説明

高電圧測定装置

【課題】送電線を停止しないで特高需要家の受電端の異常電圧を非接触で測定できる高電圧測定装置を提供することである。
【解決手段】特高需要家の受電端の送電線の充電部11に対向して検出電極12を配置し、この検出電極12で充電部11との静電容量で発生する電圧を検出し、検出電極12で検出された電圧を高入力インピーダンスで低出力インピーダンスのゲイン調整可能な増幅器15入力し増幅して記録計16に出力し、記録計16は増幅器15の出力を記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特高需要家の受電端の異常電圧を非接触で測定する高電圧測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特高需要家は、送電線から直接的に自己の受電設備で電力を受電している。従って、特高需要家の受電端には送電線の異常電圧が侵入しやすい状況にある。例えば、送電線に落雷した場合にはその異常電圧が特高需要家の受電設備に侵入するが、特高需要家の受電設備にはアレスタが設けられているので、そのような場合には、特高需要家のアレスタが動作し受電設備を保護している。
【0003】
一方、66kV特高需要家において、落雷でもないのに特高需要家のアレスタが動作する現象が発生した。送電線の系統変更を実施し、変電所にて遮断器を投入して系統変更した送電線に電圧を印加した際に特高需要家のアレスタが動作する現象が発生した。このような送電線の系統変更の場合に、特高需要家の受電端電圧にどのような影響を与えているのかを解明するために、特高需要家の受電端電圧を測定する必要に迫られた。
【0004】
電圧を検出するものとしては、計器用変成器やコンデンサ分圧型計器用変成器などを用いて、その2次電圧を測定し1次側に換算して測定するものや、非接触で電気回路の充電部分の電圧を測定するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−14791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のものはケーブルの充電部の電圧を測定するものであり、特高需要家の受電端電圧のように、数千ボルトから数10万ボルトの高電圧を測定するものには適さない。
【0007】
また、計器用変成器やコンデンサ分圧型計器用変成器などを用いて測定するには、計器用変成器やコンデンサ分圧型計器用変成器などが特高需要家の受電端の近傍に設置されていない場合には、送電線の送電を一時停止して、計器用変成器やコンデンサ分圧型計器用変成器などを設置して測定しなければならないので、測定設備が大掛かりになる。
【0008】
本発明の目的は、送電線を停止しないで特高需要家の受電端の異常電圧を非接触で測定できる高電圧測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明に係る高電圧測定装置は、特高需要家の受電端の送電線の充電部に対向して配置され前記充電部との静電容量で発生する電圧を検出する検出電極と、前記検出電極で検出された電圧を入力し増幅して出力する高入力インピーダンスで低出力インピーダンスの増幅器と、前記増幅器のゲインを調整するゲイン調整部と、前記増幅器の出力を記録する記録計とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明に係る高電圧測定装置は、請求項1の発明において、前記ゲイン調整部は、前記特高需要家の受電端の電圧が定格の対地電圧であるときに、前記増幅器の出力電圧がその測定電圧に比例した電圧となるようにゲインを調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、特高需要家の受電端の送電線の充電部との静電容量で発生する電圧を検出電極で検出し、高入力インピーダンスで低出力インピーダンスの増幅器にて検出電極で検出された電圧をゲイン調整部で調整されたゲインで増幅し、記録計で記録するので、計器用変成器やコンデンサ分圧型計器用変成器などを設置する必要がなく、送電線の送電を一時停止することなく、特高需要家の受電端に発生する瞬時の過渡的な高電圧を計測できる。
【0012】
請求項2の発明によれば、特高需要家の受電端の電圧が定格の対地電圧であるときに、増幅器の出力電圧がその測定電圧に比例した電圧となるようにゲインを調整するので、記録計に記録された異常電圧と定格電圧との比較が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る高電圧測定装置の構成図。
【図2】本発明の実施の形態に係る高電圧測定装置で測定した66kV特高需要家の受電端における異常電圧波形の一例を示す波形図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の実施の形態に係る高電圧測定装置の構成図である。特高需要家の受電端の充電部11に対向して検出電極12が配置される。受電端の充電部11は、例えば、特高需要家の受電設備の受電変圧器の一次側が接続されるフィーダである。検出電極12は可搬であり、例えば、特高需要家の受電端の鉄塔などに受電端の充電部11に対向して固定される。また、検出電極12として、天候(特に雨水)による影響を考慮し、配電用変電所で実績のある簡易線路電圧検出器の検出部として用いられる検電器を使用することとした。
【0015】
検出電極12で検出された検出電圧はケーブル13を通って高電圧測定装置14の増幅器15に測定電圧Vinとして入力され、増幅器15で増幅されて出力電圧Voutとして記録計16に入力されて記録計16に記録される。増幅器15には制御電源装置17から制御電源が供給され、また、ゲイン調整部18で増幅器15のゲインは調整される。
【0016】
ここで、検出電極12は、充電部11との静電容量C1で発生する対地電圧Emを検出する。検出電極12で検出された対地電圧Emは、ケーブル13を介して高電圧測定装置14に入力されるが、この場合、検出電極12から高電圧測定装置14までのケーブル13には静電容量C2があるので、高電圧測定装置14に入力される測定電圧Vinは、検出電極12で検出された対地電圧Emではなく(1)式で示される電圧である。
【0017】
Vin=Em・{C1/(C1+C2)} …(1)
すなわち、高電圧測定装置14に入力される測定電圧Vinは、充電部11と検出電極12との間の静電容量C1と、その検出電極12から高電圧測定装置14までのケーブル13の静電容量C2とで決まる。
【0018】
充電部11と検出電極12との間の静電容量C1は、検出電極12の取り付け位置や周囲の状態により大きく変化するので、測定電圧Vinに影響を与えることになる。そこで、本発明の実施の形態では、この影響を受けないようにするために、高電圧測定装置14に増幅器15を設け、測定電圧Vinを増幅することとし、また、ゲイン調整部18で増幅器15のゲインを調整することとしている。
【0019】
例えば、増幅器15のゲインを調整するにあたっては、特高需要家の受電端の電圧が定格の対地電圧であるときに、増幅器15の出力電圧Voutがその測定電圧Vinに比例した電圧となるようにゲインを調整する。これにより、検出電極12の取り付け位置や周囲の状態による測定電圧Vinの変化の影響を無くすとともに、特高需要家の受電端の電圧が異常電圧となったときに定格の電圧との比較が容易に行えるようにしている。
【0020】
また、充電部11と検出電極12との間の静電容量C1は小さいため、高電圧測定装置14までのケーブル13の長さ、太さ、材質により、測定電圧Vinが変化してしまう。
【0021】
そこで、これらの影響を受けないように、高入力インピーダンスの増幅器15とした。すなわち、増幅器15を高入力インピーダンスアンプとすべくFET入力オペアンプにより対応した。
【0022】
また、増幅器15から記録計16までのケーブルの長さや材質等の影響を受けないようにするために、低出力インピーダンスの増幅器15とした。増幅器15を低出力インピーダンスアンプとすべく電流ブースト回路構成により対応した。
【0023】
計器用変成器やコンデンサ分圧型計器用変成器などの計器用変成器が設置されてない特高需要家の受電設備の異常電圧を検出する際には、多くの場合は瞬時の過渡的な高電圧を検出するものであることから、電圧計ではなく記録計16を用いることとした。これにより、特高需要家の受電端に発生する瞬時の過渡的な高電圧を計測できる。
【0024】
図2は、本発明の実施の形態に係る高電圧測定装置で測定した66kV特高需要家の受電端における異常電圧波形の一例を示す波形図である。これは、送電線の系統変更を実施した後に、変電所にて遮断器を投入して送電線に電圧を印加した際に、ある66kV特高需要家の受電端電圧を測定したものである。時点t1において、変電所にて遮断器を投入したとき、この66kV特高需要家の受電端には、瞬時に大きな異常電圧156.2kVが発生していることがわかる。
【0025】
このように、送電線の系統変更をした後に変電所から送電した場合に、特高需要家の受電端において、特高需要家のアレスタが動作するような高電圧(150kV以上)が発生することが検出でき、また異常電圧波形の詳細を確認できた。これにより、送電線の系統変更する際には、系統変更の切替点(ジャンパーオフ点)を変更するなどの対策を取ることが可能となった。
【0026】
本発明の実施の形態によれば、特高需要家の受電端の送電線の充電部の電圧を検出電極12で検出するので、非接触で特高需要家の受電端電圧を検出できる。従って、計器用変成器やコンデンサ分圧型計器用変成器などを設置する必要がなく、また、送電線の送電を一時停止することなく、特高需要家の受電端電圧を検出できる。
【0027】
検出電極12で検出した特高需要家の受電端電圧は、高入力インピーダンスのゲイン調整可能な増幅器15で増幅するので、特高需要家の受電端の充電部11と検出電極12との間の静電容量C1や検出電極12から増幅器15までのケーブル13の静電容量C2による影響を無くすことができ、また、増幅器15は低出力インピーダンスであるので、増幅器15から記録計16までのケーブルの長さや材質等の影響を受けないようにすることができる。また、記録計16で特高需要家の受電端電圧を記録するので、特高需要家の受電端に発生する瞬時の過渡的な高電圧を計測できる。
【0028】
また、特高需要家の受電端の電圧が定格の対地電圧であるときに、増幅器15の出力電圧がその測定電圧に比例した電圧となるようにゲイン調整部18でゲインを調整するので、記録計16に記録された異常電圧と定格電圧との比較が容易にできる。
【符号の説明】
【0029】
11…充電部、12…検出電極、13…ケーブル、14…高電圧測定装置、15…増幅器、16…記録計、17…制御電源装置、18…ゲイン調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特高需要家の受電端の送電線の充電部に対向して配置され前記充電部との静電容量で発生する電圧を検出する検出電極と、前記検出電極で検出された電圧を入力し増幅して出力する高入力インピーダンスで低出力インピーダンスの増幅器と、前記増幅器のゲインを調整するゲイン調整部と、前記増幅器の出力を記録する記録計とを備えたことを特徴とする高電圧測定装置。
【請求項2】
前記ゲイン調整部は、前記増幅器の入力電圧が前記特高需要家の定格の対地電圧であるときに、前記増幅器の出力電圧が前記特高需要家の定格の対地電圧に比例した出力電圧となるようにゲインを調整することを特徴とする請求項1記載の高電圧測定装置。

【図1】
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【図2】
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