説明

高Q値LC回路湿分センサ

基質の湿分含量を測定する装置が提供される。装置は、共振周波数を有する高Q値LC回路を使用する。LC回路は高Q値インダクタ及びコンデンサを使用する。装置はまた、電力をコンデンサに結合するように動作可能であり、LC回路及び繊維マトリックス変性ユニットに電気的に結合された高周波信号発生器も使用する。LC回路の共振周波数は、繊維マトリックス変性ユニット内にコンデンサに近接して配置された、基質の湿分含量に応じて変えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に測定センサに関し、特に、毛髪などの生物学的システムの内部及び外部の湿分含量などの、基質の状態量を測定するセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの毛髪などの繊維性基質は、一般に、α−ケラチンと呼ばれるタンパク質を含む。羊毛及び毛髪などのα−ケラチン繊維は、親水性が高い。毛髪は、吸湿性且つ浸透性であり、環境から水分を吸収することができる。正常な状態では、水分が、毛髪の組成の約12%〜15%を占める。更に、毛髪は、それ自体の30重量%超過の水分を吸収することができる。典型的には、毛髪は、飽和状態でそれ自体の約30重量%の水分を吸収する。毛髪が損傷している場合、この割合は45%に近づくことがある。しかしながら、健康な外観を与える、損傷した毛髪の内の水分を、毛髪の繊維内に保持する能力は低減される。この水分との相互作用の結果、ケラチン性繊維のほとんど全ての物理的特性は、水分が存在することによって変性されると考えられる。例としては、長さ及び直径の違い、内部の粘性の変化、ヘア保持及びセット特性、毛髪の強度、及び電気光学特性が挙げられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
毛髪の湿分量を決定する湿分感知装置がこれまで開発されており、それら装置は、所望の目安を得るための抵抗力測定を含む、様々な技法に依存してきた。しかしながら、これらの方法は、比較的濡れた状態の毛髪における既知の断面量及び密度が測定される場合にのみ、良好に機能する。毛髪の密度、湿気、又は稠密度が変わると、これらの測定技法は機能しなくなる。更に、これらの技法は、測定のために主として毛髪繊維の外側の湿分含量に依存しており、毛髪繊維内の湿分含量をも同様に正確に測定する能力を有さない。
【0004】
従って、毛髪などのケラチン性繊維を含む基質の湿分含量を、正確に且つ信頼性高く決定できる、湿分感知装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、基質の湿分含量を測定する装置を提供する。装置は、共振周波数を有する高Q値LC回路を含む。LC回路は、高Q値インダクタ及びコンデンサを使用する。装置はまた、電力をコンデンサに結合するように動作可能で、LC回路に電気的に結合された高周波信号発生器と、繊維マトリックス変性ユニットとを含む。基質が繊維マトリックス変性ユニット内であって且つコンデンサに近接して配置された場合、LC回路の共振周波数を基質の湿分含量に応じて変えることができる。
【0006】
本発明はまた、基質の湿分含量を測定することができる装置のための回路も提供する。回路は、高Q値インダクタ及びコンデンサを含む高Q値LC回路を含む。回路は、共振周波数と、それに電気的に結合された高周波信号発生器を有する。高周波信号発生器は、電力をコンデンサに結合するように動作可能である。LC回路の共振周波数は、コンデンサに近接して配置された基質の湿分含量に応じて変えることができる。
【0007】
本発明は更に、第一に、高Q値インダクタ及びコンデンサを有し、且つシフト可能な共振曲線を有する高Q値LC回路を提供することにより、基質の湿分含量を測定する方法も提供する。第2に、基質はコンデンサに近接して置かれる。第3に、高Q値LC回路の出力が測定される。次に、出力を基準値と比較して、基質の湿分含量が決定される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付図面は、上記に記載した本発明の全体的な説明及び以下に記載する詳細な説明と共に、本発明の実施形態を示して本発明を説明する働きをする。
【0009】
「発明を実施するための最良の形態」で引用したすべての文献は、関連部分において本明細書に参考として組み込まれるが、いずれの文献の引用も、それが本発明に対する先行技術であることを容認するものと解釈されるべきではない。
【0010】
A.方向性結合器
ここで図面、特に図1及び図2A〜図2Eを参照すると、本発明の原理に従った方向性結合器センサ10が示される。簡潔にするため、センサ10は、本明細書において毛髪の湿分含量の測定に関連して説明される。しかしながら、本発明は多種多様な用途に使用され、従って、毛髪の分析又は基質中の湿分含量の測定に限定されないことが、当業者には理解されるであろう。むしろ、本発明のセンサ10は、当業者には容易に理解されるように、多種多様な基質、それら基質の多種多様な特徴(すなわち、化学的特性及び物理的特性)を分析し、それら基質の異なる湿分関連の特性を測定するように、容易に適合させることができる。
【0011】
例えば、基質の湿分含量の測定では、本発明のセンサ10は、基質の湿分含量が増加するとその有効相対電気インピーダンスも増加するという原理の下で動作する。更に詳細に後述するように、センサ10は、基質の相対インピーダンスを測定するように設計され、その測定値から、基質の湿分含量を決定することができる。湿分含量値は、表示装置上に提示され、ユーザが知覚可能な可聴音で表示され、及び/又は装置の機能を制御する制御信号として使用され得る。
【0012】
図1、図2A〜図2E、図3、及び図3Aに示すように、センサ10は、結合ギャップ16をそれらの間に画定する一対の概ね平行なストリップ14a及び14bを有する、高周波方向性結合器12を組み込んでいる。本発明の一実施形態では、平行なストリップ14a及び14bは、下面に接地面20が形成されたFR4プリント回路基板18(図3及び図3A)上で支持される。本発明の一実施形態では、PCB18の高さ「h」は1.6mm(0.062インチ)であり、ストリップ14a及び14bはそれぞれ、3.8mm(0.15インチ)の幅「w」と8.9mm(0.350インチ)の長さ「l」を有し、結合ギャップ16は0.5mm(0.020インチ)のギャップ距離「s」を有する。当然ながら、プリント基板18、ストリップ14a、14b、及びギャップ16の他の寸法も、詳細に後述するように、特定の用途に応じて同様に可能であることが、当業者には理解されるであろう。
【0013】
高周波信号発生器22は、ストリップ14aに電気的に結合され、結合ギャップ16を横切って電磁界を発生するように動作可能であり、結合ギャップ16は、詳細に後述するように、詰め込まれた状態で結合ギャップ16を横切って、即ちその長手方向軸線にほぼ垂直に基質が配置された状態で、ストリップ14bに電力を結合する。信号発生器22は、結合ギャップ16を横切って配置された基質のインピーダンス、従って湿分含量に関連する振幅を有する結合電力信号を、結合されたストリップ14b内に発生させる。信号発生器22は、水晶基準器24(図2A)に位相ロックされて、周波数、従って測定の正確さ、安定性、及び再現性を維持し、並びに調整可能な電力源26を有する。信号発生器22は、超短波から極超短波までの周波数範囲、即ち約30MHz〜約3GHzの信号を発生するように動作可能であるのが好ましいが、他の周波数範囲も同様に可能である。本発明の一実施形態によれば、基質の水分含有量は、そのインピーダンスがGHz付近の範囲で測定されると最も正確に決定できると考えられるため、信号発生器22は、約860MHz〜約928MHz、より好ましくは約865MHz〜約915MHz、最も好ましくは約915MHzの範囲の周波数など、約1GHzで動作してもよい。
【0014】
本発明の一態様によれば、センサ10は、高周波方向性結合器12の逆電力結合変形を利用して、結合ギャップ16を横切って配置された物質のインピーダンスの変化を測定する。基質が結合ギャップ16を横切って詰め込まれると、方向性結合器12が不整合になり、物質の湿分含量が増加した結果としてギャップ16を横切るインピーダンスが増加するにつれて、この不整合が方向性結合器12の逆電力結合の単調増加を引き起こす。ストリップ14bからの反射電力分枝28(図1及び図2B)の逆電力の振幅は、一般に、インピーダンスの、従って結合ギャップ16を横切って配置された基質の湿分含量の直接の目安である。詳細に後述するように、基質の湿分含量、即ちその重量基準の水分含有量は、サンプルで測定したインピーダンスから決定することができる。
【0015】
図1及び図2A〜図2Eを更に参照すると、ストリップ14aからの順電力信号は、順電力分枝32(図1及び図2B)及び減衰器34を介して、ミクサ30の1つのポートに電気的に結合される。例えば、順電力信号は、減衰器34によって約−10dBmに減衰されてもよい。ストリップ14bからの結合電力信号は、位相調整器36により位相調整され、反射電力分枝28を介して、ミクサ30の別のポートに電気的に結合される。ミクサ30は、順電力信号と同位相の結合信号に対して最も応答性があるという点で、干渉性受信器として作用することができる。位相調整器36は、ミクサ30の順電力信号に対して確実に反射電力信号を適切に位相干渉して、最大の認識可能なミクサ出力を生成する。調整可能な電力源26によってミクサの順電力が適切なレベルに設定されると、ミクサ30の出力は、反射結合電力の増加と共に単調に増加する。ミクサ30は、方向性結合器12を通る結合電力の値をDCベースバンドに復調又は低下させる。ミクサ30のDC出力は、増幅器38により濾波及び増幅されて、ギャップ16を横切って配置された基質の湿分含量に関連する測定可能な出力電圧を生成する。増幅器38は、調整可能なゲイン40と、調整可能なDCオフセット42を含む。
【0016】
図4、図4A及び図4Bを参照して、毛髪の湿分含量を決定するセンサ10の使用について、毛髪湿分センサシステム44に関連してここで説明する。毛髪湿分センサシステム44は、例えば、専門サロンで使用されて、顧客の毛髪の湿分含量が約30重量%〜40重量%の範囲になり、その結果最適なスタイリング結果が達成可能となった時に、それを速やかに、正確に、且つ信頼性高く、スタイリストに示唆することができる。
【0017】
図4A及び図4Bに示すように、枢動するつかみ具48及び50を有する毛髪締め具46が設けられており、それぞれのつかみ具は、スタイリストが容易に把持して操作することができるハンドル52で終端する。つかみ具48及び50は、図4Aに示すように開放位置に片寄らせることができ、その結果、毛髪の束54は、つかみ具48及び50の間に容易に受け入れられ、毛髪繊維54がつかみ具50で支持される方向性結合器12の結合ギャップ16を横切って、即ちその長手方向軸線にほぼ垂直に延びるように配向される。図8に示すように、湿分含量測定の信頼性を確保するために、結合ギャップ16を横切る毛髪54の詰め込み圧力が重要であることが判明している。約1.4kg(3lb)未満の低い詰め込み密度、即ち圧力領域56内の詰め込み密度では、ミクサ30の出力電圧信号は、結合ギャップ16を横切る毛髪繊維54の不十分な詰め込み密度のために不安定になることがある。約3.2kg(7lb)超過のより高い詰め込み圧力、即ち圧力領域58内の詰め込み密度では、毛髪繊維54が結合ギャップ16を横切る詰め込み密度に差があるという結果を呈すると、ミクサ30の出力電圧信号は変動し始める。これらのより高い圧力では、過剰湿分も急速に排出され、信頼性の少ないより低い読み値につながる。圧力領域60の詰め込み繊維は、安定したミクサ30からの出力電圧信号を提供して、湿分含量の信頼性及び再現性が高い測定値を生成することができる。
【0018】
図1、図2D、図4A、及び図4Bに示す本発明の別の態様によれば、フィルム状圧力変換器64を組み込んだ圧力センサ62が、方向性結合器センサ12に並置されてつかみ具48で支持されている。圧力変換器64は、結合ギャップ16を横切って配置された毛髪54にかかる詰め込み圧力と共に変化する出力電圧信号を発生するように動作可能である。図1及び図2Dに示すように、圧力変換器64からの出力電圧信号は、調整可能なゲイン68及びDCオフセット70を有する増幅器66により増幅され、その増幅された出力電圧信号は、ジャンパ72を介して圧力センサ62の出力に直接提供されるか、又はジャンパ76を介して比較器74に入力として適用されるかのいずれかである。所望のトリガ圧力に対応するトリガ電圧が、比較器74の基準電圧77として設定される。湿分含量の測定は、予め設定された圧力閾値77を超える時に生じる。これによって、結合ギャップ16を横切って配置された毛髪繊維54の所望の稠密度が達成されて、正確で、信頼性及び再現性の高い結果が確実に得られる。詰め込み密度は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、機械的システム(図示せず)によっても同様に達成可能であることが当業者には理解されるであろう。
【0019】
図1及び図4を参照すると、センサ10からの測定した信号及び圧力センサ62からのトリガ信号即ち圧力信号は、ケーブル78を介して、従来型のPC又はラップトップコンピュータなどの処理システム80に電気的に結合される。処理システム80は、センサ10によって生成された測定信号を、システム80のディスプレイ82上に提示してもよい湿分含量値に変換するように動作可能である。上記に詳述したように、測定信号は、圧力センサ62により生成されるトリガ信号に応じて生じる。1つ又は複数の測定信号が、トリガ信号に応じて得られてもよい。
【0020】
次に図6及び図7を参照すると、センサ10の増幅された出力電圧は、まず複数の毛髪の束を相対湿度を使用して既知の湿分含量にすることにより校正される。次に、センサ10を使用して、図6に示すように、様々な相対湿度の毛髪の束それぞれに対する測定信号を生成する。図7に示すように、毛髪は重量基準の湿分重量と相対湿度との間でほぼ線形の関係を呈するので、処理システム80は、参照用テーブル又はアルゴリズムを使用して、センサ10の増幅された出力電圧を毛髪重量基準の湿分含量を表す値に変換するように動作可能である。損傷した毛髪と健康な毛髪の吸水能力及び/又は放水能力は異なるので、本発明のセンサ10は、毛髪の健康状態に概ね関連した信号を提供するのに使用されてもよい。一般に、毛髪の健康状態は、平滑度、光沢、脆弱性の不在、平行割れの不在、及び角質破壊の不在などの要因によって、特徴付けられる。これらの要因それぞれは、毛髪の湿分含量に直接的又は間接的に関連するので、本発明のセンサ10は、生体内又は生体外の毛髪で測定した健康状態の正確且つ信頼性の高い示唆を提供することができる。
【0021】
本発明のセンサ10は、消費者の毛髪の全体的な健康状態を消費者が定期的に測定できる、消費者が手軽に使える自己評価ツールを提供する。消費者は、これらの測定に基づいて、消費者の毛髪の健康状態を改善する方向の修正処置を取ることができる。これらの処置には、ヘアケア製品の変更、ヘアスタイリング技法の変更、又はその両方を含むことができ、その結果、消費者の毛髪の全体的な健康状態を常に観察及び改善することができる。センサ10はまた、ヘアスタイリスト及びヘアテクニシャンにも同様に有用な観察ツールを提供する。
【0022】
図5A及び図5Bに示すような本発明の別の態様によれば、センサ10は、毛髪の手入れをするためのブラシ84などのヘアケア製品に組み込まれる。ブラシ84は、ハンドル88で終端する細長い本体部分86を含む。剛毛90が、ブラシ84の本体部分86から従来方法で延びて、毛髪の手入れを可能にする。本発明の原理によれば、図3に示すように、信号発生器22、ミクサ30、電圧調整器92(図2E)、及び圧力センサ62の電子部品はすべて、毛髪締め具96(図5A及び図5B)の固定の基部94上で支持されるPCB基板18上で一体化される。固定の基部94は、方向性結合器12を剛毛90近くに配置しており、その結果、毛髪がブラッシングされている間に測定が容易に実施される。毛髪締め具96は、ばね付勢された締め部材98を含み、これが、圧力変換器64を方向性結合器12に並置して配置する。レバー100は、移動可能な締め部材98に動作可能に接続され、図5Bに示すように、締め部材98を固定の基部94に向けて移動させることによって、センサ測定が所望されるときに、ユーザが結合ギャップ16を横切って毛髪を締め付けることができるようになっている。ヘアブラシ84は、センサ測定に基づいて、毛髪の湿分状態、健康状態、又は他の状態についてユーザに表示を提供するために、LEDを含んでも、且つ/又は可聴信号を生成してもよい。図示しないが、本発明のセンサ10は、櫛、カールアイロン、又は、手入れ中にユーザの毛髪を好ましくは係合して、センサ測定に基づいて毛髪の湿分含量、健康状態、又は他の状態の測定を提供する類似のヘアケア製品など、他のヘアケア製品にも同様に組み込まれてもよいことが理解されるであろう。
【0023】
本発明の方向性結合器センサ10は、ストリップ14a及び14bの表面に、例えば約0.3センチ(0.1インチ)に近接したところで、インピーダンスの変化に対する感度を有するため、毛髪の湿分含量、健康状態、又は他の状態を測定するように良好に適合される。ストリップ14a及び14bの表面からのこの有効測定調査深度の高さは、ストリップ14a及び14bを結合する電磁界の関数である。測定調査深度の高さは、PCB18の高さ、PCB18の誘電率、ストリップ14a及び14bの寸法、結合ギャップ距離「s」、及び/又は信号発生器22によって供給される電力を変えることで、特定の用途のために変化させることができる。これらのパラメータのいずれか又は全てを変化させることにより、結合電磁界の高さを変更し、それによって有効測定調査深度を変化させることができる。
【0024】
センサ10は、少なくとも1つの信号発生器22に電気的に結合された複数の方向性結合器12を含んで、複数の基質それぞれの湿分含量を上記に詳述した原理で測定してもよいことが考えられる。更に、複数の方向性結合器12の少なくとも2つは、上記に詳述したパラメータの1つ以上を変化させることにより、異なる有効測定調査深度を有してもよいことも考えられる。
【0025】
B.高共振高Q値回路
図9Aに示すように、高共振高Q値回路112は、湿分測定装置100に組み込むことができ、また、本発明の原理に従って、ケラチン性繊維などの基質の湿分含量を測定するのに使用することができる。湿分測定装置100は、センサ102及び繊維マトリックス変性ユニット104を組み込む。繊維マトリックス変性ユニット104は、一般に、直線アクチュエータ106及び詰め込み領域108を含む。詰め込み領域108は、一般に、フィードバック機構110(ロードセルなど)を含む。センサ102は、一般に、当業者には容易に理解されるように、多種多様な基質、多種多様なそれら基質の特徴(即ち、化学的特性及び物理的特性)を分析し、それら基質の異なる湿分に関連する特性を測定するように容易に適合可能な、高共振高Q値回路112を含む。更に、本発明は、多種多様な用途に使用され、従って、ケラチン性基質の分析又は毛髪の湿分含量のみの測定に限定されないことが、当業者には容易に理解されるであろう。
【0026】
図10に示すように、高共振高Q値回路112は、高Q値インダクタ114に直接供給される電力信号を発生させる、信号発生器122を含む。信号発生器122は、水晶基準器に位相ロックされて、周波数、従って測定の正確さ、安定性、および再現性を維持する。信号発生器122はまた、調整可能な電力レベル装置126を備える。信号発生器122は、超短波から極超短波までの周波数範囲、即ち約30MHz〜約3GHzの信号を発生するように動作可能であるのが好ましいが、他の周波数範囲も同様に可能である。本発明の一実施形態によれば、基質の湿分(水分)含量は、そのインピーダンスがGHz付近の範囲で測定されると最も正確に決定されると考えられるため、信号発生器122は、約860MHz〜約928MHz、より好ましくは約865MHz〜約915MHzの範囲、最も好ましくは約915MHzでの周波数など、約1GHzの周波数で動作してもよい。
【0027】
本発明の一態様によれば、高共振高Q値回路112は、固定値のインダクタ114及び116並びにコンデンサ117を含む同調LC回路115の両端間に、固定の入力周波数が供給される。基質がコンデンサ117に近接して配置されると、コンデンサ117の値が変化し、それによって高共振高Q値回路112の共振周波数のシフトが生じる。好ましい一実施形態では、基質は、コンデンサ117を含むプレートに近接して配置される。最も好ましい一実施形態では、コンデンサ117が平行なプレート配置を有する場合、基質はコンデンサ117のプレートの間に配置される。AC/DC検出器118が次に、結果として生じる高共振高Q値回路112の共振周波数のシフトを感知する。このシフトを、位相ロック水晶基準器の周波数に対してプロットして、共振曲線を生成することができる。AC/DC検出器118は、当業者には既知のようなDC増幅器を備えることができる。
【0028】
理論に束縛されることを望まないが、基質の湿分含量を決定するため、基質は、少なくともコンデンサ117のフリンジ区域内に配置されるべきであると考えられる。コンデンサ117のフリンジ区域は、コンデンサ117の少なくとも2つの導電プレートの間にある電界によって発生する力線である。基質を、電界が最も強いコンデンサ117のプレートに近接して配置することで、基質の湿分含量の決定に対して最も再現性の高い結果が得られると考えられるが、当業者であれば、プレートに近接していないコンデンサ117のプレートによって生成されるフリンジ区域内に配置された基質の湿分含量もまた決定できるであろう。更に、当業者であれば、上述のLC回路で使用するのに好適なコンデンサのあらゆる構成も理解するであろう。これには、同一平面上のプレートのコンデンサ、非平行なプレートのコンデンサ、互いに噛み合うプレートのコンデンサ、複数プレートのコンデンサ、及びそれらの組み合わせを包含することができるが、これらに限定されない。
【0029】
図11A〜図11Cに示すように、高共振高Q値回路112の共振曲線119を使用して、基質の湿分含量を測定することができる。この際、LC回路115に挿入される固定の周波数は、図11Aに示す代表的な共振曲線119aを生成することができる。代表的な共振曲線119aは、それによって開放回路値を示す(即ち、コンデンサ117に近接する基質が存在せず、AC/DC検出器118の出力が共振ピーク120aの左側に信号を提供する。図11Bに示すように、コンデンサ117に近接したLC回路115に、50%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは1.0%未満、更に好ましくは0.5%未満の湿分を含む、最も好ましくは湿分を含まない、基質を取り込む際、共振曲線119b及び共振ピーク120bは、LC回路115への固定の周波数入力に対して左側にシフトすることが観察し得る。この条件は、一般にベースライン条件と称される。飽和した基質を、コンデンサ117(図示せず)に近接したLC回路115に取り込む際、共振曲線119c及び共振ピーク120cは、LC回路115への固定の周波数入力に対して、ベースライン条件で提示されたものよりも更に左側にシフトすることが観察し得る。この状態を図11Cに示す。当業者には既知のように、信号処理システムのダイナミックレンジは、オーバーフロー又は他の歪みなしに持続可能な最大dBレベル(飽和条件)から、ノイズフロアのdBレベル(ベースライン条件)を差し引いたものとして定義することができる。湿分測定装置100のダイナミックレンジは、ベースライン条件(図11B)から飽和状態(図11C)への遷移における、共振曲線119と共振ピーク120の測定された全体のシフトを比較することによって決定される。LC回路115の平行プレートであるコンデンサ117のプレートに基質を近接させることで、本明細書に記載する以外のシフトを有する共振曲線119及び共振ピーク120を生成できることも、当業者には既知であろう。
【0030】
再び図10を参照すると、AC/DC検出器118からの測定された信号を、当業者には既知であるように、従来型のPC又はラップトップコンピュータなどの処理システムに電気的に結合することができる。処理システムは、AC/DC検出器118で生成された出力を、当業者には既知の装置を介して媒体に表示(即ち、LED、CRT、LCD)又は印刷することが可能な湿分含量値に変換し得る。更に、処理システム及び表示は、実験室環境、実務環境、又は医療環境で使用するための「スタンドアロン型」装置として、又は家庭で若しくは移動中に使用するのに好適な可搬型の「手持ち」装置として使用するのに好適な、単一の装置(一体型装置)に組み込むことができる。例えば、高共振高Q値回路112を含む湿分測定装置100を、専門サロンで使用できる手持ち装置に組み込んで、顧客の毛髪の湿分含量が、最適なスタイリング又はトリートメント効果を達成するのに適切な範囲内にある時に、速やかに、正確に、且つ信頼性高くスタイリストに示すために使用される。更に、AC/DC検出器118で生成された出力は、処理、記憶、及び/又は表示のために、湿分測定装置100に一体化された、又はモデム、コーデック、USB、RS−232、無線、及び/又は物理的配線などを介して遠隔演算システム(国内又は国外)と通信する、記憶装置(即ち、EEPROM、フラッシュメモリカード、コンピュータの記憶ディスク、又は当業者には既知の他のデータ記憶手段)に電気的に結合し、そこに記憶することができる。
【0031】
AC/DC検出器118の増幅された出力電圧は、まず複数の毛髪の束を相対湿度を使用して既知の湿分含量にすることにより校正される。次に、AC/DC検出器118を使用して、上述したように、様々な相対湿度の毛髪の束それぞれに対する測定信号を生成する。上述したように、毛髪は重量基準の湿分重量と相対湿度の間でほぼ線形の関係を呈するので、処理システムは、参照用テーブル又はアルゴリズムを使用して、AC/DC検出器118の増幅された出力電圧(信号)を毛髪重量基準の湿分含量を表す値に変換するように動作可能である。当業者には既知のように、参照用テーブル又はアルゴリズムは、AC/DC検出器118の増幅された出力電圧との比較に使用される信号基準値を含むことができる。
【0032】
再び図9aに示す代表的な実施形態を参照すると、湿分測定装置100は、一般に直線アクチュエータ106及び詰め込み領域108を含む、繊維マトリックス変性ユニット104を備える。詰め込み領域108は、一般にフィードバック機構110(ロードセルなど)を含む。直線アクチュエータ106は、開放位置に片寄せられてもよく、その結果、繊維が容易に詰め込み領域108内に受け入れられる。好ましくは、繊維は、繊維マトリックス変性ユニット104の詰め込み領域108を横切って、即ち長手方向軸線にほぼ垂直に延びるように配向される。しかしながら、直線アクチュエータ106が詰め込み密度を制御できるので、詰め込み領域108内の繊維の配向は、必ずしも詰め込み領域108内でそのような配置でなくてもよいことが、当業者には容易に理解されるであろう。上述したように、詰め込み領域108内の基質の詰め込み圧力は、湿分含量測定を確実に信頼性の高いものにするために重要であることが判明している。更に、詰め込み領域108にフィードバック機構110を設けることで、詰め込み領域108内に配置される基質の所望の稠密度が、正確で、信頼性及び再現性の高い結果を確実に達成できる。当業者には既知のように、代表的であるが非限定的な種類の直線アクチュエータ106としては、電気的アクチュエータ、磁気アクチュエータ、機械的アクチュエータ、熱アクチュエータ、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0033】
図9bを参照すると、繊維マトリックス変性ユニット104は、手持ち装置130として実現することができる。この場合、繊維などの代表的な基質154を、手持ち装置130の繊維マトリックス変性ユニット104の詰め込み領域108内に配置することができる。繊維マトリックス変性ユニット104は、フィードバック機構110(ロードセルなど)が開放位置に片寄せられる(手持ち装置130の繊維マトリックス変性ユニット104のつめ125が開放位置にある)と、基質154を容易に受け入れることができる。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、繊維マトリックス変性ユニット104を組み込む任意のシステムによって詰め込み密度を達成できることが、当業者には理解されるであろう。例えば、センサ102を組み込む繊維マトリックス変性ユニット104は、専門サロンなどのエンドユーザによって使用されて、速やかに、正確に、且つ信頼性高く顧客の毛髪の湿分含量を示すことが可能で、又は顧客によって使用されて、速やかに、正確に、且つ信頼性高く家庭で自分の毛髪の湿分顔料を示し得る。更に、当業者であれば、センサ102及び繊維マトリックス変性ユニット104を、基質154の長手方向軸線に沿って、又は基質154の上及び/又はその中の任意の点で、複数の測定を行うことができる装置に組み込む湿分測定装置100を、提供することができるであろう。
【0034】
本発明の特定の実施形態を説明し記載してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の様々な変形及び修正を実施できることが、当業者には明白であろう。従って、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の原理による方向性結合器センサの機能ブロック図。
【図2A】本発明の一実施形態による図1のセンサで使用する高周波信号発生器の回路図。
【図2B】本発明の一実施形態による図1のセンサで使用する方向性結合器の回路図。
【図2C】本発明の一実施形態による図1のセンサで使用する湿分含量検出器の回路図。
【図2D】本発明の一実施形態による図1のセンサで使用する圧力センサの回路図。
【図2E】本発明の一実施形態による図1のセンサで使用する電圧調整器の回路図。
【図3】プリント回路基板上に一体化して示される図1のセンサの上面図。
【図3A】図3の線3A−3Aに沿って取った断面図。
【図4】本発明の一実施形態による方向性結合器センサシステムの斜視図。
【図4A】毛髪を装置の中に受け入れるために開放位置にある締め具を示す、図4のセンサシステムで使用する毛髪締め具の拡大正面図。
【図4B】毛髪を装置の中に締め付けるために閉鎖位置にある締め具を示す、図4Aと同様の図。
【図5A】本発明の方向性結合器センサを組み込む毛髪ブラシの側面図。
【図5B】本発明の方向性結合器センサを組み込む毛髪ブラシの側面図。
【図6】方向性結合器センサの出力電圧と毛髪との様々な束の相対湿度との関係を示すグラフ。
【図7】毛髪重量基準の湿分含量と毛髪の相対湿度との関係を示すグラフ。
【図8】方向性結合器センサの出力電圧と毛髪を締め付けるためにかけた圧力との関係を示すグラフ。
【図9A】基質の湿分含量を測定する代替装置の斜視図。
【図9B】基質の湿分含量を測定する別の代替装置の斜視図。
【図10】本発明の原理による高共振高Q値回路の機能ブロック図。
【図11A】開放回路状態にある場合の、低湿分基質が存在する場合の、及び飽和基質が存在する場合の、高共振高Q値回路の代表的な共振曲線を示すグラフ。
【図11B】開放回路状態にある場合の、低湿分基質が存在する場合の、及び飽和基質が存在する場合の、高共振高Q値回路の代表的な共振曲線を示すグラフ。
【図11C】開放回路状態にある場合の、低湿分基質が存在する場合の、及び飽和基質が存在する場合の、高共振高Q値回路の代表的な共振曲線を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基質の湿分含量を測定する装置であって、
共振周波数を有し、高Q値インダクタ及びコンデンサを含む高Q値LC回路と、
前記LC回路に電気的に結合され、前記コンデンサに電力を結合するように動作可能な高周波信号発生器と、
繊維マトリックス変性ユニットと
を含み、
前記基質が前記繊維マトリックス変性ユニット内であって且つ前記コンデンサに近接して配置されたときに、前記LC回路の前記共振周波数を前記基質の前記湿分含量に応じて変えることができる装置。
【請求項2】
前記繊維マトリックス変性ユニットが前記コンデンサを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記コンデンサが少なくとも2つのプレートを含み、前記基質が前記少なくとも2つのプレートに近接して配置される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記繊維マトリックス変性ユニットが直線アクチュエータを更に含む、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記繊維マトリックス変性ユニットが、前記基質を配置する詰め込み領域を更に含み、前記詰め込み領域がフィードバック機構を更に含む、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記高周波発生器高周波信号発生器が30MHz〜3GHzで動作可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記高Q値LC回路に動作可能に結合されたAC/DC検出器を更に含み、前記AC/DC検出器が前記LC回路の前記共振周波数の前記変化を感知することができる、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記AC/DC検出器が出力を有し、前記出力が、処理システム、通信システム、表示システム、記憶システム、及びそれらの組み合わせから成る群から選択されるシステムに電気的に結合される、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記システムが前記装置と一体である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記AC/DC検出器が出力を有し、前記出力が、処理システム、通信システム、表示システム、記憶システム、及びそれらの組み合わせから成る群から選択されるシステムと通信する、請求項7に記載の装置。
【請求項11】
前記基質がケラチン性繊維である、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記繊維マトリックス変性ユニットが、前記高Q値LC回路を支持する固定の基部部材と、前記繊維マトリックス変性ユニットを前記高Q値LC回路と並置して支持する可動部材とを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記LC回路の前記共振周波数が、前記繊維マトリックス変性ユニット内に配置された、前記基質の50重量%未満の湿分を有する第1の基質に応じて、第1の周波数を提供し、
前記LC回路の前記共振周波数が、前記繊維マトリックス変性ユニット内に配置された、飽和した第2の基質に応じて、第2の周波数を提供する、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記装置が、前記第1の共振周波数と前記第2の共振周波数の比較を含むダイナミックレンジを有する、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
基質の湿分含量を測定できる装置のための回路であって、
共振周波数を有し、高Q値インダクタ及びコンデンサを含む高Q値LC回路と、
前記LC回路に電気的に結合され、前記コンデンサに電力を結合するように動作可能な高周波信号発生器と
を含み、
前記LC回路の前記共振周波数が、前記コンデンサに近接して配置された前記基質の前記湿分含量に応じて変化することができる、回路。
【請求項16】
前記回路に動作可能に結合され、前記LC回路の前記共振周波数の前記変化を検出することができるAC/DC検出器を更に含む、請求項15に記載の回路。
【請求項17】
前記AC/DC検出器がDC増幅器を更に含む、請求項16に記載の回路。
【請求項18】
前記回路がシフト可能な共振曲線を有する、請求項15に記載の回路。
【請求項19】
前記高周波発生器高周波信号発生器が30MHz〜3GHzで動作可能である、請求項15に記載の回路。
【請求項20】
基質の湿分含量を測定する方法であって、
(a)シフト可能な共振曲線を有し、高Q値インダクタ及びコンデンサを含む高Q値LC回路と、前記LC回路に電気的に結合され、前記コンデンサに電力を結合するように動作可能な高周波信号発生器とを提供する工程と、
(b)前記基質を前記コンデンサに近接させる工程と、
(c)前記高Q値LC回路の出力を測定する工程と、
(d)前記出力を基準値と比較して、前記基質の前記湿分含量を決定する工程と
を含む方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3】
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【図3A】
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【図4】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【公表番号】特表2007−534966(P2007−534966A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510855(P2007−510855)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/014089
【国際公開番号】WO2005/106465
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】