高齢者対応歯科診療椅子用マットおよび歯科診療椅子

【課題】高齢者や身障者に特に好適なように構成配置された歯科診療椅子用マットおよび歯科診療椅子を提供せんとするものである。
【解決手段】歯科用診療椅子のシート面に、一体または着脱自在或は折りたたみ収納自在なエアマットを備える。このエアマットは歯科用診療椅子のシート面と患者の身体の隙間を埋めるように配置され、かつ該エアマットは内外二層構造で外層はボディーラインに合わせて自由に形状変形可能な流動可能なパウダー状のビーズ素材で構成され、内層は外部のエア供給源よりエア供給可能なエアバッグで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、歯科診療椅子及び歯科診療椅子に着脱自在または折りたたみ収納自在なエアマットに係り、特に高齢者や身障者で腰や膝が湾曲した患者の歯科診療治療用の椅子に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、腰や背中または膝が湾曲した患者の場合は、患者を、歯科診療台に座らせ、歯科診療椅子を倒して仰臥位に寝かせて治療を行うことが多く、湾曲した背中の一部が椅子のバックレストに当たり、安定して収まらなくなる。このために患者の身体は動揺し不安定な状態になり、治療の際に危険であるので、安心して治療が受けられなくなるという問題がある。
【０００３】
また、患者の顎が引けると開口が困難になるため、診療を容易にするためには頭頂部を後方に傾斜させ、顎を若干突き出した状態に位置づけ、自然に開口できるような姿勢をとらせなければならない。これにより患者の姿勢がやや上方に弓形に反り返り、この姿勢で体軸を長時間にわたって傾斜させると首筋や肩が強張り、首や肩が凝るなど患者に苦痛を与えるようになる。
【０００４】
そこで歯科診療椅子に着座した患者に苦痛を与えずに体位を安定させる方法として各種提案がなされている（例えば、特許文献１参照）。
【０００５】
特許文献１の発明は、歯科診療椅子に着座する人の安楽性を向上させることを目的としており、特に、高齢者を対象として、患者の体型に合わせてフィットさせるように、椅子の背もたれの前面に複数の膨張縮小自在のエアバッグを複数の区画内に配設し、エアバッグに連結されたチューブを各個別に制御する開閉電磁弁を有するエア分配器とそのリモート操作ボックスを備えてなる歯科療椅子が開示されている(特許文献１)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００６】
【特許文献１】特開２００５−２７０２１１号公報
【特許文献２】特許第３，９８２，７５０号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
しかしながら、エアバッグにエアを供給すると、患者の荷重がかかっていない部分に反発力が働き、患者が僅かに移動しても、その反発力によって身体が安定しない場合が多々あった。そのためエアバッグを複数の区画内に分けて各区画内で空気圧を安定させ反発を防ぐ構造が必要で、多くの開閉電磁弁とエア分配器が必要で複雑で高価なものとなった。またエアバッグは患者の身体にフィットするものでなく、ボディーラインとエアバッグとの間に隙間が生じ安定感を欠いていた。
【０００８】
さらに高齢者や身障者の様々な体形や障害に適応できるものではなく、左右のバランスが崩れた体形には適合するが、特に背中や腰が曲がった患者に対しては仰臥に寝た状態で安定した体位を保つことが困難であった。
【０００９】
また、高齢者を対象としているにもかかわらず、治療時の患者の姿勢のみが考慮され、患者への着座や起立への配慮や、患者の体調への配慮がなされていない、等の種々の欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
本発明の目的は、上記種々の欠点を解消し得るように成されたもで、高齢者や身障者に特に好適なように構成配置された歯科診療椅子用マットおよび歯科診療椅子を提供せんとするものである。
【００１１】
本発明歯科診療椅子用マットは、歯科用診療椅子のシート面に、一体または着脱自在或は折りたたみ収納自在なエアマットを備えてなり、該エアマットは歯科用診療椅子のシート面と患者の身体の隙間を埋めるように配置され、かつ該エアマットは内外二層構造とし、外層がボディーラインに合わせて自由に形状変形可能な素材で構成され、内層が外部のエア供給源よりエア供給可能なエアバッグで構成されることを特徴とする。
【００１２】
本発明歯科診療椅子用マットにおいては、前記エアバッグは、厚み方向に複数層重ねて具備され、夫々独立におよび／または同時にエア供給可能とする。
また、前記エアバッグは、外部のエア供給源からのエア充填を制御する充填制御手段と、エアバッグ内のエアの排気を制御する排気制御手段とを設ける。
【００１３】
前記エアバッグは、外部圧力が加わっても、エアバッグ内の圧力を一定に保つようにエアを排気するエア内圧保持手段を設ける。
前記エアマットは、患者の頭から腰にかけて保持可能なように歯科用診療椅子の背部に設ける。
前記エアマットは、患者の臀部から膝にかけて保持可能なように歯科用診療椅子の座部に設ける。
【００１４】
前記エアバッグは、患者の着座および起立を補助するようにエアの供給及び排気を制御可能にする。
前記外部のエア供給源が歯科治療用ユニットに常設されているエア回路であって、該エア回路に接続可能なエア供給継手を設ける。
前記エアバッグへのエアの供給及び排気の制御を患者および／または術者が制御可能な入力装置を設ける。
前記エアマットは、歯科診療椅子の端部に巻き上げ自在に収納し得るようにする。
前記エアマット部に生体情報計測を目的とするための空気層を設け、該空気層の患者が乗った状態の空気圧の変化をチューブによって外部に伝達し、患者の呼吸、心拍数などの生体情報を検知可能とする。
【００１５】
本発明歯科診療椅子用マットにおいては、前記形状変形可能な素材を流動可能なパウダー状のビーズ素材とする。
また、前記形状変形可能な素材を低反発ウレタン素材とする。
本発明歯科診療椅子は、請求項１乃至１３のいずれかに記載の歯科診療椅子用マットを、一体または着脱自在或は折りたたみ収納自在に装着することを特徴とする。
【発明の効果】
【００１６】
上述したように、本発明によれば請求項１のように構成することで、背、腰、膝が曲がった患者に対しては仰臥状態で安定した姿勢で診察が可能となる。
【００１７】
エアバッグへのエア供給により障害部分をカバーするようにエアバッグが膨らみ、さらに、外層部を流動可能なパウダー状のビーズ素材や、低反発ウレタン素材のように自由に形状変形可能な素材で構成することで、患者の姿勢や体形に合わせて隙間部を埋めることができ、エアの反発力を受けないように患者を安定した状態で固定することができる。
また、外層部が患者にやさしくフィットしその独特の触り心地の感触により、患者に癒し効果与え、安心して治療を受けることができる。
さらに、請求項２及び請求項３のように構成することで、患者の体形や障害の度合いに応じて、エアマットの厚みを変えることが可能であり、また、夫々のエアバッグへのエア供給量により堅さを変えることで、エアの反発力を分散し、更にパウダー状のビーズ層によって患者を安定させることが可能となる。
【００１８】
例えば２層のエアバッグを重ねた場合、椅子側のエアバッグを堅くすることで高さ調整用に使用し、患者側のエアバッグを柔らかくすることで、患者の身体形状に合わせた窪みを形成し、更にその外側のパウダー状のビーズ層によって患者との隙間を細部まで埋め、患者の身体形状に窪んだエアバッグの反発力を発生しないように固定することが可能である。
【００１９】
さらに、椅子側のエアバッグの数を増やすことで、患者の身体形状に合った高さの調整が可能である。
また、請求項４のように構成することで、患者の荷重を圧力で検知しエアバッグ内の圧力を一定に保つように制御することが可能で、これによりエア反発力を一定に保ち、患者を安定させた状態のまま維持し位置ズレを生じることはない。
さらに、請求項５のように構成することで、背中、腰の曲がった患者に有効である。
【００２０】
また、請求項６のように構成することで、膝の湾曲した患者に有効である。
さらに、請求項７のように構成することで、患者に負担かけることなく導入、退出が容易にできるようになる。
更に又、請求項８のように構成することで、歯科用ユニットに常設されているエア供給用のワンタッチジョイントに容易に連結が可能なので着脱自在に移動して使用することが可能となり、適応患者のみに装着可能とする。
【００２１】
さらに、請求項９のように構成することで、患者自身が自分の身体に合ったエアマットの状態を設定することができる。
また、請求項１０のように構成することで、健常者診察にはエアマットが支障にならないようになる。
更に又、請求項１１のように構成することで、診察中に高齢者、身障者の体調の変化を検知し配慮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【００２２】
【図１】図１は本発明エアマットの歯科診療椅子への取り付け位置を示す側面図である。
【図２】図２ａは本発明エアマットの構成を示す上面断面図、図２ｂはエアマットの別な形態の構成を示す上面断面図、図２ｃはエアマットの構成を示す側面断面図、図２ｄはエアマットの別な形態の構成を示す上面断面図である。
【図３】図３はエアマットのエア制御を示す制御回路である。
【図４】図４ａはエアマットの歯科診療椅子の装着状態を示す斜視図、図４ｂはエアマットの装着手段を示す説明図である。
【図５】図５は歯科診療椅子への患者の着座および退出に本構成を適用した場合を示す側面図である。
【図６】図６はエアマット部に生体情報計測するための空気層を設けた構造を示す側面断面図である。
【図７】図７は歯科診療ユニットのワンタッチジョイントの取り付け位置を示す説明図である。
【図８】図８は本発明エアマットの収納状態の１例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【００２３】
本発明歯科診療椅子用マットを歯科診療椅子に装着した状態で患者に適用する例を図１に付き説明する。
即ち、通常、基台部２上に着座部シート３、バックレスト４、ヘッドレスト５およびレッグレスト６より成る歯科診療椅子１を上下動自在、且つ、傾斜自在に装着する。この場合、歯科診療椅子１をほぼ水平状態にして診療中で、既に、例えば、背、腰、膝が曲がった患者９に対して仰臥状態で安定した姿勢で診察されている状態を示している。従って、患者９の胸部、頸部、後頭部に対して第1エアマット７をバックレスト４上に配置し、且つ膝部に第2エアマット８を着座部シート３上に配置した状態を示しているものとする。
【実施例１】
【００２４】
本発明による第１エアマット７について以下説明する。
本実施例では図２ａ、図２ｃに示すように、第１エアマット７は、内層である第1前部エアバッグ１１および第2後部エアバッグ１２並びに外層１３をカバーシート１４によって囲むようにしてエアマットを構成する。この際、第２後部エアバッグ１２がバックレスト４に当接し、外層１３が患者９に当接し、これら第２後部エアバッグ１２および外層１３間に配置されるように構成する。
この場合、第１前部エアバッグ１１および第２後部エアバッグ１２は夫々第１エアチューブ１８および第２エアチューブ１９を介してエア制御ボックス１７に連結し、次いでエア供給用チューブ１６を介してエア供給継手１５に連結する。
【００２５】
このエア供給継手１５は図７に示すように、ワンタッチジョイント５１を介して、歯科診療ユニット５０(図７参照）に配置されているエア供給源（後に詳細に説明する）に連結する。
即ち、本発明によるエアマットは前後２段のエアバッグで構成する。
【００２６】
なお、図２ａはエアマットの構成を示す上面図、図２ｃはエアマットの構成を示す側面図である。
【００２７】
このエアマットは、上述したように、外層１３のビーズ層と内層のエアバッグ層１１，１２とそれを包含するカバーシート１４とで構成されている。
なお、外層１３は平面方向または厚み方向に仕切りを設けて層を分割してもよく、この場合ビーズが重さで下方に流れることを防ぎ均等に分散させることができる。
【００２８】
この外層１３にはパウダー状の極小ビーズ素材例えば直径３ｍｍのポリスチレンのビーズを使用し、ビーズが外層１３内で流動し、患者９の姿勢や体形に捉われずに外層部シート形状を自由に変形することが可能であるように構成する。これにより、パウダー状の極小ビーズ素材がボディーラインに合わせて移動し、外層部シート形状を変形可能となるようにする。パウダー状の極小ビーズ素材はビーズが外層１３内を流動し、外層部シート形状を変形可能な素材であれば何でもよく、ポリスチレンビーズに限定されるものでない。
また、パウダー状の極小ビーズ素材に変えて低反発ウレタン素材で構成してもよく、この場合、低反発ウレタン素材がボディーラインに合わせてゆっくり沈み外層シート形状を変形可能とする。
【００２９】
前述した内層は前部エアバッグ１１と後部エアバッグ１２の前後２段のエアバッグで構成しており、夫々のエアバッグ１１，１２にはエアチューブ１８，１９が接続され、エアマット７の外部に設けられたエア制御ボックス１７に接続されている。エア制御ボックスは１７歯科診療用椅子や歯科診療ユニットまたはその近傍に着脱容易な構造で固定される。またエアバッグにエア制御ボックスを収納し一体化してもよい。
【００３０】
上述した実施例１では、２段のエアバッグ１１，１２について説明したがこのエアバッグは何段で構成してもよく、複数段にすることで歯科診療椅子のシートと患者との隙間に対応するように高さ調整が容易になる。
【００３１】
また、エアバッグは膨らんだ状態の形状を必要とする形状としてビニール素材で予め型取りして製作してもよいし、ゴム状の素材で風船のように膨らませてもよい。例えば、図２ｃに示すように、頭頂部を厚く頸部を薄くなるようにエアバック形状を予め型取りして製作してもよい。
【００３２】
カバーシート１４は内層１１，１２と外層１３を一体に包むもので例えばウレタンシートや合成皮革素材を使用し、内層の大きさの変化に対応可能ように折返しを付けたり、蛇腹構造にしたり、或いは、伸縮性のある素材を使用してもよい。
【００３３】
このように構成されたエアマット７は、例えば２層のエアバッグを重ねた場合、椅子側のエアバッグを堅くすることで高さ調整用に使用し、患者側のエアバッグを柔らかくすることで、患者身体形状に合わせた窪みを形成し、更にその外側のパウダー状のビーズ層によって患者との隙間を細部まで埋め、患者身体形状に窪んだエアバッグの反発力を発生しないように固定することが可能である。
【００３４】
さらに椅子側のエアバッグの数を厚み方向に増やすことで、患者の身体形状に合った高さの調整を行うことが可能である。
また、エアバッグは図２ｂに示すように一層にしてもよい。
さらに、図２ｄに示すようにエアマットは同心円状に内層２２を中心として外側に外層２１を設けたエアバッグの構成にしてもよい。更に又、エアバッグ表面に複数の窪みを形成するように、エアバッグ内面の一部を接合して空気層を細分化してもよい。
【００３５】
次にエア供給源について説明する。
前述したように、エアマット７内の夫々のエアバッグ１１，１２から出たエアチューブ１８，１９は一旦エア制御ボックス１７に連結され、さらにエア制御ボックス１７からエア供給用チューブ１６を経て、エア供給継手１５を介しエア供給源に連結する。
【００３６】
エア供給源としては、歯科診療室用に設置されているコンプレッサであってもよいし、コンプレッサから歯科治療ユニット（図７参照）に供給されているエア回路上から分岐接続して使用してもよい。
【００３７】
また、歯科診療椅子に隣接或いは一体に設置された歯科診療ユニットには歯科治療用にタービン等の回転させるための圧縮エアが供給されており、そのエアを外部機器に供給可能なようにエア用のワンタッチジョイント５１が歯科診療ユニットに付属して設けられている（図７）。このワンタッチジョイントは弁を有する型のシャットオフバルブとし、継手の連結時に弁が開いてエアが通過するような構造のものとする。このワンタッチジョイント５１に、エア供給用チューブ１６に連結されたエア供給継手１５を連結して使用してもよい。斯様に、ワンタッチジョイント用の継手を使用することで着脱が容易になり、エアマット７を他の椅子に移動することが容易になる。
なお、エア供給継手１５は夫々のエア供給源にあった継手を使用することができる。
【００３８】
次に、図３を参照し、エア制御ボックス１７について説明する。
エア供給源からの圧縮エアはエア供給継手１５、エア供給用チューブ１６を通りエア分配回路３１に接続する。エア分配回路３１ではレギュレータ３４にてエア圧を一定圧力に調整し、エアを分岐して夫々のエアバッグ制御回路３２、３３に連結する。
【００３９】
なお、エア分配回路３１上に、圧力が異常に上がった場合に備え安全弁３６を設けてもよいし、エア圧確認用に圧力計３５を設けてもよい。
【００４０】
エア分配回路３１から分配された圧縮エアは前部エアバッグ制御回路３２と後部エアバッグ制御回路３３の夫々に分配する。夫々のエアバッグ制御回路３２，３３には、充填制御手段３７、３８を設ける。充填制御手段３７、３８では分配された圧縮エアをエアバッグに供給するための開閉制御を行うもので、その開閉時間によってエア供給量を制御することができる。またエア供給を停止させることができる。
【００４１】
充填制御手段３７、３８によって供給されたエアはエアバッグ１１，１２にエアを供給するためのエアチューブ１８，１９に連結するが、その途中には排気制御手段３９，４０とエア内圧保持手段４１，４２を夫々設けている。排気制御手段３９，４０はエアバッグ１１，１２に溜まったエアを排気するために開閉制御を行うもので、その開閉時間によって排気量を制御することができる。また排気を停止させることができる。
従って、充填制御手段３７，３８と排気制御手段３９，４０を相互に開閉制御することで、エアバッグ１１，１２の空気量を制御することが可能で、エアバッグ１１，１２の硬さを制御することが可能となる。
【００４２】
なお充填制御手段３７，３８と排気制御手段３９，４０は手動コックを用いてもよいし、電磁弁を用いて電気的に制御してもよい。
また適正な空気量を制御できるように夫々の開閉時間をプログラムで制御してもよい。
【００４３】
エア内圧保持手段４１，４２はエアバッグ１１，１２内の圧力設定を行うことが可能で、異常な圧力を検知した際にエアバッグ１１，１２を破損防止するとともにエアバッグ１１，１２内の設定圧力を超えた場合に外気にエアを排気して圧力を逃がし、所定圧に戻ったら弁を閉じることができるように構成する。エア内圧保持手段４１，４２は市販のリリーフ弁や安全弁を使用することが可能で、多くはバネの力により通常は弁を閉じているが圧力の上昇によりバネの力以上の圧力が掛かると圧力を逃がすように構成する。
【００４４】
内圧保持手段４１，４２により、エアバッグ１１，１２内のエア反発力を一定に保ち、患者を安定させた状態のまま維持し位置ズレを生じないようにする。内圧保持手段４１，４２は通常、充填制御手段３７，３８と排気制御手段３９，４０を閉じた状態で使用するが、その両方を開いて使用してもよい。また充填制御手段３７，３８のみを開いて使用してもよい。
【００４５】
なお充填制御手段３７，３８と排気制御手段３９，４０によるエアバッグ１１，１２へのエア供給操作は、入力装置２３を使って、患者または術者によって制御する。充填制御手段３７，３８と排気制御手段３９，４０を電磁弁で構成すれば、電気スイッチの操作により制御可能とすることができる（図４ａ参照）。
【００４６】
また充填制御手段３７，３８と排気制御手段３９，４０を直接エアコックで操作する場合は、エア制御ボックス１７を入力装置２３として使用してもよい。入力装置２３は患者が座りながら制御可能な位置に移動可能に／または固定して設けることもできる。（図４ａおよび図７参照）
【００４７】
次にエアマット７の歯科診療椅子１への取り付けを、図４ａよび図４ｂ並びに図１を用いて説明する。
図１はエアマットの歯科診療椅子への取り付け位置を示す側面図である。
【００４８】
このエアマットは背中や腰の湾曲した患者用に歯科用診療椅子１の背部であるバックレスト４に取り付けることができる。
また膝の湾曲した患者用には歯科用診療椅子１の着座部シート３に第２エアマット８を取付けることができる。
【００４９】
その取付方法は、図４ｂに示すように、ベルト２４がエアマット７の上下方向に各２本、左右方向に各１本配置され、ベルト２４夫々の先端にはバックル２５が設けられ、ベルト２４のバックル２５夫々を図４ａに示すように歯科用診療椅子１のバックレスト４の裏面側にて結合することにより装着することができる。
【００５０】
またベルト２４を使用しない取り付け方法として、エアマット部の外周縁に管状部を形成し、これにゴム紐を通して、バックレスト４の外周に被せてバックレスト４の裏側にてゴム紐を収縮させることにより装着してもよい。
またバックレスト４のシート面とエアマット７の裏側に面ファスナーを設け、夫々を合わせて装着してもよい。
また、本発明はこれに限定されず、磁石、スナップ、ボタンを使用して、或いはシリコンなどの接着力によって装着してもよい。
【００５１】
更に又、着脱自在ではなく、予め歯科治療椅子シート内部にエアマットを組み付けてもよいし、図８に示すようにエアマット７を歯科診療椅子の端部の邪魔にならない位置に巻き上げて自在に収納してもよい。
【実施例２】
【００５２】
図５は歯科診療椅子１への患者９の着座および退出を示す側面図である。
本発明によれば、第３エアマット４３および第４エアマット４４をバックレスト４と着座部シート３に夫々設け、患者９の歯科診療椅子１からの退出時に、患者９の臀部を前方へ持ち上げるようにエアバッグにエアを供給することにより、患者の起立を補助することが可能である。
【００５３】
この場合、エアマットは診療時用とは別な起立補助用のエアマット４３，４４を用意してもよいし、同じエアマット７，８を使用してもよい。
診療時と同じエアマット７，８を使用する場合は診療用と起立補助用の両方の目的を達成することができる。
【００５４】
また、バックレスト４のエアマットも臀部のエアマット４４と同様な構造にすることで、患者９の起立をさらに補助し、患者９を前へ押し出すような補助を行うことも可能である。この場合、臀部を上方および前方へ押し出す動きを補助するように遅延して作動させてもよい。
着座時にはこの逆の動作を行うように、エアを制御することができ、これにより患者９に負担かけることなく、患者９の歯科診療椅子１への導入、退出を行うことができる。
【実施例３】
【００５５】
図６はエアマット部７，８に生体情報を計測するための空気層を設けた構造を示す側面図である。
なお、この空気層はエアチューブ１８，１９によってエア制御ボックス１７に接続するものではなく、生体情報検出空気層２６として設けられた別箇の空気層で、一定圧で加圧された閉鎖された空気層になっている。
【００５６】
この生体情報計測を目的とするための生体情報検出空気層２６に、患者９が乗った状態の空気圧の変化から患者９の呼吸、心拍数、体動などの生体情報を連結された生体情報検出用エアチューブ２７によって外部の生体情報検出手段に伝達し診察中に高齢者、身障者の体調の変化を検知することができる。
生体情報検出空気層２６はそのエア圧の変化をエアマットの外部に連結されたチューブ２７の先端に設けられた空電変換手段２８に伝達し、例えば感圧センサ、圧電素子、マイクロフォンなどで検出し、空気信号を電気信号に変換し、患者の呼吸数、心拍数、体動を術者に伝達する。伝達方法は音や表示手段を使用すればよい。これにより、診察中に高齢者、身障者の体調の変化を検知し、患者９の安全を確保することができる。
【００５７】
なお、本願発明の先の発明（特許文献２）に示すように、生体情報計測手段２９からのデータから変化量を計測し基準値と比較して判定し、警告音などで告知したり、治療装置を止めたり、パワーを落としたりするように治療制限を加えたり、緊張緩和するような音楽などを流すこともできる。
【産業上の利用可能性】
【００５８】
なお本発明は高齢者や身障者対応の歯科診療椅子用のマットおよび歯科診療椅子に開発されたものであるが、医療用や介護用のマットとして、或いはベッドや椅子として利用することも可能である。
【符号の説明】
【００５９】
１歯科診療椅子
２基台部
３着座部シート
４バックレスト
５ヘッドレスト
６レッグレスト
７第１エアマット
８第２エアマット
９患者
１１第１前部エアバッグ
１２第２後部エアバッグ
１３外層
１４カバーシート
１５エア供給継手
１６エア供給用チューブ
１７エア制御ボックス
１８第１エアチューブ
１９第２エアチューブ
２０エアチューブ
２１外層
２２内層
２３入力装置
２４ベルト
２５バックル
２６生体情報検出空気層
２７生体情報検出用エアチューブ
２８空電変換
２９生体情報計測手段
３１分配回路
３２前部エアバッグ制御回路
３３後部エアバッグ制御回路
３４レギュレータ
３５圧力計
３６安全弁
３７第１充填制御回路
３８第２充填制御回路
３９第１排気制御手段
４０第２排気制御手段
４１第１エア内圧保持手段
４２第２エア内圧保持手段
４３第３エアマット
４４第４エアマット
５０歯科診療ユニット
５１ワンタッチジョイント

【特許請求の範囲】
【請求項１】
歯科用診療椅子のシート面に、一体または着脱自在或は折りたたみ収納自在なエアマットを備えてなり、該エアマットは歯科用診療椅子のシート面と患者の身体の隙間を埋めるように配置され、かつ該エアマットは内外二層構造とし外層がボディーラインに合わせて自由に形状変形可能な素材で構成され、内層が外部のエア供給源よりエア供給可能なエアバッグで構成されることを特徴とする歯科診療椅子用マット。
【請求項２】
前記エアバッグは厚み方向に複数層重ねて具備され、夫々独立に及び／または同時にエア供給可能とすることを特徴とする請求項１に記載の歯科診療椅子用マット。
【請求項３】
前記エアバッグは外部のエア供給源からのエア充填を制御する充填制御手段と、エアバッグ内のエアの排気を制御する排気制御手段とを設けたことを特徴とする請求項１乃至請求項２のいずれかに記載の歯科診療椅子用マット。
【請求項４】
前記エアバッグは外部圧力が加わっても、エアバッグ内の圧力を一定に保つようにエアを排気するエア内圧保持手段を設けたことを特徴とする請求項１乃至請求項３記載のいずれかに記載の歯科診療椅子用マット。
【請求項５】
前記エアマットは患者の頭から腰にかけて保持可能なように歯科用診療椅子の背部に設けたことを特徴とする請求項１乃至請求項４のいずれかに記載の歯科診療椅子用マット。
【請求項６】
前記エアマットは患者の臀部から膝にかけて保持可能なように歯科用診療椅子の座部に設けたことを特徴とする請求項１乃至請求項５のいずれかに記載の歯科診療椅子用マット。
【請求項７】
前記エアバッグは患者の着座および起立を補助するようにエアの供給及び排気を制御可能にしたことを特徴とする請求項１乃至請求項６のいずれかに記載の歯科診療椅子用マット。
【請求項８】
前記外部のエア供給源が歯科治療用ユニットに常設されているエア回路であって、該エア回路に接続可能なエア供給継手を有していることを特徴とする請求項１乃至請求項７のいずれかに記載の歯科診療椅子用マット。
【請求項９】
前記エアバッグへのエアの供給及び排気の制御を患者および／または術者が制御可能な入力装置を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項８のいずれかに記載の歯科診療椅子用マット。
【請求項１０】
前記エアマットは歯科診療椅子の端部に巻き上げ自在に収納できることを特徴とする請求項１乃至請求項９のいずれかに記載の歯科診療椅子用マット。
【請求項１１】
前記エアマット部に生体情報計測を目的とするための空気層を設け、該空気層の患者が乗った状態の空気圧の変化をチューブによって外部に伝達し、患者の呼吸、心拍数などの生体情報を検知可能とすることを特徴とする請求項１乃至請求項１０のいずれかに記載の歯科診療椅子用マット。
【請求項１２】
前記形状変形可能な素材を流動可能なパウダー状のビーズ素材とすることを特徴とする請求項１に記載の歯科診療椅子用マット。
【請求項１３】
前記形状変形可能な素材を低反発ウレタン素材とすることを特徴とする請求項１に記載の歯科診療椅子用マット。
【請求項１４】
請求項１乃至１３のいずれかに記載の歯科診療椅子用マットを、一体または着脱自在或は折りたたみ収納自在に装着することを特徴とする歯科診療椅子。

【図１】