上記環状シラン及び式(3)で表されるシリコーン構造を有するシラン(3)からなる群から選ばれる少なくとも1種のモル比が少なくとも1/100であり、又、上記式(1)で表されるシリコーン構造を有するシラン(1)からなる群より選ばれる少なくとも一種を下記の式
1/100≦シラン(1)/{シラン(2)+シラン(3)}≦10/1
で表される関係を満足するモル比で用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシリコーン含有高分子エマルジョン。
【請求項5】
該シリコーン変性剤〔A〕が、同じか異なった(A−1)と(A−2)よりなり、該カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体〔B〕が、同じか異なった(B−1)と(B−2)よりなり、該他のエチレン性不飽和単量体〔C〕が、同じか異なった(C−1)と(C−2)よりなり、上記乳化重合をステップ(1)およびステップ(2)の順で行い、ステップ(1)においては、該シリコーン変性剤(A−1)と、少なくとも1種の該カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体(B−1)と、少なくとも1種の該他のエチレン性不飽和単量体(C−1)とを同時に乳化重合してシリコーンを含むシードエマルジョンを得、ステップ(2)おいては該シリコーン変性剤(A−2)と、少なくとも1種の該カルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体(B−2)と、少なくとも1種の該他のエチレン性不飽和単量体(C−2)より乳化重合された重合体とからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のシリコーン含有高分子エマルジョン。
【請求項6】
少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体〔B〕が、該エチレン性不飽和単量体〔B〕の重量に対して5重量%以上のアクリル酸、メタクリル酸の炭素数が5〜12のシクロアルキルエステルを含有することを特徴とする請求項1〜5記載のシリコーン含有高分子エマルジョン。

【公開番号】特開2006−273919(P2006−273919A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−91488(P2005−91488)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】