高電圧パルスを利用した殺菌装置
【課題】 放電による殺菌処理時間を任意に変更することができると共に、殺菌効率の向上を図ることができる殺菌対象物の殺菌装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、高電圧を発生する電源22と、当該電源22にて発生した高電圧が印加される放電側電極13と、接地側電極18とを有し、両電極13、18間に殺菌対象物を介在させて両電極13、18間にパルスストリーマ放電を発生させることにより、殺菌対象物の殺菌処理を行うものであって、前記装置は、両電極13、18を複数備えて回転する回転体2と、該回転体2の回転に伴い、放電側電極13及び接地側電極18がそれぞれ接触若しくは近接される放電側レール20及び接地側レール21とを備える。
【解決手段】 本発明は、高電圧を発生する電源22と、当該電源22にて発生した高電圧が印加される放電側電極13と、接地側電極18とを有し、両電極13、18間に殺菌対象物を介在させて両電極13、18間にパルスストリーマ放電を発生させることにより、殺菌対象物の殺菌処理を行うものであって、前記装置は、両電極13、18を複数備えて回転する回転体2と、該回転体2の回転に伴い、放電側電極13及び接地側電極18がそれぞれ接触若しくは近接される放電側レール20及び接地側レール21とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧を利用して食品原料、食品、医薬品、漢方、薬品、化粧品、飼料、肥料、食品包装材等を加熱殺菌では熱により変質する殺菌対象物を殺菌する殺菌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱殺菌では熱により変質しやすい殺菌対象物を殺菌するには、UV(紫外線)を照射したり、過酸化水素あるいはエタノール等の消毒液が用いられていた。しかしながら、UV照射の場合は、照射時間が長いと殺菌対象物の表面が変質することがあり、又、消毒液の場合は消毒むらの発生や、残余消毒液による安全性の低下が懸念される。
【0003】
そこで、従来では殺菌処理方法として、高電圧を発生する電源部と、発生した高電圧を印加する放電側電極及び接地側電極を有する処理装置により、各電極間に殺菌対象物を介在させて、これら電極間でパルスストリーマ放電を発生させ、殺菌処理を行う方法が開示されている(特許文献1参照。)。
【0004】
係る方法では、殺菌対象物を接地側電極であるターンテーブル上に配置し、その後、当該ターンテーブルを所定角度だけ移動させて、当該殺菌対象物上に放電電極を近接させる。そして、電源から入力された電圧を放電側電極と接地側電極間に印加させることにより、これら放電側電極と接地側電極間に介在させた殺菌対象物を放電により殺菌処理していた。そして、殺菌処理後は、再びターンテーブルを所定角度だけ移動させて、殺菌対象物を取り出していた。
【特許文献1】特開平11−267183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の殺菌方法では、ターンテーブルに配置された状態で、殺菌対象物の殺菌処理を行っていたため、各電極による放電時間を変更することが困難であり、処理対象に応じた処理時間の変更を行うことができないという問題があった。また、ターンテーブルを用いた殺菌処理方法では、殺菌対象は殺菌している時間、殺菌スペースに固定されてしまうため、殺菌効率が悪いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の殺菌装置は、高電圧を発生する電源部と、当該電源部にて発生した高電圧が印加される放電側電極と、接地側電極とを有する処理装置を備え、両電極間に殺菌対象物を介在させて大気圧下で両電極間にパルスストリーマ放電を発生させることにより、殺菌対象物の殺菌処理を行うものであって、処理装置は、両電極を複数備えて移動する移動体と、該移動体の移動に伴い、放電側電極及び接地側電極がそれぞれ接触若しくは近接される放電側レール及び接地側レールとを備えるものである。
【0007】
請求項2の発明の殺菌装置は、上記発明において、両レールはそれぞれ円弧状を呈し、移動体は両レールの回転中心と同心円上に設けられているものである。
【0008】
請求項3の発明の殺菌装置は、上記各発明において、移動体の移動に伴い、接地側電極は、放電側電極が放電側レールに接触若しくは近接するより先行して接地側レールに接触若しくは近接すると共に、放電側電極が放電側レールから離間するより遅延して接地側レールから離間するものである。
【0009】
請求項4の発明の殺菌装置は、上記各発明において、放電側電極は移動体に設置されると共に、接地側電極は殺菌対象物を納出自在に収容する処理槽を有し、両電極間における放電開始前に当該処理槽内に殺菌対象物を収容するものである。
【0010】
請求項5の発明の殺菌装置は、上記各発明において、放電側電極及び接地側電極は、放電側レール及び接地側レールにそれぞれ当接するパンタグラフを有するものである。
【0011】
請求項6の発明の殺菌装置は、上記各発明において、放電側電極及び接地側電極を放電側レール及び接地側レール方向にそれぞれ付勢し、各レールに接触させる弾性部材を備えるものである。
【0012】
請求項7の発明の殺菌装置は、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4又は請求項5の発明において、放電側電極及び接地側電極を放電側レール及び接地側レール方向にそれぞれ移動させ、各レールに接触させる偏心カムを備えるものである。
【0013】
請求項8の発明の殺菌装置は、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4又は請求項5の発明において、移動体は、移動に伴って放電側電極及び接地側電極を放電側レール及び接地側レール方向にそれぞれ移動させ、各レールに接触させる突出部を備えるものである。
【0014】
請求項9の発明の殺菌装置は、上記各発明において、殺菌処理前の殺菌対象物を処理装置に送り、当該処理装置にて殺菌処理された殺菌対象物を次段の処理に送る搬送装置を備えるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の殺菌装置は、高電圧を発生する電源部と、当該電源部にて発生した高電圧が印加される放電側電極と、接地側電極とを有する処理装置を備え、両電極間に殺菌対象物を介在させて大気圧下で両電極間にパルスストリーマ放電を発生させることにより、殺菌対象物の殺菌処理を行うものであって、処理装置は、両電極を複数備えて移動する移動体と、該移動体の移動に伴い、放電側電極及び接地側電極がそれぞれ接触若しくは近接される放電側レール及び接地側レールとを備えるので、移動体に設けられたそれぞれの電極間に殺菌対象物を介在させることにより、容易に殺菌対象物をパルスストリーマ放電により殺菌処理することができるようになる。
【0016】
特に、本発明によれば、各電極は移動体に備えられていると共に、これらは移動に伴いそれぞれ放電側レール及び接地側レールに接触又は近接することにより、簡易な構成にて各電極間に高電圧を印加することができるようになる。そのため、移動体の移動速度や各レールの長さを変更することにより、各電極間への高電圧印加時間を変更することができるようになる。これにより、対象となる殺菌対象物に応じて殺菌処理時間を変更することができ、利便性の向上を図ることができるようになる。
【0017】
また、本発明は、上述した如く各電極は移動体に設けられているため、殺菌装置の小型化を図ることができるようになり、設置スペースの縮小を実現することができるようになる。
【0018】
請求項2の発明の殺菌装置は、上記発明において、両レールはそれぞれ円弧状を呈し、移動体は両レールの回転中心と同心円上に設けられているので、移動体の移動に伴い、両レールを移動体に設けられた放電側電極及び接地側電極と接触又は近接させることができ、連続した殺菌対象物の殺菌処理を実現することができるようになる。
【0019】
請求項3の発明の殺菌装置は、上記各発明において、移動体の移動に伴い、接地側電極は、放電側電極が放電側レールに接触若しくは近接するより先行して接地側レールに接触若しくは近接すると共に、放電側電極が放電側レールから離間するより遅延して接地側レールから離間するので、放電側電極に印加された高電圧を確実に接地させることができるようになる。これにより、安全性の向上を図ることができるようになる。
【0020】
請求項4の発明の殺菌装置は、上記各発明において、放電側電極は移動体に設置されると共に、接地側電極は殺菌対象物を納出自在に収容する処理槽を有し、両電極間における放電開始前に当該処理槽内に殺菌対象物を収容するので、処理槽内に収容された殺菌対象物を放電側電極が設置される移動体により移動しながら殺菌処理することができるようになる。
【0021】
また、請求項4の発明によれば、接地側電極は殺菌対象物を納出自在に収容する処理槽を有するので、放電側電極及び接地側電極間における放電開始前に当該処理槽内を常温、常圧下、更には殺菌に適する湿度、雰囲気とすることで、各電極間におけるパルスストリーマ放電の発生を安定させることができ、効果的に殺菌処理することができるようになる。
【0022】
請求項5の発明の殺菌装置は、上記各発明において、放電側電極及び接地側電極は、放電側レール及び接地側レールにそれぞれ当接するパンタグラフを有するので、円滑に放電側電極及び接地側電極を、放電側レール及び接地側レールにそれぞれ当接させることができるようになる。これにより、安定した高電圧の供給を実現することができるようになり、連続的に、安定した殺菌処理を行うことができるようになる。
【0023】
請求項6の発明の殺菌装置は、上記各発明において、放電側電極及び接地側電極を放電側レール及び接地側レール方向にそれぞれ付勢し、各レールに接触させる弾性部材を備えるので、移動体の移動に伴う放電側電極及び接地側電極の放電側レール及び接地側レールへの接触を円滑に、然も安定して実現することができるようになり、より一層、連続的に、安定した殺菌処理を行うことができるようになる。
【0024】
請求項7の発明の殺菌装置は、請求項1乃至請求項5の発明において、放電側電極及び接地側電極を放電側レール及び接地側レール方向にそれぞれ移動させ、各レールに接触させる偏心カムを備えるので、偏心カムの作用により、放電側電極及び接地側電極の放電側レール及び接地側レールへの接触を円滑に行うことができるようになり、より一層、連続的に、安定した殺菌処理を行うことができるようになる。また、かかる場合によれば、偏心カムの調整によっても殺菌処理時間の調整を行うことができるようになり、利便性の向上を図ることができるようになる。
【0025】
請求項8の発明の殺菌装置は、請求項1乃至請求項5の発明において、移動体は、移動に伴って放電側電極及び接地側電極を放電側レール及び接地側レール方向にそれぞれ移動させ、各レールに接触させる突出部を備えるので、これによっても、移動体の移動に伴う放電側電極及び接地側電極の放電側レール及び接地側レールへの接触を円滑に、然も安定して実現することができるようになり、より一層、連続的に、安定した殺菌処理を行うことができるようになる。
【0026】
請求項9の発明の殺菌装置は、上記各発明において、殺菌処理前の殺菌対象物を処理装置に送り、当該処理装置にて殺菌処理された殺菌対象物を次段の処理に送る搬送装置を備えるので、搬送装置により、殺菌対象物の殺菌処理前の処理装置と、当該殺菌装置と、殺菌処理後の処理装置とを連続して構成することが可能となり、作業の簡素化を図ることができるようになると共に、次段の処理過程へ衛生的な状態で搬送することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために、放電による殺菌処理時間を任意に変更することができると共に、殺菌効率の向上を図ることができる殺菌装置を提供する。以下に、本発明の殺菌装置1の実施形態について説明する。尚、本発明における殺菌対象物は、例えば、食品原料、食品、医薬品、漢方、薬品、化粧品、飼料、肥料、食品包装材等であるものとする。
【0028】
図1は殺菌対象物の殺菌前工程・殺菌・充填の一連作業の概略説明図、図2は殺菌装置1を構成する回転体2の斜視図、図3は放電側パンタグラフ14の概略断面図、図4は殺菌装置1の概略構成図、図5は回転体2の概略平面図、図6は各領域とレールとの位置関係を示す図、図7は殺菌装置1の電気回路図をそれぞれ示している。
【0029】
ここで、図1を参照して殺菌対象物の前工程・殺菌・充填の一連工程について説明する。先ず、S1において投入された殺菌対象物は、S2において水洗い、脱水等の殺菌前処理が行われ(殺菌前工程)、その後、コンベアシステムの搬送装置3により本発明の殺菌装置1に搬送され、詳細は後述する如く殺菌処理される(殺菌工程S3)。そして、殺菌処理された殺菌対象物は、搬送装置3により包装材への充填装置4に搬送され、充填作業が行われる(充填工程S4)。その後、充填が行われた殺菌対象物は、図示しないラベルが貼付された後、所定数ずつ段ボールなどの箱に梱包される(梱包工程S5)。本発明は、上記各製造工程における殺菌対象物の殺菌工程S3を行う殺菌装置1に関するものであり、以下に詳述する。
【0030】
殺菌装置(処理装置)1は、図2に示す如き移動体としての回転体2により構成され、この回転体2には、上アーム11及び下アーム12がそれぞれ水平に複数個形成されている。尚、図2では各アーム11、12が4つずつ形成されているが、略等間隔を存して4つ以上形成してもよいものとする。そして、これら下アーム12の下方には、それぞれ別個に上下に移動可能とされ、且つ、回転体2と同調して回転する図示しない保持搬送台が設けられる。この保持搬送台は、殺菌対象物を保持可能とすると共に、図示しない制御装置により制御される。尚、この保持搬送台には、殺菌対象物の底面とを絶縁するための絶縁材が設けられているものとする。
【0031】
各上アーム11は、端部から所定寸法だけ内側に位置して図示しない天板に放電側電極13が設けられ、この上アーム11の端部には、外方に付勢される弾性部材により構成された放電側パンタグラフ14(図3に図示する。)が設けられる。尚、この放電側パンタグラフ14は、導電性材料により構成されていると共に、放電側電極13と導通して設けられているものとする。また、これら放電側パンタグラフ14と放電側電極13は、各上アーム11と図示しない絶縁材料にて絶縁されているものとする。
【0032】
各下アーム12は、端部に上下に開口した円筒型を呈すると共に、殺菌対象物を納出自在に収容可能とする処理槽17が設けられ、該処理槽17には、接地側電極18が取り付けられる。尚、この処理槽17の上面開口は蓋35により開閉自在に閉塞される。この接地側電極18の下アーム12が取り付けられる箇所と対向する位置、即ち、接地側電極18の外端部に相当する位置には、外方に付勢される弾性部材により構成された接地側パンタグラフ19(構成は放電側パンタグラフ14と同様とする。)が設けられる。尚、この接地側パンタグラフ19も、放電側パンタグラフ14と同様に、導電性材料により構成されていると共に、接地側電極18と導通して設けられているものとする。また、これら接地側パンタグラフ19と接地側電極18は、各下アーム12と図示しない絶縁材料にて絶縁されているものとする。
【0033】
一方、この回転体2は、図5及び図6に示す如く各処理領域に分割されている。即ち、前述した如き搬送装置3により前段の殺菌前工程S2から搬送された殺菌対象物を回転体2に設けられた各処理槽17に順次収容し、殺菌対象物が収容された処理槽17内において、殺菌対象物となる例えば食品原料等の整列や放電前処理を行い、更には、処理槽17内に納入された殺菌対象物を順次、取出、後段の充填工程S4に搬送する搬送装置3に送出する無給電領域と、殺菌対象物の放電による殺菌処理を行う給電領域とに分割されている。
【0034】
そして、上記給電領域には、回転体2の外周に位置して、当該回転体2の回転に伴い、前記放電側電極13に接続される放電側パンタグラフ14及び接地側電極18に接続される接地側パンタグラフ19がそれぞれ接触する位置(放電側電極13及び接地側電極18が近接する位置)に、放電側レール20及び接地側レール21が設けられる。
【0035】
これら放電側レール20及び接地側レール21は、それぞれ円弧状を呈し、回転体2の回転中心と同心円上に設けられている。ここで、接地側レール21は、この給電領域の両端に渡って形成されていると共に、当該接地側レール21は、アースに接続されている。他方、放電側レール20の前端は、回転体2の回転に伴う接地側レール21の前端よりも後方の位置とされると共に、放電側レール20の後端は、回転体2の回転に伴う接地側レール21の後端よりも前方の位置とされる。即ち、接地側パンタグラフ19が、回転体2の回転に伴い、放電側パンタグラフ14の放電側レール20に接触するより先行して接地側レール21に接触すると共に、放電側パンタグラフ14が放電側レール20から離間するより遅延して接地側レール21から離間する構成とされている。そして、この放電側レール20は、高電圧を発生する電源22に接続されている。また、放電側レール20及び接地側レール21は、碍子36等で支持され、本装置の図示しない筐体と絶縁されているものとする。
【0036】
次に、図7を参照して本発明の殺菌装置1の電気回路について説明する。殺菌装置1の電気回路は、電源22の充電回路24が商用電源23に接続され、電源22のパルス形成回路30の出力が前記放電側電極13と接地側電極18に接続されている。31はアースである。
【0037】
パルス形成回路30はコンデンサー25、半導体スイッチ26、パルストランス27、過飽和リアクトル28、抵抗29などで構成され、これらと放電側電極13と接地側電極18及びそれらの間の配線を含めたパルス回路で決定されるパルス電圧が殺菌装置1の放電側電極13と接地側電極18間に印加される。
【0038】
以上の構成により、搬送装置3により殺菌前工程S2から搬送された殺菌対象物は、回転された回転体2の無給電領域に進入する。この無給電領域では、図示しない制御装置により順次殺菌対象物を、下方に退避していた前記保持搬送台に載置した後、該保持搬送台が上昇して、処理槽17内に殺菌対象物を収容する。このとき、天板に設けられた放電側電極13が殺菌対象物付近に下降する。
【0039】
処理槽17内に収容された殺菌対象物は、回転体2の回転に伴い、給電領域に向かう。この給電領域では、図示しない環境調整装置により、処理槽17内に、本実施例では、常温常圧に調湿された空気が処理槽17内に充填される。調整空気の充填後は、この処理槽17の上面開口は、蓋35により閉塞されるものとする。尚、本実施例において調整空気は、常温常圧に調整された空気としているが、殺菌対象物の殺菌に適する温度及び雰囲気となる空気を用いるとより効果的に殺菌処理ができる。
【0040】
次に、内部に調整空気が充填された処理槽17は、回転体2が回転することにより、給電領域に進入する。給電領域では、先ず、処理槽17に設けられる接地側パンタグラフ19が接地側レール21に接触し、次いで、放電側パンタグラフ14の放電側レール20に接触する。
【0041】
これにより、接地側パンタグラフ19及び放電側パンタグラフ14に接続されるそれぞれの電極13、18間に高電圧の電流が印加され、これら電極13、18間にパルスストリーマ放電が生じる。このとき、各電極13、18間には、プラズマ空間が形成され、各種ラジカルや紫外線が発生し、殺菌対象物が殺菌処理される。
【0042】
特に、本実施例では、処理槽17内は、圧力と湿度を調整しているため、各電極13、18間におけるパルスストリーマ放電を安定させることができ、殺菌対象物を効果的に殺菌処理することができるようになる。
【0043】
その後、回転体2の回転に伴い、先ず、放電側パンタグラフ14が放電側レール20から離間し、次いで、接地側パンタグラフ19が接地側レール21から離間する。そして、更に回転体2が回転することにより、処理槽17は、再び無給電領域に進入する。この無給電領域では、前記制御装置により前記保持搬送台が下方に退避し、殺菌対象物が処理槽17から取り出される。その後、前記保持搬送台上より殺菌対象物を搬送装置3に移送することにより、該殺菌対象物は、後段の充填工程S4に送出される。
【0044】
以上の構成により、回転体2の回転に伴い、順次、放電側電極13及び接地側電極18をそれぞれ放電側レール20及び接地側レール21に接触させることが可能となり、各電極13、18間に介在された殺菌対象物を容易にパルスストリーマ放電により殺菌処理することができるようになる。
【0045】
特に、本発明では、各電極13、18は回転体2に設けられ、回転に伴いそれぞれ放電側レール20及び接地側レール21に接触することにより、容易に電極13、18間に高電圧を印加することができる。そのため、回転体2の回転速度や各レール20、21の長さを変更することにより、各電極13、18間への高電圧印加時間を変更することができる。そのため、対象となる殺菌対象物に応じて殺菌処理時間を変更することができ、利便性の向上を図ることができるようになる。
【0046】
また、各電極13、18は回転体2に設けられているため、殺菌装置1自体を小型化することができ、設置スペースの縮小を実現することができるようになる。
【0047】
更に、放電側レール20及び接地側レール21はそれぞれ円弧状を呈し、回転体2の回転中心と同心円上に設けられているので、回転体2の回転に伴い、両レール20、21を回転体2に設けられた放電側パンタグラフ14及び接地側パンタグラフ19と接触させることができ、連続した殺菌処理を実現することができるようになる。
【0048】
また、接地側パンタグラフ19は、回転体2の回転に伴い、放電側パンタグラフ14が放電側レール20に接触するより先行して接地側レール21に接触すると共に、放電側パンタグラフ14が放電側レール20から離間するより遅延して接地側レール21から離間するので、放電側電極13に印加された高電圧を確実に接地することができるようになる。これにより、安全性の向上を図ることができる。
【0049】
本実施例では、放電側電極13及び接地側電極18は、放電側レール20及び接地側レール21にそれぞれ当接するパンタグラフ14、19を介して通電を行っているため、円滑に放電側電極13及び接地側電極18を、放電側レール20及び接地側レール21にそれぞれ当接させることができるようになる。これにより、安定した高電圧の供給を実現することができるようになり、連続的に、安定した殺菌対象物の殺菌処理を行うことができるようになる。
【0050】
尚、本実施例では、前記保持搬送台に殺菌対象物を載置し、該保持搬送台を上下に移動させることにより、殺菌対象物を処理槽17に収容可能としているが、これ以外にも、処理槽17を有底円筒型とし、各アーム11、12を別個に上下移動自在として、保持搬送台を設けることなく、処理槽17内に殺菌対象物を収容可能としてもよいものとする。
【0051】
また、本実施例では、上述した如くパンタグラフ14、19を介して放電側電極13及び接地側電極18の放電側レール20及び接地側レール21への通電を行っているが、これ以外にも、図8に示す如き形状の導電性材料により構成されたパンタグラフ40や図9に示す如く先端に導電性材料により構成された当接部41を備えると共に、各アーム11、12側を外方に付勢された弾性部材42により構成された当接部材43により構成してもよいものとする。これによっても、回転体2の回転に伴う放電側電極13及び接地側電極18の放電側レール20及び接地側レール21への接触を円滑に、然も安定して実現することができるようになり、連続的に、安定した殺菌処理を行うことができるようになる。
【0052】
尚、図9に示す如き当接部材43は、図10に示すように当接部41を前記弾性部材42に対し回転可能に構成しても良いものとする。これにより、当接部41が回転することで、放電側電極13及び接地側電極18の放電側レール20及び接地側レール21への接触時に生じる摩擦を低減することができ、より一層円滑に、安定して殺菌処理を行うことができるようになる。
【0053】
また、これ以外にも、図11に示す如く各アーム11、12に偏心カム45を備え、係る偏心カム45の作動により、各アーム11、12に設けられた放電側電極13及び接地側電極18を放電側レール20及び接地側レール21方向にそれぞれ移動させることにより、放電側電極13及び接地側電極18の放電側レール20及び接地側レール21への接触を円滑に行うことができる。これによっても、連続的に、安定した殺菌処理を行うことができるようになる。また、かかる場合によれば、偏心カム45の調整により各電極13、18と各レール20、21との接触時間を調整することができ、これにより、殺菌処理時間の調整を行うことができる。
【0054】
また、更に、図12に示す如く各アーム11、12が回転により当接する回転体2の本体側であって、給電領域に対応する位置に各レール20、21側に突出する突出部2Aを形成してもよいものする。これにより、回転体2の回転に伴って、給電領域に到達した放電側電極13及び接地側電極18を放電側レール20及び接地側レール21方向にそれぞれ移動させ、各レール20、21に接触させることにより、簡素な構成にて円滑に、然も安定して回転体2の回転に伴う放電側電極13及び接地側電極18の放電側レール20及び接地側レール21への接触することができるようになる。そのため、係る方法によっても、連続的に、安定した殺菌処理を行うことができるようになる。
【0055】
尚、上記実施例では、図5に示すように給電領域に設けられた放電側レール20及び接地側レール21は、一連のレールにより構成されているが、これ以外にも、図13に示すように、給電領域に間欠的に設けられる放電側レール20A及び接地側レール21Aによって構成しても良いものとする。係る場合には、各放電側レール20A及び接地側レール21Aはそれぞれ円弧状を呈し、回転体2の回転中心と同心円上に設けられている。更に、接地側パンタグラフ19が、回転体2の回転に伴い、放電側パンタグラフ14が各放電側レール20Aに接触するより先行して各接地側レール21Aに接触すると共に、放電側パンタグラフ14が各放電側レール20Aから離間するより遅延して各接地側レール21Aから離間するように構成されているものとする。
【0056】
これにより、上記実施例と同様に放電側電極13に印加された高電圧を確実に接地することができるようになり、安全性の向上を図ることができる。また、このように間欠的に放電を行うことができるようになることから、当該放電と放電の間において、殺菌対象物の撹拌などを行っても良いものとする。これにより、給電領域において、殺菌対象物を撹拌しながら放電することができるため、一度目の放電では、十分に殺菌処理されなかった箇所をも撹拌されることで、それ以降の放電によって、殺菌処理することができるようになる。
【0057】
また、本実施例では、接地側電極13の接地を行う接地側レール21は、放電側レール20と同様に回転体2の回転中心と同心円上に設けられた円弧状に形成されているが、これ以外にも、図14に示すように回転体2本体にアースし、本体軸を介し接地を行う方式を採用しても良いものとする。係る場合には、回転体2ではリング式またはブラシ式の接点を用いることがより好ましい。これにより、より簡素な構成にて本発明を実現することができるようになる。
【0058】
更に、回転体2は、正回転のみならず逆回転可能な構成としてもよいものとする。これにより、使用時におけるアクシデントに容易に対応することが可能となり、使用性の向上を図ることができるようになる。
【0059】
尚、本実施例では、移動体として回転体2が用いられているが、これ以外にも直線的に移動する移動体40であっても良いものとする。即ち、図15に示す殺菌装置39のように、直線的に設けられる搬送装置3には、殺菌対象物を納出自在に収容可能とする処理槽17を所定間隔を存して複数設け、該処理槽17には、端部に接地側パンタグラフ19を備えた接地側電極18と、端部に放電側パンタグラフ14を備えた放電側電極13が上下に位置して設けられる。
【0060】
そして、当該搬送装置3に対して略平行に上記実施例と同様に高電圧を発生する電源22に接続される放電側レール41と、当該放電側レール41よりも先行する位置にアース31に接続された接地側レール42が上下に設けられる。尚、これら放電側レール41及び接地側レール42は、略直線的に構成されているものとする。そして、接地側レール42は、放電側パンタグラフ14が放電側レール41に接触するより先行して接地側パンタグラフ19が接地側レール42に接触すると共に、放電側パンタグラフ14が放電側レール20から離間するより遅延して接地側レール42から離間する構成とされているものとする。
【0061】
そのため、係る場合においても、移動体40の移動に伴い放電側パンタグラフ14及び接地側パンタグラフ19がそれぞれ放電側レール41や接地側レール42に接触することにより、容易に電極13、18間に高電圧を印加することができる。そのため、移動体40の移動速度や各レール41、42の長さを変更することにより、各電極13、18間への高電圧印加時間を変更することができ、対象となる殺菌対象物に応じて殺菌処理時間を変更することができ、利便性の向上を図ることができるようになる。
【0062】
尚、係る場合においても、上記図14と同様に、接地側電極13の接地を行う接地側レール42は、図16に示すように、移動体40本体にアースし、本体を介し接地を行う方式を採用しても良いものとする。これにより、より簡素な構成にて本発明を実現することができるようになる。
【0063】
尚、各実施例では、移動体は回転体2又は直線的に移動する移動体40により構成されているが、これ以外にも移動軌跡が上下の波状を描く移動体や、上下移動を行う移動体であっても良いものとする。これにより、処理槽17が移動軌跡によって上下に揺さぶられることにより、撹拌しながら殺菌処理を行うことができるようになる。
【0064】
尚、各工程は、上述した如く搬送装置3により、殺菌対象物の殺菌処理前の工程と、当該殺菌装置1と、殺菌処理後の工程とを連続して構成することが可能となり、作業の簡素化を図ることができるようになる。また、次段の処理過程へ衛生的な状態で殺菌対象物を搬送することができるようになる。
【0065】
上記実施形態は熱により変質しやすい殺菌対象物の殺菌について説明したが、本発明はこれに限定されず他の殺菌対象物にも広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】殺菌対象物の殺菌前工程・殺菌・充填の一連作業の概略説明図である。
【図2】殺菌装置を構成する回転体の斜視図である。
【図3】パンタグラフの概略断面図である。
【図4】殺菌装置の概略構成図である。
【図5】回転体の概略平面図である。
【図6】各領域とレールとの位置関係を示す図である。
【図7】殺菌装置の電気回路図である。
【図8】他の実施例のパンタグラフの概略断面図である。
【図9】他の実施例の当接部材の概略側面図である。
【図10】他の実施例の当接部材の概略側面図である。
【図11】もう一つの他の実施例の各電極とレールの接触方法を示す概略説明図である。
【図12】更にもう一つの他の実施例の各電極とレールの接触方法を示す概略説明図である。
【図13】他の実施例の回転体の概略平面図である。
【図14】他の実施例の殺菌装置の概略構成図である。
【図15】他の実施例の殺菌装置の概略構成図である。
【図16】他の実施例の殺菌装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0067】
1、39 殺菌装置
2 回転体
3 搬送装置
11 上アーム
12 下アーム
13 放電側電極
14 放電側パンタグラフ
17 処理槽
18 接地側電極
19 接地側パンタグラフ
20、41 放電側レール
21、42 接地側レール
22 電源
31 アース
40 移動体
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧を利用して食品原料、食品、医薬品、漢方、薬品、化粧品、飼料、肥料、食品包装材等を加熱殺菌では熱により変質する殺菌対象物を殺菌する殺菌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱殺菌では熱により変質しやすい殺菌対象物を殺菌するには、UV(紫外線)を照射したり、過酸化水素あるいはエタノール等の消毒液が用いられていた。しかしながら、UV照射の場合は、照射時間が長いと殺菌対象物の表面が変質することがあり、又、消毒液の場合は消毒むらの発生や、残余消毒液による安全性の低下が懸念される。
【0003】
そこで、従来では殺菌処理方法として、高電圧を発生する電源部と、発生した高電圧を印加する放電側電極及び接地側電極を有する処理装置により、各電極間に殺菌対象物を介在させて、これら電極間でパルスストリーマ放電を発生させ、殺菌処理を行う方法が開示されている(特許文献1参照。)。
【0004】
係る方法では、殺菌対象物を接地側電極であるターンテーブル上に配置し、その後、当該ターンテーブルを所定角度だけ移動させて、当該殺菌対象物上に放電電極を近接させる。そして、電源から入力された電圧を放電側電極と接地側電極間に印加させることにより、これら放電側電極と接地側電極間に介在させた殺菌対象物を放電により殺菌処理していた。そして、殺菌処理後は、再びターンテーブルを所定角度だけ移動させて、殺菌対象物を取り出していた。
【特許文献1】特開平11−267183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の殺菌方法では、ターンテーブルに配置された状態で、殺菌対象物の殺菌処理を行っていたため、各電極による放電時間を変更することが困難であり、処理対象に応じた処理時間の変更を行うことができないという問題があった。また、ターンテーブルを用いた殺菌処理方法では、殺菌対象は殺菌している時間、殺菌スペースに固定されてしまうため、殺菌効率が悪いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の殺菌装置は、高電圧を発生する電源部と、当該電源部にて発生した高電圧が印加される放電側電極と、接地側電極とを有する処理装置を備え、両電極間に殺菌対象物を介在させて大気圧下で両電極間にパルスストリーマ放電を発生させることにより、殺菌対象物の殺菌処理を行うものであって、処理装置は、両電極を複数備えて移動する移動体と、該移動体の移動に伴い、放電側電極及び接地側電極がそれぞれ接触若しくは近接される放電側レール及び接地側レールとを備えるものである。
【0007】
請求項2の発明の殺菌装置は、上記発明において、両レールはそれぞれ円弧状を呈し、移動体は両レールの回転中心と同心円上に設けられているものである。
【0008】
請求項3の発明の殺菌装置は、上記各発明において、移動体の移動に伴い、接地側電極は、放電側電極が放電側レールに接触若しくは近接するより先行して接地側レールに接触若しくは近接すると共に、放電側電極が放電側レールから離間するより遅延して接地側レールから離間するものである。
【0009】
請求項4の発明の殺菌装置は、上記各発明において、放電側電極は移動体に設置されると共に、接地側電極は殺菌対象物を納出自在に収容する処理槽を有し、両電極間における放電開始前に当該処理槽内に殺菌対象物を収容するものである。
【0010】
請求項5の発明の殺菌装置は、上記各発明において、放電側電極及び接地側電極は、放電側レール及び接地側レールにそれぞれ当接するパンタグラフを有するものである。
【0011】
請求項6の発明の殺菌装置は、上記各発明において、放電側電極及び接地側電極を放電側レール及び接地側レール方向にそれぞれ付勢し、各レールに接触させる弾性部材を備えるものである。
【0012】
請求項7の発明の殺菌装置は、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4又は請求項5の発明において、放電側電極及び接地側電極を放電側レール及び接地側レール方向にそれぞれ移動させ、各レールに接触させる偏心カムを備えるものである。
【0013】
請求項8の発明の殺菌装置は、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4又は請求項5の発明において、移動体は、移動に伴って放電側電極及び接地側電極を放電側レール及び接地側レール方向にそれぞれ移動させ、各レールに接触させる突出部を備えるものである。
【0014】
請求項9の発明の殺菌装置は、上記各発明において、殺菌処理前の殺菌対象物を処理装置に送り、当該処理装置にて殺菌処理された殺菌対象物を次段の処理に送る搬送装置を備えるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の殺菌装置は、高電圧を発生する電源部と、当該電源部にて発生した高電圧が印加される放電側電極と、接地側電極とを有する処理装置を備え、両電極間に殺菌対象物を介在させて大気圧下で両電極間にパルスストリーマ放電を発生させることにより、殺菌対象物の殺菌処理を行うものであって、処理装置は、両電極を複数備えて移動する移動体と、該移動体の移動に伴い、放電側電極及び接地側電極がそれぞれ接触若しくは近接される放電側レール及び接地側レールとを備えるので、移動体に設けられたそれぞれの電極間に殺菌対象物を介在させることにより、容易に殺菌対象物をパルスストリーマ放電により殺菌処理することができるようになる。
【0016】
特に、本発明によれば、各電極は移動体に備えられていると共に、これらは移動に伴いそれぞれ放電側レール及び接地側レールに接触又は近接することにより、簡易な構成にて各電極間に高電圧を印加することができるようになる。そのため、移動体の移動速度や各レールの長さを変更することにより、各電極間への高電圧印加時間を変更することができるようになる。これにより、対象となる殺菌対象物に応じて殺菌処理時間を変更することができ、利便性の向上を図ることができるようになる。
【0017】
また、本発明は、上述した如く各電極は移動体に設けられているため、殺菌装置の小型化を図ることができるようになり、設置スペースの縮小を実現することができるようになる。
【0018】
請求項2の発明の殺菌装置は、上記発明において、両レールはそれぞれ円弧状を呈し、移動体は両レールの回転中心と同心円上に設けられているので、移動体の移動に伴い、両レールを移動体に設けられた放電側電極及び接地側電極と接触又は近接させることができ、連続した殺菌対象物の殺菌処理を実現することができるようになる。
【0019】
請求項3の発明の殺菌装置は、上記各発明において、移動体の移動に伴い、接地側電極は、放電側電極が放電側レールに接触若しくは近接するより先行して接地側レールに接触若しくは近接すると共に、放電側電極が放電側レールから離間するより遅延して接地側レールから離間するので、放電側電極に印加された高電圧を確実に接地させることができるようになる。これにより、安全性の向上を図ることができるようになる。
【0020】
請求項4の発明の殺菌装置は、上記各発明において、放電側電極は移動体に設置されると共に、接地側電極は殺菌対象物を納出自在に収容する処理槽を有し、両電極間における放電開始前に当該処理槽内に殺菌対象物を収容するので、処理槽内に収容された殺菌対象物を放電側電極が設置される移動体により移動しながら殺菌処理することができるようになる。
【0021】
また、請求項4の発明によれば、接地側電極は殺菌対象物を納出自在に収容する処理槽を有するので、放電側電極及び接地側電極間における放電開始前に当該処理槽内を常温、常圧下、更には殺菌に適する湿度、雰囲気とすることで、各電極間におけるパルスストリーマ放電の発生を安定させることができ、効果的に殺菌処理することができるようになる。
【0022】
請求項5の発明の殺菌装置は、上記各発明において、放電側電極及び接地側電極は、放電側レール及び接地側レールにそれぞれ当接するパンタグラフを有するので、円滑に放電側電極及び接地側電極を、放電側レール及び接地側レールにそれぞれ当接させることができるようになる。これにより、安定した高電圧の供給を実現することができるようになり、連続的に、安定した殺菌処理を行うことができるようになる。
【0023】
請求項6の発明の殺菌装置は、上記各発明において、放電側電極及び接地側電極を放電側レール及び接地側レール方向にそれぞれ付勢し、各レールに接触させる弾性部材を備えるので、移動体の移動に伴う放電側電極及び接地側電極の放電側レール及び接地側レールへの接触を円滑に、然も安定して実現することができるようになり、より一層、連続的に、安定した殺菌処理を行うことができるようになる。
【0024】
請求項7の発明の殺菌装置は、請求項1乃至請求項5の発明において、放電側電極及び接地側電極を放電側レール及び接地側レール方向にそれぞれ移動させ、各レールに接触させる偏心カムを備えるので、偏心カムの作用により、放電側電極及び接地側電極の放電側レール及び接地側レールへの接触を円滑に行うことができるようになり、より一層、連続的に、安定した殺菌処理を行うことができるようになる。また、かかる場合によれば、偏心カムの調整によっても殺菌処理時間の調整を行うことができるようになり、利便性の向上を図ることができるようになる。
【0025】
請求項8の発明の殺菌装置は、請求項1乃至請求項5の発明において、移動体は、移動に伴って放電側電極及び接地側電極を放電側レール及び接地側レール方向にそれぞれ移動させ、各レールに接触させる突出部を備えるので、これによっても、移動体の移動に伴う放電側電極及び接地側電極の放電側レール及び接地側レールへの接触を円滑に、然も安定して実現することができるようになり、より一層、連続的に、安定した殺菌処理を行うことができるようになる。
【0026】
請求項9の発明の殺菌装置は、上記各発明において、殺菌処理前の殺菌対象物を処理装置に送り、当該処理装置にて殺菌処理された殺菌対象物を次段の処理に送る搬送装置を備えるので、搬送装置により、殺菌対象物の殺菌処理前の処理装置と、当該殺菌装置と、殺菌処理後の処理装置とを連続して構成することが可能となり、作業の簡素化を図ることができるようになると共に、次段の処理過程へ衛生的な状態で搬送することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために、放電による殺菌処理時間を任意に変更することができると共に、殺菌効率の向上を図ることができる殺菌装置を提供する。以下に、本発明の殺菌装置1の実施形態について説明する。尚、本発明における殺菌対象物は、例えば、食品原料、食品、医薬品、漢方、薬品、化粧品、飼料、肥料、食品包装材等であるものとする。
【0028】
図1は殺菌対象物の殺菌前工程・殺菌・充填の一連作業の概略説明図、図2は殺菌装置1を構成する回転体2の斜視図、図3は放電側パンタグラフ14の概略断面図、図4は殺菌装置1の概略構成図、図5は回転体2の概略平面図、図6は各領域とレールとの位置関係を示す図、図7は殺菌装置1の電気回路図をそれぞれ示している。
【0029】
ここで、図1を参照して殺菌対象物の前工程・殺菌・充填の一連工程について説明する。先ず、S1において投入された殺菌対象物は、S2において水洗い、脱水等の殺菌前処理が行われ(殺菌前工程)、その後、コンベアシステムの搬送装置3により本発明の殺菌装置1に搬送され、詳細は後述する如く殺菌処理される(殺菌工程S3)。そして、殺菌処理された殺菌対象物は、搬送装置3により包装材への充填装置4に搬送され、充填作業が行われる(充填工程S4)。その後、充填が行われた殺菌対象物は、図示しないラベルが貼付された後、所定数ずつ段ボールなどの箱に梱包される(梱包工程S5)。本発明は、上記各製造工程における殺菌対象物の殺菌工程S3を行う殺菌装置1に関するものであり、以下に詳述する。
【0030】
殺菌装置(処理装置)1は、図2に示す如き移動体としての回転体2により構成され、この回転体2には、上アーム11及び下アーム12がそれぞれ水平に複数個形成されている。尚、図2では各アーム11、12が4つずつ形成されているが、略等間隔を存して4つ以上形成してもよいものとする。そして、これら下アーム12の下方には、それぞれ別個に上下に移動可能とされ、且つ、回転体2と同調して回転する図示しない保持搬送台が設けられる。この保持搬送台は、殺菌対象物を保持可能とすると共に、図示しない制御装置により制御される。尚、この保持搬送台には、殺菌対象物の底面とを絶縁するための絶縁材が設けられているものとする。
【0031】
各上アーム11は、端部から所定寸法だけ内側に位置して図示しない天板に放電側電極13が設けられ、この上アーム11の端部には、外方に付勢される弾性部材により構成された放電側パンタグラフ14(図3に図示する。)が設けられる。尚、この放電側パンタグラフ14は、導電性材料により構成されていると共に、放電側電極13と導通して設けられているものとする。また、これら放電側パンタグラフ14と放電側電極13は、各上アーム11と図示しない絶縁材料にて絶縁されているものとする。
【0032】
各下アーム12は、端部に上下に開口した円筒型を呈すると共に、殺菌対象物を納出自在に収容可能とする処理槽17が設けられ、該処理槽17には、接地側電極18が取り付けられる。尚、この処理槽17の上面開口は蓋35により開閉自在に閉塞される。この接地側電極18の下アーム12が取り付けられる箇所と対向する位置、即ち、接地側電極18の外端部に相当する位置には、外方に付勢される弾性部材により構成された接地側パンタグラフ19(構成は放電側パンタグラフ14と同様とする。)が設けられる。尚、この接地側パンタグラフ19も、放電側パンタグラフ14と同様に、導電性材料により構成されていると共に、接地側電極18と導通して設けられているものとする。また、これら接地側パンタグラフ19と接地側電極18は、各下アーム12と図示しない絶縁材料にて絶縁されているものとする。
【0033】
一方、この回転体2は、図5及び図6に示す如く各処理領域に分割されている。即ち、前述した如き搬送装置3により前段の殺菌前工程S2から搬送された殺菌対象物を回転体2に設けられた各処理槽17に順次収容し、殺菌対象物が収容された処理槽17内において、殺菌対象物となる例えば食品原料等の整列や放電前処理を行い、更には、処理槽17内に納入された殺菌対象物を順次、取出、後段の充填工程S4に搬送する搬送装置3に送出する無給電領域と、殺菌対象物の放電による殺菌処理を行う給電領域とに分割されている。
【0034】
そして、上記給電領域には、回転体2の外周に位置して、当該回転体2の回転に伴い、前記放電側電極13に接続される放電側パンタグラフ14及び接地側電極18に接続される接地側パンタグラフ19がそれぞれ接触する位置(放電側電極13及び接地側電極18が近接する位置)に、放電側レール20及び接地側レール21が設けられる。
【0035】
これら放電側レール20及び接地側レール21は、それぞれ円弧状を呈し、回転体2の回転中心と同心円上に設けられている。ここで、接地側レール21は、この給電領域の両端に渡って形成されていると共に、当該接地側レール21は、アースに接続されている。他方、放電側レール20の前端は、回転体2の回転に伴う接地側レール21の前端よりも後方の位置とされると共に、放電側レール20の後端は、回転体2の回転に伴う接地側レール21の後端よりも前方の位置とされる。即ち、接地側パンタグラフ19が、回転体2の回転に伴い、放電側パンタグラフ14の放電側レール20に接触するより先行して接地側レール21に接触すると共に、放電側パンタグラフ14が放電側レール20から離間するより遅延して接地側レール21から離間する構成とされている。そして、この放電側レール20は、高電圧を発生する電源22に接続されている。また、放電側レール20及び接地側レール21は、碍子36等で支持され、本装置の図示しない筐体と絶縁されているものとする。
【0036】
次に、図7を参照して本発明の殺菌装置1の電気回路について説明する。殺菌装置1の電気回路は、電源22の充電回路24が商用電源23に接続され、電源22のパルス形成回路30の出力が前記放電側電極13と接地側電極18に接続されている。31はアースである。
【0037】
パルス形成回路30はコンデンサー25、半導体スイッチ26、パルストランス27、過飽和リアクトル28、抵抗29などで構成され、これらと放電側電極13と接地側電極18及びそれらの間の配線を含めたパルス回路で決定されるパルス電圧が殺菌装置1の放電側電極13と接地側電極18間に印加される。
【0038】
以上の構成により、搬送装置3により殺菌前工程S2から搬送された殺菌対象物は、回転された回転体2の無給電領域に進入する。この無給電領域では、図示しない制御装置により順次殺菌対象物を、下方に退避していた前記保持搬送台に載置した後、該保持搬送台が上昇して、処理槽17内に殺菌対象物を収容する。このとき、天板に設けられた放電側電極13が殺菌対象物付近に下降する。
【0039】
処理槽17内に収容された殺菌対象物は、回転体2の回転に伴い、給電領域に向かう。この給電領域では、図示しない環境調整装置により、処理槽17内に、本実施例では、常温常圧に調湿された空気が処理槽17内に充填される。調整空気の充填後は、この処理槽17の上面開口は、蓋35により閉塞されるものとする。尚、本実施例において調整空気は、常温常圧に調整された空気としているが、殺菌対象物の殺菌に適する温度及び雰囲気となる空気を用いるとより効果的に殺菌処理ができる。
【0040】
次に、内部に調整空気が充填された処理槽17は、回転体2が回転することにより、給電領域に進入する。給電領域では、先ず、処理槽17に設けられる接地側パンタグラフ19が接地側レール21に接触し、次いで、放電側パンタグラフ14の放電側レール20に接触する。
【0041】
これにより、接地側パンタグラフ19及び放電側パンタグラフ14に接続されるそれぞれの電極13、18間に高電圧の電流が印加され、これら電極13、18間にパルスストリーマ放電が生じる。このとき、各電極13、18間には、プラズマ空間が形成され、各種ラジカルや紫外線が発生し、殺菌対象物が殺菌処理される。
【0042】
特に、本実施例では、処理槽17内は、圧力と湿度を調整しているため、各電極13、18間におけるパルスストリーマ放電を安定させることができ、殺菌対象物を効果的に殺菌処理することができるようになる。
【0043】
その後、回転体2の回転に伴い、先ず、放電側パンタグラフ14が放電側レール20から離間し、次いで、接地側パンタグラフ19が接地側レール21から離間する。そして、更に回転体2が回転することにより、処理槽17は、再び無給電領域に進入する。この無給電領域では、前記制御装置により前記保持搬送台が下方に退避し、殺菌対象物が処理槽17から取り出される。その後、前記保持搬送台上より殺菌対象物を搬送装置3に移送することにより、該殺菌対象物は、後段の充填工程S4に送出される。
【0044】
以上の構成により、回転体2の回転に伴い、順次、放電側電極13及び接地側電極18をそれぞれ放電側レール20及び接地側レール21に接触させることが可能となり、各電極13、18間に介在された殺菌対象物を容易にパルスストリーマ放電により殺菌処理することができるようになる。
【0045】
特に、本発明では、各電極13、18は回転体2に設けられ、回転に伴いそれぞれ放電側レール20及び接地側レール21に接触することにより、容易に電極13、18間に高電圧を印加することができる。そのため、回転体2の回転速度や各レール20、21の長さを変更することにより、各電極13、18間への高電圧印加時間を変更することができる。そのため、対象となる殺菌対象物に応じて殺菌処理時間を変更することができ、利便性の向上を図ることができるようになる。
【0046】
また、各電極13、18は回転体2に設けられているため、殺菌装置1自体を小型化することができ、設置スペースの縮小を実現することができるようになる。
【0047】
更に、放電側レール20及び接地側レール21はそれぞれ円弧状を呈し、回転体2の回転中心と同心円上に設けられているので、回転体2の回転に伴い、両レール20、21を回転体2に設けられた放電側パンタグラフ14及び接地側パンタグラフ19と接触させることができ、連続した殺菌処理を実現することができるようになる。
【0048】
また、接地側パンタグラフ19は、回転体2の回転に伴い、放電側パンタグラフ14が放電側レール20に接触するより先行して接地側レール21に接触すると共に、放電側パンタグラフ14が放電側レール20から離間するより遅延して接地側レール21から離間するので、放電側電極13に印加された高電圧を確実に接地することができるようになる。これにより、安全性の向上を図ることができる。
【0049】
本実施例では、放電側電極13及び接地側電極18は、放電側レール20及び接地側レール21にそれぞれ当接するパンタグラフ14、19を介して通電を行っているため、円滑に放電側電極13及び接地側電極18を、放電側レール20及び接地側レール21にそれぞれ当接させることができるようになる。これにより、安定した高電圧の供給を実現することができるようになり、連続的に、安定した殺菌対象物の殺菌処理を行うことができるようになる。
【0050】
尚、本実施例では、前記保持搬送台に殺菌対象物を載置し、該保持搬送台を上下に移動させることにより、殺菌対象物を処理槽17に収容可能としているが、これ以外にも、処理槽17を有底円筒型とし、各アーム11、12を別個に上下移動自在として、保持搬送台を設けることなく、処理槽17内に殺菌対象物を収容可能としてもよいものとする。
【0051】
また、本実施例では、上述した如くパンタグラフ14、19を介して放電側電極13及び接地側電極18の放電側レール20及び接地側レール21への通電を行っているが、これ以外にも、図8に示す如き形状の導電性材料により構成されたパンタグラフ40や図9に示す如く先端に導電性材料により構成された当接部41を備えると共に、各アーム11、12側を外方に付勢された弾性部材42により構成された当接部材43により構成してもよいものとする。これによっても、回転体2の回転に伴う放電側電極13及び接地側電極18の放電側レール20及び接地側レール21への接触を円滑に、然も安定して実現することができるようになり、連続的に、安定した殺菌処理を行うことができるようになる。
【0052】
尚、図9に示す如き当接部材43は、図10に示すように当接部41を前記弾性部材42に対し回転可能に構成しても良いものとする。これにより、当接部41が回転することで、放電側電極13及び接地側電極18の放電側レール20及び接地側レール21への接触時に生じる摩擦を低減することができ、より一層円滑に、安定して殺菌処理を行うことができるようになる。
【0053】
また、これ以外にも、図11に示す如く各アーム11、12に偏心カム45を備え、係る偏心カム45の作動により、各アーム11、12に設けられた放電側電極13及び接地側電極18を放電側レール20及び接地側レール21方向にそれぞれ移動させることにより、放電側電極13及び接地側電極18の放電側レール20及び接地側レール21への接触を円滑に行うことができる。これによっても、連続的に、安定した殺菌処理を行うことができるようになる。また、かかる場合によれば、偏心カム45の調整により各電極13、18と各レール20、21との接触時間を調整することができ、これにより、殺菌処理時間の調整を行うことができる。
【0054】
また、更に、図12に示す如く各アーム11、12が回転により当接する回転体2の本体側であって、給電領域に対応する位置に各レール20、21側に突出する突出部2Aを形成してもよいものする。これにより、回転体2の回転に伴って、給電領域に到達した放電側電極13及び接地側電極18を放電側レール20及び接地側レール21方向にそれぞれ移動させ、各レール20、21に接触させることにより、簡素な構成にて円滑に、然も安定して回転体2の回転に伴う放電側電極13及び接地側電極18の放電側レール20及び接地側レール21への接触することができるようになる。そのため、係る方法によっても、連続的に、安定した殺菌処理を行うことができるようになる。
【0055】
尚、上記実施例では、図5に示すように給電領域に設けられた放電側レール20及び接地側レール21は、一連のレールにより構成されているが、これ以外にも、図13に示すように、給電領域に間欠的に設けられる放電側レール20A及び接地側レール21Aによって構成しても良いものとする。係る場合には、各放電側レール20A及び接地側レール21Aはそれぞれ円弧状を呈し、回転体2の回転中心と同心円上に設けられている。更に、接地側パンタグラフ19が、回転体2の回転に伴い、放電側パンタグラフ14が各放電側レール20Aに接触するより先行して各接地側レール21Aに接触すると共に、放電側パンタグラフ14が各放電側レール20Aから離間するより遅延して各接地側レール21Aから離間するように構成されているものとする。
【0056】
これにより、上記実施例と同様に放電側電極13に印加された高電圧を確実に接地することができるようになり、安全性の向上を図ることができる。また、このように間欠的に放電を行うことができるようになることから、当該放電と放電の間において、殺菌対象物の撹拌などを行っても良いものとする。これにより、給電領域において、殺菌対象物を撹拌しながら放電することができるため、一度目の放電では、十分に殺菌処理されなかった箇所をも撹拌されることで、それ以降の放電によって、殺菌処理することができるようになる。
【0057】
また、本実施例では、接地側電極13の接地を行う接地側レール21は、放電側レール20と同様に回転体2の回転中心と同心円上に設けられた円弧状に形成されているが、これ以外にも、図14に示すように回転体2本体にアースし、本体軸を介し接地を行う方式を採用しても良いものとする。係る場合には、回転体2ではリング式またはブラシ式の接点を用いることがより好ましい。これにより、より簡素な構成にて本発明を実現することができるようになる。
【0058】
更に、回転体2は、正回転のみならず逆回転可能な構成としてもよいものとする。これにより、使用時におけるアクシデントに容易に対応することが可能となり、使用性の向上を図ることができるようになる。
【0059】
尚、本実施例では、移動体として回転体2が用いられているが、これ以外にも直線的に移動する移動体40であっても良いものとする。即ち、図15に示す殺菌装置39のように、直線的に設けられる搬送装置3には、殺菌対象物を納出自在に収容可能とする処理槽17を所定間隔を存して複数設け、該処理槽17には、端部に接地側パンタグラフ19を備えた接地側電極18と、端部に放電側パンタグラフ14を備えた放電側電極13が上下に位置して設けられる。
【0060】
そして、当該搬送装置3に対して略平行に上記実施例と同様に高電圧を発生する電源22に接続される放電側レール41と、当該放電側レール41よりも先行する位置にアース31に接続された接地側レール42が上下に設けられる。尚、これら放電側レール41及び接地側レール42は、略直線的に構成されているものとする。そして、接地側レール42は、放電側パンタグラフ14が放電側レール41に接触するより先行して接地側パンタグラフ19が接地側レール42に接触すると共に、放電側パンタグラフ14が放電側レール20から離間するより遅延して接地側レール42から離間する構成とされているものとする。
【0061】
そのため、係る場合においても、移動体40の移動に伴い放電側パンタグラフ14及び接地側パンタグラフ19がそれぞれ放電側レール41や接地側レール42に接触することにより、容易に電極13、18間に高電圧を印加することができる。そのため、移動体40の移動速度や各レール41、42の長さを変更することにより、各電極13、18間への高電圧印加時間を変更することができ、対象となる殺菌対象物に応じて殺菌処理時間を変更することができ、利便性の向上を図ることができるようになる。
【0062】
尚、係る場合においても、上記図14と同様に、接地側電極13の接地を行う接地側レール42は、図16に示すように、移動体40本体にアースし、本体を介し接地を行う方式を採用しても良いものとする。これにより、より簡素な構成にて本発明を実現することができるようになる。
【0063】
尚、各実施例では、移動体は回転体2又は直線的に移動する移動体40により構成されているが、これ以外にも移動軌跡が上下の波状を描く移動体や、上下移動を行う移動体であっても良いものとする。これにより、処理槽17が移動軌跡によって上下に揺さぶられることにより、撹拌しながら殺菌処理を行うことができるようになる。
【0064】
尚、各工程は、上述した如く搬送装置3により、殺菌対象物の殺菌処理前の工程と、当該殺菌装置1と、殺菌処理後の工程とを連続して構成することが可能となり、作業の簡素化を図ることができるようになる。また、次段の処理過程へ衛生的な状態で殺菌対象物を搬送することができるようになる。
【0065】
上記実施形態は熱により変質しやすい殺菌対象物の殺菌について説明したが、本発明はこれに限定されず他の殺菌対象物にも広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】殺菌対象物の殺菌前工程・殺菌・充填の一連作業の概略説明図である。
【図2】殺菌装置を構成する回転体の斜視図である。
【図3】パンタグラフの概略断面図である。
【図4】殺菌装置の概略構成図である。
【図5】回転体の概略平面図である。
【図6】各領域とレールとの位置関係を示す図である。
【図7】殺菌装置の電気回路図である。
【図8】他の実施例のパンタグラフの概略断面図である。
【図9】他の実施例の当接部材の概略側面図である。
【図10】他の実施例の当接部材の概略側面図である。
【図11】もう一つの他の実施例の各電極とレールの接触方法を示す概略説明図である。
【図12】更にもう一つの他の実施例の各電極とレールの接触方法を示す概略説明図である。
【図13】他の実施例の回転体の概略平面図である。
【図14】他の実施例の殺菌装置の概略構成図である。
【図15】他の実施例の殺菌装置の概略構成図である。
【図16】他の実施例の殺菌装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0067】
1、39 殺菌装置
2 回転体
3 搬送装置
11 上アーム
12 下アーム
13 放電側電極
14 放電側パンタグラフ
17 処理槽
18 接地側電極
19 接地側パンタグラフ
20、41 放電側レール
21、42 接地側レール
22 電源
31 アース
40 移動体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧を発生する電源部と、当該電源部にて発生した高電圧が印加される放電側電極と、接地側電極とを有する処理装置を備え、前記両電極間に殺菌対象物を介在させて大気圧下で前記両電極間にパルスストリーマ放電を発生させることにより、前記殺菌対象物の殺菌処理を行う殺菌装置において、
前記処理装置は、前記両電極を複数備えて移動する移動体と、
該移動体の移動に伴い、前記放電側電極及び接地側電極がそれぞれ接触若しくは近接される放電側レール及び接地側レールとを備えることを特徴とする高電圧パルスを利用した殺菌装置。
【請求項2】
前記両レールはそれぞれ円弧状を呈し、前記移動体は前記両レールの回転中心と同心円上に設けられていることを特徴とする請求項1の高電圧パルスを利用した殺菌装置。
【請求項3】
前記移動体の移動に伴い、前記接地側電極は、前記放電側電極が前記放電側レールに接触若しくは近接するより先行して前記接地側レールに接触若しくは近接すると共に、前記放電側電極が前記放電側レールから離間するより遅延して前記接地側レールから離間することを特徴とする請求項1又は請求項2の高電圧パルスを利用した殺菌装置。
【請求項4】
前記放電側電極は前記移動体に設置されると共に、前記接地側電極は前記殺菌対象物を納出自在に収容する処理槽を有し、
両電極間における放電開始前に当該処理槽内に前記殺菌対象物を収容することを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3の高電圧パルスを利用した殺菌装置。
【請求項5】
前記放電側電極及び前記接地側電極は、前記放電側レール及び前記接地側レールにそれぞれ当接するパンタグラフを有することを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4の高電圧パルスを利用した殺菌装置。
【請求項6】
前記放電側電極及び前記接地側電極を前記放電側レール及び接地側レール方向にそれぞれ付勢し、各レールに接触させる弾性部材を備えることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4又は請求項5の高電圧パルスを利用した殺菌装置。
【請求項7】
前記放電側電極及び前記接地側電極を前記放電側レール及び接地側レール方向にそれぞれ移動させ、各レールに接触させる偏心カムを備えることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4又は請求項5の高電圧パルスを利用した殺菌装置。
【請求項8】
前記移動体は、移動に伴って前記放電側電極及び前記接地側電極を前記放電側レール及び接地側レール方向にそれぞれ移動させ、各レールに接触させる突出部を備えることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4又は請求項5の高電圧パルスを利用した殺菌装置。
【請求項9】
殺菌処理前の前記殺菌対象物を前記処理装置に送り、当該処理装置にて殺菌処理された前記殺菌対象物を次段の処理に送る搬送装置を備えることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7又は請求項8の高電圧パルスを利用した殺菌装置。
【請求項1】
高電圧を発生する電源部と、当該電源部にて発生した高電圧が印加される放電側電極と、接地側電極とを有する処理装置を備え、前記両電極間に殺菌対象物を介在させて大気圧下で前記両電極間にパルスストリーマ放電を発生させることにより、前記殺菌対象物の殺菌処理を行う殺菌装置において、
前記処理装置は、前記両電極を複数備えて移動する移動体と、
該移動体の移動に伴い、前記放電側電極及び接地側電極がそれぞれ接触若しくは近接される放電側レール及び接地側レールとを備えることを特徴とする高電圧パルスを利用した殺菌装置。
【請求項2】
前記両レールはそれぞれ円弧状を呈し、前記移動体は前記両レールの回転中心と同心円上に設けられていることを特徴とする請求項1の高電圧パルスを利用した殺菌装置。
【請求項3】
前記移動体の移動に伴い、前記接地側電極は、前記放電側電極が前記放電側レールに接触若しくは近接するより先行して前記接地側レールに接触若しくは近接すると共に、前記放電側電極が前記放電側レールから離間するより遅延して前記接地側レールから離間することを特徴とする請求項1又は請求項2の高電圧パルスを利用した殺菌装置。
【請求項4】
前記放電側電極は前記移動体に設置されると共に、前記接地側電極は前記殺菌対象物を納出自在に収容する処理槽を有し、
両電極間における放電開始前に当該処理槽内に前記殺菌対象物を収容することを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3の高電圧パルスを利用した殺菌装置。
【請求項5】
前記放電側電極及び前記接地側電極は、前記放電側レール及び前記接地側レールにそれぞれ当接するパンタグラフを有することを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4の高電圧パルスを利用した殺菌装置。
【請求項6】
前記放電側電極及び前記接地側電極を前記放電側レール及び接地側レール方向にそれぞれ付勢し、各レールに接触させる弾性部材を備えることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4又は請求項5の高電圧パルスを利用した殺菌装置。
【請求項7】
前記放電側電極及び前記接地側電極を前記放電側レール及び接地側レール方向にそれぞれ移動させ、各レールに接触させる偏心カムを備えることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4又は請求項5の高電圧パルスを利用した殺菌装置。
【請求項8】
前記移動体は、移動に伴って前記放電側電極及び前記接地側電極を前記放電側レール及び接地側レール方向にそれぞれ移動させ、各レールに接触させる突出部を備えることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4又は請求項5の高電圧パルスを利用した殺菌装置。
【請求項9】
殺菌処理前の前記殺菌対象物を前記処理装置に送り、当該処理装置にて殺菌処理された前記殺菌対象物を次段の処理に送る搬送装置を備えることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7又は請求項8の高電圧パルスを利用した殺菌装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−122182(P2006−122182A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−312078(P2004−312078)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(591086935)株式会社増田研究所 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(591086935)株式会社増田研究所 (6)
【Fターム(参考)】
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