高転換サウナ型原子炉
【課題】
炉心入口冷却材が未飽和水である従来の沸騰水型原子炉を大きくは変えずに、Puを安全に効率よく燃焼させる。
【解決手段】
炉心下部プレナム(8)に水面を形成させることにより炉心入口冷却材を湿り蒸気にして、固体減速材付帯核燃料集合体導入によりPuを安全に効率よく燃焼させる。
炉心入口冷却材が未飽和水である従来の沸騰水型原子炉を大きくは変えずに、Puを安全に効率よく燃焼させる。
【解決手段】
炉心下部プレナム(8)に水面を形成させることにより炉心入口冷却材を湿り蒸気にして、固体減速材付帯核燃料集合体導入によりPuを安全に効率よく燃焼させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸騰水型原子炉に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉は、核燃料で発生した熱を原子炉内に液体で入ってきた水に伝達し、水を沸騰させ飽和蒸気を発生する。飽和蒸気は原子炉から直接タービンに導かれ、タービンで回転する発電機により電気を発生する。
現行の沸騰水型原子炉の炉心は、正方格子状に配列してなる十字形の制御棒(22)に隣接させて核燃料を内包する核燃料集合体を装荷してなる。
出力運転中の炉心空間は286℃の液体と蒸気が混在した二相流となっている。炉心圧力は約7MPaで、炉心の下から約280℃の冷却材が未飽和水で入る。
図1は従来の沸騰水型原子炉の圧力容器(10)内の概観図を示す(非特許文献1)。
タービンで仕事を終えた低温低圧の蒸気は水に変換される。当該水は高温高圧の未飽和水にされ、給水配管(17)を通って圧力容器(10)壁とシュラウド(18)との間のシュラウド外冷却材空間(16)の水に混じり込む。水はポンプモータ(24)により回転する冷却材循環ポンプ(25)で加速されてシュラウド(18)の下端から矢印方向に炉心下部プレナム(8)に入る。
炉心下部プレナム(8)は、圧力容器(10)の底部と炉心支持板(9)とで囲まれ高温高圧の未飽和水で満たされている。
炉心支持板(9)は、核燃料棒を束ねた核燃料集合体(30)を支えている。
炉心下部プレナム(8)に入った未飽和水は核燃料集合体(30)下端に入り、核燃料集合体(30)の核燃料棒から熱を吸収して液体の水の一部が飽和蒸気になる。液体である飽和水と気体である飽和蒸気が共存して流れている二相流となって上部に流れる。二相流断面において飽和蒸気が占める割合をボイド率と呼んでいる。定常出力運転時でのボイド率は核燃料集合体(30)の下部ではゼロであり、中程では約45%の中ボイド率になっており、上部では約70%の高ボイド率になっている。炉心平均ボイド率は約45%である。
核燃料集合体(30)の上部から流出した飽和蒸気を非常に多く含有した点線矢印方向の二相流と漏洩冷却材通路(20)からの矢印方向の飽和水とが混合領域(19)で混合した二相流は気水分離器(15)の中に入り旋回させられることにより、開き矢印方向に上昇する飽和蒸気と矢印方向に下に落ちる水に分離される。上昇した飽和蒸気は水分を若干含んでいるため蒸気乾燥器(12)により、開き矢印方向に上昇する乾燥した飽和蒸気と矢印方向に下に落ちる飽和水に分離される。乾燥した飽和蒸気は蒸気ドーム(11)から、圧力容器(10)壁と蒸気乾燥器胴部(13)の間を通って飽和蒸気配管(14)からタービンへ出て行く。
蒸気乾燥器(12)内での飽和蒸気は破線で示した。なお、二相流から分離した飽和蒸気の飽和蒸気温度は、運転圧力約70気圧での飽和蒸気温度約286℃である。
原子炉出力の制御は、制御棒駆動装置(23)により上下に動く十字形の制御棒(22)により達成する。
図2は核燃料物質を内包する従来の核燃料集合体(30)と従来の十字形の制御棒(22)の概観斜視図である。核燃料集合体(30)は、核燃料物質を内封している円柱形状の核燃料棒(31)を多数本正方格子状(まれに三角格子状)に配列しそれ等の下部を燃料下部タイプレート(40)に差込み、ジルコニウム合金製またはステンレス製の板を正方形の枠に成型したチャンネルボックス(35)で前記核燃料棒(31)の束を4面で覆っている。
核燃料集合体(30)は燃料集合体支持金具(50)によって支えられている。核燃料棒(31)の間は主冷却材通路(36)となっており熱を原子炉の外に取り出すための冷却水が、下から上に流れるに従い燃料棒から熱を吸収して蒸気になり、蒸気と液体とが混在した二相流となって流れている。
隣接する核燃料集合体(30)の間の漏洩冷却材通路(20)には飽和水が流れている。十字形の制御棒(22)はチャンネルボックス(35)の間を上下に動ける。十字形の制御棒(22)は原子炉出力を制御するための中性子を吸収する性質の強い物質であるハフニウム薄板になっている。十字形の制御棒(22)は、制御棒案内管(26)に納められている制御棒駆動装置(23)によって上下に動く。炉心下部プレナム(8)の未飽和水は、制御棒案内管(26)に開けられている冷却材流入口(99)から燃料集合体支持金具(50)に入り、続いて、核燃料集合体(30)下端に流入する。
燃料集合体支持金具(50)は制御棒案内管(26)及び炉心支持板(9)によって支持されている。
図中矢印は冷却材の主たる流れ方向を示す。
図3は従来の核燃料棒(31)の概観図である。大気圧の約10倍程度のヘリウムを内封する直径約10mm長さ2m~4mの円筒形鞘であるジルコニウム合金製の被覆管(41)と、この被覆管(41)の上下開口端を気密閉塞する上部端栓(42)及び下部端栓(43)と、被覆管(41)内に装填される多数個の核燃料ペレット(44)と、スプリング(45)とから構成されている。直径約8mm長さ約10mmの核燃料ペレット(44)はMOXと呼ばれるウラン(ウラニウムとも呼ぶ)とプルトニウムの混合酸化物を焼結してなる。
かつて、高温耐食性に優れたステンレス製の被覆管(41)があったが、中性子速度が低速の熱中性子をほとんど吸収しないジルコニウムを主体とした合金が開発されたため作られなくなった。近年では、色々な分野で多種多様なステンレスが開発されているから、今後、ステンレス製の被覆管(41)は有望である。特に、高温耐食性に優れたステンレスは中性子速度が高速の高速中性子に対しては中性子を吸収する作用が弱いため、高速中性子雰囲気下での利用が高まると考えられる。
図4は、従来の核燃料集合体(30)と十字形の制御棒(22)とからなる炉心平面の部分図である。
核燃料集合体(30)は正方格子状に配列してなる十字形の制御棒(22)に隣接させて装荷される。
チャンネルボックス(35)枠の中に、核燃料棒(31)は多数本正方格子状に配列されている。
核燃料棒(31)の間は主冷却材通路(36)となっており、二相流が流れている。核燃料棒(31)から発生した熱は二相流に伝達される。核燃料集合体(30)下端から入った未飽和水は飽和水となり、飽和水の1部が蒸気となって二相流となり、核燃料集合体(30)上端に向かって流れ出る。
隣接する核燃料集合体(30)の間の漏洩冷却材通路(20)には、未飽和水が下部から流入し飽和水となって上に流れている。十字形の制御棒(22)は漏洩冷却材通路(20)の中を上下に動ける。
図5は、従来の沸騰水型原子炉の従来の炉心平面を示した図である(非特許文献2)。
ステンレス製の円筒形をしたシュラウド(18)で囲まれている炉心は核燃料を内蔵せる核燃料集合体(30)と中性子吸収体を内蔵する十字形の制御棒(22)とからなる。隣接する核燃料集合体(30)の間は漏洩冷却材通路(20)となっていて飽和水が流れている。
シュラウド(18)の外は圧力容器(10)で覆われている。圧力容器(10)とシュラウド(18)の間のシュラウド外冷却材空間(16)は未飽和水となっている。
原子炉が停止している場合は十字形の制御棒(22)群全部が炉心に挿入されている。原子炉が運転している場合は十字形の制御棒(22)群の大半が炉心から炉心の下に引き抜かれ、炉心には中心部にある数本の十字形の制御棒(22)が挿入されている。一般に、十字形の制御棒(22)が中心部に挿入されているにも関わらず、中性子は炉心から外に漏洩するため炉心の外周部の中性子は少ないから、炉心外周部の核燃料集合体(30)出力は低い。
一般に、十字形の制御棒(22)の周りに装荷する核燃料集合体(30)は、燃焼開始時点では、未燃焼核燃料集合体(記号0)、1サイクル燃焼核燃料集合体(記号1。1サイクル燃焼済み核燃料集合体。燃焼開始から検査や燃料交換のために通常の手順で停止するまでの期間約1年を1サイクルと呼んでいる。)、2サイクル燃焼核燃料集合体(記号2。2サイクル燃焼済み核燃料集合体。)、3サイクル燃焼核燃料集合体(記号3。3サイクル燃焼済み核燃料集合体。)からなる。
1サイクル燃焼後時点では、1サイクル燃焼核燃料集合体、2サイクル燃焼核燃料集合体、3サイクル燃焼核燃料集合体、4サイクル燃焼核燃料集合体となる。
【0003】
核燃料であるウラン(U)やプルトニウム(Pu)の中性子との反応は中性子の速度によって変わり、中性子の速度は減速材である水の量により変わる。したがって、ボイド率の違いは水の量の違いであるから、ボイド率の違いは核燃料と中性子との反応の結果生じる出力に変化をもたらし、逆に出力の変化はボイド率に違いをもたらす。
核燃料は遅い中性子とは激しく反応するため、少ない量の核燃料でも大きな出力を得ることができる。ボイド率が高くなると減速材である水が減る訳であるから、水を冷却材循環ポンプ(25)で加速して、タービンへの飽和蒸気流量の数倍の水を炉心に流入させて相対的にボイド割合が少なくなるようにしている。飽和蒸気とならなかった飽和水は、気水分離器(15)と蒸気乾燥器(12)により飽和蒸気と分離されてシュラウド外冷却材空間(16)の水と混じって再び冷却材循環ポンプ(25)で加速されて核燃料集合体(30)を冷却する。
【非特許文献1】:コロナ社、著者都甲「原子動力」117、120頁。
【非特許文献2】:電力新報社、1969年、資源エネルギー庁「原子力発電便覧」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在稼動中の炉心入口冷却材を未飽和水とする沸騰水型原子炉の炉心は、熱中性子を利用して、高価な濃縮ウラン(例えばウラン235の濃度が約4%の濃縮ウランを使用する。天然ウランはウラン235の濃度が約0.7%。)や再処理費用が高いプルトニウムの使用量を節約している。
被覆管(41)は熱中性子吸収の割合が小さいジルコニウム合金が主体である。
限りあるウランの使用に問題が生じつつあることや使用済燃料から出てきた原爆の原料となり易いプルトニウム(Pu)の蓄積量が顕著になってきたこととあいまって、プルトニウムの有効利用が必要になってきた。
従来の熱中性子によるプルトニウム利用では、熱中性子によっては殆ど核分裂しないが放射線は放出するプルトニウム240(Pu240)やプルトニウム242(Pu242)やアメリシウム(Am)が大量に発生しそれ等の貯蔵管理も問題になる。プルトニウム有効利用に有利である高速中性子を利用したい。ただ、Puを高速中性子で燃焼させようとして富化度(MOX中のプルトニウムの割合)を上げると、実効増倍係数のボイド反応度挙動が正になり易いことが問題になる。
定常出力運転中に冷却材流量低下が生じたような場合に、蒸気ボイド割合が突然増加し中性子速度減速の様子が変わり、臨界状態からのズレの程度を示す量である反応度が変化する。蒸気ボイド割合の変化に伴う反応度の変化をここではボイド反応度挙動と呼ぶ。ボイド反応度挙動が正であると、蒸気ボイド割合が突然増加すると反応度が増加する。負であると、蒸気ボイド割合が突然増加すると反応度が減少する。炉心外への中性子漏洩を考慮する場合は実効増倍係数(keffと表される)のボイド反応度挙動であり、炉心外への中性子漏洩を考慮しない場合は無限増倍係数(kinf表される)のボイド反応度挙動である。
実効増倍係数のボイド反応度挙動= (keff - 1 ) / keff
無限増倍係数のボイド反応度挙動= (kinf - 1 ) / kinf
無限増倍係数のボイド反応度挙動が正であっても、実効増倍係数のボイド反応度挙動が負になることはある。
実効増倍係数のボイド反応度挙動が正であると、核分裂が更に活発になり出力が増加する。出力が増加すると蒸気ボイド量が更に増加する。冷却不足になり燃料ペレットの中心部が溶けることも想定され、放射能が冷却材中に漏れることも想定される。直ちに、周辺住民の安全性が脅かされる訳ではないが好ましいことではない。
現行沸騰水型原子炉の系統設備やシステムはほぼ完成されたものであり安全性も高い。できるだけ現行沸騰水型原子炉の構造を変更しないで高速中性子を利用してPuを効率よく安全に燃焼させたい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
多数本の正方格子状に配列した十字形の制御棒(22)に隣接させて核燃料集合体を装荷してなる炉心を有し炉心入口冷却材が未飽和水である従来の沸騰水型原子炉において、炉心下部プレナム(8)に水面を形成させ水部と湿り蒸気部にし、当該炉心下部プレナム(8)の湿り蒸気部に当該炉心下部プレナム(8)の飽和水よりも高温高圧の未飽和水を給水し、炉心入口冷却材を湿り蒸気とする(図7に概観図を示した)。
高温高圧の未飽和水の給水は、上端閉シュラウド外冷却材空間(116)にしてもよい。
固体減速材貼チャンネルボックス(136)は、ジルコニウム合金またはステンレス製の正方形の枠であるチャンネルボックス(35)に、中性子吸収割合が水よりも小さい低吸収固体減速材製の固体減速材ライナ1(135)を内面または外面または芯に貼り付けてなる。
固体減速材被覆管(141)は、ジルコニウム合金またはステンレス製の円筒形鞘の上下端を密封してなる被覆管(41)の内側に前記低吸収固体減速材製の固体減速材ライナ(147)を内貼りしてなる。
固体減速材貼核燃料棒(131)は、前記固体減速材被覆管(141)に多数個の選択的プルトニム富化度MOX核燃料ペレット(144)を連続堆積内封してなる。
固体減速材棒(132)は、前記被覆管(41)に前記低吸収固体減速材を充填内封してなる。
前記固体減速材貼チャンネルボックス(136)の中に、前記固体減速材貼核燃料棒(131)を多数本正方格子状に配列し、前記固体減速材貼核燃料棒(131)の1部を前記固体減速材棒(132)で置き換え、それ等の下部を燃料下部タイプレート(40)に差込み束ねてなる固体減速材付帯核燃料集合体(130)とする(図8、図10に概観図を示した)。
選択的プルトニム富化度MOX核燃料ペレット(144)は、炉心入口冷却材が湿り蒸気である本発明の高転換サウナ型原子炉の定常出力運転時での炉心平均ボイド率(95%)において、本発明の固体減速材付帯核燃料集合体(130)の未燃焼での実効増倍係数が1.0以上であり、かつ固体減速材付帯核燃料集合体(130)の実効増倍係数が燃焼進展に伴い増加し、かつ固体減速材付帯核燃料集合体(130)の実効増倍係数のボイド反応度挙動が燃焼の途中までは負であるように、劣化ウランにPuを含有せしめたMOXとする。
天然ウランから濃縮ウランを生成する過程での残り滓である劣化ウランではウラン235の濃度は約0.3%から0.7%未満である(天然ウランはウラン235の濃度が約0.7%)。
固体減速材付帯核燃料集合体(130)の未燃焼での実効増倍係数が1.0未満であることが予想される場合には、MOX中のウランのU235濃度は天然ウランに近い0.699%にすればよい。
劣化ウランにPuを含有したMOX中のPu富化度の目安は9%である(炉心平均ボイド率が95%にもなると炉心外への中性子漏洩効果が顕著になり実効増倍係数のボイド反応度挙動を負にし易くなる。しかし、Puの富化度が9%を超えると実効増倍係数のボイド反応度挙動が正になる恐れがあり、安全性上好ましくない(図9に概観図を示した)。
MOX中のウランは、処分に困っていて安い劣化ウラン(場合によっては処分費を貰える)とする。
多数本の正方格子状に配列してなる十字形の制御棒(22)に隣接させて前記固体減速材付帯核燃料集合体(130)を装荷してなる炉心(図11に概観図を示した)を有し炉心入口冷却材が湿り蒸気であることを特徴とする高転換サウナ型原子炉とする。
サウナ風呂の雰囲気は不透明な霧状の湿り蒸気である。飽和蒸気は透明である。
伸長シュラウド(118)に中性子吸収体を貼り付けるか含有させておけば、圧力容器(10)外への中性子漏洩を減少させることができる。
【0006】
当該固体減速材付帯核燃料集合体(130)の炉心への装荷の仕方は以下のようにする(後述の炉心平面図を図11に示した)。
炉心中央領域の十字形の制御棒(22)に隣接せる固体減速材付帯核燃料集合体(130)は、0サイクル未燃焼及び、1サイクル燃焼済み及び、2サイクル燃焼済み及び、3サイクル燃焼済みとする。
最外周領域の十字形の制御棒(22)に隣接せる固体減速材付帯核燃料集合体(130)は、炉心中央領域の十字形の制御棒(22)に隣接させて4サイクル燃焼済みとした固体減速材付帯核燃料集合体(130)及び、最外周領域の十字形の制御棒(22)に隣接させて引き続き燃焼した固体減速材付帯核燃料集合体(130)とする。
炉心外周領域では炉心外への中性子漏洩が多いから当該領域に装荷された燃焼済み固体減速材付帯核燃料集合体(130)出力は低い。したがって、実効増倍係数のボイド反応度挙動が正であっても出力の正味増加は小さい。
なお、炉心外への中性子漏洩が多いということは、実効増倍係数のボイド反応度挙動を負にする傾向も大きいということでもある。
【0007】
多数本の正方格子状に配列した十字形の制御棒(22)に隣接させて核燃料集合体を装荷してなる炉心を有し炉心入口冷却材を未飽和水とする沸騰水型原子炉には以下のような固体減速材付帯核燃料集合体改(230)を装荷する。
固体減速材貼チャンネルボックス(136)は、ジルコニウム合金またはステンレス製の正方形の枠であるチャンネルボックス(35)に、中性子吸収割合が水よりも小さい低吸収固体減速材製の固体減速材ライナ1(135)を内面または外面または芯に貼り付けてなる。
固体減速材被覆管(141)は、ジルコニウム合金またはステンレス製の円筒形鞘の上下端を密封してなる被覆管(41)の内側に固体減速材ライナ(147)を内貼りしてなる。
固体減速材貼核燃料棒(131)は、前記固体減速材被覆管(141)に多数個の選択的プルトニム富化度MOX核燃料ペレット(144)を連続堆積内封してなる。
固体減速材棒(132)は、前記被覆管(41)に前記低吸収固体減速材を充填内封してなる。
前記固体減速材貼チャンネルボックス(136)の中に、前記固体減速材貼核燃料棒(131)を多数本正方格子状に配列し、前記固体減速材貼核燃料棒(131)の1部を前記固体減速材棒(132)で置き換え、それ等の下部を燃料下部タイプレート(40)に差込み束ねてなる固体減速材付帯核燃料集合体改(230)とする。
選択的プルトニム富化度MOX核燃料ペレット(144)は、炉心入口冷却材を未飽和水とする沸騰水型原子炉の定常出力運転時での炉心平均ボイド率(45%)において、本発明の固体減速材付帯核燃料集合体改(230)の未燃焼での実効増倍係数が1.0以上であり、かつ固体減速材付帯核燃料集合体改(230)の無限増倍係数のボイド反応度挙動が燃焼の途中までは負であるように、濃縮ウランにPuを含有せしめたMOXとする。
濃縮ウランは、U235の濃度が天然ウラン中でのU235の濃度よりも濃いウランである。天然ウランからU235を濃縮する。
濃縮ウランにPuを含有せしめたMOX中のPu富化度の目安は8%である(炉心平均ボイド率が45%程度では炉心外への中性子漏洩効果はそれほど顕著ではなく、実効増倍係数のボイド反応度挙動を大きく負にはしない。そこで、MOX中のPuの富化度を8%以下にして炉心外への中性子漏洩を考慮しない無限増倍係数のボイド反応度挙動を負にする。
MOX中のウランは、濃縮ウランとする。炉心平均ボイド率が45%程度では転換率が低いため、実効増倍係数は燃焼進展に伴い減少する。したがって、定常出力運転を維持するためには未燃焼時に核分裂性物質を多く含有させておく必要がある。そこで、MOX中のウランを2%程度の濃縮ウランにする必要がある。
多数本の正方格子状に配列してなる十字形の制御棒(22)に隣接させて前記固体減速材付帯核燃料集合体改(230)を装荷したことを特徴とした炉心入口冷却材が未飽和水である沸騰水型原子炉の炉心とする。
【0008】
原子力発電技術は信頼性及び安全性を重んじ、実績のある保守的な技術が重要視される。したがって、新技術を導入する場合、当該新技術を現在運転している原子力発電所に適用できるように改造して、現在運転している原子炉に導入することからはじめることが多い。
それが固体減速材付帯核燃料集合体改(230)である。
MOX核燃料ペレットのプルトニウム富化度が8%以下なら無限増倍係数のボイド反応度挙動は負になる傾向がある。ただし、Puを効率よく燃焼させるべくボイド率を高くすると実効増倍係数は1.0以下になってしまう。そこで、中性子吸収割合が水よりも小さい低吸収固体減速材を導入すれば無限増倍係数のボイド反応度挙動は負でかつ実効増倍係数は1.0以上にすることができる。
プルトニウムの富化度が8%では、大きな燃焼度まで核燃料集合体を燃焼させることが期待できない。そこで、プルトニウムとウランの混合酸化物であるMOXとして、ウラン235の濃度が天然ウランよりも高い濃縮ウランとする。
選択的プルトニウム富化度MOX核燃料ペレット(144)のMOX中のPu富化度を上中下高さ一様に8%にすると、炉心外への中性子漏洩が考慮しない無限増倍係数のボイド反応度挙動は負になり易い。
中性子割合が小さい上下部では選択的プルトニウム富化度MOX核燃料ペレット(144)のMOX中の濃縮ウランを2%程度にして出力を大きくすると共に定常出力運転を維持できるようにする。中性子割合が大きい中間部では選択的プルトニウム富化度MOX核燃料ペレット(144)のMOX中の濃縮ウランを0.7%程度の天然ウランにして出力が過大にならないようにすると共に定常出力運転を維持できるようにする。
漏洩冷却材通路(20)の水による大きな熱中性子割合に曝され大きな出力になり易い4隅の固体減速材貼核燃料棒(131)は、選択的プルトニウム富化度MOX核燃料ペレット(144)のMOX中のプルトニウムの富化度は、高さ平均のプルトニウムの富化度よりも低くする。Pu富化度が7%以下で、MOX中のウランを劣化ウランとすれば、出力が過大になるのを防ぐことができる。
【0009】
図6に実効増倍係数の燃焼度挙動とボイド反応度挙動の計算例を示した。核燃料棒(被覆管直径1.4cm、被覆管厚さ0.1cm、隣接する核燃料棒との最小間隙0.1cm、U235濃度0.3%の劣化ウランにPuを9%混合したMOXの核燃料棒を正方格子状に無限に配列。中性子漏洩の影響は炉心等価直径6.7m、炉心高さ3mとする。)の実効増倍係数の燃焼挙動の数値計算例である。実線は定常運転中の蒸気ボイド95%での核燃料棒の実効増倍係数の燃焼挙動である。*印は、実線の燃焼度点で蒸気ボイドのみを100%にした実効増倍係数のボイド反応度挙動を示した図である。燃焼度(MWd/t)を示す横軸の目盛値、例えば5.00E+3は、5000MWd/tを示す。
上段図の従来のジルコニウム合金被覆管のみでは、燃焼度ゼロでの実効増倍係数が臨界(1.0)以下で、近傍でも1.0を大きくは上回らない。燃焼度が2.0E+4MWd/t以上になると実効増倍係数のボイド反応度挙動は正になる。したがって、従来の沸騰水型原子炉にMOXを導入する場合には、Puを8%未満にし濃縮ウランを混合したMOXであろう。但し、取出燃焼度は低下する。
一方、下段図の中性子吸収割合が水よりも小さい低吸収固体減速材としてベリリウムの固体減速材ライナ(147)を1mm貼り付けた固体減速材貼被覆管(131)では、燃焼度ゼロでの実効増倍係数が臨界(1.0)以上で、近傍でも1.0を大きく上回る。燃焼度が3.0E+4MWd/t近辺でも実効増倍係数のボイド反応度挙動は負である。しかも、Puを効率良く燃焼させることが出来る。
燃焼度が進むにつれて実効増倍係数が大きくなっているということは、核分裂性物質(プルトニウム239(Pu239)やプルトニウム241(Pu241))が増加していることを意味する。転換率(原子炉の中で核分裂性物質が1個消費されるごとに、ウラン238 (U238)のような燃料親物質が中性子を吸収して新しく転換されて生じるPu239のような核分裂性物質の数)が高い。
ボイドが急に増加すると熱中性子割合が少なくなり、高速中性子割合が多くなる。原子炉は有限の大きさを持つから、液体の水やステンレスのような構造材との衝突が減って中性子は原子炉外に漏洩し易くなる。したがって、実効増倍係数のボイド反応度挙動は負になる。
【0010】
水が十分あって熱中性子割合が高い従来の沸騰水型原子炉では、Pu富化度の低いMOXを利用している。ボイドが急に増加して熱中性子割合が少なくなるとPu239による核分裂反応が減少し無限増倍係数のボイド反応度挙動は負になる。なお、Pu富化度が低いということは、中速中性子(熱中性子よりもやや速度が速い)に対して大きな吸収作用を持っているウラン238(U238)がMOX中に大きな割合(約90%)を占められるということである。U238は、中速中性子(熱中性子よりもやや速度が速い)に対して大きな吸収作用を持っている。ボイドが急に増加して熱中性子割合が少なくなり中速中性子が増加しても、中速中性子はU238に吸収されるから無限増倍係数のボイド反応度挙動は負になり易い。
本発明の高転換サウナ型原子炉では、定常運転が95%程度の高いボイド状態であるから水が少ない。したがって、中性子の減速と吸収作用が少ない。そこに、低吸収固体減速材を導入したから、中性子の減速は低吸収固体減速材の寄与が大きい。水による中性子吸収が少なくかつ熱中性子割合も比較的多いことは、核分裂し易いPu239を減らせるからPu富化度を低くできる。Pu富化度の比較的低いMOXを利用できるから、従来の沸騰水型原子炉に近づいてボイドが急に増加しても無限増倍係数のボイド反応度挙動は負になる傾向があると考えられる。
Pu富化度が低いということは熱中性子吸収割合の大きいMOX中のPuの中のPu240やPu242も少ないということでもある。Pu240やPu242は、速度の遅い熱中性子に対しては、吸収する性質が非常に強いが核分裂を起こさない。一方、高速中性子に対しては、吸収する性質が小さいが核分裂をする。Pu240やPu242の量が少ないから、ボイドが急に増加して熱中性子割合が減少しても、無限増倍係数のボイド反応度挙動への寄与は小さい。Pu富化度を上げると、Pu240やPu242による無限増倍係数のボイド反応度挙動を正にする性質が利いてきて実効増倍係数のボイド反応度挙動でも正になってしまう。したがって、Pu富化度に上限を設ける必要がある。それが9%である。
低吸収固体減速材には、ベリリウム(Be)、炭素(C)、リチウム7(Li7。Li6を含む天然LiからLi7を濃縮。Li6は可燃性毒物)、硼素11(B11。B10を含む天然BからB11を濃縮。B10は可燃性毒物)がある。可燃性毒物は、燃焼が進むと中性子吸収効果が大幅に減少するから、燃焼後期には反応度への影響がなくなる。
重水素化ジルコニウム(ZrD)中の重水素(D)は中性子吸収割合が水よりも小さい低吸収固体減速材ではあるが、高温になるとZrとDとに分離する恐れがあるから導入し難い。
また、ZrDの代わりに、中性子吸収割合が水程度である軽水素化ジルコニウム(ZrH)を導入すると、H(水素)の中性子吸収作用によりPu富化度を上げざるを得ないから実効増倍係数のボイド反応度挙動は正になり易い。なお、ZrはHよりも中性子吸収作用が大きい。
【発明の効果】
【0011】
有り余って処分に困っているプルトニウムを、有効に燃焼させて在庫処分をすることができる。しかも、電気料金を通して儲けることができる。
固体減速材付帯核燃料集合体(130)なら、高転換サウナ型原子炉とすることができる。ウラン鉱石(今まで貯まっていた劣化ウランを使う)や濃縮費用から無縁になり、強いてはエネルギー問題から解放される。炭酸ガスを殆ど出さないから環境問題からも解放される。
固体減速材付帯核燃料集合体改(230)であるなら、Pu富化度をかなり低く出来るため無限増倍係数のボイド反応度挙動は負であって安全性に問題なく、現行沸騰水型原子炉に導入できる。すぐに、金儲けしながらプルトニウムが減らせる。更に、ウラン鉱石や濃縮費用の高騰を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
プルトニウムが効率よく燃焼できて、かつ、実効増倍係数のボイド反応度挙動が負で安全性の高い原子炉が提供できた。
【実施例1】
【0013】
図7は、本発明の高転換サウナ型原子炉の圧力容器(10)内の概観図を示す。
炉心下部プレナム(8)には水面を形成させ、水面下は高温高圧の未飽和水であり、水面から炉心支持板(9)までは湿り蒸気で満たされている。
給水は、炉心下部プレナム(8)内の飽和水よりも高温高圧の未飽和水または過熱水であって、高温高圧水配管(117)により直接炉心下部プレナム(8)または上端閉シュラウド外冷却材空間(116)に注入される。図7では、直接炉心下部プレナム(8)に注入される。
給水は、圧力容器(10)の外部に敷設したポンプモータにより回転するポンプで加速される。加熱は、電熱器または蒸気混合領域(119)から蒸気配管(14)を通ってタービンへ向かって出る蒸気で実施する。
高温高圧水配管(117)は、圧力容器(10)内面と伸長シュラウド(118)との間の湿り蒸気が充満する上端閉シュラウド外冷却材空間(116)を通って炉心下部プレナム(8)に達する。
上端閉シュラウド外冷却材空間(116)は、従来のシュラウド外冷却材空間(16)の上端を閉じたものである。蒸気ドーム(11)の乾いた蒸気と上端閉シュラウド外冷却材空間(116)の湿った蒸気とが混ざらないようにしてある。
炉心下部プレナム(8)に入った高温高圧未飽和水は、減圧されて湿り蒸気になる。
固体減速材付帯核燃料集合体(130)下端から入った湿り蒸気は、固体減速材貼核燃料棒(131)から熱を吸収して湿り蒸気の液体の水が飽和蒸気になる。ボイド率は固体減速材付帯核燃料集合体(130)の下部高さでも90%程度であり、中程高さでは約95%になっており、上部高さでは約100%の飽和蒸気または過熱蒸気になっている。過熱蒸気は、炉心内の飽和蒸気よりも高温の蒸気である。原子炉内は、謂わば、サウナ風呂状態になっている。
固体減速材付帯核燃料集合体(130)上端から出た蒸気は漏洩冷却材通路(20)の湿り蒸気と混合し、蒸気混合領域(119)を形成する。液体分は殆どないから、気水分離器(15)及び蒸気乾燥器(12)は不要になる。その代わり、圧力容器(10)の内面に中性子吸収材加熱体(120)を貼り付けて中性子を吸収し中性子が外に漏洩するのを妨げる。中性子吸収材加熱体(120)は、中性子を吸収すると発熱する場合が多いから蒸気温度を高める効果もある。中性子吸収材にはハフニウムや炭化硼素(B4C)がある。
蒸気乾燥器(12)は不要になるから、蒸気乾燥器胴部(13)も不要になる。その代わり、シュラウドを上方向に伸長させて伸長シュラウド(118)とする。伸長シュラウド(118)壁面にも、中性子吸収材加熱体(120)を貼り付けると中性子吸収効果が向上する。蒸気温度を高める効果もある。
【0014】
図8は本発明の固体減速材付帯核燃料集合体(130)の概観斜視図である。
固体減速材付帯核燃料集合体(130)は、多数本の後述の図9に示した固体減速材貼核燃料棒(131)を正方格子状に配列しこの1部を固体減速材棒(132)に置き換えて、それ等の下部を燃料下部タイプレート(40)に差込み、固体減速材貼チャンネルボックス(136)の中に固体減速材貼核燃料棒(131)及び固体減速材棒(132)の束を4面で覆ってなる。
隣接する固体減速材貼核燃料棒(131)の間隙は0.1cmから0.13cmとする。
従来の核燃料集合体(30)同様に、固体減速材付帯核燃料集合体(130)も炉心支持板(9)と燃料集合体支持金具(50)によって支えられている。
炉心下部プレナム(8)の湿り蒸気は、制御棒案内管(26)に開けられている冷却材流入口(99)から燃料集合体支持金具(50)に入り、続いて、固体減速材付帯核燃料集合体(130)に流入する。
主冷却材通路(36)には固体減速材貼核燃料棒(131)で発生した熱を原子炉の外に取り出すための湿り蒸気が下から上に流れ、上に流れるに従い核燃料棒から熱を吸収して飽和蒸気になり、更には過熱蒸気となって流れる。
固体減速材貼チャンネルボックス(136)の間の漏洩冷却材通路(20)には湿り蒸気が流れている。
十字形の制御棒(22)は、漏洩冷却材通路(20)を上下に動ける。十字形の制御棒(22)は制御棒案内管(26)に納められている制御棒駆動装置(23)によって上下に動く。
制御棒案内管(26)は燃料集合体支持金具(50)を支持もしている。
図中矢印は冷却材の主たる流れ方向を示す。
【0015】
図9は本発明の固体減速材貼核燃料棒(131)の概観図である。大気圧の約10倍程度のヘリウムを内封する直径約14mm長さ3.6mの円筒形鞘であるジルコニウム合金製またはステンレスの管からなる被覆管(41)内に低吸収固体減速材製の固体減速材ライナ(147)を施した固体減速材貼被覆管(141)と、固体減速材貼被覆管(141)の上下開口端を気密閉塞する上部端栓(42)及び下部端栓(43)と、固体減速材貼被覆管(141)内に連続堆積内封される多数個の選択的プルトニウム富化度MOX核燃料ペレット(144)と、スプリング(45)とから構成されている。
選択的プルトニウム富化度MOX核燃料ペレット(144)は、MOXと呼ばれるウランとプルトニウムの混合酸化物を焼結してなる。プルトニウム富化度は、固体減速材付帯核燃料集合体(130)の未燃焼での実効増倍係数が1.0以上であり、かつ固体減速材付帯核燃料集合体(130)の実効増倍係数が燃焼進展に伴い増加し、かつ固体減速材付帯核燃料集合体(130)の実効増倍係数のボイド反応度挙動が燃焼の途中までは負であるようにプルトニウムの富化度を調節する。
なお、MOX中のウランは劣化ウランとした(天然ウランはウラン235の濃度が約0.7%。天然ウランから濃縮ウランを生成する過程での残り滓である劣化ウランではウラン235の濃度は約0.3%から0.699%である。劣化ウランの使い道は殆ど無く大量に保管されている。)。
固体減速材貼被覆管(141)内に連続堆積内封される選択的プルトニウム富化度MOX核燃料ペレット(144)を上下では9%とし中間を8%にすると、実効増倍係数のボイド反応度挙動は負になり易い。ボイド急増により中性子が増加したとしても固体減速材貼被覆管(141)の上下端へ中性子は漏洩してしまうから、Pu富化度が9%であるなら中性子漏洩を考慮した実効増倍係数の反応度挙動は負とすることができる。一方、中間では漏洩しにくいため、中性子漏洩を考慮しない無限増倍係数のボイド反応度挙動が負である8%とする。
MOX中の劣化ウランのU235濃度は通常0.3%であるが、未燃焼での実効増倍係数が1.0未満であることが予想される場合には、MOX中のウランのU235濃度は天然ウランに近い0.699%にすればよい。
【0016】
低吸収固体減速材であるベリリウムを内貼した外直径14mmの固体減速材貼被覆管(141)を間隙1mmで正方格子状に無限配列し、中性子漏洩は幾何学的バックリングで近似し、湿り蒸気を想定して軽水冷却材のボイド率を95%とし、選択的プルトニウム富化度MOX核燃料ペレット(144)のプルトニウム富化度を9%に調節すると、図6下段図のような実効増倍係数の燃焼度挙動とボイド反応度挙動が得られる。
大きさが有限で中性子漏洩がある実際の原子炉において、連鎖反応を維持し続けるには実効増倍係数を1.0に保たねばならないから、固体減速材貼核燃料棒(131)の未燃焼での実効増倍係数が1.0以上であれば固体減速材付帯核燃料集合体(130)の未燃焼での実効増倍係数が1.0以上の可能性があり原子炉運転の連続が可能である。
実効増倍係数は燃焼が進むにつれて大きくなっているから固体減速材付帯核燃料集合体(130)の実効増倍係数も燃焼が進むにつれて大きくなり、原子炉運転を続けても連鎖反応を維持することができる。
定常運転を実施するために原子炉を臨界に保つには、制御棒を挿入すればよい。
燃焼の途中で、何らかの事情(例えば、冷却材流量の低下)で軽水冷却材のボイド率が100%になったとしても固体減速材貼核燃料棒(131)の実効増倍係数は小さくなるから、固体減速材付帯核燃料集合体(130)の実効増倍係数も小さくなると考えられ原子炉出力は低下する。
固体減速材付帯核燃料集合体(130)を構成する固体減速材貼チャンネルボックス(136)は、中性子吸収割合が小さいジルコニウム合金製またはステンレス及び、中性子吸収割合が水よりも小さい低吸収固体減速材からなるから、固体減速材付帯核燃料集合体(130)の実効増倍係数は固体減速材貼核燃料棒(131)の値でほぼ決まってしまう。
固体減速材貼チャンネルボックス(136)及び固体減速材棒(132)は、中性子吸収割合が水よりも小さい低吸収固体減速材を含有するから、固体減速材貼核燃料棒(131)での低吸収固体減速材量が不足である場合の補助となる。
【0017】
図10は、本発明の固体減速材付帯核燃料集合体(130)と十字形の制御棒(22)とからなる炉心平面の部分図である。
固体減速材付帯核燃料集合体(130)は、ジルコニウム合金製またはステンレス製の板を正方形の枠に成型したチャンネルボックス(35)に低吸収固体減速製の固体減速材ライナ1(135)を内面または外面または芯に貼り付け成型した固体減速材貼チャンネルボックス(136)で固体減速材貼核燃料棒(131)及び固体減速材棒(132)の束を4面で覆ってなる。本図では、体減速材ライナ1(135)を内面に貼っている。
隣接する固体減速材付帯核燃料集合体(130)の間の漏洩冷却材通路(20)には湿り蒸気が流れている。
固体減速核燃料棒(131)の間の主冷却材通路(36)には蒸気が流れている。
【0018】
図11は、本発明の固体減速材付帯核燃料集合体(130)を装荷した本発明の高転換サウナ型原子炉の炉心平面図である。
核燃料を含む固体減速材付帯核燃料集合体(130)と十字形の制御棒(22)からなる炉心(冷却材を含めて呼ぶこともあるが通常は省略する)は、ステンレス製の円筒形をした伸長シュラウド(118)で囲まれている。隣接する固体減速材付帯核燃料集合体(130)の間は漏洩冷却材通路(20)となっていて、下の高さでは湿り蒸気、中間の高さでは飽和蒸気、上部高さでは過熱蒸気となっている。
圧力容器(10)と伸長シュラウド(118)の間の上端閉シュラウド外冷却材空間(116)は湿り蒸気で満たされている。
伸長シュラウド(118)外周部に前述の中性子吸収材加熱体(120)を貼り付けると中性子吸収効果が向上する。
炉心中央領域では、十字形の制御棒(22)の周りに装荷する固体減速材付帯核燃料集合体(130)は、燃焼開始時点では、燃焼度ゼロの未燃焼核燃料集合体(記号0)、1サイクル核燃料集合体(記号1。1サイクル燃焼済み核燃料集合体。燃焼度5000MWd/t)、2サイクル核燃料集合体(記号2。2サイクル燃焼済み核燃料集合体。燃焼度10000MWd/t)、3サイクル核燃料集合体(記号3。3サイクル燃焼済み核燃料集合体。燃焼度15000MWd/t)からなる。
1サイクル燃焼後にはサイクル数が1増加し、燃焼度は約5000MWd/t増加する。
炉心外周領域は、十字形の制御棒(22)の周りに、炉心中央領域で4サイクル燃焼済み核燃料集合体及び、炉心外周領域で更に1サイクル燃焼されて合計5サイクル燃焼済み核燃料集合体及び、炉心外周領域で続いて2サイクル燃焼されて合計6サイクル燃焼済み核燃料集合体及び、炉心外周領域で3サイクル燃焼されて合計7サイクル燃焼済み核燃料集合体を装荷する。炉心中央領域で4サイクル燃焼済み核燃料集合体が余った場合は、炉心外周領域に装荷してもよい。炉心外周領域は出力が低いから、1サイクル燃焼後には燃焼度は約2500MWd/tしか増加しない。
炉心中央領域では20.0E3MWd/t程度までしか燃焼しないから実効増倍係数のボイド反応度挙動は負である。炉心外周領域では20.0E3MWd/t以上燃焼しているが、炉心外への中性子漏洩が多いいから、出力が低い。したがって、実効増倍係数のボイド反応度挙動が正であっても出力の正味増加は小さい。更に、炉心外への中性子漏洩が多いいことは、実効増倍係数のボイド反応度挙動を負にする傾向になる。
定常運転を実施するために原子炉を臨界に保つには、実効増倍係数のボイド反応度挙動が正の傾向を持つ燃料集合体が隣接している外周部の制御棒を挿入するのが望ましい。
【実施例2】
【0019】
多数本の正方格子状に配列した十字形の制御棒(22)に隣接させて核燃料集合体を装荷してなる炉心を有し炉心入口冷却材を未飽和水とする従来の沸騰水型原子炉においては、
当該固体減速材付帯核燃料集合体(130)を以下のように変更した固体減速材付帯核燃料集合体改(230)を装荷すれば、Puを安全に効率よく燃焼できる。
固体減速材貼チャンネルボックス(136)は、ジルコニウム合金またはステンレス製の正方形の枠であるチャンネルボックス(35)に、中性子吸収割合が水よりも小さい低吸収固体減速材製の固体減速材ライナ1(135)を貼り付けてなる。
固体減速材被覆管(141)は、ジルコニウム合金またはステンレス製の円筒形鞘の上下端を密封してなる被覆管(41)の内側に中性子吸収割合が水よりも小さい低吸収固体減速材製の固体減速材ライナ(147)を内貼りしてなる。
固体減速材貼核燃料棒(131)は、前記固体減速材被覆管(141)に多数個の選択的プルトニム富化度MOX核燃料ペレット(144)を連続堆積内封してなる。
固体減速材棒(132)は、前記被覆管(41)に前記低吸収固体減速材を充填内封してなる。
前記固体減速材貼チャンネルボックス(136)の中に、前記固体減速材貼核燃料棒(131)を多数本正方格子状に配列し、前記固体減速材貼核燃料棒(131)の1部を前記固体減速材棒(132)で置き換え、それ等の下部を燃料下部タイプレート(40)に差込み束ねてなる固体減速材付帯核燃料集合体改(230)とする。
選択的プルトニム富化度MOX核燃料ペレット(144)は、炉心入口冷却材を未飽和水とする従来の沸騰水型原子炉の定常出力運転時での炉心平均ボイド率(45%)において、本発明の固体減速材付帯核燃料集合体改(230)の未燃焼での実効増倍係数が1.0以上であり、かつ固体減速材付帯核燃料集合体改(230)の無限増倍係数のボイド反応度挙動が燃焼の途中までは負であるように、濃縮ウランにPuを含有せしめたMOXとする。2%程度の濃縮ウランにPu富化度を8%としたMOXにする。
選択的プルトニウム富化度MOX核燃料ペレット(144)のMOX中のPu富化度を上中下高さ一様に8%にすると、炉心外への中性子漏洩を考慮しない無限増倍係数のボイド反応度挙動は負になり易い。
中性子割合が小さい上下部では選択的プルトニウム富化度MOX核燃料ペレット(144)のMOX中の濃縮ウランを2%程度にして出力を大きくすると共に定常出力運転を維持できるようにする。中性子割合が大きい中間部では選択的プルトニウム富化度MOX核燃料ペレット(144)のMOX中の濃縮ウランを0.7%程度の天然ウランにして出力が過大にならないようにすると共に定常出力運転を維持できるようにする。
漏洩冷却材通路(20)の水による大きな熱中性子割合に曝され大きな出力になり易い4隅の固体減速材貼核燃料棒(131)は、選択的プルトニウム富化度MOX核燃料ペレット(144)のMOX中のPu富化度が7%以下で、MOX中のウランを劣化ウランとすれば、出力が過大になるのを防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
固体減速材付帯核燃料集合体改(230)なら現行沸騰水型原子炉に装荷し易い。実績を積んでから、固体減速材付帯核燃料集合体(130)を装荷した高転換サウナ型原子炉にする。
プルトニウムの在庫は、単に保管費用の問題だけでなく、諸外国からは潜在的に原爆を大量保管しているとの疑いの目を向けられ、諸外国から目には見えない形で広い分野で妨害を受けることになる。
固体減速材付帯核燃料集合体(130)に装荷されるプルトニウム富化度を9%以下とすれば、原爆に供される心配は相当低いから、諸外国に安心感を与える。再処理から核燃料集合体成型までの工程を諸外国の疑いなくこなせると考えられる。怪しげな国への輸出に際しても諸外国からの裏からの横槍も少ないと考えられる。
太い核燃料棒としたため、燃焼度は大きくはないが燃焼期間は長くなる。1サイクル5000MWd/tとしても期間は1年間である。したがって、定期検査は1年毎に行えばよい。
使用済核燃料中のPu富化度は、新燃料である未燃焼時でのPu富化度よりも高いから、使用済核燃料を再処理して新燃料を製造するには、Puを単独で抽出することなく、使用済核燃料のMOXに劣化ウランまたは天然ウランを希釈材として添加すればよい。Puを単独で抽出しないことは、諸外国からの口出しを防ぐことになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来の沸騰水型原子炉の圧力容器(10)内の概観図。
【図2】従来の沸騰水型原子炉の圧力容器(10)内に装荷せる従来の核燃料集合体(30)の概観斜視図。
【図3】従来の核燃料棒(31)の概観図。
【図4】従来の核燃料集合体(30)と十字形の制御棒(22)とからなる炉心平面の部分図。
【図5】従来の沸騰水型原子炉の従来の炉心平面を示した図である
【図6】実効増倍係数の燃焼度挙動とボイド反応度挙動の計算例。
【図7】本発明の高転換サウナ型原子炉の圧力容器(10)内の概観図。
【図8】本発明の固体減速材付帯核燃料集合体(130)の概観斜視図。
【図9】本発明の固体減速材貼核燃料棒(131)の概観図。
【図10】本発明の固体減速材付帯核燃料集合体(130)と十字形の制御棒(22)とからなる炉心平面の部分図。
【図11】本発明の固体減速材付帯核燃料集合体(130)を装荷した本発明の高転換サウナ型原子炉の炉心平面図。
【符号の説明】
【0022】
10は圧力容器。
8は炉心下部プレナム。
9は炉心支持板。
10は圧力容器。
11は蒸気ドーム。
12は蒸気乾燥器。
13は蒸気乾燥器胴部。
14は飽和蒸気配管。
15は気水分離器。
16はシュラウド外冷却材空間。
17は給水配管。
18はシュラウド。
19は混合領域。
20は漏洩冷却材通路。
22は十字形の制御棒。
23は制御棒駆動装置。
24はポンプモータ。
25は冷却材循環ポンプ。
26は制御棒案内管。
30は核燃料集合体。
31は核燃料棒。
35はチャンネルボックス。
36は主冷却材通路。
40は燃料下部タイプレート。
41は被覆管。
42は上部端栓。
43は下部端栓。
44は核燃料ペレット。
45はスプリング。
50は燃料集合体支持金具。
99は冷却材流入口。
116上端閉シュラウド外冷却材空間。
117は高温高圧水配管。
118は伸長シュラウド。
120は中性子吸収材加熱体。
130は固体減速材付帯核燃料集合体。
131は固体減速材貼核燃料棒。
132は固体減速材棒。
135は固体減速材ライナ1。
136は固体減速材貼チャンネルボックス。
144は選択的プルトニウム富化度MOXペレット。
147は固体減速材ライナ。
230は固体減速材付帯核燃料集合体改。
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸騰水型原子炉に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉は、核燃料で発生した熱を原子炉内に液体で入ってきた水に伝達し、水を沸騰させ飽和蒸気を発生する。飽和蒸気は原子炉から直接タービンに導かれ、タービンで回転する発電機により電気を発生する。
現行の沸騰水型原子炉の炉心は、正方格子状に配列してなる十字形の制御棒(22)に隣接させて核燃料を内包する核燃料集合体を装荷してなる。
出力運転中の炉心空間は286℃の液体と蒸気が混在した二相流となっている。炉心圧力は約7MPaで、炉心の下から約280℃の冷却材が未飽和水で入る。
図1は従来の沸騰水型原子炉の圧力容器(10)内の概観図を示す(非特許文献1)。
タービンで仕事を終えた低温低圧の蒸気は水に変換される。当該水は高温高圧の未飽和水にされ、給水配管(17)を通って圧力容器(10)壁とシュラウド(18)との間のシュラウド外冷却材空間(16)の水に混じり込む。水はポンプモータ(24)により回転する冷却材循環ポンプ(25)で加速されてシュラウド(18)の下端から矢印方向に炉心下部プレナム(8)に入る。
炉心下部プレナム(8)は、圧力容器(10)の底部と炉心支持板(9)とで囲まれ高温高圧の未飽和水で満たされている。
炉心支持板(9)は、核燃料棒を束ねた核燃料集合体(30)を支えている。
炉心下部プレナム(8)に入った未飽和水は核燃料集合体(30)下端に入り、核燃料集合体(30)の核燃料棒から熱を吸収して液体の水の一部が飽和蒸気になる。液体である飽和水と気体である飽和蒸気が共存して流れている二相流となって上部に流れる。二相流断面において飽和蒸気が占める割合をボイド率と呼んでいる。定常出力運転時でのボイド率は核燃料集合体(30)の下部ではゼロであり、中程では約45%の中ボイド率になっており、上部では約70%の高ボイド率になっている。炉心平均ボイド率は約45%である。
核燃料集合体(30)の上部から流出した飽和蒸気を非常に多く含有した点線矢印方向の二相流と漏洩冷却材通路(20)からの矢印方向の飽和水とが混合領域(19)で混合した二相流は気水分離器(15)の中に入り旋回させられることにより、開き矢印方向に上昇する飽和蒸気と矢印方向に下に落ちる水に分離される。上昇した飽和蒸気は水分を若干含んでいるため蒸気乾燥器(12)により、開き矢印方向に上昇する乾燥した飽和蒸気と矢印方向に下に落ちる飽和水に分離される。乾燥した飽和蒸気は蒸気ドーム(11)から、圧力容器(10)壁と蒸気乾燥器胴部(13)の間を通って飽和蒸気配管(14)からタービンへ出て行く。
蒸気乾燥器(12)内での飽和蒸気は破線で示した。なお、二相流から分離した飽和蒸気の飽和蒸気温度は、運転圧力約70気圧での飽和蒸気温度約286℃である。
原子炉出力の制御は、制御棒駆動装置(23)により上下に動く十字形の制御棒(22)により達成する。
図2は核燃料物質を内包する従来の核燃料集合体(30)と従来の十字形の制御棒(22)の概観斜視図である。核燃料集合体(30)は、核燃料物質を内封している円柱形状の核燃料棒(31)を多数本正方格子状(まれに三角格子状)に配列しそれ等の下部を燃料下部タイプレート(40)に差込み、ジルコニウム合金製またはステンレス製の板を正方形の枠に成型したチャンネルボックス(35)で前記核燃料棒(31)の束を4面で覆っている。
核燃料集合体(30)は燃料集合体支持金具(50)によって支えられている。核燃料棒(31)の間は主冷却材通路(36)となっており熱を原子炉の外に取り出すための冷却水が、下から上に流れるに従い燃料棒から熱を吸収して蒸気になり、蒸気と液体とが混在した二相流となって流れている。
隣接する核燃料集合体(30)の間の漏洩冷却材通路(20)には飽和水が流れている。十字形の制御棒(22)はチャンネルボックス(35)の間を上下に動ける。十字形の制御棒(22)は原子炉出力を制御するための中性子を吸収する性質の強い物質であるハフニウム薄板になっている。十字形の制御棒(22)は、制御棒案内管(26)に納められている制御棒駆動装置(23)によって上下に動く。炉心下部プレナム(8)の未飽和水は、制御棒案内管(26)に開けられている冷却材流入口(99)から燃料集合体支持金具(50)に入り、続いて、核燃料集合体(30)下端に流入する。
燃料集合体支持金具(50)は制御棒案内管(26)及び炉心支持板(9)によって支持されている。
図中矢印は冷却材の主たる流れ方向を示す。
図3は従来の核燃料棒(31)の概観図である。大気圧の約10倍程度のヘリウムを内封する直径約10mm長さ2m~4mの円筒形鞘であるジルコニウム合金製の被覆管(41)と、この被覆管(41)の上下開口端を気密閉塞する上部端栓(42)及び下部端栓(43)と、被覆管(41)内に装填される多数個の核燃料ペレット(44)と、スプリング(45)とから構成されている。直径約8mm長さ約10mmの核燃料ペレット(44)はMOXと呼ばれるウラン(ウラニウムとも呼ぶ)とプルトニウムの混合酸化物を焼結してなる。
かつて、高温耐食性に優れたステンレス製の被覆管(41)があったが、中性子速度が低速の熱中性子をほとんど吸収しないジルコニウムを主体とした合金が開発されたため作られなくなった。近年では、色々な分野で多種多様なステンレスが開発されているから、今後、ステンレス製の被覆管(41)は有望である。特に、高温耐食性に優れたステンレスは中性子速度が高速の高速中性子に対しては中性子を吸収する作用が弱いため、高速中性子雰囲気下での利用が高まると考えられる。
図4は、従来の核燃料集合体(30)と十字形の制御棒(22)とからなる炉心平面の部分図である。
核燃料集合体(30)は正方格子状に配列してなる十字形の制御棒(22)に隣接させて装荷される。
チャンネルボックス(35)枠の中に、核燃料棒(31)は多数本正方格子状に配列されている。
核燃料棒(31)の間は主冷却材通路(36)となっており、二相流が流れている。核燃料棒(31)から発生した熱は二相流に伝達される。核燃料集合体(30)下端から入った未飽和水は飽和水となり、飽和水の1部が蒸気となって二相流となり、核燃料集合体(30)上端に向かって流れ出る。
隣接する核燃料集合体(30)の間の漏洩冷却材通路(20)には、未飽和水が下部から流入し飽和水となって上に流れている。十字形の制御棒(22)は漏洩冷却材通路(20)の中を上下に動ける。
図5は、従来の沸騰水型原子炉の従来の炉心平面を示した図である(非特許文献2)。
ステンレス製の円筒形をしたシュラウド(18)で囲まれている炉心は核燃料を内蔵せる核燃料集合体(30)と中性子吸収体を内蔵する十字形の制御棒(22)とからなる。隣接する核燃料集合体(30)の間は漏洩冷却材通路(20)となっていて飽和水が流れている。
シュラウド(18)の外は圧力容器(10)で覆われている。圧力容器(10)とシュラウド(18)の間のシュラウド外冷却材空間(16)は未飽和水となっている。
原子炉が停止している場合は十字形の制御棒(22)群全部が炉心に挿入されている。原子炉が運転している場合は十字形の制御棒(22)群の大半が炉心から炉心の下に引き抜かれ、炉心には中心部にある数本の十字形の制御棒(22)が挿入されている。一般に、十字形の制御棒(22)が中心部に挿入されているにも関わらず、中性子は炉心から外に漏洩するため炉心の外周部の中性子は少ないから、炉心外周部の核燃料集合体(30)出力は低い。
一般に、十字形の制御棒(22)の周りに装荷する核燃料集合体(30)は、燃焼開始時点では、未燃焼核燃料集合体(記号0)、1サイクル燃焼核燃料集合体(記号1。1サイクル燃焼済み核燃料集合体。燃焼開始から検査や燃料交換のために通常の手順で停止するまでの期間約1年を1サイクルと呼んでいる。)、2サイクル燃焼核燃料集合体(記号2。2サイクル燃焼済み核燃料集合体。)、3サイクル燃焼核燃料集合体(記号3。3サイクル燃焼済み核燃料集合体。)からなる。
1サイクル燃焼後時点では、1サイクル燃焼核燃料集合体、2サイクル燃焼核燃料集合体、3サイクル燃焼核燃料集合体、4サイクル燃焼核燃料集合体となる。
【0003】
核燃料であるウラン(U)やプルトニウム(Pu)の中性子との反応は中性子の速度によって変わり、中性子の速度は減速材である水の量により変わる。したがって、ボイド率の違いは水の量の違いであるから、ボイド率の違いは核燃料と中性子との反応の結果生じる出力に変化をもたらし、逆に出力の変化はボイド率に違いをもたらす。
核燃料は遅い中性子とは激しく反応するため、少ない量の核燃料でも大きな出力を得ることができる。ボイド率が高くなると減速材である水が減る訳であるから、水を冷却材循環ポンプ(25)で加速して、タービンへの飽和蒸気流量の数倍の水を炉心に流入させて相対的にボイド割合が少なくなるようにしている。飽和蒸気とならなかった飽和水は、気水分離器(15)と蒸気乾燥器(12)により飽和蒸気と分離されてシュラウド外冷却材空間(16)の水と混じって再び冷却材循環ポンプ(25)で加速されて核燃料集合体(30)を冷却する。
【非特許文献1】:コロナ社、著者都甲「原子動力」117、120頁。
【非特許文献2】:電力新報社、1969年、資源エネルギー庁「原子力発電便覧」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在稼動中の炉心入口冷却材を未飽和水とする沸騰水型原子炉の炉心は、熱中性子を利用して、高価な濃縮ウラン(例えばウラン235の濃度が約4%の濃縮ウランを使用する。天然ウランはウラン235の濃度が約0.7%。)や再処理費用が高いプルトニウムの使用量を節約している。
被覆管(41)は熱中性子吸収の割合が小さいジルコニウム合金が主体である。
限りあるウランの使用に問題が生じつつあることや使用済燃料から出てきた原爆の原料となり易いプルトニウム(Pu)の蓄積量が顕著になってきたこととあいまって、プルトニウムの有効利用が必要になってきた。
従来の熱中性子によるプルトニウム利用では、熱中性子によっては殆ど核分裂しないが放射線は放出するプルトニウム240(Pu240)やプルトニウム242(Pu242)やアメリシウム(Am)が大量に発生しそれ等の貯蔵管理も問題になる。プルトニウム有効利用に有利である高速中性子を利用したい。ただ、Puを高速中性子で燃焼させようとして富化度(MOX中のプルトニウムの割合)を上げると、実効増倍係数のボイド反応度挙動が正になり易いことが問題になる。
定常出力運転中に冷却材流量低下が生じたような場合に、蒸気ボイド割合が突然増加し中性子速度減速の様子が変わり、臨界状態からのズレの程度を示す量である反応度が変化する。蒸気ボイド割合の変化に伴う反応度の変化をここではボイド反応度挙動と呼ぶ。ボイド反応度挙動が正であると、蒸気ボイド割合が突然増加すると反応度が増加する。負であると、蒸気ボイド割合が突然増加すると反応度が減少する。炉心外への中性子漏洩を考慮する場合は実効増倍係数(keffと表される)のボイド反応度挙動であり、炉心外への中性子漏洩を考慮しない場合は無限増倍係数(kinf表される)のボイド反応度挙動である。
実効増倍係数のボイド反応度挙動= (keff - 1 ) / keff
無限増倍係数のボイド反応度挙動= (kinf - 1 ) / kinf
無限増倍係数のボイド反応度挙動が正であっても、実効増倍係数のボイド反応度挙動が負になることはある。
実効増倍係数のボイド反応度挙動が正であると、核分裂が更に活発になり出力が増加する。出力が増加すると蒸気ボイド量が更に増加する。冷却不足になり燃料ペレットの中心部が溶けることも想定され、放射能が冷却材中に漏れることも想定される。直ちに、周辺住民の安全性が脅かされる訳ではないが好ましいことではない。
現行沸騰水型原子炉の系統設備やシステムはほぼ完成されたものであり安全性も高い。できるだけ現行沸騰水型原子炉の構造を変更しないで高速中性子を利用してPuを効率よく安全に燃焼させたい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
多数本の正方格子状に配列した十字形の制御棒(22)に隣接させて核燃料集合体を装荷してなる炉心を有し炉心入口冷却材が未飽和水である従来の沸騰水型原子炉において、炉心下部プレナム(8)に水面を形成させ水部と湿り蒸気部にし、当該炉心下部プレナム(8)の湿り蒸気部に当該炉心下部プレナム(8)の飽和水よりも高温高圧の未飽和水を給水し、炉心入口冷却材を湿り蒸気とする(図7に概観図を示した)。
高温高圧の未飽和水の給水は、上端閉シュラウド外冷却材空間(116)にしてもよい。
固体減速材貼チャンネルボックス(136)は、ジルコニウム合金またはステンレス製の正方形の枠であるチャンネルボックス(35)に、中性子吸収割合が水よりも小さい低吸収固体減速材製の固体減速材ライナ1(135)を内面または外面または芯に貼り付けてなる。
固体減速材被覆管(141)は、ジルコニウム合金またはステンレス製の円筒形鞘の上下端を密封してなる被覆管(41)の内側に前記低吸収固体減速材製の固体減速材ライナ(147)を内貼りしてなる。
固体減速材貼核燃料棒(131)は、前記固体減速材被覆管(141)に多数個の選択的プルトニム富化度MOX核燃料ペレット(144)を連続堆積内封してなる。
固体減速材棒(132)は、前記被覆管(41)に前記低吸収固体減速材を充填内封してなる。
前記固体減速材貼チャンネルボックス(136)の中に、前記固体減速材貼核燃料棒(131)を多数本正方格子状に配列し、前記固体減速材貼核燃料棒(131)の1部を前記固体減速材棒(132)で置き換え、それ等の下部を燃料下部タイプレート(40)に差込み束ねてなる固体減速材付帯核燃料集合体(130)とする(図8、図10に概観図を示した)。
選択的プルトニム富化度MOX核燃料ペレット(144)は、炉心入口冷却材が湿り蒸気である本発明の高転換サウナ型原子炉の定常出力運転時での炉心平均ボイド率(95%)において、本発明の固体減速材付帯核燃料集合体(130)の未燃焼での実効増倍係数が1.0以上であり、かつ固体減速材付帯核燃料集合体(130)の実効増倍係数が燃焼進展に伴い増加し、かつ固体減速材付帯核燃料集合体(130)の実効増倍係数のボイド反応度挙動が燃焼の途中までは負であるように、劣化ウランにPuを含有せしめたMOXとする。
天然ウランから濃縮ウランを生成する過程での残り滓である劣化ウランではウラン235の濃度は約0.3%から0.7%未満である(天然ウランはウラン235の濃度が約0.7%)。
固体減速材付帯核燃料集合体(130)の未燃焼での実効増倍係数が1.0未満であることが予想される場合には、MOX中のウランのU235濃度は天然ウランに近い0.699%にすればよい。
劣化ウランにPuを含有したMOX中のPu富化度の目安は9%である(炉心平均ボイド率が95%にもなると炉心外への中性子漏洩効果が顕著になり実効増倍係数のボイド反応度挙動を負にし易くなる。しかし、Puの富化度が9%を超えると実効増倍係数のボイド反応度挙動が正になる恐れがあり、安全性上好ましくない(図9に概観図を示した)。
MOX中のウランは、処分に困っていて安い劣化ウラン(場合によっては処分費を貰える)とする。
多数本の正方格子状に配列してなる十字形の制御棒(22)に隣接させて前記固体減速材付帯核燃料集合体(130)を装荷してなる炉心(図11に概観図を示した)を有し炉心入口冷却材が湿り蒸気であることを特徴とする高転換サウナ型原子炉とする。
サウナ風呂の雰囲気は不透明な霧状の湿り蒸気である。飽和蒸気は透明である。
伸長シュラウド(118)に中性子吸収体を貼り付けるか含有させておけば、圧力容器(10)外への中性子漏洩を減少させることができる。
【0006】
当該固体減速材付帯核燃料集合体(130)の炉心への装荷の仕方は以下のようにする(後述の炉心平面図を図11に示した)。
炉心中央領域の十字形の制御棒(22)に隣接せる固体減速材付帯核燃料集合体(130)は、0サイクル未燃焼及び、1サイクル燃焼済み及び、2サイクル燃焼済み及び、3サイクル燃焼済みとする。
最外周領域の十字形の制御棒(22)に隣接せる固体減速材付帯核燃料集合体(130)は、炉心中央領域の十字形の制御棒(22)に隣接させて4サイクル燃焼済みとした固体減速材付帯核燃料集合体(130)及び、最外周領域の十字形の制御棒(22)に隣接させて引き続き燃焼した固体減速材付帯核燃料集合体(130)とする。
炉心外周領域では炉心外への中性子漏洩が多いから当該領域に装荷された燃焼済み固体減速材付帯核燃料集合体(130)出力は低い。したがって、実効増倍係数のボイド反応度挙動が正であっても出力の正味増加は小さい。
なお、炉心外への中性子漏洩が多いということは、実効増倍係数のボイド反応度挙動を負にする傾向も大きいということでもある。
【0007】
多数本の正方格子状に配列した十字形の制御棒(22)に隣接させて核燃料集合体を装荷してなる炉心を有し炉心入口冷却材を未飽和水とする沸騰水型原子炉には以下のような固体減速材付帯核燃料集合体改(230)を装荷する。
固体減速材貼チャンネルボックス(136)は、ジルコニウム合金またはステンレス製の正方形の枠であるチャンネルボックス(35)に、中性子吸収割合が水よりも小さい低吸収固体減速材製の固体減速材ライナ1(135)を内面または外面または芯に貼り付けてなる。
固体減速材被覆管(141)は、ジルコニウム合金またはステンレス製の円筒形鞘の上下端を密封してなる被覆管(41)の内側に固体減速材ライナ(147)を内貼りしてなる。
固体減速材貼核燃料棒(131)は、前記固体減速材被覆管(141)に多数個の選択的プルトニム富化度MOX核燃料ペレット(144)を連続堆積内封してなる。
固体減速材棒(132)は、前記被覆管(41)に前記低吸収固体減速材を充填内封してなる。
前記固体減速材貼チャンネルボックス(136)の中に、前記固体減速材貼核燃料棒(131)を多数本正方格子状に配列し、前記固体減速材貼核燃料棒(131)の1部を前記固体減速材棒(132)で置き換え、それ等の下部を燃料下部タイプレート(40)に差込み束ねてなる固体減速材付帯核燃料集合体改(230)とする。
選択的プルトニム富化度MOX核燃料ペレット(144)は、炉心入口冷却材を未飽和水とする沸騰水型原子炉の定常出力運転時での炉心平均ボイド率(45%)において、本発明の固体減速材付帯核燃料集合体改(230)の未燃焼での実効増倍係数が1.0以上であり、かつ固体減速材付帯核燃料集合体改(230)の無限増倍係数のボイド反応度挙動が燃焼の途中までは負であるように、濃縮ウランにPuを含有せしめたMOXとする。
濃縮ウランは、U235の濃度が天然ウラン中でのU235の濃度よりも濃いウランである。天然ウランからU235を濃縮する。
濃縮ウランにPuを含有せしめたMOX中のPu富化度の目安は8%である(炉心平均ボイド率が45%程度では炉心外への中性子漏洩効果はそれほど顕著ではなく、実効増倍係数のボイド反応度挙動を大きく負にはしない。そこで、MOX中のPuの富化度を8%以下にして炉心外への中性子漏洩を考慮しない無限増倍係数のボイド反応度挙動を負にする。
MOX中のウランは、濃縮ウランとする。炉心平均ボイド率が45%程度では転換率が低いため、実効増倍係数は燃焼進展に伴い減少する。したがって、定常出力運転を維持するためには未燃焼時に核分裂性物質を多く含有させておく必要がある。そこで、MOX中のウランを2%程度の濃縮ウランにする必要がある。
多数本の正方格子状に配列してなる十字形の制御棒(22)に隣接させて前記固体減速材付帯核燃料集合体改(230)を装荷したことを特徴とした炉心入口冷却材が未飽和水である沸騰水型原子炉の炉心とする。
【0008】
原子力発電技術は信頼性及び安全性を重んじ、実績のある保守的な技術が重要視される。したがって、新技術を導入する場合、当該新技術を現在運転している原子力発電所に適用できるように改造して、現在運転している原子炉に導入することからはじめることが多い。
それが固体減速材付帯核燃料集合体改(230)である。
MOX核燃料ペレットのプルトニウム富化度が8%以下なら無限増倍係数のボイド反応度挙動は負になる傾向がある。ただし、Puを効率よく燃焼させるべくボイド率を高くすると実効増倍係数は1.0以下になってしまう。そこで、中性子吸収割合が水よりも小さい低吸収固体減速材を導入すれば無限増倍係数のボイド反応度挙動は負でかつ実効増倍係数は1.0以上にすることができる。
プルトニウムの富化度が8%では、大きな燃焼度まで核燃料集合体を燃焼させることが期待できない。そこで、プルトニウムとウランの混合酸化物であるMOXとして、ウラン235の濃度が天然ウランよりも高い濃縮ウランとする。
選択的プルトニウム富化度MOX核燃料ペレット(144)のMOX中のPu富化度を上中下高さ一様に8%にすると、炉心外への中性子漏洩が考慮しない無限増倍係数のボイド反応度挙動は負になり易い。
中性子割合が小さい上下部では選択的プルトニウム富化度MOX核燃料ペレット(144)のMOX中の濃縮ウランを2%程度にして出力を大きくすると共に定常出力運転を維持できるようにする。中性子割合が大きい中間部では選択的プルトニウム富化度MOX核燃料ペレット(144)のMOX中の濃縮ウランを0.7%程度の天然ウランにして出力が過大にならないようにすると共に定常出力運転を維持できるようにする。
漏洩冷却材通路(20)の水による大きな熱中性子割合に曝され大きな出力になり易い4隅の固体減速材貼核燃料棒(131)は、選択的プルトニウム富化度MOX核燃料ペレット(144)のMOX中のプルトニウムの富化度は、高さ平均のプルトニウムの富化度よりも低くする。Pu富化度が7%以下で、MOX中のウランを劣化ウランとすれば、出力が過大になるのを防ぐことができる。
【0009】
図6に実効増倍係数の燃焼度挙動とボイド反応度挙動の計算例を示した。核燃料棒(被覆管直径1.4cm、被覆管厚さ0.1cm、隣接する核燃料棒との最小間隙0.1cm、U235濃度0.3%の劣化ウランにPuを9%混合したMOXの核燃料棒を正方格子状に無限に配列。中性子漏洩の影響は炉心等価直径6.7m、炉心高さ3mとする。)の実効増倍係数の燃焼挙動の数値計算例である。実線は定常運転中の蒸気ボイド95%での核燃料棒の実効増倍係数の燃焼挙動である。*印は、実線の燃焼度点で蒸気ボイドのみを100%にした実効増倍係数のボイド反応度挙動を示した図である。燃焼度(MWd/t)を示す横軸の目盛値、例えば5.00E+3は、5000MWd/tを示す。
上段図の従来のジルコニウム合金被覆管のみでは、燃焼度ゼロでの実効増倍係数が臨界(1.0)以下で、近傍でも1.0を大きくは上回らない。燃焼度が2.0E+4MWd/t以上になると実効増倍係数のボイド反応度挙動は正になる。したがって、従来の沸騰水型原子炉にMOXを導入する場合には、Puを8%未満にし濃縮ウランを混合したMOXであろう。但し、取出燃焼度は低下する。
一方、下段図の中性子吸収割合が水よりも小さい低吸収固体減速材としてベリリウムの固体減速材ライナ(147)を1mm貼り付けた固体減速材貼被覆管(131)では、燃焼度ゼロでの実効増倍係数が臨界(1.0)以上で、近傍でも1.0を大きく上回る。燃焼度が3.0E+4MWd/t近辺でも実効増倍係数のボイド反応度挙動は負である。しかも、Puを効率良く燃焼させることが出来る。
燃焼度が進むにつれて実効増倍係数が大きくなっているということは、核分裂性物質(プルトニウム239(Pu239)やプルトニウム241(Pu241))が増加していることを意味する。転換率(原子炉の中で核分裂性物質が1個消費されるごとに、ウラン238 (U238)のような燃料親物質が中性子を吸収して新しく転換されて生じるPu239のような核分裂性物質の数)が高い。
ボイドが急に増加すると熱中性子割合が少なくなり、高速中性子割合が多くなる。原子炉は有限の大きさを持つから、液体の水やステンレスのような構造材との衝突が減って中性子は原子炉外に漏洩し易くなる。したがって、実効増倍係数のボイド反応度挙動は負になる。
【0010】
水が十分あって熱中性子割合が高い従来の沸騰水型原子炉では、Pu富化度の低いMOXを利用している。ボイドが急に増加して熱中性子割合が少なくなるとPu239による核分裂反応が減少し無限増倍係数のボイド反応度挙動は負になる。なお、Pu富化度が低いということは、中速中性子(熱中性子よりもやや速度が速い)に対して大きな吸収作用を持っているウラン238(U238)がMOX中に大きな割合(約90%)を占められるということである。U238は、中速中性子(熱中性子よりもやや速度が速い)に対して大きな吸収作用を持っている。ボイドが急に増加して熱中性子割合が少なくなり中速中性子が増加しても、中速中性子はU238に吸収されるから無限増倍係数のボイド反応度挙動は負になり易い。
本発明の高転換サウナ型原子炉では、定常運転が95%程度の高いボイド状態であるから水が少ない。したがって、中性子の減速と吸収作用が少ない。そこに、低吸収固体減速材を導入したから、中性子の減速は低吸収固体減速材の寄与が大きい。水による中性子吸収が少なくかつ熱中性子割合も比較的多いことは、核分裂し易いPu239を減らせるからPu富化度を低くできる。Pu富化度の比較的低いMOXを利用できるから、従来の沸騰水型原子炉に近づいてボイドが急に増加しても無限増倍係数のボイド反応度挙動は負になる傾向があると考えられる。
Pu富化度が低いということは熱中性子吸収割合の大きいMOX中のPuの中のPu240やPu242も少ないということでもある。Pu240やPu242は、速度の遅い熱中性子に対しては、吸収する性質が非常に強いが核分裂を起こさない。一方、高速中性子に対しては、吸収する性質が小さいが核分裂をする。Pu240やPu242の量が少ないから、ボイドが急に増加して熱中性子割合が減少しても、無限増倍係数のボイド反応度挙動への寄与は小さい。Pu富化度を上げると、Pu240やPu242による無限増倍係数のボイド反応度挙動を正にする性質が利いてきて実効増倍係数のボイド反応度挙動でも正になってしまう。したがって、Pu富化度に上限を設ける必要がある。それが9%である。
低吸収固体減速材には、ベリリウム(Be)、炭素(C)、リチウム7(Li7。Li6を含む天然LiからLi7を濃縮。Li6は可燃性毒物)、硼素11(B11。B10を含む天然BからB11を濃縮。B10は可燃性毒物)がある。可燃性毒物は、燃焼が進むと中性子吸収効果が大幅に減少するから、燃焼後期には反応度への影響がなくなる。
重水素化ジルコニウム(ZrD)中の重水素(D)は中性子吸収割合が水よりも小さい低吸収固体減速材ではあるが、高温になるとZrとDとに分離する恐れがあるから導入し難い。
また、ZrDの代わりに、中性子吸収割合が水程度である軽水素化ジルコニウム(ZrH)を導入すると、H(水素)の中性子吸収作用によりPu富化度を上げざるを得ないから実効増倍係数のボイド反応度挙動は正になり易い。なお、ZrはHよりも中性子吸収作用が大きい。
【発明の効果】
【0011】
有り余って処分に困っているプルトニウムを、有効に燃焼させて在庫処分をすることができる。しかも、電気料金を通して儲けることができる。
固体減速材付帯核燃料集合体(130)なら、高転換サウナ型原子炉とすることができる。ウラン鉱石(今まで貯まっていた劣化ウランを使う)や濃縮費用から無縁になり、強いてはエネルギー問題から解放される。炭酸ガスを殆ど出さないから環境問題からも解放される。
固体減速材付帯核燃料集合体改(230)であるなら、Pu富化度をかなり低く出来るため無限増倍係数のボイド反応度挙動は負であって安全性に問題なく、現行沸騰水型原子炉に導入できる。すぐに、金儲けしながらプルトニウムが減らせる。更に、ウラン鉱石や濃縮費用の高騰を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
プルトニウムが効率よく燃焼できて、かつ、実効増倍係数のボイド反応度挙動が負で安全性の高い原子炉が提供できた。
【実施例1】
【0013】
図7は、本発明の高転換サウナ型原子炉の圧力容器(10)内の概観図を示す。
炉心下部プレナム(8)には水面を形成させ、水面下は高温高圧の未飽和水であり、水面から炉心支持板(9)までは湿り蒸気で満たされている。
給水は、炉心下部プレナム(8)内の飽和水よりも高温高圧の未飽和水または過熱水であって、高温高圧水配管(117)により直接炉心下部プレナム(8)または上端閉シュラウド外冷却材空間(116)に注入される。図7では、直接炉心下部プレナム(8)に注入される。
給水は、圧力容器(10)の外部に敷設したポンプモータにより回転するポンプで加速される。加熱は、電熱器または蒸気混合領域(119)から蒸気配管(14)を通ってタービンへ向かって出る蒸気で実施する。
高温高圧水配管(117)は、圧力容器(10)内面と伸長シュラウド(118)との間の湿り蒸気が充満する上端閉シュラウド外冷却材空間(116)を通って炉心下部プレナム(8)に達する。
上端閉シュラウド外冷却材空間(116)は、従来のシュラウド外冷却材空間(16)の上端を閉じたものである。蒸気ドーム(11)の乾いた蒸気と上端閉シュラウド外冷却材空間(116)の湿った蒸気とが混ざらないようにしてある。
炉心下部プレナム(8)に入った高温高圧未飽和水は、減圧されて湿り蒸気になる。
固体減速材付帯核燃料集合体(130)下端から入った湿り蒸気は、固体減速材貼核燃料棒(131)から熱を吸収して湿り蒸気の液体の水が飽和蒸気になる。ボイド率は固体減速材付帯核燃料集合体(130)の下部高さでも90%程度であり、中程高さでは約95%になっており、上部高さでは約100%の飽和蒸気または過熱蒸気になっている。過熱蒸気は、炉心内の飽和蒸気よりも高温の蒸気である。原子炉内は、謂わば、サウナ風呂状態になっている。
固体減速材付帯核燃料集合体(130)上端から出た蒸気は漏洩冷却材通路(20)の湿り蒸気と混合し、蒸気混合領域(119)を形成する。液体分は殆どないから、気水分離器(15)及び蒸気乾燥器(12)は不要になる。その代わり、圧力容器(10)の内面に中性子吸収材加熱体(120)を貼り付けて中性子を吸収し中性子が外に漏洩するのを妨げる。中性子吸収材加熱体(120)は、中性子を吸収すると発熱する場合が多いから蒸気温度を高める効果もある。中性子吸収材にはハフニウムや炭化硼素(B4C)がある。
蒸気乾燥器(12)は不要になるから、蒸気乾燥器胴部(13)も不要になる。その代わり、シュラウドを上方向に伸長させて伸長シュラウド(118)とする。伸長シュラウド(118)壁面にも、中性子吸収材加熱体(120)を貼り付けると中性子吸収効果が向上する。蒸気温度を高める効果もある。
【0014】
図8は本発明の固体減速材付帯核燃料集合体(130)の概観斜視図である。
固体減速材付帯核燃料集合体(130)は、多数本の後述の図9に示した固体減速材貼核燃料棒(131)を正方格子状に配列しこの1部を固体減速材棒(132)に置き換えて、それ等の下部を燃料下部タイプレート(40)に差込み、固体減速材貼チャンネルボックス(136)の中に固体減速材貼核燃料棒(131)及び固体減速材棒(132)の束を4面で覆ってなる。
隣接する固体減速材貼核燃料棒(131)の間隙は0.1cmから0.13cmとする。
従来の核燃料集合体(30)同様に、固体減速材付帯核燃料集合体(130)も炉心支持板(9)と燃料集合体支持金具(50)によって支えられている。
炉心下部プレナム(8)の湿り蒸気は、制御棒案内管(26)に開けられている冷却材流入口(99)から燃料集合体支持金具(50)に入り、続いて、固体減速材付帯核燃料集合体(130)に流入する。
主冷却材通路(36)には固体減速材貼核燃料棒(131)で発生した熱を原子炉の外に取り出すための湿り蒸気が下から上に流れ、上に流れるに従い核燃料棒から熱を吸収して飽和蒸気になり、更には過熱蒸気となって流れる。
固体減速材貼チャンネルボックス(136)の間の漏洩冷却材通路(20)には湿り蒸気が流れている。
十字形の制御棒(22)は、漏洩冷却材通路(20)を上下に動ける。十字形の制御棒(22)は制御棒案内管(26)に納められている制御棒駆動装置(23)によって上下に動く。
制御棒案内管(26)は燃料集合体支持金具(50)を支持もしている。
図中矢印は冷却材の主たる流れ方向を示す。
【0015】
図9は本発明の固体減速材貼核燃料棒(131)の概観図である。大気圧の約10倍程度のヘリウムを内封する直径約14mm長さ3.6mの円筒形鞘であるジルコニウム合金製またはステンレスの管からなる被覆管(41)内に低吸収固体減速材製の固体減速材ライナ(147)を施した固体減速材貼被覆管(141)と、固体減速材貼被覆管(141)の上下開口端を気密閉塞する上部端栓(42)及び下部端栓(43)と、固体減速材貼被覆管(141)内に連続堆積内封される多数個の選択的プルトニウム富化度MOX核燃料ペレット(144)と、スプリング(45)とから構成されている。
選択的プルトニウム富化度MOX核燃料ペレット(144)は、MOXと呼ばれるウランとプルトニウムの混合酸化物を焼結してなる。プルトニウム富化度は、固体減速材付帯核燃料集合体(130)の未燃焼での実効増倍係数が1.0以上であり、かつ固体減速材付帯核燃料集合体(130)の実効増倍係数が燃焼進展に伴い増加し、かつ固体減速材付帯核燃料集合体(130)の実効増倍係数のボイド反応度挙動が燃焼の途中までは負であるようにプルトニウムの富化度を調節する。
なお、MOX中のウランは劣化ウランとした(天然ウランはウラン235の濃度が約0.7%。天然ウランから濃縮ウランを生成する過程での残り滓である劣化ウランではウラン235の濃度は約0.3%から0.699%である。劣化ウランの使い道は殆ど無く大量に保管されている。)。
固体減速材貼被覆管(141)内に連続堆積内封される選択的プルトニウム富化度MOX核燃料ペレット(144)を上下では9%とし中間を8%にすると、実効増倍係数のボイド反応度挙動は負になり易い。ボイド急増により中性子が増加したとしても固体減速材貼被覆管(141)の上下端へ中性子は漏洩してしまうから、Pu富化度が9%であるなら中性子漏洩を考慮した実効増倍係数の反応度挙動は負とすることができる。一方、中間では漏洩しにくいため、中性子漏洩を考慮しない無限増倍係数のボイド反応度挙動が負である8%とする。
MOX中の劣化ウランのU235濃度は通常0.3%であるが、未燃焼での実効増倍係数が1.0未満であることが予想される場合には、MOX中のウランのU235濃度は天然ウランに近い0.699%にすればよい。
【0016】
低吸収固体減速材であるベリリウムを内貼した外直径14mmの固体減速材貼被覆管(141)を間隙1mmで正方格子状に無限配列し、中性子漏洩は幾何学的バックリングで近似し、湿り蒸気を想定して軽水冷却材のボイド率を95%とし、選択的プルトニウム富化度MOX核燃料ペレット(144)のプルトニウム富化度を9%に調節すると、図6下段図のような実効増倍係数の燃焼度挙動とボイド反応度挙動が得られる。
大きさが有限で中性子漏洩がある実際の原子炉において、連鎖反応を維持し続けるには実効増倍係数を1.0に保たねばならないから、固体減速材貼核燃料棒(131)の未燃焼での実効増倍係数が1.0以上であれば固体減速材付帯核燃料集合体(130)の未燃焼での実効増倍係数が1.0以上の可能性があり原子炉運転の連続が可能である。
実効増倍係数は燃焼が進むにつれて大きくなっているから固体減速材付帯核燃料集合体(130)の実効増倍係数も燃焼が進むにつれて大きくなり、原子炉運転を続けても連鎖反応を維持することができる。
定常運転を実施するために原子炉を臨界に保つには、制御棒を挿入すればよい。
燃焼の途中で、何らかの事情(例えば、冷却材流量の低下)で軽水冷却材のボイド率が100%になったとしても固体減速材貼核燃料棒(131)の実効増倍係数は小さくなるから、固体減速材付帯核燃料集合体(130)の実効増倍係数も小さくなると考えられ原子炉出力は低下する。
固体減速材付帯核燃料集合体(130)を構成する固体減速材貼チャンネルボックス(136)は、中性子吸収割合が小さいジルコニウム合金製またはステンレス及び、中性子吸収割合が水よりも小さい低吸収固体減速材からなるから、固体減速材付帯核燃料集合体(130)の実効増倍係数は固体減速材貼核燃料棒(131)の値でほぼ決まってしまう。
固体減速材貼チャンネルボックス(136)及び固体減速材棒(132)は、中性子吸収割合が水よりも小さい低吸収固体減速材を含有するから、固体減速材貼核燃料棒(131)での低吸収固体減速材量が不足である場合の補助となる。
【0017】
図10は、本発明の固体減速材付帯核燃料集合体(130)と十字形の制御棒(22)とからなる炉心平面の部分図である。
固体減速材付帯核燃料集合体(130)は、ジルコニウム合金製またはステンレス製の板を正方形の枠に成型したチャンネルボックス(35)に低吸収固体減速製の固体減速材ライナ1(135)を内面または外面または芯に貼り付け成型した固体減速材貼チャンネルボックス(136)で固体減速材貼核燃料棒(131)及び固体減速材棒(132)の束を4面で覆ってなる。本図では、体減速材ライナ1(135)を内面に貼っている。
隣接する固体減速材付帯核燃料集合体(130)の間の漏洩冷却材通路(20)には湿り蒸気が流れている。
固体減速核燃料棒(131)の間の主冷却材通路(36)には蒸気が流れている。
【0018】
図11は、本発明の固体減速材付帯核燃料集合体(130)を装荷した本発明の高転換サウナ型原子炉の炉心平面図である。
核燃料を含む固体減速材付帯核燃料集合体(130)と十字形の制御棒(22)からなる炉心(冷却材を含めて呼ぶこともあるが通常は省略する)は、ステンレス製の円筒形をした伸長シュラウド(118)で囲まれている。隣接する固体減速材付帯核燃料集合体(130)の間は漏洩冷却材通路(20)となっていて、下の高さでは湿り蒸気、中間の高さでは飽和蒸気、上部高さでは過熱蒸気となっている。
圧力容器(10)と伸長シュラウド(118)の間の上端閉シュラウド外冷却材空間(116)は湿り蒸気で満たされている。
伸長シュラウド(118)外周部に前述の中性子吸収材加熱体(120)を貼り付けると中性子吸収効果が向上する。
炉心中央領域では、十字形の制御棒(22)の周りに装荷する固体減速材付帯核燃料集合体(130)は、燃焼開始時点では、燃焼度ゼロの未燃焼核燃料集合体(記号0)、1サイクル核燃料集合体(記号1。1サイクル燃焼済み核燃料集合体。燃焼度5000MWd/t)、2サイクル核燃料集合体(記号2。2サイクル燃焼済み核燃料集合体。燃焼度10000MWd/t)、3サイクル核燃料集合体(記号3。3サイクル燃焼済み核燃料集合体。燃焼度15000MWd/t)からなる。
1サイクル燃焼後にはサイクル数が1増加し、燃焼度は約5000MWd/t増加する。
炉心外周領域は、十字形の制御棒(22)の周りに、炉心中央領域で4サイクル燃焼済み核燃料集合体及び、炉心外周領域で更に1サイクル燃焼されて合計5サイクル燃焼済み核燃料集合体及び、炉心外周領域で続いて2サイクル燃焼されて合計6サイクル燃焼済み核燃料集合体及び、炉心外周領域で3サイクル燃焼されて合計7サイクル燃焼済み核燃料集合体を装荷する。炉心中央領域で4サイクル燃焼済み核燃料集合体が余った場合は、炉心外周領域に装荷してもよい。炉心外周領域は出力が低いから、1サイクル燃焼後には燃焼度は約2500MWd/tしか増加しない。
炉心中央領域では20.0E3MWd/t程度までしか燃焼しないから実効増倍係数のボイド反応度挙動は負である。炉心外周領域では20.0E3MWd/t以上燃焼しているが、炉心外への中性子漏洩が多いいから、出力が低い。したがって、実効増倍係数のボイド反応度挙動が正であっても出力の正味増加は小さい。更に、炉心外への中性子漏洩が多いいことは、実効増倍係数のボイド反応度挙動を負にする傾向になる。
定常運転を実施するために原子炉を臨界に保つには、実効増倍係数のボイド反応度挙動が正の傾向を持つ燃料集合体が隣接している外周部の制御棒を挿入するのが望ましい。
【実施例2】
【0019】
多数本の正方格子状に配列した十字形の制御棒(22)に隣接させて核燃料集合体を装荷してなる炉心を有し炉心入口冷却材を未飽和水とする従来の沸騰水型原子炉においては、
当該固体減速材付帯核燃料集合体(130)を以下のように変更した固体減速材付帯核燃料集合体改(230)を装荷すれば、Puを安全に効率よく燃焼できる。
固体減速材貼チャンネルボックス(136)は、ジルコニウム合金またはステンレス製の正方形の枠であるチャンネルボックス(35)に、中性子吸収割合が水よりも小さい低吸収固体減速材製の固体減速材ライナ1(135)を貼り付けてなる。
固体減速材被覆管(141)は、ジルコニウム合金またはステンレス製の円筒形鞘の上下端を密封してなる被覆管(41)の内側に中性子吸収割合が水よりも小さい低吸収固体減速材製の固体減速材ライナ(147)を内貼りしてなる。
固体減速材貼核燃料棒(131)は、前記固体減速材被覆管(141)に多数個の選択的プルトニム富化度MOX核燃料ペレット(144)を連続堆積内封してなる。
固体減速材棒(132)は、前記被覆管(41)に前記低吸収固体減速材を充填内封してなる。
前記固体減速材貼チャンネルボックス(136)の中に、前記固体減速材貼核燃料棒(131)を多数本正方格子状に配列し、前記固体減速材貼核燃料棒(131)の1部を前記固体減速材棒(132)で置き換え、それ等の下部を燃料下部タイプレート(40)に差込み束ねてなる固体減速材付帯核燃料集合体改(230)とする。
選択的プルトニム富化度MOX核燃料ペレット(144)は、炉心入口冷却材を未飽和水とする従来の沸騰水型原子炉の定常出力運転時での炉心平均ボイド率(45%)において、本発明の固体減速材付帯核燃料集合体改(230)の未燃焼での実効増倍係数が1.0以上であり、かつ固体減速材付帯核燃料集合体改(230)の無限増倍係数のボイド反応度挙動が燃焼の途中までは負であるように、濃縮ウランにPuを含有せしめたMOXとする。2%程度の濃縮ウランにPu富化度を8%としたMOXにする。
選択的プルトニウム富化度MOX核燃料ペレット(144)のMOX中のPu富化度を上中下高さ一様に8%にすると、炉心外への中性子漏洩を考慮しない無限増倍係数のボイド反応度挙動は負になり易い。
中性子割合が小さい上下部では選択的プルトニウム富化度MOX核燃料ペレット(144)のMOX中の濃縮ウランを2%程度にして出力を大きくすると共に定常出力運転を維持できるようにする。中性子割合が大きい中間部では選択的プルトニウム富化度MOX核燃料ペレット(144)のMOX中の濃縮ウランを0.7%程度の天然ウランにして出力が過大にならないようにすると共に定常出力運転を維持できるようにする。
漏洩冷却材通路(20)の水による大きな熱中性子割合に曝され大きな出力になり易い4隅の固体減速材貼核燃料棒(131)は、選択的プルトニウム富化度MOX核燃料ペレット(144)のMOX中のPu富化度が7%以下で、MOX中のウランを劣化ウランとすれば、出力が過大になるのを防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
固体減速材付帯核燃料集合体改(230)なら現行沸騰水型原子炉に装荷し易い。実績を積んでから、固体減速材付帯核燃料集合体(130)を装荷した高転換サウナ型原子炉にする。
プルトニウムの在庫は、単に保管費用の問題だけでなく、諸外国からは潜在的に原爆を大量保管しているとの疑いの目を向けられ、諸外国から目には見えない形で広い分野で妨害を受けることになる。
固体減速材付帯核燃料集合体(130)に装荷されるプルトニウム富化度を9%以下とすれば、原爆に供される心配は相当低いから、諸外国に安心感を与える。再処理から核燃料集合体成型までの工程を諸外国の疑いなくこなせると考えられる。怪しげな国への輸出に際しても諸外国からの裏からの横槍も少ないと考えられる。
太い核燃料棒としたため、燃焼度は大きくはないが燃焼期間は長くなる。1サイクル5000MWd/tとしても期間は1年間である。したがって、定期検査は1年毎に行えばよい。
使用済核燃料中のPu富化度は、新燃料である未燃焼時でのPu富化度よりも高いから、使用済核燃料を再処理して新燃料を製造するには、Puを単独で抽出することなく、使用済核燃料のMOXに劣化ウランまたは天然ウランを希釈材として添加すればよい。Puを単独で抽出しないことは、諸外国からの口出しを防ぐことになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来の沸騰水型原子炉の圧力容器(10)内の概観図。
【図2】従来の沸騰水型原子炉の圧力容器(10)内に装荷せる従来の核燃料集合体(30)の概観斜視図。
【図3】従来の核燃料棒(31)の概観図。
【図4】従来の核燃料集合体(30)と十字形の制御棒(22)とからなる炉心平面の部分図。
【図5】従来の沸騰水型原子炉の従来の炉心平面を示した図である
【図6】実効増倍係数の燃焼度挙動とボイド反応度挙動の計算例。
【図7】本発明の高転換サウナ型原子炉の圧力容器(10)内の概観図。
【図8】本発明の固体減速材付帯核燃料集合体(130)の概観斜視図。
【図9】本発明の固体減速材貼核燃料棒(131)の概観図。
【図10】本発明の固体減速材付帯核燃料集合体(130)と十字形の制御棒(22)とからなる炉心平面の部分図。
【図11】本発明の固体減速材付帯核燃料集合体(130)を装荷した本発明の高転換サウナ型原子炉の炉心平面図。
【符号の説明】
【0022】
10は圧力容器。
8は炉心下部プレナム。
9は炉心支持板。
10は圧力容器。
11は蒸気ドーム。
12は蒸気乾燥器。
13は蒸気乾燥器胴部。
14は飽和蒸気配管。
15は気水分離器。
16はシュラウド外冷却材空間。
17は給水配管。
18はシュラウド。
19は混合領域。
20は漏洩冷却材通路。
22は十字形の制御棒。
23は制御棒駆動装置。
24はポンプモータ。
25は冷却材循環ポンプ。
26は制御棒案内管。
30は核燃料集合体。
31は核燃料棒。
35はチャンネルボックス。
36は主冷却材通路。
40は燃料下部タイプレート。
41は被覆管。
42は上部端栓。
43は下部端栓。
44は核燃料ペレット。
45はスプリング。
50は燃料集合体支持金具。
99は冷却材流入口。
116上端閉シュラウド外冷却材空間。
117は高温高圧水配管。
118は伸長シュラウド。
120は中性子吸収材加熱体。
130は固体減速材付帯核燃料集合体。
131は固体減速材貼核燃料棒。
132は固体減速材棒。
135は固体減速材ライナ1。
136は固体減速材貼チャンネルボックス。
144は選択的プルトニウム富化度MOXペレット。
147は固体減速材ライナ。
230は固体減速材付帯核燃料集合体改。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数本の正方格子状に配列した十字形の制御棒(22)に隣接させて核燃料集合体を装荷してなる炉心を有し炉心入口冷却材が未飽和水である沸騰水型原子炉において、炉心下部プレナム(8)に水面を形成させ水部と湿り蒸気部にし、当該炉心下部プレナム(8)の湿り蒸気部に当該炉心下部プレナム(8)の飽和水よりも高温高圧の未飽和水を給水し、炉心入口冷却材を湿り蒸気とし、
固体減速材貼チャンネルボックス(136)は、ジルコニウム合金またはステンレス製の正方形の枠であるチャンネルボックス(35)に、中性子吸収割合が水よりも小さい低吸収固体減速材製の固体減速材ライナ1(135)を内面または外面または芯に貼り付けてなり、
固体減速材被覆管(141)は、ジルコニウム合金またはステンレス製の円筒形鞘の上下端を密封してなる被覆管(41)の内側に前記低吸収固体減速材製の固体減速材ライナ(147)を内貼りしてなり、
固体減速材貼核燃料棒(131)は、前記固体減速材被覆管(141)に多数個の選択的プルトニム富化度MOX核燃料ペレット(144)を連続堆積内封してなり、
固体減速材棒(132)は、前記被覆管(41)に前記低吸収固体減速材を充填内封してなり、
前記固体減速材貼チャンネルボックス(136)の中に、前記固体減速材貼核燃料棒(131)を多数本正方格子状に配列し、当該固体減速材貼核燃料棒(131)の1部を前記固体減速材棒(132)で置き換え、それ等の下部を燃料下部タイプレート(40)に差込み束ねてなる固体減速材付帯核燃料集合体(130)とし、
選択的プルトニム富化度MOX核燃料ペレット(144)は、炉心入口冷却材が湿り蒸気である高転換サウナ型原子炉の定常出力運転時での炉心平均ボイド率において、固体減速材付帯核燃料集合体(130)の未燃焼での実効増倍係数が1.0以上であり、かつ固体減速材付帯核燃料集合体(130)の実効増倍係数が燃焼進展に伴い増加し、かつ固体減速材付帯核燃料集合体(130)の実効増倍係数のボイド反応度挙動が燃焼の途中までは負であるように、劣化ウランにPuを含有せしめたMOXとし、
多数本の正方格子状に配列してなる十字形の制御棒(22)に隣接させて前記固体減速材付帯核燃料集合体(130)を装荷してなる炉心を有し炉心入口冷却材が湿り蒸気であることを特徴とする高転換サウナ型原子炉。
【請求項2】
請求項1の高転換サウナ型原子炉における固体減速材付帯核燃料集合体(130)を装荷せる炉心において、
炉心中央領域の十字形の制御棒(22)に隣接せる固体減速材付帯核燃料集合体(130)を0サイクル未燃焼及び、1サイクル燃焼済み及び、2サイクル燃焼済み及び、3サイクル燃焼済みとし、
最外周領域の十字形の制御棒(22)に隣接せる固体減速材付帯核燃料集合体(130)を炉心中央領域の十字形の制御棒(22)に隣接させて4サイクル燃焼済みとした固体減速材付帯核燃料集合体(130)及び、最外周領域の十字形の制御棒(22)に隣接させて引き続き燃焼した固体減速材付帯核燃料集合体(130)としたことを特徴とする炉心入口冷却材が湿り蒸気である高転換サウナ型原子炉の炉心。
【請求項3】
炉心入口冷却材を未飽和水とする沸騰水型原子炉における炉心に装荷する固体減速材付帯核燃料集合体改(230)として、
請求項1の固体減速材付帯核燃料集合体(130)の選択的プルトニム富化度MOX核燃料ペレット(144)を、
炉心入口冷却材を未飽和水とする沸騰水型原子炉の定常出力運転時での炉心平均ボイド率において、固体減速材付帯核燃料集合体改(230)の未燃焼での実効増倍係数が1.0以上であり、かつ固体減速材付帯核燃料集合体改(230)の無限増倍係数のボイド反応度挙動が燃焼の途中までは負であるように、
濃縮ウランにPuを含有せしめたMOXとすることを特徴とした固体減速材付帯核燃料集合体改(230)。
【請求項1】
多数本の正方格子状に配列した十字形の制御棒(22)に隣接させて核燃料集合体を装荷してなる炉心を有し炉心入口冷却材が未飽和水である沸騰水型原子炉において、炉心下部プレナム(8)に水面を形成させ水部と湿り蒸気部にし、当該炉心下部プレナム(8)の湿り蒸気部に当該炉心下部プレナム(8)の飽和水よりも高温高圧の未飽和水を給水し、炉心入口冷却材を湿り蒸気とし、
固体減速材貼チャンネルボックス(136)は、ジルコニウム合金またはステンレス製の正方形の枠であるチャンネルボックス(35)に、中性子吸収割合が水よりも小さい低吸収固体減速材製の固体減速材ライナ1(135)を内面または外面または芯に貼り付けてなり、
固体減速材被覆管(141)は、ジルコニウム合金またはステンレス製の円筒形鞘の上下端を密封してなる被覆管(41)の内側に前記低吸収固体減速材製の固体減速材ライナ(147)を内貼りしてなり、
固体減速材貼核燃料棒(131)は、前記固体減速材被覆管(141)に多数個の選択的プルトニム富化度MOX核燃料ペレット(144)を連続堆積内封してなり、
固体減速材棒(132)は、前記被覆管(41)に前記低吸収固体減速材を充填内封してなり、
前記固体減速材貼チャンネルボックス(136)の中に、前記固体減速材貼核燃料棒(131)を多数本正方格子状に配列し、当該固体減速材貼核燃料棒(131)の1部を前記固体減速材棒(132)で置き換え、それ等の下部を燃料下部タイプレート(40)に差込み束ねてなる固体減速材付帯核燃料集合体(130)とし、
選択的プルトニム富化度MOX核燃料ペレット(144)は、炉心入口冷却材が湿り蒸気である高転換サウナ型原子炉の定常出力運転時での炉心平均ボイド率において、固体減速材付帯核燃料集合体(130)の未燃焼での実効増倍係数が1.0以上であり、かつ固体減速材付帯核燃料集合体(130)の実効増倍係数が燃焼進展に伴い増加し、かつ固体減速材付帯核燃料集合体(130)の実効増倍係数のボイド反応度挙動が燃焼の途中までは負であるように、劣化ウランにPuを含有せしめたMOXとし、
多数本の正方格子状に配列してなる十字形の制御棒(22)に隣接させて前記固体減速材付帯核燃料集合体(130)を装荷してなる炉心を有し炉心入口冷却材が湿り蒸気であることを特徴とする高転換サウナ型原子炉。
【請求項2】
請求項1の高転換サウナ型原子炉における固体減速材付帯核燃料集合体(130)を装荷せる炉心において、
炉心中央領域の十字形の制御棒(22)に隣接せる固体減速材付帯核燃料集合体(130)を0サイクル未燃焼及び、1サイクル燃焼済み及び、2サイクル燃焼済み及び、3サイクル燃焼済みとし、
最外周領域の十字形の制御棒(22)に隣接せる固体減速材付帯核燃料集合体(130)を炉心中央領域の十字形の制御棒(22)に隣接させて4サイクル燃焼済みとした固体減速材付帯核燃料集合体(130)及び、最外周領域の十字形の制御棒(22)に隣接させて引き続き燃焼した固体減速材付帯核燃料集合体(130)としたことを特徴とする炉心入口冷却材が湿り蒸気である高転換サウナ型原子炉の炉心。
【請求項3】
炉心入口冷却材を未飽和水とする沸騰水型原子炉における炉心に装荷する固体減速材付帯核燃料集合体改(230)として、
請求項1の固体減速材付帯核燃料集合体(130)の選択的プルトニム富化度MOX核燃料ペレット(144)を、
炉心入口冷却材を未飽和水とする沸騰水型原子炉の定常出力運転時での炉心平均ボイド率において、固体減速材付帯核燃料集合体改(230)の未燃焼での実効増倍係数が1.0以上であり、かつ固体減速材付帯核燃料集合体改(230)の無限増倍係数のボイド反応度挙動が燃焼の途中までは負であるように、
濃縮ウランにPuを含有せしめたMOXとすることを特徴とした固体減速材付帯核燃料集合体改(230)。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
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【図11】
【公開番号】特開2012−127749(P2012−127749A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278263(P2010−278263)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(303002055)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(303002055)
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