説明

高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物

【課題】水酸化アルムニウムを高充填してもシリコーンゴムのゴム強度を失わない高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物を提供する。
【解決手段】(A)有機過酸化物硬化型又は付加反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物:100質量部、
(B)シリコーンレジン:3〜80質量部、
(C)平均粒子径が20μm以下の水酸化アルミニウム:30〜400質量部
を含有してなることを特徴とする高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化により優れた高電圧電気絶縁体となるシリコーンゴムを与える高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
送電線等に用いる碍子に使用される高電圧電気絶縁体は、一般に磁器又はガラス製である。しかし、これらの絶縁体は、耐衝撃性に欠け、破損しやすく、かつ重いため、取扱いに注意を要し、作業性にも難点がある上、更に、海岸沿いの地域や工業地帯のように汚染を受けやすい環境下では、高電圧電気絶縁体の表面を微粒子や塩類、霧等が通ることにより、漏れ電流が発生したり、フラッシュオーバーにつながるドライバンド放電等が起こるという問題があった。
【0003】
そこで、これらの磁器製又はガラス製の絶縁体の欠点を改良するために種々の解決法が提案されている。例えば、米国特許第3511698号公報(特許文献1)には、硬化性樹脂からなる部材と白金触媒含オルガノポリシロキサンエラストマーとからなる耐候性の高電圧電気絶縁体が提案されている。また特開昭59−198604号公報(特許文献2)には、一液性の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物をガラス製又は磁器製の電気絶縁体の外側表面に塗布することにより、湿気・大気汚染・紫外線等の野外におけるストレスの存在下においても前記電気絶縁体の有する高性能を維持させる技術が提案されている。
【0004】
更に、特開昭53−35982号公報(特許文献3)には、加熱硬化によりシリコーンゴムとなるオルガノポリシロキサンと水酸化アルミニウムとの混合物を100℃よりも高い温度で30分以上加熱して電気絶縁性が改良されたシリコーン組成物が得られること、また、特開平7−57574号公報(特許文献4)には、シリコーンゴムにメチルアルキルシロキサン油を混合することによって経時での接触角回復特性が向上し、閃絡防止に効果があることが、それぞれ提案されている。
【0005】
しかしながら、これらの従来技術では、いずれも使用されているシリコーンゴム材料の高電圧電気特性能が未だ十分満足できるものではなく、また、電気絶縁性能を向上させるためには、多量の水酸化アルミニウムを使用しなければならないが、水酸化アルムニウムは親水性が高く、高湿度環境下での電気特性を低下させてしまう。これを解決するために、特開平8−259820号公報(特許文献5)において、水酸化アルミニウムを表面処理すること、更に特開平11−152408号公報(特許文献6)において、表面のアルケニル基量を規定したものが開示されている。また、特開平11−12470号公報(特許文献7)において、付加硬化型シリコーンゴム組成物にオルガノポリシロキサンレジンを添加する方法が記載されている。
【0006】
しかしながら、これら組成においても、高電圧用途、あるいは汚染の酷い地域における使用においては、コロナが発生し、シリコーンゴムが劣化に到ることが少なからず発生する事態となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第3511698号公報
【特許文献2】特開昭59−198604号公報
【特許文献3】特開昭53−35982号公報
【特許文献4】特開平7−57574号公報
【特許文献5】特開平8−259820号公報
【特許文献6】特開平11−152408号公報
【特許文献7】特開平11−12470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、水酸化アルムニウムを高充填してもシリコーンゴムのゴム強度を失わない高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、(A)有機過酸化物硬化型又は付加反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物、(B)シリコーンレジン、及び(C)平均粒子径が20μm以下の水酸化アルミニウムの特定量を含有してなるシリコーンゴム組成物を高電圧電気絶縁体として用いた場合に、耐コロナ性に優れ、長時間の高電圧用途や、汚染の酷い地域においても使用可能であることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物を提供する。
〔請求項1〕
(A)有機過酸化物硬化型又は付加反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物:
100質量部、
(B)シリコーンレジン: 3〜80質量部、
(C)平均粒子径が20μm以下の水酸化アルミニウム: 30〜400質量部
を含有してなることを特徴とする高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物。
〔請求項2〕
(A)成分が、
(イ)下記平均組成式(I)
aSi(4-a)/2 (I)
(式中、Rは非置換又は置換の一価炭化水素基であるが、Rの0.001〜10モル%は脂肪族不飽和炭化水素基であり、かつ90モル%以上はメチル基である。aは1.9〜2.4の正数である。)
で示される1分子中に平均2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン:
100質量部、
(ロ)有機過酸化物: 触媒量
からなる有機過酸化物硬化型オルガノポリシロキサン組成物である請求項1記載の高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物。
〔請求項3〕
(A)成分が、
(ハ)下記平均組成式(I)
aSi(4-a)/2 (I)
(式中、Rは非置換又は置換の一価炭化水素基であるが、Rの0.001〜10モル%は脂肪族不飽和炭化水素基であり、かつ90モル%以上はメチル基である。aは1.9〜2.4の正数である。)
で示される1分子中に平均2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン:
100質量部、
(ニ)1分子中に珪素原子に直接結合する水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン: 0.1〜30質量部、
(ホ)付加反応触媒: 触媒量
からなる付加反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物である請求項1記載の高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物。
〔請求項4〕
(B)成分のシリコーンレジンが、R23SiO1/2単位(式中、R2は非置換又は置換の一価炭化水素基)とSiO2単位を主成分とし、R23SiO1/2単位とSiO2単位とのモル比[R23SiO1/2/SiO2]が0.5〜1.5であり、アルケニル基含有量が1×10-5〜5×10-3モル/gであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物。
〔請求項5〕
(C)成分の水酸化アルミニウムが、予め表面疎水化処理されたもの又は(A)、(B)成分との配合時に表面疎水化処理されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物。
〔請求項6〕
(C)成分の水酸化アルミニウムが、シラザン類及び/又はシラン類で表面疎水化処理されたものであることを特徴とする請求項5記載の高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物。
〔請求項7〕
(C)成分の水酸化アルミニウムが、平均粒子径5μm未満のものと、5μm以上のものとの2種類を、質量比で90/10〜10/90の範囲で混合したものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物は、水酸化アルムニウムを高充填してもシリコーンゴムのゴム強度を失わず、耐コロナ性に優れ、長時間の高電圧用途や、汚染の酷い地域においても使用可能な高電圧電気絶縁体を与える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例において、コロナ放電試験を行う装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明につき更に詳細に説明すると、本発明の高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物の(A)成分は、有機過酸化物硬化型又は付加反応硬化型のオルガノポリシロキサン組成物である。
【0014】
本発明の有機過酸化物硬化型シリコーンゴム組成物としては、
(イ)下記平均組成式(I)
aSi(4-a)/2 (I)
(式中、Rは非置換又は置換の一価炭化水素基であるが、Rの0.001〜10モル%は脂肪族不飽和炭化水素基であり、かつ90モル%以上はメチル基である。aは1.9〜2.4の正数である。)
で示される1分子中に少なくとも平均2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、
(ロ)有機過酸化物
からなるシリコーンゴム組成物が好適に使用される。
【0015】
(イ)成分は、下記平均組成式(I)
aSi(4-a)/2 (I)
で示される1分子中に少なくとも平均2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。
【0016】
ここで、式(I)中のRは、好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル等のアルキル基などの脂肪族飽和炭化水素基、ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル等のアルケニル基などの脂肪族不飽和炭化水素基、フェニル、キシリル等のアリール基などの芳香族炭化水素基、3,3,3−トリフルオロプロピル等のハロゲン置換、シアノ基置換炭化水素基から選ばれ、各置換基は異なっていても同一であってもよいが、分子中に少なくとも平均2個の脂肪族不飽和炭化水素基を含んでいることが必要である。この場合、全Rのうち0.001〜10モル%、特に0.01〜5モル%、更には0.01〜2モル%が脂肪族不飽和炭化水素基であり、90モル%以上、特に95〜99モル%、更にはアルケニル基を除く全てのR基がメチル基であることが好ましい。なお、この脂肪族不飽和炭化水素基は、分子鎖末端の珪素原子に結合していても、分子鎖の途中の珪素原子に結合していても、その両方であってもよいが、少なくとも分子鎖末端の珪素原子に結合していることが好ましい。
上記式(I)中のRは、基本的には上記のいずれであってもよいが、脂肪族不飽和炭化水素基としては、好ましくはビニル基、その他の置換基としては、メチル基、フェニル基の導入が望ましい。
【0017】
aは1.9〜2.4、好ましくは1.98〜2.02、更に好ましくは1.99〜2.01の範囲の正数であり、このオルガノポリシロキサンは直鎖状であっても、RSiO3/2単位あるいはSiO4/2単位を含んだ分岐状であってもよいが、通常は、主鎖がジオルガノシロキサン単位(R2SiO2/2)の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基(R3SiO1/2)で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが望ましい。
【0018】
このオルガノポリシロキサンは、公知の方法によって製造される。この製造方法としては、オルガノシクロポリシロキサンとヘキサオルガノジシロキサンとをアルカリ又は酸触媒の存在下に平衡化反応を行うことによって得ることができる。
【0019】
なお、上記オルガノポリシロキサンの重合度は100〜20,000、好ましくは200〜15,000、特に好ましくは300〜10,000である。なお、この重合度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析によるポリスチレン換算の重量平均重合度として測定することができる(以下、同じ)。
【0020】
(ロ)成分の有機過酸化物は、(イ)成分の架橋反応を促進するための触媒として使用されるもので、従来公知のものとすればよいが、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p−メチルベンゾイルパーオキサイド、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−ビス(2,5−t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシカルボキシ)ヘキサン等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0021】
なお、(ロ)成分の添加量は、硬化速度に応じて適宜選択すればよいが、通常は(イ)成分100質量部に対し0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜2質量部の範囲とすればよい。(ロ)成分の添加量が少なすぎると架橋が不十分で強度、伸びなどのゴム物性に劣る場合があり、多すぎるとスコーチ等の問題を生じる場合がある。
【0022】
一方、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物としては、
(ハ)上記(I)式で示されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(ニ)1分子中に珪素原子に直接結合する水素原子を少なくとも2個、好ましくは3個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(ホ)付加反応触媒
からなるシリコーンゴム組成物が好ましく、これは常温下で放置するか、加熱すると硬化してゴム状弾性体になるものである。
【0023】
(ハ)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、上述した(イ)成分のオルガノポリシロキサンと同様のものを例示することができる。
【0024】
(ニ)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中に珪素原子に直接結合する水素原子(Si−H基)を少なくとも2個、好ましくは3個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、下記平均組成式(II)
1bcSiO(4-b-c)/2 (II)
(式中、R1は炭素数1〜10の非置換又は置換の一価炭化水素基である。またbは0.7〜2.1、cは0.001〜1.0で、かつb+cは0.8〜3.0を満足する正数である。)
で示される常温で液状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることが好ましい。
【0025】
ここで、式(II)中のR1は、炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、同一であっても異なっていてもよく、脂肪族不飽和結合を含まないものであることが好ましい。R1として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基等のアラルキル基、及びこれらの基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子等で置換した基、例えば3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられる。
また、bは0.7〜2.1、好ましくは0.8〜2.0、cは0.001〜1.0、好ましくは0.01〜1.0で、かつb+cは0.8〜3.0、好ましくは0.9〜2.7を満足する正数である。
【0026】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、Si−H基を1分子中に少なくとも2個(通常2〜300個)、好ましくは3個以上(例えば3〜200個程度)、より好ましくは4個以上(例えば4〜100個程度)有するが、これは分子鎖末端にあっても、分子鎖の途中にあっても、その両方にあってもよい。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、分子中の珪素原子数(又は重合度)が通常2〜300個、好ましくは3〜200個、より好ましくは4〜100個程度のものであればよく、また25℃における粘度が0.5〜1,000mPa・s、好ましくは1〜500mPa・s、特に5〜300mPa・sであることが好ましい。なお、この粘度は回転粘度計により測定することができる(以下、同じ)。
【0027】
(ニ)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とから成る共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C65)SiO3/2単位とから成る共重合体や、これら例示化合物においてメチル基の一部又は全部を他のアルキル基やフェニル基で置換したものなどが挙げられる。
【0028】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサン(ニ)の配合量は、(ハ)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜30質量部、特に0.3〜10質量部とすることが好ましい。またこのオルガノハイドロジェンポリシロキサン(ニ)は、(ハ)成分及び(B)成分のアルケニル基の合計に対する(ニ)成分中のSi−H基のモル比が、通常0.5〜5、好ましくは0.8〜3、より好ましくは1〜2.5程度となるように配合することもできる。(ニ)成分の配合量が少なすぎると架橋が不十分で強度、伸びなどのゴム物性に劣る場合があり、多すぎると架橋点が多すぎて(架橋密度が高すぎて)、同様にゴム物性に劣る場合がある。
【0029】
(ホ)成分の付加反応触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などが挙げられる。なおこの付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができ、通常、(ハ)成分と(ニ)成分の合計質量に対し、白金金属量に換算して0.5〜1,000ppm、特に1〜500ppmの範囲で使用される。
【0030】
(B)成分のシリコーンレジンは、耐コロナ性を向上させるために必須のものである。直鎖構造を有するオイルあるいは生ゴム状のものでなく、分岐を有する構造、特に三次元網状構造であればいかなるものでもよいが、好ましくは、R23SiO1/2単位(R2は非置換又は置換の一価炭化水素基)及びSiO2単位を主成分とし、R23SiO1/2単位とSiO2単位とのモル比[R23SiO1/2/SiO2]が0.5〜1.5、好ましくは0.5〜1.3のものである。上記モル比[R23SiO1/2/SiO2]が0.5より小さいと耐コロナ性が低下してしまう場合があり、1.5より大きいと圧縮永久歪が大きくなるばかりか、相溶性も低下し、配合が困難になってしまうおそれがある。
【0031】
ここで、R2は、上述したRの非置換又は置換の一価炭化水素基で例示したものと同じのものが例示でき、中でもメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基、3,3,3−トリフルオロプロピル基が好ましい。
【0032】
本発明のシリコーンレジンは、珪素原子に結合したアルケニル基を含有することが好ましく、このアルケニル基含有量が、シリコーンレジン中0.00001(即ち、1×10-5)〜0.005mol/g、好ましくは0.00005(5×10-5)〜0.002mol/g、より好ましくは0.0001(1×10-4)〜0.001mol/gであることが望ましい。アルケニル基含有量が0.00001mol/g未満だと耐コロナ性が不十分になってしまう場合があり、0.005mol/gを超えると、圧縮永久歪が悪化してしまうなどの問題を生じる場合がある。
【0033】
また、本発明のシリコーンレジンには、必要に応じ、R22SiO2/2単位やR2SiO3/2単位(R2は上記の通り)を、これらの合計量として、全共重合体質量(シリコーンレジン)に対し、50質量%以下(0〜50質量%)、好ましくは40質量%以下(0〜40質量%)、より好ましくは30質量%以下(0〜30質量%)の範囲で含んでもよい。
【0034】
なお、該シリコーンレジンは、通常、適当なクロロシランやアルコキシシランを当該技術において周知の方法で加水分解することによって製造することができる。
【0035】
これらシリコーンレジン(B)の配合量は、(A)成分100質量部に対し、3〜80質量部、特に5〜40質量部が好ましい。3質量部未満では十分な耐酸性が得られず、80質量部を超えると圧縮永久歪が大きくなってしまう。
なお、付加反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物の場合、上記(ハ)成分中のSi−H基は、(ハ)成分及び(B)成分のアルケニル基の総量1モル当たり0.5〜5モル、特に0.8〜3モル、更には1〜2.5モル程度の割合とすることが好ましい。
【0036】
(C)成分の平均粒子径が20μm以下の水酸化アルミニウムは、シリコーンゴムの耐アーク性、耐トラッキング性等の電気絶縁性能を改善するために必須のものである。ここで水酸化アルミニウムとしては、下記式
Al23・3H2
で表わされ、平均粒子径が20μm以下、通常0.1〜20μmのもの、好ましくは0.5〜15μmで、BET比表面積が1.0〜10m2/gのものが好ましく使用される。水酸化アルミニウムの平均粒子径が20μmより大きいとゴム物性が低下してしまうと共に、耐コロナ性にも劣ったものとなる。なお、平均粒子径は、レーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用いて、累積重量平均値D50(又はメジアン径)として求めることができる。
【0037】
本発明においては、水酸化アルミニウムの平均粒子径が5μm未満(通常、0.1μm以上5μm未満)のものと、5μm以上(通常、5〜20μm)のものとの2種類を、質量比で90/10〜10/90、特に80/20〜20/80の範囲で混合したものを用いることが、ゴム物性と耐コロナ性の両特性を保持・向上させる点から好ましい。平均粒子径が5μm未満のものが少なすぎるとゴム物性に劣ったものとなる場合があり、5μm以上のものが少なすぎると耐コロナ性や耐トラッキング性に劣ったものとなる場合がある。
【0038】
これら水酸化アルミニウムは、そのままでも使用可能であるが、好ましくは表面を疎水化処理したものであるとよい。表面処理剤としては、アルキルシラザン、ビニルシラザン等のシラザン類、アルキルアルコキシシラン、ビニルアルコキシシランやクロロシラン等のシラン類が挙げられ、例えば、ヘキサメチルジシラザン、ジフェニルテトラメチルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザンなどのシラザン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シランなどのアルコキシシラン類、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシランなどのクロロシラン類、又はその部分加水分解物、分子鎖末端にSi−OH官能基あるいはSi−OR(Rは一価炭化水素基)などの官能基を有する重合度が50以下のシロキサンオリゴマーなどの2種又はそれ以上と併用して処理してもよい。
【0039】
表面処理方法としては、予め粉体状態で処理したものを(A)及び(B)成分等と配合してもよいし、あるいは(A)及び/又は(B)成分の一部又は全量と水酸化アルミニウムと表面処理剤とを混合しながら表面処理を実施してもよい。なお、これら表面処理された水酸化アルミニウムの表面処理度合いは、水酸化アルミニウムに対するカーボン量で0.01〜2質量%、好ましくは0.02〜1質量%であることが、シロキサンとの相溶性を向上させるという面から好ましい。なお、このカーボン量は、酸化燃焼によるCO2発生量の測定を原理とする炭素分析計等によって求めることができる。
【0040】
また、水酸化アルミニウム(C)の配合量は、(A)成分100質量部に対して30〜400質量部、好ましくは50〜300質量部で、30質量部より少ないと、耐トラッキングなどの十分な電気特性が得られず、400質量部より多いと配合が難しくかつ作業性にも問題があり、更に硬化物も硬くて脆いものとなってしまう。
【0041】
本発明のシリコーンゴム組成物には、上述した(A)〜(C)成分に加えて、流動性を調節したり、成形品の機械的強度を向上させるため、本発明の効果を損なわない範囲で充填剤を配合してもよい。このような充填剤としては、沈殿シリカ、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、ヒュームド酸化チタンのような補強性充填剤、粉砕石英、ケイ藻土、アスベスト、アミノケイ酸、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸カルシウムのような非補強性充填剤が例示され、そのままでもヘキサメチルシラザン、トリメチルクロロシラン、ポリメチルシロキサンのような有機珪素化合物で表面処理したものでもよい。また、その他必要に応じて顔料、耐熱剤、難燃剤、可塑剤などを配合してもよい。
【0042】
本発明のシリコーンゴム組成物は、上記各成分を常法に準じて混合することにより調製できる。
このようにして得られたシリコーンゴム組成物は、高電圧電気絶縁体として用いることができ、この場合、成形方法としては、コンプレッション成形(圧縮成形)、押出成形、射出成形、トランスファー成形、注入成形など、材料の粘性や型の大きさ等に応じて、従来公知のいずれの方法を選択してもよい。
また、シリコーンゴム組成物の硬化条件は、室温(25℃±10℃)から250℃程度まで広い温度範囲を採用できるが、有機過酸化物硬化型の場合には、使用する有機過酸化物の分解温度以上の温度条件下で、例えば120〜220℃、好ましくは150〜200℃程度であり、付加反応硬化型の場合には、好ましくは60〜200℃、より好ましくは80〜180℃程度である。硬化時間(1次硬化)は温度により異なるが、10秒〜数時間(例えば1〜4時間)の範囲で可能であり、高温ほど短時間で成形できる。なお、このような条件で成形(1次硬化)した硬化物を、更に170〜220℃、特に180〜200℃程度で1〜6時間、特に2〜4時間程度の条件でポストキュア(2次硬化)することは任意である。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、水酸化アルミニウムの平均粒子径は、レーザー回折法による粒度分布測定装置を用いて測定した累積重量平均径D50を意味し、また表面のカーボン量は炭素分析計により測定したものである。
【0044】
[実施例1]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が500であるジメチルポリシロキサン(1)60質量部、(CH33SiO1/2単位,CH2=CH(CH32SiO1/2単位及びSiO2単位からなるシリコーンレジン[〔(CH33SiO1/2単位+CH2=CH(CH32SiO1/2単位〕/SiO2単位=0.95(モル比)、ビニル基含有量=0.00045mol/g、重量平均分子量2,200]18質量部、BET比表面積が200m2/gであるヒュームドシリカ(日本アエロジル(株)製、アエロジル200)22質量部、ヘキサメチルジシラザン5質量部、水2.0質量部を室温で30分混合後、150℃に昇温し、3時間撹拌を続け、冷却した。更に、これに平均粒子径が8μmであるヘキサメチルジシラザンにより表面処理された水酸化アルミニウム(カーボン量0.9質量%)70質量部、平均粒子径が1μmであるメチルトリメトキシシランにより表面処理された水酸化アルミニウム(カーボン量0.2質量%)100質量部を配合し、3本ロールに1回通してシリコーンゴムベースを得た。
【0045】
このシリコーンゴムベース270質量部に、上記ジメチルポリシロキサン(1)60質量部を入れ、30分撹拌を続けた後、更に架橋剤として両末端及び側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(2)(重合度25、Si−H量0.0048mol/g)を4.6質量部[Si−H/アルケニル基=1.5(モル比)]、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05質量部を添加し、15分撹拌を続けてシリコーンゴム組成物を得た。このシリコーンゴム組成物に白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1質量部を混合し、120℃/10分のプレスキュアにより厚さ2mm及び6mmのゴムシートを作製後、オーブン内で200℃×4時間のポストキュアを行った。
【0046】
得られた硬化物について、2mmシートよりJIS K6249に基づき硬さ、引張り強度及び切断時伸びの測定、6mmシートより電気絶縁特性の測定法であるIEC.publ.587法に基づき4.5kV印加でのトラッキング試験を行った。結果を表1に示した。
更に、この2mmシートについて、中心に直径約0.5mmのピンホールを空けて、図1に示す装置で、10kVで導通する距離に電極を配置して、200時間、コロナ放電試験を実施し、同様に硬さ、引張り強度、切断時伸びを測定した。結果を表1に示した。
【0047】
[実施例2]
ジメチルシロキサン単位99.825モル%、メチルビニルシロキサン単位0.15モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約8,000である両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖のゴム状オルガノポリシロキサン(3)100質量部に、分散剤として両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン(平均重合度10)5質量部、エチルトリアルコキシシラン5質量部、BET比表面積が200m2/gであるフュームドシリカ(日本アエロジル(株)製、アエロジル200)10質量部、平均粒子径が8μmである水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製、ハイジライトH32M)90質量部、平均粒子径が1μmである水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製、ハイジライトH42M)70質量部、(CH33SiO1/2単位,CH2=CH(CH32SiO1/2単位,SiO2単位及び(CH32SiO単位から成るシリコーンレジン[〔(CH33SiO1/2単位+CH2=CH(CH32SiO1/2単位〕/SiO2単位=0.72(モル比)、(CH32SiO単位含有率15質量%、ビニル基含有量=0.00015mol/g、重量平均分子量8,100]30質量部を添加し、加圧ニーダーにて配合し、ゴムコンパウンドを調製した。
【0048】
このゴムコンパウンドに、2,5−ジメチル−ビス(2,5−t−ブチルパーオキシ)ヘキサンと上記オルガノポリシロキサン(3)とBET比表面積が200m2/gであるフュームドシリカ(日本アエロジル(株)製、アエロジル200)の40質量%:40質量%:20質量%の混合ペーストを1.0質量部添加し、二本ロールにて均一に分散させた後、165℃にて10分間プレスキュアさせ、厚さ2mm及び6mmのシリコーンゴムシートを得、更に200℃のオーブンで4時間のポストキュアを実施した。
【0049】
この硬化物について、2mmシートよりJIS K6249に基づき硬さ、引張り強度及び切断時伸びの測定、6mmシートより電気絶縁特性の測定法であるIEC.publ.587法に基づき4.5kV印加でのトラッキング試験を行った。結果を表1に示した。
更に、この2mmシートについて、中心に直径約0.5mmのピンホールを空けて、図1に示す装置で、10kVで導通する距離に電極を配置して、200時間、コロナ放電試験を実施し、同様に硬さ、引張り強度、切断時伸びを測定した。結果を表1に示した。
【0050】
[実施例3]
実施例2のジメチルシロキサン単位99.825モル%、メチルビニルシロキサン単位0.15モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約8,000である両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖のゴム状オルガノポリシロキサン(3)100質量部に、分散剤として両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン(平均重合度10)5質量部、BET比表面積が300m2/gであるフュームドシリカ(日本アエロジル(株)製、アエロジル300)10質量部、メチルトリエトキシシランにより表面処理された平均粒子径が3μmである水酸化アルミニウム(カーボン量0.4質量%)40質量部、ビニルトリメトキシシラン及びメチルトリエトキシシシランにより表面処理された平均粒子径12μmの水酸化アルミニウム(カーボン量0.5質量%、ビニル基含有量0.0001mol/g)40質量部を加圧ニーダーにて30分混合した。
これに更に、(CH33SiO1/2単位,CH2=CH(CH32SiO1/2単位及びSiO2単位からなるシリコーンレジン[〔(CH33SiO1/2単位+CH2=CH(CH32SiO1/2単位〕/SiO2単位=1.10(モル比)、ビニル基含有量=0.00077mol/g、重量平均分子量1,500]28質量部を加えて、更に30分混合を続けた。
【0051】
このゴムコンパウンドに、2,5−ジメチル−ビス(2,5−t−ブチルパーオキシ)ヘキサンと上記オルガノポリシロキサン(3)とBET比表面積が200m2/gであるフュームドシリカ(日本アエロジル(株)製、アエロジル200)の40質量%:40質量%:20質量%の混合ペーストを1.5質量部添加し、二本ロールにて均一に分散させた後、165℃にて10分間プレスキュアさせ、厚さ2mm及び6mmのシリコーンゴムシートを得、更に200℃のオーブンで4時間のポストキュアを実施した。
【0052】
この硬化物について、2mmシートよりJIS K6249に基づき硬さ、引張り強度及び切断時伸びの測定、6mmシートより電気絶縁特性の測定法であるIEC.publ.587法に基づき4.5kV印加でのトラッキング試験を行った。結果を表1に示した。
更に、この2mmシートについて、中心に直径約0.5mmのピンホールを空けて、図1に示す装置で、10kVで導通する距離に電極を配置して、200時間、コロナ放電試験を実施し、同様に硬さ、引張り強度、切断時伸びを測定した。結果を表1に示した。
【0053】
[比較例1−1]
実施例1の両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が500であるジメチルポリシロキサン(1)60質量部、両末端及び側鎖にビニル基を有し、平均重合度が450であるジメチルポリシロキサン(4)[ビニル基含有量0.00038mol/g]18質量部、BET比表面積が200m2/gであるヒュームドシリカ(日本アエロジル(株)製、アエロジル200)22質量部、ヘキサメチルジシラザン5質量部、水2.0質量部を室温で30分混合後、150℃に昇温し、3時間撹拌を続け、冷却した。更に、これに平均粒子径が8μmであるヘキサメチルジシラザンにより表面処理された水酸化アルミニウム(カーボン量0.9質量%)70質量部、平均粒子径が1μmであるメチルトリメトキシシランにより表面処理された水酸化アルミニウム(カーボン量0.2質量%)100質量部を配合し、3本ロールに1回通してシリコーンゴムベースを得た。
このシリコーンゴムベース270質量部に、前記ジメチルポリシロキサン(1)60質量部を入れ、30分撹拌を続けた後、更に架橋剤として両末端及び側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(2)(重合度25、Si−H量0.0048mol/g)を4.2質量部[Si−H/アルケニル基=1.5(モル比)]、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05質量部を添加し、15分撹拌を続けてシリコーンゴム組成物を得た。このシリコーンゴム組成物に、白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1質量部を混合し、120℃/10分のプレスキュアにより厚さ2mm及び6mmのゴムシートを作製後、オーブン内で200℃×4時間のポストキュアを行った。この硬化物について、実施例1と同様にコロナ放電試験前後で各種物性を測定した。結果を表1に示した。
【0054】
[比較例1−2]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が500であるジメチルポリシロキサン(1)60質量部、(CH33SiO1/2単位,CH2=CH(CH32SiO1/2単位及びSiO2単位からなるシリコーンレジン[〔(CH33SiO1/2単位+CH2=CH(CH32SiO1/2単位〕/SiO2単位=0.95(モル比)、ビニル基含有量=0.00045mol/g、重量平均分子量2,200]18質量部、BET比表面積が200m2/gであるヒュームドシリカ(日本アエロジル(株)製、アエロジル200)22質量部、ヘキサメチルジシラザン5質量部、水2.0質量部を室温で30分混合後、150℃に昇温し、3時間撹拌を続け、冷却し、シリコーンゴムベースを得た。
このシリコーンゴムベース100質量部に、前記ジメチルポリシロキサン(1)60質量部を入れ、30分撹拌を続けた後、更に架橋剤として両末端及び側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(2)(重合度25、Si−H量0.0048mol/g)を4.6質量部[Si−H/アルケニル基=1.5(モル比)]、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05質量部を添加し、15分撹拌を続けてシリコーンゴム組成物を得た。このシリコーンゴム組成物に、白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1質量部を混合し、120℃/10分のプレスキュアにより厚さ2mm及び6mmのゴムシートを作製後、オーブン内で200℃×4時間のポストキュアを行った。この硬化物について、実施例1と同様にコロナ放電試験前後で各種物性を測定した。結果を表1に示した。
【0055】
[比較例2]
実施例2のジメチルシロキサン単位99.825モル%、メチルビニルシロキサン単位0.15モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約8,000である両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖のゴム状オルガノポリシロキサン(3)100質量部に、分散剤として両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン(平均重合度10)5質量部、エチルトリアルコキシシラン5質量部、BET比表面積が200m2/gであるフュームドシリカ(日本アエロジル(株)製、アエロジル200)10質量部、平均粒子径が8μmである水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製、ハイジライトH32M)90質量部、平均粒子径が1μmである水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製、ハイジライトH42M)70質量部、ジメチルシロキサン単位99.225モル%、メチルビニルシロキサン単位0.75モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約8,000である両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖のゴム状オルガノポリシロキサン(5)30質量部を添加し、加圧ニーダーにて配合し、ゴムコンパウンドを調製した。
【0056】
このゴムコンパウンドに、2,5−ジメチル−ビス(2,5−t−ブチルパーオキシ)ヘキサンと上記オルガノポリシロキサン(3)とBET比表面積が200m2/gであるフュームドシリカ(日本アエロジル(株)製、アエロジル200)の40質量%:40質量%:20質量%の混合ペーストを1.0質量部添加し、二本ロールにて均一に分散させた後、165℃にて10分間プレスキュアさせ、厚さ2mm及び6mmのシリコーンゴムシートを得、更に200℃のオーブンで4時間のポストキュアを実施した。この硬化物について、実施例1と同様にコロナ放電試験前後で各種物性を測定した。結果を表1に示した。
【0057】
[比較例3]
実施例2のジメチルシロキサン単位99.825モル%、メチルビニルシロキサン単位0.15モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約8,000である両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖のゴム状オルガノポリシロキサン(3)100質量部に、分散剤として両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン(平均重合度10)5質量部、BET比表面積が300m2/gであるフュームドシリカ(日本アエロジル(株)製、アエロジル300)10質量部、メチルトリエトキシシランにより表面処理された平均粒子径が3μmである水酸化アルミニウム(カーボン量0.4質量%)40質量部、ビニルトリメトキシシラン及びメチルトリエトキシシシランにより表面処理された平均粒子径12μmの水酸化アルミニウム(カーボン量0.5質量%、ビニル基含有量0.0001mol/g)40質量部を添加し、加圧ニーダーにて30分混合した。
【0058】
これに更に、ジメチルシロキサン単位95.475モル%、メチルビニルシロキサン単位4.5モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約8,000である両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖のゴム状オルガノポリシロキサン(6)28質量部を加え、更に30分混合を続け、ゴムコンパウンドを調製した。
【0059】
このゴムコンパウンドに、2,5−ジメチル−ビス(2,5−t−ブチルパーオキシ)ヘキサンと上記オルガノポリシロキサン(3)とBET比表面積が200m2/gであるフュームドシリカ(日本アエロジル(株)製、アエロジル200)の40質量%:40質量%:20質量%の混合ペーストを1.5質量部添加し、二本ロールにて均一に分散させた後、165℃にて10分間プレスキュアさせ、厚さ2mm及び6mmのシリコーンゴムシートを得、更に200℃のオーブンで4時間のポストキュアを実施した。この硬化物について、実施例1と同様にコロナ放電試験前後で各種物性を測定した。結果を表1に示した。
【0060】
【表1】

【符号の説明】
【0061】
1 電極
2 電極
3 ゴムシート
4 ギヤーオーブン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)有機過酸化物硬化型又は付加反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物:
100質量部、
(B)シリコーンレジン: 3〜80質量部、
(C)平均粒子径が20μm以下の水酸化アルミニウム: 30〜400質量部
を含有してなることを特徴とする高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
(A)成分が、
(イ)下記平均組成式(I)
aSi(4-a)/2 (I)
(式中、Rは非置換又は置換の一価炭化水素基であるが、Rの0.001〜10モル%は脂肪族不飽和炭化水素基であり、かつ90モル%以上はメチル基である。aは1.9〜2.4の正数である。)
で示される1分子中に平均2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン:
100質量部、
(ロ)有機過酸化物: 触媒量
からなる有機過酸化物硬化型オルガノポリシロキサン組成物である請求項1記載の高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
(A)成分が、
(ハ)下記平均組成式(I)
aSi(4-a)/2 (I)
(式中、Rは非置換又は置換の一価炭化水素基であるが、Rの0.001〜10モル%は脂肪族不飽和炭化水素基であり、かつ90モル%以上はメチル基である。aは1.9〜2.4の正数である。)
で示される1分子中に平均2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン:
100質量部、
(ニ)1分子中に珪素原子に直接結合する水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン: 0.1〜30質量部、
(ホ)付加反応触媒: 触媒量
からなる付加反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物である請求項1記載の高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
(B)成分のシリコーンレジンが、R23SiO1/2単位(式中、R2は非置換又は置換の一価炭化水素基)とSiO2単位を主成分とし、R23SiO1/2単位とSiO2単位とのモル比[R23SiO1/2/SiO2]が0.5〜1.5であり、アルケニル基含有量が1×10-5〜5×10-3モル/gであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
(C)成分の水酸化アルミニウムが、予め表面疎水化処理されたもの又は(A)、(B)成分との配合時に表面疎水化処理されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物。
【請求項6】
(C)成分の水酸化アルミニウムが、シラザン類及び/又はシラン類で表面疎水化処理されたものであることを特徴とする請求項5記載の高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物。
【請求項7】
(C)成分の水酸化アルミニウムが、平均粒子径5μm未満のものと、5μm以上のものとの2種類を、質量比で90/10〜10/90の範囲で混合したものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−189594(P2010−189594A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37688(P2009−37688)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】