説明

高負荷伝動ベルト

【課題】ブロック重量を軽くして高速回転で用いる場合でも発生する遠心力が大きくなりすぎず、しかも十分な強度を有するとともに高温環境化においてもブロックの摩耗等の問題が少なく、より効率的な伝動を行うことができる高負荷伝動ベルトを提供する。
【解決手段】センターベルト4、5の長手方向に沿って所定ピッチで設けた複数のブロック6とからなる高負荷伝動ベルト1において、ブロック6は炭素繊維を一方向に並べたもの、もしくは炭素繊維の織布に樹脂を含浸させたプリプレグを積層した炭素繊維強化プラスチックからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センターベルトの長手方向に沿って所定ピッチでブロックを固定した高負荷伝動ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
ベルト無段変速装置に使用するベルトは、プーリのV溝幅を変えることによってプーリに巻きかかる有効径を変化させ変速比を調節するような変速プーリに巻きかけて使用するものであり、プーリからの側圧が大きくなるのでベルトは大きな側圧に耐えるものでなくてはならない。また、無段変速の用途以外にも通常のゴムベルトでは寿命が短くなりすぎるような高負荷伝動の用途には特別に高負荷に耐えうるようなベルトを用いる必要がある。
【0003】
そのようなベルトとして使用されるものの中に、センターベルトにブロックを固定してベルト幅方向の強度を高めた引張伝動式の高負荷伝動ベルトがあり、具体的な構成としては、心線をゴムなどのエラストマー中に埋設したセンターベルトにボルトやリベットなどの止着材を用いてセンターベルトに使用しているエラストマーよりも比較的硬質の樹脂などからなるブロックを固定したものがある。
【0004】
このような引張伝動式の高負荷伝動ベルトのブロックの要求品質としては、上記のように摩擦伝動において高負荷伝動を目的としているために、曲げ疲労性、耐摩耗性、耐熱性、剛性、耐衝撃性などの性質をバランスよく保有する必要がある。更にプーリを摩耗させないようにすることも大切な要素である。
【0005】
これらの要求を満たす高負荷伝動ベルトとして、例えば、特許文献1に開示されているようなものがある。このベルトは、ブロックとプーリの接触する部分が、フェノール系樹脂成分にゴム成分が添加された樹脂成形材料によって、金属などで形成されているインサート材を被覆した2重構造のブロックを用いたものである。
【0006】
特許文献2にはポリアミドなどの熱可塑性樹脂に炭素繊維を配合したもので、金属製のインサート材を埋設してないブロックをも敷いた高負荷伝動ベルトが開示されている。
【0007】
また、特許文献3にはベルトに関するものではないが、熱可塑性樹脂をインサート材として表面に熱硬化性樹脂を被覆した成形体に関する技術が開示されている。特許文献4には、ブロック中に複数層の板状の補強部材を埋設したベルトが開示されており、特許文献5にはフェノール樹脂を含浸した帆布を積層や渦巻状に巻いたものをブロックとして使用することが開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開昭63−34342号公報
【特許文献2】特開2001−311453号公報
【特許文献3】特開平5−318527号公報
【特許文献4】実公平2−37309号公報
【特許文献5】実開昭59−136055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示されているような樹脂中にアルミニウムなどの金属製のインサート材を埋設したベルトであると、インサート材の有する分、ブロックの重量がどうしても大きなものとなってしまい、ベルト走行時の遠心張力も必然的に大きなものとなってしまう。そうするとそのベルトを走行させる駆動装置側においても、軸荷重を高くかつプーリの合成も高いものにする必要があるので、駆動装置全体として大きなものとなってしまう傾向があり、高価になってしまうことや小型化することが難しいという欠点がある。また、高速回転に不向きであるといった欠点もある。
【0010】
特許文献2に開示されているようなベルトであると、ブロックがポリアミドなどの樹脂からなっており、インサート材が埋設されていないのでブロックの重量は比較的軽いものとなり、ベルト走行時の遠心張力も小さなものとなることから、そのベルトを駆動するベルト駆動装置に求められる軸荷重やプーリの剛性なども程々のものでよく、安価に済ませることができるようになる以外にも高速回転に向いており、例えば小さい排気量で回転数の高いエンジンに適用することが可能である。
【0011】
しかし、例えばポリアミドなどの熱可塑性樹脂では、融点が低くガラス転移点も低いためにプーリとの摩擦により高温になるとプーリとの摩擦により高温になると、ブロックが溶融状態になって摩耗してしまうという問題がある。
【0012】
特許文献3は熱可塑性樹脂を熱硬化性樹脂で被覆する技術に関する開示はあるが、本発明のようなブロックを用いたベルトに関するものではない。また、熱可塑性樹脂は曲げ弾性率、強度の面で弱く熱硬化性樹脂との間の接着性に劣ることからブロックとして十分な強度を出しにくいという問題がある。
【0013】
特許文献4に開示されたブロック中に埋設されている補強部材は金属やプラスチックなどの高弾性率材料が挙げられており、板状の補強部材を複数用いているものの重量が大きくなってしまうという問題は避けることができない。
【0014】
特許文献5のブロックはセンターベルトに対してリベットを用いてブロックを固着するタイプのベルトであり、またブロックの表面には別途被覆材を設けるといった構成にはなっていないので、プーリとの間で伝達がスムーズに行われず伝動効率が下がってしまうことやブロックの耐摩耗性の面で劣るといった問題があった。
【0015】
本発明は、前記のような問題点に鑑みてなされてものであり、ブロック重量を軽くして高速回転で用いる場合でも発生する遠心力が大きくなりすぎず、しかも十分な強度を有するとともに高温環境化においてもブロックの摩耗等の問題が少なく、より効率的な伝動を行うことができる高負荷伝動ベルトの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記のような目的を達成するために本発明の請求項1における発明では、センターベルトと、該センターベルトの長手方向に沿って所定ピッチで設けた複数のブロックとからなる高負荷伝動ベルトにおいて、ブロックは炭素繊維を一方向に並べたものもしくは炭素繊維の織布に樹脂を含浸させたプリプレグを積層した炭素繊維強化プラスチックからなることを特徴とする高負荷伝動ベルト。
【0017】
請求項2に係る発明では、含浸させる樹脂がエポキシ樹脂もしくはフェノール樹脂からなる請求項2記載の高負荷伝動ベルトとしている。
【0018】
請求項3では、炭素繊維はピッチ系のものを使用してなる請求項1〜2記載の高負荷伝動ベルトとしている。
【0019】
請求項4では、ブロックを構成する炭素繊維強化プラスチック中の炭素繊維はベルト幅方向に配向してなる請求項1〜3のいずれかに記載の高負荷伝動ベルトとしている。
【0020】
請求項5では、ブロックの側面においては炭素繊維がベルト長手方向に配向した部分を有する請求項4記載の高負荷伝動ベルトとしている。
【0021】
請求項6では、炭素繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを矩形状に巻いたものを硬化させ、ブロック形状に切削したものである請求項5記載の高負荷伝動ベルトとしている。
【0022】
請求項7に係る発明では、センターベルトは上下両面に所定ピッチでブロック保持部を形成してなり、該ブロック保持部の間にブロックを挟持配置してなる請求項1〜6のいずれかに記載の高負荷伝動ベルトとしている。
【0023】
請求項8に係る発明では、ブロックは、上ビームと下ビームと、上下ビームを中央で連結するセンターピラーからなり、前記上下ビームとセンターピラーとで囲まれブロック左右両側面に開口する一対のベルト装着部を有し、一対のセンターベルトを該ベルト装着部に装着することでセンターベルトのブロック保持部の間にブロックを挟持配置してなる請求項7記載の高負荷伝動ベルトとしている。
【0024】
請求項8に係る発明では、ブロック保持部の高さは上下ビームの高さの40〜100%を有する請求項7記載の高負荷伝動ベルトとしている。
【発明の効果】
【0025】
請求項1によると、ブロックとして炭素繊維の長繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを積層した材料で構成しており、軽量でありながら高強度で高剛性であり、ベルト走行中に発生する遠心力を小さくすることができるとともに、プーリからの大きな側圧に対して耐えることができ、高トルクを伝達することが可能なベルトとすることができる。特に高回転で用いる用途の場合に有利である。
【0026】
請求項2では、炭素繊維に含浸する樹脂としてエポキシ樹脂もしくはフェノール樹脂を用いるとしており、耐熱性や強度のより高いブロックを得ることができる。
【0027】
請求項3では、炭素繊維をピッチ系のものを使用しており、PAN系の炭素繊維よりも引張弾性率が大きく、ブロックからの炭素繊維の剥離の問題を低減することができる。
【0028】
請求項4では、炭素繊維強化プラスチックの炭素繊維をベルト幅方向に配向して配置しており、ブロックの幅方向の強度を高いものとすることができるので、高トルクを伝達する場合でも、ベルトに十分な耐側圧性を持たせることができる。
【0029】
請求項5では、ブロックの側面において炭素繊維がベルト長手方向に配向させており、ベルト走行時のブロックとプーリとの間の摩擦でも、炭素繊維が容易に剥がれることなく長期にわたってブロックに破損を生じることのないベルトを提供することができる。
【0030】
請求項6では、炭素繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを矩形状に巻いたものをブロックとしており、炭素繊維がブロックの周方向に配列されて、炭素繊維の剥がれの起点となる炭素繊維の端部がブロックの表面、特にプーリと接触するブロック側面に現れなくなるので、炭素繊維の剥がれの問題を解消することができる。
【0031】
請求項7では、センターベルトの表面に形成したブロック保持部の間にブロックを挟持配置した構造としており、ブロック側にはセンターベルトと嵌合させるような形状を加工する必要がなく、低コストでブロックとセンターベルトとの確実な固定を行うことができる。
【0032】
請求項8では、ブロックの形状をより具体的に限定したものであり、請求項3と同様にブロックの加工の必要がなく、ブロックとセンターベルトとの確実な固定を行うことができる。
【0033】
請求項8では、ブロック保持部高さのブロック高さに対する割合を限定したものであり、ブロック保持部によるブロックの挟持が十分で確実になされるよう範囲設定したものである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、本発明に係る高負荷伝動ベルト1の一例を示す斜視図であり、図2はその側断面図である。本発明の高負荷伝動ベルト1は、エラストマー2内にロープ状の心体3をスパイラル状に埋設してなる同幅の一対のセンターベルト4、5と、センターベルト4、5の長手方向に沿って所定ピッチで係止固定されたブロック6とからなっている。
【0035】
このブロック6の両側面7、8は、プーリのV溝と係合する傾斜のついた面となっており、駆動されたプーリからトルクを受け取ってセンターベルト4、5を介して従動側プーリへ動力を伝達するものである。
【0036】
本発明の高負荷伝動ベルト1に用いるブロック6は、上ビーム9および下ビーム10と上下ビーム9、10を中央にて連結するピラー11とからなっており、両方の側面7、8には一対のセンターベルト4、5を嵌合する溝12、13が形成されている。また、溝12、13の上面14および下面15にはセンターベルト3の上面に設けた凹条部16と下面に設けた凹条部17に嵌合する凸条部18を突設している。
【0037】
ブロックの上下方向の中央より下部分の前後面には傾斜がつけられており、ベルトがプーリに巻きかかったときにブロック同士が接触せずに屈曲できるようになっている。
【0038】
素材としては、炭素繊維を一方向に並べたものや炭素繊維の織布に樹脂を含浸させたプリプレグを複数積層した炭素繊維強化プラスチックからなっており、低密度でありながら高強度、高剛性を有している。よって、このような材料を使用したブロック6は、プーリから大きな側圧を受けたとしても大きく変形することなく、高負荷の伝達を可能することができる。
【0039】
また、センターベルト4、5をブロック側面の溝12、13に嵌合装着した場合でも、上ビーム9や下ビーム10に撓みが生じにくく、ブロック6とセンターベルト4、5との嵌合に緩みが生じるのを防止することができる。
【0040】
ブロック6中の炭素繊維Cの配置であるが、請求項4ではベルトの幅方向に配向させたブロックを用いるとしており、図3のように炭素繊維を一方向に配列したプリプレグの積層体20を硬化させて、切削によってブロックの形状を削りだすことによってブロックを得ることができる。すべての炭素繊維Cをベルトの幅方向に配向して配置することによって、ブロック6の幅方向の圧縮強度を高めることができプーリから大きな側圧に対しても十分に耐えうるベルトとすることができる。
【0041】
ただし、ブロック6の側面7、8に炭素繊維の端部が位置することになるので、プーリとの間の摩擦によって炭素繊維同士が剥がれてしまい、ブロック6の破損からベルトの故障につながってしまうことがある。
【0042】
それに対して、請求項5では、ブロック6のほとんどの部分で基本的には炭素繊維をベルトの幅方向に配向してベルトの耐側圧性を高めるようにしているが、ブロック6の側面7、8においてのみ炭素繊維をベルト長手方向に配向しており、ブロック6の側面7、8がベルト走行中にプーリとの間で擦れあっても炭素繊維がブロックから剥離してしまう問題を抑制することができる。
【0043】
ブロック6の側面7、8において前記のように炭素繊維がベルト長手方向に配向している具体的な形態として、請求項6に挙げたような形態を挙げることができる。請求項6では、炭素繊維に樹脂を含浸して半硬化状態にしたプリプレグを、ブロック6を上からみた形に合わせて矩形状に巻きつけて硬化させ直方体状とし、それをブロックの形状になるように切削によって、ブロック側面にはプーリのV溝に係合する角度の傾斜をつけ、センターベルト4、5を嵌合する溝12、13を形成するとともに溝内の上下面にセンターベルト4、5と噛み合う凸条部を形成し、ブロックの上下方向の中央より下部分の前後面にも傾斜を形成する。実際にプリプレグを巻いて直方体状にする方法であるが、図4に示すように最初に円筒30状に巻き付けてから断面が矩形になるように型付けすることで直方体のプリプレグの巻物31とすることができ、その後硬化させてブロック6の形状に切削加工することでブロック6を得ることができる。
【0044】
このように炭素繊維Cをブロックの形状に合わせて矩形状に周回配置することで、ブロックの側面には炭素繊維Cの端部を配置することなく、ブロックの幅方向の中ほどにはベル汚幅方向に配向した炭素繊維Cを配置することができるとともに、ブロックの側面にはベルト長手方向に配向した炭素繊維Cを配置することができるので、ベルトの耐側圧性を十分に確保することができ、しかも、ブロック側面からの炭素繊維Cが剥離してしまう問題を防止することができるものである。
【0045】
更に、請求項6のプリプレグを巻くことによってブロックを形成するものであるが、図5に示すようにプリプレグをブロック側面に合わせて角度をつけて円錐40状に巻きつけておき、それを断面矩形になるように型付けして四角錐41状にし、やはり切削加工等でセンターベルト4、5を嵌合する溝12、13を形成するとともに溝内の上下面にセンターベルト4、5と噛み合う凸条部を形成し、ブロックの上下方向の中央より下部分の前後面にも傾斜を形成する。このような方法で得られたブロック6ではブロックの下ビーム10の側面7においても、炭素繊維Cがベルト長手方向に配置されている層の厚みを大きく取ることができるので、下ビーム10における炭素繊維Cの剥離を抑えることができる。
【0046】
図6は、本発明に係る高負荷伝動ベルト1の一例を示す斜視図であり、図7はブロックの斜視図、図8は図6に示すベルトの側断面図、図9はベルトの別の例を示す側断面図である。本発明の請求項7〜8に係る高負荷伝動ベルト1におけるセンターベルト4、5とブロック6の係止方法であるが、センターベルト4、5の上下面14、15には所定ピッチでブロック保持部19、20が形成されており、隣り合うブロック保持部19、20同士の間に、ブロック6を挟持配置することによって、ブロック6がセンターベルト4、5に対してベルト長手方向に係止固定されている。炭素繊維の長繊維を樹脂で固めたプリプレグを積層して得られる素材を用いていることから、ブロック6は通常打ち抜きで形成されることになり、複雑な形状の加工は技術的にも困難でありコスト的にも高くついてしまうという問題がある。しかし、ブロック6とセンターベルト4、5を前記のような構造で係止固定することで、ブロック6は打ち抜いたそのままの形状で用いることができるというメリットを有する。
【0047】
コスト的に不利にはなるものの、ブロック6のセンターベルトを嵌合する溝12、13内にベルト幅方向の凸条部を設けるとともにセンターベルト4、5の側に前記凸条部に噛み合う凹条部を設けておいて両者を噛み合わせることでブロック6とセンターベルト4、5を係止固定する方法を採っても良い。ブロック6の加工においてコスト的に不利になるものの、ブロック6の素材として炭素繊維の長繊維を樹脂で固めたプリプレグを積層して得られる素材を用いることによる、軽量で且つ高剛性、高強度であるという利点を享受することはできるので、高負荷伝動ベルトとして伝達性能の高い、且つ寿命の長いベルトを得ることができるものである。
【0048】
本発明の高負荷伝動ベルトに用いられるブロック6は、炭素繊維を一方向に並べたものや炭素繊維の織布に樹脂を含浸させたプリプレグを複数積層した炭素繊維強化プラスチックである。炭素繊維の短繊維を補強のために樹脂に混ぜて射出成形したりするものもあるが、そのような場合は炭素繊維は数十μm程度の繊維となる。本発明における炭素繊維は、そのような短繊維ではなく、成形品の大きさにもよるが例えば1mm〜数十mm以上で、その製品の長さと同じ長さの長繊維を成形品内に内在するようなもののことをいう。具体的には、繊維は例えば一方向に揃えたものを準備し樹脂を含浸させるものや、繊維状に織られたものに樹脂を含浸させたものを使用することができる。また、炭素繊維はPAN系(引張弾性率:約230GPa)のものよりピッチ系(引張弾性率:約900GPa)のものを用いるほうが引張弾性率が高く、ブロックから炭素繊維が剥離しにくくなるので好ましい。
【0049】
また、使用する樹脂としては熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂も使用することができる。熱硬化性樹脂としてはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂等を挙げることができ、熱可塑性樹脂としてはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂等を挙げることができる。通常は、耐熱性や強度、耐摩耗性等の観点からフェノール樹脂、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0050】
成形方法としては、型に繊維を敷いて硬化剤を混合した樹脂を予め含浸させておき、加熱して半硬化させた状態のプリプレグとする。該プリプレグを必要な厚みになるまで積層し、焼き固めるといった方法で板状態が成形され、次いでブロックの形状に打ち抜くことによってブロック6を成形することができる。
【0051】
センターベルト4、5のエラストマーとして使用されるものは、クロロプレンゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、水素化ニトリルゴムなどの単一材またはこれらを適宜ブレンドしたゴムあるいはポリウレタンゴム等が挙げられる。そして、心線5としてはポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、スチールワイヤ等から選ばれたロープが用いられる。また、ベルトの上下面にはカバー帆布を設けてもよい。カバー帆布の素材としてはポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維等を挙げることができる。
【0052】
センターベルト4、5の上下面には、ブロック6の上ビーム9および下ビーム10を挟持して係止固定するためのブロック保持部19、20が形成されているが、図4で説明するようにブロック保持部19、20の高さa、bは、ブロック6の上下ビーム9、10の高さc、dのそれぞれ40〜100%の範囲内で設定することが好ましい。40%未満であるとブロック6の保持が不十分で、ブロック6のセンターベルト4、5に対する動きが大きくなり、動力伝達効率が低下したり、場合によってはブロック保持部19、20が破損してブロック6がベルトから外れたりするといった問題があり好ましくない。100%を超えるとベルト屈曲時に隣り合うベルト保持部同士が干渉したり、ブロック6に挟まれてベルト保持部19、20が疲労し亀裂が生じたりするので好ましくない。
【0053】
また、ブロック保持部19、20の厚みeはブロック6の厚みfの30〜100%の範囲内であることが好ましい。30%未満であるとブロック6同士の間隔が狭くなりすぎてベルトが屈曲する際に前後のブロック同士が干渉してしまい屈曲を妨げることになるので好ましくない。100%を超えるとベルト全周に取り付けることができるブロック6の個数が少なくなりすぎて、耐側圧性が低下するなどベルトの耐久性への影響が大きくなるので好ましくない。
【0054】
ブロック6を装着していない状態での隣り合うブロック保持部19、20同士の間隔はブロック6の厚みfの60〜95%の範囲で設定することが好ましい。95%を超えるとであると、ブロック6の保持が十分ではなく、やはりブロック6のセンターベルト4、5に対する動きが大きくなり、動力伝達効率が低下したり、場合によってはブロック保持部19、20が破損してブロック6がベルトから外れたりするといった問題があり好ましくない。60%未満であるとブロック6の装着が困難になることや装着した場合でもブロック保持部14、15のブロック6による圧縮が大きくなりすぎて、ブロック保持部19、20の変形による物性の低下が大きくなるので好ましくない。
【実施例】
【0055】
次に本発明の実施例となるベルトと本発明に含まれない比較例のベルトを作成し、それぞれのベルトを同じ条件で走行させて故障が発生するまでの時間を測定するとともに、その故障現象を確認した。
【0056】
(実施例1)
実施例1のベルトとしては、水素化ニトリルゴムからなるベルト本体にアラミド繊維からなる心線を埋設したセンターベルトを用い、表面にはアラミド繊維をベルト長手方向の緯糸とし、経糸をポリアミド繊維としたカバー帆布を被覆したものを使用した。ブロックとしてはPAN系の炭素繊維にフェノール樹脂を含浸させたプリプレグを、炭素繊維を一方向に配設した状態で積層して硬化させ、炭素繊維がベルトの幅方向になるように切削加工でブロックの形状としたものを使用した。
【0057】
このベルトを用いて、表1に示す走行条件で走行させて故障が発生するまでの時間を測定するとともに、故障現象観察した。その結果を表2に示す。
【0058】
(実施例2)
実施例2は、ブロックとしてピッチ系の炭素繊維にフェノール樹脂を含浸させたプリプレグを、炭素繊維を一方向に配設した状態で積層して硬化させ、炭素繊維がベルトの幅方向になるように切削加工でブロックの形状としたものを使用した以外は、実施例1とまったく同様のベルトとした。
【0059】
このベルトを用いて、表1に示す走行条件で走行させて故障が発生するまでの時間を測定するとともに、故障現象観察した。その結果を表2に示す。
【0060】
(実施例3)
実施例3は、ブロックとしてPAN系の炭素繊維にフェノール樹脂を含浸させたプリプレグを、円筒状に巻きつけた後にブロックの大きさに合わせて断面矩形状に型付けして直方体とし、硬化させ、切削加工でブロックの形状とし、炭素繊維がブロックの形状に合わせて周回状に配置されたブロックを使用した以外は、実施例1とまったく同様のベルトとした。
【0061】
このベルトを用いて、表1に示す走行条件で走行させて故障が発生するまでの時間を測定するとともに、故障現象観察した。その結果を表2に示す。
【0062】
(実施例4)
実施例4は、ブロックとしてPAN系の炭素繊維にフェノール樹脂を含浸させたプリプレグを、ブロック側面に合わせた角度をつけた円錐状に巻きつけた後にブロックの大きさに合わせて断面矩形状に型付けして直方体とし、硬化させ、切削加工でブロックの形状とし、炭素繊維がブロックの形状に合わせて周回状に配置されたブロックを使用した以外は、実施例1とまったく同様のベルトとした。
【0063】
このベルトを用いて、表1に示す走行条件で走行させて故障が発生するまでの時間を測定するとともに、故障現象観察した。その結果を表2に示す。
【0064】
(比較例)
比較例のベルトとしては、実施例と同様に水素化ニトリルゴムからなりアラミド繊維からなる心線を埋設したセンターベルトを使用し、表面にはアラミド繊維をベルト長手方向の緯糸とし、経糸をポリアミド繊維としたカバー帆布を被覆したものを使用した。ブロックとしては単一の樹脂組成物で構成しており、その配合はフェノール樹脂に対して炭素短繊維を30質量%配合するとともにチタン酸カリウムウィスカを10質量%配合した樹脂組成物を用いた。
【0065】
このベルトを用いて、表1に示す走行条件で走行させて故障が発生するまでの時間を測定するとともに故障現象を観察した。その結果を表2に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
表2の結果からわかるように、実施例1のベルトは比較例に対して長時間の走行が可能であり、ブロックとして炭素繊維強化プラスチックを使用することによるブロックの摩耗の防止や耐側圧性向上の効果が認められた。実施例2では、2万kmで打ち切りとなっているが実施例1と比べて更に寿命が延びる結果となっており、ピッチ系の炭素繊維を用いることによってブロックの剥離を抑制することができることがわかった。
【0069】
実施例3においても実施例1よりも寿命は延びており、ブロックの側面の炭素繊維をベルト長手方向に配置することで炭素繊維の剥離の問題を抑えることができることがわかった。また、実施例4は実施例3と比べて下ビームの炭素繊維の配向をベルト長手方向にした層の厚みを多くしたものであるが、2万kmで打ち切りとなっており、下ビームの炭素繊維の剥離を防止することができ、より寿命が延びる結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
自動車や自動二輪車、農業機械の無段変速装置など、プーリの有効径が変化し大きなトルクを伝達するようなベルトの製造に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】高負荷伝動ベルトの斜視図である。
【図2】高負荷伝動ベルトの側断面図である。
【図3】炭素繊維を幅方向に配向したブロックの作成過程を示す概要図である。
【図4】炭素繊維を巻きつけ作成するブロックの作成過程を示す概要図である。
【図5】炭素繊維を角度をつけて巻きつけ作成するブロックの作成過程を示す概要図である。
【図6】高負荷伝動ベルトの一例を示す斜視図である。
【図7】ブロックの斜視図である。
【図8】図6に示す高負荷伝動ベルトの側断面図である。
【図9】高負荷伝動ベルトの別の例を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 高負荷伝動ベルト
2 エラストマー
3 心線
4 センターベルト
5 センターベルト
6 ブロック
7 ブロック側面
8 ブロック側面
9 上ビーム
10 下ビーム
11 ピラー
12 溝
13 溝
14 上面
15 下面
16 凹条部
17 凹条部
18 凸条部
19 ブロック保持部
20 ブロック保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センターベルトと、該センターベルトの長手方向に沿って所定ピッチで設けた複数のブロックとからなる高負荷伝動ベルトにおいて、ブロックは炭素繊維を一方向に並べたもの、もしくは炭素繊維の織布に樹脂を含浸させたプリプレグを積層した炭素繊維強化プラスチックからなることを特徴とする高負荷伝動ベルト。
【請求項2】
含浸させる樹脂がエポキシ樹脂もしくはフェノール樹脂からなる請求項2記載の高負荷伝動ベルト。
【請求項3】
炭素繊維はピッチ系のものを使用してなる請求項1〜2記載の高負荷伝動ベルト。
【請求項4】
ブロックを構成する炭素繊維強化プラスチック中の炭素繊維はベルト幅方向に配向してなる請求項1〜3のいずれかに記載の高負荷伝動ベルト。
【請求項5】
ブロックの側面においては炭素繊維がベルト長手方向に配向した部分を有する請求項4記載の高負荷伝動ベルト。
【請求項6】
炭素繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを矩形状に巻いたものを硬化させ、ブロック形状に切削したものである請求項5記載の高負荷伝動ベルト。
【請求項7】
センターベルトは上下両面に所定ピッチでブロック保持部を形成してなり、該ブロック保持部の間にブロックを挟持配置してなる請求項1〜6のいずれかに記載の高負荷伝動ベルト。
【請求項8】
ブロックは、上ビームと下ビームと、上下ビームを中央で連結するセンターピラーからなり、前記上下ビームとセンターピラーとで囲まれブロック左右両側面に開口する一対のベルト装着部を有し、一対のセンターベルトを該ベルト装着部に装着することでセンターベルトのブロック保持部の間にブロックを挟持配置してなる請求項7記載の高負荷伝動ベルト。
【請求項9】
ブロック保持部の高さは上下ビームの高さの40〜100%を有する請求項8記載の高負荷伝動ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−133551(P2010−133551A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46096(P2009−46096)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】