説明

高膨張泡消火装置

【課題】設置状態の美感をよくすると共に発泡網の長さを長くすることの可能な発泡機を提供する。
【解決手段】折りたたみ可能な素材によって筒状に形成された発泡機本体2と、該発泡機本体2の先端に突出して設けられた発泡網3と、前記発泡機本体2の後端側に設けられ、前記発泡網3に向かって泡水溶液を放射する放射ノズル4と、該放射ノズル4を覆う位置に設けられ、前記発泡機本体2と略同一断面を有する収納箱5と、該収納箱5に設けられ、空気が吸引される吸気口11と、を備えた発泡機1であって、前記発泡網3は、折りたたみ可能に形成され、前記発泡機本体2と一体となって折りたたまれた状態で前記収納箱5に収納される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高膨張泡消火装置に関し、より詳細には、折りたたみ式発泡機を備えた高膨張泡消火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、折りたたみ式発泡機を備えた高膨張泡消火装置が提案されている。該消火装置の折りたたみ式発泡機は本体部分のみを蛇腹状に折りたたんで形成し、縮めた状態で小さく保持するとともに、発泡網を高さ方向に複数回折り曲げて波形状とし、発泡機本体の前面に設けることで発泡網を発泡機本体の前面から突出させることなく全体を短くして収納している(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−233233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、防護領域内の煙を含んだ空気を利用して高膨張泡を放出するインサイドエア式の発泡機には、放射ノズルから放出される泡水溶液の勢いが強すぎると、発泡倍率が低下するという問題があった。これに対し、所定の混合率で混合した専用の泡水溶液を用いると共に、発泡網の先端角度を15乃至40°の鋭角にし、放射ノズルと発泡網の先端までの長さを長くすることで、発泡網に衝突する泡水溶液の勢いが低下するので、煙状況下でも発泡倍率の低下を防止できるという知見が得られている。
【0005】
しかしながら、放射ノズルと発泡網の先端までの長さを長くするために、発泡網の先端角度を一度だけ折り曲げて、その角度を鋭角にすると、その分発泡機の全長が長くなってしまい、美観がよくないという新たな問題が生じる。
【0006】
そこで、本発明は、設置状態の美感をよくすると共に発泡網の長さを長くすることの可能な発泡機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、折りたたみ可能な素材によって筒状に形成された発泡機本体と、該発泡機本体の先端に突出して設けられた発泡網と、前記発泡機本体の後端側に設けられ、前記発泡網に向かって泡水溶液を放射する放射ノズルと、該放射ノズルを覆う位置に設けられ、前記発泡機本体と略同一断面を有する収納箱と、該収納箱に設けられ、空気が吸引される吸気口と、を備えた発泡機であって、前記発泡網は、折りたたみ可能に形成され、前記発泡機本体と一体となって折りたたまれた状態で前記収納箱に収納されることを特徴とする発泡機である。
【0008】
本発明は、前記収納箱の前面に常時閉の蓋体を設け、該蓋体は、火災時に泡水溶液の水圧を利用して開くことを特徴とする発泡機である。
【0009】
本発明は、前記収納箱の背面に、伸縮可能な脚部を設け、該脚部は、通常時に収縮することによって、前記収納箱を設置面に密着させて保持し、火災時に伸長することによって、前記設置面より離間させて保持することで前記吸気口から空気を吸引可能とすることを特徴とする発泡機である。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、放射ノズルと発泡網の先端までの長さが長くなる様に発泡網を形成し、発泡網の先端を鋭角にした場合でも、発泡機全体を小さく折り畳んだ状態で収納できるので、発泡網が折り畳めない発泡機と比較して美観がよい。更に、収納箱の前面には蓋体を設けたので、発泡網及び発泡機本体を折り畳んだ状態で保持でき、折り畳んだ状態が外から見えなくなるので、更に美観がよい。
【0011】
又、収納箱の背面に伸縮可能な脚部を設け、通常時は収縮した状態で設置面に密着して保持されるので、より省スペースで発泡機を設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態を示す図であり、(a)は常時の状態を、(b)は火災時の状態を示す図である。
【図2】図1(a)のA−A断面を示す図である。
【図3】図1(b)のB−B断面を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態を示す図であり、(a)は常時の状態を、(b)は火災時の状態を示す図である。
【図5】本発明の脚部を示す図であり、(a−1)は常時における正面図に、(a−2)は常時における側面図に、(b−1)は火災時における正面図に、(b−2)は火災時における側面図に、(b−3)は(b−1)の要部拡大図に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1実施形態を図1乃至3により説明する。本実施形態の高膨張泡消火装置は、防護領域の天井面等に取り付けられる発泡機1、発泡機1に泡水溶液を供給する泡水溶液供給配管(図示せず)及び発泡機1と該供給配管を介して接続され、泡水溶液を貯留する泡水溶液タンク(図示せず)を備える。
【0014】
発泡機1は、発泡機本体2、発泡機本体2の先端に突出して設けられた発泡網3、発泡機本体2の後端側に設けられる放射ノズル4及び放射ノズル4を覆う位置に設けられる収納箱5を備える。又、発泡機本体2及び発泡網3は折りたたみ可能に形成され、発泡網3と発泡機本体2とが一体に折りたたまれた状態で、常時は収納箱5内に収納される。
【0015】
発泡機本体2は、略四角筒状をしており、折りたたみ可能な難燃性又は不燃性の材料により形成される。本実施形態では不燃性の布材により形成されている。又、発泡機本体2は収納箱5と押さえ板6によって挟持され、ビス又は鋲等の固定手段によって収納箱5に内接状態で固定される。
【0016】
発泡網3は、上記泡水溶液を発泡させるための穴の開いた中空且つ先端角度θが鋭角の略三角柱形状又は略四角錘形状の部材であり、折りたたみ可能な難燃性又は不燃性の材料により形成される。好ましくは、発泡網3の先端角度θ=15乃至40°になるように形成される。本実施形態における、発泡網3は、グラスファイバーを編込むことにより開口率が60乃至70%程度になるように形成されるが、上記泡水溶液を発泡できればよく、難燃性又は不燃性の布材をパンチングによって穴を開け形成することもできる。
【0017】
放射ノズル4は、泡水溶液を発泡機1内に供給するためのものであり、前記供給配管に連接される給水管7に接続されている。更に、放射ノズル4は、後述する吸気口11からアスピレート効果によって空気を取り込むため、所定の勢い、例えば、0.2乃至1Mpha程度の強さで泡水溶液を放射するものである。給水管7には分岐管8が設けられ、分岐管8はシリンダ9に接続されている。シリンダ9は、分岐管8から供給される泡水溶液の水圧によって可動する断面略T字状のピストン14を備える。
【0018】
収納箱5は発泡機本体2と略同一断面を有し、その背面には火災時に防護領域内の空気を発泡機1内に供給する吸気口11が設けられている。このため、収納箱5は、防護領域の天井面等から火災時に吸気口11からの空気の供給に支障がでない程度の距離を離間して設置される。又、収納箱5の前面には、蝶番等の固定手段によって蓋体10が回動可能に取り付けられる。該固定手段に対向する位置の側面にはシリンダ9が取り付けられる。
【0019】
蓋体10は、収納箱5の前面と略同形の平板状に形成され、常時は、収納箱5に設けられた磁石12によって、収納箱5に磁着され、収納箱5を閉塞する。又、蓋体10は、シリンダ9が取り付けられている側の縁が収納箱5よりも外方に突出しており、該縁には縁台13が形成される。縁台13は断面略冂字状をしており、該磁着された際に蓋体10の水平面よりも、シリンダ9側に突出するように形成される。尚、磁石12は収納箱5の外側に設けても良い。
【0020】
次に本実施形態の火災時における動作について説明する。
(1)火災感知器(図示せず)が防護領域内の火災を検知すると、該火災感知器の信号によって弁(図示せず)が開き、加圧手段(図示せず)が起動することによって前記タンクから前記泡水溶液が前記供給配管を介して給水管7へと供給される。
(2)該泡水溶液は、給水管7に接続された放射ノズル4から発泡機1内に供給される。この際に、供給された泡水溶液の勢いによって発泡機1は吸気口11から防護領域内の空気を収納箱5内に取り込んでいく。
【0021】
(3)該水溶液の水圧及び吸気口11から取り込んだ空気の空気圧によって、発泡機本体2及び発泡網3が膨らみ、その勢いにより蓋体10は回動し収納箱5は開放され、防護領域と連通し、そして、発泡機本体2及び発泡網3は収納箱5の外部へと防護領域の床面に向かって垂直方向に展開される。又、この際に、蓋体10の回動の補助的手段としてシリンダ9が用いられる。
【0022】
即ち、本実施形態では、上記(2)の工程において、該水溶液は給水管7から放射ノズル4へと供給されると共に分岐管8を介してシリンダ9にも供給され、そして、供給された該水溶液の水圧によりシリンダ9のピストン14が押し下げられていく。更に、押し下げられるピストン14が蓋体10の縁台13を押し下げることによって、蓋体10の収納箱5との磁着は解除され、蓋体10が回動するようになっている。従って、本実施形態では、火災時に確実に収納箱5を開放することが可能である。
【0023】
又、発泡機本体2及び発泡網3の展開後は、吸気口11から発泡機本体2に供給される空気量は発泡網3から排気される空気量を上回っているため、前記泡水溶液が供給され該空気が発泡機1に供給されている間は発泡機本体2及び発泡網3の展開を維持することができる。
【0024】
(4)そして、発泡機本体2及び発泡網3は収納箱5の外部に展開された後、該水溶液は、放射ノズル4から発泡網3へと向かって放射され、該水溶液は該空気を取り込みながら発泡網3に衝突することによって高膨張泡となり、発泡機1の外部へと放出される。本実施形態では、発泡網3の先端角度θを鋭角にすることができるため、専用の泡水溶液を利用すると共に発泡網3の長さを長く確保することが可能であり、煙が含まれる防護領域内の空気を使用しても所定の発泡倍率を確保できるようになっている。
【0025】
(5)そして、該泡が火源を覆い、火源への酸素の供給を遮断することによって火災は窒息消火される。
【0026】
本実施形態において、発泡機本体2及び発泡網3は折り畳むことが可能な柔軟な素材でできている。そのため常時は、発泡機本体2及び先端角度が鋭角としその全長を長くした発泡網3を小さく折り畳んだ状態で収納箱5に収納することができ、収納箱5の前面に設けられた蓋体10により、外部から折り畳まれた発泡機本体2等が視認できなくなるので、従来の発泡機よりも美感の点で優れている。又、蓋体10により外部に露出しないので、発泡機本体2及び発泡網3の保護も行うことができる。
【0027】
又、火災時には、発泡機本体2及び発泡網3は、泡水溶液の水圧及び吸気口5から供給される空気の空気圧によって迅速に展開することができ、そして、発泡網3の長さを長く確保することができるため、煙を含んだ防護領域内の空気を用いても所定の発泡倍率の泡を放出することができる。
【0028】
本実施形態の副次的な効果として、発泡機本体2及び発泡網3が柔軟な素材で形成されているため、万が一、発泡機本体2及び発泡網3が展開される際に、その真下に人間が居たとしても、発泡網3に当って怪我等を負う可能性を小さくすることができる。
【0029】
本発明の第2実施形態を図4及び5により説明する。第1実施形態との相違は、収納箱5の背面側且つ側面側に伸縮可能な脚部15及びシリンダ16を備えることで、収納箱5を防護領域の天井面26等に密着させておくことができるようにしたものである。尚、第1実施形態と同符号は構成及び効果は同様である。
【0030】
シリンダ16は、シリンダ9と同様の機構を備え、枝管24を介して給水管7に接続されている。
【0031】
脚部15は天井側固定部17及び収納箱固定部18から構成される。天井側固定部17にはレール部19が形成され、レール部19の上端側には、その内方に向かって突出したロック部20,21が設けられる。又、収納箱固定部18はその上端側にスライド部22を備える。スライド部22は、レール部19の幅Wと略同径且つロック部20,21間の幅Wより僅かに大きい略円柱形状に形成される。又、スライド部22はレール部19に嵌合しており、そして、その先端に脱落防止用の突部23を備える。突部23は、レール部19の幅Wより幅広である。つまり、収納箱固定部18はスライド部22を介して収納箱固定部18に連結され、スライド部22はレール部19上を摺動しながら移動できるようになっている。
【0032】
次に、脚部15の動作について説明する。
(A)収納箱固定部18のスライド部22は、常時は、ロック部20,21よりもレール部19の上端側に位置し、そして、ロック部20,21によりその位置を保持されている。つまり、脚部15は収縮していることとなり、収納箱5は前記防護領域の天井面26に密着していることとなる。
(B)前記火災感知器が火災を検知し、給水管7に前記泡水溶液が供給されると、該泡水溶液は枝管24を通って、シリンダ16にも供給される。
【0033】
(C)シリンダ16のピストン25は収納部5の背面に近接して設けられ、ピストン25が該泡水溶液の水圧によって下方へと押し下げられると収納箱5を下方へと押し下げる。このピストン25が押し下げられる力によって、収納箱固定部18のスライド部22はロック部20,21を乗り越えながらその間を通過し、レール部19の下端側へと移動する。つまり、脚部15は伸長していく。
【0034】
(C)の工程の際、脚部15が伸長するに伴い、収納箱5は前記防護領域の天井面26から離間していくこととなる。それと平行して上記(1)乃至(5)(段落番号[0020]乃至[0025]を参照)と同様の工程によって、発泡網3から泡を放出して火災は消火される。尚、分岐管8も伸長可能な配管(例えば、フレキシブル配管)とすることで、蓋体10の回動の補助的手段としてシリンダ9が有効に作動する。
【0035】
より詳細に述べると、収納箱5を防護領域の天井面26等に密着させ過ぎると、吸引口11からに空気の供給(吸気)が妨げられ、所定の発泡倍率が得られなくなる可能性がある。これに対し、本実施形態では、収納箱5の背面に伸縮自在な脚部15を設けたので、常時は、収納箱5を防護領域の天井面26等の設置面に密着させ、省スペースで設置し、火災時には、収納箱5を防護領域の天井面26等から離間して吸気口11と天井面26等の間に空間を設けることが可能となる。これにより、吸気口11からの空気の供給(吸気)が妨げられることなく、所定の発泡倍率を得ることができる。
【0036】
尚、本実施形態では泡水溶液の水圧によって脚部15を伸長させたが、他の手段によって脚部15を伸縮させてもよい。
【0037】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、高膨張泡消火装置の中心軸を垂直方向に配設する代わりに、水平方向に配設し、火災時に発泡機本体2及び発泡網3が水平方向に展開されるようにすることもできる。そして、発泡網3の先端角度θは必ずしも鋭角である必要はなく、又、発泡機本体2及び発泡網3の形状は適宜変更することができ、例えば、発泡機本体2を円筒形状とし、発泡網を円錐形状としてもよい。更に、収納箱5の背面に吸気口11を設ける代わりに、その側面に設けても良い。
【0038】
又、上記実施形態では、泡原液と消火用水を事前に混合し、泡水溶液タンクに貯留したが、供給配管に混合器を設け、泡原液と消火用水を別々に貯留しても良い。
【0039】
更に、上記実施形態では、蓋体10を平板状とし、収納箱5に磁着したが、例えば、泡水溶液の放射圧力で破れるカバーのような物でも良い。これにより、シリンダ9を設ける必要がなくなるので部品数を減少させることが可能となる。
【符号の説明】
【0040】
1 発泡機 2 発泡機本体 3 発泡網 4 放射ノズル
5 収納箱 6 押さえ板 7 給水管 8 分岐管
9 シリンダ 10 蓋体 11 吸気口 12 磁石
13 縁台 14 ピストン 15 脚部 16 シリンダ
17 天井側固定部 18 収納箱固定部 19 レール部 20 ロック部
21 ロック部 22 スライド部 23 突部 24 枝管
25 ピストン 26 天井面 θ 先端角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折りたたみ可能な素材によって筒状に形成された発泡機本体と、該発泡機本体の先端に突出して設けられた発泡網と、前記発泡機本体の後端側に設けられ、前記発泡網に向かって泡水溶液を放射する放射ノズルと、該放射ノズルを覆う位置に設けられ、前記発泡機本体と略同一断面を有する収納箱と、該収納箱に設けられ、空気が吸引される吸気口と、を備えた発泡機であって、
前記発泡網は、折りたたみ可能に形成され、前記発泡機本体と一体となって折りたたまれた状態で前記収納箱に収納されることを特徴とする発泡機。
【請求項2】
前記収納箱の前面に常時閉の蓋体を設け、該蓋体は、火災時に泡水溶液の水圧を利用して開くことを特徴とする請求項1に記載の発泡機。
【請求項3】
前記収納箱の背面に、伸縮可能な脚部を設け、該脚部は、通常時に収縮することによって、前記収納箱を設置面に密着させて保持し、火災時に伸長することによって、前記設置面より離間させて保持することで前記吸気口から空気を吸引可能とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−42780(P2013−42780A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180372(P2011−180372)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】