説明

高耐風圧フラット断熱屋根の金属屋根下地システム

【課題】 近年の台風等に起因する強風により、屋根の損傷も多く発生している。その対策として、単位面積当たりのネジ・ビスの本数を増やすことで風圧に対して対応を行っているが、断熱材や防水機能材の強度により本数が変わる。又、屋根は太陽光線や周辺環境や雨・風等の自然環境の影響を激しく受ける為に防水機能材の経年劣化が激しく長期にわたり屋根を台風等の強風による被害から逃れることが難しかった。
【解決手段】 上側表面部7を極力平坦面に仕上げた金属屋根下地材1と断熱材2とに介在する空気量を最小限にした断熱材2の上に、被覆する防水機能材3を金属屋根下地材1にネジや釘等で固定するワッシャー13等の上面に接着や溶着等を行い固定した高耐風圧性フラット断熱屋根の金属屋根下地システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常デッキプレートと称するものを金属屋根下地材として使用し、デッキプレートの平坦面を生かした台風・強風時に耐風圧性能を向上させるフラット断熱屋根の金属屋根下地システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属板長手方向に連続的に折り曲げ成形した通常はデッキプレートや合成デッキプレートと称する屋根下地材を構築物の梁又は母屋の上にタイトフレーム等を介して敷設する方法や直接固定する方法等によって金属屋根下地材を施工し、その上に板状の断熱材を敷設し、ネジ・釘等でワッシャーを介して金属屋根下地材に固定し、その上に防水処理としてシート防水等の防水機能材料を敷設し屋根表面がフラット状に仕上がる断熱材付き屋根が施工される技術が存在している(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特許第3472968号公報(特許請求の範囲の欄、発明の詳細な説明の欄の{発明の実施の形態}における段落{0005}〜{0008}、及び図1〜図13を参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これはフラット屋根や低勾配屋根に多く採用され大型建築物の屋根等に適しているが、近年の台風等に起因する強風により、屋根の損傷も多く発生している。その対策として、単位面積当たりのネジ・ビスの本数を増やすことで風圧に対して対応を行っているが、断熱材や防水機能材の強度により本数が変わる。又、屋根は太陽光線や周辺環境や雨・風等の自然環境の影響を激しく受ける為に防水機能材の経年劣化が激しく長期にわたり屋根を台風等の強風による被害から逃れることが難しかった。
原因は、屋根が台風等の強風を受けた際に屋根上面が局所的に大きな負圧がかかり、建築物内部との空気圧差が大きくなり屋根が持ち上げられる。金属性の屋根下地材は、引張強度が高く、多少の変形・撓みがあっても強固に建築物の梁や母屋に固定されている。しかしながら、断熱材と防水シート等の表面材は、重量も軽く、引張強度も弱い為に金属製の屋根下地材と断熱材との間に介在する空気量が多いほど、又、建築物の内部や外部からの空気が流入しやすいほど断熱材や防水シートが屋根上面に向けて大きく撓み、風の力で横方向にも揺さぶられ、引き抜き力と曲げモーメントにより、防水材・断熱材を固定するネジ・ビス等に大きな変形力がかかり、ネジ・ビス等が抜け屋根が破損していた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための本発明の第1発明は、請求項1に記載された通りの高耐風圧フラット断熱屋根の金属屋根下地システムであり、次のようなものである。
金属屋根下地材としての剛性を高める目的で、金属板を折り曲げ加工して1本または複数本のリブを形成した金属屋根下地材の上に防水機能材表面がフラット状に仕上がる断熱材付き屋根を構築する際に、該屋根の構築物の梁又は母屋に型鋼、タイトフレームを固定し、該金属屋根下地材を鋲螺類、溶接、固定用金具等で、該型鋼、タイトフレーム等に固定して敷設する金属屋根下地システムにおいて、該金属屋根下地材の上側表面部を極力平坦面に仕上げた、或いは、該金属屋根下地表面のリブ形成が大きい場合には、金属板等を使用しリブ形成部を極力平坦に仕上げた金属屋根下地材と断熱材とに介在する空気量を最小限にした該断熱材の上に、被覆する防水機能材を該金属屋根下地材にネジや釘等で固定するワッシャー等の上面に接着や溶着等を行い固定したもの、又は、被覆する防水機能材を敷設後、防水機能材をワッシャーを使用し、ビスや釘等で下地材まで貫通させ、貫通部を部分的に防水機能材を用いて接着や溶着等を行い固定する構成である。
【0005】
上記課題を解決するための本発明の第2発明は、請求項2に記載された通りの高耐風圧フラット断熱屋根の金属屋根下地システムであり、次のようなものである。
請求項1記載の発明に加えて、前記高耐風圧性フラット断熱屋根の金属屋根下地システムにおける金属屋根下地材のリブ部等に生じる2枚の金属板の合わさり部における隙間を接着材や粘着材や溶着等により空気の流入・流出を封止することにより、該金属屋根下地材表面と断熱材表面部との間の空気層への空気の流入・流出等、空気の移動を阻止する封止機構を具備した金属屋根下地材とする構成である。
【0006】
上記課題を解決するための本発明の第3発明は、請求項3に記載された通りの高耐風圧フラット断熱屋根の金属屋根下地システムであり、次のようなものである。
請求項1または請求項2に記載の発明に加えて、高耐風圧性フラット断熱屋根の金属屋根下地システムにおいて、該金属屋根下地材の一枚毎の全リブ端面において、リブ内の隙間を接着材や粘着材や詰め物や溶着等、或いは、全リブ端面を潰すことにより、空気の流入・流出を封止することにより、該金属屋根下地材表面と断熱材表面部との間の空気層への空気の流入・流出等、空気の移動を阻止する封止機構を具備した金属屋根下地材とする構成である。
【0007】
上記課題を解決するための本発明の第4発明は、請求項4に記載された通りの高耐風圧フラット断熱屋根の金属屋根下地システムであり、次のようなものである。
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明に加えて、高耐風圧性フラット断熱屋根の金属屋根下地システムにおいて、金属屋根下地材の上面に敷設する断熱材の各継ぎ目において、接着材や粘着材や溶着等することにより、防水機能材と断熱材と金属屋根下地材の各層間の空気の移動を阻止する封止機能を具備する構成である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る高耐風圧フラット断熱屋根の金属屋根下地システムは、上記説明のような構成を有するので、以下に記載する効果を奏する。
(1)屋根上面に強風を受けた時パラペットの裏側やペントハウスの壁際等は、局部的に渦巻きが生じ負圧が高まり、また、竜巻では局所的に高い負圧が生じ防水機能材が断熱材と共に持ち上げられる場合がある。しかし、断熱材と金属屋根下地材との間に介在する空気量が少ない場合には、圧力による空気の膨張量が少なくすみ、断熱材を固定するネジ・ビス等へかかる応力が軽減され耐風圧性能が向上する。
(2)金属屋根下地材と断熱材との間に介在する空気量を接着材や粘着材や溶着等により、建物内部空間と分離し建物内部空間等から新たな空気の流入を阻止するので閉ざされた空気層は、屋根上面が負圧になってもそれに応じ負圧になり断熱材を引き下げる働きをするので断熱材の変形やそれに伴う固定部の撓みを抑える働きをし、断熱材に加わる圧力が空気層の負圧により軽減され、断熱材や防水機能材を固定するネジ・ビス等に働く応力を軽減し、耐風圧性能が向上する。
(3)以上の働きで強風を受けた際に断熱材が破損する危険性を軽減できる効果がある。
(4)強風を受けた際に防水機能材が破損し、飛散する事故を軽減する効果がある。
(5)防水機能材の破損による建物内部への雨漏れを減少させる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
金属屋根下地材としての剛性を高める目的で、金属板を折り曲げ加工して1本または複数本のリブを形成した金属屋根下地材の上に防水機能材表面がフラット状に仕上がる断熱材付き屋根を構築する際に、該屋根の構築物の梁又は母屋に型鋼、タイトフレームを固定し、該金属屋根下地材を鋲螺類、溶接、固定用金具等で、該型鋼、タイトフレーム等に固定して敷設する金属屋根下地システムにおいて、該金属屋根下地材の上側表面部を極力平坦面に仕上げた、或いは、該金属屋根下地表面のリブ形成が大きい場合には、金属板等を使用しリブ形成部を極力平坦に仕上げた金属屋根下地材と断熱材とに介在する空気量を最小限にした該断熱材の上に、被覆する防水機能材を該金属屋根下地材にネジや釘等で固定するワッシャー等の上面に接着や溶着等を行い固定したもの、又は、被覆する防水機能材を敷設後、防水機能材をワッシャーを使用し、ビスや釘等で下地材まで貫通させ、貫通部を部分的に防水機能材を用いて接着や溶着等を行い固定した高耐風圧性フラット断熱屋根の金属屋根下地システムである。
【実施例】
【0010】
以下、本発明の実施例を添付図面で詳細に説明する。
図1は、本発明の第一実施例である高耐風圧性フラット断熱屋根の金属屋根下地システムを採用した施工例で、金属屋根下地材1を予め構築物の母屋4に溶接などで所定の位置に固定されたタイトフレーム5に鋲螺6で所定の位置に施工し、該金属屋根下地材1の表面7を平坦にし、施工時にも隙間が発生しないように敷設し、該平坦にした金属屋根下地材1の表面7に断熱材2を敷設する。図5は、該金属屋根下地材1の表面7を金属板9を使用し、リブ形成部を平坦に仕上げた一例である。
該断熱材2の上に被覆する防水機能材3を該金属屋根下地材1にネジ10や釘などで固定されたワッシャー11を介して取り付ける。
【0011】
尚、金属屋根下地材1は、タイトフレーム5を使用しないで直接軽量形鋼や母屋4に取り付けることができることは言うまでもない。また、金属屋根下地材1の上側表面7を平坦に保つために金属板の表面部前面、または一部において若干の凹凸を含むエンボス部を連続に加工し得ることは言うまでもない。
断熱材2は、独立発泡系の断熱用芯材を使用する場合、その表面材8を一体に形成しなくても空気の透過を阻止するので表面材8のない断熱材2を使うことができるのは言うまでもない。
リブの形状については、複数例を図面に示したが、この一例のみでなく、剛性を高めるはぜ折状に強化したリブであっても良いことは言うまでもない。
【0012】
図2は、本発明の第二実施例である高耐風圧性フラット断熱屋根の金属屋根下地システムを採用した施工例で、金属屋根下地材1の剛性を高める目的で金属板を折り曲げ加工し、1本または複数本のリブ12を形成する場合において、該リブ12部に生じる2枚の金属板の合わさり部における隙間13を接着材16や粘着材14、溶着、或いは詰め物などにより空気の流入を封止することにより該金属屋根下地材1の平坦面の上に敷設する断熱材2の表面材8との間の空気層に新たな空気の流入等、空気の移動を阻止する封止機構を具備した金属屋根下地システムの屋根上方から見た斜視図である。
なお、空気量を減らすために金属板の折り曲げ加工中、または加工後にリブ12部をカシメや溶接等で空気の流入を阻止することができることは言うまでもない。
【0013】
図3は、本発明の第三実施例である高耐風圧性フラット断熱屋根の金属屋根下地システムを採用した施工例で金属屋根下地材1を一枚毎の全リブ12端面において、リブ内隙間13を接着材16や粘着材14や溶着、或いは詰め物など、或いは該金属屋根下地材1端部を押し潰し成形5により空気の流入を阻止する封止機構を具備した金属屋根下地システムの屋根上方から見た斜視図である。
また、リブ12の形状については、他の形状でも同様に押し潰し加工が行え、同様に封止できるものであれば適用できる。
【0014】
図4は、本発明の第四実施例である高耐風圧性フラット断熱屋根の金属屋根下地システムを採用した実施例で、金属屋根下地材1の平坦面上に敷設する断熱材2と防水機能材3との間の空気層に他の空気層間からの空気の移動を阻止する封止機構を具備した金属屋根下地システムの屋根上方から見た斜視図である。
【0015】
リブを有する金属屋根下地材1の他の実施例を示す。
図5に示したものは、平坦な金属板9を表面に接着等により固定したものである。図6は、金属屋根下地材1には、複数個のリブ12を有し、上部表面部はできるだけ平坦な状態になる部分を形成するものの実施例を示す。
ここで、従来例の金属屋根下地システムにおける金属屋根下地材と断熱材及び防水機能材の施工方法について説明する。
図7は、一般的に施工されている金属屋根下地システムで、構築物の母屋4にタイトフレーム5を溶接やネジ等により、所定の位置に固定し、金属屋根下地材1を所定寸法に合わせ固定し、その上に断熱材2を敷設し、ワッシャー11を介してネジ10で金属屋根下地材1に断熱材2を固定し、ワッシャー11の上面において防水機能材3を接着させて固定した実施例の金属屋根下地システムの部分構成図で屋根上方から見た斜視図である。
なお、本従来例ではネジ止めされた位置により金属屋根下地材1の上側表面7と断熱材2の端面部において浮き上がりが生じ隙間が発生することがあり、金属屋根下地材1の上側表面7の平坦度で空気の流入・流出が多く発生していた。
以上、本発明の金属屋根下地システムの施工方法について説明したが、金属屋根下地材1としては、鋼板、各種メッキ鋼板、ステンレス鋼版、アルミニウム板等の金属板の他にも、その塗装板、樹脂ラミネート板等の素材を使用し、ロールフォーミングや折り曲げ加工で成形することも可能で、またアルミニウムや合成樹脂の押し出し成形等でも加工でき、その対象となるものである。
【産業上の利用可能性】
【0016】
新規の建物屋根のシステムとして主に記載してきたが、既存屋根のリフォーム屋根のシステムとしても応用ができる。また、建物の外壁としても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一実施例に係る金属屋根下地システムの屋根上方から見た斜視図である。
【図2】本発明の第二実施例に係る金属屋根下地システムの部分拡大斜視図である。
【図3】本発明の第三実施例に係る金属屋根下地システムの屋根上方から見た斜視図である。
【図4】本発明の第四実施例に係る金属屋根下地システムの部分拡大斜視図である。
【図5】本発明の第一実施例に係る金属屋根下地材の上方から見た斜視図である。
【図6】本発明の第一実施例に係る金属屋根下地システムの実施例を示す斜視図である。
【図7】従来例に係る金属屋根下地システムの実施例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0018】
1・・・・金属屋根下地材 2・・・・断熱材
3・・・・防水機能材 4・・・・母屋
5・・・・タイトフレーム 6・・・・鋲類
7・・・・上側表面 8・・・・表面材
9・・・・金属板 10・・・・ネジ
11・・・・ワッシャー 12・・・・リブ
13・・・・隙間 14・・・・粘着材
15・・・・押し潰し成形 16・・・・接着材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属屋根下地材としての剛性を高める目的で、金属板を折り曲げ加工して1本または複数本のリブを形成した金属屋根下地材の上に防水機能材表面がフラット状に仕上がる断熱材付き屋根を構築する際に、該屋根の構築物の梁又は母屋に型鋼、タイトフレームを固定し、該金属屋根下地材を鋲螺類、溶接、固定用金具等で、該型鋼、タイトフレーム等に固定して敷設する金属屋根下地システムにおいて、該金属屋根下地材の上側表面部を極力平坦面に仕上げた、或いは、該金属屋根下地表面のリブ形成が大きい場合には、金属板等を使用しリブ形成部を極力平坦に仕上げた金属屋根下地材と断熱材とに介在する空気量を最小限にした該断熱材の上に、被覆する防水機能材を該金属屋根下地材にネジや釘等で固定するワッシャー等の上面に接着や溶着等を行い固定したもの、又は、被覆する防水機能材を敷設後、防水機能材をワッシャーを使用し、ビスや釘等で下地材まで貫通させ、貫通部を部分的に防水機能材を用いて接着や溶着等を行い固定したことを特徴とする高耐風圧性フラット断熱屋根の金属屋根下地システム。
【請求項2】
前記高耐風圧性フラット断熱屋根の金属屋根下地システムにおける金属屋根下地材のリブ部等に生じる2枚の金属板の合わさり部における隙間を接着材や粘着材や溶着等により空気の流入・流出を封止することにより、該金属屋根下地材表面と断熱材表面部との間の空気層への空気の流入・流出等、空気の移動を阻止する封止機構を具備した金属屋根下地材としたことを特徴とした請求項1に記載の高耐風圧性フラット断熱屋根の金属屋根下地システム。
【請求項3】
高耐風圧性フラット断熱屋根の金属屋根下地システムにおいて、金属屋根下地材の一枚毎の全リブ端面において、リブ内の隙間を接着材や粘着材や詰め物や溶着等、或いは、全リブ端面を潰すことにより空気の流入・流出を封止することにより、該金属屋根下地材表面と断熱材表面部との間の空気層への空気の流入・流出等、空気の移動を阻止する封止機構を具備した金属屋根下地材としたことを特徴とした請求項1、または請求項2に記載の高耐風圧性フラット断熱屋根の金属屋根下地システム。
【請求項4】
高耐風圧性フラット断熱屋根の金属屋根下地システムにおいて、金属屋根下地材の上面に敷設する断熱材の各継ぎ目において、接着材や粘着材や溶着等することにより、防水機能材と断熱材と金属屋根下地材の各層間の空気の移動を阻止する封止機能を具備したことを特徴とした請求項1〜請求項3のうちいずれか1項に記載の高耐風圧性フラット断熱屋根の金属下地システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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